説明

薄板体の被覆方法

【課題】防湿用の保護フィルムを電気泳動表示積層体表面に貼り付ける工程において、接着面の気泡を抜き、且つ凹凸の発生を減少させる薄板体の被覆方法を提供する。
【解決手段】表示パネル2および表示駆動基板3とガスバリアフィルム5との間に熱可塑性接着剤6を介在させた積層体を、真空中において加熱圧着し、表示パネル2および表示駆動基板3にガスバリアフィルム5を貼り合せる電気泳動表示装置1の被覆方法であって、積層体を、熱可塑性接着剤6の粘着力発生温度に加熱し且つ圧着する仮接着工程(S04)と、仮接着工程で仮接着した積層体を、熱可塑性接着剤6の接着温度に加熱し且つ圧着する本接着工程(S06)と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板体とガスバリアー性フィルムとの間に熱可塑性接着剤を介在させた積層体を、真空中において加熱圧着し、前記薄板体に前記ガスバリアー性フィルムを貼り合せる薄板体の被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板体の被覆方法として、熱可塑性接着剤を介して、電気泳動表示装置を耐湿性を有する保護フィルムで接着し被覆する方法が知られている(例えば特許文献1)。
この方法では、電気泳動表示装置に対して、保護フィルムを、熱可塑性接着剤を介して貼り付ける際に、熱可塑性接着剤が溶解しない程度に加熱して仮留めを行う第1の接着工程と、これを減圧雰囲気内に持込み、熱可塑性接着剤が溶解する温度で加熱圧着することで本圧着する第2の接着工程と、を有している。このように、第1の接着工程で位置合わせを行い仮留めした後、第2の接着工程において減圧雰囲気内で本圧着することで接着剤の気泡を抜くことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−93108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、第1の接着工程において、熱可塑性接着剤と
電気泳動表示装置との間に咬み込んだ気泡が、第2の接着工程において保護フィルムを加熱圧着した際に、軟化した保護フィルムから抜けるが、この気泡が抜ける際の軌跡が、保護フィルムに目視可能な凹凸となって残る問題があった。
【0005】
本発明は、薄板体とガスバリアー性フィルムとの間に熱可塑性接着剤を介在させた積層体を加熱圧着する際に、ガスバリアー性フィルムの表面に凹凸が生ずるのを防止することができる、薄板体の被覆方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における薄板体の被覆方法は、薄板体とガスバリアー性フィルムとの間に熱可塑性接着剤を介在させた積層体を、真空中において加熱圧着し、薄板体にガスバリアー性フィルムを貼り合せる薄板体の被覆方法であって、積層体を、熱可塑性接着剤の粘着力発生温度に加熱し且つ圧着する仮接着工程と、仮接着工程で仮接着した積層体を、熱可塑性接着剤の接着温度に加熱し且つ圧着する本接着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、真空中において、積層体を、熱可塑性接着剤の粘着力発生温度で加熱・圧着すると、熱可塑性接着剤が溶融状態ではないため、咬み込んだ気泡が封じこまれることなく円滑に抜けきる。また、積層体に再度、気泡が侵入することがない。このため、続く本接着工程において、積層体を熱可塑性接着剤の接着温度(溶融させた状態)に加熱・圧着したときに、気泡の影響を受けることなく被覆処理を行うことができる。すなわち、積層体を加熱圧着して、薄板体をガスバリアー性フィルムで被覆するときに、ガスバリアー性フィルムの表面に凹凸が生ずるのを有効に防止することができる。なお、本接着工程の後、積層体を冷却することで一連の被覆作業が完了する。また、「粘着力発生温度」とは、融点温度(柔らかくなる温度)以下であって、融点温度近傍の温度であり、「接着温度」とは、熱可塑性接着剤が溶融して被接着物となじむ、仕様上の接着温度である。なお、上記粘着力発生温度とは、接着温度より30℃〜50℃程度低い温度であることが望ましく、温度が低すぎると熱可塑性接着剤が十分に軟化せず、気泡を抜ききることができない。また、逆に温度が高すぎると、上記本接着工程に影響を及ぼし、接着性の悪化および耐湿性の悪化が生じる。このため、上記の粘着力発生温度は、接着温度より37℃〜43℃低い温度であることがより望ましい。
【0008】
この場合、仮接着工程は、薄板体とガスバリアー性フィルムとの間に咬み込んだ気泡が抜ける時間、加熱し且つ圧着状態を維持することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、積層体に、真空中であっても抜け難い小さな気泡(マイクロバブル)が咬み込んでいても、これを完全に抜くことができる。
【0010】
この場合、仮接着工程と本接着工程との間に、積層体を粘着力発生温度未満に冷却する冷却工程、を更に備えていることが好ましい。
【0011】
この方法によれば、複数の薄板体の被覆を行うときに、処理温度の異なる仮接着工程と本接着工程と、を別々に且つバッチ処理的に実施することができ、処理を短時間で効率良く行うことができる。またその際、積層体が完全に気泡を抜ききってから圧着された状態で、熱可塑性接着剤が冷やされ粘着力を失うため、熱可塑性接着剤との圧着面がずれたり、再び気泡が咬みこむことを防止することができる。
【0012】
この場合、薄板体が、電気泳動表示装置の表示体であり、ガスバリアー性フィルムは、表示体を気密封止するバリアーフィルムであることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、表示体をバリアーフィルムで気密封止した電気泳動表示装置を、歩留り良く製造することができる。これにより、電気泳動表示装置は耐湿性が確保され、電気泳動表示装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に用いられる電気泳動表示装置の上面および断面図である。
【図2】本実施形態に係る表示パネルの構成を示す模式図である。
【図3】本実施形態で用いられる圧着装置の断面図である。
【図4】本実施形態に係る電気泳動表示装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図5】本実施形態の実施例の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る薄板体の被覆方法を、電気泳動表示装置における被覆方法(製造方法)に適用した場合について説明する。電気泳動表示装置は、主体を為す表示パネルおよび表示駆動基板を、ガスバリアフィルムを被覆して構成されており、このガスバリアフィルムにより、表示パネルを気密に封止しその劣化を防止している。
【0016】
図1は、本実施形態に用いられる電気泳動表示装置の構成を示す上面図および断面図である。
本実施形態における電気泳動表示装置1は、主な構成としてEPD(Electrophoretic Display)で構成した表示パネル2と、表示パネル2に画像を表示させるための制御を行う表示駆動基板3と、湿度による品質劣化を防止するために、表示パネル2を覆って封止する透明なガスバリアフィルム5と、表示パネル2および表示駆動基板3とガスバリアフィルム5との間に介設した熱可塑性接着剤6と、を備えている。なお、請求項にいう薄板体(表示体)は、表示パネル2と表示駆動基板3とにより、構成されている。
【0017】
表示パネル2は、白色および黒色の電気泳動粒子を用いたものであり(詳細は、後述する。)、表示駆動基板3と電気的に接続され、表示駆動基板3からの制御信号により所望の画像をモノクロ表示する。
表示駆動基板3は、表示パネル2に所望の画像を表示させるための駆動制御を行うものであり、例えば記憶部、制御部および駆動部等を有している(図示省略)。また、図示しないが、表示駆動基板3には回路基板が接続されるようになっている。
そして、表示パネル2と表示駆動基板3とは、表示駆動基板3の回路基板への接続部分を残して、ガスバリアフィルム5により表裏両側から包み込まれるようにして封止される(詳細は後述する)。
【0018】
ガスバリアフィルム5は、ペットフィルムを基材とし、これにシリコン等の気密封止材を複数層に亘ってコーティングしたものであり、十分な気密性、特に防湿性を有している。これにより、表示パネル2の湿度による品質劣化を防止している。実施形態のガスバリアフィルム5は、表裏の2枚を一組とし、この2枚のガスバリアフィルム5により、表示パネル2および表示駆動基板3を包み込むように封止する。
熱可塑性接着剤6は、所定の温度に加熱することにより溶融して接着力を発揮するものであり、実施形態のものは、例えば90℃近辺から粘着力が生じ、溶融する130℃(接着温度)近辺で接着を実施する仕様となっている。そして、実施形態の熱可塑性接着剤6は、ガスバリアフィルム5に塗着された状態で、提供される。
【0019】
次に、図2の模式図を参照して、表示パネル2の構成を簡単に説明する。
表示パネル2は、画素を構成するマイクロカプセル17を有する電気泳動層16と、電気泳動層16の表面側に積層した共通電極13と、電気泳動層16の裏面側に積層した画素電極15と、を備えている。共通電極13は、透明電導材であるITO(Indium Tin Oxide)によって形成された透明電極で構成されている。共通電極13および画素電極15は、表示駆動基板3と電気的に接続されており、共通電極13および画素電極15に、表示駆動基板3から入力する電圧(駆動パルス)が印加されることで、マイクロカプセル17による表示が行われる。
【0020】
電気泳動層16は、複数のマイクロカプセル17を有しており、膜体で球形に形成された各マイクロカプセル17には、黒色の電気泳動粒子(以下、黒色電気泳動粒子)19と、白色の電気泳動粒子(以下、白色電気泳動粒子)20と、が電気泳動分散液18と共に封入されている。すなわち、実施形態の表示パネル2には、白黒2色の粉末流体方式の電気泳動層16が構成されている。そして、黒色電気泳動粒子19および白色電気泳動粒子20は、互いに異なる極性に帯電されている。
【0021】
表示駆動基板3により共通電極13および画素電極15のうち、一方の電極にハイレベルの電圧を、他方の電極にローレベルの電圧を印加して、電界を生じさせることで、クーロン力により電極の極性に対応した泳動粒子がそれぞれ泳動し、引き寄せられる。例えば、黒色電気泳動粒子19が正の電荷、白色電気泳動粒子20が負の電荷にそれぞれ帯電している状態で、共通電極13側が正、画素電極15側が負となるように電圧を印加すると、マイクロカプセル17内の負に帯電した白色電気泳動粒子20が共通電極13側に、正に帯電した黒色電気泳動粒子19が画素電極15側に集中する。
【0022】
このような状態では、画素電極15に集中した黒色電気泳動粒子19は、共通電極13側に集中した白色電気泳動粒子20に隠れて視認しづらくなり、結果として、共通電極13側に集中した白色電気泳動粒子20の色が表示パネル2の表面で視認される。すなわち、この場合、表示パネル2の表面では白色表示が強くなる。逆に、共通電極13側が負、画素電極15側が正となるように電圧を印加すると、負に帯電した白色電気泳動粒子20が画素電極15側に、正に帯電した黒色電気泳動粒子19が共通電極13側に集中し、表示パネル2の表面では黒色表示が強くなる。
【0023】
また、各電極に印加する電圧を制御して、各色の電気泳動粒子が共通電極13に集中していない状態では、表示パネル2の表示色を電気泳動粒子の白黒の間の中間色を表現することも可能である。すなわち、電極間に印加する電圧の印加時間(駆動信号のパルス数で制御)を表示駆動基板3で制御することによって、表示パネル2の表示色を変化させる。これにより、4階調や8階調のモノクロ表示を可能としている。なお、実施形態のものは、1のマイクロカプセル17を1の画素としているが、複数のマイクロカプセル17を1の画素としてもよい。
【0024】
このように構成された電気泳動表示装置1は、表示パネル2に表示駆動基板3を接続した状態で、熱可塑性接着剤6を介してガスバリアフィルム5を加熱圧着して製造される。より具体的には、表示パネル2および表示駆動基板3を、熱可塑性接着剤6付きのガスバリアフィルム5でサンドイッチし、ガスバリアフィルム5の周縁部を加熱接着して、袋状のガスバリアフィルム5に表示パネル2および表示駆動基板3を収容した形態とする。これを電気泳動表示積層体4と称呼するが、この電気泳動表示積層体4を、圧着装置31にセットした状態で真空加熱装置(図示省略)に投入し、所定温度下で加熱圧着を行うようにしている。
【0025】
図3に示すように、圧着装置31は、上ケーシング32aおよび下ケーシング32bから成るケーシング32と、ケーシング32内に収容した上受けプレート33aおよび下受けプレート33bから成る受けプレート33と、上受けプレート33aと下受けプレート33bとの間に介設したダイヤフラム34と、を備えている。上受けプレート33aおよび下受けプレート33bは、いずれも基材となる金属板36と金属板の内側に貼着したシリコンゴム製のゴム板37とからなり、内側にダイヤフラム34を挟み込むように、相互平行に配設されている。電気泳動表示積層体4は、上受けプレート33a(のゴム板37)とダイヤフラム34との間に挟持されるようにセットされ、真空引きにより膨張するダイヤフラム34により、上受けプレート33aおよび下受けプレート33bを受けとして、全体を均一に圧着される。
【0026】
次に、図4を参照して、電気泳動表示装置1の製造工程について説明する。同図に示すように、製造工程は、表示パネル2と表示駆動基板3との仮付け工程(S01)と、表示パネル2と表示駆動基板3との接続工程(S02)と、電気泳動表示積層体4におけるガスバリアフィルム5の仮付け工程(S03)と、電気泳動表示積層体4におけるガスバリアフィルム5の仮接着工程(S04)と、電気泳動表示積層体4の冷却工程(S05)と、電気泳動表示積層体4におけるガスバリアフィルム5の本接着工程(S06)と、ガスバリアフィルム5の外形カット工程(S07)と、回路基板の接続工程(S08)と、を備えている。なお、これらの各工程では、処理対象となる電気泳動表示積層体4等の複数個を纏めてバッチ処理とする。
【0027】
表示パネル2と表示駆動基板3との仮付け工程(S01)では、表示パネル2に塗布されてある接着剤の粘着性により表示パネル2を位置決めして仮付けする。表示パネル2と表示駆動基板3との接続工程(S02)では、仮付けした表示パネル2と表示駆動基板3とを加熱圧着により接続する。電気泳動表示積層体4におけるガスバリアフィルム5の仮付け工程(S03)では、上述のように、表示パネル2より十分大きい熱可塑性接着剤6付きの2枚のガスバリアフィルム5により、表示パネル2および表示駆動基板3をサンドイッチし、その周縁部を加熱圧着して、電気泳動表示積層体4を構成する。
【0028】
電気泳動表示積層体4におけるガスバリアフィルム5の仮接着工程(S04)では、先ず、上記の圧着装置31に電気泳動表示積層体4をセットし、これを真空加熱装置に投入する。次に、真空加熱装置を駆動して、電気泳動表示積層体4を、真空下で熱可塑性接着剤6の粘着力発生温度まで加熱する。真空加熱装置の真空度が増すと、圧着装置31のダイヤフラムが膨張し、結果、電気泳動表示積層体4は加熱圧着される。粘着力発生温度は、熱可塑性接着剤6が軟化する融点温度より低い温度であって、融点近傍の温度であり、実施形態のものは90℃程度である。
【0029】
真空中において、電気泳動表示積層体4を粘着力発生温度で加熱圧着すると、ガスバリアフィルム5と表示パネル2との間に挟みこまれた気泡や、ガスバリアフィルム5と表示駆動基板3との間に挟みこまれた気泡は、時間経過と共に外部に抜けてゆく。このような気泡が完全に抜けきる時間(数分)が経過したところで、真空加熱装置の駆動を停止し、圧着装置31と共に電気泳動表示積層体4を、真空加熱装置から取り出す。これが事実上の冷却工程(S05)となる。この場合、電気泳動表示積層体4を真空加熱装置から取り出しても、電気泳動表示積層体4は仮接着された状態となっているため、圧着面に新に気泡の侵入することはない。なお、真空加熱装置の駆動を停止して、電気泳動表示積層体4を粘着力発生温度未満に冷却し、このまま電気泳動表示積層体4を真空加熱装置から取り出すことなく、本接着工程(S06)に移行してもよい。
【0030】
電気泳動表示積層体4におけるガスバリアフィルム5の本接着工程(S06)では、圧着装置31と共にセットした状態の電気泳動表示積層体4を、真空加熱装置に再度投入すると共に、真空加熱装置を後述する接着温度に設定して駆動を開始する。すなわち、電気泳動表示積層体4を、真空下で熱可塑性接着剤6の接着温度まで加熱し、且つ圧着装置31により圧着する。接着温度に加熱された熱可塑性接着剤6は、溶融して表示パネル2や表示駆動基板3と十分に馴染み、続いて真空加熱装置を停止させ冷却状態に移行すると、ガスバリアフィルム5と表示パネル2および表示駆動基板3と、を気密に接着する。ここで、電気泳動表示積層体4(この時点では、電気泳動表示装置1となっている)を、真空加熱装置から取り出し、且つ圧着装置31から取り外すようにする。
【0031】
ガスバリアフィルム5の外形カット工程(S07)では、本接着が完了した電気泳動表示積層体4を、製品としての外形にすべく、外形の不要部分をカットする。そして、回路基板の接続工程(S08)において、表示駆動基板3に端部(ガスバリアフィルム5で被覆されていない端部)に回路基板を接続して、一連の作業を完了する。
【0032】
以上の、本実施形態における被覆方法によれば、ガスバリアフィルム5を熱可塑性接着剤6を介して積層体に貼り付ける際に、仮接着工程と、本接着工程の2度に分けてそれぞれ適切な温度によって圧着が行われることで、ガスバリアフィルム5と積層体との間に気泡が発生することを抑制し、結果として、表面に凹凸少ない高品質の電気泳動表示装置1を製造することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態において、各圧着工程を熱可塑性接着剤6の性質に合った、適当な温度で実施したため、必要以上の熱がガスバリアフィルムにかかることによるガスバリアフィルム5の損傷を防ぐことができる。
【0034】
なお、本実施形態では薄板体として電気泳動表示装置を用いたが、ガスバリアーフィルムが熱可塑性接着剤を用いて被覆された電気光学装置や、熱可塑性接着剤を用いてラミネートされた基板等に用いても良い。また、薄板体が可撓性を有している場合は、本実施形態で積層体の表面にガスバリアフィルム5を接着した後に、薄板体を曲げる曲げ工程を行っても良い。
【0035】
次に、図5を参照して、上記実施形態における各種実施例における被覆方法の有効性に関する試験およびその評価結果について説明する。この試験では、ガスバリアフィルム5の複数種について、仮接着の温度および本接着の温度を適宜変更して行った。
実施例1
ポリエチレンテレフタラート(PET)からなる、透明高分子フィルム(膜厚100μm)の面に、スパッタリング方により、酸化インジウム錫のターゲットを用い、酸素分圧が4.7×10^−5Torr、ある盆分圧が1×10^−3Torrになるようにガスを導入し、透明酸化物層を30nm形成した後、90℃、48時間、大気雰囲気で熱処理を行ったガスバリアフィルム5を用いた。そして、上記の仮接着工程を90℃、本接着工程を130℃で実施した。
実施例2
実施例1と同一のガスバリアフィルム5を用い、仮接着工程を80℃、本接着工程を130℃で実施した。
実施例3
実施例1と同一のガスバリアフィルム5を用い、仮接着工程を100℃、本接着工程を130℃で実施した。
実施例4
ポリエチレンテレフタラート(PET)の表面に、低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層した透明高分子フィルム(膜厚120μm)を、ガスバリアフィルム5として用い、仮接着工程を70℃、本接着工程を100℃で実施した。
実施例5
ポリエチレンテレフタラート(PET)の表面に、アイオノマー(IO)層を積層した透明高分子フィルム(膜厚115μm)を、ガスバリアフィルム5として用い、仮接着工程を90℃、本接着工程を140℃で実施した。
実施例6
ポリエチレンテレフタラート(PET)の表面に、エチレン酢酸ビニール共重合体(EVA)層を積層した透明高分子フィルム(膜厚105μm)を、ガスバリアフィルム5として用い、仮接着工程を90℃、本接着工程を130℃で実施した。
実施例7
ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる透明高分子フィルム(膜厚100μm)を、ガスバリアフィルム5として用い、仮接着工程を110℃、本接着工程を150℃で実施した。
実施例8
ポリエチレンナフタレート(PEN)の表面に、低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層した透明高分子フィルム(膜厚120μm)を、ガスバリアフィルム5として用い、仮接着工程を70℃、本接着工程を100℃で実施した。
実施例9
ポリエチレンナフタレート(PEN)の表面に、アイオノマー(IO)層を積層した透明高分子フィルム(膜厚115μm)を、ガスバリアフィルム5として用い、仮接着工程を90℃、本接着工程を140℃で実施した。
実施例10
ポリエチレンナフタレート(PEN)の表面に、エチレン酢酸ビニール共重合体(EVA)層を積層した透明高分子フィルム(膜厚105μm)を、ガスバリアフィルム5として用い、仮接着工程を90℃、本接着工程を130℃で実施した。
比較例1
実施例1と同一のガスバリアフィルム5を用い、仮接着工程を70℃、本接着工程を130℃で実施した。
比較例2
実施例1と同一のガスバリアフィルム5を用い、仮接着工程を110℃、本接着工程を130℃で実施した。
比較例3
実施例1と同一のガスバリアフィルム5を用い、仮接着工程を115℃、本接着工程を130℃で実施した。
【0036】
評価は、耐湿度性、気泡数、表面の粗さの3点から評価を行った。
耐湿度性は、40℃、80%の湿度環境で2週間放置し、その後動作するか否かの判定を行った。動作確認は、8cm×5cmの表示領域に6ポイントの英字を表示させた状態で目視を行い、表示部全体で文字が読めれば合格、一ヶ所でも読めなければ不合格とした。評価方法は、読めない文字数(不良数)で評価を行い、不良数が0個の場合は「A」、不良数1〜2の場合は「B」、不良数3〜9の場合は「C」、不良数10以上の場合は「D」として評価した。
さらに、気泡数は、任意の3cm×3cmの範囲を、肉眼で観察し、気泡の個数を集計した。評価方法は、気泡数が0個の場合は「A」、気泡数が1〜2個の場合は「B」、気泡数が3〜9個の場合は「C」、気泡数が10個以上の場合を「D」とした。表面粗さは、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700 Generation2、キーエンス社製)を用いて表面粗さ(Ra)の測定を行った。評価方法は、Raが11μm未満の場合は「A」、Raが10〜30μm未満の場合は「B」、Raが30〜50μm未満の場合は「C」、Raが50μm以上の場合は「D」とした。
【0037】
図5からわかるように、仮接着工程が適正な粘着力発生温度(接着温度マイナス37℃〜43℃低い温度)で行われた実施例1は、耐湿度性、気泡数、表面粗さの3点でいずれも「A」評価(ベスト)となった。これに対し、仮接着工程が低い温度で行われた実施例2は気泡数において「B」評価(ベター)となり、仮接着工程が高い温度で行われた実施例3は耐湿度性において「B」評価(ベター)となった。
また、各種のガスバリアフィルム5を用いて実施した実施例4〜10では、一部「B」評価はあるものの、いずれも仮接着工程が接着温度マイナス30℃〜50℃の範囲内にあり、概ねベストおよびベターであった。
一方、仮接着工程が接着温度マイナス30℃〜50℃を外れる比較例1〜3は、耐湿度性、気泡数、表面粗さのいずれにおいても「D」評価(NG)となった。
以上の結果から、本実施形態の被覆方法において、仮接着工程が接着温度マイナス30℃〜50℃であること、好ましくは接着温度マイナス37℃〜43℃であることが、確認された。
【符号の説明】
【0038】
1:電気泳動表示装置、 2:表示パネル、 3:表示駆動基板、 4:電気泳動表示積層体、 5:ガスバリアフィルム、 6:熱可塑性接着剤、 31:圧着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板体とガスバリアー性フィルムとの間に熱可塑性接着剤を介在させた積層体を、真空中において加熱圧着し、前記薄板体に前記ガスバリアー性フィルムを貼り合せる薄板体の被覆方法であって、
前記積層体を、前記熱可塑性接着剤の粘着力発生温度に加熱し且つ圧着する仮接着工程と、
前記仮接着工程で仮接着した前記積層体を、前記熱可塑性接着剤の接着温度に加熱し且つ圧着する本接着工程と、を備えたことを特徴とする薄板体の被覆方法。
【請求項2】
前記仮接着工程は、前記薄板体と前記ガスバリアー性フィルムとの間に咬み込んだ気泡が抜ける時間、前記加熱し且つ圧着状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の薄板体の被覆方法。
【請求項3】
前記仮接着工程と前記本接着工程との間に、前記積層体を粘着力発生温度未満に冷却する冷却工程、を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の薄板体の被覆方法。
【請求項4】
前記薄板体が、前記電気泳動表示装置の表示体であり、
前記ガスバリアー性フィルムは、前記表示体を気密封止するバリアーフィルムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薄板体の被覆方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−194782(P2011−194782A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65856(P2010−65856)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】