説明

薄板部材用シール材

【課題】例えば、レドックスフロー電池、燃料電池、鉛蓄電池などの二次電池のセルなどの薄板部材に適用した場合に、従来のように、シール溝を形成する必要がなく、シール性も良好で、装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能で、しかも、セルの積層枚数も多くでき、電池容量も向上することが可能な薄板部材用シール材を提供する。
【解決手段】薄板部材の間をシールするための環状の薄板部材用シール材であって、薄板部材の側部に配置される側部シール本体部と、側部シール本体部から二股状に分岐して、薄板部材の表裏面にそれぞれ配置される、一対の脚シール部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レドックスフロー電池、燃料電池、鉛蓄電池などの二次電池のセルなどの薄板部材、フィルターなどの薄板部材の間をシールするための薄板部材用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、燃料電池などの二次電池では、図19に示したような構造となっている。
すなわち、図19は、従来の燃料電池の構造を模式的に示す部分拡大斜視図である。
【0003】
図19に示したように、燃料電池100は、正極電極(空気極)102と、負極電極(燃料極)104とを備えており、これらの正極電極102と負極電極104との間に、イオンが通過できる電解質106が配置されている。
【0004】
また、この正極電極102は、図19のA部の拡大図である図20(A)に示したように、カーボン電極102aと白金触媒102bとから構成されている。同様に、負極電極104は、図19のB部の拡大図である図20(B)に示したように、カーボン電極104aと白金触媒104bとから構成されている。
【0005】
さらに、正極電極102と負極電極104は、気体を通す構造をしており、反応に必要な酸素や水素が、その中を通るように構成されている。
また、正極電極102の外側には、正極電極用セパレーター108が配置されており、この正極電極用セパレーター108の正極電極102の側には、空気を正極電極102に供給するための空気供給用溝108aが形成されている。
【0006】
一方、負極電極104の外側には、負極電極用セパレーター110が配置されており、この負極電極用セパレーター110の負極電極104の側には、酸素を負極電極104に供給するための酸素供給用溝110aが形成されている。
【0007】
そして、これらの正極電極用セパレーター108、正極電極102、電解質106、負極電極104、負極電極用セパレーター110とで、セル112が構成されている。
図21に示したように、燃料電池100は、このセル112を多数積層してスタック構造とすることによって構成されている。
【0008】
ところで、電解質106内の電解液、正極電極用セパレーター108の空気供給用溝108aを流れる空気、ならびに、負極電極用セパレーター110の酸素供給用溝110aを流れる酸素が外部へ漏れるのを防止するために、セル112の間をシール材でシールする必要がある。
【0009】
このようなシール構造としては、従来より、例えば、特許文献1(特許第3682244号公報)などにおいて、セルフレーム枠とセルとの間に、シール材を配置するシール構造が提案されている。
【0010】
すなわち、特許文献1では、上下のそれぞれのセルフレーム枠の両面に、内側シール溝と、外側シール溝の合計4個のシール溝を形成して、これらのシール溝に合計4個のOリングからなるシール材を装着している。すなわち上下のセルフレーム枠で合計8個のシール溝に、合計8個のシール材を装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3682244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来のシール構造では、それぞれのセルフレーム枠に、内側シール溝と外側シール溝の合計4個のシール溝を形成しなければならず、構成が複雑となるとともに、製造工程が余分にかかりコストがかかることになる。
【0013】
また、合計4個のシール材が必要で部品点数が多くなるとともに、これらのシール材をシール溝に装着しつつ、セルフレーム枠にてセルを挟持して組み立て、セルフレーム挟持体を構成しなければならず、煩雑で手間のかかる作業が必要である。
【0014】
さらに、セルフレーム枠の両面に、内側シール溝と外側シール溝の合計4個のシール溝を形成しなければならないので、セルフレーム枠の厚さが厚くなってしまい、燃料電池自体が大型化し、重量も重くなってしまう。
【0015】
また、このようにセルフレーム枠の厚さが厚くなると、セルフレーム挟持体の積層枚数が少なくなってしまい、電池容量が低下することとなる。
本発明は、このような現状に鑑み、より薄く、数の少ないシール材で、薄板部材の間を良好にシールすることができ、使用される装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能な薄板部材用シール材を提供することを目的とする。
【0016】
また本発明は、例えば、レドックスフロー電池、燃料電池、鉛蓄電池などの二次電池のセルなどの薄板部材に適用した場合に、従来のように、シール溝を形成する必要がなく、シール性も良好で、装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能で、しかも、セルの積層枚数も多くでき、電池容量も向上することが可能な薄板部材用シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の薄板部材用シール材は、
薄板部材の間をシールするための環状の薄板部材用シール材であって、
前記薄板部材の側部に配置される側部シール本体部と、
前記側部シール本体部から二股状に分岐して、前記薄板部材の表裏面にそれぞれ配置される一対の脚シール部と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
このように構成すれば、二股状に分岐し薄板部材の表裏面にそれぞれ配置される一対の脚シール部によって、薄板部材の表裏面と相手部材との間、例えば、薄板部材を積層する場合などに、薄板部材の間をシールすることができる。
【0019】
一方、薄板部材の側部に配置される側部シール本体部によって、側部シール本体部と相手部材との間をシールして、薄板部材の側部をシールすることができる。
従って、1つの薄板部材用シール材で、一対の脚シール部によるシールと、側部シール本体部によるシールとの、二重のシールを確保することができる。
【0020】
これにより、シール性が極めて良好で、より薄く、数の少ないシール材で、薄板部材の間を良好にシールすることができ、使用される装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能な薄板部材用シール材を提供することができる。
【0021】
また、薄板部材用シール材を、例えば、レドックスフロー電池、燃料電池、鉛蓄電池などの二次電池のセルなどの薄板部材に適用した場合に、一対の脚シール部によって、セルの電解液が上下のセルの間で漏れることを防止できるとともに、側部シール本体部によって、セルの電解液が側部から外部に漏洩することを防止できる。
【0022】
しかも、従来のように、シール溝を形成する必要がなく、シール性も良好で、装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能で、しかも、セルの積層枚数も多くでき、電池容量も向上することが可能な薄板部材用シール材を提供することができる。
【0023】
さらに、薄板部材の側部に、側部シール本体部を配置するとともに、薄板部材の表裏面に、二股状に分岐した一対の脚シール部を配置することによって、薄板部材の側部に薄板部材用シール材を簡単に装着でき、この装着状態の薄板部材を部品として取り扱うことができ、組み立てなどの際の操作性に優れる。
【0024】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記側部シール本体部には、表裏面の少なくとも一方側に、厚さ方向外側に突設する本体側圧接シール突設部が形成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、側部シール本体部の本体側圧接シール突設部によって、薄板部材の側部をより確実にシールすることができる。
【0025】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記本体側圧接シール突設部が、径方向に一定間隔離間して配置された複数の本体側圧接シール突設部から構成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、径方向に一定間隔離間して配置された複数の本体側圧接シール突設部により、薄板部材の側部をさらに確実にシールすることができる。
【0026】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記本体側圧接シール突設部の位置が、表裏面において合致した位置に形成されていることを特徴とする。
このように本体側圧接シール突設部の位置が、表裏面において合致した位置に形成されていれば、薄板部材の側部をさらに確実にシールすることができる。
【0027】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記脚シール部のうち少なくとも一方に、厚さが厚くなった脚部側圧接シール部が形成されていることを特徴とする。
【0028】
このように、脚シール部の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部を形成すれば、薄板部材の表裏面と相手部材との間、例えば、薄板部材を積層する場合などには、薄板部材の間を、より確実にシールすることができる。
【0029】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記脚部側圧接シール部が、分岐方向に一定間隔離間して配置された複数の脚部側圧接シール部から構成されていることを特徴とする。
【0030】
このように構成すれば、分岐方向に一定間隔離間して配置された複数の脚部側圧接シール部により、薄板部材の表裏面と相手部材との間、例えば、薄板部材を積層する場合などには、薄板部材の間を、さらに確実にシールすることができる。
【0031】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記脚部側圧接シール部の位置が、一対の脚シール部において合致した位置に形成されていることを特徴とする。
このように脚部側圧接シール部の位置が、一対の脚シール部において合致した位置に形成されていれば、脚部側圧接シール部でのシール性が向上することになる。
【0032】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記脚シール部に、外方に曲部が突出して成る屈曲部を有することを特徴とする。
【0033】
このように脚シール部に外方に曲部が突出して成る屈曲部を有していれば、薄板部材を挟持した際に、薄板部材に対する圧縮荷重を軽減するとともに、薄板部材との摩擦が必要以上に大きくなりすぎてしまうことを防止できる。これにより薄板部材が熱膨張や熱収縮を生じた際、脚シール部を追随して挙動させることができる。
【0034】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記側部シール本体部には、側端部に曲面部を有することを特徴とする。
このように、側部シール本体部の側端部を曲面状の形態(曲面部)とすれば、例えば薄板部材を挟持し、フレーム枠内に収める際における摺動抵抗を下げることができる。
【0035】
また、本発明の薄板部材用シール材は、
前記薄板部材が、電池用部材であることを特徴とする。
このように電池用部材であれば、セルの間を確実にシールすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、二股状に分岐し薄板部材の表裏面にそれぞれ配置される一対の脚シール部によって、薄板部材の表裏面と相手部材との間、例えば、薄板部材を積層する場合などには、薄板部材の間をシールすることができる。
【0037】
一方、薄板部材の側部に配置される側部シール本体部によって、側部シール本体部と相手部材との間をシールして、薄板部材の側部をシールすることができる。
従って、1つの薄板部材用シール材で、一対の脚シール部によるシールと、側部シール本体部によるシールとの、二重のシールを確保することができる。
【0038】
これにより、シール性が極めて良好で、より薄く、数の少ないシール材で、薄板部材の間を良好にシールすることができ、使用される装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能な薄板部材用シール材を提供することができる。
【0039】
また、薄板部材用シール材を、例えば、レドックスフロー電池、燃料電池、鉛蓄電池などの二次電池のセルなどの薄板部材に適用した場合に、一対の脚シール部によって、セルの電解液が上下のセルの間で漏れることを防止できるとともに、側部シール本体部によって、セルの電解液が側部から外部に漏洩することを防止できる。
【0040】
しかも、従来のように、シール溝を形成する必要がなく、シール性も良好で、装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能で、しかも、セルの積層枚数も多くでき、電池容量も向上することが可能な薄板部材用シール材を提供することができる。
【0041】
さらに、薄板部材の側部に、側部シール本体部を配置するとともに、薄板部材の表裏面に、二股状に分岐した一対の脚シール部を配置することによって、薄板部材の側部に薄板部材用シール材を簡単に装着でき、この装着状態の薄板部材を部品として取り扱うことができ、組み立てなどの際の操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の薄板部材用シール材を、被装着部材である薄板部材として、レドックスフロー電池などの二次電池のセルに適用した実施例を示す部分拡大断面図である。
【図2】図2は、図1の薄板部材用シール材の圧縮状態を示す部分拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の薄板部材用シール材の上面図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図6】図6は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図8】図8は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図10】図10は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図11】図11は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図12】図12は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図13】図13(A)は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図、図13(B)は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の上面図、図13(C)は、本発明の別の実施例の薄板部材用シール材の上面図である。
【図14】図14は、発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図15】図15は、発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図16】図16は、発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図17】図17は、発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図18】図18は、発明の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
【図19】図19は、従来の燃料電池のセルの構造を模式的に示す部分拡大斜視図である。
【図20】図20(A)は、図19のA部の拡大図、図20(B)は、図19のB部の拡大図である。
【図21】図21は、従来の燃料電池の構造を模式的に示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の薄板部材用シール材を、被装着部材である薄板部材として、レドックスフロー電池などの二次電池のセルに適用した実施例を示す部分拡大断面図、図2は、図1の薄板部材用シール材の圧縮状態を示す部分拡大断面図である。
【0044】
図1〜図2において、符号10は、全体で本発明の薄板部材用シール材を示している。
図1に示したように、本発明の薄板部材用シール材10は、環状であって、被装着部材である薄板部材、すなわち、この実施例の場合には、セルからなる薄板部材30の側部32(この実施例では、外周側の側部)に装着されるものである。
【0045】
なお、環状とは、薄板部材30の外形に合わせた形状であって、薄板部材30が円盤形状であれば円形リング状、薄板部材30が矩形形状であれば図3(A)、(B)に示したように矩形リング状などであり、特に限定されるものではない。
【0046】
なお、説明の便宜上、セルからなる薄板部材30に備えられている正極電極、正極セル、負極電極、負極セル、ならびに、イオンが通過できる隔膜などの構成を省略して示している。
【0047】
この薄板部材用シール材10は、図1に示したように、断面が略矩形形状の側部シール本体部12を備えている。この側部シール本体部12の内周側の端部の厚さ方向の両端14から、二股状に分岐して、薄板部材30の表裏面にそれぞれ配置される、一対のリップ形状の脚シール部16が延設されている。
【0048】
なお、これらの脚シール部16の分岐位置としては、薄板部材30の厚さに合わせて、適宜変更することができる。
また、この実施例の場合には、図1に示したように、これらの脚シール部16が、所定の角度α開いた形状となっているが、これは、薄板部材用シール材10の寸法が小さい場合、金型から、脚シール部16が抜けにくいために、金型から抜きやすくするための設計上の形状である。従って、このαの角度は、特に限定されるものではなく、薄板部材用シール材10の寸法に応じて適宜変更すれば良い。
【0049】
従って、薄板部材用シール材10の寸法がある程度大きい場合には、図4に示したように、これらの脚シール部16を、略平行に二股状に分岐することも可能である。
また、図1に示したように、側部シール本体部12の径方向の幅L1、脚シール部16の分岐長さL2、脚シール部16の本体部16aの厚さL3、側部シール本体部12の厚さL4としては、薄板部材30の種類、寸法などに応じて適宜変更することができ、特に限定されるものではないが、例えば、シール性を考慮すれば、下記のように設定するのが望ましい。
・L1について
L1≧L3×2+薄板部材30の厚さとするのが好ましい。
また、L1をL4の0.5〜2倍とするのが望ましい。
【0050】
・L2について
1.5mm〜5.0mmとするのが好ましく、また、上下の脚シール部16の合計で、5mmとするのが望ましい。
・L3について
0.2mm〜1.0mm、より好ましくは、0.25mm〜1.0mmとするのが望ましい。但し、薄板部材30の厚さによって、適宜選択すればよく、薄い方が好ましい。
・L4について
L4=薄板部材30の厚さ+L3×2とするのが望ましい。
【0051】
さらに図示しないが、脚シール部16が、L2の3分の1の長さで、脚部側圧接シール部20が1つでも可能であり、また、脚シール部16が、L2の3分の2の長さで、脚部側圧接シール部20が2つとすることも可能である。
【0052】
また、側部シール本体部12には、表裏面に、厚さ方向外側に突設する本体側圧接シール突設部18が形成されている。すなわち、この実施例の場合には、本体側圧接シール突設部18が、径方向に一定間隔離間して配置された、複数の断面半円形状の本体側圧接シール突設部18から構成されている。
【0053】
この実施例では、表裏面それぞれ2個の本体側圧接シール突設部18、すなわち表裏面合わせて合計4個の本体側圧接シール突設部18が形成されている。
この場合、本体側圧接シール突設部18の個数、離間位置、突設寸法などは限定されるものではなく、シール性、薄板部材30の種類、寸法などに応じて適宜変更することができる。
【0054】
一方、脚シール部16には、本体部16aよりも厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20、この実施例では、複数の断面半円形状の脚部側圧接シール部20が形成されている。すなわち、この実施例の場合には、脚部側圧接シール部20が、分岐方向に一定間隔離間して配置された複数の脚部側圧接シール部20から構成されている。
【0055】
すなわち、この実施例では、表裏面の脚シール部16に、それぞれ3個の脚部側圧接シール部20、表裏面合わせて、合計6個の脚部側圧接シール部20が形成されている。
この場合、脚部側圧接シール部20の個数、離間位置、本体部16aの厚さとの比などは限定されるものではなく、シール性、薄板部材30の種類、寸法などに応じて適宜変更することができる。
【0056】
なお、本発明の薄板部材用シール材10の材質としては、特に限定されるものではなく、ある程度弾性がありシール性を付与できるものであれば、例えば、合成樹脂、ゴムなどから構成することができる。
【0057】
この場合、弾性部材であるゴムから構成されているのが望ましく、ゴムとしては、天然ゴム、例えば、EPM、EPDMなどのエチレン・プロピレンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムのいずれも使用可能である。
【0058】
また合成樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などが使用できる。
【0059】
このように構成される本発明の薄板部材用シール材10では、薄板部材30の側部32に装着して、薄板部材30の表裏面にそれぞれ一対のリップ形状の脚シール部16を配置して、図2に示したように、一対のフレーム枠24で挟持して、セルフレーム挟持体を構成して、このセルフレーム挟持体を適宜複数枚積層して、図示しないが、レドックスフロー電池を組み立てるようになっている。
【0060】
このように構成される本発明の薄板部材用シール材10によれば、図2に示したように、二股状に分岐し薄板部材30の表裏面にそれぞれ配置される一対の脚シール部16によって、薄板部材の表裏面と相手部材との間、例えば、薄板部材30を積層する場合などには、薄板部材30の間をシールすることができる。
【0061】
特に、図2の丸で囲んだ部分に示したように、脚シール部16の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20により、薄板部材30の表裏面と相手部材との間、例えば、薄板部材30を積層する場合などには、薄板部材30の間を、より確実にシールすることができる。
【0062】
一方、図2に示したように、薄板部材30の側部32に配置される側部シール本体部12によって、側部シール本体部12と相手部材との間をシールして、薄板部材30の側部32をシールすることができる。
【0063】
特に、図2に示したように、側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18によって、薄板部材30の側部32をより確実にシールすることができる。
従って、1つの薄板部材用シール材10で、一対の脚シール部16によるシールと、側部シール本体部12によるシールとの、二重のシールを確保することができる。
【0064】
これにより、シール性が極めて良好で、より薄く、数の少ないシール材で、薄板部材30の間を良好にシールすることができ、使用される装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能な薄板部材用シール材を提供することができる。
【0065】
また、薄板部材用シール材10を、この実施例のように、例えば、レドックスフロー電池、燃料電池、鉛蓄電池などの二次電池のセルなどの薄板部材に適用した場合に、一対の脚シール部16によって、セルの電解液が上下のセルの間で漏れることを防止できるとともに、側部シール本体部12によって、セルの電解液が側部から外部に漏洩することを防止できる。
【0066】
しかも、従来のようにシール溝を形成する必要がなく、シール性も良好で、装置自体のコンパクト化、軽量化が図れ、組み立ても容易であって、コストも低減可能で、しかも、セルの積層枚数も多くでき、電池容量も向上することが可能な薄板部材用シール材を提供することができる。
【0067】
さらに、薄板部材30の側部32に、側部シール本体部12を配置するとともに、薄板部材30の表裏面に、二股状に分岐した一対の脚シール部16を配置することによって、薄板部材30の側部32に薄板部材用シール材10を簡単に装着でき、この装着状態の薄板部材を部品として取り扱うことができ、組み立てなどの際の操作性に優れる。
【0068】
またこの実施例では、これらの本体側圧接シール突設部18の位置が、表裏面において合致した位置に形成されているが、図5(A)に示したように、本体側圧接シール突設部18の位置を、表裏面において異なる位置に形成することも可能である。さらにこの実施例では、表裏面に本体側圧接シール突設部18を形成したが、図5(B)、(C)に示したように、表裏面の一方側のみに本体側圧接シール突設部18を形成することもできる。
【0069】
さらにこの実施例では、本体側圧接シール突設部18の形状を断面半円形状としたが、この形状は特に限定されるものではなく、例えば図6(A)に示したように、断面矩形形状の本体側圧接シール突設部18とすることもでき、適宜変更することが可能である。
【0070】
またこの実施例では、側部シール本体部12を断面矩形形状とするとともに、本体側圧接シール突設部18を断面矩形形状としたが、図6(B)に示したように、側部シール本体部12を断面円形状として、これにシール性を付与するようにすることも可能である。
【0071】
さらにこの実施例では、本体側圧接シール突設部18は、全て同じ寸法(厚さ)としたが、図7(A)に示したように、側部シール本体部12の内径側から外径側に向けて、徐々に本体側圧接シール突設部18の大きさが小さくなるようにして、外径側の本体側圧接シール突設部18を補助シールとして機能させて、シール性を増大することも可能である。
【0072】
これとは逆に図7(B)に示したように、側部シール本体部12の内径側から外径側に向けて、徐々に本体側圧接シール突設部18の大きさが大きくなるようにして、シール性を増大することも可能である。
【0073】
またこの実施例では、これらの脚部側圧接シール部20の位置が、表裏面の脚シール部16において合致した位置に形成されているが、図8(A)に示したように、脚部側圧接シール部20の位置を、表裏面の脚シール部16において異なる位置に形成することも可能である。
【0074】
またこの実施例では、表裏面の脚シール部16にそれぞれ、脚部側圧接シール部20を設けたが、図8(B)、図8(C)に示したように、一方の脚シール部16にのみ、脚部側圧接シール部20を設けることも可能である。
【0075】
さらにこの実施例では、脚部側圧接シール部20の形状を断面半円形状としたが、この形状は特に限定されるものではなく、脚シール部16の本体部16aの厚さよりも厚くなっていれば良く、例えば、図9に示したように、断面矩形形状の脚部側圧接シール部20とすることもでき、適宜変更することが可能である。
【0076】
またこの実施例では、脚部側圧接シール部20は、図1に示したように、脚シール部16の表裏面に突設する外側突設部20aと内側突設部20bとから構成したが、図10(A)に示したように、外側突設部20aのみにすることも、図10(B)に示したように、内側突設部20bのみにすることも、図10(C)に示したように、外側突設部20aと内側突設部20bとの組み合わせにすることも可能である。
【0077】
さらには、図11(A)に示したように、一方の脚シール部16だけを外側突設部20aのみとすることも、図11(B)に示したように、一方の脚シール部16だけを内側突設部20bのみとすることも可能である。
【0078】
またこの実施例では、脚部側圧接シール部20は、全て同じ寸法(厚さ)としたが、図12(A)に示したように、脚シール部16の分岐方向の先端から基端部に向けて、徐々に脚部側圧接シール部20の大きさが小さくなるようにして、基端部側の脚部側圧接シール部20を補助シールとして機能させて、シール性を増大することも可能である。
【0079】
なお図示しないが、脚部側圧接シール部20は真ん中が小さく、外側2つが大きいものとするなど、その組み合わせが自由であることはもちろんである。
これとは逆に、図12(B)に示したように、脚シール部16の分岐方向の先端から基端部に向けて、徐々に脚部側圧接シール部20の大きさが大きくなるようにして、シール性を増大することも可能である。
【0080】
またこの実施例では、表裏面の脚シール部16の分岐長さを同じ長さとしたが、図13(A)に示したように、表裏面の脚シール部16の分岐長さを異なるようにすることもできる。
【0081】
さらに、図13(B)に示したように、薄板部材用シール材10の環状全体にわたって、脚シール部16の分岐長さを同じ長さとすることも、図13(C)に示したように、薄板部材用シール材10の環状全体にわたって、脚シール部16の分岐長さを異なるようにすることも可能である。
【0082】
図14は、本発明の装置の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
この薄板部材用シール材10は、図1に示した薄板部材用シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0083】
この実施例の薄板部材用シール材10では、脚シール部16の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20を省略するとともに、側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18を省略している。
【0084】
このように、使用条件によっては、この実施例のように、脚シール部16の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20を省略するとともに、側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18を省略しても、一対の脚シール部16によるシールと、側部シール本体部12によるシールとの、二重のシールを確保することができる。
【0085】
図15は、本発明の装置の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
この薄板部材用シール材10は、図1に示した薄板部材用シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0086】
この実施例の薄板部材用シール材10では、脚シール部16の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20を省略している。
このように、使用条件によっては、この実施例のように、脚シール部16の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20を省略しても、一対の脚シール部16によるシールと、側部シール本体部12によるシールとの、二重のシールを確保することができる。
【0087】
図16は、本発明の装置の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
この薄板部材用シール材10は、図1に示した薄板部材用シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0088】
この実施例の薄板部材用シール材10では、側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18を省略している。
このように、使用条件によっては、この実施例のように、側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18を省略しても、一対の脚シール部16によるシールと、側部シール本体部12によるシールとの、二重のシールを確保することができる。
【0089】
図17は、本発明の装置の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
この薄板部材用シール材10は、図1に示した薄板部材用シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0090】
この実施例の薄板部材用シール材10では、脚シール部16の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20を省略するとともに、脚シール部16の途中に、く字状の屈曲部34を有している。また側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18が上下にそれぞれ一つ設けられている。
【0091】
このように使用条件によっては、この実施例のように脚シール部16の途中に、く字状の屈曲部34を有することにより、薄板部材30を挟持した際に、薄板部材30に対する圧縮荷重を軽減するとともに、薄板部材30との摩擦が必要以上に大きくなりすぎてしまうことを防止できる。これにより薄板部材30が熱膨張や熱収縮を生じた際、脚シール部16を追随して挙動させることができる。
【0092】
さらに側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18が上下にそれぞれ一つ設けることにより、薄膜部材30を挟持した際に、フレーム枠24と側部シール本体部12との高いシール性を確保することができる。
【0093】
図18は、本発明の装置の別の実施例の薄板部材用シール材の断面図である。
この薄板部材用シール材10は、図1に示した薄板部材用シール材10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0094】
この実施例の薄板部材用シール材10では、脚シール部16の厚さが厚くなった脚部側圧接シール部20を省略するとともに、脚シール部16の途中に、く字状の屈曲部34を有している。また側部シール本体部12の本体側圧接シール突設部18を省略しているとともに、側端部を曲面状の形態(曲面部36)としている。
【0095】
このように使用条件によっては、この実施例のように脚シール部16の途中に、く字状の屈曲部34を有することにより、薄板部材30を挟持した際に、薄板部材30に対する圧縮荷重を軽減するとともに、薄板部材30との摩擦が必要以上に大きくなりすぎてしまうことを防止できる。これにより薄板部材30が熱膨張や熱収縮を生じた際、脚シール部16を追随して挙動させることができる。
【0096】
さらに側部シール本体部12の側端部を曲面状の形態(曲面部36)とすることにより、薄板部材30を挟持し、フレーム枠24内に収める際における摺動抵抗を下げることができ、一対の脚シール部16によるシールと、側部シール本体部12によるシールとの、二重のシールを確保することができる。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば上記の実施例では、本発明の薄板部材用シール材10は環状であって、薄板部材30の外周側の側部に装着するようにしたが、薄板部材30がリング形状である場合には、薄板部材30の内周側の側部に、薄板部材用シール材10を装着することも可能である。
【0098】
さらに上記の実施例では、本発明の薄板部材用シール材10を、薄板部材30としてレドックスフロー電池などの二次電池のセルに適用したが、何らこれに限定されるものではなく、フィルターなどの薄板部材の間をシールするための薄板部材用シール材としても適用することができるなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、例えば、レドックスフロー電池、燃料電池、鉛蓄電池などの二次電池のセル、フィルターなどの薄板部材の間をシールするための薄板部材用シール材に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 薄板部材用シール材
12 側部シール本体部
14 両端
16 脚シール部
16a 本体部
18 本体側圧接シール突設部
20 脚部側圧接シール部
20a 外側突設部
20b 内側突設部
24 フレーム枠
30 薄板部材
32 側部
34 屈曲部
36 曲面部
100 燃料電池
102 正極電極
104 正極セル
106 負極電極
108 負極セル
110 隔膜
112 セル
114 セルフレーム枠
118 内側シール溝
120 外側シール溝
122 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板部材の間をシールするための環状の薄板部材用シール材であって、
前記薄板部材の側部に配置される側部シール本体部と、
前記側部シール本体部から二股状に分岐して、前記薄板部材の表裏面にそれぞれ配置される一対の脚シール部と、
を備えることを特徴とする薄板部材用シール材。
【請求項2】
前記側部シール本体部には、表裏面の少なくとも一方側に、厚さ方向外側に突設する本体側圧接シール突設部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板部材用シール材。
【請求項3】
前記本体側圧接シール突設部が、径方向に一定間隔離間して配置された複数の本体側圧接シール突設部から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の薄板部材用シール材。
【請求項4】
前記本体側圧接シール突設部の位置が、表裏面において合致した位置に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の薄板部材用シール材。
【請求項5】
前記脚シール部のうち少なくとも一方に、厚さが厚くなった脚部側圧接シール部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄板部材用シール材。
【請求項6】
前記脚部側圧接シール部が、分岐方向に一定間隔離間して配置された複数の脚部側圧接シール部から構成されていることを特徴とする請求項5に記載の薄板部材用シール材。
【請求項7】
前記脚部側圧接シール部の位置が、一対の脚シール部において合致した位置に形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の薄板部材用シール材。
【請求項8】
前記脚シール部に、外方に曲部が突出して成る屈曲部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の薄板部材用シール材。
【請求項9】
前記側部シール本体部には、側端部に曲面部を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の薄板部材用シール材。
【請求項10】
前記薄板部材が、電池用部材であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の薄板部材用シール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−215291(P2012−215291A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−57048(P2012−57048)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】