説明

薄物基板材の搬送装置

【課題】第1に、基板材に湾曲凹凸形状が付与されて,腰ができ強度が向上し、もって搬送トラブルが解消されて、安定搬送が実現され、第2に、基板材が前後の搬送ローラー間をスムーズに移って行き、この面からも搬送トラブルが解消されて、安定搬送が実現される、薄物基板材の搬送装置を提案する。
【解決手段】この搬送装置10は、薄物回路基板の製造工程中、基板材Aを水平搬送しつつ処理液を噴射して表面処理する、表面処理装置において使用される。そして、径大部14と径小部15とが徐々に繰り返して形成された、ウェーブ状の搬送ローラー11が採用されている。この搬送ローラー11は、上下対をなして接触回転すると共に、前後の搬送方向Dに僅かな相互隙間を存しつつ、多数列設されており、上下の搬送ローラー11間や前後の搬送ローラー11間では、径大部14と径小部15とが対応位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄物基板材の搬送装置に関する。すなわち、薄物回路基板の製造工程で使用され、その基板材を搬送しつつ表面処理する、表面処理装置の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
電子機器の高性能化,高機能化,小型軽量化に伴い、プリント配線基板等の回路基板も、高精度化,ファイン化,極薄化,多様化が進み、形成される回路の高密度化,微細化が著しい。例えば、絶縁層の肉厚が10μm程度で回路の肉厚も10μm程度のプリント配線基板も出現する等、極薄化,薄物化が進展し、腰が弱く柔らかいフレキシブル化が著しい。
そして、このような回路基板の製造工程では、各工程において、それぞれ表面処理装置が用いられており、表面処理装置では、その搬送装置にて搬送される基板材に対し、各々処理液が噴射され、もって、基板材の薬液処理や洗浄処理が行われている。例えば基板材について、現像液,エッチング液,剥離液,洗浄液等の処理液が順次噴射され、もって現像,エッチング,剥膜,洗浄等の表面処理が順次実施されて、回路が形成され、回路基板が製造されている。
【0003】
《従来技術》
図5,図6は、この種従来例の説明に供し、図5は、表面処理装置全体の正断面説明図、図6は、その搬送装置等の側面概略図であり、図6の(1)図は全体を示し、(2)図はその1例の要部を、(3)図は他の例の要部を示す。
同図にも示したように、現像装置,エッチング装置,剥離装置,洗浄装置等、この種の表面処理装置1では、基板材Aが、搬送装置2の上下の搬送ローラー3に挟まれて、水平搬送されつつ、スプレーノズル4から処理液Bが噴射され、もって、所定の薬液処理や洗浄処理等の表面処理が行われて、回路が形成され、回路基板が製造されていた。
そして、このような表面処理装置1の搬送装置2の搬送ローラー3としては、従来よりストレートローラーが使用されており、このような搬送ローラー3が、上下方向Cに上下対をなすと共に、前後の搬送方向Dに多数列設されており、基板材Aを上下から挟んで接触回転し、もって基板材Aを水平搬送していた。又、スプレーノズル4は、スプレーゾーンEにおいて、搬送される基板材Aの上下に対向位置して、処理液Bを噴射していた。
なお図5中、Fは、搬送方法Dと直角の幅方向を示し、5は表面処理装置1のチャンバー、6は処理液Bの液槽、7は配管、8はポンプである。
【0004】
《先行技術文献情報》
このような従来例としては、例えば次の特許文献1中に示されたものが、挙げられる。
【特許文献1】特開2002−009420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《問題点について》
ところで、このような従来例の表面処理装置1の搬送装置2については、次の問題が指摘されていた。
すなわち、この種の基板材Aは、前述したように極薄化が著しく、腰が弱く軟らかい。そして、このような基板材Aに対して、処理液Bが噴射圧や重量を伴って噴射される。そこで、基板材Aを搬送装置2の搬送ローラー3にて水平搬送しつつ、スプレーノズル4から処理液Bを噴射すると、基板材Aが搬送ローラー3にて安定保持されなくなり、各種の搬送トラブルGが多発し、問題となっていた。
すなわち、基板材Aについて、搬送ローラー3への付着,巻付き,巻込み,吸い付きや、撓み,めくれ,しわ,湾曲,折曲,折り目,腰折れや、スリップ,引掛かり,垂れ下がり,落下や、擦り傷,損傷等の搬送トラブルGが、多発していた。このように、従来例のこの種搬送装置2では、安定搬送が困難化することが多々あり、高精度が要求される基板材Aの表面処理に支障が生じる事態も発生する等、基板材Aの安定保持,安定搬送が切望されていた。
特に、極薄化が顕著な基板材Aについては、安定保持,安定搬送が殆ど困難視される状況にある一方、極薄化のニーズは最近ますます高まってきている。
【0006】
《本発明について》
本発明に係る薄物基板材の搬送装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべく、発明者の鋭意研究努力の結果なされたものである。
そして本発明は、第1に、基板材に腰ができ強度が付与され、もって安定保持,安定搬送が実現され、第2に、基板材が前後の搬送ローラー間をスムーズに移って行き、この面からも安定保持,安定搬送が実現される、薄物基板材の搬送装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず請求項1については、次のとおり。
請求項1の薄物基板材の搬送装置は、薄物回路基板の製造工程中、基板材を搬送しつつ表面処理する表面処理装置において使用される。
そして、径大部と径小部とが徐々に繰り返して形成された、ウェーブ状の搬送ローラーが用いられていること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2の薄物基板材の搬送装置では、請求項1において、該搬送ローラーは、軸方向に径が、大から小そして小から大へと繰り返しつつ、なだらかなテ−パ状に徐々に変化し、該径大部と径小部とが、所定のピッチと高さで連続的に多数形成されていること、を特徴とする。
【0008】
請求項3については、次のとおり。請求項3の薄物基板材の搬送装置では、請求項2において、該基板材は、肉厚が極薄で柔軟であると共に、該搬送ローラーにて水平搬送される。そして該表面処理は、各スプレーノズルから、薬液又は洗浄液よりなる処理液を、該基板材に対して噴射することにより行われること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4の薄物基板材の搬送装置では、請求項3において、該搬送ローラーは、上下対をなし接触回転すると共に、前後の搬送方向に僅かな相互隙間を存しつつ多数列設されている。そして、上下の該搬送ローラー間では、該径大部と径小部とが対応位置し、前後の該搬送ローラー間でも、該径大部と径小部とが順次対応位置していること、を特徴とする。
【0009】
請求項5については、次のとおり。請求項5の薄物基板材の搬送装置では、請求項4において、上下の該搬送ローラーは、該径大部と径小部間に該基板材を挟み込みつつ搬送し、かつ、前後の該搬送ローラーは、該径大部と径小部間で該基板材を受け渡しつつ搬送する。
そして該基板材は、これらにより凹凸が湾曲状に形成され、その分、腰ができ強度が付与されつつ搬送されること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。請求項6の薄物基板材の搬送装置では、請求項4において、前後の該搬送ローラーは、該径大部と径小部間で該基板材を受け渡しつつ搬送する。そして該基板材は、前後の該径大部と径小部間の外周回転速度の差と、形状的相互食い込みとを利用して、前後の該搬送ローラー間において、スムーズに受け渡され乗り移って搬送されること、を特徴とする。
【0010】
《作用等》
本発明の薄物基板材の搬送装置は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この搬送装置は、薄物回路基板の製造工程中、薬液処理工程や洗浄工程の表面処理装置において、使用される。
(2)そして基板材は、搬送装置の搬送ローラーにて搬送されつつ、スプレーノズルから、薬液又は洗浄液よりなる処理液が噴射されて、表面処理される。
(3)搬送装置の搬送ローラーは、上下対をなし接触回転すると共に、前後の搬送方向に僅かな相互隙間を存しつつ、多数列設されている。
(4)そして、この搬送装置では、ウェーブ状の搬送ローラーが採用されている。すなわち、この搬送ローラーは、軸方向に径が大から小そして小から大へと繰り返し、なだらかなテ−パ状に徐々に変化しており、もって径大部と径小部が所定のピッチと高さで連続的に多数形成されている。
(5)そして、上下の搬送ローラー間では、径大部と径小部が対応位置し、前後の搬送ローラー間でも、径大部と径小部が順次対応位置しており、上下の搬送ローラーは、径大部と径小部間に基板材を挟み込みつつ搬送し、前後の搬送ローラーは、径大部と径小部間で基板材を受け渡しつつ搬送する。
【0011】
(6)さてそこで、この搬送装置で搬送される基板材は、上下の搬送ローラーの径大部と径小部間に挟み込まれることにより、左右の幅方向に一定周期のなだらかな湾曲凹凸形状が付与され、もって腰ができ強度が向上する。更に湾曲形状は、前後の搬送ローラーの径大部と径小部によって、前後の搬送方向にも追加的に形成され、この面からも基板材の強度が向上する。
基板材は、極薄化が著しく柔軟であると共に、処理液が噴射圧や重量を伴って噴射されるが、これに十分に耐えることができ、安定保持,安定搬送される。
(7)更に、この搬送装置では、搬送ローラーの径大部の外周回転速度が径小部より速いので、前後の搬送ローラー間において、基板材を、径小部から径大部へと呼び込むようになる。更に、前後の搬送ローラー間では、径大部と径小部間が相互に食い込んでいる。これらにより、前後の搬送ローラー間で、基板材が確実かつ容易に乗り移り、スムーズに搬送されるようになる。
(8)さてそこで、本発明の薄物基板材の搬送装置は、次の第1,第2の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
《第1の効果》
第1に、基板材に腰ができ強度が付与され、もって搬送トラブルが解消されて、安定保持,安定搬送が実現される。
すなわち、本発明の薄物基板材の搬送装置では、ウェーブ状の搬送ローラーを採用したことにより、基板材に湾曲凹凸形状が付与され、もって搬送される基板材に腰ができ、強度が向上し、耐荷重性が増強される。
基板材は、極薄化が著しく軟らくフレキシブルであると共に、処理液が圧や重量を伴って噴射されるが、これに十分耐えることができ、安定的に保持され、安定的に搬送されるようになる。
そこで、前述したこの種従来例において指摘されていた、搬送中の基板材の搬送ローラーへの付着,巻付き,巻込み,吸い付きや、撓み,めくれ,しわ,湾曲,折曲,折り目,腰折れや、スリップ,引掛かり,垂れ下がり,落下や、擦り傷,損傷等の発生は、確実に防止される。基板材が搬送トラブルなく搬送され、精度の高い表面処理が実現されるようになる。
【0013】
《第2の効果》
第2に、基板材が前後の搬送ローラー間を、スムーズに移って行き、この面からも、安定保持,安定搬送が実現される。
すなわち、本発明の薄物基板材の搬送装置では、ウェーブ状の搬送ローラーを採用したことにより、前後の搬送ローラー間において、その径小部から径大部へと、基板材がスムーズに受け渡され乗り移って行くようになる。
そこで、この面からも、前述したこの種従来例において指摘されていた基板材の搬送トラブル発生が確実に防止され、精度の高い表面処理が実現されるようになる。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
《図面について》
以下、本発明に係る薄物基板材の搬送装置を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3,図4は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。
そして、図1の(1)図は、搬送装置の搬送ローラーの正面図(平面図)、(2)図は、搬送装置の正面図、図2は、搬送装置の要部の平面図である。図3は、表面処理装置全体の正断面説明図、図4は、側断面説明図である。
なお図7は、回路基板(基板材)の模式化した平面説明図である。
【0015】
《回路基板Hについて》
この基板材Aの表面処理装置9の搬送装置10は、回路基板Hの製造工程で使用される。そこでまず、図7を参照して、回路基板Hの概略について説明しておく。
回路基板Hは、AV機器,パソコン,携帯電話,デジカメ,その他各種の電子機器において、電気的接続用に用いられており、部品間を接続するための回路Jパターンを、絶縁層の外表面や内部に形成してなる。
そして回路基板Hは、片面基板と両面基板とに分けられる他、多層基板(含、最近のビルドアップ法のもの)、その他各種のものがあり、又、硬質のリジット系基板とフィルム状のフレキシブル系基板とにも、分けられる。フレキシブル系基板の絶縁層は、ポリイミド製フィルム、その他の樹脂製フィルムよりなる。
又、このような回路基板Hの一環として、IC,LSI素子,受動部品,駆動部品,コンデンサー等々の半導体部品が、回路Jと一体的に組み込まれたモジュール基板(半導体一体型のパッケージ基板)や、ガラスベースに回路Jと共に半導体部品が埋め込まれたガラス基板、つまりプラズマディスプレイPDP用のガラス基板や液晶LCD用のガラス基板、更にはCSP,PBGA等も出現している。勿論、本明細書において回路基板Hとは、従来よりのプリント配線基板の外、このようなものも広く包含する。
【0016】
そして回路基板Hは、電子機器の高性能化,高機能化,小型軽量化に伴い、高精度化,ファイン化,そして薄物化,極薄化,柔軟化,フレキシブル化,更には多層化,多様化等が進み、外表面(表面や裏面)に形成される回路J、更には内部に形成される回路Jの高密度化,微細化が著しい。
回路基板H例えばプリント配線基板は、製造に際しての1枚の縦横のカットサイズが、例えば500mm×500mm程度よりなる。肉厚は、絶縁層(コア材)部分が、従来の1.6mmから1.0mm〜60μm程度、昨今では50μmから10μm前後まで、極薄化されている。回路J部分(銅箔部分)の肉厚も、75μm〜35μm、昨今では16μm〜10μm前後まで、極薄化されている。
多層基板の場合でも、全体の肉厚が1.0mm〜0.4mm程度まで、極薄化されつつある。回路J幅や回路J間スペースも、30μm〜15μm程度、昨今では10μm前後と微細化傾向にある。
回路基板Hは、概略このようになっている。
【0017】
《回路基板Hの製造方法の1例について》
次に、この基板材Aの表面処理装置9そして搬送装置10が使用される、回路基板Hの製造方法について、図7等を参照して説明する。まず、第1例の製造方法について述べる。この製造方法において、回路基板H例えばプリント配線基板は、次のステップを辿って製造される。
最初に、ガラスクロス製,セラミックス製,又はポリイミド製,その他のフィルム状樹脂製の絶縁層(コア材)の外表面に、銅箔が熱プレス等により張り付けられた、銅張り積層板たる基板材Aが準備される。
そして、このように準備された基板材Aについて、張り付けられた銅箔表面を粗化する表面粗化処理(ソフトエッチング)が行われた後、短尺のワークサイズの各葉に切断される。表面粗化処理は、従来は、機械研磨によって行われていたが、最近は、表面粗化液よりなる処理液Bの噴射によって行われることが多い。
そして多くの場合、スルホール用の孔あけ加工が、レーザ等を使用して実施される。スルホールは、基板材A(回路基板H)の両外表面間の微細な貫通孔よりなり、1枚について、極小径のものが数百個以上形成され、その径は、0.5mm〜0.2mm程度以下のものが多くなっている。そしてスルホールは、両外表面の回路J(銅箔)間や多層基板の回路J(銅箔)間の導通接続用や、回路Jに実装される半導体部品の取り付け用として使用される。
なお最近は、孔あけ加工を要するスルホールに代えて、小突起状・略円錐台状の接点たるバンプを形成し、もって多層基板等について、このバンプにより、スルホールと同様の機能を実現する技術も開発されている。バンプは、回路Jに準じ、現像工程,エッチング工程,剥膜工程等の表面処理工程を辿って、製造される。
【0018】
さてしかる後、基板材Aの銅箔の外表面に、感光性のレジストが膜状に塗布又は張り付けられる。それから、回路Jのネガフィルムつまり予め回路J設計された回路J写真を当て、露光することにより、外表面のレジストは、露光されて硬化した回路J形成部分を残し、その他の不要部分が、処理液Bたるアルカリ性の現像液の噴射により、溶解除去される。
それから、このような基板材Aの銅箔は、レジストが硬化して被覆された回路J形成部分(保護膜部分)を残し、現像によりレジストが溶解除去されて露出した不要部分が、処理液Bたるエッチング液(塩化第二銅,塩化第二鉄,その他の腐食液)の噴射により、溶解除去・エッチングされる。それから、残っていた回路J形成部分のレジストが、処理液Bたるアルカリ性の剥離液の噴射により剥膜除去され、もって、残った回路J形成部分の銅箔にて、基板材Aの外表面に、所定導体パターンの回路Jが形成され、回路基板Hが製造される。
又、上述した現像工程,エッチング工程,剥膜工程には、それぞれ後処理用に、又は剥膜工程の後にまとめて後処理用に、処理液Bとして水洗液,中和剤液,その他の洗浄液を噴射する、洗浄工程が付設されている。この洗浄工程では、基板材Aの外表面(含むスルホール内等)に付着していた現像液,エッチング液,剥離液等の処理液Bが、洗浄,除去される。
更に、洗浄工程の後には、乾燥工程が付設されている。すなわち、洗浄工程で洗浄された基板材Aの外表面(含むスルホール内等)には、処理液Bである水洗液その他の洗浄液や,それらの水分が付着しているので、酸化防止等のためこれらを除去すべく、事後直ちに乾燥工程において乾燥処理される。
第1例の製造方法は、このようなウェットプロセス法よりなる。第1例の製造方法は、このようになっている。
【0019】
《回路基板Hの製造方法の他の例について》
次に、第2例の製造方法について述べる。回路基板H例えばプリント配線基板の製造方法としては、上述した第1例のウェットプロセス法が代表的であるが、第2例のセミアディティブ法も多用されつつある。
セミアディティブ法では、まず、予めスルホールが形成された基板材Aの外表面に、無電解銅メッキが施される。→それから、この無電解銅メッキに、感光性のレジストを膜状に塗布又は張り付けた後、→回路Jフィルムである回路J写真を当て、露光する。→そしてレジストは、露光されて硬化した部分を残し、他の部分つまり回路J形成部分が、処理液Bたる現像液の噴射により溶解除去される。
しかる後、→回路J形成部分、つまり現像によりレジストが溶解除去されたメッキパターン部分、つまり無電解銅メッキが露出した部分に対し、電解銅メッキが施されて、→回路Jが形成される。→なお、残っていた硬化した回路J形成部分以外のレジストは、処理液Bたる剥離液の噴射により剥膜除去され、→露出した無電解銅メッキが、処理液Bたるエッチング液の噴射によりクイックエッチングされて、融解除去される。→なお、各工程の後処理用として、前述した所に準じ、洗浄液を処理液Bとした洗浄工程や、乾燥工程が付設される。
第2例のセミアディティブ法では、このようにして、電解銅メッキにて回路Jが形成され、もって回路基板Hが製造される。第2例の製造方法は、このようになっている。
ところで、プリント配線基板その他の回路基板Hの製造方法は、最近ますます多様化しつつあり、上述した第1例,第2例以外にも、各種方法が開発,使用されている。本発明は勿論、このような各種の回路基板Hの製造方法にも、適用される。
回路基板Hの製造方法は、このようになっている。
【0020】
《表面処理装置9について》
まず、本発明の基板材Aの搬送装置10が使用される表面処理装置9について、図3,図4等を参照して説明する。この表面処理装置9は、回路基板Hの製造工程で使用され、基板材Aを搬送しつつ表面処理する。
すなわち表面処理装置9は、回路基板Hの製造工程の例えば表面粗化工程,その他の前処理工程,現像工程,エッチング工程,剥膜工程,洗浄工程,その他の後処理工程等において、例えば、表面粗化装置,現像装置,エッチング装置,剥離装置,又は洗浄装置として使用される。そして、搬送装置10で搬送される基板材Aに対し、それぞれ例えば表面粗化液,現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液等の処理液Bを噴射して、基板材Aを薬液処理,洗浄処理等、表面処理する。
そして表面処理装置9は、処理室であるチャンバー5内に、基板材Aを搬送方向Dに搬送するコンベヤである搬送装置10と、搬送される基板材Aに処理液Bを噴射するスプレーノズル4と、を有している。
【0021】
スプレーノズル4は、スプレーゾーンEにおいて、搬送される基板材Aに対向配設されており、例えば表面粗化液,現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液等の処理液Bを、噴射する。
すなわちスプレーノズル4は、搬送装置10の搬送ローラー11にて水平搬送される基板材Aの真上や真下に、それぞれ上下間隔を存すると共に、前後の搬送方向Dと左右の幅方向Fにわたって、所定ピッチ間隔を置きつつ多数配列されている。なお、スプレーノズル4が配設されたスプレーゾーンEにおいては、そこだけ、搬送ローラー11の配設が欠如せしめられている。
処理液Bは、液槽6からポンプ8や配管7を介し、各スプレーノズル4に圧送されて、基板材Aに噴射される。そして、基板材Aの外表面を、幅方向Fの左方向又は右方向に向けて流れつつ表面処理した後、基板材Aの左右両サイドから流下されて、液槽6に回収され、事後も循環使用される。
表面処理装置9は、このようになっている。
【0022】
《搬送装置10について》
以下、このように表面処理装置9で使用される搬送装置10について、図1,図2,図3,図4等を参照して、説明する。
まず、この基板材Aの搬送装置10は、基板材Aの表面処理装置9のチャンバー5内に配設され、多数の搬送ローラー11を備えている。そして搬送ローラー11は、上下方向Cに上下対をなし、接触回転すべく組み合わせて配設されると共に、前後の搬送方向Dに僅かな相互前後隙間を存しつつ、多数組み合わせて列設されている。
すなわち搬送ローラー11は、接触回転する上下相互間に基板材Aを挟んで圧接保持しつつ(除くスプレーゾーンE)、基板材Aを搬送方向Dに搬送し、上下共に前後の搬送方向Dに向け多数列設されている(除くスプレーゾーンE)。
【0023】
そして、この搬送装置10において、上位の搬送ローラー11および下位の搬送ローラー11は、その軸12に対し取付け固定された駆動ローラーよりなる。
すなわち搬送ローラー11は、取付け固定された軸12、そして駆動ギヤ等を介し、モータ等の駆動機構に接続されており、回転駆動される。図1,図2中の13は、コンベヤフレームであり、搬送ローラー11の軸12を左右で回動自在に保持する。
なお、基板材Aの搬送形態としては、図示の水平搬送が代表的であるが、傾斜搬送や縦搬送も考えられる。すなわち図示例では、搬送装置10の搬送ローラー11は、その軸12を左右の幅方向Fに向けて水平配設されているが、傾斜配設や縦配設も可能であり、もって基板材Aが、水平姿勢の水平搬送以外に、水平から傾斜した姿勢での傾斜搬送や、縦姿勢での縦搬送される場合もある。
勿論、この傾斜搬送や縦搬送の場合において、スプレーノズル4も、基板材Aに対し、上下対向姿勢から傾斜した姿勢や左右に配設される。
搬送装置10は、概略このようになっている。
【0024】
《ウェーブ状の搬送ローラー11について》
そして、この搬送装置10では、ウェーブ状の搬送ローラー11が採用されている。この搬送ローラー11について、特に図1,図2、更には図3,図4を参照して説明する。
ウェーブ状の搬送ローラー11は、径大部14と径小部15とが、徐々に繰り返して形成されてなる。すなわち搬送ローラー11は、左右の幅方向Fつまり軸12方向に沿って、軸方向12と直角方向(前後の搬送方向D)の径が、大から小そして小から大へと繰り返しなだらかなテーパ状に徐々に変化し、もって径大部14と径小部15とが、所定のピッチと高さで連続的に多数形成されている。
そして図示のように、上下の搬送ローラー11間では、径大部14と径小部15とが対応位置し、前後の搬送ローラー11間でも、径大部14と径小部15とが順次対応位置している。
【0025】
このような搬送ローラー11について、更に詳述する。搬送ローラー11は、例えば、軸12を左右に取った例えば円錐台の反転繰り返し形状よりなる、とも表現され、又、その外表面に着目すると、一定周期で高くそして低く凹凸が繰り返されている、とも表現される。そして、その傾斜は、なだらかに徐々に形成されており、例えば水平に対し1,2度程度の傾斜角から、〜14,15度程度の間の傾斜角となっている。代表的には、3,4度程度の傾斜角となっている。
もって、この搬送ローラー11は、径大部14と径小部15とが、軸12方向に順次繰り返し、所定ピッチと高さで形成されている。
そして、上下方向Cの上位の搬送ローラー11と下位の搬送ローラー11間では、上位の径大部14と下位の径小部15とが対応位置すべく配設されると共に、上位の径小部15と下位の径大部14とが対応位置すべく配設されている(除くスプレーゾーンE)。
又、前後の搬送方向Dに沿った前側(上流側)の搬送ローラー11と、後側(下流側)の搬送ローラー11間では、前側の径大部14と後側の径小部15とが対応位置すべく配設されると共に、前側の径小部15と後側の径大部14とが対応位置すべく配設されている。
【0026】
さてそこで、この搬送装置10において、上下の搬送ローラー11は、径大部14と径小部15間に基板材Aを挟みつつ搬送し、前後の搬送ローラー11は、径大部14と径状部14間で基板材Aを受け渡しつつ搬送する。
もって基板材Aは、これらにより、まず、僅かな凹凸が湾曲状に形成され、その分、腰ができ強度が付与されつつ搬送される。すなわち基板材Aは、上下方向Cについて観察すると、上下の搬送ローラー11間に挟み込まれることにより、左右の軸方向Fに向け、順次所定のピッチと僅かな高低で凹凸が形成される。更に、このような上下の搬送ローラー11で、前後の搬送方向Dに受け渡されることにより、前後の搬送方向Dに向けても、順次所定ピッチと高さで凹凸が形成される。
【0027】
又、前後の搬送ローラー11間において、基板材Aは、前後の径大部14と径小部15間の外周回転速度の差と、形状的相互食い込みとを利用して、スムーズに受け渡され乗り移って搬送される。
すなわち基板材Aは、前後の搬送方向Dについて観察すると、搬送ローラー11の外周回転速度がより遅い径小部15から、より速い径大部14へと受け渡される個所において、前者から後者に向け積極的に呼び込まれるようになる。又、搬送ローラー11は、径大部14が相手の径小部15に食い込み、径小部15が相手の径大部14にて食い込んでいる。これらにより、基板材Aがスムーズに前後の搬送ローラー11間で受け渡されて、乗り移って行く。
ウェーブ状の搬送ローラー11は、このようになっている。
【0028】
《作用等について》
本発明に係る薄物の基板材Aの搬送装置10は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)この搬送装置10は、プリント配線基板その他の薄物の回路基板Hの製造工程中、各種の薬液処理工程や洗浄工程等の表面処理工程において、使用される。例えば、その表面粗化装置,現像装置,エッチング装置,剥離装置,洗浄装置等の表面処理装置9において、使用される(図7,図3,図4等を参照)。
【0029】
(2)そして基板材Aは、表面処理装置9のチャンバー5内を、搬送装置10の搬送ローラー11にて水平搬送されつつ、各スプレーノズル4から、薬液又は洗浄液よりなる処理液Bが噴射されて、表面処理される。
すなわち、肉厚が極薄であり柔軟でフレキシブルな基板材Aは、表面粗化装置,現像装置,エッチング装置,剥離装置,洗浄装置等の表面処理装置9において、水平搬送されつつ、表面粗化液,現像液,エッチング液,剥離液,洗浄液等の処理液Bが、それぞれ噴射され、もって薬液処理や洗浄処理される(図3,図4を参照)。
【0030】
(3)この表面処理装置9の搬送装置10の搬送ローラー11は、上下方向Cに、上下対をなし接触回転すると共に、前後の搬送方向Dに、僅かな相互隙間を存しつつ多数列設されている(図3,図4を参照)。
【0031】
(4)そして、この搬送装置10では、径大部14と径小部15とが徐々に繰り返して形成された、ウェーブ状の搬送ローラー11が採用されている。
すなわち、この搬送ローラー11は、軸12方向に沿って径が、大から小そして小から大へと繰り返し、なだらかなテ−パ状に徐々に変化しており、径大部14と径小部15つまりなだらかな凹凸が、所定のピッチと高さで連続的に多数形成されている(図1,図2を参照)。
【0032】
(5)そして、この搬送装置10において、上下方向Cの搬送ローラー11間では、径大部14と径小部15とが対応位置し(図1の(2)図を参照)、又、前後の搬送方向Dの搬送ローラー11間でも、径大部14と径小部15とが順次対応位置している(図2を参照)。
もって、上下の搬送ローラー11は、対応位置した径大部14と径小部15間に、基板材Aを挟み込みつつ搬送し、前後の搬送ローラー11は、対応位置した径大部14と径小部15間で、基板材Aを受け渡しつつ搬送する。
【0033】
(6)これらにより、この搬送装置10で搬送される基板材Aは、僅かな凹凸が左右に湾曲状に形成され、その分、腰ができ強度が付与されつつ搬送される。
すなわち、基板材Aは、搬送装置10の上下で対応位置する搬送ローラー11の各径大部14と径小部15間、つまり形成されたなだらかな各凹凸面間に、挟み込まれることにより、→左右の幅方向Fに一定周期の略波状のなだらかな湾曲凹凸形状が、付与される(図1の(2)図,図3を参照)。→そして基板材Aは、この湾曲凹凸形状の付与により、フラットな平面形状のままで搬送される場合に比し(図5を参照)、腰ができ強度が向上し、耐荷重性が大きく増強される。
基板材Aは、極薄化傾向が著しく柔軟でフレキシブルであると共に、処理液Bが噴射圧や重量を伴って噴射されるが(例えば噴射圧31kg)、これに十分に耐え得る強度を備えるようになる。もって基板材Aは、安定的に保持され、搬送トラブルG(図6を参照)なく安定的に搬送される。
なお、このような湾曲凹凸形状は、更に前後で対応位置する搬送ローラー11の各径大部14と径小部15との組合せによって、上述した左右の幅方向Fに加え、前後の搬送方向Dにも追加的に形成され、→この面からも、上述した基板材Aの強度が向上が、一層促進される。
【0034】
(7)更に、この搬送装置10で搬送される基板材Aは、前後の搬送ローラー10間において、対応位置する各径小部14と径大部15間の外周回転速度の差と、形状的相互食い込みとを利用して、スムーズに受け渡され乗り移って、搬送される(図2,図4を参照)。
すなわち、この搬送装置10において、搬送ローラー11は、径小部15より径大部14の方が外周回転速度が速いので、→搬送される基板材Aを、前方の搬送ローラー11の径小部15から、後方の搬送ローラー11の径大部14へと受け渡す各個所においては、基板材Aを、外周回転速度が遅い径小部15(前方)から、外周回転速度が速い径大部14(後方)の方へと、呼び込むようになる。
→もって、搬送される基板材Aは、このような各個所において、パスする径小部15(前方)の搬送ローラー11から、キャッチする径大部14(後方)の搬送ローラー11へと、乗り移りが促進される。→そこで基板材Aは、前後の搬送ローラー11間で、確実かつ容易に乗り移り、スムーズに搬送されるようになり、この面からも、搬送トラブルG(図6を参照)は解消される。
更に、前後の搬送ローラー11間においては、対応位置する各径大部14と径小部15間の形状的相互食い込みによっても、→基板材Aのこのような乗り移りが、確実化,容易化され、促進される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る薄物基板材の搬送装置について、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、搬送装置の搬送ローラーの正面図(平面図)(2)図は、搬送装置の正面図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、搬送装置の要部の平面図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、表面処理装置全体の正断面説明図である。
【図4】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、表面処理装置全体の側断面説明図である。
【図5】この種従来例の説明に供し、表面処理装置全体の正断面説明図である。
【図6】この種従来例の説明に供し、搬送装置等の側面概略図であり、(1)図は、全体を示し、(2)図は、その1例の要部を、(3)図は、他の例の要部を示す。
【図7】回路基板(基板材)の模式化した平面説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 表面処理装置(従来例)
2 搬送装置(従来例)
3 搬送ローラー(従来例)
4 スプレーノズル
5 チャンバー
6 液槽
7 配管
8 ポンプ
9 表面処理装置(本発明)
10 搬送装置(本発明)
11 搬送ローラー
12 軸
13 コンベヤフレーム
14 径大部
15 径小部
A 基板材
B 処理液
C 上下方向
D 搬送方向
E スプレーゾーン
F 幅方向
G 搬送トラブル
H 回路基板
J 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄物回路基板の製造工程中、基板材を搬送しつつ表面処理する表面処理装置において使用される、搬送装置であって、
径大部と径小部とが徐々に繰り返して形成された、ウェーブ状の搬送ローラーが用いられていること、を特徴とする薄物基板材の搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載した薄物基板材の搬送装置において、該搬送ローラーは、軸方向に径が、大から小そして小から大へと繰り返しつつ、なだらかなテ−パ状に徐々に変化し、該径大部と径小部とが、所定のピッチと高さで連続的に多数形成されていること、を特徴とする薄物基板材の搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載した薄物基板材の搬送装置において、該基板材は、肉厚が極薄で柔軟であると共に、該搬送ローラーにて水平搬送され、
該表面処理は、各スプレーノズルから、薬液又は洗浄液よりなる処理液を、該基板材に対して噴射することにより行われること、を特徴とする薄物基板材の搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載した薄物基板材の搬送装置において、該搬送ローラーは、上下対をなし接触回転すると共に、前後の搬送方向に僅かな相互隙間を存しつつ多数列設されており、
上下の該搬送ローラー間では、該径大部と径小部とが対応位置し、前後の該搬送ローラー間でも、該径大部と径小部とが順次対応位置していること、を特徴とする薄物基板材の搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載した薄物基板材の搬送装置において、上下の該搬送ローラーは、該径大部と径小部間に該基板材を挟み込みつつ搬送し、かつ前後の該搬送ローラーは、該径大部と径小部間で該基板材を受け渡しつつ搬送し、
該基板材は、これらにより凹凸が湾曲状に形成され、その分、腰ができ強度が付与されつつ搬送されること、を特徴とする薄物基板材の搬送装置。
【請求項6】
請求項4に記載した薄物基板材の搬送装置において、前後の該搬送ローラーは、該径大部と径小部間で該基板材を受け渡しつつ搬送し、
該基板材は、前後の該径大部と径小部間の外周回転速度の差と、形状的相互食い込みとを利用して、前後の該搬送ローラー間において、スムーズに受け渡され乗り移って搬送されること、を特徴とする薄物基板材の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−312515(P2006−312515A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135522(P2005−135522)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000220240)東京化工機株式会社 (22)
【Fターム(参考)】