薄膜形成装置及び薄膜形成方法
【課題】 活性化前の原料が基材に付着することを防止して、良質な薄膜形成を可能とする。
【解決手段】この薄膜形成装置には、互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、放電空間内で少なくとも一方の電極に沿うように、基材を電極に密着させて保持する保持機構とが設けられている。また、薄膜形成装置には、薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように放電空間にガスを供給し、活性化されたガスで基材を晒すことで、基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部が設けられている。ガス供給部は、活性化以前のガスが基材に接しないように、ガスを放電空間まで案内する案内手段を有している。
【解決手段】この薄膜形成装置には、互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、放電空間内で少なくとも一方の電極に沿うように、基材を電極に密着させて保持する保持機構とが設けられている。また、薄膜形成装置には、薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように放電空間にガスを供給し、活性化されたガスで基材を晒すことで、基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部が設けられている。ガス供給部は、活性化以前のガスが基材に接しないように、ガスを放電空間まで案内する案内手段を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置及び薄膜形成方法に係り、特に、大気圧プラズマ放電処理を用いて薄膜を基材上に形成する薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSI、半導体、表示デバイス、磁気記録デバイス、光電変換デバイス、太陽電池、ジョセフソンデバイス、光熱変換デバイス等の各種製品には、基材上に高性能性の薄膜を設けた材料が用いられている。薄膜を基材上に形成する手法には、塗布に代表される湿式製膜方法や、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に代表される乾式製膜方法、あるいは大気圧プラズマ放電処理を利用した大気圧プラズマ製膜方法等が挙げられるが、近年では、高い生産性を維持しつつ高品質な薄膜を形成できる大気圧プラズマ製膜方法の使用が特に望まれている。
【0003】
大気圧プラズマ製膜方法は、対向する電極間に基材を配置させた状態で、薄膜形成ガスを供給し、両電極に電界を印加する。これにより、放電プラズマが発生し、基材を放電プラズマに晒すことで薄膜が形成される。大気圧プラズマ製膜方法を実現する薄膜形成装置として、例えば、特許文献1に記載される薄膜形成装置が挙げられる。この薄膜形成装置には、対向する2つの電極と、これらの電極に電界を印加する電源と、2つの電極の放電面に対して、それぞれ基材を密着するように搬送するフィルム用搬送装置と、電極間に薄膜形成ガスを供給する薄膜形成ガス供給部とが備わっている。そして、この薄膜形成装置は、電極間に薄膜形成ガスを供給してから、電界を印加することにより放電プラズマを発生させて、2つの電極に密着した基材に薄膜を形成するようになっている。
【特許文献1】特開2000−212753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、薄膜形成ガス供給部と電極間とには、少なからず隙間があるために、薄膜形成ガス供給部から噴出された薄膜形成ガスは、その全てが電極間に進入して放電プラズマに晒されるのではなく、前述の隙間から漏れ出て放電プラズマに晒される以前に基材に触れてしまうものもある。薄膜形成ガスには薄膜用の原料が含まれているが、この薄膜形成ガス内の原料が活性化されて基材に付着するのであれば、基材上に薄膜が形成されることになるが、活性化以前に基材に付着してしまうと、その後に活性化された原料が基材に付着したとしても、良質な膜が形成され難かった。
【0005】
本発明の課題は、活性化前の原料が基材に付着することを防止して、良質な薄膜の形成を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明における薄膜形成装置は、
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
前記放電空間内で基材を保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
前記ガス供給部は、活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスを前記放電空間まで案内する案内手段を有していることを特徴としている。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、薄膜形成ガスを含有するガスが案内手段により放電空間に導かれる際、活性化以前の前記ガスが基材に接しないように、案内手段が前記ガスを案内しているので、活性化後の前記ガスが基材に触れる前に、活性化以前のガスが基材に接してしまうことを防止できる。これにより、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材に付着することを防止でき、結果良質な薄膜の形成が可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材を前記電極に密着させて保持することを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、放電空間内で一対の電極のそれぞれに沿うように基材を保持機構が電極に密着させて保持するので、1つの放電空間中で2層分の薄膜を形成することが可能となり、より効率的に薄膜を形成できる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材を搬送する搬送装置であることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、保持機構が基材を搬送する搬送装置であるので、広範囲にわたって薄膜を形成することが可能となる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、前記ガスを噴出する第1ガス噴出口と、前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを噴出する一対の第2ガス噴出口とを有し、
前記一対の第2ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を挟むように、前記一対の電極の軸方向に沿って配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、一対の第2ガス噴出口が、一対の電極の軸方向に沿って第1ガス噴出口を挟むように配置されているので、薄膜形成ガスを含有するガスを無原料ガスによって挟んだ状態でガス供給部から放電空間まで案内できる。このように、前記ガスが無原料ガスで挟まれていれば、無原料ガスによって遮られて、無原料ガスの外側へ流出することを防止できる。特に、一対の第2ガス噴出口の間隔が放電空間の間隔よりも狭められていれば、前記ガスが放電空間外に流出しにくくなり、確実に放電空間内に案内されることになる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、
前記無原料ガスを噴出する一対の第3ガス噴出口を有し、
前記一対の第3ガス噴出口は、前記軸方向における前記第1ガス噴出口の両端部よりも外側にそれぞれ配置されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、一対の第3ガス噴出口のそれぞれが、第1ガス噴出口の両端部よりも外側に配置されているので、軸方向に対しても薄膜形成ガスを含有するガスを無原料ガスが挟んだ状態でガス供給部から放電空間まで案内できる。したがって、第1ガス噴出口の両端部から放電空間外へ流出するガスを低減することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記一対の第2ガス噴出口及び前記一対の第3ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を囲うように連続していることを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、一対の第2ガス噴出口及び一対の第3ガス噴出口とが第1ガス噴出口を囲うように連続しているので、第1ガス噴出口から噴出されたガスを無原料ガスにより囲んだ状態で放電空間まで案内できる。したがって、薄膜形成ガスを含んだガスを放電空間外へ漏らさずに放電空間まで案内することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴としている。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、前記ガス及び無原料ガスの噴出方向が、互いに平行であるので、薄膜形成ガスを含有するガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れることを抑制し、前記ガスが無原料ガスの外側へ流出することをより確実に防止できる。
また、放電空間は、一対の電極の軸方向に沿って延在しているために、上述したように薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスの噴出方向が軸方向に対して直交する方向であれば、薄膜形成ガスを含有するガスを放電空間の全長にわたって確実に案内することができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴としている。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であるので、薄膜形成ガスを含有するガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れることを抑制できる。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項4〜8のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴としている。
【0023】
ここで、例えば、薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスの流路が上下方向に対して傾いていれば、前記ガス及び無原料ガスの流れは放電空間に到達する以前に重力の影響によって乱れてしまう。しかしながら、請求項9記載の発明のように、薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスが上下方向に沿いながら放電空間まで案内されれば、重力の影響を低減でき、前記ガス及び無原料ガスの流れが乱れを抑制することができる。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されて、前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部を備え、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴としている。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、吸引部が、放電空間を通過したガスを吸引するので、放電空間を通過したガスによって装置内部が汚れることを防止できる。特に、吸引部の吸引量が、ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていれば、放電空間を通過したガスを常に吸引でき、放電空間外へとガスが流出することを確実に防止することができる。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴としている。
【0027】
請求項11記載の発明によれば、一対の電極の間隔よりもガス供給部と一対の電極との間隔の方が狭いので、ガス供給部から放電空間までの距離を短くすることができ、ガス供給部から噴出されたガスの流れが、例え乱れたとしてもその影響が大きくなる前にガスを放電空間内に収めることができる。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、少なくとも表面が絶縁性を有していることを特徴としている。
【0029】
ここで、一対の電極により放電空間内に高周波電界が発生すると、放電プラズマが放電空間外にはみ出るように発生する。案内手段の位置によっては放電プラズマの発生領域内に侵入してしまう場合もあるが、案内手段が導体であるとアースの役目を果たしてしまい、放電プラズマを安定させにくい。このため、請求項12記載の発明のように少なくとも案内手段の表面が絶縁性を有していれば、放電プラズマが案内手段に導通することなく、放電プラズマを安定させることが可能になる。
【0030】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0031】
請求項13記載の発明によれば、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
【0032】
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0033】
請求項14記載の発明によれば、薄膜形成ガスを含有するガス中に窒素が50%以上含まれているので、他のガスを使用した場合よりも比較的安価にすることができる。
【0034】
請求項15記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0035】
請求項15記載の発明によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0036】
請求項16記載の発明における薄膜形成方法は、
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように基材を前記電極に密着させて保持することで、前記基材を前記活性化したガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスは前記放電空間まで案内されることを特徴としている。
【0037】
請求項16記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0038】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材は前記電極に密着されて保持されていることを特徴としている。
【0039】
請求項17記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0040】
請求項18記載の発明は、請求項16又は17記載の薄膜形成方法において、
前記基材は、前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴としている。
【0041】
請求項18記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0042】
請求項19記載の発明は、請求項16〜18のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを前記一対の電極のそれぞれに沿って噴出させて、前記ガスを挟んで案内することを特徴としている。
【0043】
請求項19記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0044】
請求項20記載の発明は、請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記ガスを前記一対の電極の軸方向に対して挟むように、前記無原料ガスを噴出させることを特徴としている。
【0045】
請求項20記載の発明によれば、請求項5記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0046】
請求項21記載の発明は、請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記無原料ガスは前記ガスを囲うように噴出されていることを特徴としている。
【0047】
請求項21記載の発明によれば、請求項6記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0048】
請求項22記載の発明は、請求項19〜21のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴としている。
【0049】
請求項22記載の発明によれば、請求項7記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0050】
請求項23記載の発明は、請求項19〜22のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴としている。
【0051】
請求項23記載の発明によれば、請求項8記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0052】
請求項24記載の発明は、請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴としている。
【0053】
請求項24記載の発明によれば、請求項9記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0054】
請求項25記載の発明は、請求項16〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部が、前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されていて、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴としている。
【0055】
請求項25記載の発明によれば、請求項10記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0056】
請求項26記載の発明は、請求項16〜25のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴としている。
【0057】
請求項26記載の発明によれば、請求項11記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0058】
請求項27記載の発明は、請求項16〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部は、少なくとも前記ガスを案内する部分の表面が絶縁性を有していることを特徴としている。
【0059】
請求項27記載の発明によれば、請求項12記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0060】
請求項28記載の発明は、請求項16〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0061】
請求項28記載の発明によれば、請求項13記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0062】
請求項29記載の発明は、請求項16〜28のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0063】
請求項29記載の発明によれば、請求項14記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0064】
請求項30記載の発明は、請求項16〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0065】
請求項30記載の発明によれば、請求項15記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、活性化後の前記ガスが基材に触れる前に、活性化以前のガスが基材に接してしまうことを防止できる。これにより、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材に付着することを防止でき、結果良質な薄膜の形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
[第1の実施の形態]
以下、添付図面を参照しつつ本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、薄膜形成装置1の概略構成を表す正面図である。
【0068】
この薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによって基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。薄膜形成装置1には、図1に示す通り、放電プラズマを発生させるための一対の電極2,3が間隔を空けて対向するように前後方向に沿って固定されている。この間隔が、上下方向で開放された放電空間Hとなり、この放電空間Hを成す電極2,3の対向する面をそれぞれ放電面2a,3aとする。
【0069】
図2は、電極2,3の概略構成を表す斜視図である。図2に示すように、電極2,3には、導電性の金属質母材21,31の表面に誘電体22,32が被覆された棒状電極である。電極2,3の角部23,33は、電極2,3の表面を滑らかに連続させるために円弧状に形成されている。つまり、電極2,3の放電面2a,3aと、放電面2a,3aに連なる放電面2a,3a以外の表面とは角部23,33によって滑らかに連続されることになる。そして、電極2,3には、図1に示すように電源4が接続されている。
【0070】
薄膜形成装置1には、図1に示すように、基材5と当該基材5を支持する支持体6とを、少なくとも放電空間H内で保持されるように重ねて搬送する搬送装置(保持機構)7が設けられている。
搬送装置7について具体的に説明すると、一方の電極2の外側(図1の左側)上方には、基材5の元巻を回転自在に保持する基材用保持ローラ71が、電極2,3と平行となるように配置されている。この基材用保持ローラ71と電極2との上下方向における間には、支持体6の元巻を回転自在に保持する支持体用保持ローラ72が基材用保持ローラ71に対して平行になるように配置されている。支持体用保持ローラ72に保持される支持体6にはその表面上に再剥離性を有する粘着剤61(図3参照)が塗布されている。
基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72と、一方の電極2との間には、基材5及び支持体6を一方の電極2まで案内する第1ガイドローラ73が、一方の電極2の右上端部と、支持体用保持ローラ72から支持体6が引き出される部分とを結ぶ線(図1における補助線S1)よりも下方に配置されている。これにより、支持体用保持ローラ72から引き出された支持体6が、基材用保持ローラ71から引き出された基材5の裏面に粘着剤61を介して密着してから、電極2の上面(図1における点P1)に接触することになる。
【0071】
また、一対の電極2,3の下方には、一方の電極2に沿って放電空間Hを通過した基材5及び支持体6を密着させたまま、他方の電極3に案内する案内路(図示省略)が形成されている。案内路は、基材5及び支持体6のうち、支持体6が他方の電極3の下面(図1における点P2)に接触するように形成されている。
【0072】
そして、他方の電極3の外側(図1の右側)上方には、基材5を巻き取る基材用巻取ローラ74が、電極2,3に平行となるように配置されている。この基材用巻取ローラ74と電極3との上下方向における間には、支持体6を巻き取る支持体用巻取ローラ75が基材用巻取ローラ74に対して平行になるように配置されている。基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75と、他方の電極3との間には、基材5及び支持体6をそれぞれ基材用巻取ローラ74、支持体用巻取ローラ75に案内する第2ガイドローラ76が、他方の電極3の左端部と、基材用巻取ローラ74に支持体6が巻き取られ始める部分とを結ぶ線(図1における補助線S2)よりも下方に配置されている。
【0073】
つまり、搬送装置7は、基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75が回転することによって、基材5及び支持体6のそれぞれを基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72から引き出すようになっている。引き出された基材5及び支持体6は、第1ガイドローラ73で粘着剤61により密着し、一方の電極2の上面、放電面2a、下面の順に電極2に沿い、案内路を介して、他方の電極3の下面、放電面3a、上面の順に電極3に沿ってから、電極3から離間して、第2ガイドローラ76で互いに剥離し、それぞれ基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75に巻き取られるようになっている。
【0074】
図3は、図1におけるA−A断面図であり、放電空間H内における電極2,3、基材5、支持体6の位置関係を表している。この図3に示すように、放電空間H内においては、支持体6が電極2,3と基材5との間に介在されていて、なおかつ支持体6と基材5とが粘着剤61を介して密着されて固定されることになる。
【0075】
また、図1に示すように放電空間Hの上方には、薄膜形成ガスを含有するガスを放電空間Hに供給するガス供給部8が設けられている。このガス供給部8には、薄膜形成ガスを含有するガスを貯留する第1ガスタンク9が、配管91及びガス調整部92(図6参照)を介して接続されているとともに、薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを貯留する第2ガスタンク10が、配管11及び無原料ガス調整部12(図6参照)を介して接続されている。ここで、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12は、配管91,11内部を流れるガス及び無原料ガスの流量や流速、ガス組成、濃度などを調整するものである。
【0076】
図4は、ガス供給部8を表す斜視図であり、図5はガス供給部8の断面図である。図4に示すように、ガス供給部8の後端部中央には、配管91が連結されるガス管81が設けられている。また、ガス供給部8の後端部には、配管11が連結される4つの無原料ガス用ガス管82が、それぞれガス管81の前後左右に配置されている。
【0077】
また、ガス供給部8の内部には、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入するガス及び無原料ガスの流路を形成する4枚の仕切板83が設けられている。4枚の仕切板83のうち、2枚の仕切板83は、前後に位置する無原料ガス用ガス管82と、左右に位置する無原料ガス用ガス管82及びガス管81との間で、上下左右方向に沿うように配置されている。これら2枚の仕切板83にわたって、残りの2枚の仕切板83が、左右に位置する無原料ガス用ガス管82とガス管81との間で、上下前後方向に沿うように配置されている(図5参照)。これらの仕切板83によって、ガス供給部8の先端の開口が分割されている。
【0078】
図6はガス供給部8の先端面を表す下視図である。この図6に示すように、分割された開口のうち、ガスを噴出する開口を第1ガス噴出口84、無原料ガスを噴出する開口を無原料ガス噴出口85とすると、第1ガス噴出口84は各無原料ガス噴出口85によって前後左右が囲まれることになる。複数の無原料ガス噴出口85のうち、第1ガス噴出口84を挟むように前後方向(一対の電極2,3の軸方向)に沿って配置される無原料ガス噴出口85が、本発明に係る第2ガス噴出口85aであり、前後方向における第1ガス噴出口84の外側に配置される無原料ガス噴出口85が、本発明に係る第3ガス噴出口85bである。これにより、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入したガス及び無原料ガスを個別に噴出するようになっている。
第1ガス噴出口84と第2ガス噴出口85aとは左右方向に対して平行となるように配置されているために、第1ガス噴出口84から噴出されるガスの噴出方向と、第2ガス噴出口85aから噴出される無原料ガスの噴出方向とが平行になる。また、第1ガス噴出口84と第3ガス噴出口85bとは前後方向に対して平行となるように配置されているために、第1ガス噴出口84から噴出されるガスの噴出方向と、第2ガス噴出口85aから噴出される無原料ガスの噴出方向とが平行になる。
【0079】
そして、図5に示すように、ガス供給部8の内部では、ガス及び無原料ガスの流路が、電極2,3の軸方向(前後方向)に対して直交する方向(上下方向)に沿っているために、ガス及び無原料ガスの噴出方向は上下方向に沿うことになる。このように、第1ガス噴出口84から噴出されたガスは、前後左右を無原料ガスで遮られた状態で上下方向に沿いながら放電空間Hまで案内されるようになっている。すなわち、第1ガス噴出口84、第2ガス噴出口85a及び第3ガス噴出口85bが本発明に係る案内手段である。ここで、ガス及び無原料ガスの流路が上下方向に対して傾いていれば、ガス及び無原料ガスの流れは放電空間Hに到達する以前に重力の影響を受けて乱れてしまう。しかしながら、上記したように、ガス及び無原料ガスが案内手段によって上下方向に沿いながら放電空間Hまで案内されれば、重力の影響を低減でき、前記ガス及び無原料ガスの流れが乱れを抑制することができる。
【0080】
そして、ガス供給部8は、ガス供給部8と一対の電極2,3との間隔(図5におけるT1)が、一対の電極2,3の間隔(図5におけるT2)よりも狭くなるように、配置されている。
【0081】
また、図1に示すように放電空間Hの下方には、放電空間Hから流出したガス及び無原料ガスを吸引する吸引部13が設けられている。この吸引部13には、放電空間Hにわたって延在する吸引口部14が備えられており、この吸引口部14には配管15を介して吸引ポンプ16が接続されている。
【0082】
そして、一対の電極2,3の放電面2a,3aの反対側には、支持体6が電極2,3に接触することで発生した削りカスを吸引する複数のカス用吸引部17が、支持体6と電極2,3の接点付近を吸引するように配置されている。
【0083】
図7は、薄膜形成装置1における主制御構成を表すブロック図である。この図7に示すように、薄膜形成装置1には、各駆動部を制御する制御装置40が設けられている。制御装置40には、電極2,3の温度を調節する温度調節装置44、記憶部41、電源4、ガス調整部92、無原料ガス調整部12、吸引ポンプ16、カス用吸引部17、基材用巻取ローラ74の駆動源42、支持体用巻取ローラ75の駆動源43、が電気的に接続されている。なお、制御装置40には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置40は、記憶部41中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。
【0084】
ガス供給部8から供給されるのは薄膜形成ガスを含有するガスと、薄膜形成ガスを含まない無原料ガスである。
前記ガスは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことのできる放電ガスと、薄膜の原料を含有する薄膜形成ガスとが混合されたものである。
放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本実施形態では、比較的安価な窒素を用いている。ここで薄膜形成ガスと混合した際に、窒素の濃度が50%以上になることが好ましい。さらに窒素に混合させるガスとして希ガスを使用した場合には、放電ガスの50%未満を含有させることが好ましい。
【0085】
薄膜形成ガスに含まれる原料としては、例えば、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等が挙げられる。
有機金属化合物としては、以下の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1xMR2yR3z式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等が挙げられる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等が挙げられ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等が挙げられ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等が挙げられ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0086】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する有機金属化合物が好ましい。
【0087】
また、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物の金属として、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。
【0088】
無原料ガスとしては、薄膜の原料となる薄膜形成性ガスに含有される化合物を含まないガスが使用される。具体的には、上記した放電ガスや酸素、一酸化炭素、空気などが挙げられる。未原料ガスとして放電ガスを使用した場合には、放電空間H内で発生する放電プラズマを均一にすることができる。
【0089】
次に、基材5について説明する。基材5としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材5が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態のガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材5の形態または材質には制限ない。材質的には、例えばガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラス板や、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等が挙げられる。
【0090】
樹脂フィルムは本発明に係る薄膜形成装置1の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0091】
樹脂からなる基材5の材質としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。
【0092】
また、本発明に用いられる基材5は、厚さが10〜100μm、より好ましくは20〜50μmのフィルム状のものが使用されている。
【0093】
次に、支持体6について説明する。支持体6としては、基材5及び電極2,3の間に介在するようにフィルム状に形成されたものが使用される。ここで、基材5の表面上に均一な製膜を行うには、少なくとも基材5の全体が放電空間H内に収まっていることが好ましいが、こうしてしまうと基材5の外側にも薄膜の原料が飛散してしまうために、支持体6の幅を、図3に示すように基材5の幅よりも長くすれば、支持体6が基材5の外側まで電極2,3を覆うことになり、原料が電極2,3に付着することを防止でき、好ましい。
また、支持体6の材質は、基材5と同一材質若しくは熱的物性が同等であることが好ましい。これにより、基材5と支持体6との熱変形量が同等となって、熱変形量の異なりによる皺やツレの発生をも低減することができる。
【0094】
次に、再剥離性を有する粘着剤61について説明する。粘着剤61は、基材5及び支持体6が放電空間H内で放電プラズマに晒されたとしても、その粘着性及び再剥離性が劣化しない耐熱性に優れたものが好ましい。このような粘着剤61としては例えばアクリル系粘着剤が挙げられる。そして、一般には、支持体6に予め粘着剤61がコーティングされたものが市販されているので、例えばPETからなる支持体6に、粘着剤61としてのアクリル系粘着剤がコーティングされた日東電工(株)製の「耐熱性表面保護接着テープ(型番E−MASK TP300)」を用いることが好ましい。
【0095】
次に、電極2,3を形成する金属質母材21,31及び誘電体22,32について説明する。
金属質母材21,31と誘電体22,32と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材21,31と誘電体22,32との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0096】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、5)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、6)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、7)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、8)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記1)または2)および5)〜8)が好ましく、特に1)が好ましい。
【0097】
そして、金属質母材21,31は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材21,31をチタンまたはチタン合金とし、誘電体22,32を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
【0098】
本発明に有用な電極の金属質母材21,31は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材21,31としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体22,32との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0099】
一方、誘電体22,32としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体22,32が好ましい。
【0100】
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体22,32の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体22,32の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0101】
次に、本実施形態の薄膜形成装置1の作用について説明する。
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置40は、吸引ポンプ16及びカス用吸引部17を駆動させてから、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御し、ガス供給部8から放電空間Hにガス及び無原料ガスを供給する。第1ガス噴出口84から噴出されたガスは、前後左右を無原料ガスで遮られた状態で上下方向に沿いながら放電空間Hまで案内される。この際、制御装置40は、ガス及び無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等となるように、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御する。レイノルズ数は、代表速度、代表長さ、動粘性係数の関数であるが、ガス及び無原料ガスの代表長さ(第1ガス噴出口84、第2ガス噴出口85a、第3ガス噴出口85bの口径)は固定されているために、制御装置40は、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御して、ガス及び無原料ガスの流量や流速、ガス組成、濃度などを調整することで、代表速度や動粘性係数を変化させて、ガス及び無原料ガスのレイノルズ数をほぼ同等としている。ここで、レイノルズ数がほぼ同等とは、ガスが無原料ガスによって放電空間Hまで案内される際に、ガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れない値のことであり、実験やシミュレーション等により最適な範囲が求められていることが好ましい。
【0102】
さらに、制御装置40は、ガス及び無原料ガスのレイノルズ数が同等となる流量及び流速から、ガス供給部8の噴出量を算出し、その噴出量よりも吸引部13の吸引量の方を大きく設定している。
【0103】
そして、放電空間Hにガスが供給されると、制御装置40は、基材用巻取ローラ74の駆動源42と、支持体用巻取ローラ75の駆動源43とを制御して、基材5及び支持体6を搬送させる。
【0104】
基材5及び支持体6の搬送が開始されると、制御装置40は、電源4をONにする。これにより、一方の電極2には、周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加され、他方の電極3には、周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
【0105】
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
【0106】
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0107】
そして、電流I1、I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0108】
このように、一方の電極2による第1高周波電界及び他方の電極3による第2高周波電界が発生されると、放電空間Hには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、ガスと反応し放電プラズマが発生する。基材5及び支持体6は、放電空間Hに進入する以前に、粘着剤61によって密着されていて、さらに電極2,3の放電面2a,3aに連続する放電面2a,3a以外の表面(一方の電極2の上面や、他方の電極3の下面)に密着されるために、放電面2a,3a以外の表面によって支えられた状態でプラズマ空間に進入する。これにより、基材5及び支持体6が熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。
【0109】
さらに、一対の電極2,3は、それぞれ温度調節装置44によってその表面温度が制御されているために、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に、放電面2a,3a以外の表面によって予め加熱されることとなる。このため、放電空間Hに基材5及び支持体6が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、基材5及び支持体6に皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。特に、電極2、3においては、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に接触する、放電面2a,3a以外の表面が所定の面積を確保しているので、放電面2a,3aに至るまでに、基材5及び支持体6を加熱することができ、放電空間Hに進入することによる急激な加熱を緩和でき、皺やツレの発生をさらに抑制できる。
そして、薄膜が形成された基材5は、基材用巻取ローラ74によって巻き取られ、支持体6も基材5から剥離して支持体用巻取ローラ75によって巻き取られる。
【0110】
以上のように、この第1の実施の形態の薄膜形成装置1によれば、一対の第2ガス噴出口85aが、一対の電極2,3の軸方向に沿って第1ガス噴出口84を挟むように配置されているので、ガスを無原料ガスによって挟んだ状態でガス供給部8から放電空間Hまで案内できる。このように、ガスが無原料ガスで挟まれていれば、無原料ガスによって遮られて、無原料ガスの外側へ流出することを防止できる。特に、一対の第2ガス噴出口84の間隔(図5におけるT3)が放電空間Hの間隔(図5におけるT2)よりも狭められていれば、ガスが放電空間H外に流出しにくくなり、確実に放電空間H内に案内されることになる。
また、一対の第3ガス噴出口85bのそれぞれが、第1ガス噴出口84の両端部よりも外側に配置されているので、前後方向に対してもガスを無原料ガスが挟んだ状態でガス供給部8から放電空間Hまで案内できる。したがって、第1ガス噴出口84の両端部から放電空間H外へ流出するガスを低減することができる。
このように、第1ガス噴出口84、第2ガス噴出口85a、第3ガス噴出口85bを備えた案内手段により、薄膜形成ガスを含有するガスが放電空間Hに導かれると、活性化以前のガスは無原料ガスによって遮られて基材5に接しない。つまり、活性化後のガスが基材5に触れる前に、活性化以前のガスが基材5に接してしまうことを防止できる。したがって、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材5に付着することを防止でき、結果均一で良質な薄膜形成が可能となる。
【0111】
また、ガス及び無原料ガスの噴出方向が、互いに平行であるので、ガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れることを抑制し、前記ガスが無原料ガスの外側へ流出することをより確実に防止できる。そして、放電空間Hは、一対の電極2,3の軸方向に沿って延在しているために、上述したようにガス及び無原料ガスの噴出方向が軸方向に対して直交する方向であれば、ガスを放電空間Hの全長にわたって確実に案内することができる。
また、吸引部13が、放電空間Hを通過したガスを吸引するので、放電空間Hを通過したガスによって装置内部が汚れることを防止できる。特に、吸引部13の吸引量が、ガス供給部8の噴出量よりも大きく設定されていれば、放電空間Hを通過したガスを常に吸引でき、放電空間H外へとガスが流出することを確実に防止することができる。
さらに、一対の電極2,3の間隔(図5におけるT2)よりもガス供給部8と一対の電極2,3との間隔(図5におけるT1)の方が狭いので、ガス供給部8から放電空間Hまでの距離を短くすることができ、ガス供給部8から噴出されたガスの流れが、例え乱れたとしてもその影響が大きくなる前にガスを放電空間H内に収めることができる。
【0112】
また、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
また、本実施形態によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜が行われているので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0113】
なお、本発明は上記第1の実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
例えば、第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1では、一対の電極2,3として略角柱状の棒状電極を用いた場合を例示して説明したが、例えば図8に示すように一対の電極をそれぞれロール電極25,35としてもよい。この一対のロール電極25,35は回転自在であるために、支持体6の搬送に伴って回転するようになっている。
【0114】
また、例えば図9に示すように、一対の電極をそれぞれ環状のベルト電極26,36としてもよい。具体的に図9を参照にして説明すると、一対のベルト電極26,36は、それぞれ一対のローラ50,51によって放電空間Hを空けるように間隔を空けて張設されている。このローラ50,51のうち、一方のローラ50が回転駆動し、他方のローラ51が回転自在に設けられており、一方のローラ50が回転すれば、ベルト電極26,36及び他方のローラ51も回転するようになっている。ベルト電極26,36が回転すれば、支持体6及び基材5はベルト電極26,36の放電空間H側の表面(放電面26a,36a)に沿って搬送されるために、基材5の表面上に薄膜が形成されることになる。
【0115】
さらに、例えば図10に示すように、一対の電極2,3が略角柱状の棒状電極であっても、それぞれの電極2,3の放電面2a,3aに接しながら、支持体6及び基材5を搬送する環状の搬送ベルト52を設けてもよい。具体的に図10を参照にして説明すると、この環状の搬送ベルト52は、それぞれの電極2,3の上下方向に配置された一対のローラ50,51によって、電極2,3の放電面2a,3aに接触するように張設されている。つまり、一方のローラ50が回転すれば、搬送ベルト52及び他方のローラ51も回転するようになっている。搬送ベルト52が回転すれば、支持体6及び基材5は搬送ベルト52の放電空間H側の表面に沿って搬送されながら、一対の電極2,3を通過することになる。これにより、基材5の表面上に薄膜が形成されることになる。
【0116】
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態に係る薄膜形成装置について図11を参照に説明する。図11は第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、フィルム状の基材5に対して製膜を行う場合を例示して説明したが、この第2の実施の形態では、板状の基材に対して製膜を行う場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0117】
この第2の実施の形態に係る薄膜形成装置100には、図11に示すように、ガス供給部8に対して相対的に上下動する一対の電極2,3が所定の間隔を空けて配置されている。そして、ガス供給部8における一対の電極2,3を挟んで反対側には、吸引部13が配置されている。また、薄膜形成装置100には、一対の電極2,3からなる放電空間H1内で、例えば、ガラスからなる板状の基材5Aを、少なくとも一方の電極2,3に沿うように保持する保持機構(図示省略)が設けられている。
【0118】
保持機構は、例えば養生シートからなる板状の支持体6Bを、基材5A及び電極2,3に密着させるように基材5A及び電極2,3の間に介在させて、基材5Aと一緒に保持するようになっている。支持体6Bの表面上には粘着剤61Bが塗布されているために、この粘着剤61Bにより支持体6Bと基材5Aとが密着されている。ここで、保持機構は、基材5A及び支持体6Bを、ガス供給部8に対して相対的に移動しないように保持している。つまり、一対の電極2,3が支持体6Bに接触した状態で上下動すると、基材5A及び支持体6Bに対して相対的に上下動することになり、それに伴って放電空間H1も上下動する。ガス供給部8からガスを供給させながら、一対の電極2,3に電界を印加させて、一対の電極2,3を基材5の上端から下端まで移動させれば、基材5Aの全面にわたって薄膜を形成することができる。このように放電空間H1を上下動させたとしても、放電空間H1内の支持体6B及び基材5Aは粘着剤61Bによって固定されているために、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。
【0119】
[第3の実施の形態]
以下、第3の実施の形態に係る薄膜形成装置について図12を参照に説明する。図12は第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す斜視図である。上記した第1及び第2の実施の形態に係る薄膜形成装置1,100においては、ガス供給部8が下方に向けてガス及び無原料ガスを噴出する場合を例示して説明したが、この第3の実施の形態では、ガス供給部が上方に向けてガス及び無原料ガスを噴出する場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0120】
この第3の実施の形態に係る薄膜形成装置200には、図12に示す通りガス供給部18が、ガス及び無原料ガスを上方に向けて噴出するように、放電空間Hの下方に配置されている。ガス供給部18の上面には、ガスを噴出する第1ガス噴出口184と、第1ガス噴出口184に対して平行で無原料ガスを噴出する無原料ガス噴出口185とが形成されている。図13は、第1ガス噴出口184及び無原料ガス噴出口185の配置例を表す上視図である。この図13に示す通り、一対の無原料ガス噴出口185は、第1ガス噴出口184を挟むように前後方向に沿って配置されている。つまり、本実施形態では無原料ガス噴出口185が、本発明に係る第2ガス噴出口であるために、ガスは無原料ガスに挟まれながらガス供給部18から上方に向かって放電空間Hまで案内されることになる(図12のG1がガスの経路であり、G2が無原料ガスの経路である。)。
【0121】
なお、第1の実施の形態で例示したガス供給部8及び第3の実施の形態で例示したガス供給部18では、第1ガス噴出口84,184の全周が無原料ガス噴出口85,185によって囲われていないが、例えば図14に示すガス供給部28の通り、第1ガス噴出口284を囲うように無原料ガス噴出口285を配置しても構わない。ここで、無原料ガス噴出口285のうち、前後方向に沿って延在する部分が本発明に係る第2ガス噴出口285aであり、左右方向に沿って延在する部分が本発明に係る第3ガス噴出口285bである。このように、一対の第2ガス噴出口285aと一対の第3ガス噴出口285bとが、第1ガス噴出口284を囲うように連続しているので、第1ガス噴出口284から噴出されたガスを無原料ガスにより囲んだ状態で放電空間Hまで案内できる。したがって、ガスを放電空間H外へ漏らさずに放電空間Hまで案内することができる。
【0122】
[第4の実施の形態]
以下、第4の実施の形態に係る薄膜形成装置について図15を参照に説明する。図15は第4の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、ガス供給部8が、一対の電極2,3の間隔の外部から放電空間Hに向かってガス及び無原料ガスを噴出する場合を例示して説明したが、この第4の実施の形態では、ガス供給部が、一対の電極の間隔の内部から放電空間Hに向かってガス及び無原料ガスを噴出する場合を例示して説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0123】
図15に示す通り、この第4の実施の形態の薄膜形成装置300に備わるガス供給部38は、その先端部381が一対の電極2,3の間隔の内部に向かって細くなるように延出している。この先端部381の先端面には、第1ガス噴出口84、無原料ガス噴出口85が形成されている。そして、この先端部381の表面には、絶縁性材料がコーティングされているので、先端部381の表面が絶縁性を有することになる。これによって、先端部381が放電プラズマの発生領域に進入したとしても、放電プラズマがガス供給部38に導通することなく、放電プラズマを安定させることが可能になる。
【0124】
ここで、本実施形態では、搬送装置7によって基材5がガス供給部38に接触するように基材5及び支持体6は搬送されているが、この接触による基材5のキズを防止するために、ガス供給部38の基材5が接触する部分には、回転自在なガイドローラ382が設けられている。このガイドローラ382は、基材5の搬送及び接触に伴う回転により、基材5に対する擦れを抑制し、基材5のキズを防止している。
また、ガス供給部38と基材5とが接触しているために、基材5によってガス供給部38と一対の電極2,3の間隔とが閉塞されて、ガス供給部38から噴出されたガス及び無原料ガスが外部に漏れることを防止している。
【0125】
[第5の実施の形態]
以下、第5の実施の形態に係る薄膜形成装置について図16を参照に説明する。図16は第5の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。上記した第1〜第4の実施の形態に係る薄膜形成装置1,100,200,300においては、ガスを無原料ガスで案内して、ガスの放電空間H外への流出を防止する場合について説明したが、この第5の実施の形態では、無原料ガスではなく、案内部材によってガスを案内して、ガスの放電空間H外への流出を防止する場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0126】
図16に示す通り、この第5の実施の形態の薄膜形成装置400には、ロール電極からなる一対の電極402,403が間隔を空けて対向するように配置されている。この間隔の上方には、当該間隔に向けてガスを噴出するガス供給部48が配置されている。
ガス供給部48の先端部には、ガスを噴出するための第1ガス噴出口481が、前後方向に沿うように形成されている。また、ガス供給部48の先端部には、上下方向に延在する一対の案内部材410,411が、第1ガス噴出口481の全長にわたって第1ガス噴出口481を挟むように配置されている。この案内部材410,411は、その先端が一対の電極402,403により発生した放電空間H2内に少なくとも進入する長さに形成されている。すなわち、ガス供給部48によって第1ガス噴出口481からガスが噴出されると、当該ガスは一対の案内部材410,411で案内されて放電空間H2に到達する。放電空間H2に到達するまでの間、ガスは案内部材410,411によって外部への流出が遮られているので、活性化後のガスが基材5に触れる前に、活性化以前のガスが基材5に接してしまうことを防止できる。したがって、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材5に付着することを防止でき、結果均一で良質な薄膜形成が可能となる。
【0127】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、第1〜第5の実施の形態では、搬送装置7が支持体6及び基材5を密着させて搬送させる場合を例示して説明したが、支持体を省略して基材5のみを搬送させる構成であっても構わない。こうした場合、搬送時においては基材5と電極2,3とが擦れて、基材5にキズが生じるおそれがあるが、電極2,3の角部23,33が円弧状に形成されているためにキズの発生は抑えられることになる。さらには、表面の滑りを向上させる物質を電極2,3にコーティングして、そのキズを防止することが好ましい。表面の滑りを向上させる物質には、例えばテフロン(登録商標)やフッ素化合物などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】第1の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。
【図2】図1の薄膜形成装置に備わる電極の概略構成を表す斜視図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1の薄膜形成装置に備わるガス供給部を表す斜視図である。
【図5】図4のガス供給部の断面図である。
【図6】図4のガス供給部の先端面を表す下視図である。
【図7】図1の薄膜形成装置における主制御構成を表すブロック図である。
【図8】図1の薄膜形成装置の電極の変形例を表す正面図である。
【図9】図8の電極の変形例を表す正面図である。
【図10】図8の電極の変形例を表す正面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表すの正面図である。
【図12】第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す斜視図である。
【図13】図12のガス供給部に備わる第1ガス噴出口及び無原料ガス噴出口の配置例を表す上視図である。
【図14】図14の第1ガス噴出口及び無原料ガス噴出口の配置例を表す上視図である。
【図15】第4の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。
【図16】第5の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。
【符号の説明】
【0129】
1 薄膜形成装置
2 電極
3 電極
5 基材
6 支持体
7 搬送装置(保持機構)
8 ガス供給部
13 吸引部
84 第1ガス噴出口
85 無原料ガス噴出口
85a 第2ガス噴出口
85b 第3ガス噴出口
H 放電空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置及び薄膜形成方法に係り、特に、大気圧プラズマ放電処理を用いて薄膜を基材上に形成する薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSI、半導体、表示デバイス、磁気記録デバイス、光電変換デバイス、太陽電池、ジョセフソンデバイス、光熱変換デバイス等の各種製品には、基材上に高性能性の薄膜を設けた材料が用いられている。薄膜を基材上に形成する手法には、塗布に代表される湿式製膜方法や、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に代表される乾式製膜方法、あるいは大気圧プラズマ放電処理を利用した大気圧プラズマ製膜方法等が挙げられるが、近年では、高い生産性を維持しつつ高品質な薄膜を形成できる大気圧プラズマ製膜方法の使用が特に望まれている。
【0003】
大気圧プラズマ製膜方法は、対向する電極間に基材を配置させた状態で、薄膜形成ガスを供給し、両電極に電界を印加する。これにより、放電プラズマが発生し、基材を放電プラズマに晒すことで薄膜が形成される。大気圧プラズマ製膜方法を実現する薄膜形成装置として、例えば、特許文献1に記載される薄膜形成装置が挙げられる。この薄膜形成装置には、対向する2つの電極と、これらの電極に電界を印加する電源と、2つの電極の放電面に対して、それぞれ基材を密着するように搬送するフィルム用搬送装置と、電極間に薄膜形成ガスを供給する薄膜形成ガス供給部とが備わっている。そして、この薄膜形成装置は、電極間に薄膜形成ガスを供給してから、電界を印加することにより放電プラズマを発生させて、2つの電極に密着した基材に薄膜を形成するようになっている。
【特許文献1】特開2000−212753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、薄膜形成ガス供給部と電極間とには、少なからず隙間があるために、薄膜形成ガス供給部から噴出された薄膜形成ガスは、その全てが電極間に進入して放電プラズマに晒されるのではなく、前述の隙間から漏れ出て放電プラズマに晒される以前に基材に触れてしまうものもある。薄膜形成ガスには薄膜用の原料が含まれているが、この薄膜形成ガス内の原料が活性化されて基材に付着するのであれば、基材上に薄膜が形成されることになるが、活性化以前に基材に付着してしまうと、その後に活性化された原料が基材に付着したとしても、良質な膜が形成され難かった。
【0005】
本発明の課題は、活性化前の原料が基材に付着することを防止して、良質な薄膜の形成を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明における薄膜形成装置は、
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
前記放電空間内で基材を保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
前記ガス供給部は、活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスを前記放電空間まで案内する案内手段を有していることを特徴としている。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、薄膜形成ガスを含有するガスが案内手段により放電空間に導かれる際、活性化以前の前記ガスが基材に接しないように、案内手段が前記ガスを案内しているので、活性化後の前記ガスが基材に触れる前に、活性化以前のガスが基材に接してしまうことを防止できる。これにより、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材に付着することを防止でき、結果良質な薄膜の形成が可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材を前記電極に密着させて保持することを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、放電空間内で一対の電極のそれぞれに沿うように基材を保持機構が電極に密着させて保持するので、1つの放電空間中で2層分の薄膜を形成することが可能となり、より効率的に薄膜を形成できる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材を搬送する搬送装置であることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、保持機構が基材を搬送する搬送装置であるので、広範囲にわたって薄膜を形成することが可能となる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、前記ガスを噴出する第1ガス噴出口と、前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを噴出する一対の第2ガス噴出口とを有し、
前記一対の第2ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を挟むように、前記一対の電極の軸方向に沿って配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、一対の第2ガス噴出口が、一対の電極の軸方向に沿って第1ガス噴出口を挟むように配置されているので、薄膜形成ガスを含有するガスを無原料ガスによって挟んだ状態でガス供給部から放電空間まで案内できる。このように、前記ガスが無原料ガスで挟まれていれば、無原料ガスによって遮られて、無原料ガスの外側へ流出することを防止できる。特に、一対の第2ガス噴出口の間隔が放電空間の間隔よりも狭められていれば、前記ガスが放電空間外に流出しにくくなり、確実に放電空間内に案内されることになる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、
前記無原料ガスを噴出する一対の第3ガス噴出口を有し、
前記一対の第3ガス噴出口は、前記軸方向における前記第1ガス噴出口の両端部よりも外側にそれぞれ配置されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、一対の第3ガス噴出口のそれぞれが、第1ガス噴出口の両端部よりも外側に配置されているので、軸方向に対しても薄膜形成ガスを含有するガスを無原料ガスが挟んだ状態でガス供給部から放電空間まで案内できる。したがって、第1ガス噴出口の両端部から放電空間外へ流出するガスを低減することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記一対の第2ガス噴出口及び前記一対の第3ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を囲うように連続していることを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、一対の第2ガス噴出口及び一対の第3ガス噴出口とが第1ガス噴出口を囲うように連続しているので、第1ガス噴出口から噴出されたガスを無原料ガスにより囲んだ状態で放電空間まで案内できる。したがって、薄膜形成ガスを含んだガスを放電空間外へ漏らさずに放電空間まで案内することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴としている。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、前記ガス及び無原料ガスの噴出方向が、互いに平行であるので、薄膜形成ガスを含有するガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れることを抑制し、前記ガスが無原料ガスの外側へ流出することをより確実に防止できる。
また、放電空間は、一対の電極の軸方向に沿って延在しているために、上述したように薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスの噴出方向が軸方向に対して直交する方向であれば、薄膜形成ガスを含有するガスを放電空間の全長にわたって確実に案内することができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴としている。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であるので、薄膜形成ガスを含有するガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れることを抑制できる。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項4〜8のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴としている。
【0023】
ここで、例えば、薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスの流路が上下方向に対して傾いていれば、前記ガス及び無原料ガスの流れは放電空間に到達する以前に重力の影響によって乱れてしまう。しかしながら、請求項9記載の発明のように、薄膜形成ガスを含有するガス及び無原料ガスが上下方向に沿いながら放電空間まで案内されれば、重力の影響を低減でき、前記ガス及び無原料ガスの流れが乱れを抑制することができる。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されて、前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部を備え、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴としている。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、吸引部が、放電空間を通過したガスを吸引するので、放電空間を通過したガスによって装置内部が汚れることを防止できる。特に、吸引部の吸引量が、ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていれば、放電空間を通過したガスを常に吸引でき、放電空間外へとガスが流出することを確実に防止することができる。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴としている。
【0027】
請求項11記載の発明によれば、一対の電極の間隔よりもガス供給部と一対の電極との間隔の方が狭いので、ガス供給部から放電空間までの距離を短くすることができ、ガス供給部から噴出されたガスの流れが、例え乱れたとしてもその影響が大きくなる前にガスを放電空間内に収めることができる。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、少なくとも表面が絶縁性を有していることを特徴としている。
【0029】
ここで、一対の電極により放電空間内に高周波電界が発生すると、放電プラズマが放電空間外にはみ出るように発生する。案内手段の位置によっては放電プラズマの発生領域内に侵入してしまう場合もあるが、案内手段が導体であるとアースの役目を果たしてしまい、放電プラズマを安定させにくい。このため、請求項12記載の発明のように少なくとも案内手段の表面が絶縁性を有していれば、放電プラズマが案内手段に導通することなく、放電プラズマを安定させることが可能になる。
【0030】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0031】
請求項13記載の発明によれば、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
【0032】
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0033】
請求項14記載の発明によれば、薄膜形成ガスを含有するガス中に窒素が50%以上含まれているので、他のガスを使用した場合よりも比較的安価にすることができる。
【0034】
請求項15記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0035】
請求項15記載の発明によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0036】
請求項16記載の発明における薄膜形成方法は、
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように基材を前記電極に密着させて保持することで、前記基材を前記活性化したガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスは前記放電空間まで案内されることを特徴としている。
【0037】
請求項16記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0038】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材は前記電極に密着されて保持されていることを特徴としている。
【0039】
請求項17記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0040】
請求項18記載の発明は、請求項16又は17記載の薄膜形成方法において、
前記基材は、前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴としている。
【0041】
請求項18記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0042】
請求項19記載の発明は、請求項16〜18のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを前記一対の電極のそれぞれに沿って噴出させて、前記ガスを挟んで案内することを特徴としている。
【0043】
請求項19記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0044】
請求項20記載の発明は、請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記ガスを前記一対の電極の軸方向に対して挟むように、前記無原料ガスを噴出させることを特徴としている。
【0045】
請求項20記載の発明によれば、請求項5記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0046】
請求項21記載の発明は、請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記無原料ガスは前記ガスを囲うように噴出されていることを特徴としている。
【0047】
請求項21記載の発明によれば、請求項6記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0048】
請求項22記載の発明は、請求項19〜21のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴としている。
【0049】
請求項22記載の発明によれば、請求項7記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0050】
請求項23記載の発明は、請求項19〜22のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴としている。
【0051】
請求項23記載の発明によれば、請求項8記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0052】
請求項24記載の発明は、請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴としている。
【0053】
請求項24記載の発明によれば、請求項9記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0054】
請求項25記載の発明は、請求項16〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部が、前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されていて、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴としている。
【0055】
請求項25記載の発明によれば、請求項10記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0056】
請求項26記載の発明は、請求項16〜25のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴としている。
【0057】
請求項26記載の発明によれば、請求項11記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0058】
請求項27記載の発明は、請求項16〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部は、少なくとも前記ガスを案内する部分の表面が絶縁性を有していることを特徴としている。
【0059】
請求項27記載の発明によれば、請求項12記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0060】
請求項28記載の発明は、請求項16〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0061】
請求項28記載の発明によれば、請求項13記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0062】
請求項29記載の発明は、請求項16〜28のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0063】
請求項29記載の発明によれば、請求項14記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0064】
請求項30記載の発明は、請求項16〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0065】
請求項30記載の発明によれば、請求項15記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、活性化後の前記ガスが基材に触れる前に、活性化以前のガスが基材に接してしまうことを防止できる。これにより、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材に付着することを防止でき、結果良質な薄膜の形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
[第1の実施の形態]
以下、添付図面を参照しつつ本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、薄膜形成装置1の概略構成を表す正面図である。
【0068】
この薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによって基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。薄膜形成装置1には、図1に示す通り、放電プラズマを発生させるための一対の電極2,3が間隔を空けて対向するように前後方向に沿って固定されている。この間隔が、上下方向で開放された放電空間Hとなり、この放電空間Hを成す電極2,3の対向する面をそれぞれ放電面2a,3aとする。
【0069】
図2は、電極2,3の概略構成を表す斜視図である。図2に示すように、電極2,3には、導電性の金属質母材21,31の表面に誘電体22,32が被覆された棒状電極である。電極2,3の角部23,33は、電極2,3の表面を滑らかに連続させるために円弧状に形成されている。つまり、電極2,3の放電面2a,3aと、放電面2a,3aに連なる放電面2a,3a以外の表面とは角部23,33によって滑らかに連続されることになる。そして、電極2,3には、図1に示すように電源4が接続されている。
【0070】
薄膜形成装置1には、図1に示すように、基材5と当該基材5を支持する支持体6とを、少なくとも放電空間H内で保持されるように重ねて搬送する搬送装置(保持機構)7が設けられている。
搬送装置7について具体的に説明すると、一方の電極2の外側(図1の左側)上方には、基材5の元巻を回転自在に保持する基材用保持ローラ71が、電極2,3と平行となるように配置されている。この基材用保持ローラ71と電極2との上下方向における間には、支持体6の元巻を回転自在に保持する支持体用保持ローラ72が基材用保持ローラ71に対して平行になるように配置されている。支持体用保持ローラ72に保持される支持体6にはその表面上に再剥離性を有する粘着剤61(図3参照)が塗布されている。
基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72と、一方の電極2との間には、基材5及び支持体6を一方の電極2まで案内する第1ガイドローラ73が、一方の電極2の右上端部と、支持体用保持ローラ72から支持体6が引き出される部分とを結ぶ線(図1における補助線S1)よりも下方に配置されている。これにより、支持体用保持ローラ72から引き出された支持体6が、基材用保持ローラ71から引き出された基材5の裏面に粘着剤61を介して密着してから、電極2の上面(図1における点P1)に接触することになる。
【0071】
また、一対の電極2,3の下方には、一方の電極2に沿って放電空間Hを通過した基材5及び支持体6を密着させたまま、他方の電極3に案内する案内路(図示省略)が形成されている。案内路は、基材5及び支持体6のうち、支持体6が他方の電極3の下面(図1における点P2)に接触するように形成されている。
【0072】
そして、他方の電極3の外側(図1の右側)上方には、基材5を巻き取る基材用巻取ローラ74が、電極2,3に平行となるように配置されている。この基材用巻取ローラ74と電極3との上下方向における間には、支持体6を巻き取る支持体用巻取ローラ75が基材用巻取ローラ74に対して平行になるように配置されている。基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75と、他方の電極3との間には、基材5及び支持体6をそれぞれ基材用巻取ローラ74、支持体用巻取ローラ75に案内する第2ガイドローラ76が、他方の電極3の左端部と、基材用巻取ローラ74に支持体6が巻き取られ始める部分とを結ぶ線(図1における補助線S2)よりも下方に配置されている。
【0073】
つまり、搬送装置7は、基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75が回転することによって、基材5及び支持体6のそれぞれを基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72から引き出すようになっている。引き出された基材5及び支持体6は、第1ガイドローラ73で粘着剤61により密着し、一方の電極2の上面、放電面2a、下面の順に電極2に沿い、案内路を介して、他方の電極3の下面、放電面3a、上面の順に電極3に沿ってから、電極3から離間して、第2ガイドローラ76で互いに剥離し、それぞれ基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75に巻き取られるようになっている。
【0074】
図3は、図1におけるA−A断面図であり、放電空間H内における電極2,3、基材5、支持体6の位置関係を表している。この図3に示すように、放電空間H内においては、支持体6が電極2,3と基材5との間に介在されていて、なおかつ支持体6と基材5とが粘着剤61を介して密着されて固定されることになる。
【0075】
また、図1に示すように放電空間Hの上方には、薄膜形成ガスを含有するガスを放電空間Hに供給するガス供給部8が設けられている。このガス供給部8には、薄膜形成ガスを含有するガスを貯留する第1ガスタンク9が、配管91及びガス調整部92(図6参照)を介して接続されているとともに、薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを貯留する第2ガスタンク10が、配管11及び無原料ガス調整部12(図6参照)を介して接続されている。ここで、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12は、配管91,11内部を流れるガス及び無原料ガスの流量や流速、ガス組成、濃度などを調整するものである。
【0076】
図4は、ガス供給部8を表す斜視図であり、図5はガス供給部8の断面図である。図4に示すように、ガス供給部8の後端部中央には、配管91が連結されるガス管81が設けられている。また、ガス供給部8の後端部には、配管11が連結される4つの無原料ガス用ガス管82が、それぞれガス管81の前後左右に配置されている。
【0077】
また、ガス供給部8の内部には、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入するガス及び無原料ガスの流路を形成する4枚の仕切板83が設けられている。4枚の仕切板83のうち、2枚の仕切板83は、前後に位置する無原料ガス用ガス管82と、左右に位置する無原料ガス用ガス管82及びガス管81との間で、上下左右方向に沿うように配置されている。これら2枚の仕切板83にわたって、残りの2枚の仕切板83が、左右に位置する無原料ガス用ガス管82とガス管81との間で、上下前後方向に沿うように配置されている(図5参照)。これらの仕切板83によって、ガス供給部8の先端の開口が分割されている。
【0078】
図6はガス供給部8の先端面を表す下視図である。この図6に示すように、分割された開口のうち、ガスを噴出する開口を第1ガス噴出口84、無原料ガスを噴出する開口を無原料ガス噴出口85とすると、第1ガス噴出口84は各無原料ガス噴出口85によって前後左右が囲まれることになる。複数の無原料ガス噴出口85のうち、第1ガス噴出口84を挟むように前後方向(一対の電極2,3の軸方向)に沿って配置される無原料ガス噴出口85が、本発明に係る第2ガス噴出口85aであり、前後方向における第1ガス噴出口84の外側に配置される無原料ガス噴出口85が、本発明に係る第3ガス噴出口85bである。これにより、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入したガス及び無原料ガスを個別に噴出するようになっている。
第1ガス噴出口84と第2ガス噴出口85aとは左右方向に対して平行となるように配置されているために、第1ガス噴出口84から噴出されるガスの噴出方向と、第2ガス噴出口85aから噴出される無原料ガスの噴出方向とが平行になる。また、第1ガス噴出口84と第3ガス噴出口85bとは前後方向に対して平行となるように配置されているために、第1ガス噴出口84から噴出されるガスの噴出方向と、第2ガス噴出口85aから噴出される無原料ガスの噴出方向とが平行になる。
【0079】
そして、図5に示すように、ガス供給部8の内部では、ガス及び無原料ガスの流路が、電極2,3の軸方向(前後方向)に対して直交する方向(上下方向)に沿っているために、ガス及び無原料ガスの噴出方向は上下方向に沿うことになる。このように、第1ガス噴出口84から噴出されたガスは、前後左右を無原料ガスで遮られた状態で上下方向に沿いながら放電空間Hまで案内されるようになっている。すなわち、第1ガス噴出口84、第2ガス噴出口85a及び第3ガス噴出口85bが本発明に係る案内手段である。ここで、ガス及び無原料ガスの流路が上下方向に対して傾いていれば、ガス及び無原料ガスの流れは放電空間Hに到達する以前に重力の影響を受けて乱れてしまう。しかしながら、上記したように、ガス及び無原料ガスが案内手段によって上下方向に沿いながら放電空間Hまで案内されれば、重力の影響を低減でき、前記ガス及び無原料ガスの流れが乱れを抑制することができる。
【0080】
そして、ガス供給部8は、ガス供給部8と一対の電極2,3との間隔(図5におけるT1)が、一対の電極2,3の間隔(図5におけるT2)よりも狭くなるように、配置されている。
【0081】
また、図1に示すように放電空間Hの下方には、放電空間Hから流出したガス及び無原料ガスを吸引する吸引部13が設けられている。この吸引部13には、放電空間Hにわたって延在する吸引口部14が備えられており、この吸引口部14には配管15を介して吸引ポンプ16が接続されている。
【0082】
そして、一対の電極2,3の放電面2a,3aの反対側には、支持体6が電極2,3に接触することで発生した削りカスを吸引する複数のカス用吸引部17が、支持体6と電極2,3の接点付近を吸引するように配置されている。
【0083】
図7は、薄膜形成装置1における主制御構成を表すブロック図である。この図7に示すように、薄膜形成装置1には、各駆動部を制御する制御装置40が設けられている。制御装置40には、電極2,3の温度を調節する温度調節装置44、記憶部41、電源4、ガス調整部92、無原料ガス調整部12、吸引ポンプ16、カス用吸引部17、基材用巻取ローラ74の駆動源42、支持体用巻取ローラ75の駆動源43、が電気的に接続されている。なお、制御装置40には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置40は、記憶部41中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。
【0084】
ガス供給部8から供給されるのは薄膜形成ガスを含有するガスと、薄膜形成ガスを含まない無原料ガスである。
前記ガスは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことのできる放電ガスと、薄膜の原料を含有する薄膜形成ガスとが混合されたものである。
放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本実施形態では、比較的安価な窒素を用いている。ここで薄膜形成ガスと混合した際に、窒素の濃度が50%以上になることが好ましい。さらに窒素に混合させるガスとして希ガスを使用した場合には、放電ガスの50%未満を含有させることが好ましい。
【0085】
薄膜形成ガスに含まれる原料としては、例えば、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等が挙げられる。
有機金属化合物としては、以下の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1xMR2yR3z式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等が挙げられる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等が挙げられ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等が挙げられ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等が挙げられ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0086】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する有機金属化合物が好ましい。
【0087】
また、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物の金属として、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。
【0088】
無原料ガスとしては、薄膜の原料となる薄膜形成性ガスに含有される化合物を含まないガスが使用される。具体的には、上記した放電ガスや酸素、一酸化炭素、空気などが挙げられる。未原料ガスとして放電ガスを使用した場合には、放電空間H内で発生する放電プラズマを均一にすることができる。
【0089】
次に、基材5について説明する。基材5としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材5が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態のガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材5の形態または材質には制限ない。材質的には、例えばガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラス板や、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等が挙げられる。
【0090】
樹脂フィルムは本発明に係る薄膜形成装置1の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0091】
樹脂からなる基材5の材質としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。
【0092】
また、本発明に用いられる基材5は、厚さが10〜100μm、より好ましくは20〜50μmのフィルム状のものが使用されている。
【0093】
次に、支持体6について説明する。支持体6としては、基材5及び電極2,3の間に介在するようにフィルム状に形成されたものが使用される。ここで、基材5の表面上に均一な製膜を行うには、少なくとも基材5の全体が放電空間H内に収まっていることが好ましいが、こうしてしまうと基材5の外側にも薄膜の原料が飛散してしまうために、支持体6の幅を、図3に示すように基材5の幅よりも長くすれば、支持体6が基材5の外側まで電極2,3を覆うことになり、原料が電極2,3に付着することを防止でき、好ましい。
また、支持体6の材質は、基材5と同一材質若しくは熱的物性が同等であることが好ましい。これにより、基材5と支持体6との熱変形量が同等となって、熱変形量の異なりによる皺やツレの発生をも低減することができる。
【0094】
次に、再剥離性を有する粘着剤61について説明する。粘着剤61は、基材5及び支持体6が放電空間H内で放電プラズマに晒されたとしても、その粘着性及び再剥離性が劣化しない耐熱性に優れたものが好ましい。このような粘着剤61としては例えばアクリル系粘着剤が挙げられる。そして、一般には、支持体6に予め粘着剤61がコーティングされたものが市販されているので、例えばPETからなる支持体6に、粘着剤61としてのアクリル系粘着剤がコーティングされた日東電工(株)製の「耐熱性表面保護接着テープ(型番E−MASK TP300)」を用いることが好ましい。
【0095】
次に、電極2,3を形成する金属質母材21,31及び誘電体22,32について説明する。
金属質母材21,31と誘電体22,32と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材21,31と誘電体22,32との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0096】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、5)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、6)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、7)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、8)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記1)または2)および5)〜8)が好ましく、特に1)が好ましい。
【0097】
そして、金属質母材21,31は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材21,31をチタンまたはチタン合金とし、誘電体22,32を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
【0098】
本発明に有用な電極の金属質母材21,31は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材21,31としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体22,32との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0099】
一方、誘電体22,32としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体22,32が好ましい。
【0100】
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体22,32の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体22,32の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0101】
次に、本実施形態の薄膜形成装置1の作用について説明する。
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置40は、吸引ポンプ16及びカス用吸引部17を駆動させてから、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御し、ガス供給部8から放電空間Hにガス及び無原料ガスを供給する。第1ガス噴出口84から噴出されたガスは、前後左右を無原料ガスで遮られた状態で上下方向に沿いながら放電空間Hまで案内される。この際、制御装置40は、ガス及び無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等となるように、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御する。レイノルズ数は、代表速度、代表長さ、動粘性係数の関数であるが、ガス及び無原料ガスの代表長さ(第1ガス噴出口84、第2ガス噴出口85a、第3ガス噴出口85bの口径)は固定されているために、制御装置40は、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御して、ガス及び無原料ガスの流量や流速、ガス組成、濃度などを調整することで、代表速度や動粘性係数を変化させて、ガス及び無原料ガスのレイノルズ数をほぼ同等としている。ここで、レイノルズ数がほぼ同等とは、ガスが無原料ガスによって放電空間Hまで案内される際に、ガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れない値のことであり、実験やシミュレーション等により最適な範囲が求められていることが好ましい。
【0102】
さらに、制御装置40は、ガス及び無原料ガスのレイノルズ数が同等となる流量及び流速から、ガス供給部8の噴出量を算出し、その噴出量よりも吸引部13の吸引量の方を大きく設定している。
【0103】
そして、放電空間Hにガスが供給されると、制御装置40は、基材用巻取ローラ74の駆動源42と、支持体用巻取ローラ75の駆動源43とを制御して、基材5及び支持体6を搬送させる。
【0104】
基材5及び支持体6の搬送が開始されると、制御装置40は、電源4をONにする。これにより、一方の電極2には、周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加され、他方の電極3には、周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
【0105】
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
【0106】
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0107】
そして、電流I1、I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0108】
このように、一方の電極2による第1高周波電界及び他方の電極3による第2高周波電界が発生されると、放電空間Hには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、ガスと反応し放電プラズマが発生する。基材5及び支持体6は、放電空間Hに進入する以前に、粘着剤61によって密着されていて、さらに電極2,3の放電面2a,3aに連続する放電面2a,3a以外の表面(一方の電極2の上面や、他方の電極3の下面)に密着されるために、放電面2a,3a以外の表面によって支えられた状態でプラズマ空間に進入する。これにより、基材5及び支持体6が熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。
【0109】
さらに、一対の電極2,3は、それぞれ温度調節装置44によってその表面温度が制御されているために、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に、放電面2a,3a以外の表面によって予め加熱されることとなる。このため、放電空間Hに基材5及び支持体6が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、基材5及び支持体6に皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。特に、電極2、3においては、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に接触する、放電面2a,3a以外の表面が所定の面積を確保しているので、放電面2a,3aに至るまでに、基材5及び支持体6を加熱することができ、放電空間Hに進入することによる急激な加熱を緩和でき、皺やツレの発生をさらに抑制できる。
そして、薄膜が形成された基材5は、基材用巻取ローラ74によって巻き取られ、支持体6も基材5から剥離して支持体用巻取ローラ75によって巻き取られる。
【0110】
以上のように、この第1の実施の形態の薄膜形成装置1によれば、一対の第2ガス噴出口85aが、一対の電極2,3の軸方向に沿って第1ガス噴出口84を挟むように配置されているので、ガスを無原料ガスによって挟んだ状態でガス供給部8から放電空間Hまで案内できる。このように、ガスが無原料ガスで挟まれていれば、無原料ガスによって遮られて、無原料ガスの外側へ流出することを防止できる。特に、一対の第2ガス噴出口84の間隔(図5におけるT3)が放電空間Hの間隔(図5におけるT2)よりも狭められていれば、ガスが放電空間H外に流出しにくくなり、確実に放電空間H内に案内されることになる。
また、一対の第3ガス噴出口85bのそれぞれが、第1ガス噴出口84の両端部よりも外側に配置されているので、前後方向に対してもガスを無原料ガスが挟んだ状態でガス供給部8から放電空間Hまで案内できる。したがって、第1ガス噴出口84の両端部から放電空間H外へ流出するガスを低減することができる。
このように、第1ガス噴出口84、第2ガス噴出口85a、第3ガス噴出口85bを備えた案内手段により、薄膜形成ガスを含有するガスが放電空間Hに導かれると、活性化以前のガスは無原料ガスによって遮られて基材5に接しない。つまり、活性化後のガスが基材5に触れる前に、活性化以前のガスが基材5に接してしまうことを防止できる。したがって、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材5に付着することを防止でき、結果均一で良質な薄膜形成が可能となる。
【0111】
また、ガス及び無原料ガスの噴出方向が、互いに平行であるので、ガスの流れが無原料ガスの流れによって乱れることを抑制し、前記ガスが無原料ガスの外側へ流出することをより確実に防止できる。そして、放電空間Hは、一対の電極2,3の軸方向に沿って延在しているために、上述したようにガス及び無原料ガスの噴出方向が軸方向に対して直交する方向であれば、ガスを放電空間Hの全長にわたって確実に案内することができる。
また、吸引部13が、放電空間Hを通過したガスを吸引するので、放電空間Hを通過したガスによって装置内部が汚れることを防止できる。特に、吸引部13の吸引量が、ガス供給部8の噴出量よりも大きく設定されていれば、放電空間Hを通過したガスを常に吸引でき、放電空間H外へとガスが流出することを確実に防止することができる。
さらに、一対の電極2,3の間隔(図5におけるT2)よりもガス供給部8と一対の電極2,3との間隔(図5におけるT1)の方が狭いので、ガス供給部8から放電空間Hまでの距離を短くすることができ、ガス供給部8から噴出されたガスの流れが、例え乱れたとしてもその影響が大きくなる前にガスを放電空間H内に収めることができる。
【0112】
また、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
また、本実施形態によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜が行われているので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0113】
なお、本発明は上記第1の実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
例えば、第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1では、一対の電極2,3として略角柱状の棒状電極を用いた場合を例示して説明したが、例えば図8に示すように一対の電極をそれぞれロール電極25,35としてもよい。この一対のロール電極25,35は回転自在であるために、支持体6の搬送に伴って回転するようになっている。
【0114】
また、例えば図9に示すように、一対の電極をそれぞれ環状のベルト電極26,36としてもよい。具体的に図9を参照にして説明すると、一対のベルト電極26,36は、それぞれ一対のローラ50,51によって放電空間Hを空けるように間隔を空けて張設されている。このローラ50,51のうち、一方のローラ50が回転駆動し、他方のローラ51が回転自在に設けられており、一方のローラ50が回転すれば、ベルト電極26,36及び他方のローラ51も回転するようになっている。ベルト電極26,36が回転すれば、支持体6及び基材5はベルト電極26,36の放電空間H側の表面(放電面26a,36a)に沿って搬送されるために、基材5の表面上に薄膜が形成されることになる。
【0115】
さらに、例えば図10に示すように、一対の電極2,3が略角柱状の棒状電極であっても、それぞれの電極2,3の放電面2a,3aに接しながら、支持体6及び基材5を搬送する環状の搬送ベルト52を設けてもよい。具体的に図10を参照にして説明すると、この環状の搬送ベルト52は、それぞれの電極2,3の上下方向に配置された一対のローラ50,51によって、電極2,3の放電面2a,3aに接触するように張設されている。つまり、一方のローラ50が回転すれば、搬送ベルト52及び他方のローラ51も回転するようになっている。搬送ベルト52が回転すれば、支持体6及び基材5は搬送ベルト52の放電空間H側の表面に沿って搬送されながら、一対の電極2,3を通過することになる。これにより、基材5の表面上に薄膜が形成されることになる。
【0116】
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態に係る薄膜形成装置について図11を参照に説明する。図11は第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、フィルム状の基材5に対して製膜を行う場合を例示して説明したが、この第2の実施の形態では、板状の基材に対して製膜を行う場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0117】
この第2の実施の形態に係る薄膜形成装置100には、図11に示すように、ガス供給部8に対して相対的に上下動する一対の電極2,3が所定の間隔を空けて配置されている。そして、ガス供給部8における一対の電極2,3を挟んで反対側には、吸引部13が配置されている。また、薄膜形成装置100には、一対の電極2,3からなる放電空間H1内で、例えば、ガラスからなる板状の基材5Aを、少なくとも一方の電極2,3に沿うように保持する保持機構(図示省略)が設けられている。
【0118】
保持機構は、例えば養生シートからなる板状の支持体6Bを、基材5A及び電極2,3に密着させるように基材5A及び電極2,3の間に介在させて、基材5Aと一緒に保持するようになっている。支持体6Bの表面上には粘着剤61Bが塗布されているために、この粘着剤61Bにより支持体6Bと基材5Aとが密着されている。ここで、保持機構は、基材5A及び支持体6Bを、ガス供給部8に対して相対的に移動しないように保持している。つまり、一対の電極2,3が支持体6Bに接触した状態で上下動すると、基材5A及び支持体6Bに対して相対的に上下動することになり、それに伴って放電空間H1も上下動する。ガス供給部8からガスを供給させながら、一対の電極2,3に電界を印加させて、一対の電極2,3を基材5の上端から下端まで移動させれば、基材5Aの全面にわたって薄膜を形成することができる。このように放電空間H1を上下動させたとしても、放電空間H1内の支持体6B及び基材5Aは粘着剤61Bによって固定されているために、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。
【0119】
[第3の実施の形態]
以下、第3の実施の形態に係る薄膜形成装置について図12を参照に説明する。図12は第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す斜視図である。上記した第1及び第2の実施の形態に係る薄膜形成装置1,100においては、ガス供給部8が下方に向けてガス及び無原料ガスを噴出する場合を例示して説明したが、この第3の実施の形態では、ガス供給部が上方に向けてガス及び無原料ガスを噴出する場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0120】
この第3の実施の形態に係る薄膜形成装置200には、図12に示す通りガス供給部18が、ガス及び無原料ガスを上方に向けて噴出するように、放電空間Hの下方に配置されている。ガス供給部18の上面には、ガスを噴出する第1ガス噴出口184と、第1ガス噴出口184に対して平行で無原料ガスを噴出する無原料ガス噴出口185とが形成されている。図13は、第1ガス噴出口184及び無原料ガス噴出口185の配置例を表す上視図である。この図13に示す通り、一対の無原料ガス噴出口185は、第1ガス噴出口184を挟むように前後方向に沿って配置されている。つまり、本実施形態では無原料ガス噴出口185が、本発明に係る第2ガス噴出口であるために、ガスは無原料ガスに挟まれながらガス供給部18から上方に向かって放電空間Hまで案内されることになる(図12のG1がガスの経路であり、G2が無原料ガスの経路である。)。
【0121】
なお、第1の実施の形態で例示したガス供給部8及び第3の実施の形態で例示したガス供給部18では、第1ガス噴出口84,184の全周が無原料ガス噴出口85,185によって囲われていないが、例えば図14に示すガス供給部28の通り、第1ガス噴出口284を囲うように無原料ガス噴出口285を配置しても構わない。ここで、無原料ガス噴出口285のうち、前後方向に沿って延在する部分が本発明に係る第2ガス噴出口285aであり、左右方向に沿って延在する部分が本発明に係る第3ガス噴出口285bである。このように、一対の第2ガス噴出口285aと一対の第3ガス噴出口285bとが、第1ガス噴出口284を囲うように連続しているので、第1ガス噴出口284から噴出されたガスを無原料ガスにより囲んだ状態で放電空間Hまで案内できる。したがって、ガスを放電空間H外へ漏らさずに放電空間Hまで案内することができる。
【0122】
[第4の実施の形態]
以下、第4の実施の形態に係る薄膜形成装置について図15を参照に説明する。図15は第4の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、ガス供給部8が、一対の電極2,3の間隔の外部から放電空間Hに向かってガス及び無原料ガスを噴出する場合を例示して説明したが、この第4の実施の形態では、ガス供給部が、一対の電極の間隔の内部から放電空間Hに向かってガス及び無原料ガスを噴出する場合を例示して説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0123】
図15に示す通り、この第4の実施の形態の薄膜形成装置300に備わるガス供給部38は、その先端部381が一対の電極2,3の間隔の内部に向かって細くなるように延出している。この先端部381の先端面には、第1ガス噴出口84、無原料ガス噴出口85が形成されている。そして、この先端部381の表面には、絶縁性材料がコーティングされているので、先端部381の表面が絶縁性を有することになる。これによって、先端部381が放電プラズマの発生領域に進入したとしても、放電プラズマがガス供給部38に導通することなく、放電プラズマを安定させることが可能になる。
【0124】
ここで、本実施形態では、搬送装置7によって基材5がガス供給部38に接触するように基材5及び支持体6は搬送されているが、この接触による基材5のキズを防止するために、ガス供給部38の基材5が接触する部分には、回転自在なガイドローラ382が設けられている。このガイドローラ382は、基材5の搬送及び接触に伴う回転により、基材5に対する擦れを抑制し、基材5のキズを防止している。
また、ガス供給部38と基材5とが接触しているために、基材5によってガス供給部38と一対の電極2,3の間隔とが閉塞されて、ガス供給部38から噴出されたガス及び無原料ガスが外部に漏れることを防止している。
【0125】
[第5の実施の形態]
以下、第5の実施の形態に係る薄膜形成装置について図16を参照に説明する。図16は第5の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。上記した第1〜第4の実施の形態に係る薄膜形成装置1,100,200,300においては、ガスを無原料ガスで案内して、ガスの放電空間H外への流出を防止する場合について説明したが、この第5の実施の形態では、無原料ガスではなく、案内部材によってガスを案内して、ガスの放電空間H外への流出を防止する場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0126】
図16に示す通り、この第5の実施の形態の薄膜形成装置400には、ロール電極からなる一対の電極402,403が間隔を空けて対向するように配置されている。この間隔の上方には、当該間隔に向けてガスを噴出するガス供給部48が配置されている。
ガス供給部48の先端部には、ガスを噴出するための第1ガス噴出口481が、前後方向に沿うように形成されている。また、ガス供給部48の先端部には、上下方向に延在する一対の案内部材410,411が、第1ガス噴出口481の全長にわたって第1ガス噴出口481を挟むように配置されている。この案内部材410,411は、その先端が一対の電極402,403により発生した放電空間H2内に少なくとも進入する長さに形成されている。すなわち、ガス供給部48によって第1ガス噴出口481からガスが噴出されると、当該ガスは一対の案内部材410,411で案内されて放電空間H2に到達する。放電空間H2に到達するまでの間、ガスは案内部材410,411によって外部への流出が遮られているので、活性化後のガスが基材5に触れる前に、活性化以前のガスが基材5に接してしまうことを防止できる。したがって、薄膜形成ガスに含まれる原料が活性化する以前に基材5に付着することを防止でき、結果均一で良質な薄膜形成が可能となる。
【0127】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、第1〜第5の実施の形態では、搬送装置7が支持体6及び基材5を密着させて搬送させる場合を例示して説明したが、支持体を省略して基材5のみを搬送させる構成であっても構わない。こうした場合、搬送時においては基材5と電極2,3とが擦れて、基材5にキズが生じるおそれがあるが、電極2,3の角部23,33が円弧状に形成されているためにキズの発生は抑えられることになる。さらには、表面の滑りを向上させる物質を電極2,3にコーティングして、そのキズを防止することが好ましい。表面の滑りを向上させる物質には、例えばテフロン(登録商標)やフッ素化合物などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】第1の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。
【図2】図1の薄膜形成装置に備わる電極の概略構成を表す斜視図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1の薄膜形成装置に備わるガス供給部を表す斜視図である。
【図5】図4のガス供給部の断面図である。
【図6】図4のガス供給部の先端面を表す下視図である。
【図7】図1の薄膜形成装置における主制御構成を表すブロック図である。
【図8】図1の薄膜形成装置の電極の変形例を表す正面図である。
【図9】図8の電極の変形例を表す正面図である。
【図10】図8の電極の変形例を表す正面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表すの正面図である。
【図12】第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す斜視図である。
【図13】図12のガス供給部に備わる第1ガス噴出口及び無原料ガス噴出口の配置例を表す上視図である。
【図14】図14の第1ガス噴出口及び無原料ガス噴出口の配置例を表す上視図である。
【図15】第4の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。
【図16】第5の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側断面図である。
【符号の説明】
【0129】
1 薄膜形成装置
2 電極
3 電極
5 基材
6 支持体
7 搬送装置(保持機構)
8 ガス供給部
13 吸引部
84 第1ガス噴出口
85 無原料ガス噴出口
85a 第2ガス噴出口
85b 第3ガス噴出口
H 放電空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
前記放電空間内で基材を保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
前記ガス供給部は、活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスを前記放電空間まで案内する案内手段を有していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材を前記電極に密着させて保持することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材を搬送する搬送装置であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、前記ガスを噴出する第1ガス噴出口と、前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを噴出する一対の第2ガス噴出口とを有し、
前記一対の第2ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を挟むように、前記一対の電極の軸方向に沿って配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、
前記無原料ガスを噴出する一対の第3ガス噴出口を有し、
前記一対の第3ガス噴出口は、前記軸方向における前記第1ガス噴出口の両端部よりも外側にそれぞれ配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記一対の第2ガス噴出口及び前記一対の第3ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を囲うように連続していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されて、前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部を備え、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、少なくとも表面が絶縁性を有していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項16】
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように基材を前記電極に密着させて保持することで、前記基材を前記活性化したガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスは前記放電空間まで案内されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項17】
請求項16記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材は前記電極に密着されて保持されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項18】
請求項16又は17記載の薄膜形成方法において、
前記基材は、前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを前記一対の電極のそれぞれに沿って噴出させて、前記ガスを挟んで案内することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項20】
請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記ガスを前記一対の電極の軸方向に対して挟むように、前記無原料ガスを噴出させることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項21】
請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記無原料ガスは前記ガスを囲うように噴出されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項25】
請求項16〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部が、前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されていて、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項26】
請求項16〜25のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項27】
請求項16〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部は、少なくとも前記ガスを案内する部分の表面が絶縁性を有していることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項28】
請求項16〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項29】
請求項16〜28のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項30】
請求項16〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項1】
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
前記放電空間内で基材を保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
前記ガス供給部は、活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスを前記放電空間まで案内する案内手段を有していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材を前記電極に密着させて保持することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材を搬送する搬送装置であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、前記ガスを噴出する第1ガス噴出口と、前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを噴出する一対の第2ガス噴出口とを有し、
前記一対の第2ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を挟むように、前記一対の電極の軸方向に沿って配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、
前記無原料ガスを噴出する一対の第3ガス噴出口を有し、
前記一対の第3ガス噴出口は、前記軸方向における前記第1ガス噴出口の両端部よりも外側にそれぞれ配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記一対の第2ガス噴出口及び前記一対の第3ガス噴出口は、前記第1ガス噴出口を囲うように連続していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されて、前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部を備え、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記案内手段は、少なくとも表面が絶縁性を有していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項16】
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように基材を前記電極に密着させて保持することで、前記基材を前記活性化したガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
活性化以前の前記ガスが前記基材に接しないように、前記ガスは前記放電空間まで案内されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項17】
請求項16記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間内で前記一対の電極のそれぞれに沿うように、前記基材は前記電極に密着されて保持されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項18】
請求項16又は17記載の薄膜形成方法において、
前記基材は、前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを前記一対の電極のそれぞれに沿って噴出させて、前記ガスを挟んで案内することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項20】
請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記ガスを前記一対の電極の軸方向に対して挟むように、前記無原料ガスを噴出させることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項21】
請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記無原料ガスは前記ガスを囲うように噴出されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出方向は、互いに平行で、かつ前記軸方向に対して直交する方向であることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス及び前記無原料ガスの噴出時におけるレイノルズ数がほぼ同等であることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極は、前記放電空間が上下方向で開放されるように配置されていて、
前記ガス供給部は、前記ガス及び前記無原料ガスが上下方向に沿いながら前記放電空間まで案内されるように配置されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項25】
請求項16〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間を通過した前記ガスを吸引する吸引部が、前記一対の電極を挟んで前記ガス供給部の反対側に配置されていて、
前記吸引部の吸引量は、前記ガス供給部の噴出量よりも大きく設定されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項26】
請求項16〜25のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部と前記一対の電極との間隔は、前記一対の電極の間隔よりも狭いことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項27】
請求項16〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス供給部は、少なくとも前記ガスを案内する部分の表面が絶縁性を有していることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項28】
請求項16〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項29】
請求項16〜28のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項30】
請求項16〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−28578(P2006−28578A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208542(P2004−208542)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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