説明

薄膜蒸着装置及びこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法

【課題】基板とマスクとの間の静電気を除去できる薄膜蒸着装置及びこれを利用した静電気除去方法を提供する。
【解決手段】基板110を支持するホルダー102と、基板の一面に対向するように配されるマスク103と、基板とマスクとの間に発生した静電気をマスクに電流を流して除去する静電気除去部120と、を備える薄膜蒸着装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とマスクとの間の静電気を除去する薄膜蒸着装置及びこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ディスプレイ装置は、視野角が広く、コントラストが高いだけでなく、応答速度が速いという、LCD(Liquid Crystal Display)に無い特長を有し、次世代ディスプレイ装置として注目されている。
【0003】
一般的に、有機発光ディスプレイ装置は、アノードとカソードとの間に発光層を挿入した積層型構造を有し、アノード及びカソードから注入される正孔及び電子が発光層で再結合して発光する原理により色相を具現している。しかし、このような構造では高効率発光を得難いため、それぞれの電極と発光層との間に電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層及び正孔注入層などの中間層を選択的にさらに挿入した構造も知られている。
【0004】
また、有機発光ディスプレイ装置は、互いに対向した第1電極と第2電極との間に、発光層及びこれを含む中間層を備える。有機発光ディスプレイ装置が備えるこのような各電極及び中間層はいろいろな方法によって形成される。例えば蒸着を利用して有機発光ディスプレイ装置を製作する場合は、薄膜などが形成される基板面に、形成される薄膜などのパターンと同じパターンを持つファインメタルマスク(Fine Metal Mask:FMM)を密着させ、かつ薄膜などの材料を蒸着して所定パターンの薄膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2007−0016878号明細書
【特許文献2】大韓民国特許第0257219号明細書
【特許文献3】大韓民国特許公開第2003−0047284号明細書
【特許文献4】特開2005−235568号公報
【特許文献5】大韓民国特許公開第2004−0042160号明細書
【特許文献6】大韓民国特許公開第2004−0063326号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、薄膜蒸着工程において、基板とマスクとの間に静電気が発生し、前記静電気によって基板とマスクとが分離されずに基板の一部が割れる不良が発生するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、マスクと基板との間の静電気を除去し、マスクと基板とが分離し難い現象を防止することが可能な、新規かつ改良された薄膜蒸着装置およびこれを利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基板を支持するホルダーと、前記基板の一面に対向するように配されるマスクと、前記基板と前記マスクとの間の静電気を除去する静電気除去部と、を備える薄膜蒸着装置が提供される。
【0009】
また、前記静電気除去部は、前記基板と前記マスクとの間に発生した静電気を前記マスクに電流を流して除去してもよい。
【0010】
また、前記静電気除去部は、一定の時間間隔で前記マスクに前記電流を流してもよい。
【0011】
また、前記静電気除去部は、前記マスクに電流を供給する電源と、前記電流量を調節する抵抗と、前記電源、前記抵抗、及び前記マスクと連結されて閉回路をなす電線と、を備えてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基板上に、互いに対向する第1電極及び第2電極と、前記第1電極及び第2電極の間に位置する有機層とを備える有機発光ディスプレイ装置の製造方法であって、前記基板の一面に対向するように配されたマスクを通じて前記基板上に前記有機層を蒸着する工程と、前記マスクと前記基板との間の静電気を除去する工程と、前記マスクと前記基板とを互いに離隔させる工程と、を含む薄膜蒸着装置の製造方法が提供される。
【0013】
また、前記静電気除去工程は、前記マスクに電流を流して前記静電気を除去してもよい。
【0014】
また、前記静電気除去工程は、一定の時間間隔で前記マスクに前記電流を流してもよい。
【0015】
また、前記静電気除去工程は、前記マスク、前記マスクに電流を供給する電源、及び前記電流の量を調節する抵抗が閉回路をなして、前記マスクに電流を供給してもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、マスクと基板との間の静電気を除去し、マスクと基板とが分離し難い現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着装置を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示されたマスクと静電気除去部とを概略的に示す斜視図である。
【図3】図1に図示された薄膜蒸着装置の作用を説明するための図である。
【図4】図1に図示された薄膜蒸着装置の作用を説明するための図である。
【図5】図1に図示された薄膜蒸着装置の作用を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着装置を利用して製造された有機発光ディスプレイ装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による薄膜蒸着装置100を概略的に示す断面図である。図2は、図1に図示されたマスク103と静電気除去部120を概略的に示す斜視図である。
【0020】
図1及び2を参照すれば、本発明の一実施形態による薄膜蒸着装置100は、チャンバー101、ホルダー102、マスク103、蒸着源104、及び静電気除去部120を備える。以下、各構成について説明する。
【0021】
チャンバー101は、その内部にホルダー102、マスク103、蒸着源104、及び静電気除去部120が配され、薄膜蒸着工程が行われる。チャンバー101の内部は、薄膜蒸着工程によって真空度が維持される。
【0022】
チャンバー101内には、基板110を固定させるためのホルダー102が配される。ホルダー102は、薄膜蒸着工程中に基板110をチャンバー101内で固定させる。図1に示したように、ホルダー102は、基板110の中央部に薄膜が蒸着されるように基板110のエッジを支持する。被蒸着体である基板110は、平板表示装置用基板でもよいし、複数の平板表示装置を形成できるマザーガラスのような大面積基板でもよい。
【0023】
図1に示すように、チャンバー101内において、基板110と対向する側には、蒸着源104が配される。蒸着源104は、その内部に蒸着物質(図示せず)を収納しており、蒸着物質を加熱させることができる。蒸着源104内で加熱された蒸着物質は、気化して基板110の一面に蒸着し、薄膜を形成する。
【0024】
マスク103は、基板110と蒸着源104との間に配され、マスク103に設けられた複数の開口部(図示せず)に沿って、薄膜のパターンを決定できる。すなわち、蒸着源104で気化した蒸着物質は、マスク103の開口部を通過して基板110の一面に蒸着して薄膜を形成する。ここで、基板110とマスク103との間の間隔が大きくなるほどシャドー現象が発生するので、これを防止するために基板110とマスク103との間をなるべく密着させる。マスク103の開口部には、複数のスリットが形成されたマスキングパターンが備えられるか、またはドット状のマスキングパターンが備えられるなど多様な変形が可能である。
【0025】
静電気除去部120は、基板110とマスク103との間の静電気を除去する。ここで、マスク103及び基板110は、所定の位置に薄膜を蒸着させるために頻繁な整列作業を経るようになる。また、基板110が有機発光ディスプレイ装置用基板の場合には、赤色、緑色、青色を発光する有機層を基板上に蒸着するので、それぞれの色相によって異なるマスクを利用せねばならず、異なるマスクを使用する度に整列作業を経るようになる。このような基板110とマスク103との間の整列作業は、マスク103と基板110との間の配置を異ならせつつ行われるが、この場合、マスク103と基板110とが数回接触してから分離される過程を経る。これにより、マスク103と基板110との間に静電気が発生し、前記静電気によって基板110とマスク103とが分離されずに基板110の一部が割れる不良が発生する。
【0026】
上記現象について、図3及び図4を参照して説明する。マスク103と基板110との間の整列または相異なるマスク103の入れ替えによって、図3に示したように、マスク103、基板110、薄膜107の間に静電気が発生して、マスク103、基板110、及び薄膜107が互いに接触して、基板110とマスク103とがさらに密着される。次いで、薄膜蒸着が終わった後、図4に示したように、基板110を持ち上げて基板110をマスク103から分離するが、静電気により基板110の一部がマスク103と分離されない場合に、基板110が割れるか、または蒸着された薄膜107の一部が基板110から離れるという問題が発生する。
【0027】
したがって、本発明の一実施形態では図5に示したように、静電気除去部120がマスク103に連結され、静電気除去部120が基板110とマスク103との間の静電気を除去する。これにより、基板110とマスク103とを分離する過程で発生しうる基板110の割れ現象を防止できる。静電気除去部120は、一例として、マスク103に電流を供給する電源105、前記電流の量を調節する抵抗106、及び電源105と抵抗106とマスク103とを連結して閉回路を設ける導電線107を備える。また、マスク103に流す電流は、一定の時間間隔で断続的に流してもよい。
【0028】
静電気除去部120は、図2に示したように、マスク103の側部に配されることが望ましい。マスク103の上下面には、蒸着源104から放出された蒸着物質が通過して基板110上に蒸着されるためである。
【0029】
次に、本発明の一実施形態による薄膜蒸着装置を利用して製造された有機発光ディスプレイ装置について図6を参照して説明する。図6には、薄膜蒸着装置を利用して製造されたアクティブマトリックス(AM)型有機発光ディスプレイ装置における一つの副画素を図示する。図6に示す副画素は、少なくとも一つのTFTと自発光素子であるEL素子(例えば、OLED)とを有する。ただし、前記TFTは、必ずしも図6に図示された構造のみで可能なものではなく、その数及び構造は多様に変形可能である。これらのAM型有機電界発光表示装置をさらに詳細に説明すれば、次の通りである。
【0030】
図6から分かるように、基板320上にバッファ層330が形成されており、このバッファ層330の上部にTFTが備えられる。前記TFTは、半導体活性層331と、この半導体活性層331を覆うように形成されたゲート絶縁膜332と、ゲート絶縁膜332の上部のゲート電極333とを持つ。このゲート電極333を覆うように層間絶縁膜334が形成され、層間絶縁膜334の上部にソース及びドレイン電極335が形成される。このソース及びドレイン電極335は、ゲート絶縁膜332及び層間絶縁膜334に形成されたコンタクトホールにより、活性層331のソース領域及びドレイン領域にそれぞれ接触する。一方、前記ソース/ドレイン電極335に、有機発光素子(Organic
Light Emitting Diode:OLED)のアノード電極になる第1電極層321が連結される。前記第1電極層321は平坦化膜337の上部に形成されており、この第1電極層321を覆うように画素定義膜338が形成される。そして、この画素定義膜338に所定の開口部を形成した後、OLEDの有機層326が形成され、これらの上部に共通電極として第2電極層327が蒸着される。
【0031】
前記OLEDの有機層326のうち有機発光層は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)を備え、フルカラーを具現できる。各色相の有機発光層は、前述した薄膜蒸着装置により形成される。各色相の有機発光層は、それぞれ別途のマスクを利用して形成され、有機発光層が蒸着された後には、前術した薄膜蒸着装置の静電気除去部により基板とマスクとの間の静電気を除去し、基板とマスクとを分離する。
【0032】
このような有機発光ディスプレイ装置は、外部の酸素及び水分の浸透を遮断するため、密封される。以上説明した本発明の実施形態によるOLEDは一例であり、その構造は多様に変形可能である。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、有機発光ディスプレイ装置関連の技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
101 チャンバー
102 ホルダー
103 マスク
104 蒸着源
110 基板
120 静電気除去部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するホルダーと、
前記基板の一面に対向するように配されるマスクと、
前記基板と前記マスクとの間の静電気を除去する静電気除去部と、
を備えることを特徴とする薄膜蒸着装置。
【請求項2】
前記静電気除去部は、前記基板と前記マスクとの間に発生した静電気を前記マスクに電流を流して除去することを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項3】
前記静電気除去部は、一定の時間間隔で前記マスクに前記電流を流すことを特徴とする請求項2に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項4】
前記静電気除去部は、
前記マスクに電流を供給する電源と、
前記電流量を調節する抵抗と、
前記電源、前記抵抗、及び前記マスクと連結されて閉回路をなす電線と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項5】
基板上に、互いに対向する第1電極及び第2電極と、前記第1電極及び第2電極の間に位置する有機層とを備える有機発光ディスプレイ装置の製造方法であって、
前記基板の一面に対向するように配されたマスクを通じて前記基板上に前記有機層を蒸着する工程と、
前記マスクと前記基板との間の静電気を除去する工程と、
前記マスクと前記基板とを互いに離隔させる工程と、
を含むことを特徴とする有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項6】
前記静電気除去工程は、前記マスクに電流を流して前記静電気を除去することを特徴とする請求項5に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項7】
前記静電気除去工程は、一定の時間間隔で前記マスクに前記電流を流すことを特徴とする請求項6に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項8】
前記静電気除去工程は、前記マスク、前記マスクに電流を供給する電源、及び前記電流の量を調節する抵抗が閉回路をなして、前記マスクに電流を供給することを特徴とする請求項6に記載の有機発光ディスプレイ装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−127218(P2011−127218A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187379(P2010−187379)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】