説明

薬剤包装装置

【課題】底板やシャッタ板への静電気による錠剤の付着を防止する。
【解決手段】薬剤包装装置の錠剤供給ユニットが備える錠剤払出枡の下端開口に、底板43が設けられている。底板43は基端側にピン44を備え、先端側が自由端である。錠剤払出部材の移動により、錠剤払出枡が対応する段部に到達すると底板43が閉鎖位置から開放位置へピン周りに回動する。底板43が開放位置に移動すると、錠剤払出枡内の錠剤が落下する。底板43の上面には表面粗度を高める加工として、中央部を高くして上向きに膨出する膨出部43aと、この膨出部43aの上面に設けられた複数のリブ状部43bを備える。静電気による底板43への錠剤の付着を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭義の錠剤、カプセル剤、及び丸剤のような非粉末形態の固形薬剤を包装可能な薬剤包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤や散薬等の薬剤を処方に基づいて1回服用分毎に包装する薬剤包装装置が種々提供されている。この種の薬剤包装装置として、錠剤をいわゆる手撒作業により供給する方式の錠剤供給ユニットを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。具体的には、この方式の錠剤供給ユニットは、薬剤包装装置の上面側に、マトリクス状に配置された複数の錠剤収容枡を備える。作業者はこれらの錠剤収容枡に錠剤を手作業で投入する。投入完了後、錠剤収容枡の底部を構成するシャッタが開放し、個々の錠剤収容枡内の錠剤は可動の錠剤払出部材に設けられた対応する錠剤払出枡に落下する。錠剤払出枡内の錠剤は、以下の機構により順次包装ユニットに供給される。
【0003】
図17を参照すると、個々の錠剤払出枡542の下端開口には底板543が設けられている。底板543は、基端側には錠剤払出部材に両端が支持されたピン544が貫通している。このピン544によって底板543は錠剤払出部材に対して回転自在に連結されている。また、軸部544の周囲には円柱状部545が形成されている。一方、底板543の先端側は自由端である。底板543は、錠剤払出枡の下端開口を閉鎖して錠剤払出枡内に錠剤を保持する閉鎖位置(図17では下側の底板543)と下端開口を開放して錠剤払出枡542内の錠剤を包装ユニットへ落下させる開放位置(図17では上側の底板543)との間で、ピン544周りに回動自在である。錠剤払出部材の下側には、上面が底板543の下面を支持して閉鎖位置で保持し、先端に段部537a,537bが設けられた固定板537が配置されている。個々の段部537a,537bの先端に円柱状部547が設けられている。この図17では、互いに隣接する段部537a,537bとそれらに対応する底板543を図示している。
【0004】
錠剤払出部材の移動により段部537a,537bが軸部544よりも後方に位置すると、底板543が閉鎖位置から開放位置へピン544周りに回動する。詳細には、底板543側の円柱状部545の周面が固定板537側の円柱状部547の周面に沿って移動するのに伴って底板543が閉鎖位置から開放位置に向けて徐々に回動し、底板543側の円柱状部545の中心が固定板537側の円柱状部547の中心を通過した時点で底板543が完全に開放位置となる。
【0005】
一つの底板543が開放位置となる錠剤払出部材の位置決めは、錠剤払出部材の駆動機構にのみによりなされ、底板543と固定板537の段部537a,537bはこの位置決めに寄与しないため、錠剤払出部材の位置決め精度が低い。そのため、一つの底板543(図17では上側の底板543)が開放位置にあるとき、隣接する底板543、すなわち次に閉鎖位置から開放位置へ回動する底板543(図17では下側の底板543)について、底板543側の円柱状部545と固定板537側の円柱状部547との間隔αを十分に確保する必要がある。具体的には、錠剤払出部材の位置決め精度が低いため、仮に間隔αが狭いとすると、一つの底板543(図17では上側の底板543)が開放位置にあるときに、次に閉鎖位置から開放位置へ回動する底板543(図17では下側の底板543)に底板543側の円柱状部545の周面が固定板537側の円柱状部547の周面まで到達し、図17において矢印βで示すように、底板543bの自由端に自重による下方変位(いわゆる垂れ)が生じ、底板543bが僅かに開放して隙間を生じてしまう。この隙間を通って錠剤払出枡542内の錠剤が落下すると不具合の原因となる場合がある。特に、錠剤が薄い場合、この隙間からの意図しない錠剤の落下が生じやすい。
【0006】
間隔αは底板543の段部537a,537b間のピッチに対応する。従って、底板543bの垂れに起因する錠剤の意図しない落下を防止するためには、段部537a,537b間のピッチを大きく設定せざるを得ない。その結果、すべての底板543を開放させるために必要な錠剤払出部材の移動距離が増加し、装置が大型化する。
【0007】
また、従来のこの種の薬剤包装装置では、錠剤払出枡の底板543の上面や、前述のシャッタの上面に静電気により錠剤が付着し、不具合の原因となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−323382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は底板やシャッタ板への静電気による錠剤の付着を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1包分の錠剤を収容する錠剤収容枡が、前後方向に複数列、横方向に複数行設けられた錠剤収容部と、前記錠剤収容枡の下端開口から前記錠剤を取り出し、かつ取り出した前記錠剤を1包分ずつ払い出す錠剤払出部と、前記錠剤払出部により払い出された前記錠剤を1包分ずつ包装する包装部とを備える薬剤包装装置において、前記錠剤払出部は、前記錠剤収容部の下側に配置され、前記錠剤収容枡の前記下端開口を開閉する開閉機構と、前記開閉機構の下側に配置され、前記開閉機構により開放された前記錠剤収容枡の前記下端開口から落下する前記錠剤を収容する錠剤払出枡が前記錠剤収容枡に対応して複数列かつ複数行設けられ、前記錠剤払出枡の行方向に移動可能である、錠剤払出部材と、個々の前記錠剤払出枡の下端開口に設けられ、基端側に前記錠剤払出部材へ回転自在に連結された軸部を備え、先端側が自由端であり、前記錠剤払出枡の前記下端開口を閉鎖して前記錠剤払出枡内に前記錠剤を保持する閉鎖位置と、前記錠剤払出枡の前記下端開口を開放して前記錠剤を前記包装部へ落下させる開放位置との間で、前記軸部周りに回動自在である、上面に表面粗度を高める加工を施した底板と、前記錠剤払出部材の下側に配置され、前記錠剤払出枡の行方向の一方の先端に段部が設けられた固定板と、前記錠剤払出部材を前記錠剤払出枡の前記行方向に移動させる駆動装置とを備え、前記駆動装置による前記錠剤払出部材の移動により、前記錠剤払出枡が対応する前記段部に到達すると、前記底板が前記閉鎖位置から前記開放位置へ前記軸部周りに回動する、薬剤包装装置を提供する。
【0011】
この構成により、静電気による底板への錠剤の付着を防止できる。
【0012】
例えば、前記底板の上面は、前記表面粗度を高める加工として、中央部を高くして上向きに膨出する膨出部と、この膨出部の上面に設けられた複数のリブ状部、複数の半楕円球状の膨出部、又は不規則な凹凸部を備える。
【0013】
前記開閉機構は、前記錠剤収容枡に対応する複数の錠剤通過孔が形成され、上面が前記錠剤収容枡の底部を構成する閉鎖位置と、前記錠剤通過孔が前記錠剤収容枡と連通して前記錠剤収容枡の下端開口を開放する開放位置とに移動する一対のシャッタを備え、前記シャッタの閉鎖部の上面に表面粗度を高める加工を施すことが好ましい。この構成により、静電気による底板やシャッタへの錠剤の付着を防止できる。
【0014】
例えば、前記シャッタの閉鎖部の上面は、前記表面粗度を高める加工として、複数の扁平な楕円球状の膨出部、複数の直方体状の突起、又は不規則な凹凸部を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる薬剤包装装置によれば、表面粗度を高める加工により、静電気による底板やシャッタへの錠剤の付着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる薬剤包装装置の外観を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態にかかる薬剤包装装置の構成を示すブロック図。
【図3A】シャッタが閉鎖された状態の錠剤供給ユニットの部分断面図。
【図3B】シャッタ開放中の錠剤供給ユニットの部分断面図。
【図3C】シャッタが開放された状態の錠剤供給ユニットの部分断面図。
【図4】錠剤収容部を示す斜視図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】錠剤払出部の分解斜視図。
【図7】シャッタ板の平面図。
【図8A】シャッタ板の代案の平面図。
【図8B】図8Aの部分拡大図。
【図8C】図8Bの断面図。
【図9】シャッタ板の他の代案の部分平面図。
【図10A】錠剤払出部材の側面図。
【図10B】錠剤払出部材の斜め下側から見た斜視図。
【図10C】錠剤払出部材の斜め下側から見た拡大斜視図。
【図11】底板と開放用突起の関係を示す模式図。
【図12A】底板の斜視図。
【図12B】底板の平面図。
【図12C】底板の側面図。
【図12D】底板の底面図。
【図12E】底板の正面図。
【図12F】底板の背面図。
【図13】底板の代案の斜視図。
【図14】底板の他の代案の斜視図。
【図15A】開放用突起の斜視図。
【図15B】開放用突起の側面図。
【図15C】開放用突起の平面図。
【図16】包装ユニットの斜視図。
【図17】従来の薬剤包装装置における底板と固定板の関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(全体構成)
図1に示す本発明の実施形態に係る薬剤包装装置1は、錠剤供給ユニット2、散薬供給ユニット3、包装ユニット4、包装済の薬剤が排出される薬剤排出部5を備える。錠剤供給ユニット2と散薬供給ユニット3はハウジング6の上面側に設けられている。一方、包装ユニット4はハウジング6内に配置されている。ハウジング6の上面には、コントロールパネル9が設けられている。
【0019】
図2を併せて参照すると、錠剤供給ユニット2、散薬供給ユニット3、及び包装ユニット4の動作は、コントロールパネル9からの入力、各種センサ27〜30からの入力、及び外部から入力される処方情報に基づいて、コントローラ11,12,13によって制御される。本実施形態では、錠剤供給ユニット2はコントローラ11で制御され、散薬供給ユニット3はコントローラ12で制御され、包装ユニット4はコントローラ13で制御される。ただし、錠剤供給ユニット2、散薬供給ユニット3、及び包装ユニット4のうちの2つ以上のユニットを共通のコントローラで制御する構成も可能である。
【0020】
(錠剤供給ユニット)
以下、図3A〜図15Cを参照して錠剤供給ユニット2について説明する。まず、図3A〜図3Cを参照すると、錠剤供給ユニット2は、複数の錠剤収容枡21がマトリクス状に設けられた固定の錠剤収容部22(本実施形態ではハウジング6の上面側の一部を構成する)と、個々の錠剤収容枡21に手撒で供給された1包分の錠剤を自動的に順次取り出して包装ユニット4に供給する錠剤払出部23とを備える。
【0021】
(錠剤収容部)
図1、図4、及び図5を参照すると、本実施形態における錠剤収容部22には、同一形状の錠剤収容枡21が前後方向(列方向)に4列、横方向(行方向)に7行で合計28個設けられている。錠剤収容部22は、行方向に隣接する錠剤収容枡21間を区切る複数の第1の隔壁24aと、列方向に隣接する錠剤収容枡21を区切る複数の第2の隔壁24bとを備え、これら第1及び第2の隔壁24a,24bによって個々の錠剤収容枡21が区画されている。個々の錠剤収容枡21は上下両端が開口している。上端開口21aは、作業者が手作業で錠剤収容枡21に錠剤を投入するための開口として機能する。上端開口21aの反対側に位置する下端開口21bは、錠剤収容枡21内に収容された錠剤が錠剤払出部23へ送られる際に通過する開口として機能する。
【0022】
錠剤収容部22は、概ねシート状ないしは板状の封鎖カバー25と、同様に概ねシート状ないしは板状の保護カバー26を備える。保護カバー26が開放位置にあるとき、封鎖カバー25は、錠剤収容部22から退避した開放位置と、錠剤収容部22上に載置された閉鎖位置に移動可能である。封鎖カバー25が開放位置にあれば、28個のすべての錠剤収容枡21の上端開口21aが開放され、すべての錠剤収容枡21内に錠剤を投入できる。一方、封鎖カバー25が閉鎖位置にあれば、4列7行の錠剤収容枡21のうち最も後側の1列を構成する7個の錠剤収容枡21の上端開口21aが封鎖カバー25によって封鎖される。その結果、3列7行で合計21個の錠剤収容枡21にのみ錠剤を投入できる。
【0023】
(錠剤払出部)
図3A〜3C、及び図6を参照すると、錠剤供給ユニット2の錠剤払出部23は、錠剤収容部22の下方に配置された上側シャッタ板34、この上側シャッタ板34の下方に互いに重ね合わせた状態で配置された下側シャッタ板35、下側シャッタ板35の下方に配置された可動の錠剤払出部材36、並びに錠剤払出部材36の下方に配置された固定板37(錠剤払出部材36に対して固定されている。)を備える。
【0024】
上側及び下側シャッタ板34,35は、互いに重ね合わせられた状態を維持しつつ、錠剤収容枡21の配置の行方向に移動可能である。上側及び下側シャッタ板34,35には、錠剤収容枡21の配置の列方向に延びる第1の仕切部38と錠剤収容枡21の配置の行方向に延びる第2の仕切部39により区画され、かつそれぞれ錠剤収容枡21と対応する4列7行で合計28個の錠剤通過孔41が形成されている。また、上側及び下側シャッタ板34,35の図3A〜3Cにおいて左側の端部には下向きに折り曲げた係止部34a,35aが設けられている。さらに、上側シャッタ板34は錠剤収容部22に対して図示しないばねで連結され、図3A〜図3Cにおいて右向きに弾性的に付勢されている。さらにまた、下側シャッタ板35は上側シャッタ板34に対して図示しないばねで連結され、図3A〜図3Cにおいて右向きに弾性的に付勢されている。
【0025】
上側及び下側シャッタ板34,35に外力が作用しない初期状態では、図3Aに示すように、上側及び下側シャッタ板34,35は、上側シャッタ板34の第1の仕切部38と下側シャッタ板35の第1の仕切部38とにより個々の錠剤収容枡21の下端開口21bを閉鎖する閉鎖位置にある。言い換えれば、上側シャッタ板34及び下側シャッタ板35の第1の仕切部38の上面が錠剤収容枡21の下端開口21bを閉鎖する底部を構成する。図7に示すように、上側シャッタ板34及び下側シャッタ板35の第1の仕切部38の上面には、表面粗度を高めるための加工として、エンボス加工により扁平な楕円球状の膨出部130が複数形成されている。これらの膨出部130を設けることにより、錠剤収容枡21に投入された錠剤が上側シャッタ板34や下側シャッタ板35の第1の仕切部38,39の上面に静電気により付着するのを防止できる。この付着防止の原理としては、錠剤は膨出部130の先端と接触するので、錠剤と上側シャッタ板34や下側シャッタ板35との接触面積が減少することと、接触面積の低減に伴い錠剤と上側シャッタ板34や下側シャッタ板35との間に微細な隙間が形成され、この隙間でコロナ放電が生じることによるものと推察される。
【0026】
上側シャッタ板34及び下側シャッタ板35の第1の仕切部38の上面の表面粗度を高めるための加工の代案としては、図8A〜図8Cに示すように、第1の仕切部38の上面の所定の部位38aに複数の直方体状の突起131をマトリクス状に設けて規則的な凹凸を形成してもよい。他の代案としては、図9に示すように、前述の部位38aに、エッチング加工等により不規則な凹凸部132を形成してもよい。
【0027】
図3A〜図3C、図6、及び図10A〜図10Cを参照すると、錠剤払出部材36はピニオンラック機構及びモータを含む駆動装置によって錠剤収容枡21の配置の行方向に往復移動可能である。錠剤払出部材36には、錠剤収容部22の錠剤収容枡21に対応して4列7行で合計28個の錠剤払出枡42が設けられている。錠剤払出枡42は上下両端が開口している。個々の錠剤払出枡42の下端開口には、開閉可能な底板43が配置されている。
【0028】
図11〜図12Fを合わせて参照すると、個々の錠剤払出枡42の下端開口に設けられた底板43は基端側がピン(軸部)44によって錠剤払出部材36に対して回動自在に支持されている。具体的には、底板43の基端側にはピン44を貫通させる概ね円筒状の一対の軸受部43eが設けられている。また、底板43の下面には開放用の錘45が取り付けられている。底板43の先端側は自由端である。底板43は、錠剤払出枡42の下端開口を閉鎖して錠剤払出枡内42に錠剤を保持する閉鎖位置(図11の底板43a)と、錠剤払出枡42の下端開口を開放して錠剤払出枡42内の錠剤を包装ユニット4へ落下させる開放位置との間で、ピン44周りに回動自在である。
【0029】
図12A〜図12Cに最も明瞭に示すように、閉鎖位置にあるときに錠剤を保持する底板43の上面には、表面粗度を高める加工として、中心部を高くして上向きに膨出する膨出部43aと膨出部43aの上面に複数のリブ状部43bを設けている。この膨出部43aとリブ状部43bを設けたことにより、錠剤が底板43の上面に静電気により付着するのを防止できる。この付着防止の原理としては、錠剤は膨出部43aの先端と接触するので、錠剤と底板43との接触面積が減少することと、接触面積の低減に伴い錠剤と底板43との間に微細な隙間が形成され、この隙間でコロナ放電が生じることによるものと推察される。
【0030】
底板43の上面の表面粗度を高める加工の代案としては、図13に示すように、複数のエンボス加工等により複数の半楕円球状の膨出部133aを設けた板体133を底板43の上面に取り付けてもよい。また、図14に示すように、エッチング加工等により不規則な凹凸部134aを設けた板体134を底板43の上面に取り付けてもよい。
【0031】
底板43の下面には、ピン44(基端側)と自由端(先端側)との中間位置よりもピン44に開放用窪み43cが設けられている。具体的には、底板43の下面に一対のリブ状部43d,43dが設けられており、このリブ状部43d,43dの一端(底板43の基端側の端部)と、底板43の下面と、軸受部43eとにより開放用窪み43cが画定されている。
【0032】
固定板37の上面には錠剤払出枡42の底板43が載せられ、それによって底板43が閉鎖位置で保持される。図6を参照すると、固定板37の図において右側の端部には、錠剤収容枡21及び錠剤払出枡42の列数(本実施形態では4列)と同一数の段部37a〜37dが設けられている。隣接する段部37a〜37d間のピッチP(列方向に隣接する段部37a〜37d間の行方向の間隔)は、錠剤収容枡21及び錠剤払出枡42の行方向の形成ピッチを錠剤払出枡21及び錠剤払出枡42の列数で除した値に相当する。
【0033】
図10B及び図10Cを併せて参照すると、個々の段部37a〜37dには、開放部材144が取り付けられている。図15A〜図15Cを併せて参照すると、この開放部材144は固定板37の段部37a〜37dの下面への取り付け部144aを基端側に備え、上向きに突出する開放用突起144bを備える。開放用突起を固定板37の段部37a〜37d自体に一体に形成してもよい。図11を参照すると、開放用突起144bは、先端144cから水平方向に対して角度θ1(本実施形態では7.8度であり0〜10度程度が好ましい)で下向きに延びる上面144dと、先端144cから水平方向に対して角度θ1よりも大きい角度θ2(本実施形態では45度であり0〜90度程度が好ましい)下面144eとを備える。
【0034】
図11の上側の底板43を参照すると、底板43の開放用窪み43cの先端側(底板43の自由端側)の壁面43fは底板43が開放位置となると開放用突起144bの下面144eと面接触する角度の傾斜面に設定されている。
【0035】
錠剤払出部材36が固定板37に対して錠剤払出枡42の配置の行方向に移動し、段部37a〜37d側の上向きに突出した開放用突起144bの先端43cは底板43の下面を支持するが、錠剤払出枡42が対応する段部37a〜37dに達すると、底板43の下面の開放用窪み43cに段部37a〜37d側の開放用突起144bが離脱可能に嵌り込み、それによって底板43が開放位置へ回動して錠剤払出枡42の下端開口が開放される(図11において上側の底板43)。この構成を採用したことにより、錠剤払出部材36の移動により底板43の開放用窪み43cがいったん開放用突起144bに到達すると、開放用突起144bの先端144cが直ちに開放用窪み43cに嵌り込むので、底板43はピン44を支点として閉鎖位置から開放位置に直ちに自重回動する。言い換えれば、底板43は、閉鎖位置から開放位置へ徐々に回動するのではなく、所定位置に達すると閉鎖位置から開放位置へ急激かつ確実に自重回動する。さらに言い換えれば、底板43の姿勢ないしは位置は概ね、閉鎖位置と開放位置の2つの位置のみであり、閉鎖位置でも開放位置でもない中間的な状態(いわゆる垂れが生じた状態ないしは半開きの状態)は実質的にない。従って、段部37a〜37dの先端に到達する前に、底板43の自由端に自重による下方変位(いわゆる垂れ)が生じず、それによって錠剤払出枡42の下端に隙間が生じ、この隙間からの意図しない錠剤の落下や、それに起因する包装上の不具合が発生するのを防止できる。
【0036】
また、底板43の開放用窪み43cに開放用突起144bが嵌り込むことにより、錠剤払出部材36が高精度で位置決めされる。そのため、一つの底板43が開放位置にあるとき、隣接する底板43、すなわち次に閉鎖位置から開放位置へ回動する底板43(図11では下側の底板43)について、開放用窪43cと開放用突起144bの間の隙間αを狭く設定できる。そして、この隙間αを狭く設定できるため、固定板37の段部37a〜37d間のピッチPを小さくできる。その結果、すべての底板43を開放させるために必要な錠剤払出部材36の移動距離を短縮でき、装置の小型化(錠剤収容枡21及び錠剤払出枡42の配列の行方向の寸法の縮小)を図ることができる。
【0037】
さらに、底板43の開放用窪み43cに開放用突起144bが嵌り込むことにより、錠剤払出部材36が高精度で位置決めされるので、錠剤払出部材36を高速で移動させることが可能であり、錠剤払出部23から包装ユニット4への錠剤の払出速度を高速化し、包装速度の高速化を実現できる。
【0038】
(散薬供給ユニット)
散薬供給ユニット3は、手作業で散薬が供給され、この散薬を自動的に1包分ずつに分割して順次包装ユニット4に供給するものである。
【0039】
図1を参照すると、散薬供給ユニット3は、ハウジング6の上面に開口した断面が概ねV字状の細長い枡(V枡51)を備える。V枡51の底部は開閉可能である。また、V枡51の下側には複数の分割容器(図示せず)が配置されている。V枡51内に投入された散薬は底部が開放すると分割容器へ落下して所定量に分割される。分割容器の底部も開閉可能である。分割容器の底部を順次開放することにより、個々の分割容器内の散薬がホッパ67へ落下して1包分毎に包装ユニット4へ供給される。また、V枡51内には散薬の分割数を調整するための可動の仕切板52が配置されている。
【0040】
散薬供給ユニット3の構成は、散薬を1包分ずつ包装ユニット4に供給できる限り、特に限定されない。例えば、散薬供給ユニット3は、ホッパに投入された散薬を分配皿の外周環状溝に供給し、掻出し装置によって外周環状溝から1包分ずつ掻き出した散薬を順次包装ユニット4に供給するものでもよい。
【0041】
(包装ユニット)
図16を参照すると、包装ユニット4は、ハウジング6内に収容された保持フレーム71上に、シート供給部63、展開ガイド65、ホッパ67、ヒートシール部68、及び印刷部69を備える。シート供給部63は、予め長手方向に沿って二つ折りされた細長い包装シート61を巻回したロール62から包装シート61を巻き出して供給する。展開ガイド65は、シート供給部63により供給される二つ折りの包装シート61を展開して開口する。ホッパ67は、錠剤供給ユニット2及び散薬供給ユニット3から薬剤が投入開口67bを上端に有し、基端には二つ折りされた包装シート61の開口に薬剤を導入する導入口として機能するノズル部67aを下端に備える。ヒートシール部68は、導入された薬剤を閉じ込めるように包装シート61をシールし、それによって連続する薬包が作成される。印刷部69は、包装シート61の経路のうちシート供給部63と展開ガイド65の間に配置されており、包装シート61に患者名、薬剤名、用法等の情報を印刷する。
【0042】
以下、薬剤包装装置1の動作を説明する。手撒作業により上端開口21aから錠剤を投入して個々の錠剤収容枡21に収容させた後、コントロールパネル9のスタートボタンを選択すると、錠剤払出部23が動作し、錠剤収容部22から供給される錠剤が図示しない搬送路を介して1包分ずつ包装ユニット4のホッパ67へ送り、包装ユニット4において分包処理が実行される。
【0043】
まず、スタートボタンが選択される前、すなわち非作動時には、錠剤払出部23は図3Aに示す状態にある。すなわち、上側及び下側シャッタ板34,35は、上側シャッタ板34の第1の仕切部38と下側シャッタ板35の第1の仕切部38とにより個々の錠剤収容枡21の下端開口21bを閉鎖する閉鎖位置にある。スタートボタンが選択されると、図3Bに示すように、錠剤払出部材36が図において左方向(行方向)に移動する。錠剤払出部材36の一端が下側シャッタ板35の係止部35aに引っ掛かり、その結果下側シャッタ板35も錠剤払出部材36と共に左方向に移動する。錠剤払出部材36がさらに図において左方向に移動すると、下側シャッタ板35の係止部35aを介して錠剤払出部材36の一端が上側シャッタ板34の係止部34aに引っ掛かり、その結果上側シャッタ板34も錠剤払出部材36と共に左方向に移動する。
【0044】
錠剤払出部材36と共に上側及び下側シャッタ板34,35が移動することで、錠剤払出部23は図3Cに示す状態となる。すなわち、上側及び下側シャッタ板34,35は、上側シャッタ板34の第1の仕切部38が錠剤収容部22の第1の隔壁24aの下面側に退避し、かつ下側シャッタ板35の第1の仕切部38が上側シャッタ板34の第1の仕切部38の下面側に退避し、上側及び下側シャッタ板34,35の錠剤通過孔41,42が個々の錠剤収容枡21の下端開口21bとそれぞれ対向する開放位置となる。また、上側及び下側シャッタ板34,35が開放位置にあるときには、錠剤払出部材36の錠剤払出枡42に上端側の開口がそれぞれ個々の下端開口21bと対向する状態となる。そのため、個々の錠剤収容枡21に収容されていた1包分の錠剤は下端開口21b及び錠剤通過孔41,41を経て錠剤払出部材36の錠剤払出枡42に収容される。前述のように上側及び下側シャッタ板34,35の上面には表面粗度を高める加工を施しているので、錠剤により静電気が上側及び外側シャッタ板34,35に付着することがなく、錠剤は錠剤収容枡21から錠剤払出枡42へ確実に落下する。
【0045】
次に、錠剤払出部材36が図において右方向に移動すると、錠剤払出枡42の底板43が移動方向前側のものから順に段部37a〜37dに到達する。開放用突起144bが開放用窪み43cに嵌り込むと、底板43が閉鎖位置から開放位置に回動する。その結果、個々の錠剤払出枡42内の錠剤が落下してホッパ67に供給される。開放用突起144bが開放用窪み43cに嵌り込むことで底板43が開放するので、対応する段部37a〜37dに到達するまでは、底板43は確実に閉鎖位置で維持され、錠剤払出枡42からの意図しない錠剤の落下は生じない。また、前述のように、底板43の上面には表面粗度を高める加工を施しているので、静電気により錠剤が底板43に付着することがなく、底板43が開放位置に回動すれば、錠剤払出枡42から確実に錠剤が落下する。錠剤払出枡42からホッパ67に落下した錠剤は、包装ユニット4で1包分ずつ包装される。
【0046】
錠剤払出部材36が図3A〜図3Cにおいて右方向の移動限度まで移動して、すべての錠剤収容枡42の底板43が開放された後(すべての錠剤収容枡42内の錠剤が包装ユニット4へ払い出された後)、錠剤払出部材36は図3A〜図3Cにおいて左方向に移動する(戻り動作)。錠剤払出部材36のこの戻り動作により、底板43は図11において上側の底板43のように開放用窪み43cに開放用突起144bが嵌り込んだ開放位置からピン44周りに回動し、図11において下側の底板43のように開放用窪み43cから抜け出た開放用突起144bの先端144cで下面が支持される開放位置となる。前述のように、開放用窪み43cの先端側の壁面43fは、底板43が開放位置にあるときに開放用突起144bの下面144eに面接触する傾斜面であるので、錠剤払出部材36が戻り動作(図3A〜図3Cや図11において左方向の移動)を行うと、開放用突起144bの下面144e及び先端144cによって底板43の開放用窪み43cの下面が円滑かつ確実に上向きに押し上げられる。従って、個々の底板43は錠剤払出部材36の戻り動作に伴って順次確実かつ速やかに閉鎖位置に戻る。このように、本実施形態における開放用窪み43cと開放用突起144bの組み合わせは、底板43の閉鎖位置から開放位置への迅速な回動を保証するだけでなく、錠剤払出後における底板43の開放位置から閉鎖位置への確実かつ速やかな回動をも保証する。
【符号の説明】
【0047】
1 薬剤包装装置
2 錠剤供給ユニット
3 散薬供給ユニット
4 包装ユニット
5 薬剤排出部
6 ハウジング
9 コントロールパネル
11,12,13 コントローラ
21 錠剤収容枡
21a 上端開口
21b 下端開口
22 錠剤収容部
23 錠剤払出部
24a,24b 隔壁
25 封鎖カバー
26 保護カバー
34 上側シャッタ板
34a 係止部
35 下側シャッタ板
35a 係止部
36 錠剤払出部材
37 固定板
38,39 仕切部
38a,39a 部位
41 錠剤通過孔
42 錠剤払出枡
43 底板
43a 膨出部
43b リブ状部
43c 開放用窪み
44 ピン
45 錘
51 V枡
61 包装シート
62 ロール
63 シート供給部
65 展開ガイド
67 ホッパ
68 ヒートシール部
69 印刷部
71 保持フレーム
130 膨出部
131 突起
132 凹凸部
133,134 板体
133a 膨出部
134a 凹凸部
144 開放部材
144a 取り付け部
144b 開放用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1包分の錠剤を収容する錠剤収容枡が、前後方向に複数列、横方向に複数行設けられた錠剤収容部と、
前記錠剤収容枡の下端開口から前記錠剤を取り出し、かつ取り出した前記錠剤を1包分ずつ払い出す錠剤払出部と、
前記錠剤払出部により払い出された前記錠剤を1包分ずつ包装する包装部と
を備える薬剤包装装置において、
前記錠剤払出部は、
前記錠剤収容部の下側に配置され、前記錠剤収容枡の前記下端開口を開閉する開閉機構と、
前記開閉機構の下側に配置され、前記開閉機構により開放された前記錠剤収容枡の前記下端開口から落下する前記錠剤を収容する錠剤払出枡が前記錠剤収容枡に対応して複数列かつ複数行設けられ、前記錠剤払出枡の行方向に移動可能である、錠剤払出部材と、
個々の前記錠剤払出枡の下端開口に設けられ、基端側に前記錠剤払出部材へ回転自在に連結された軸部を備え、先端側が自由端であり、前記錠剤払出枡の前記下端開口を閉鎖して前記錠剤払出枡内に前記錠剤を保持する閉鎖位置と、前記錠剤払出枡の前記下端開口を開放して前記錠剤を前記包装部へ落下させる開放位置との間で、前記軸部周りに回動自在である、上面に表面粗度を高める加工を施した底板と、
前記錠剤払出部材の下側に配置され、前記錠剤払出枡の行方向の一方の先端に段部が設けられた固定板と、
前記錠剤払出部材を前記錠剤払出枡の前記行方向に移動させる駆動装置と
を備え、
前記駆動装置による前記錠剤払出部材の移動により、前記錠剤払出枡が対応する前記段部に到達すると、前記底板が前記閉鎖位置から前記開放位置へ前記軸部周りに回動する、薬剤包装装置。
【請求項2】
前記底板の上面は、前記表面粗度を高める加工として、中央部を高くして上向きに膨出する膨出部と、この膨出部の上面に設けられた複数のリブ状部を備える、請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項3】
前記底板の上面は、前記表面粗度を高める加工として、複数の半楕円球状の膨出部を備える、請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項4】
前記底板の上面は、前記表面粗度を高める加工として、不規則な凹凸部を備える、請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項5】
前記開閉機構は、前記錠剤収容枡に対応する複数の錠剤通過孔が形成され、上面が前記錠剤収容枡の底部を構成する閉鎖位置と、前記錠剤通過孔が前記錠剤収容枡と連通して前記錠剤収容枡の下端開口を開放する開放位置とに移動する一対のシャッタを備え、
前記シャッタの閉鎖部の上面に表面粗度を高める加工を施している、請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項6】
前記シャッタの閉鎖部の上面は、前記表面粗度を高める加工として、複数の扁平な楕円球状の膨出部を備える、請求項5に記載の薬剤包装装置。
【請求項7】
前記シャッタの閉鎖部の上面は、前記表面粗度を高める加工として、複数の直方体状の突起を備える、請求項5に記載の薬剤包装装置。
【請求項8】
前記シャッタの閉鎖部の上面は、前記表面粗度を高める加工として、不規則な凹凸部を備える、請求項5に記載の薬剤包装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−196715(P2009−196715A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104322(P2009−104322)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【分割の表示】特願2007−285979(P2007−285979)の分割
【原出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】