説明

薬剤耐性菌による感染性病状のための非経口的併用療法

本発明は、非眼感染性病状において多剤耐性菌を抑制する医薬組成物を記述する。糖ペプチド、特にバンコマイシン、およびセファロスポリン系、特にセフトリアキソンを含む組成物が開示されている。そのような組成物が重篤な感染症を伴う入院患者のための非経口的投与に有用であることが見出された。具体的には、本発明はまた、CVMC剤のような賦形剤をさらに含む医薬組成物を開示し、そして適切な溶媒とともに注射前に再調製のための乾燥粉末の形態において利用可能である。本発明の医薬組成物は、通常、非経口的に投与される溶液中での沈殿に対する抵抗性を強化することが見出された。本発明はまた、使用前に再調製するために密閉容器中に保存される製剤の細目を提供する。本発明はさらに、この組成物の製造方法を提供し、多剤耐性菌による非眼感染性病状を有する対象の治療方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、多剤耐性菌に対して使用するための非眼感染性病状の治療方法としての医薬組成物に関する。本発明の詳細は、2種の異なる抗生物質、糖ペプチドおよびセファロスポリンを含む医薬組成物を開示し、少なくとも1種の可溶化/安定化剤を用いて混合し、乾燥粉末の形態で存在する。本発明により開示される治療方法は、適切な溶媒を伴って再調製後、非経口的投与経路に従う。
【0002】
本発明の背景
Sharma Rashmiらにより、Indian J Med Sci 2005の「抗菌耐性:現在の課題および可能な解決策」の論文中で、抗菌剤の使用は、ここ数年急速に増え、そこで詳述されるようなこれらの薬剤を使用する抗生物質に菌株の抵抗性を示す。多剤耐性である菌株の新しい範囲はまた、進化している。
【0003】
最初に知られた抗生物質であるペニシリンは、ブドウ球菌に関して優れた有効性を示している。しかしながら、ペニシリンを分解するペニシリン耐性菌が、時間とともに出現した。メチシリンおよびセフェム系抗生物質のようなペニシリナーゼ耐性ペニシリン(PRP)の研究開発は、ペニシリン耐性菌によりもたらされる多くの問題に、臨床面において解決策を提供した。
【0004】
しかしながら、近年、第三世代のセフェム系抗生物質(これは、ブドウ球菌に対して弱い抗菌能を示し、これらの抗生物質に対して耐性である)の過剰使用および誤用の結果として、選択的に増えている。そのような細菌は、院内において広がっていき、院内感染の症例数の増加を導く。特に、一般にMRSAとして公知である、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が出現し、それに対して、公知であるβ−ラクタム剤の全ては無効である。MRSAは、広く個々にペニシリン系抗生物質だけでなく、セフェム系抗生物質およびアミノグリコシド系抗生物質に対しても耐性がある多剤耐性菌の一例である。MRSA感染症に対する現在使用されている抗生物質の例は、バンコマイシン(VCM)などのような糖ペプチドを含有する製剤を含む。しかしながら、VCMは、2003年、Assadullah Sらにより「MRSAにおける低水準バンコマイシン耐性の出現」において述べたように、例えばMRSAのような細菌に対する耐性に関与している。
【0005】
さらに、複数の抗生物質の併用は、Barry Kreiswirthによる「再出現のブドウ球菌感染症」の論文において、抗菌能の強化を目指して従来どおりに調査されている。したがって、本発明でされているように、耐性菌に効果的で、相乗的に作用することができる新規抗菌性配合剤の開発に対する緊急の必要性がある。
【0006】
広域抗菌スペクトルのグラム陰性およびグラム陽性菌を抑制するための、多くの試みがあった。これらは、バンコマイシンおよびセフトリアキソンのような多剤抗菌剤の投与を含む。セフトリアキソンは、グラム陽性球菌に対して、第一世代のセファロスポリンより活性が低い。しかしながら、それは、例えばインフルエンザ菌、淋菌および髄膜炎菌などの、βラクタマーゼ産生菌およびペニシリン耐性菌を含む腸内細菌科のようなグラム陰性菌に対して、著明に活性がある。それは、また、ペニシリナーゼ産生菌を含む黄色ブドウ球菌に対する活性があるが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対してはない。ところが、バンコマイシンは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌を含む種々のグラム陽性菌に対して作用する。バンコマイシンは、プラスミド媒介性であるように見える腸球菌に対して高水準の獲得伝達性耐性を示す。
【0007】
種々の伝染性疾患状態の予防および治療のための複数の抗菌剤の使用が、生体外で相乗的であるとわかる。Ribes Sらは、J Antimicrob Chemother 2005の論文において、セフトリアキソン+バンコマイシンの併用を副阻止濃度(sub inhibitory concentrations)で試験する場合、相加効果が観察されると説明した。
【0008】
多剤耐性肺炎球菌の、そして、より最近、バンコマイシンに耐性がある肺炎球菌の出現が、世界的に重要な公衆衛生懸念である(Henriques Normarkら、Clin. Infect. Dis. 2001; Novak, R, Nature 1999; R. M. Atkinsonら、40th Intersci. Conf. Antimicrob. Agents Chemother., 2000; A. Marcheseら、40th Intersci. Conf. Antimicrob. Agents Chemother., 2000)。
【0009】
さまざまな初期の研究は、バンコマイシンとセフトリアキソンの併用が、細菌性髄膜炎において一般的に遭遇する病原菌に対する単剤療法だけよりも細菌に対する活性が多いことを示している(Violeta Rodriguez-Cerrato, Antimicrob Agents Chemother. 2003)。彼らの研究の目的は、バンコマイシン耐性肺炎球菌により生じる実験的な髄膜炎に対して、これらの薬剤の細菌学的有効性を評価すること、および併用においてバンコマイシンおよびセフトリアキソンを伴う従来の治療により得られるこれらを伴う結果を比較することであった。
【0010】
Int J Antimicrob Agents. 2005において、Suntur BMらにより、実験ウサギ・モデルにおけるペニシリンおよびセファロスポリン耐性肺炎球菌性髄膜炎の治療におけるリファンピシリン+セフトリアキソン対バンコマイシン+セフトリアキソンで、セフトリアキソン+リファンピシリンがセフトリアキソン+バンコマイシンと同様の効果があったことがわかった。
【0011】
Kaplan SL (2002)は、セフトリアキソンおよびバンコマイシンが、肺炎球菌性髄膜炎の治療および管理に役立つことを見出した。Kaplanは、1ヵ月齢より年長である乳児および児童のための疑わしい細菌性髄膜炎の標準的な経験的治療が、セフォタキシムまたはセフトリアキソンとバンコマイシンとの併用であると述べている。抗菌薬感受性が得られた後、治療は変更される。
【0012】
Jaing, THらは、彼らの2002年の発表において、白血病の子供における高ペニシリン耐性緑色連鎖球菌により生じる髄膜炎の治療を報告した。論文は、うまくバンコマイシン、セフトリアキソンおよび顆粒球コロニー刺激因子を伴う治療をされた患者の症例を報告した。
【0013】
Cottangnoud Pら(2002)は、実験ウサギ髄膜炎において、100mg/kgの用量で与えられたセフェピムが、5.3〜10mg/Lまでの間の脳脊髄液における濃度と関連しており、そして-0.61±0.24 Δ log10cfu/mL × hの殺菌作用が、ペニシリンおよびキノロン耐性肺炎球菌変異株(MIC 4mg/L)によって髄膜炎の治療においてバンコマイシンと併用されるセフトリアキソンの標準投与方法(-0.58±0.14 Δ log10cfu/mL × h)と同様であることを発見した。
【0014】
Banonら(2001)は、スペインにおいて時間殺菌評価を検討した。この試験において、10種の肺炎連鎖球菌の臨床分離株(ペニシリンに耐性のある中間体を伴う5種、および5種の高耐性中間体)に対する4種の抗微生物薬投与方法の殺菌作用は、バンコマイシンまたはホスホマイシンを伴う併用における、ペニシリンまたはセフトリアキソンのいずれかを使用する殺菌動態試験を用いて決定した。
【0015】
Desbiollesら(2001)は、大便連鎖球菌およびペニシリン耐性肺炎連鎖球菌に対して、アモキシシリンとセフトリアキソンの間、ならびにバンコマイシンとセフトリアキソンの間の生体外相乗効果のための分画最大作用法を検討した。彼らは、新規な生体外試験方法の使用評価、ならびにペニシリンおよびセファロスポリンに高耐性がある肺炎連鎖球菌株(PRP株)に対して、アモキシシリン(AMZ)+セフトリアキソン(CRO)、およびCRO+バンコマイシン(VAN)の併用の潜在的効果を調査した結果のグラフ表示を報告した。したがって、いずれの併用も、PRP感染症の治療の使用について提唱された。
【0016】
Huebnerら(2000)は、セファロスポリン耐性肺炎球菌の原因が排除されるまで、セフトリアキソンまたはセフォタキシムが、髄膜炎の治療のためにバンコマイシンと組み合わせて使用すべきであると報告した。
【0017】
Roos (1999)は、第三世代のセファロスポリンとバンコマイシンの併用を使用する細菌性髄膜炎治療を研究した。彼は、地域で感染する細菌性髄膜炎の初期の経験的治療が、ペニシリン耐性肺炎球菌が病原体であってもよく、それ故に、第三世代のセファロスポリン(セフォタキシムまたはセフトリアキソン)とバンコマイシンの併用を含まなければならないという可能性に基づかなければならないことを示唆している。
【0018】
Climoら(1999)は、バンコマイシンおよびβラクタムの併用が、バンコマイシンに対する感受性の減少を示すブドウ球菌に対して相乗的であることを発見した。バンコマイシンと、メチシリン耐性ブドウ球菌の59種の分離株(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌およびブドウ球菌)に対するセファロスポリンのような複合抗菌剤との併用の間で、相乗作用の証拠を収集した。彼らは、抗ブドウ球菌性活性を有するバンコマイシンとβ−ラクタムの併用が、糖ペプチドに対する感受性の減少を示すブドウ球菌の臨床株を有する感染症の治療のための効果的な投与方法であると結論づけた。
【0019】
1993〜1995年、スロベニアで、侵襲性の肺炎連鎖球菌の抗菌薬耐性試験において、Cizman Mら(1997)は、ペニシリン耐性分離株(中間の耐性)がセフォタキシム、セフトリアキソンおよびバンコマイシンに対して感受性があることを発見した。
【0020】
先行技術の不利な点
先に記載した参照の1つの特徴は、その中で報告された複数の抗菌剤治療において使用された併用の各々の薬が、特定または既定の比率なしで次々に、個々に投与されたということである。そのような投与、およびいくつかの上記参照の場合に言及されたような同時投与も、多くの不利な点を有している。これらは、ここで記載したとおりである:
1.多剤療法において使用する、併用として言及される薬は、次々に投与される。
2.これらの薬物は、単剤として予備混合された組成物において入手できない。
3.より多くの刺し傷を必要とし、投与時間も長いので、薬物の投与において複雑性を伴う。
4.治療期間は、発明の組成物の同時投与の場合は約7日に対して、これらの薬物を個別投与した場合は約14日に延長される。
5.患者に対する費用は、増えた入院期間のため、より高い。
6.失敗率は、用量の不一致のためより高い。Kazragisら(1996)は、12時間毎に体重あたり25mg/kgの用量で投与されたセフトリアキソン、および12時間毎に30mg/kgで投与されたバンコマイシンを与えていた。Ulla-Stina Salminenら(1999)は、6時間毎にセフトリアキソン2g用量およびバンコマイシン500mgを、48時間与えていた。
7.固定間隔で固定用量の有効性がないため、耐性の発現の可能性は、先行技術の場合、非常に高い。
【0021】
従来技術に記載されている薬物のセフトリアキソンおよびバンコマイシンの成分の個別投与は、以下の理由のために、満足に治療の問題を解決することができない:
(a)成分を、異なる用量において次々に、そして個々に投与する。
(b)成分を、均等な割合においていずれも投与する、または比率は決定されず、固定されていない。
(c)そのような治療の成功率は、所望のレベルのとおりでない。
(d)非経口的経路を伴う経口経路の使用を、場合によっては採用する。
(e)2種の個々の成分は、相互に化学的に共存できないため、同時投与は、非常に慎重に行わなければならない。
(f)個々の成分が共存できないため、それ以上の予防策は、個々の成分のための異なるシリンジの使用のように服用させる必要があり、2種の薬物の投与期間が異なる。
【0022】
本発明の利点
成功する抗菌治療のための必須条件は、薬物が最小発育阻止濃度に近い、または高い濃度で感染部位に達しなければならないということである。その上に、発明の組成物により到達する時、これらの濃度を特定の最小時間で維持しなければならない。時々、感染部位に達するさまざまな抗菌剤の効力の違いは、薬剤固有の抗菌活性の相違よりも、治療のための薬剤の決定に、より大きな影響を及ぼす。
【0023】
非経口的投与は、通常、緊急な状態において薬物送達に推奨される方法であり、また、消化管疾患または嚥下障害を伴う治療対象、同様に、非協力的、意識不明、あるいは経口薬物を受け入れることができないか、または抵抗する対象において有用でもある。
【0024】
さらに、非経口的投与経路は、多種多様な薬物のために、多くの状況において経口送達しながら多大な効果をもたらす。非経口的投与のひとつの利点は、薬物の治療効果のある血清中の濃度に、他の投与経路によって到達可能であるよりも短時間で到達することである。これは、他の投与経路、例えば、経口、経粘膜的、経皮的、直腸および膣経路などと比較して、治療効果のより速やかな発現および感染部位へのより完全な送達をもたらす。これは、特に静脈内注射に当てはまるが、それによって、薬物は直接血流中に導入される。それゆえに、本発明は、非経口的形態のみで開発される。
【0025】
非経口的投与は、また経口投与より、より予測可能な薬物の血清濃度をもたらす。これは、代謝、薬物の部分的または全体的な分解、食物との結合、および他の原因によって、胃腸管における減少を除去するからである。加えて、いくつかの抗菌剤の有効利用は、望ましい効果に到達するための持続的な、管理された投与を必要とする。
【0026】
これまで考慮された非経口薬の理論のもうひとつの側面は、可能な場合はいつでも、非経口製剤が、投与前に粒状物質/沈殿および変色について視覚的に検査されるべきことである。推奨された製造業者の指示に従って製造された場合は、既存の個々の製剤が、十分な透明度を示すにもかかわらず、従来技術においてされているように、再調製で結合する医薬組成物で生じる粒状物質の形成/沈殿を、さらに減少させて最小限にすることが必須である。
【0027】
上述した従来技術の参照文献は、多くの有用な組成物を開示する。しかしながら、医療分野において、複数の抗菌剤および治療方法も感染性病状の予防にも使用する医薬組成物についてそのような組成物を使用する必要性が今もなお存在する:
(a)感染性病状の部位へ治療薬の速やかな送達を確保する;
(b)安全で、相互に化学的に共存できる;
(c)いかなる医学的危険をもたらさず、容易に投与することができる;
(d)細菌感染の治療および非眼感染性病状に関連した他の合併症の入院患者の効果的治療を提供する;
(e)多種多様な感染性微生物に対して有効性を提供する;
(f)有効性をもたらしながら、低用量の治療薬を投与する可能性を有し;
(g)副作用の増加なしに、高い用量の抗菌剤を投与する可能性を有し;そして
(h)その一般毒性を減少させて、全身作用の危険を最小限にすると同時に、活性薬剤の治療係数の改善を確保する。
【0028】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、以下のように記載する:
本発明の目的は、安全であり、多種多様な感染性微生物に対して有効性を有する医薬組成物を提供すること、および多剤耐性菌の非眼感染性病状に対して提供された有効な治療において有用である組成物を提供することである。
【0029】
さらに、本発明の別の目的は、感染性病状の部位へ治療薬の速やかな治療送達を確保する非眼感染性病状の治療法を提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、急性または重篤な非眼感染症を伴う入院患者のための、非経口的投与の薬学的に有効量を提供することである。
【0031】
さらに、本発明の別の目的は、副作用の増加なしに、有効な治療を提供する可能性を有する製剤を提供することである。
【0032】
本発明のさらなる目的は、本発明の医薬組成物の製造法を提供することである。
【0033】
さらに、本発明のさらなる目的は、投与が容易で、化学的に共存できる、安定した製剤を提供することである。
【0034】
発明の概要
【0035】
本発明は、非眼感染性病状において多剤耐性菌を抑制する医薬組成物について記載する。糖ペプチド、特にバンコマイシン、およびセファロスポリン、特にセフトリアキソンを含む組成物を開示する。そのような組成物は、重篤な感染症を伴う入院患者のための非経口的投与に有用であることが見出された。特に、本発明はまた、CVMC剤のような賦形剤をさらに含む医薬組成物を開示し、そして適切な溶媒とともに注射前に再調製のための乾燥粉末の形態において利用可能である。
【0036】
本発明の医薬組成物は、通常、非経口的に投与される溶液中での沈殿に対する抵抗性を強化すると見出された。
【0037】
本発明はまた、使用前に再調製するために密閉容器中に保存される製剤の細目を提供する。本発明はさらに、この組成物の製造方法を提供し、多剤耐性菌による非眼感染性病状を有する対象の治療方法も提供する。
【0038】
定義
【0039】
本発明の説明において使用するいくつかのさまざまな用語を、以下に記載する:
【0040】
本明細書において「非眼感染性病状」は、病原菌により媒介されるか、またはほかの糖ペプチドおよびセファロスポリンのような抗菌剤を伴う治療に敏感である、目またはその部分以外の身体組織、器官または系統の非腫瘍性疾患、障害または病状である。
【0041】
用語「用量濃縮物」は、医薬組成物の溶液に関連する。用量濃縮物は、それが医薬組成物に適切な溶媒または希釈液を加えることにより形成され、容器に保持してもよい。通常、用量濃縮物は、哺乳類への投与のために、単位用量濃度にさらに希釈する。用量濃縮物の全量またはその分割量は、本発明の方法により治療のための単位用量を調製することに使用されてもよい。
【0042】
本明細書において使用される、用語「抗菌的に有効な量」は、すなわち、治療下の感染性病状の1もしくはそれ以上の徴候の発現を、軽減するか、解放するか、予防するか、または遅延させるか、あるいは病原体の数および/または活性を軽減するために、本発明の方法により投与された時に、十分である両方の抗菌剤の量に関連する。
【0043】
本明細書において、用語「治療」は、非眼感染性病状の臨床徴候、または感染性病状のような発現の危険を示す対象に対する非経口的な投与を含む。
【0044】
本明細書において、用語「非経口的投与」は、静脈への組成物の注射または注入の意味、すなわち静脈内にのみであることを包含する。例えば、投与が、より長時間の注入によってであることができる。薬物の非経口的注入に有用であるいかなる周知の装置も、そのような投与を達成するために使用することができる。本明細書において非経口的投与は、例えば、局所のまたは経皮的な投与など、皮膚表面にのみ限定しての投与を含まない。両抗菌剤は、本発明の方法において、非経口的に投与される。好ましい非経口的投与経路は、静脈内のみである。
【0045】
発明の詳細な説明
【0046】
本発明は、単回単位/反復投与量に相当する非眼感染性病状に有効であるための、両方とも活性成分として作用する2種の抗菌剤を含む医薬組成物を提供する。本発明も、これらの組成物を使用している非眼感染性病状の治療方法を開示している。本発明に記載されている組成物および治療方法は、例えば、MRSAなどの多剤耐性菌に対して使用されている。本発明も、これらの組成物を製造する方法を提供する。さらなる発明は、密閉容器中に保存される製剤を提供する。
【0047】
以下、本発明の異なる実施態様を記載する。
【0048】
基本的に、本発明の好ましい実施態様は、多剤耐性菌を抑制する非経口的に投与可能である組成物を提供し、それは、
【0049】
a.糖ペプチドが、バンコマイシンか、または塩酸バンコマイシンのような、その薬学的に許容される塩である、糖ペプチドのような第一の抗菌剤の抗菌的に有効な量;
b.セファロスポリンが、セフトリアキソンか、またはセフトリアキソンナトリウムのような、その薬学的に許容される塩である、セファロスポリンのような第二の抗菌剤に抗菌的に有効な量
を含む。
【0050】
本発明による使用のために適用可能な好ましい抗菌剤は、βラクタムおよび糖ペプチドであり、ペナムペニシリン系(例えば、ペニシリンG、フェノキシメチルペニシリン、コキサシリン(coxacillin)、ナフシリン、メチシリン、オキサシリン、アモキシシリン、テモシリン、チカルシリンなど)を含む天然および合成ペニシリン系剤のようなβラクタム抗生物質;ペニシリナーゼ安定性ペニシリン系;アシルアミノおよびカルボキシペニシリン系(例えば、ピペラシリン、アズロシリン、メズロシリン、カルベニシリン、テモシリン、チカルシリンなど);および広域スペクトルペニシリン系(例えば、ストレプトマイシン、ネオマイシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、アプラマイシン、アミカシン、スペクチノマイシン、アモキシシリン、アンピリシリンなど);セファロスポリン系(例えば、セフトリアキソン、セフェピム、セフタジジム、セフォタキシム、セフロキシムおよびセファクロール);ならびに糖ペプチド系(例えば、バンコマイシン、アボパルシン、ラモプラニン(ramoplanin)、タイコプラニンおよびダプトマイシンなど)のみであるが、これだけに限定されるものではない。
【0051】
抗菌剤を、同時に、またはいずれかの順序において連続的に投与する。発明の好ましい実施態様による医薬組成物は、無菌の粉末形態であり、ここで、単回単位/反復投与量に相当する非経口的投与前の共存できる再調製希釈剤の添加により再調製されることができる、上記第一の抗菌剤と上記第二の抗菌剤の上記既定の重量比は、それぞれが約1:4〜約4:1の範囲内であり、好ましくは、それぞれが約1:3〜約3:1の範囲内、より好ましくは、それぞれが約1:2〜約2:1の範囲内である。
【0052】
塩酸バンコマイシンは、本発明の組成物におけるバンコマイシンの最も好ましい形態である。バンコマイシン遊離酸は、バンコマイシンの好ましい原料である。本発明の組成物の製造に使用するための、放線菌(ノカルジア オリエンタリス、ストレプトミセス オリエンタリス)の特定の菌株の成長により、または他のいかなる方法によっても産生する。遊離酸は、製剤工程の間に、塩酸塩に変換してもよい。塩酸バンコマイシンは、化学式C6675Cl24 HClおよび分子量1485.7を有する、(S)−(3S,6R,7R,22R,23S,26S,36R,38aR)−44−{[2−O−(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−3−C−メチル− −L−リキソ−ヘキソピラノシル)− −D−グルコピラノシル]オキシ}−3−(カルバモイルメチル)−10,19−ジクロロ−2,3,4,5,6,7,23,24,25,26,36,37,38,38a−テトラデカヒドロ−7,22,28,30,32−ペンタヒドロキシ−6−[(2R)−4−メチル−2−(メチルアミノ)バレルアミド]−2,5,24,38,39−ペンタオキソ−22H−8,11:18,21−ジエテノ−23,36−(イミノメタノ)−13,16:31,35−ジメテノ−1H,16H−[1,6,9]オキサジアザシクロヘキサデシノ[4,5−m][10,2,16]ベンゾオキサジアザシクロテトラコシン−26−カルボン酸 一塩酸塩である。
【0053】
セフトリアキソンナトリウムは、本発明の組成物におけるセフトリアキソンの最も好ましい形態である。セフトリアキソン遊離酸は、本発明の組成物の製造に使用するためのセフトリアキソンの好ましい原料である。遊離酸は、製剤工程の間に、ナトリウム塩に変換してもよい。セフトリアキソンナトリウムは、化学式C1816Na 3.5HOおよび分子量661.6を有する、(Z)−7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノアセトアミド]−3−[(2,5−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−5−オキソ−1,2,4−トリアジン−3−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸 二ナトリウム塩 セスクォーター水和物(Sesquater hydrate)である。
【0054】
本発明の乾燥粉末組成物に化学ベクトル剤およびその適切な塩の混和は、再調製後の併用を安定にすることが見出された。本発明のさらなる実施態様として、好ましい実施態様の組成物は、炭酸水素ナトリウムのような安定化剤か、または安定化剤の重量が、上記第一の抗菌剤および第二の抗菌剤の混合した重量の約35〜約75%の範囲内であるL−アルギニンをさらに含む。
【0055】
本発明の医薬品併用はまた、賦形剤または中和剤の有無にかかわらない、無菌溶媒とともに再調製された形態に示されている。
【0056】
本発明の組成物の製剤は、非経口である。全体の上記用量は、好ましくは患者に1日2回投与され、患者の病状および感染の重症度に対応して、1日において12時間にわたって広がる。
【0057】
抗菌剤を、凍結乾燥した形態などにおいて、薬物の粒子、粉末、顆粒、ナノ粒子、微粒子、微小球として組成物が存在してもよい。
【0058】
本発明で関連する適切な溶媒は、好ましくは水性に基づいている。本発明で関連する薬学的に許容される担体または溶媒は、本明細書において必要な量の非経口的投与により組成物の成分として投与される時に、対象に受け入れ難いような有害な、または有毒な作用を有しないものである。本発明において使用するそのような担体または溶媒の賦形剤成分は、他の賦形剤、または組成物における抗菌剤と、有害な方法においては反応しない。
【0059】
本発明の好ましい実施態様において開示される抗生物質の製品組成は、1日2回の製品であり、それによって、抗生物質の製品の投与は、単回単位/反復投与量に相当する用量濃度であり、適切な注入において投与の前に希釈される。例えば、無菌の適切な溶媒、塩化ナトリウム0.9%、ブドウ糖5%の注射薬である。好ましい療法は、製品が12時間にわたって2回投与されることである。
【0060】
本発明の粒子形成/沈殿阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩類、炭酸水素ナトリウムのような安定化剤、中和剤、緩衝剤、または化学ベクトルを含む。できれば、本明細書において記載されている医薬組成物は、化学ベクトルの形態で、併用製品の総量が約10〜40%の範囲内で、粒子形成/沈殿阻害剤の有効量を有する。
【0061】
本発明の他の実施態様において、組成物は、無菌溶媒の添加により再調製される適切な化学ベクトルの形態における粒子形成/沈殿阻害剤の有効量とともに、治療上有効量のバンコマイシンか、または塩酸バンコマイシンのようなその薬学的に許容される塩(ここで、上記第一の抗菌剤(塩酸バンコマイシン)は、約1〜約100mg/mlの範囲内、好ましくは約5〜約75mg/mlの範囲内、そしてより好ましくは約10〜約50mg/mlの範囲内の濃度で上記組成物が存在する)ならびにセフトリアキソンまたはセフトリアキソンナトリウムのようなその薬学的に許容され得る塩(ここで、第二の抗菌剤(セフトリアキソンナトリウム)は、約1〜約200mg/mlの範囲内、好ましくは約5〜約150mg/mlの範囲内、およびより好ましくは約10〜約100mg/mlの範囲内の濃度で上記組成物が存在する)を含む。この実施態様のpHは、約7.0〜9.0の範囲に維持されてもよい。
【0062】
発明者は、この組成物が、従来技術において記載されている単一療法により経験される菌耐性を有意に克服することを見出した。それらは、本発明の組成物の糖ペプチド成分が種々のグラム陽性菌に対して殺菌作用を提供するのに対して、セファロスポリン成分は、グラム陽性およびグラム陰性菌の両方がβラクタマーゼの存在下で、高度な安定性を呈することを見出した。
【0063】
本発明はまた、非眼感染性病状の治療の新規な方法を提供する。方法は、非経口的投与により、対象に投与すること、適切な溶媒を有する併用療法において好ましい実施態様に記載した組成物を含む。このように記載されている併用療法は、感染性病状の臨床徴候を有する対象に対して投与される。非経口的投与方法は、特に、経口投与される時に、吸収されにくいバンコマイシンのような薬物のための、そして菌耐性が胃腸管において発現する傾向がある治療薬の送達のための重要な選択肢である。セフトリアキソンはまた、静脈内経路を経て効果的に投与される。
【0064】
併用療法は、これらの治療薬の相互作用から薬効を提供するような方法で、2種の抗菌剤が一緒に投与される治療法に関連する。このような薬効は、限定されないが、治療薬の薬物動態学的、または薬力学的相互作用を挙げることができる。併用療法は、例えば、従来技術に記載されている単一療法の間、通常投与されるより、一方または両方の薬剤の用量を低下することをもたらし、したがって、高用量と関連する副作用の危険または発現を減少することである。あるいは、併用療法はまた、単一療法の各薬剤の通常用量で、増加した治療効果をもたらす。さらに、併用療法は、治療効果を最大にする。
【0065】
本発明において関連するような併用療法は、付随的に、および任意に連続的または同時治療をもたらす個々の単一治療方法の一部として2種以上の治療薬の投与を含まない。
【0066】
それらはまた、静脈内に投与された時、発明の併用療法がどちらかの抗菌剤の投与と比較すると高度な治療法の選択肢を提供する。本発明による併用療法は、感染性病状の効果的治療を提供し、細菌、特に多剤耐性種(例えば、MRSAおよびブドウ球菌種)に起因する感染性病状を解消するために必要とする時間を縮小する。発明者によって、本発明において開示する治療方法もまた、そのような感染性病状の発現の危険を軽減する。したがって、本明細書に記載されたような併用療法は、主にMRSAおよびブドウ球菌種に起因する感染症が発現している対象の危険を予防または軽減するために手術または入院の前後に投与することができる。
【0067】
発明の他の実施態様において、使用に適用可能な抗菌剤は、それとともに関連した感染性病状および/または合併症の治療および/または予防のために有効であるそのような薬剤のいずれかを含む。本発明の組成物において使用する活性成分は、前述の抗菌剤、または薬学的に許容され得る互変異性体、立体異性体、光学異性体、塩、水和物、二水和物、およびプロドラッグのいずれかを含み、そして薬剤のどの形態にも限定されない。
【0068】
発明者は、本明細書に記載したような併用療法が、髄膜炎;敗血症;腸チフス;腹部感染症(腹膜炎、胆道および胃腸管の感染症);骨、関節、軟組織の感染症、および創傷;防御機構障害をともなった患者における感染症;腎臓および尿路の感染症;気道感染症、特に肺炎、ならびに耳、鼻および咽喉の感染症;淋病を含む、生殖感染症;下気道感染症;皮膚および皮膚組織の感染症;ブドウ球菌性の心内膜炎のような非眼感染性病状の感染性成分のための安全で、有効な治療を提供することを見出している。発明者はまた、両活性成分のそのような併用療法において、上記の病状に関連する合併症の治療のための化学ベクトルの存在下で相乗的に作用することができることも見出した。
【0069】
本発明は、哺乳類における非眼細菌感染の治療に有用な抗菌的に有効な量において、2種の抗菌剤の用量濃度として使用可能な無菌の固定用量併用剤を含み、それは、通常、再調製された時、粒子形成/沈殿を減少し、化学的に共存でき、安定である。
【0070】
適切な溶媒にアミノカルボン酸系キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA))のような中和剤を作る際に、場合によっては注射薬用水の所望の量と混合し、炭酸水素ナトリウムまたはL−アルギニンまたは他の適切な薬剤で中和して、溶液の濃度を、好ましくは約10〜約100mg/mlの範囲内、さらに好ましくは約20〜約90mg/mlの範囲内、そして最も好ましくは約40〜約80mg/mlの範囲内、あるいはいずれの併用剤または代わりの併用剤もその範囲内にする。
【0071】
本発明の他の実施態様において、上記複合抗生物質の薬学的に有効な単回/反復用量が、用量を集積した形で、密閉気密容器で提供され、これは、バイアル、アンプル、注射器、パケット、パウチおよび自動注入器からなる群より選択され、上記容器は、上記複合抗生物質の適切な再調製溶液の形で単回/反復投与量を形成するのに十分である、適した溶媒の適切な量の導入には十分なヘッドスペース容積を有する。
【0072】
ヘッドスペース容積は、不活性ガス制限された微小雰囲気よって無菌的に占有され、貴ガスおよび窒素からなる群より選択される1種以上の不活性ガス(好ましくは窒素)を本質的に含み、上記窒素ガスの量が、ヘッドスペース容積の5%以下であり、そして、上記ヘッドスペース容積に対する上記充填容積の比は、1:1以上である。
【0073】
本発明において、あるいは、複合抗生物質は、適切なハロゲン化された栓およびシールで栓をされた、透明なガラス製バイアルのような密閉容器で提供され、多剤耐性菌に起因する非眼感染性病状の治療のための静脈内投与用に、再調製された後に使用される。
【0074】
本発明により、投与前に再調製できる密閉容器に入っている粉末形態における用量濃度としての医薬組成物の製造方法、すなわち、
(a)第一の活性成分が、バンコマイシンまたはその薬学的に許容される塩であり、そして第二の成分が、セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩である、2種の活性成分を、滅菌充填/滅菌混合し、化学ベクトルの形態で存在している粒子形成/沈殿抑制剤を添加する;滅菌充填/滅菌混合を、約1〜約8時間に及ぶ時間続行し、
(b)工程(a)の滅菌充填/滅菌混合を均衡させ、混合した/充填した組成物の総量の10%〜40%である化学ベクトルの範囲を有する、所望の用量を、上記第二の活性成分に対する上記第一の活性成分の重量比で、それぞれ、約4:1〜約1:4の範囲、好ましくはそれぞれ、約3:1〜約1:3、より好ましくはそれぞれ、約2:1〜約1:2の範囲で、無菌的に得て、
(c)無菌的に前後の不活性ガス処理をともなって栓をする、
工程を含む製造方法を提供する。
【0075】
発明の液体溶媒の滅菌を、例えば、濾過滅菌、湿式加熱または蒸気熱で滅菌することによって、組成物の生物活性を保存するいかなる従来の方法によっても達成することができる。
【0076】
本発明の方法により治療および/または予防することができる病状は、これらに限定されないが、グラム陽性菌、例えば、Staphylococcus、Micrococcus、Streptococcus、Enterococcus、Leuconostoc、Pediococcus、Stomatococcus、coryneform bacteria、Listeria、Erysipelothrix、Kurthia、Bacillus、Nocardia、Rhodococcus、Gordona、Actinomadura、Streptomyces、Mycobacterium、Colostrldium、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Lactobacillus、Actinomycesなど;グラム陰性菌、例えば、Enterobacteriaceae、Escherichia、Shigella、Salmonella、Klebsiella、Enterobacter、Citrobacter、Serratia、Yersinia、Vibrio、Aeromonas、Plesiomonas、Pseudomonas、Burkholderia、Stenotrophomonas、Ralstonia、Brevundimonas、Comamonas、Acidovorax、Acinetobacter、Achromobacter、Alcaligenes、Moraxella、Methylobacterium、Actinobacillus、Capnocytophaga、Eiknella、Kingella、Legionella、Neisseria、Branhamella、Haemophilus、Bordetella、Brucella、Pasteurella、Bartonella、Afipia、Francisella、Bacteroides、Porphyromonas、Prevotella、Fusobacterium、Campylobacter、Arcobacter、Helicobacter、Leptospira、Leptonema、Chlamydia、Rickettsia、Coxiella、Ehrlichiaなど;ならびに、Treponema、spirochetes、Borrelia、Mycoplasma、Ureaplasma、偏性細胞間細菌および嫌気性生物を含む他の感染性生物:Bacteroides spp.(胆汁感受性)、Clostridium spp.(C. difficileを除く)、Fusobacterium nucleatum、Fusobacterium spp.(その他)、Gaffkia anaerobica(以前は、Peptococcus)、Peptostreptococcus spp.などを含む他の感染性微生物に起因する疾患が挙げられる。
【0077】
本発明の方法が有用である感染性病状は、細菌性髄膜炎、軟組織感染症、下気道感染症、副鼻腔炎、耳鼻咽喉感染症を含む呼吸器感染症、胃腸管感染症(例えば、胃腸炎、ヘリコバクター・ピロリ、細菌性下痢、細菌性赤痢、腸管外感染症、腸エルシニア症、腸炎、終末回腸炎、消化性潰瘍疾患、胃潰瘍疾患、萎縮性胃炎、腸間膜リンパ節炎、偽虫垂炎など);腹部外傷に関連した感染症;腎盂腎炎;ノカルジア肺感染(例えば、胸水、心膜炎、縦隔炎、上大静脈閉塞など);皮膚ノカルジア症(例えば、菌腫、リンパ皮膚型感染など)、皮膚感染症(例えば、膿痂疹、丹毒、蜂巣炎、皮膚潰瘍、播腫性疾患をともなう二次皮膚病変など、熱傷様皮膚症候群);らい病、マイコバクテリアリンパ節炎、腎臓感染症、マラコプラキア、産褥熱、血流感染(例えば、腸チフスなど)、炭疽菌、疫病(例えば、腺ペスト、肺ペスト、一次および二次敗血症性ペストなど);猩紅熱、リウマチ熱、コレラ、ヘーバヒル熱、ポトマック熱、ブルセラ症、カリオン病、塹壕熱、細菌性類上皮血管腫症、レプトスピラ症、ライム病、リケッチア症、Q熱、ヒト単球向性のエールリヒア症、猫引っかき病、野兎病、偽感染症、レジオネラ症、院内感染(例えば、せつ、さまざまな部位の術後創傷感染など)、類丹毒、骨髄炎、前立腺炎、腹膜炎、脳脊髄感染症、髄液短絡術の感染、髄膜脳炎、関節の感染、人工関節感染、敗血症性関節炎、筋壊死、壊疽性膿瘡、胆嚢炎、類鼻疽、乳様突起炎、精巣上体炎、滑液包炎、コマモナス・テストステロニ感染、乳腺炎、脳炎、膿瘍(例えば、筋肉、尿生殖路、中枢神経系、腹腔内、頭蓋内などの)、生殖器官感染(例えば、膣感染、頸部リンパ節炎、淋病、尿道炎、子宮内膜炎、分娩後子宮内膜炎、肝周囲炎、クラミジア・トラコマチス感染症、骨盤内炎症性疾患、子宮頸管内感染症、卵管炎、骨盤腹膜炎、卵管卵巣膿瘍、軟性下疳、羊膜炎、絨毛羊膜炎、トレポネーマ症など)、防御機能障害を伴った患者における感染症を含むが、これらに限定されない。
【0078】
実験データ
本発明において提案される組成物および治療法を支持する実験データを、以下に示す。それは、最小発育阻止濃度のデータ、細菌感受性試験、安定性および原価比較を含む。結果を表1、2および3に示す。
【0079】
最小発育阻止濃度データ
MSSA、Enterococcus、S. pneumoniae、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌、MRSAのような細菌について、本発明のセフトリアキソンとバンコマイシンの併用、セフトリアキソン単独およびバンコマイシン単独のさまざまな濃度における発育についての平均MICデータについて詳述する。下記の表に示すように、広範囲の細菌において、使用するセフトリアキソンとバンコマイシンの併用についての観察結果は、塩類単独のいずれよりも低い濃度で、細菌を抑制することに成功したことを示している。
【0080】
細菌感受性試験
細菌感受性試験を、異なる微生物で、セフトリアキソンとバンコマイシン、セフトリアキソン単独ならびにバンコマイシン単独で行った。異なる濃度を、データにおいて最も高い、高い、低い、最も低いと記述されたもので選択した。ゾーンサイズを、mmで測定した。セフトリアキソンおよびバンコマイシンの活性は、E coli、B. Subtillis、Klebsiella pneumoniae、strptococus pneumoniaeおよびenterococus faecalisにおいて最も見られた。併用について観察された活性は、単独の塩より強力であった。
【0081】
安定性試験
安定性試験を6ヵ月間、本発明のセフトリアキソンとバンコマイシンの併用で行う。全ての手順が標準試験手順により進められた。製品が、6ヵ月間、加速条件下で安定であることが観察された。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
上記説明には、多くの具体例が含まれているが、それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の実施態様を例示するものと解釈されるべきである。多くの他の変形例が可能である。したがって、本発明の範囲は、例示されている実施態様によってではなく、請求の範囲およびその法的均等の範囲により決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含む哺乳類用の抗菌性の固定用量併用剤療法として使用するための非経口的な注射に適した、相乗的な併用における抗生物質の医薬組成物であって、非経口的に許容され得る希釈剤で再調製後に注射剤に整えられる乾燥粉末予備混合物を含み、さらに、下記:
a.約1:5〜約5:1、好ましくは約1:4〜約4:1、そしてより好ましくは約1:3〜約3:1の重量比において単独の予備混合物の形態で存在する、少なくとも2種の抗菌剤;
b.相溶化/安定化剤;ならびに
c.安定化剤および粒子形成抑制剤を含む水性溶媒
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
a.第一の抗菌剤が、天然および合成ペニシリン系抗生物質、マクロライド系、リンコマイシン系、プレウロムチリン系、ポリペプチド系、ポリミキシン系、スルホンアミド系、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、フロルフェニコール、テトラサイクリン系抗生物質、キノロン系、フルロクモロン系(fluroqumolones)、チアムリン、コリスチン、ドメクロサイクリン(domeclocycline)、マフェニド、メタサイクリン、オフロキサシン、ピリメタミン、スルファジアジン銀、スルファセタミド、スルフィソキサゾール、トブラマイシン、バネムリン(vanemulin)、オキサゾリジノン系、糖ペプチド系、アミノグリコシド系およびアミノシクリトール系、アンフェニコール、アンサマイシン、カルバペネム系、セファマイシン、バンコマイシン、モノバクタム、オキサセフェム、全身系の抗菌剤、ニトロフランスルホン系、マルボフロキサシン、ならびにこれらの互変異性体、立体異性体、鏡像異性体、塩、水和物およびプロドラッグからなる群より選択され;
b.第二の抗菌剤が、セファロスポリン系、セファレキシン、セフラジン、セフキノム、セファセトリル、セファロニウム、セフロキシム、セファジジム(cefazidime)、セフォペラゾン、セフェメトカルボン酸ナトリウム(sodium cephemethcarboxylate)、セフェム、セファドロキシル、セファゾリンナトリウム、セフィキシミン(cefiximine)、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフチゾキシム、セフピロム、セフェピム、o−ホルミルセファルナンドール(o-formylcefarnandole)、3−アセトキシメチル−7−(イミノセトアミド)−セファロスポラン酸誘導体の塩、7−(D−α−アミノ−α−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミノ)−3−メチル−3−セフェム−1−カルボン酸、syn−7−((2−アミノ−l−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル)アミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸の塩酸塩、セフェム酸、(ピバロイルオキシ)メチル−7−β−(2−(2−アミノ−4−チアゾリル)アセトアミド)−3−(((1−(2−(−ジメチルアミノ)エチル)−1H−テトラアゾール−5−イル)チオ)メチル)−3−セフェム−4−カルボン酸塩、セファレキシン、7−(D−2−ナフチルグリシルアミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸、ならびにこれらの互変異性体、立体異性体、鏡像異性体、塩、水和物およびプロドラッグからなる群より選択され;
c.適切な相溶化剤が、そのL−アルギニン、L−リジンおよびL−ヒスチジンを含む群より選択される塩基性アミノ酸であり;
d.非経口的に許容される希釈剤が、粒子形成抑制剤および中和剤を組み入れた水性溶媒からなる
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
a.第一の抗菌剤が、好ましくは、アボパルシン、ラモプラニン(ramoplanin)、バンコマイシン、タイコプラニンおよびダプトマイシンからなる群より選択される糖ペプチドである;より好ましくは、バンコマイシンまたは塩酸バンコマイシンであるその薬学的に許容される塩、ここで、バンコマイシン遊離酸は、本発明の組成物の製造に使用するための放線菌(ノカルジア オリエンタリス、ストレプトミセス オリエンタリス)の特定の菌株の成長により、または他のいかなる方法により産生されるバンコマイシンの好ましい原料であり;(遊離酸は、製剤工程の間に、塩酸塩に変換してもよい。塩酸バンコマイシンは、化学式C6675Cl24・HClおよび分子量1485.7を有する、(S)−(3S,6R,7R,22R,23S,26S,36R,38aR)−44−{[2−O−(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−3−C−メチル− −L−リキソ−ヘキソピラノシル)− −D−グルコピラノシルオキシ]−3−(カルバモイルメチル)−10,19−ジクロロ−2,3,4,5,6,7,23,24,25,26,36,37,38,38a−テトラデカヒドロ−7,22,28,30,32−ペンタヒドロキシ−6−[(2R)−4−メチル−2−(メチルアミノ)バレルアミド]−2,5,24,38,39−ペンタオキソ−22H−8,11:18,21−ジエテノ−23,36−(イミノメタノ)−13,16:31,35−ジメテノ−1H,16H−[1,6,9]オキサジアザシクロヘキサデシノ[4,5−m][10,2,16]ベンゾオキサジアザシクロテトラコシン−26−カルボン酸 一塩酸塩である};
b.第二の抗菌剤が、好ましくは、セファゾリン、セフロキシム、セフォタキシム、セフピロム、セフェピム、セフトリアキソン、セフタジジムおよびセフォペラゾンの群より選択されるセファロスポリンであり;より好ましくは、セフトリアキソンまたはセフトリアキソンナトリウムであるその薬学的に許容される塩。セフトリアキソン遊離酸は、本発明の組成物の製造に使用するためのセフトリアキソンの好ましい原料であり;(遊離酸は、製剤工程の間に、ナトリウム塩に変換してもよい。セフトリアキソンナトリウムは、化学式C1816Na・3.5HOおよび分子量661.6を有する、(Z)−7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−メトキシイミノアセトアミド]−3−[(2,5−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−5−オキソ−1,2,4−トリアジン−3−イル)チオメチル]−3−セフェム−4−カルボン酸 二ナトリウム塩 セスクォーター水和物(Sesquater hydrate)である);
c.安定化/相溶化剤が、好ましくは、例えば、L−アルギニンである塩基性アミノ酸であり;
d.非経口的で許容される希釈剤が、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)であるアミノカルボン酸系キレート化剤である粒子形成抑制剤、および炭酸ナトリウムまたは他の同様な試薬である中和剤を組み入れている水性溶媒からなる
請求項2記載の組成物。
【請求項4】
a.バンコマイシンの結晶性遊離酸として算出して約1〜100mg/mlの範囲の量で存在する、バンコマイシンまたはその薬学的に許容される塩;
b.セフトリアキソンの結晶性遊離酸として算出して約1〜100mg/mlの範囲の量で存在する、セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩;
c.相溶化剤が、好ましくは混合物の総重量の10%−45%の重量比のL−アルギニンであり;
d.約10〜100mg/mlの範囲で存在し、溶液のpHが7〜9の範囲内であるEDTAおよび炭酸ナトリウム
である請求項3記載の単回投与組成物。
【請求項5】
a.バンコマイシンの結晶性遊離酸として算出して約5〜75mg/mlの範囲の量で存在する、バンコマイシンまたはその薬学的に許容される塩;
b.セフトリアキソンの結晶性遊離酸として算出して約25〜100mg/mlの範囲の量で存在する、セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩;
c.相溶化剤が、好ましくは混合物の総重量の15%−35%の重量比のL−アルギニンであり;
d.約20〜90mg/mlの範囲で存在し、溶液のpHが7〜9の範囲内であるEDTAおよび炭酸ナトリウム
である請求項3記載の単回投与組成物。
【請求項6】
a.バンコマイシンの結晶性遊離酸として算出して約10〜50mg/mlの範囲の量で存在する、バンコマイシンまたはその薬学的に許容される塩;
b.セフトリアキソンの結晶性遊離酸として算出して約50〜100mg/mlの範囲の量で存在する、セフトリアキソンまたはその薬学的に許容される塩;
c.相溶化剤が、好ましくは混合物の総重量の20%−30%の重量比のL−アルギニンであり;
d.約40〜80mg/mlの範囲で存在し、溶液のpHが7〜9の範囲内であるEDTAおよび炭酸ナトリウム
である請求項3記載の単回投与組成物。
【請求項7】
不活性ガスのブランケット下で滅菌容器に充填され、密閉されていて、上記容器が1種以上のバイアル、アンプル、注射器、パケット、パウチ、および自動注入器であり、上記容器の内部空間が、再調製された形態の上記組成物により占有される充填容積、ならびに不活性ガスに限定された微小雰囲気により無菌的に占有されるヘッドスペース容積を含み、微小雰囲気は、貴ガスおよび窒素からなる群より選択される1種以上の不活性ガス(好ましくは窒素)を本質的に含み、上記窒素ガスの量が、上記ヘッドスペース容積の5%以下であり、そして上記ヘッドスペース容積に対する上記充填容積の比が、1:1以上である、請求項1、または2、または3、または4、または5、または6記載の組成物。
【請求項8】
請求項1、または2、または3、または4、または5、または6記載の組成物を予備混合した複合抗生物質の製造方法であって、
a.抗生物質成分、または安定化/相溶化剤を伴うその薬学的に許容される塩を滅菌充填し/滅菌混合し、
b.上記滅菌添加/滅菌充填/滅菌混合を、約1〜約4時間に及ぶ時間継続し、
c.滅菌充填/滅菌混合を均衡させ、そして
d.前後に不活性ガスを伴って無菌的に栓をする
工程を含む製造方法。
【請求項9】
請求項1、または2、または3、または4、または5、または6記載の組成物において適切な溶媒の製造方法であって、
a.適切な量の薬剤の注射可能級の水を取り、キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)またはニトリロ三酢酸(NTA)とともに混合し、
b.7〜9の範囲内にpHの状態をするように炭酸ナトリウムまたは他の適切な試薬とともに溶液を中和し、
c.静脈内投与のための組成物に、例えば、最終的に湿式加熱殺菌または蒸気熱殺菌のような、適切ないずれかの従来方法により溶媒を滅菌する
工程を含む製造方法。

【公表番号】特表2008−530082(P2008−530082A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554741(P2007−554741)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000044
【国際公開番号】WO2006/085337
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507182520)ヴィーナス・レメディーズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VENUS REMEDIES LIMITED
【Fターム(参考)】