説明

薬剤類の希釈散布装置

【課題】水道水を含む高圧水又は高圧エアー供給源さえあればどこでも簡単に使用することができる薬剤類の希釈散布装置を提供すること。
【解決手段】先細状のノズル部2と、ディフューザー部3と、真空発生室4と、前記ノズル部2の後端側に設けられた第1の接続口5と、前記真空発生室4に連通する第2の接続口6とを備え、前記第1の接続口5から導入した水道水を含む高圧水又は高圧エアーを前記ノズル部2から前記ディフューザー部3を通して噴出させ、この噴出によって前記真空発生室4に真空を発生させて第2の接続口6を通して薬剤類を吸入させると共に、この吸入した薬剤類を前記ディフューザー部3を通して前記水道水を含む高圧水又は高圧エアーに混入させて前記ディフューザー部3の先端から直接又は散布ホースを通して散布するようになした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動場の防塵対策や農場での肥料・薬剤散布等に用いられる薬剤類の希釈散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤類の希釈散布には、電動ポンプやエンジン付きポンプが一般に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−138060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電動ポンプやエンジン付きポンプを使用する場合には、電気やガソリン等の燃料が必要となり、しかも、薬剤類を予め希釈して準備しておく必要があり、大型の薬剤タンクを用いる必要がある。
また、電動ポンプの場合は、感電の問題があり、エンジン付きポンプの場合は、エンジンの始動操作に熟練を要する等の問題がある。
なお、手動ポンプや手撒きによる薬剤類の散布では、重労働かつ非能率であるのみならず、薬剤類を予め希釈した大型タンクに収容して運搬しなければならないという問題があった。
【0004】
本発明は、従来技術の上記問題点に鑑みて開発されたものであって、その目的とするところは、水道水を含む高圧水又は高圧エアー供給源さえあればどこでも簡単に使用することができる薬剤類の希釈散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、先細状のノズル部と、該ノズル部の先端に後端を近接して配置されたディフューザー部と、前記ノズル部の先端とディフューザー部の後端との間に連通形成された真空発生室と、前記ノズル部の後端側に設けられた第1の接続口と、前記真空発生室に連通する第2の接続口とを備え、前記第1の接続口を水道水を含む高圧水供給源又は高圧エアー供給源に接続可能とし、前記第2の接続口を薬剤類供給源に接続可能とし、前記第1の接続口から導入した水道水を含む高圧水又は高圧エアーを前記ノズル部から前記ディフューザー部を通して噴出させ、この噴出によって前記ノズル部の先端とディフューザー部の後端との間の真空発生室に真空を発生させて第2の接続口を通して薬剤類を吸入させると共に、この吸入した薬剤類を前記ディフューザー部を通して前記水道水を含む高圧水又は高圧エアーに混入させて前記ディフューザー部の先端から直接又は散布ホースを通して散布するようになしたことを特徴としている。
【0006】
上記構成によれば、第1の接続口に水道水を含む高圧水又は高圧エアーを導入することにより、真空発生室に真空を発生させて第2の接続口を通して薬剤類を吸入させ、この薬剤類を第1の接続口から導入した水道水を含む高圧水又は高圧エアーに混入してディフューザー部の先端から直接又は散布ホースを通して散布させることができる。第2の接続口から吸入される薬剤類の吸入量は、第1の接続口から導入される水道水を含む高圧水又は高圧エアーによって真空発生室に発生する真空度と薬剤類の粘性等に略比例するため、薬剤類をほぼ一定比率で希釈して散布することができる。
【0007】
また、本発明は、前記第2の接続口に逆止弁付きの流量制御弁を設けたことを特徴としている。この構成によれば、逆止弁付きの流量制御弁により第2の接続口に接続される薬剤類の流量を調整することができ、これによって、薬剤類の希釈濃度を自由に調節することができる。従って、薬剤類は、予め、希釈して準備しなくてもよくなり、薬剤類の容器の大型化が回避できる。また、逆止弁付きであるため、水道水を含む高圧水や高圧エアーが薬剤類側に流入することを防止することができ、使用後の残留薬剤類を原液のままで保存し、次回以降に使用することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水道水を含む高圧水又は高圧エアー供給源さえあればどこでも簡単に使用することができる薬剤類の希釈散布装置を提供することができる。そして、水道水が利用できる場合や、既設の高圧水供給設備又は高圧エアー供給設備が利用できる場合では、電気やガソリン等が不要となり、簡単かつ安価に薬剤類の希釈散布を実施することができ、しかも、薬剤類を予め希釈しなくてもよいため、薬剤類の運搬や取り扱い等にも便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る薬剤類の希釈散布装置の実施の形態を図面について説明する。
装置本体1は、図1に示すように、略円錐状をした先細状のノズル部2と、該ノズル部2の先端に後端を近接して配置されたディフューザー部3と、前記ノズル部2の先端とディフューザー部3の後端との間に連通形成された真空発生室4と、前記ノズル部2の後端側に設けられた第1の接続口5と、前記真空発生室4に連通する第2の接続口6とを備えている。
ノズル部2とディフューザー部3とは、後者を前、前者を後にして同一直線上に配置されている。ノズル部2の後端側には、渦巻き羽根部材7が配置されている。この渦巻き羽根部材7は、リング状の外周部7aと中心軸部7bとの間に渦巻き羽根7cが配置された構造からなり、軸線方向に通過する流体に旋回エネルギーを付与するために装着されるものである。
【0010】
ノズル部2と渦巻き羽根部材7とは、装置本体1と別体として構成され、装置本体1の後端から長手方向中央部側に向けて形成されたノズル装着孔1a内に装着固定されている。
ディフューザー部3は、装置本体1内に後端から先端に向けて次第に拡開するテーパー状孔1bとして直接形成されている。
真空発生室4は、ノズル装着孔1aの前端とディフューザー部3の後端との間の装置本体1内にノズル装着孔1aよりも若干小径でテーパー状孔1bの小径孔側の孔径よりも大径の環状孔1cとして形成されている。
【0011】
第1の接続口5は、装置本体1の後端外周部に1段〜複数段(図1は3段の場合を示す)のテーパー段部1dからなるホース接続口として直接形成されている。
第2の接続口6は、ノズル部2とディフューザー部3との中心軸線に直交するように装置本体1の長手方向中央部付近の側面に真空発生室4と連通するように形成されている。
この第2の接続口6には、逆止弁付き流量制御弁8が装着固定されている。この逆止弁付き流量制御弁8は、弁本体8aの一端(図1の下端)側内面に形成された大径孔8b内
にボールからなる逆止弁8cが収容され、この大径孔8bより小径の通路8dが大径孔8bの奥側終端から弁本体8aの他端(図1の上端)に向けて形成されており、上記大径孔8bの奥側終端と小径の通路8dとの境界部に逆止弁8cの弁座8eが形成されている。そして、上記小径の通路8dの途中に流量制御弁体8fが回動可能に装着されており、この流量制御弁体8fには、操作レバー(図示省略)が設けられている。また、弁本体8aの他端(図1の上端)外周面には、1段〜複数段(図1は3段の場合を示す)のテーパー段部8gからなるホース接続口が直接形成されている。
【0012】
図1の実施形態では、装置本体1、ノズル部2、渦巻き羽根部材7、逆止弁付き流量制御弁8を、ステンレスで構成した場合を例示しているが、ステンレス以外の金属やプラスチック、又は、ガラス、セラミック等で構成してもよい。
本発明の装置本体1は、前記第1の接続口5を水道水を含む高圧水供給源又は高圧エアー供給源に接続可能とし、前記第2の接続口6を薬剤類供給源に接続可能とし、前記第1の接続口5から導入した水道水を含む高圧水又は高圧エアーを前記ノズル部2から前記ディフューザー部3を通して噴出させ、この噴出によって前記ノズル部2の先端とディフューザー部3の後端との間の真空発生室4に真空を発生させて第2の接続口6を通して薬剤類を吸入させると共に、この吸入した薬剤類を前記ディフューザー部3を通して前記水道水を含む高圧水又は高圧エアーに混入させて前記ディフューザー部3の先端から直接又は散布ホースを通して散布するようにするものである。
【0013】
図2は、その使用例を示すもので、装置本体1を運動場や農場等の現場に設置し、第1の接続口5をホース9を介して水道水蛇口10に接続する。そして、第2の接続口6には、予め装着固定されている逆止弁付き流量制御弁8のテーパー段部8gからなるホース接続口にホース11の一端を接続し、他端を薬剤原液容器12内に挿入する。また、ディフューザー部3の先端に散布ホース13の一端を接続し、散布ホース13の他端を作業者14が保持して薬剤類の散布を行う。散布に際しては、水道水蛇口10の開度及び逆止弁付き流量制御弁8の開度を所望の希釈濃度となるように調整制御するものである。散布ホース13の先端には噴霧ノズル、その他、適宜のノズルを装着してもよい。
【0014】
例えば、運動場の防塵処理を行う場合では、薬剤として、防塵剤、例えば、ポリ酢酸ビニール等の水溶性接着剤を使用し、運動場に散布する。これにより、水溶性接着剤は水道水で適宜の濃度に希釈されて散布され、運動場の地面表層部の砂粒相互を接着接合し、風などによって砂塵等として飛散浮遊することが抑制される。
また、農場等で肥料や農薬の散布にも同様に使用することができる。
本発明に係る薬剤類の希釈散布装置の実施形態は以上であるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された意味と範囲内において、自由に改変して実施することができる。例えば、装置本体1は、薬剤原液容器12と共に台車に搭載して移動可能としてもよく、或いは、肩に背負って携行可能としてもよい。また、水道水蛇口10の代わりに、既設の高圧水供給設備や高圧エアー供給設備を利用してもよく、さらに、これらの設備の利用ができない場合には、動力ポンプやコンプレッサーを利用してもよい。また、ディフューザー部3は、実施形態では装置本体1に直接形成した場合を例示しているが、装置本体1とは別体に構成して装置本体1内に装着するようにしてもよい。また、第1の接続口5は、装置本体1の一端外周部に1段〜複数段のテーパー段部として直接形成した場合を例示したが、装置本体1とは別体のものを装置本体1の端部に取り付けるようにしてもよい。また、逆止弁付き流量制御弁8は、外部空気を取り入れることで真空度を変化させて薬剤類の吸入量を制御させる構造のものを採用してもよい。なお、逆止弁付き流量制御弁8は省略して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明装置の一実施形態例を示す縦断側面図である。
【図2】本発明装置の一使用形態例を示す概略斜視説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 装置本体
2 ノズル部
3 ディフューザー部
4 真空発生室
5 第1の接続口
6 第2の接続口
7 渦巻き羽根部材
8 逆止弁付き流量制御弁
10 水道水蛇口
12 薬剤原液容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細状のノズル部と、該ノズル部の先端に後端を近接して配置されたディフューザー部と、前記ノズル部の先端とディフューザー部の後端との間に連通形成された真空発生室と、前記ノズル部の後端側に設けられた第1の接続口と、前記真空発生室に連通する第2の接続口とを備え、前記第1の接続口を水道水を含む高圧水供給源又は高圧エアー供給源に接続可能とし、前記第2の接続口を薬剤類供給源に接続可能とし、前記第1の接続口から導入した水道水を含む高圧水又は高圧エアーを前記ノズル部から前記ディフューザー部を通して噴出させ、この噴出によって前記ノズル部の先端とディフューザー部の後端との間の真空発生室に真空を発生させて第2の接続口を通して薬剤類を吸入させると共に、この吸入した薬剤類を前記ディフューザー部を通して前記水道水を含む高圧水又は高圧エアーに混入させて前記ディフューザー部の先端から直接又は散布ホースを通して散布するようになしたことを特徴とする薬剤類の希釈散布装置。
【請求項2】
前記第2の接続口に逆止弁付きの流量制御弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤類の希釈散布装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7143(P2006−7143A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190154(P2004−190154)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(502042791)株式会社科研 (1)
【出願人】(504249260)
【Fターム(参考)】