説明

薬剤4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペラジン−1−カルボン酸,[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミドの使用

本発明は、過活動膀胱の治療における新規の医学的用途の4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸,[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミドまたはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物およびそれを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過活動膀胱の治療または予防におけるピペラジン誘導体およびその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用に関する。具体的には、本発明は、4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸,[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミドまたはその医薬上許容される塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願WO02/32867は、新規のピペリジン誘導体を記載している。この中に記載の特に好ましい化合物は、4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸(以下、該化合物という)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の明細書はまた、該化合物の医薬上許容される塩または溶媒和物、例えば、水和物を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
該化合物の適当な医薬上許容される塩は、医薬上許容される有機酸または無機酸で形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、アルキルもしくはアリールスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩もしくはp−トルエンスルホン酸塩)、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩およびマレイン酸塩を含む。
好ましい該化合物の塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩である。
特に好ましい該化合物の塩は、メタンスルホン酸塩である。
【0005】
該化合物またはその塩もしくは溶媒和物は、インビトロおよびインビボのサブスタンスPおよび他のニューロキニンを含むタキキニンのアンタゴニストとして前述の明細書に記載され、サブスタンスPおよび他のニューロキニンを含むタキキニンが介在する病態の治療に用いられる。
【0006】
より具体的には、該化合物またはその塩もしくは溶媒和物はCNS障害の治療に有用である。
したがって、例えば、該化合物は抑うつ状態、不安パニック障害、ジソムニア(dysomnia)、不眠、睡眠時無呼吸、ナルコレプシーおよび概日リズム障害を含む睡眠障害、一般的健康状態による睡眠障害、特に神経障害;神経因性疼痛、下肢静止不能症候群、心疾患および肺疾患;ならびにサブタイプの不眠型、睡眠過剰型、錯眠型および混合型を含むサブスタンス誘導性睡眠障害;睡眠時無呼吸およびジェット時差症候群;化学療法誘導性嘔吐、術後悪心嘔吐を含む嘔吐、外傷痛、術後疼痛、繊維筋痛のような疾患に付随する睡眠障害の治療の特定な用途である。
【0007】
さらに、該化合物は、性的欲求低下障害および性的嫌悪障害などの性的欲求障害、女性の性的興奮障害および男性の勃起障害などの性的興奮障害、女性のオルガスム障害、男性のオルガスム障害および早漏などのオルガスム障害、性交疼痛および膣痙などの性的疼痛性障害、特定不能の性的障害;露出症、フェティシズム、窃触症、ペドフィリア、性的マゾヒズム、性的サディズム、服装倒錯性フェティシズム、のぞき見などの性嗜好異常および子供の性同一性障害および若者もしくは成人の性同一性障害などの特定不能の性的倒錯ならびに特定不能の性的障害を含む性機能障害の治療において有用であってもよい。
【0008】
該化合物はまた、上記の病態の治療に有用であってもよい。
【0009】
この度意外にも、本発明者らは、該化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物が過活動膀胱の治療にも有用であることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
過活動膀胱は、頻尿を伴い、切迫性尿失禁の有無を問わない症候群についての用語であるが、一般に、頻尿(pollacisuria)および夜間頻尿を合併するとは限らない。過活動膀胱はまた、誘発により引き起こされるかまたは自発的に起こる不随意排尿筋収縮により特徴付けられる。観察される排尿筋過活動が、神経学的要因(例えば、パーキンソン病、溢血、ある種の多発性硬化症、脊髄損傷または骨髄の断面)に基づくものならば、それは排尿筋過活動として知られている。明確な要因を見つけることができなければ、これは特発性排尿筋過活動として知られている。さらに、排尿筋過活動は、例えば、膀胱排尿障害(男性の前立腺の拡張)を有する患者の下部尿路の解剖学的変化に付随していてもよい。
【0011】
したがって、本発明は、有効量の該化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む過活動膀胱の治療方法を提供する。
【0012】
該化合物を予防に用い、予防処置ならびに急性症状の軽減を含む治療についての本明細書の文献として用いてもよいことが分かるであろう。
【0013】
したがって、本発明はまた、過活動膀胱の治療または予防の該化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
さらにさらなる態様において、本発明は、過活動膀胱の治療の薬剤の製造について、該化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0015】
さらにさらなる態様において、本発明は過活動膀胱の治療について、該化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0016】
本発明にしたがって使用する医薬組成物は、1つまたはそれ以上の医薬上許容される担体もしくは賦形剤を用いて従来の手法で処方してもよい。
【0017】
したがって、該化合物およびその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物は、経口、口腔、非経口、局所(点眼および点鼻を含む)、持続性もしくは直腸投与または(口または鼻のいずれかを通って)吸入または注入による投与の適当な形態で処方してもよい。
【0018】
経口投与について、医薬組成物は、例えば、結合剤(例、ゼラチン前処理トウモロコシでんぷん、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);賦形剤(例、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例、ジャガイモでんぷんまたはでんぷんグリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例、ラウリル硫酸ナトリウム)などの医薬上許容される賦形剤と従来の手法で調製される錠剤またはカプセルの形態を成してもよい。錠剤は、当該技術分野で周知の方法でコーティングしてもよい。経口投与用液剤製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態を成してもよく、あるいは使用前に水または他の適当なビヒクルとの形成において乾燥生産物として存在していてもよい。かかる液剤製剤は、懸濁化剤(例、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例、へんとう油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画化植物油);および保存料(例、メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸塩またはソルビン酸)などの医薬上許容される添加物と従来の手法で調製してもよい。製剤はまた、バッファー塩、香味料、着色料および甘味剤を必要に応じて含有していてもよい。
【0019】
経口投与用製剤は、活性化合物の放出制御するために適当に処方してもよい。
【0020】
口腔投与について、組成物は、錠剤の形態を成していてもよく、従来の手法で処方されてもよい。
【0021】
本発明の該化合物およびその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物は、急速静注法または持続注入による非経口投与用に処方してもよい。注射製剤は、単位投与形態、例えば、添加した保存料と、アンプルまたは数回投与容器に存在していてもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液のような形態を成していてもよく、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの処方剤を含有していてもよい。一方、活性成分は、使用前に適当なビヒクル、例えば、滅菌性発熱物質不含水との形成において散剤の形態であってもよい。
【0022】
本発明の該化合物およびその医薬上許容される塩または溶媒和物は、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、ペッサリー、エアロゾルまたは滴剤(例、点眼、点耳または点鼻薬)の形態で局所投与用に処方してもよい。軟膏およびクリームは、例えば、適当な増粘剤および/またはゲル化剤を添加して水性または油性基剤で処方してもよい。点眼用軟膏は、無菌成分を用いて無菌手法で製造してもよい。
【0023】
ローションは、水性または油性基剤で処方してもよく、一般に、1つもしくはそれ以上の乳化剤、分解防止剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤を含有するであろう。滴剤は、1つもしくはそれ以上の乳化剤、分解防止剤、可溶化剤または懸濁剤を含有する水性または非水性基剤で処方してもよい。それらはまた、保存料を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の該化合物およびその医薬上許容される塩または溶媒和物はまた、持続性製剤として処方してもよい。かかる長時間作用性製剤を、移植(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与してもよい。したがって、例えば、本発明の該化合物は、(例えば、許容される油中の乳剤として)適当な高分子もしくは疎水性物質またはイオン交換樹脂で処方してもよく、あるいは難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として処方してもよい。
【0025】
経鼻投与について、本発明の該化合物およびその医薬上許容される塩または溶媒和物は、適当な定量もしくは単回用量装置を介して投与するための液剤として、または別法として、適当な運搬装置を用いて投与するための適当な担体との粉末混合物として処方してもよい。
【0026】
本発明の該化合物の計画量は、1日当たり1ないし約1000mgである。患者の年齢および病態により、剤形の経路を変化させる必要がありうることは明らかであり、的確な剤形は、最終的には、かかりつけ医師または獣医の判断であろう。剤形はまた、投与経路および選択した特定の化合物次第であろう。
したがって、非経口投与について、1日量は、典型的には、1日当たり1ないし約200mg、好ましくは、40ないし150mgの範囲であろう。経口投与について、1日量は、典型的には、1ないし300mg、例えば、1ないし100mgの範囲内であろう。
【0027】
該化合物およびその医薬上許容される塩は、本明細書の一部とする国際特許出願WO02/32867に記載の工程により調製してもよい。
【0028】
薬理学的活性
意識のあるモルモットの排尿条件ならびに麻酔したモルモットおよびネコの酢酸誘発による膀胱不安定性
排尿時間(排尿間隔)におけるメタンスルホン酸塩としての化合物(以下、化合物Aという)の効果を、正常な雌モルモットならびに麻酔した雌モルモットおよびネコにおいて酢酸での膀胱刺激の条件下で評価した。意識のある正常なモルモットにおいて、化合物Aは、1および3mg/kgの十二指腸内(i.d.)投与を受けて、それぞれ63.6±27.7%(n=5)および48.7±18.4%(n=7)に排尿間隔を有意に増大した。麻酔したモルモットにおける酢酸誘発による膀胱刺激において、排尿頻度の増加により特徴付けられ、化合物Aは、1、3および10mg/kgの十二指腸内投与を受けて、それぞれ42.7±4.3%(n=3)、137±38.4%(n=4)および93.2±19.4%(n=4)に排尿間隔を有意に増大した。麻酔したネコにおいて、化合物Aは、酢酸により誘発される膀胱刺激を有意に軽減した(3mg/kgの静注;n=4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過活動膀胱の治療に用いる薬剤の調製における4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸,[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミドまたはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項2】
過活動膀胱の治療に用いる4−(S)−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(4−フルオロ−2−メチル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸,[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エチル]−メチルアミドまたはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項3】
化合物の医薬上許容される塩がメタンスルホン酸塩である請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
有効量の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物をヒトに投与することを含む過活動膀胱の治療方法。
【請求項5】
化合物の医薬上許容される塩がメタンスルホン酸塩である請求項4記載の治療方法。

【公表番号】特表2008−523015(P2008−523015A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544826(P2007−544826)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013205
【国際公開番号】WO2006/061233
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】