説明

薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法

【課題】水に難溶又は不溶である医薬品の薬効成分を、不純物を混入させることなく確実にナノ粒子化することが可能であり、人体への投与に適した薬効成分ナノ粒子分散液を得ることができる方法を提供すること。
【解決手段】水に難溶又は不溶である医薬品の薬効成分を貧溶媒中に混入して懸濁液とした後、該懸濁液に対してレーザーを照射することにより、懸濁液中の薬効成分を粉砕してナノ粒子化することを特徴とする薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関し、より詳しくは、水に難溶又は不溶である医薬品の薬効成分を、不純物を混入させることなくナノ粒子化して、薬効成分ナノ粒子分散液を製造することができる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、平均粒径が1μm未満であるナノメートルサイズの粒子(ナノ粒子)は、幅広い分野への応用が図られており、医薬品の分野においても、薬効成分のナノ粒子化による様々な優れた効果が期待されている。
具体的には、例えば、水に難溶又は不溶の薬効成分をナノ粒子化することにより、水に分散させて静脈注射を行っても血栓が生じず、また生体内での吸収性を高めることができるといった効果が期待できることから、ガン治療や遺伝子治療に有効な手段である、薬剤や遺伝子を患部に搬送するドラッグデリバリーシステム(DDS)への利用可能性も注目されている。
【0003】
従来、医薬品の薬効成分をナノ粒子化する方法はごく僅かしか知られていない。
従来知られている方法としては、界面活性剤の存在下において湿式ミルにて薬効成分を磨砕処理することにより薬効成分をナノ粒子化する湿式粉砕法(特許文献1参照)、薬効成分に高圧を加えて均質化することにより薬効成分のナノ粒子を製造する高圧均質化法(特許文献2参照)、水に難溶或いは不溶な化合物を有機溶媒に溶解させた溶液から有機溶媒が除去される条件下でキャリア付形剤粒子の流動床に噴霧することによりナノ粒子とキャリア付形剤との混合物を得る流動床噴霧乾燥法(特許文献3参照)等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記したような従来の方法には夫々問題点が存在している。
第一の方法、即ち湿式粉砕法は、磨砕に用いるボールの構成材料である金属等の不純物が混入するため、純粋な薬効成分ナノ粒子のみからなる分散液を得ることは困難である。
第二の方法、即ち高圧均質化法は、一般に乳剤やリポソーム等の液体小球の大きさを小さくするために使用される方法であって、固体物質に対して適用できるかどうかは物質の物理的性質に依存し、薬効成分への適用の汎用性が低い。
第三の方法、即ち流動床噴霧乾燥法は、有機溶媒が残留するおそれがあるため、純粋な薬効成分ナノ粒子のみからなる分散液を得ることは困難である。
【0005】
以上のように、薬効成分をナノ粒子化する方法自体は知られているものの、これら公知の方法はいずれも、人体への投与を考慮した場合、安全性の面等で実用化までに解決すべき重大な問題点を含んでいる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5145684号公報
【特許文献2】米国特許第5510118号公報
【特許文献3】特表2003−518038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、水に難溶又は不溶である医薬品の薬効成分を、不純物を混入させることなく確実にナノ粒子化することが可能であり、人体への投与に適した薬効成分ナノ粒子分散液を得ることができる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、水に難溶又は不溶である医薬品の薬効成分を貧溶媒中に混入して懸濁液とした後、該懸濁液に対してレーザーを照射することにより、懸濁液中の薬効成分を粉砕してナノ粒子化することを特徴とする薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
請求項2に係る発明は、前記レーザーの照射前に、前記医薬品の薬効成分を混入した貧溶媒に超音波を印加することを特徴とする請求項1記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記医薬品の薬効成分を混入した貧溶媒を攪拌しながら、前記レーザーを照射することを特徴とする請求項1又は2記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
請求項4に係る発明は、前記レーザーの照射後に、前記懸濁液を静置もしくは遠心分離処理することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記レーザーとして、パルスレーザーを用いることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
請求項6に係る発明は、前記パルスレーザーのパルス幅が、数十フェムト秒〜数百ナノ秒であることを特徴とする請求項5記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
請求項7に係る発明は、前記パルスレーザーを、励起光強度1〜1000mJ/cmで照射することを特徴とする請求項5又は6記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
【0011】
請求項8に係る発明は、前記薬効成分が、抗癌剤、ビタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤のいずれかの医薬品を構成する薬効成分であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、水に難溶又は不溶である薬効成分を貧溶媒中に混入して懸濁液とした後、該懸濁液に対してレーザーを照射することにより、懸濁液中に混入した薬効成分を粉砕してナノ粒子化することによって、不純物の混入が無く人体への安全性が高い薬効成分ナノ粒子分散液を得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、レーザーの照射前に、薬効成分を混入した貧溶媒に超音波を印加することにより、超音波により予め微粒子化された薬効成分に対してレーザーを照射することが可能となり、効率良く且つ確実に薬効成分ナノ粒子分散液を得ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、薬効成分を混入した貧溶媒を攪拌しながらレーザーを照射することにより、貧溶媒中に薬効成分を満遍なく混入させた状態でレーザーを照射することが可能となり、効率良く高い分散安定性を有する薬効成分ナノ粒子分散液を得ることができる。
請求項4に係る発明によれば、レーザーの照射後に、前記懸濁液を静置もしくは遠心分離処理することにより、薬効成分ナノ粒子分散液を上澄み液として分離して容易に回収することが可能となる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、レーザーとしてパルスレーザーを用いることによって、連続発振レーザーに比べてピーク出力を高くすることができ、薬効成分粒子を確実に破砕することが可能となる。
請求項6に係る発明によれば、パルスレーザーのパルス幅が数十フェムト秒〜数百ナノ秒であることによって、薬効成分粒子を効率良く確実に破砕することが可能となる。
請求項7に係る発明によれば、パルスレーザーを励起光強度1〜1000mJ/cmで照射することによって、薬効成分粒子を確実に破砕することが可能となるとともに、薬効成分自体の破壊を防ぐことができる。
【0015】
請求項8に係る発明によれば、薬効成分が、抗癌剤、ビタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤のいずれかの医薬品を構成する薬効成分であるため、それぞれ抗癌剤、ビタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤の薬効成分として利用可能性が高い薬効成分ナノ粒子分散液を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法の好適な実施形態について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法は、水に難溶又は不溶である医薬品の薬効成分を貧溶媒中に混入して懸濁液とした後、該懸濁液に対してレーザーを照射することにより、懸濁液中に混入した薬効成分を粉砕してナノ粒子化することを特徴とするものである。
【0017】
本発明において、水に不溶な薬効成分とは、常温の水に対する溶解度が10−5%以下(重量比)の薬効成分を指し、水に難溶な薬効成分とは、常温の水に対する溶解度が10−3%以下(重量比)の薬効成分を指す。
【0018】
以下、本発明に係る薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法を説明するに当たって、先ず本発明の方法において用いられる製造装置について簡単に説明する。
図1は本発明に係る薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法において用いられる製造装置の一例を示す概略図である。
製造装置は、医薬品の薬効成分が混入された貧溶媒を収容する容器(1)と、薬効成分が混入された貧溶媒を攪拌して薬効成分懸濁液(4)をつくる攪拌装置(2)と、容器(1)内に収容された薬効成分懸濁液(4)に超音波を印加する超音波発生装置(図示略)と、容器(1)内に収容された貧溶媒中に混入した薬効成分に対してレーザー(3)を照射するレーザー照射装置(図示略)とから構成されている。
【0019】
容器(1)は、レーザー光が透過可能な材料から形成されており、具体的にはガラスや石英等の透明な材料から形成されている。
本発明において、容器(1)内に収容される薬効成分が混入される貧溶媒としては、水、メタノール、エタノール、或いはバッファー(例えば、生理食塩水等)等を用いることができるが、最も代表的な貧溶媒としては水が挙げられる。従って、以下の説明では、貧溶媒を水として説明するが、水に代えて上記したような他の種類の貧溶媒(光に強く且つ薬効成分が不溶又は難溶のもの)を用いることもできる。
【0020】
攪拌装置(2)は、容器(1)内に収容された薬効成分が混入された水(他の種類の貧溶媒でもよい。以下同じ)を攪拌することができるものであればよく、例えば攪拌羽根等の機械的手段を用いても良いが、図1ではマグネチックスターラーを用いた例が示されている。
【0021】
レーザー照射装置の種類としては、YAGレーザー,チタンサファイアレーザー,ルビーレーザー等の固体レーザー、GaAsレーザー等の半導体レーザー、エキシマレーザー,Arイオンレーザー,COレーザー等の気体レーザー、色素レーザー等の液体レーザーを用いることができる。
また、発振形式については、パルス発振形式のものを用いることができる。
【0022】
次に、本発明に係る薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法について詳細に説明する。
先ず、水に難溶又は不溶である薬効成分を、容器(1)内に収容された水中に混入する。このとき、本発明では水中への残留を防ぐために分散剤の添加は行わない。
【0023】
本発明において用いられる医薬品の薬効成分は、薬事法第2条第1項に定められている医薬品を構成する薬効成分のうち、水に不溶又は難溶なものであり、医療用医薬品及び一般用医薬品のいずれの薬効成分も含まれる。
薬効成分の種類は特に限定されないが、一例として、抗癌剤、ビタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤を構成する薬効成分が挙げられる。
抗癌剤を構成する薬効成分としては、エリプチシン、カンプトテシン等が例示できる。
【0024】
上記以外の医薬品としては、例えば、抗アレルギー剤、抗不整脈剤、抗生物質、抗凝血剤、抗痙攣薬/抗癲癇剤、抗ムスカリン剤、抗ミコバクテリア症剤、抗腫瘍剤、免疫抑制剤、抗甲状腺薬、抗ウィルス剤、抗不安鎮静剤、収れん剤、ベータアドレナリン受容体遮断剤、造影剤、コルチコステロイド、診断造影剤、利尿剤、ドーパミン作用剤、脂質調整剤、筋弛緩剤、副交感神経様作用剤、副甲状腺カルシトニン、プロスタグランジン、キサンチン、放射線製剤、性ホルモン、睡眠補助薬、興奮剤、交感神経様作用剤、甲状腺薬、血管拡張薬、止血薬、免疫薬、咳止め薬、診断薬、駆虫薬などが挙げられ、これらの医薬品を構成する薬効成分に対しても、本発明を適用することが可能である。
【0025】
水中に混入する薬効成分は、合成後の粗製粉末を用いても良いが、前処理にて粉砕した粒子(微結晶)を用いることが好ましく、この場合、平均粒径1〜100μm程度となるようにすることが好ましい。これは、100μmを超える程に粒径が大きいとナノ粒子化されるまでに時間がかかり処理効率が低下する一方、前処理により1μm未満まで粉砕することは困難であるという理由による。
また、レーザー照射によるナノ粒子化の効率の観点からすると、水中に混入する薬効成分の量を適当に設定することが好ましい。好適な量は薬効成分の種類によって異なるが、一例として、水1mLに対して薬効成分10〜1000μgという条件を例示することができる。
【0026】
次いで、薬効成分を混入した水に超音波を印加することにより、水中の薬効成分を数百nm程度まで微粒子化する。その後、マグネチックスターラー等の攪拌装置(2)を用いて攪拌して懸濁液とし、更に攪拌を続けながら、レーザー照射装置によって懸濁液中の薬効成分に対してレーザーを照射する。
【0027】
水中に混入した薬効成分に対してレーザーを照射すると、薬効成分粉末がレーザー光を吸収し、光吸収部において急激且つ局所的な温度上昇が生じる。
この光吸収部の温度上昇はレーザー光照射後瞬間的に起こり、一方、光吸収部周囲の温度上昇は熱伝導によって起こるため、比較的大きな粉末からなる薬効成分を原料として用いた場合には、光吸収部とその周辺部に著しい内部応力が生じて粒子にクラックが発生して破砕が起こる。
薬効成分粒子が、レーザー光の照射波長に強い吸収性を有する場合、光吸収は主として粒子の表面で起こり、光照射表面と内部との間に温度差が生じるので、この場合でも、粒子表面が周囲の水によって冷却されることで、内部との間に温度勾配が生じて応力が発生し、破砕が達成される。
このように、薬効成分が混入される貧溶媒(例えば水)は、薬効成分粉末の冷却、生成した微粒子の回収容易化の他、レーザー照射によって粉末に生じたクラックに浸透して、破砕を促進する等の役割をも担っている。
【0028】
照射されるレーザーは、特に限定されるものではなく、紫外光、可視光、近赤外光、遠赤外光のいずれの波長をもつレーザーを使用することも可能であり、レーザーの種類は、上述したような公知の固体レーザー、半導体レーザー、気体レーザー、液体レーザーの中から適宜選択して用いることができる。
尚、レーザーの波長については、200〜800nm程度の波長のものを用いることが好ましい。その理由は、波長が200nmより短いとレーザーの光エネルギーが水に吸収され易くなるとともにガラスや石英等の容器への吸収も無視できなくなり、800nmより長いと、一般的に薬効成分がこの範囲の波長を吸収しない為、薬効成分の破砕効率が低下する傾向があるためである。
【0029】
本発明において照射されるレーザーの具体的な例としては、Nd3+:YAGレーザー(基本波長1064nm)の第2高調波(波長532nm),第3高調波(波長355nm),第4高調波(波長266nm)、エキシマレーザー(波長193nm,248nm,308nm,351nm)、窒素レーザー(波長337nm)、Arイオンレーザー(波長488nm又は514nm)等を挙げることができる。
【0030】
照射されるレーザーの発振形式については、パルスレーザーを用いるとよい。
パルスレーザーとしては、薬効成分の破砕効率の観点から、パルス幅が数十フェムト秒〜数百ナノ秒のものを用いることが好ましい。
また、パルスレーザーの励起光強度は、薬効成分の種類によって適宜設定されるが、例えば1〜1000mJ/cmとすることが好ましい。その理由は、励起光強度が1mJ/cm未満であると、薬効成分が確実に破砕できないおそれがあり、1000mJ/cmを超えると薬効成分自体が破壊されるおそれがあるためである。
【0031】
パルスの繰り返し周波数は、0.1〜1000Hzが好ましい。処理効率を考慮した場合、高い繰り返し周波数とすることが好ましいが、周波数が高くなると水が加熱されることにより、薬効成分粒子との温度差が少なくなって破砕理効率が低下するおそれがある。
そのため、水温が高くなり過ぎない範囲において高い繰り返し周波数とすることが好ましい。YAGレーザーを用いる場合、例えば1〜100Hzの範囲に設定する。
【0032】
本発明では、上記したようなレーザー照射に伴う水温の上昇による処理効率の低下を防ぐために、容器(1)を冷却する冷却装置を設けることによって、容器(1)内に収容された薬効成分懸濁液の水温を常に一定値以下(例えば10℃以下程度)に維持するように構成することもできる。
このように、水温が常に一定値以下となるように冷却することによって、レーザー照射時において、水と薬効成分粒子の表面、並びに、薬効成分粒子の表面と内部の間に顕著な温度差を生じさせて、薬効成分粒子を容易に破砕することが可能となる。
【0033】
レーザーを照射した後、薬効成分懸濁液(4)を所定時間静置するか若しくは遠心分離処理する。
これによって、レーザー照射によりナノ粒子化された薬効成分を含む懸濁液(4)から、上澄み液として分離された薬効成分ナノ粒子分散液を容易に回収することが可能となる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0035】
(実施例)
図1に示す製造装置を用いて薬効成分ナノ粒子分散液を製造した。
先ず、容器(1)に収容された水(1000mL)中に原料となるエリプチシン微結晶(4mg)を混入した後、容器内の水に対して超音波を15分間印加することにより、エリプチシンを数百nmの微粒子とした。
この状態(レーザー照射前)では、エリプチシン微粒子の多くは短時間で容器の底に沈殿して上澄み水はほぼ透明となった。
【0036】
次いで、マグネチックスターラーにより容器内の水を攪拌し、水中に浮遊したエリプチシン微粒子に対して、レーザー照射装置からナノ秒Nd3+:YAGレーザー第三高調波(波長355nm、パルス半値幅7ns、繰り返し周波数10Hz)を励起光強度100mJ/cmで10秒間照射したところ、アブレーションが誘起されて、水中でエリプチシン微粒子が粉砕されることにより、黄色く透明なコロイド溶液が得られた。
【0037】
得られたコロイド溶液を1日間静置した後、容器内の上澄み液を採取し、疎水化処理したシリコン基板上に滴下した。乾燥後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、エリプチシンナノ粒子の粒子径を測定した。SEM写真を図2に示し、粒子径の測定結果を示すヒストグラムを図3に示す。
観察及び測定の結果、平均粒径約100nmのエリプチシンナノ粒子が得られていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により得られる薬効成分ナノ粒子分散液は、不純物の混入がなく安全性が高いため、人体への投与に適し、ドラッグデリバリーシステム等への利用可能性が大いに期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法において用いられる製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る製造方法により得られた薬効成分ナノ粒子分散液の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】本発明に係る製造方法により得られた薬効成分ナノ粒子分散液の粒子径の測定結果を示すヒストグラムである。
【符号の説明】
【0040】
1 容器
2 攪拌装置
3 レーザー
4 薬効成分懸濁液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に難溶又は不溶である医薬品の薬効成分を貧溶媒中に混入して懸濁液とした後、該懸濁液に対してレーザーを照射することにより、懸濁液中の薬効成分を粉砕してナノ粒子化することを特徴とする薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記レーザーの照射前に、前記医薬品の薬効成分を混入した貧溶媒に超音波を印加することを特徴とする請求項1記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記医薬品の薬効成分を混入した貧溶媒を攪拌しながら、前記レーザーを照射することを特徴とする請求項1又は2記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記レーザーの照射後に、前記懸濁液を静置もしくは遠心分離処理することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記レーザーとして、パルスレーザーを用いることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
前記パルスレーザーのパルス幅が、数十フェムト秒〜数百ナノ秒であることを特徴とする請求項5記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記パルスレーザーを、励起光強度1〜1000mJ/cmで照射することを特徴とする請求項5又は6記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
前記薬効成分が、抗癌剤、ビタミン剤、鎮痛剤、抗炎症剤のいずれかの医薬品を構成する薬効成分であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の薬効成分ナノ粒子分散液の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−306950(P2007−306950A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135878(P2006−135878)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(507044022)株式会社ABsize (8)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】