説明

薬液投与具

【課題】チューブ内に薬液を充填してプライミングを行なう際、そのプライミングに要する時間を短縮することができる薬液投与具を提供すること。
【解決手段】薬液投与具10は、薬液Lを供給する薬液供給源に接続され、薬液供給源から供給された薬液Lが通過するチューブ30と、チューブ30の長手方向の途中に設けられ、チューブ30内を通過する薬液Lの流量を調整する流量調整部と、チューブ30の流量調整部よりも下流側に設けられた三方活栓6を有し、チューブ30内を減圧し、その減圧状態を維持する機能を有する減圧状態維持手段12とを備え、チューブ30内に薬液Lを充填するプライミングを行なうときには、減圧状態維持手段12の作動により減圧状態を維持したままでプライミングを行なうよう用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばモルヒネ等の鎮痛剤、抗生物質、抗ガン剤のような薬液を供給、特に生体へ投与するための薬液投与具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者に対し薬液を投与するための医療器具には、術後疼痛や癌性疼痛の緩和のような疼痛管理のために、モルヒネ等の鎮痛剤を連続的に微量注入するものがある。このような医療器具は、主に、薬液を貯留する貯留部を有し、その貯留部を加圧することで薬液を供給する薬液供給源としての薬液リザーバと、薬液リザーバから延長された薬液供給ラインであるチューブと、チューブの途中に設置された流量制御装置とで構成されている。流量制御装置は、流路の横断面積が微小な(極細の流路を有する)オリフィスを有し、薬液が該オリフィスを通過する際の大きな管路抵抗により流量を微量に制御するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の流量制御装置を有する医療器具では、薬液投与に先立って、チューブ内を薬液で満たすプライミングが行なわれる。
【0004】
しかしながら、この医療器具では、プライミングを行なう際に、薬液は、当然前記オリフィスを通過しなければならず、そのため、前記管路抵抗により迅速に流下することが阻止され、結果、プライミングに時間がかかってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−295811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、チューブ内に薬液を充填してプライミングを行なう際、そのプライミングに要する時間を短縮することができる薬液投与具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 薬液を供給する薬液供給源に接続され、該薬液供給源から供給された前記薬液が通過するチューブと、
前記チューブの長手方向の途中に設けられ、該チューブ内を通過する前記薬液の流量を調整する流量調整部と、
前記チューブの前記流量調整部よりも下流側に設けられ、前記チューブ内を減圧し、その減圧状態を維持する機能を有する減圧状態維持手段とを備え、
前記減圧状態維持手段は、前記チューブ内を吸引する吸引手段と、
前記チューブの下流側の端部が接続される第1のポートと、該第1のポートと異なる位置に設けられ、前記吸引手段が接続される第2のポートと、前記第1のポートおよび前記第2のポートと異なる位置に設けられ、前記チューブを通過した前記薬液がさらに流下する下流側チューブが接続される第3のポートとを有し、前記第1のポートと前記第2のポートと前記第3のポートとの連通パターンを選択し得るよう構成された多方活栓とを備え、
前記チューブ内に前記薬液を充填するプライミングを行なうときには、前記減圧状態維持手段の作動により前記減圧状態を維持したままで前記プライミングを行なうよう用いられることを特徴とする薬液投与具。
【0008】
(2) 前記吸引手段は、先端部に口部を有する外筒と、該外筒内で摺動し得るガスケットと、該ガスケットに連結され、前記ガスケットを移動操作するプランジャとを有し、前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間が前記チューブ内と連通するシリンジと、
前記プランジャを基端方向に向かって引張った際、その引張った状態を保持する固定部材とを備える上記(1)に記載の薬液投与具。
【0009】
(3) 前記外筒および前記プランジャは、それぞれ、その基端部に突出形成された板状のフランジを有し、
前記固定部材は、前記外筒のフランジが係合する少なくとも1つの外筒用係合部と、前記プランジャのフランジが係合する少なくとも1つのプランジャ用係合部とを有する上記(2)に記載の薬液投与具。
【0010】
(4) 前記外筒用係合部は、複数設けられ、該複数の外筒用係合部は、それぞれ、前記プランジャ用係合部に対する位置が異なる上記(3)に記載の薬液投与具。
【0011】
(5) 前記薬液供給源は、前記薬液を貯留する貯留部を有し、該貯留部を加圧することで前記薬液を供給するリザーバである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の薬液投与具。
【0012】
本発明の薬液投与具では、前記プライミングを行なうときには、前記多方活栓を、前記第1のポートと前記第2のポートとが連通し、前記第3のポートが前記第1のポートと前記第2のポートとから遮断された状態とする。
【0013】
本発明の薬液投与具では、前記プライミング後には、前記多方活栓を、前記第1のポートと前記第3のポートとが連通し、前記第2のポートが前記第1のポートと前記第3のポートとから遮断された状態とするか、または、前記第2のポートと前記第3のポートとが連通し、前記第1のポートが前記第2のポートと前記第3のポートとから遮断された状態とする。
【0014】
本発明の薬液投与具では、前記流量調整部は、前記チューブに連通する極細の流路からなり、その流路抵抗により前記薬液の流量を微量に調整する少なくとも1本のオリフィスを有するのが好ましい。
【0015】
本発明の薬液投与具では、前記流量調整部は、調整される前記薬液の流量が異なる複数本の前記オリフィスを有し、該複数本のオリフィスのうちの1つを選択して用いるよう構成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、チューブ内に薬液を充填してプライミングを行なう際、減圧状態維持手段作動により、チューブ内の減圧状態が確実に維持される。そして、この状態で、プライミングを行なうと、薬液が下流側に向かって吸引されて強制的に流下させられることとなる。これにより、プライミングに要する時間を確実に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の薬液投与具の使用状態を示す正面図である。
【図2】図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の部分縦断面図(操作過程を順に示す図)である。
【図3】図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の部分縦断面図(操作過程を順に示す図)である。
【図4】図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の部分縦断面図(操作過程を順に示す図)である。
【図5】図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の部分縦断面図(操作過程を順に示す図)である。
【図6】本発明の薬液投与具(第2実施形態)における操作過程を順に示す部分縦断面図である。
【図7】本発明の薬液投与具(第2実施形態)における操作過程を順に示す部分縦断面図である。
【図8】本発明の薬液投与具(第2実施形態)における操作過程を順に示す部分縦断面図である。
【図9】本発明の薬液投与具(第2実施形態)における操作過程を順に示す部分縦断面図である。
【図10】本発明の薬液投与具(第2実施形態)における操作過程を順に示す部分縦断面図である。
【図11】図1に示す薬液投与具が有する流量調整部の部分縦断面図である。
【図12】図1に示す薬液投与具が有するシリンジを固定する固定部材の正面図(a)および側面図(b)である。
【図13】本発明の薬液投与具(第3実施形態)における固定部材の正面図(a)および側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の薬液投与具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の薬液投与具の使用状態を示す正面図、図2〜図5は、それぞれ、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の部分縦断面図(操作過程を順に示す図)、図11は、図1に示す薬液投与具が有する流量調整部の部分縦断面図、図12は、図1に示す薬液投与具が有するシリンジを固定する固定部材の正面図(a)および側面図(b)である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図5および図11中(図6〜図10についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0020】
図1に示す薬液投与具10は、チューブ組立体11と、チューブ組立体11の下流側に設けられた減圧状態維持手段12とで構成されている。この薬液投与具10は、その上流側に薬液リザーバ70が接続され、下流側にチューブ(下流側チューブ)80が接続される。そして、この接続状態(図1に示す状態)で、薬液Lの患者への投与に用いることができる。
【0021】
まず、薬液投与具10について説明する前に、薬液リザーバ70、チューブ80について説明する。
【0022】
薬液リザーバ70は、薬液Lを供給するための薬液供給源である。この薬液リザーバ70は、ケーシング701と、ケーシング701内に収納されたポンプ702とで構成されている。
【0023】
ケーシング701は、両端が閉塞した筒状をなす部材である。このケーシング701の外周部には、ポンプ702内に薬液Lを充填するときに用いられるコネクタ703が設けられている。なお、コネクタ703には、薬液Lがポンプ702に向かってのみ流れることを可能にする一方弁706が設置されている。
【0024】
ポンプ702は、コネクタ703を介して注入された薬液Lを貯留する貯留部として機能する。このポンプ702は、ケーシング701から突出し、薬液Lが排出される排出口704と、薬液Lを排出口704に向かって押圧するガスケット705と、ガスケット705をその押圧方向に付勢する圧縮コイルバネ(図示せず)とを有している。排出口704には、後述するチューブ組立体11の第1のコネクタ40aが接続される。そして、ガスケット705の押圧により排出口704から排出された薬液Lは、チューブ組立体11を流下することができる。
【0025】
また、薬液Lとしては、特に限定されないが、その使用目的に応じて適宜選択され、例えば、モルヒネ(麻薬性鎮痛剤)等の鎮痛剤、ホルモン剤、インシュリン製剤、抗生物質、抗ガン剤、局麻剤等が挙げられる。なお、薬液Lの種類は、これらに限定されるものではなく、例えば、生理食塩水、電解水、洗浄液、抗凝固剤、造影剤等の直接薬効を発揮しないものも含まれる。
【0026】
チューブ80は、その中空部が、薬液投与具10を通過した薬液Lがさらに流下する流路として機能するものである。チューブ80の上流側の端部は、後述する減圧状態維持手段12の三方活栓(多方活栓)6の第3のポート73に接続可能に構成されている。また、チューブ80の下流側の端部は、患者に予め留置された留置針(図示せず)に接続可能に構成されている。チューブ80内を流下した薬液Lは、前記留置針を介して、患者に投与される。
【0027】
次に、薬液投与具10について説明する。
図1、図12に示すように、薬液投与具10は、チューブ組立体11と、減圧状態維持手段12とで構成されている。チューブ組立体11は、チューブ30と、チューブ30の上流側の端部に設置された第1のコネクタ40aと、チューブ30の下流側の端部に設置された第2のコネクタ40bと、チューブ30の長手方向の途中に設置された流量調整装置(流量調整部)60とを備えている。減圧状態維持手段12は、吸引手段としてのシリンジ1およびそのシリンジ1を固定する固定部材5と、シリンジ1の口部22が接続される三方活栓6とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0028】
チューブ30は、第1のコネクタ40aを介して、薬液リザーバ70に接続されている。そして、チューブ30の中空部は、薬液リザーバ70から供給された薬液Lが通過する流路として機能する。
【0029】
チューブ30の長さは、薬液リザーバ70と患者との距離にもよるが、例えば、100〜1000mmであるのが好ましく、300〜600mmであるのがより好ましい。また、チューブ30の内径も、例えば、0.1〜1.0mmであるのが好ましく、0.3〜0.5mmであるのがより好ましい。
【0030】
第1のコネクタ40aは、前述したように、薬液リザーバ70の排出口704に液密に接続されるものである。
【0031】
第2のコネクタ40bは、外管401および内管402からなる二重管構造をなすものである。外管401の内周部には、雌ネジ(図示せず)が形成されている。この雌ネジは、三方活栓6の第1のポート71に形成された雄ネジ(図示せず)と螺合することができる。また、内管402は、外管401の雌ネジと三方活栓6の第1のポート71の雄ネジとが螺合した際、第1のポート71の内側に液密に嵌合することができる。これにより、チューブ組立体11を三方活栓6の第1のポート71に確実に接続することができる。
【0032】
流量調整装置60は、チューブ30内を通過する薬液Lの流量を調整する装置である。図1、図11に示すように、流量調整装置60は、装置本体605と、装置本体605に並べて配置された可撓性を有する第1チューブ603aおよび第2チューブ603bと、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bのうちの一方のチューブを圧閉する圧閉部606を有する操作ダイヤル602と、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bの各下流側の端部がそれぞれ接続されたY字コネクタ604aと、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bの各上流側の端部がそれぞれ接続されたY字コネクタ604bとを備えている。各Y字コネクタ604a、604bを介して、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bは、それぞれ、チューブ30と連通している。
【0033】
また、第1チューブ603aの下流側の部分には、極細の流路であるオリフィス601aを形成するチップ607aが液密に嵌入されている。第2チューブ603bの下流側の部分には、オリフィス601aと同様に極細の流路であるオリフィス601bを形成するチップ607bが液密に嵌入されている。チップ607a、607bは、それぞれ、細管で構成されている。そして、チップ607a、607bは、互いに管路径(オリフィス径)が異なり、その大きさに応じた管路抵抗(流路抵抗)によって薬液Lの流量を微量に制御するものである。図11に示す構成では、チップ607aの管路径は、チップ607bの管路径よりも小さい。
【0034】
このような構成の流量調整装置60では、操作ダイヤル602を操作することにより、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bのうちの一方を開放し、他方を圧閉部606で閉塞することができる。そして、例えば第1チューブ603aが開放し、第2チューブ603bが閉塞した場合、すなわち、第1チューブ603aが選択された場合、第1チューブ603aを薬液リザーバ70からの薬液Lが通過する。その際、第1チューブ603aに嵌入されたチップ607aによって、薬液Lの流量が最小となる。一方、例えば第2チューブ603bが開放し、第1チューブ603aが閉塞した場合、すなわち、第2チューブ603bが選択された場合、第2チューブ603bを薬液リザーバ70からの薬液Lが通過する。その際、第2チューブ603bに嵌入されたチップ607bによって、薬液Lの流量が、第1チューブ603aを選択した場合よりも大となる。このように、流量調整装置60では、薬液Lの流量の大小を切り換える、すなわち、調整することができる。
【0035】
なお、チップ607a、607bの各管路径は、特に限定されないが、例えば、12.5〜125μmであるのが好ましく、25〜65μmであるのがより好ましい。また、チップ607a、607bの長さは、特に限定されないが、例えば、3〜200mmであるのが好ましく、10〜100mmであるのがより好ましい。
【0036】
また、チップ607a、607bの構成材料としては、とくに限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、セラミック、ガラス、ステンレス鋼が挙げられる。
【0037】
また、チューブ30、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bは、それぞれ、可撓性を有する材料で構成され、その構成材料としては、とくに限定されないが、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のような可撓性を有する高分子材料が挙げられる。
【0038】
また、第1のコネクタ40a、第2のコネクタ40b、装置本体605、操作ダイヤル602、Y字コネクタ604a、604bの構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、後述するシリンジ1の外筒2やプランジャ4の構成材料を用いることができる。
【0039】
チューブ組立体11の下流側には、減圧状態維持手段12が設けられている。減圧状態維持手段12は、チューブ組立体11(チューブ30)内を減圧し、その減圧状態を維持する機能を有するものである。
【0040】
減圧状態維持手段12の一部を構成するシリンジ1は、空のシリンジであり、外筒2と、外筒2内にその長手方向に沿って摺動可能に設置されたガスケット3と、ガスケット3を移動操作するプランジャ4とを備えている。そして、外筒2とガスケット3とで囲まれた空間24は、三方活栓6を介して、チューブ組立体11内と連通している(図2〜図5参照)。
【0041】
外筒2は、有底筒状をなす外筒本体21と、外筒本体21の先端部(底部)211に設けられた口部22とを有している。口部22は、外筒本体21よりも外径および内径が縮径した縮径部でそれぞれ構成された外管221および内管222からなる二重管構造をなすものである。外管221は、いわゆる「ロックアダプタ」であり、その内周部には、雌ネジ(図示せず)が形成されている。この雌ネジは、三方活栓6の第2のポート72に形成された雄ネジ(図示せず)と螺合することができる。また、内管222は、外管221の雌ネジと三方活栓6の第2のポート72の雄ネジとが螺合した際、第2のポート72の内側に液密に嵌合することができる。これにより、シリンジ1が三方活栓6の第2のポート72に確実に接続され、よって、シリンジ1を操作すると、三方活栓6の内部ごと、チューブ組立体11内を減圧することができる。
【0042】
また、外筒本体21の基端には、板状をなすフランジ25が突出形成されている。
また、外筒本体21の外周部には、目盛りが付されているのが好ましい。
【0043】
ガスケット3は、円柱状または円板状をなす弾性体で構成されている。そして、ガスケット3の外周面が外筒本体21の内周面に対し密着しつつ摺動することで、気密性(液密性)を確実に保持することができる。なお、ガスケット3は、図2に示す初期状態では、その先端面31が外筒本体21の先端部211に当接している。
【0044】
プランジャ4は、長尺な本体部42を有している。本体部42の先端部は、ガスケット3と例えば螺合により連結されている。また、本体部42の横断面形状は、十文字状をなしている。本体部42の基端には、円板状のフランジ41が突出形成されている。プランジャ4を基端方向に向かって引張ったり、先端方向に向かって押圧したりする操作の際には、フランジ41を把持して、その操作を行なうことができる。
【0045】
なお、外筒2およびプランジャ4の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような各種樹脂材料が挙げられる。
【0046】
また、ガスケット3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
前述したように、プランジャ4は、基端方向に向かって引張り操作を行なうことができる。そして、その操作を行なった際に、シリンジ1の空間24の容積が増加し、それに伴って、当該空間24の圧力が減少する。これにより、三方活栓6を介して空間24と連通するチューブ組立体11の内部が減圧される。
【0048】
ところで、この減圧状態でプランジャ4を把持した手を放すと、プランジャ4は、初期状態の位置に戻ってしまう。そこで、プランジャ4の戻りを防止する、すなわち、プランジャ4を引張った状態を保持するために、固定部材5を用いる(図4、図5参照)。
【0049】
図12に示すように、固定部材5は、長尺な底板51と、底板51の両縁部からそれぞれ立設した壁部52とで構成されている。すなわち、固定部材5は、横断面形状が「コ」字状をなすものである。
【0050】
各壁部52の長手方向の途中には、それぞれ、1本のスリット521が形成されている。なお、本実施形態では、このスリット521は、壁部52の長手方向の中央部からズレた位置ある、すなわち、壁部52の一端面522側(図12中の右側)に偏在している。
【0051】
図4、図5に示すように、プランジャ4が引張られた状態のシリンジ1に固定部材5を装着すると、外筒2のフランジ25が各スリット521にそれぞれ係合し、プランジャ4のフランジ41が壁部52の一端面522に係合する。これにより、外筒2のフランジ25とプランジャ4のフランジ41との間隔が規制され、すなわち、プランジャ4のフランジ41の先端方向への移動が規制され、よって、プランジャ4が引張られた状態を確実に保持することができる。このように、固定部材5では、各スリット521がそれぞれ外筒2のフランジ25が係合する外筒用係合部として機能し、壁部52の一端面522がプランジャ4のフランジ41が係合するプランジャ用係合部として機能する。
【0052】
図4、図5に示す構成とは異なり、固定部材5をその左右を反転して使用することもできる。この場合、スリット521に対して壁部52の一端面522よりも遠位の壁部52の他端面523にプランジャ4のフランジ41が係合することとなる。これにより、外筒2のフランジ25とプランジャ4のフランジ41との間隔を前記よりも大きく確保することができ、よって、保持する減圧の程度を増加させることができる。
【0053】
固定部材5の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前述したシリンジ1の外筒2やプランジャ4の構成材料を用いることができる。
【0054】
図1〜図5に示すように、三方活栓6は、本体7と、コック8とを備えている。
図2(図3〜図5についても同様)に示すように、本体7は、円筒状をなす円筒部74を有し、この円筒部74の外周に、90°の角度を隔てて径方向外方に向けて突出する、すなわち、互いに異なる位置に配置された第1のポート71、第2のポート72および第3のポート73が好ましくは円筒部74と一体的に形成されている。この場合、第1のポート71、第2のポート72および第3のポート73の内部に形成された流路711、721、731は、それぞれが等しい高さ位置で円筒部74の内腔に連通している。
【0055】
第1のポート71は、管状をなし、その外周部に雄ねじ(図示せず)が形成されている。前述したように、この第1のポート71の雄ねじは、第2のコネクタ40bの外管401の雌ネジと螺合することができる。
【0056】
第2のポート72も、第1のポート71と同様に、管状をなし、その外周部に雄ねじ(図示せず)が形成されている。前述したように、シリンジ1(外筒2)の口部22にある外管221の雌ネジと螺合することができる。
【0057】
第3のポート73は、外管732および内管733からなる二重管構造をなす部分を有する。外管732の内周部には、雌ネジ(図示せず)が形成されている。この雌ネジは、チューブ80の基端部に設けられたコネクタ801と螺合することができる。また、内管733は、外管732の雌ネジとチューブ80のコネクタ801とが螺合した際、チューブ80のコネクタ801の内側に液密に嵌合することができる。これにより、チューブ80を三方活栓6の第3のポート73に確実に接続することができる。
【0058】
コック8は、胴部84と、レバー85とで構成されている。
胴部84は、円柱状をなし、円筒部74内に気密性または液密性をもって回動自在に設けられるものである。
【0059】
胴部84の内部には、第1のポート71の流路711、第2のポート72の流路721および第3のポート73の流路731に対応する流路81、82および83がT字状に形成されている。すなわち、90°の角度を隔てて胴部84の径方向に延在する3本の流路81、82および83が、胴部84の中心部付近にて互いに連通するように形成されている。また、これらの流路81〜83は、第1のポート71、第2のポート72および第3のポート73と一致する高さ位置に形成されている。
【0060】
胴部84の外周部には、その径方向外方に向けて突出したレバー85が形成されている。このレバー85を手指で把持し、トルクを加えてコック8の回動操作を行なう。なお、本実施形態では、コック8は、本体7に対し360°自由に回動することができる構成となっているが、これに限定されず、例えば、本体7に対する回動角度範囲が規制されていてもよい。
【0061】
そして、コック8を回動操作することにより、第1のポート71と第2のポート72と第3のポート73との連通パターンを選択することができる、すなわち、例えば、図2(図3、図4、図6、図7についても同様)に示す状態、図5(図10についても同様)に示す状態、図8(図9についても同様)に示す状態を取り得る。
【0062】
図2に示す状態では、第1のポート71の流路711と第2のポート72の流路721とが、コック8の胴部84に形成された流路81および83を介して連通し、第3のポート73が胴部84の外周面で封止され、第1のポート71および第2のポート72から遮断されている。これにより、第1のポート71と第2のポート72とが開通状態、第3のポート73が閉鎖状態となる。
【0063】
図5に示す状態では、第1のポート71の流路711と第3のポート73の流路731とが、コック8の胴部84に形成された流路81および82を介して連通し、第2のポート72が胴部84の外周面で封止され、第1のポート71および第3のポート73から遮断されている。これにより、第1のポート71と第3のポート73とが開通状態、第2のポート72が閉鎖状態となる。
【0064】
図8に示す状態では、第2のポート72の流路721と第3のポート73の流路731とが、コック8の胴部84に形成された流路82および83を介して連通し、第1のポート71が胴部84の外周面で封止され、第2のポート72および第3のポート73から遮断されている。これにより、第2のポート72と第3のポート73とが開通状態、第1のポート71が閉鎖状態となる。
【0065】
三方活栓6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前述したシリンジ1の外筒2やプランジャ4の構成材料を用いることができる。
【0066】
次に、薬液投与具10の操作方法(使用方法)について、図1〜図5を参照しつつ説明する。
【0067】
[1] まず、図1に示すように、薬液投与具10にチューブ組立体11やチューブ80等が接続された状態(初期状態)とする。このときの薬液投与具10のシリンジ1は、ガスケット3が外筒2の先端部211に当接した状態となっている。また、三方活栓6は、第1のポート71と第2のポート72とが開通状態、第3のポート73が閉鎖状態となっている(図2参照)。
【0068】
次に、薬液リザーバ70に薬液Lを充填する。この充填方法としては、コネクタ703に、調製済みの投与すべき薬液Lが予め充填されたシリンジを取り付けて、当該シリンジから充填する方法が挙げられる。
【0069】
[2] 次に、図3に示すように、チューブ組立体11内に薬液Lを充填するプライミングを行なう。この操作は、まず、薬液リザーバ70のポンプ702を作動させて薬液Lを加圧、排出し、その後、シリンジ1のプランジャ4を基端方向に向かって所定距離、すなわち、シリンジ1が固定部材5に装着可能となるまで引張ることにより行なわれる。この操作後、シリンジ1を固定部材5に装着する(図4参照)。
【0070】
プランジャ4の引張り操作を行なうことにより、前述したように、チューブ組立体11の内部を確実に減圧状態とすることができる。また、固定部材5により、プランジャ4の戻りが防止され、減圧状態が確実に維持される。
【0071】
そして、この減圧状態が維持されていることと、薬液リザーバ70のポンプ702の作動により送液されることとが相まって、チューブ組立体11内を(本実施形態では三方活栓6内まで)薬液Lで迅速に満たすことができる。これにより、プライミングに要する時間を短縮することができる。
【0072】
ところで、薬液投与具10では、薬液Lは、流量調整装置60のチップ607aまたは607bを通過しなければならず、そのため、前記管路抵抗が発生するが、流量調整装置60よりも下流側でチューブ組立体11内全体をシリンジ1で吸引しているため、流量調整装置60の前後での圧力差が大きくなり、迅速に流下することができる。これにより、前述したように、プライミングに要する時間が短縮されることとなる。
【0073】
[3] 次に、プライミングが完了した後には、三方活栓6を、第1のポート71と第3のポート73とが開通状態、第2のポート72が閉鎖状態とする(図5参照)。これにより、三方活栓6を介してチューブ組立体11とチューブ80とが連通し、薬液リザーバ70から患者への薬液Lの投与を行なうことができる。また、このとき、減圧状態が解消されており、流量調整装置60で薬液Lの流量が適正に調整されている。なお、三方活栓6を図5に示す状態とした後に、三方活栓6からシリンジ1を取り外してもよい。
【0074】
<第2実施形態>
図6〜図10は、それぞれ、本発明の薬液投与具(第2実施形態)における操作過程を順に示す部分縦断面図である。
【0075】
以下、これらの図を参照して本発明の薬液投与具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0076】
本実施形態は、薬液投与具の操作方法が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0077】
本実施形態での薬液投与具10の操作方法について、図1、図2および図6〜図10を参照しつつ説明する。
【0078】
[1] まず、図1に示すように、薬液投与具10にチューブ組立体11やチューブ80等が接続された状態とする。このときの薬液投与具10のシリンジ1は、ガスケット3が外筒2の先端部211に当接した状態となっている。また、三方活栓6は、第1のポート71と第2のポート72とが開通状態、第3のポート73が閉鎖状態となっている(図2参照)。
【0079】
次に、薬液リザーバ70に薬液Lを充填する。この充填方法としては、コネクタ703に、調製済みの投与すべき薬液Lが予め充填されたシリンジを取り付けて、当該シリンジから充填する方法が挙げられる。
【0080】
[2] 次に、図6に示すように、チューブ組立体11内に薬液Lを充填するプライミングを行なう。この操作は、まず、薬液リザーバ70のポンプ702を作動させて薬液Lを加圧、排出し、その後、シリンジ1のプランジャ4を基端方向に向かって所定距離、すなわち、シリンジ1が固定部材5に装着可能となるまで引張ることにより行なわれる。この操作後、シリンジ1を固定部材5に装着する(図7参照)。
【0081】
プランジャ4の引張り操作を行なうことにより、前述したように、チューブ組立体11の内部を確実に減圧状態とすることができる。また、固定部材5により、プランジャ4の戻りが防止され、減圧状態が確実に維持される。
【0082】
そして、この減圧状態が維持されていることと、薬液リザーバ70のポンプ702の作動により送液されることとが相まって、チューブ組立体11内を(本実施形態では三方活栓6内まで)薬液Lで迅速に満たすことができる。これにより、プライミングに要する時間を短縮することができる。
【0083】
ところで、三方活栓6内まで到達した薬液Lは、シリンジ1による減圧の程度によっては、三方活栓6を超えてシリンジ1内に若干流入することがある(図6、図7参照)。この場合、以下の操作を経ることができる。
【0084】
[3] 前記[2]でのプライミング完了後、三方活栓6を、第2のポート72と第3のポート73とが開通状態、第1のポート71が閉鎖状態とする(図8参照)。
【0085】
[4] 次に、シリンジ1から固定部材5を取り外して、当該シリンジ1のプランジャ4を先端方向に向かって押圧操作する(図9参照)。この操作により、シリンジ1内に流入した薬液Lが押し出され、投与に供される(以下この投与を「一時投与」と言う)。このようにシリンジ1内の薬液Lを一時投与に用いることができ、よって、当該薬液Lが使用されずに無駄となってしまうのを防止することができる。
【0086】
[5] 次に、一時投与が完了した後には、三方活栓6を、第1のポート71と第3のポート73とが開通状態、第2のポート72が閉鎖状態とする(図10参照)。これにより、三方活栓6を介してチューブ組立体11とチューブ80とが連通し、薬液リザーバ70から患者への薬液Lの投与(以下この投与を「持続投与(本投与)」と言う)を行なうことができる。また、この持続投与では、減圧状態が解消されており、流量調整装置60で薬液Lの流量が適正に調整されている。
【0087】
<第3実施形態>
図13は、本発明の薬液投与具(第3実施形態)における固定部材の正面図(a)および側面図(b)である。
【0088】
以下、この図を参照して本発明の薬液投与具の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0089】
本実施形態は、固定部材のスリットの形成数が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0090】
図13に示す固定部材5では、各壁部52に、それぞれ、シリンジ1の外筒2のフランジ25が係合する外筒用係合部としてのスリット521が複数本形成されている。これらのスリット521は、壁部52の長手方向に沿って間隔をおいて(例えば等間隔に)配置されている。従って、各スリット521は、それぞれ、プランジャ4のフランジ41が係合する一端面522(プランジャ用係合部)に対する位置が異なる、すなわち、一端面522との距離が異なることとなる。
【0091】
このような構成の固定部材5をシリンジ1に装着する場合、プランジャ4の引張りの程度(外筒2に対する位置)に応じて、外筒2のフランジ25をいずれかのスリット521に係合させることができる。これにより、保持する減圧の程度を変更することができる。
【0092】
以上、本発明の薬液投与具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、薬液投与具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0093】
また、減圧状態維持手段の吸引手段としては、シリンジに代えて、減圧採血管を代用することもできる。
【符号の説明】
【0094】
10 薬液投与具
11 チューブ組立体
12 減圧状態維持手段
1 シリンジ
2 外筒
21 外筒本体
211 先端部(底部)
22 口部
221 外管
222 内管
24 空間
25 フランジ
3 ガスケット
31 先端面
4 プランジャ
41 フランジ
42 本体部
5 固定部材
51 底板
52 壁部
521 スリット
522 一端面
523 他端面
6 三方活栓(多方活栓)
7 本体
71 第1のポート
711 流路
72 第2のポート
721 流路
73 第3のポート
731 流路
732 外管
733 内管
74 円筒部
8 コック
81、82、83 流路
84 胴部
85 レバー
30 チューブ
40a 第1のコネクタ
40b 第2のコネクタ
401 外管
402 内管
60 流量調整装置(流量調整部)
601a、601b オリフィス
602 操作ダイヤル
603a 第1チューブ
603b 第2チューブ
604a、604b Y字コネクタ
605 装置本体
606 圧閉部
607a、607b チップ
70 薬液リザーバ
701 ケーシング
702 ポンプ
703 コネクタ
704 排出口
705 ガスケット
706 一方弁
80 チューブ(下流側チューブ)
801 コネクタ
L 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を供給する薬液供給源に接続され、該薬液供給源から供給された前記薬液が通過するチューブと、
前記チューブの長手方向の途中に設けられ、該チューブ内を通過する前記薬液の流量を調整する流量調整部と、
前記チューブの前記流量調整部よりも下流側に設けられ、前記チューブ内を減圧し、その減圧状態を維持する機能を有する減圧状態維持手段とを備え、
前記減圧状態維持手段は、前記チューブ内を吸引する吸引手段と、
前記チューブの下流側の端部が接続される第1のポートと、該第1のポートと異なる位置に設けられ、前記吸引手段が接続される第2のポートと、前記第1のポートおよび前記第2のポートと異なる位置に設けられ、前記チューブを通過した前記薬液がさらに流下する下流側チューブが接続される第3のポートとを有し、前記第1のポートと前記第2のポートと前記第3のポートとの連通パターンを選択し得るよう構成された多方活栓とを備え、
前記チューブ内に前記薬液を充填するプライミングを行なうときには、前記減圧状態維持手段の作動により前記減圧状態を維持したままで前記プライミングを行なうよう用いられることを特徴とする薬液投与具。
【請求項2】
前記吸引手段は、先端部に口部を有する外筒と、該外筒内で摺動し得るガスケットと、該ガスケットに連結され、前記ガスケットを移動操作するプランジャとを有し、前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間が前記チューブ内と連通するシリンジと、
前記プランジャを基端方向に向かって引張った際、その引張った状態を保持する固定部材とを備える請求項1に記載の薬液投与具。
【請求項3】
前記外筒および前記プランジャは、それぞれ、その基端部に突出形成された板状のフランジを有し、
前記固定部材は、前記外筒のフランジが係合する少なくとも1つの外筒用係合部と、前記プランジャのフランジが係合する少なくとも1つのプランジャ用係合部とを有する請求項2に記載の薬液投与具。
【請求項4】
前記外筒用係合部は、複数設けられ、該複数の外筒用係合部は、それぞれ、前記プランジャ用係合部に対する位置が異なる請求項3に記載の薬液投与具。
【請求項5】
前記薬液供給源は、前記薬液を貯留する貯留部を有し、該貯留部を加圧することで前記薬液を供給するリザーバである請求項1ないし4のいずれかに記載の薬液投与具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−55592(P2012−55592A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203757(P2010−203757)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】