説明

薬液投与装置

【課題】インスリンを皮下と筋肉など個々に合わせてカテーテルの穿刺深さを角度で調整可能な穿刺深さ(角度)調整可能な携帯型の薬液投与装置を提供する。
【解決手段】角度調整機構により筐体部底面に対する穿刺流路針304及びシース311の突出角度を調整することができ、底面と平行に配される使用者の表皮に対する穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度を20°〜90°の範囲で変更することができる。これにより、体内の任意の深さに穿刺でき、全ての使用者にとって使い勝手を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液投与装置に関し、例えばインスリンを体内に投与する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病は日本を始め世界中で患者数が増大の傾向を示している。また、これに伴う治療費用の増大が懸念されている。糖尿病の中でも、1型糖尿病は、適切な時間に適切量のインスリンの注入する治療が必要となる慢性疾患である。古くからシリンジを用いた手動投与か、インジェクタを用いた手動投与が行われてきた。これらに対してより簡便に安全に、適切な治療を行うために、投与量および投与時期をプログラムが可能な自動の薬液投与システムが開発されてきた。
【0003】
このシステムは輸液ポンプ、専用の輸液セット、カテ−テルからなり、現在、薬液投与装置を携帯可能にしたシステムも使用されてきている。最近、この携帯型のシステムにおいて、輸液セットのチューブのわずらわしさを排除し、扱い勝手を向上するため輸液セットを用いずに、体表に両面テ−プで貼り付け固定した小型軽量な輸液ポンプから直接カテ−テルを挿入して投与を行うパッチタイプの薬液投与装置が登場している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
本発明は、インスリンは皮下と筋肉とでは吸収に差が有り、個々に合わせてカテーテルの穿刺深さを角度で調整可能な穿刺深さ(角度)調整機構に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−501283公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使用者に貼り付けられて保持される従来の携帯型の薬液投与装置では、体内に針を穿刺する際の角度及び距離が予め決められている。しかしながら、小児と成人、肥満、痩せ型など体型には個人差があり、予め決められた角度及び距離で穿刺されると、一部の使用者にとっては最適な位置に穿刺されず、例えば薬液の効果が十分に発揮されない部位、または、薬液の設計より吸収が速い部位に薬液が投与されてしまう場合などがあり、使い勝手がよいとはいえない。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、使い勝手を向上し得る薬液投与装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明は、使用者の体表に貼着されて使用される薬液投与装置であって、使用者に接して配される面を有する筐体部と、薬液が貯蔵される薬液貯蔵部と、薬液貯蔵部から体内へ薬液が流れる流路を形成し、先端部が筐体部の使用者に接着される面から突出することにより生体に穿刺される穿刺部と、使用者に接着される面に対する穿刺部の突出する角度を調整する角度調整部とを有する。
【0009】
これにより、生体に接して配される面に対する穿刺部の角度を調整することができるので、穿刺部の移動される距離が固定されている場合であっても角度を調整することにより、生体内の任意の深さに穿刺することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生体に接して配される面に対する穿刺部の角度を調整することができることにより、生体内の任意の深さに穿刺することができ、体格に合わせた、薬剤の設計にマッチした皮下組織の投与層に薬剤の投与が可能となり、投与安全性および使い勝手を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】薬液投与システムの構成を示す略線図である。
【図2】薬液投与装置の構成を示す略線図である。
【図3】薬液貯蔵送出部の分解斜視図である。
【図4】薬液の貯蔵前及び貯蔵後を示す略線図である。
【図5】薬液バッグの形成工程を示す略線図である。
【図6】フィルタ部の構成を示す略線図である。
【図7】送出部の構成を示す略線図である。
【図8】駆動制御部の分解斜視図である。
【図9】動力伝達の機構を示す略線図である。
【図10】コネクタの構成を示す略線図である。
【図11】穿刺流路部の構成(1)を示す略線図である。
【図12】穿刺流路部の構成(2)を示す略線図である。
【図13】カシメ及び押部の構成を示す略線図である。
【図14】穿刺の様子を示す略線図である。
【図15】角度調整機構の構成を示す略線図である。
【図16】角度調整機構におけるツマミ部の載置を示す略線図である。
【図17】角度調整機構における突出角度の変更を示す略線図である。
【図18】薬液投与システムの回路構成及び機能的構成を示す略線図である。
【図19】薬液充填装置の構成を示す略線図である。
【図20】シリンジの構成を示す略線図である。
【図21】押し子駆動機構の構成を示す略線図である。
【図22】薬液充填装置の回路構成及び機能的構成を示す略線図である。
【図23】充填処理手順を示すフローチャートである。
【図24】他の実施の形態におけるシース部の構成を示す略線図である。
【図25】他の実施の形態における穿刺流路部の構成(1)を示す略線図である。
【図26】距離調整機構を示す略線図である。
【図27】他の実施の形態における角度調整機構(1)を示す略線図である。
【図28】他の実施の形態における穿刺流路部の構成(2)を示す略線図である。
【図29】他の実施の形態におけるツマミ及びツマミ支持部の構成を示す概略図である。
【図30】他の実施の形態における角度調整機構(2)による突出角度の変更を示す概略図である。
【図31】他の実施の形態における穿刺リリース機構の構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
〔1.薬液投与システムの構成〕
図1に示すように、薬液投与システム1は、使用者の皮膚に貼り付けられることにより保持されて使用される携帯型の薬液投与装置2と、使用者の入力指示に応じた信号を無線通信で薬液投与装置2に送信するコントローラ3と、薬液投与装置2の内部に設けられる充電池206(図8)を充電する充電器4(図18)と、薬液投与装置2の薬液バッグ110(図3)に薬液を注入して充填させる薬液充填装置5(図19)とを含む構成とされる。
【0014】
〔2.薬液投与装置の構成〕
薬液投与装置2は、内部に薬液(例えばインスリン)が貯蔵されており、コントローラ3から送信される制御信号に応じて薬液を使用者の体内に投与する。薬液投与装置2は、図2に示すように、互いに着脱可能な薬液貯蔵送出部10、駆動制御部20及び穿刺流路部30により構成される。
【0015】
薬液投与装置2は、薬液貯蔵送出部10と駆動制御部20が上下方向から係合された後、薬液貯蔵送出部10及び駆動制御部20に対して前方向から穿刺流路部30がスライドされて嵌合することにより一体となる。薬液投与装置2は、このような状態で使用者の皮膚に貼り付けられて使用される。
【0016】
薬液投与装置2の大きさは、使用者の皮膚に貼り付けることができる程度にまで小型化されていればよいが、例えば横34mm、縦43mm、高さ12mmの略直方体形状とされる。
【0017】
〔2−1.薬液貯蔵送出部の構成〕
薬液貯蔵送出部10は、図3及び図4に示すように、上側が開口し内部に空間が設けられた下筐体部101と該下筐体部101の開口に螺着される上筐体部102により扁平な略直方体形状に形成される。
【0018】
薬液貯蔵送出部10は、下筐体部101と上筐体部102とで形成される空間に薬液バッグ110、フィルタ部120、送出部130及び圧迫部140等が設けられる。
【0019】
下筐体部101には、底面101Aに両面テープ等でなる貼付部103が設けられる。薬液投与装置2は、貼付部103が使用者の皮膚に貼り付けられることにより該使用者に保持される。なお下筐体部101の底面101Aは透明な材質の部材で形成されており、薬液バッグ110に貯蔵される薬液の量が外から見えるようになされている。これにより、薬液投与装置2を該使用者の皮膚に貼り付けた後でも薬液残量を確認することが可能となる。
【0020】
下筐体部101の長手方向(以下、これを前後方向とも呼ぶ)に沿った側面には、駆動制御部20が配される方向に延設された突起でなる係合部101B〜Eが設けられている。この係合部101B〜Eは、後述する係合受部201A〜D(図8)と係合することにより薬液貯蔵送出部10と駆動制御部20とを密着させる。
【0021】
下筐体部101は、上筐体部102と密着する面に防水パッキン101Fが設けられており、下筐体部101が上筐体部102に防水パッキン101Fを介してネジ(図示せず)螺着されるか、超音波融着されるので、下筐体部101と上筐体部102との間から内部空間に液体が侵入することを防止することができる。
【0022】
下筐体部101の前後方向に沿った側面には、板バネリリースロッド144が挿入されるための孔101Gが設けられる。孔101Gにはダックビル様の弁パッキン(図示せず)が挿入されていて板バネリリースロッド144を抜いた場合に穴が閉じるようになっている。また下筐体部101の底面101Aには、薬液バッグ110に薬液を注入するため注入部104が嵌合する孔101Kが設けられる。
【0023】
なお下筐体部101の底面101Aであって孔101Kの周辺には、詳しくは後述する薬液充填装置5の注入針523の係合部523Aが係合する凹部である係合受部101Lが設けられる。孔104Kの周辺部は薬液バッグ110に融着されている弾性部材である注入部104と下部筐体101のはめ合わせにて防水機能を実現している。
【0024】
さらに下筐体部101は、薬液貯蔵送出部10に穿刺流路部30が係合される際に該穿刺流路部30の一部がはめ込まれる空間である凹部101Hが前方向側に設けられる。また下筐体部101は、穿刺流路部30が前方向から薬液貯蔵送出部10にスライドして係合されるように案内する、互いに向かい合う方向に突出された突起部101I及び101Jが前後方向に沿って設けられる。
【0025】
上筐体部102は、下筐体部101の突起部101I及び101Jと前後方向に連続するように互いに向かい合う方向に突出された突起部102A及び102Bが前後方向に沿って設けられる。なお上筐体部102は、突起部102A及び102Bを形成するため、該突起部102A及び102Bに挟まれる中央部102Cがその他の部分より一段低くなるように形成される。
【0026】
上筐体部102は、薬液貯蔵送出部10に穿刺流路部30が係合される際に穿刺流路部30の凸部301C(図12)がはまり込む凹部102Dが中央部102Cの所定位置に設けられる。
【0027】
薬液貯蔵部としての薬液バッグ110は、図5に示すように、例えばポリウレタン、塩化ビニル、ポリエチレンでなる長方形のシート111から形成される。シート111は、図5(A)に示すように、長手方向における中央部分であって可撓性の熱可塑性樹脂である薬液バッグ110の底面となる部分(以下、これを中央部とも呼ぶ)112の両側に、少なくとも3以上の奇数個(本実施の形態では5個)の折り目113及び114が等間隔にそれぞれ設けられる。これによりシート111には、それぞれ隣接する折り目113及び114の間に所定幅の部分(以下、これを折畳部とも呼ぶ)115及び116が偶数個形成される。
【0028】
またシート111は、長手方向における最も端よりの折り目113及び114よりさらに端側に、中央部112における長手方向の長さの半分より長い部分(以下、これを端部とも呼ぶ)117及び118が設けられる。
【0029】
このシート111は、折畳部115及び116が中央部112と重なるように折り目113及び114が山折及び谷折に交互に折り畳まれ、図5(B)に示すように、端部117及び118の端側の一部が重なる。
【0030】
シート111は、端部117及び118のうちの互いに重なった部分が融着され、また幅方向の縁が融着される。シート111の幅方向の縁が融着される際、該シート111に囲まれた空間と外部空間とを連通させるノズル105を一方の縁に挟むようにして該縁が融着される。
【0031】
またシート111の中央部112の所定位置には、外部から薬液バッグ110に薬液を注入するために例えば合成ゴムなどで形成される逆止弁(不図示)を備えた注入部104が設けられる。このようにして図5(C)に示すような薬液バッグ110が形成される。
【0032】
このようにして形成された薬液バッグ110は、薬液が充填されていない状態では隣接する折畳部115及び116同士が接するようにして折畳まれており、中央部112と端部117及び118とが重なり合う。
【0033】
従って薬液バッグ110は、内部に充填された薬液をノズル105を介して外部に送出する際に、中央部112と端部117及び118とが接するように潰されることで薬液を内部に残すことなく外部に送出することができる。
【0034】
ところで従来の薬液バッグは、2枚のフィルムの縁を融着されて形成されたものが一般的であり、2枚のフィルムにより形成される空間に薬液が注入されるが、その際には縁に近づくに連れて2枚のフィルムが離間する距離が短くなってしまう。
【0035】
従って従来の薬液バッグを使った薬液投与装置では、薬液バッグを格納される空間において、薬液バッグの縁に近い部分で薬液が注入された際に該薬液バッグが膨らまない部分に無駄な空間が形成されてしまう。かくして従来の薬液バッグでは薬液投与装置が大型化してしまうといった問題があった。
【0036】
一方、薬液バッグ110は、長手方向に折畳部115及び116を有しているので、薬液が注入される際には折畳部115及び116が、中央部112と端部117及び118を離間させる方向(上下方向)に広がる。
【0037】
従って薬液バッグ110は、折畳部115及び116が広がることによって、薬液が注入される際に薬液バッグ110の縁付近であっても上下方向に広がることができるので、下筐体部101と上筐体部102とで形成される空間において、薬液が注入される際に薬液バッグ110の縁に近い部分でも無駄な空間が形成されてしまうことがなく、薬液投与装置2を小型化することができ、かくして使い勝手を向上することができる。
【0038】
フィルタ部120は、図6に示すように、下側が開口し内部に空間が設けられた上蓋121の側面に、内部空間と薬液バッグ110とを連通するノズル105が接続されると共に、内部空間と送出部130とを連通する流路管106が接続される。
【0039】
フィルタ部120は、上蓋121の開口を塞ぐように、気体を通過させ液体を通過させないエアベントフィルタ122が設けられる。エアベントフィルタ122は、上蓋121と該上蓋121の開口を塞ぐ下蓋123との間に、周方向に沿って上下方向からOリング124及び125に挟まれるようにして固定される。なお、上蓋121と下蓋123とは例えば超音波融着などにより密着される。下蓋123は、上下方向に貫通した孔123Aが設けられる。
【0040】
これによりフィルタ部120は、上蓋121の内部空間から下蓋123に設けられる孔123Aを介して、薬液を排出することなく気体だけを外部に排出することができる。
【0041】
送出部130は、図7に示すように、所謂ピストンポンプでなり、シリンダ部131に設けられる円筒状の内部空間131Aに一端側からピストン132が挿入される。
【0042】
ピストン132は、クランク133を介してクランク軸134と接続されており、クランク軸134が回転することによりシリンダ部131の内部空間131A内を摺動する。なお、シリンダ部131の内部空間131Aに接する側面には、ピストン132とシリンダ部131の内部空間131Aの内壁との隙間から薬液が外部に漏れないようにするために、内部空間131Aの内壁であって周方向に沿って例えばXリング又はOリングのパッキン135が設けられており、ピストン132に接するように配される。また、ピストン132にシリコンゴムやブタジエンゴムなどで構成されるガスケットが取り付けられていてもよい。
【0043】
クランク軸134は、その一端に設けられた第1の動力伝達部の一例としての駆動用磁石136が設けられる。駆動用磁石136の側面には、ピストン132の位置、ストローク数を検出するための位置検出用磁石137が設けられる。
【0044】
駆動用磁石136は、上筐体部102及び駆動制御部20の下筐体部202(図8)を挟んで第2の動力伝達部の一例としての動力伝達磁石209(図8、図9)と対向する位置に設けられ、後述するようにモータ207、ギヤヘッド208を介して回転する動力伝達磁石209に引き付けられて回転させられる。
【0045】
送出部130では、駆動用磁石136が回転することによりクランク軸134が回転し、クランク133を介してピストン132がシリンダ部131の内部空間131A内で摺動する。
【0046】
シリンダ部131は、内部空間131Aにおけるピストン132が挿入される側とは反対側に流路131B及び131Cが内部空間131Aと連通して設けられる。
【0047】
シリンダ部131の内部空間131Aは、フィルタ部120が流路部106、逆止弁138及び流路131Bを介して接続される。逆止弁138は、フィルタ部120から内部空間131Aへ薬液を通過させるが、その逆方向には薬液を通過させない。
【0048】
またシリンダ部131の内部空間131Aは、流路131C、逆止弁139及び流路管107を介して上筐体部102に設けられる弁体108が接続される。逆止弁139は、内部空間131Aから弁体108へ薬液を通過させるが、その逆方向には薬液を通過させない。
【0049】
弁体108は、何も挿入されていない状態では流路を塞ぎ、穿刺流路部30に設けられるノズル302(図12)が挿入された状態で流路を開放して流路管107と該ノズル302とを連通させる。
【0050】
従って送出部130は、駆動用磁石136及びクランク軸134が回転されてシリンダ部131の内部空間131A内をピストン131が摺動することにより、薬液バッグ110に貯蔵された薬液を穿刺送出部30に設けられる流路を介して使用者の体内に送出する。
【0051】
より具体的には送出部130は、ピストン132が上死点から下死点に移動する際に薬液バッグ110から薬液を引き出し、ピストン132が下死点から上死点に移動する際に内部空間131Aに引き出された薬液を流路管107へ送出する。
【0052】
圧迫部140は、押え板141、支持部142、板バネ143を含む構成とされる。押え板141は、薬液バッグ110の中央部112より大きな面積を有する板材でなり、薬液バッグ110の上側に設けられる。押え板141は、下筐体部101に固定された支持部142に、例えばヒンジ機構でなる連結部141A及び142Aを中心として薬液バッグ110に離間する方向及び接近する方向に回動可能に支持される。
【0053】
板バネ143は、押え板141と上筐体部102との間に略V字状に折り曲げられた状態で設けられる板材であり、略V字状に曲げられて対向する板部同士が互いに離間する方向(開こうとする方向)に力が働く。従って板バネ143は、押え板141と上筐体部102との間に配された場合、押え板141を薬液バッグ110側へ常に一定の力で押え付ける。
【0054】
ところで圧迫部140は、薬液バッグ110に薬液が注入される前(図4(A))において、下筐体部101の孔101Gから、押え板141と板バネ143との間に板バネリリースロッド144が挿入される。このとき圧迫部140では、板バネ143が押え板141を押え付けることなく、押え板141が自由に回動可能な状態である。
【0055】
そして圧迫部140は、薬液バッグ110に薬液が注入された後に板バネリリースロッド144が取り外されると、板バネ143が押え板114を薬液バッグ110側に押え付ける。これにより圧迫部140は、押え板114が薬液バッグ110を下筐体部101との間で挟み込み、該薬液バッグ110に一定の陽圧を与える(図4(B))。
【0056】
これにより圧迫部140は、薬液バッグ110に溶存気体が存在している場合には、フィルタ部120を介して外部に溶存気体を排出することができる。なおフィルタ部120に流路管106を介して接続される逆止弁138は、開弁圧力として圧迫部140により薬液バッグ110に加えられる陽圧よりも高い圧力差が加えられたときに開くようになっているので、圧迫部110が加える陽圧によって薬液バッグ110から送出部130へ薬液が流れることはない。
【0057】
また圧迫部140は、送出部130により薬液バッグ110に貯蔵された薬液を送出する際に、該薬液バッグ110を潰れる方向に押し付けるので、薬液バッグ110に貯蔵された薬液を内部に残すことなく押し出すようにして送出させることができる。
【0058】
〔2−2.駆動制御部の構成〕
駆動制御部20は、図8に示すように、穿刺流路部30が前方向から挿入されるよう、該穿刺流路部30の形状に合わせた凹部20Aを有する略コの字型形状に形成される。
【0059】
駆動制御部20は、下側が開口し内部に空間が設けられた上筐体部201と、該上筐体部201の開口に螺着される下筐体部202との間で形成される空間に充電アンテナ203、基板部204、通信アンテナ205、充電池206、モータ207、ギヤヘッド208、動力伝達磁石209、磁気センサ210及び211等が設けられる。
【0060】
上筐体部201の前後方向に沿った外側面は、薬液貯蔵送出部10に設けられる係合部101B〜Eとそれぞれ係合するための溝である係合受部201A〜Dが設けられる。
【0061】
また上筐体部201の上面には、薬液を一時的に一定量だけ投与する(ボーラス投与)際に使用者に押下操作されるボーラススイッチ201Eが設けられる。このボーラススイッチ201Eは、筐体部201の上面より窪んだ位置に設けられ、例えば寝返り等により誤って使用者に押下されることを防止することができる。
【0062】
下筐体部202は、上筐体部201と密着する面に防水パッキン202Aが設けられており、上筐体部201が下筐体部202に防水パッキン202Aを介してネジ(図示せず)螺着されるか、超音波融着されるので、上筐体部201と下筐体部202との間から内部空間に液体が侵入することを防止することができる。
【0063】
下筐体部202の上面には、充電アンテナ203が貼り付けられており、後述する充電器4(図18)から供給される電気を受信する。
【0064】
また下筐体部202の上面には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の電気回路及びコントローラ3及び薬液充填装置5との間で信号を送受信するための通信アンテナ205が配置された基板部204が充電アンテナ203の上側に重ねて設けられる。
【0065】
さらに下筐体部202の上面には、充電アンテナ203から供給される電気により充電して駆動時に各部に電気を供給する充電池206が設けられる。
【0066】
さらに下筐体部202の上面には、薬液貯蔵送出部10の駆動用磁石136と対向する位置にモータ207、ギヤヘッド208及び動力伝達磁石209が上から順に重なるようにして設けられる。
【0067】
また下筐体部202の上面には、駆動用磁石136の側面に配される位置検出用磁石137が移動する円周上に対向する位置であって動力伝達磁石209を挟んで左右方向に沿ってそれぞれ磁気センサ210及び211が設けられる。
【0068】
モータ207は、ギヤヘッド208を介して動力伝達磁石209を回転させる。動力伝達磁石209は、図9に示すように、薬液貯蔵送出部10と駆動制御部20とが密着された状態で駆動用磁石136と互いに引き付け合う極性となるように該駆動用磁石136と対向する配置される。
【0069】
動力伝達磁石209は、ギヤヘッド208を介してモータ207に回転されると、駆動用磁石136を磁力により引き付けながら自身の回転とともに回転させる。
【0070】
従ってモータ207は、ギヤヘッド208、動力伝達磁石209及び駆動用磁石136を介して非接触によりクランク軸134を回転させ、クランク133に接続されたピストン132をシリンダ部131の内部空間131A内で摺動させる。
【0071】
ところでモータ207はピストン132を動力伝達磁石209及び駆動用磁石136の磁力を介して非接触で摺動させるため、モータ207が回転に追従してピストン132が回転しているか否かを検出する必要がある。そこでピストン132が摺動していることを検出する磁気センサ210及び211が、位置検出用磁石137が移動する円周上に対向して配される。
【0072】
より具体的には、ピストン132が上死点に位置しているときには位置検出用磁石137が磁気センサ210と対向する位置に移動されるので、該磁気センサ210が位置検出用磁石137の磁力を検出することによりピストン132が上死点に位置していることを検出する。
【0073】
またピストン132が下死点に位置しているときには位置検出用磁石137が磁気センサ211と対向する位置に移動されるので、該磁気センサ211が位置検出用磁石137の磁力を検出することによりピストン132が下死点に位置していることを検出する。
【0074】
このようにして磁気センサ210及び211は、ピストン132が交互に上死点及び下死点に移動していることを検出することにより、ピストン132の摺動、またはストローク数を検出することができる。
【0075】
従って詳しくは後述するように、マイクロコンピュータ220(図18)は、自身と同じ上筐体部201と下筐体部202で形成される空間内に設けられた磁気センサ210及び211で、異なる空間である下筐体部101と上筐体部102で形成される空間内に設けられる送出部130の駆動を非接触で確認することができる。
【0076】
上筐体部201には、穿刺流路部30が密着する際に接触する凹部20Aの前面に、充電池206から穿刺流路部30に電気を供給し、また穿刺流路部30との間で各種信号を送受信するためのコネクタ部212が設けられる。コネクタ部212は、図10(A)及び(B)に示すように、電気及び各種信号を送受信するためのスプリングコネクタ212Cが複数本集められた電気コネクタ部212Aの外側を防水ゴム212Bで覆う構造でなる。
【0077】
またコネクタ部212と接続する穿刺流路部30のコネクタ部350(図12)も同様に電気及び各種信号を送受信するためのコネクタ部350Cが複数本集められた電気コネクタ部350Aの外側を防水ゴム350Bで覆う構造でなる。
【0078】
これにより駆動制御部20では、コネクタ部212がコネクタ部350と接続される際に、防水ゴム212B及び350Bにより電気コネクタ部212A及び350Bに液体が触れることを防止することができる。また、コネクタの1ピンを利用して、穿刺流路部30を薬液貯蔵送出部10に挿入する場合に、挿入が許される限界(十分な挿入がされていない場合)にては接触されない長さのピンを設け、穿刺流路部30側でアースで電位に接続しておき、駆動制御部20側にてこのピンの電位がアース電位であるか無いかをチェックして、ア−ス電位でない場合には穿刺流路部30の挿入不足を警報表示して穿刺流路部の挿入状態を監視する。
【0079】
〔2−3.穿刺流路部の構成〕
穿刺流路部30は、図11及び図12に示すように、薬液貯蔵送出部10及び駆動制御部20が係合された状態で形成される凹部101H及び凹部20Aの空間に嵌合する前後方向に細長い形状でなる。穿刺流路部30は、外殻を形成する筐体部301の内部空間に各部が設けられる。なお図11(A)では外観構成を示し、図11(B)では内部構成を示す。また図12では、説明の便宜上、一部を断面で示す。
【0080】
筐体部301は、穿刺流路部30が薬液貯蔵送出部10に嵌合した際に、下筐体部101の底面101Aと同一平面上に位置する底面301Aと、上筐体部102の中央部102Cに隣接して対向する高さに位置する底面301Bとを有する。
【0081】
筐体部301は、穿刺流路部30が薬液貯蔵送出部10に嵌合した際に上筐体部102の凹部102Dに嵌り込む凸部301Cが底面301Bにおける凹部102Dと対向する位置に設けられる。
【0082】
また筐体部301は、薬液貯蔵送出部10の下筐体部101の突起部101I及び上筐体部102の突起部102A、下筐体部101の突起部101J及び上筐体部102の突起部102Bにそれぞれ係合する案内溝301D及び301Eが前後方向に沿って側面に形成される。
【0083】
筐体部301は、嵌合された薬液貯蔵送出部10及び駆動制御部20から穿刺流路部30を外す際に使用者の指を引っ掛けるための凹部301Gが上面301Fに設けられる。
【0084】
また筐体部301は、上面301Fから前面301Gにかけて湾曲されており、湾曲された湾曲面301Hに、詳しくは後述する角度調整機構340が設けられる。
【0085】
また筐体部301は、穿刺流路部30が薬液貯蔵送出部10に嵌合された状態で、薬液貯蔵送出部10の弁体108と対向する位置に孔301Iが設けられ、弁体108に挿入されるノズル302が該孔301Iを貫通するようにして固着される。ノズル302は、孔301Iとの間で隙間が設けられることなく固着される。
【0086】
ノズル302は、穿刺流路部30が薬液貯蔵送出部10に嵌合された状態で一端が弁体108に挿入されて流路管107と連通される。ノズル302は、他端に流水センサ303が接続される。
【0087】
流水センサ303は、通過する薬液が流れているか否かを検出するものであり、例えばサーミスタを定電流で加熱し、薬液の連続流によるサーミスタの温度変化を検出するものや、サーミスタ単体を加熱源と温度センサに用いる方式のほか、加熱源と温度センサを分離して用いる方式として、加熱源に抵抗器、ヒ−タ線、半導体、温度センサはサーモファイル、白金抵抗体、半導体などを組み合わせたものが適応可能である。
【0088】
流水センサ303は、ノズル302が接続された端とは反対側の端に穿刺流路針304が接続され、ノズル302と穿刺流路針304とを連通させる。穿刺流路針304は、流水センサ303に接続された一端側がS字上に折り返され、そこから前後方向に沿って配され、他端側で底面301Aに到達するように曲げられる。なお穿刺流路針304は、金属製の部材でなるが、例えば28ゲージの中空管であり、容易に曲げられるようになされている。
【0089】
穿刺流路針304は、S字上に折り返された直後の位置で、筐体部301から内部に向かって突設される固定部305によって固定される。
【0090】
穿刺流路針304は、固定部305に固定された位置より前方側の一部(以下、これを弾性部とも呼ぶ)304Aが螺旋状に巻かれている。弾性部304Aは前後方向に伸縮自在である。
【0091】
穿刺流路針304は、底面301Aに到達するように曲げられた他端側の先端の部分(以下、これを先端部とも呼ぶ)304Bが鋭く尖った形状でなる。
【0092】
このような形状でなる穿刺流路針304は、流水センサ303から流れてきた薬液を内空を通して先端部304Bから外部に送出する。
【0093】
穿刺流路針304は、先端部304Bから弾性部304Aにかけて例えばシース部310に覆われる。
【0094】
シース部310は、例えばテフロン(登録商標)やポリエチレンでなり、柔軟性を有するシース311と、例えばテフロン(登録商標)やポリオレフィン、ポリウレタンでなり柔らかく、一端変形するとそのままの形状を維持して元の形状には戻ることがない特性(永久変形、塑性変形)を有している伸長部312とによって構成される。伸長部312として、柔らかくて変形しやすくて、元に戻らない特性を有する材料としては、熱収縮チューブなど高温化で紫外線により架橋されている材料が挙げられ、ポリオレフィン、テフロン(登録商標)、シリコン、ポリ塩化ビニルポリフッ化ビニルデンなどを用いることができる。
【0095】
シース311は、穿刺流路針304の先端部304Bから弾性部304Aの前方までの大部分を覆っており、かつ穿刺流路針304に対して固定はされていない。
【0096】
また伸長部312は、シース311の弾性部304A側の一端側の一部と重なる位置から弾性部304Aの直前まで穿刺流路針304を覆っており、固定部305側の一端が穿刺流路針304に固定され、他端がシース311に固定される。なお伸長部312は、固定された両端では隙間から液体を漏らすことがないように周方向に沿って穿刺流路針304及びシース311との隙間を密閉するようにして固定される。
【0097】
穿刺流路針304の弾性部304Aよりも先端部304B側の所定の位置に、該穿刺流路針304とシース311とをまとめて固定するカシメ306が設けられる。カシメ306は、例えばアルミニウムや銅のような一定の力が加えられると変形する材質でなる。
【0098】
カシメ306は、リング形状である状態から、穿刺流路針304及びシース311がリング孔に挿通された後に左右方向から潰されて上下方向の一部が重なり合い、穿刺流路針304及びシース311を締め付けて固定する。これによりシース311は穿刺流路針304に対して滑らないように固定される。カシメ306は、シース311に対して接着されており、カシメ306の締め付けが緩んだ場合でもシース311とは離れることがない。
【0099】
穿刺流路部30は、カシメ306の前方であって、該カシメ306から所定距離だけ離れた位置に移動制限部307が設けられる。この所定距離は、詳しくは後述するように、穿刺流路針304及びシース311が筐体部301の底面301Aから突出する距離、すなわち穿刺流路針304及びシース311を使用者に穿刺する深さ距離と同じ距離であり、本実施の形態では10mmに設定される。移動制限部307は、筐体部301に固定されており、中央に設けられた孔に穿刺流路針304とシース部310が接触することなく挿通するように配される。
【0100】
穿刺流路部30は、カシメ306の後方であって伸長部312よりも前方の位置に穿刺機構320が設けられる。穿刺機構320は、固定板321、バネ322、支持板323及び押部324により構成される。
【0101】
固定板321は、筐体部301に固定されており、中央に設けられた孔に穿刺流路針304とシース部310が接触することなく挿通するように配される。
【0102】
固定板321の前方にはバネ322が配される。バネ322は、穿刺流路針304とシース部310が接触することなく内空を挿通するよう配されており、固定板321と支持板323に挟まれて自然長よりも圧縮された状態で配される。
【0103】
支持板323は、穿刺流路針304とシース部310が接触することなく挿通するように配されており、バネ322が接する面とは反対側の面であって穿刺流路針304とシース部310より下側で押部324を支持する。また支持板323は、押部324を支持する面と同一面で押部324を支持する位置よりも下側の位置で穿刺リリース機構330により前方向に移動しないように保持される。
【0104】
押部324は、図13に示すように、略円柱形状でなり、その先端が上下方向に長く左右方向に短いマイナス型(一文字型)となる形状でなる。押部324は、カシメ306の上下方向に延びた部分のうちの下側で重なり合っている部材同士の間に先端が位置するように支持板323に支持される。
【0105】
穿刺リリース機構330は、制限部331、バネ332及びアクチュエータ333により構成される。
【0106】
制限部331は、断面が略L字型となる形状となるように前後方向に延びた部分と上下方向に延びた部分とを有しており、前後方向に延びた部分の中央付近に設けられた回転軸331Aを中心に回動自在に保持される。制限部331は、上下方向に延びた部分の回転軸331A側の面で支持板323を支持するように配され、支持板323が前方向に移動しないように制限する。
【0107】
制限部331は、前後方向に延びた部分の回転軸331Aよりも前方向側の下面にバネ332が接続され、回転軸331Aより後側の上面にアクチュエータ333の突起部333Aが接する。
【0108】
バネ332は、一端が制限部331に接続され、他端が筐体部301の底面301B側に接続されており、縮もうとする方向に常に力が加えられた状態で配される。
【0109】
アクチュエータ333は、電力が供給されることにより突起部333Aを前後方向に移動させるようになされており、突起部333Aが制限部331に接する状態で配される。
【0110】
なお、バネ322が固定板321と支持板323に挟まれて自然長よりも圧縮され、制限部331が支持板323と接し、アクチュエータ333の突起部333Aが制限部331に接する状態で配された状態を初期状態(図12、図14(A))とも呼ぶ。なお図14では説明の便宜上、穿刺流路針304及びシース311が曲げられていない真っ直ぐな状態で図示されているが、実際には上述したように、その一部が曲げられている。
【0111】
初期状態において、アクチュエータ333が駆動して突起部333Aが後方向に移動されて該突起部333Aから制限部331が開放されると、制限部331がバネ332の自然長に戻ろうとする力により回転軸331Aを中心に反時計回りに回転されて支持板323から離れる。
【0112】
穿刺機構320では、制限部331が支持板323から離れると、縮んでいたバネ322が自然長に戻ろうとして伸びて支持板323及び押部324を前方向に押す。前方向に押された押部324は、カシメ306が移動制限部307に接するまで穿刺流路針304及びシース311と共にカシメ306を前方向に押す。
【0113】
このときカシメ306は、上下方向に延びた部分のうちの上側で重なり合っている部分が前後方向に延びるカシメガイド308に沿って穿刺流路針304及びシース311を挟んだまま前方向に移動する。
【0114】
因みに、カシメガイド308の断面は下方が開口したコの字型でなり、カシメ306は、上下方向に延びた部分のうちの上側で重なり合っている部分がカシメガイド308の開口された方向から嵌るようにして保持される。
【0115】
カシメ306が前方向に移動する際、穿刺流路針304は弾性部304Aが伸びる(図14(B))。そして穿刺流路針304及びシース311は、筐体部301の底面301Aから突出し、先端部304Bが使用者を穿刺してシース311と共に使用者の体内に入り込む。
【0116】
穿刺機構320は、カシメ306が移動制限部307に接した後もバネ322が伸び続け、カシメ306の下方で重なり合っている部材同士の間に押部324の先端が入り込む。このとき押部324は、カシメ306の下方で重なり合っている部材を両側に開き、穿刺流路針304及びシース311に対するカシメ306の締め付けを緩める。
【0117】
カシメ306による締め付けが緩むことによって穿刺流路針304に対するカシメ306による固定が解除される。そうすると、穿刺流路針304は、弾性部304Aが自然長まで縮まり、先端部304Bが底面301Aの内側の初期位置まで戻る。
【0118】
このときシース部310では、シース311がカシメ306に固定されて移動できないので、弾性部304Aが縮むに連れて一端が穿刺流路針304に固定された伸長部312が伸びる。
【0119】
そしてシース部310は、一端伸びた伸張部312が元の形状に戻ることがないことから、シース311の先端部が底面301Aから突出した状態に維持される(図14(C))。
【0120】
このように穿刺流路部30は、使用者を穿刺する際には先端部304Bが鋭利な金属製の穿刺流路針304で穿刺し、その後、柔軟性のあるシース311だけを体内に挿入し続け、金属製でなる穿刺流路針304を体外に戻すことができる。
【0121】
よって薬液投与装置2は、使用者が使用している最中は金属製の穿刺流路針304を体内に残しておくことがなく、柔軟性を有するシース311だけを体内に挿入し続けることができ、使用者に痛みや不快感を与えることを軽減でき、かくして使い勝手を向上することができる。
【0122】
これに対して従来の薬液投与装置では、シースの一端が針に対してパッキンを介して接続されており、針及びシースを皮膚に穿刺した後、針を体外に引き抜く際にシースをパッキン部分で滑らせてその位置に留まるようになされていた。
【0123】
従って従来の薬液投与装置では、針とシースの隙間をパッキンで塞いでいるので薬液が漏れてしまうか、また、シ−ルを強固にすると針とパッキンの摩擦が大きくなり針が十分な深さまで刺さらない可能性があった。
【0124】
一方、薬液投与装置2は、伸長部312の一端で穿刺流路針304との隙間を設けることなく固定されているので、薬液が漏れてしまうことがない。また、パッキンと針との摩擦による穿刺動作への支障が発生しない。
【0125】
ところで穿刺流路部30(図11及び図12)は、移動制限部307より前方であって本体部301の湾曲部301Hに、底面301Aに対する穿刺流路針304及びシース311の突出する角度(以下、これを突出角度とも呼ぶ)を調整する角度調整機構340が設けられる。この突出角度は、底面301Aが使用者の皮膚に当接されるので、穿刺流路針304及びシース311の使用者の皮膚に対する角度(以下、これを穿刺角度とも呼ぶ)と同じ角度となる。
【0126】
角度調整機構340は、図15に示すように、筐体部301に一端が固定されたL字型の円柱でなる支持部341に支持される。支持部341は、筐体部301に固定された一端とは反対側で左右方向に直交するように配される端面における同心円状で所定角度ごとに複数個(本実施例では4個)の凹部341Aが設けられる。なお、凹部341Aは、詳しくは後述するように、穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度が20°〜90°になるような位置に設けられる。
【0127】
角度調整機構340は、支持部341の端面と対向する位置に凹部341Aと同心円状で該凹部341Aに嵌るように凸部342Aが突設された中心部342が設けられる。中心部342は、バネ343及びバネ押板344を介してネジ345により支持部341に向かって押し付けられながら、突設された凸部342Aが凹部341Aに嵌る位置で支持部341に支持される。
【0128】
中心部342は、自身が回転する際の回転軸と直交する方向に、軸部346が設けられる。軸部346は、円柱形状でなり、一端が穿刺流路針304及びシース311を保持する保持部347と接続され、他端が使用者に角度を調整される際に持たれるツマミ部348に接続される。
【0129】
保持部347は、シース311の外形よりも太い内径を有する管であり、穿刺流路針304及びシース311が挿通され、穿刺流路針304及びシース311を固定することなく保持する。
【0130】
ツマミ部348は、図16に示すように、使用者に持たれるツマミ348Aと、該ツマミ348Aを支えるツマミ支持部348Bとからなる。ツマミ部348は、筐体部301の湾曲部301Hに設けられた開口301Jの左右両側が断面L字型となるレール部301K及び301Mに、ツマミ支持部348Bの両端が引っかかるようにして載置される。
【0131】
ツマミ支持部348Bは、筐体部301と該筐体部301の湾曲面301H上に設けられるパネル部349に挟まれるようにして載置される。パネル部349は、ツマミ348Aが湾曲面301Hに沿った方向(以下、これを湾曲方向とも呼ぶ)に移動し得るように開口し、かつレール部301K及び301Mよりも湾曲方向に沿って長い形状をしている。
【0132】
なお、ツマミ支持部348Bの上面の縁には防水パッキン348Cが設けられており、該ツマミ支持部348Bとパネル部349との間から液体が筐体部301内に進入することを防止する。
【0133】
このような構成でなる角度調整機構340は、ツマミ部348が使用者によって湾曲方向に移動されることにより、中心部342を中心とした軸部346の回転に応じて保持部347が回転される。
【0134】
これにより、角度調整機構340は、図17(A)及び(B)に示すように、保持部347で保持した穿刺流路針304及びシース311の底面301Aに対する突出角度を20°〜90°の範囲で変更する。なお図17(A)は突出角度が90°の場合を示しており、図17(B)は突出角度が20°の場合を示している。
【0135】
すなわち、角度調整機構340は、底面301Aと平行に配される使用者の表皮に対する穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度を20°〜90°の範囲で変更することができる。なお、穿刺角度によって先端部304Bと筐体301Aとの距離が変化する穿刺角度にて先端部304Bが筐体301Aより外に出ないように穿刺流路心304及びシ−ス311を設定する。
【0136】
なお、穿刺流路針304の先端部304B及びシース311の先端は、底面301Aに設けられた開口301Nを塞ぎかつシース311の外周に接するように配される例えばエラストマーでなる柔軟性を有する先端保持部309に保持される。
【0137】
先端保持部309は、底面301Aの内側に設けたL字のリブにはめられており、両側が301の前面301G、背面301Vの内側に沿って前後方向にずれるようになっている。その柔軟性により、穿刺流路針304の先端部304B及びシース311の先端が角度調整機構340に移動されてもそれに追従でき、かつ開口部301Nを塞ぎ続ける。よって筐体部301内に液体が進入することを防止することができる。
【0138】
また、先端保持部309には、穿刺流路針304の先端部304Bのさらに先の位置で、穿刺流路針304の先端部304B及びシース311の先端に蓋をする形で、エアベントフィルタ309Aが設けられる。
【0139】
従ってエアベントフィルタ309Aは、使用者が使用する前において穿刺流路針304を流れてきた薬液を外部に漏らすことなく、穿刺流路針304に始めから存在する空気だけを外部に排出することができる。
【0140】
このように薬液投与装置2では、角度調整機構340が使用者の操作に応じて穿刺流路針304及びシース311の底面301Aに対する突出角度を20°〜90°の範囲で変更することができる。
【0141】
ところで人の体は、体表から1.5mm〜4mm程度までに表皮及び真皮等の皮膚があり、その内部で体表から4mm〜9mm程度までの深さの位置に皮下組織があり、さらに内側に筋肉などがある。
【0142】
例えばインスリンを外部から投与する場合、使用者に対する負担や痛み、インスリンの吸収速度などが考慮され、表面から4mm〜9mm程度の深さにある皮下組織に投与されることが一般的である。
【0143】
しかしながら皮下組織の深さはその位置及び年齢、体格、性別等の個人差により異なるものの、従来の薬液投与装置では決まった穿刺角度で決まった距離だけ穿刺されるため、一部の使用者にとっては皮下組織に対してインスリンを投与できなくなる可能性があった。
【0144】
これに対して薬液投与装置2は、角度調整機構340により使用者の表皮に対する穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度を20°〜90°の範囲で変更することができるので、突出角度を調節させることにより任意の深さに穿刺することができ、全ての使用者にとって最適とされる皮下組織に確実に穿刺することができる。また、近年、真皮層に薬液を投与することにより、皮下に投与していたときに比べて少量の薬液で同等の薬効を得られることから、穿刺距離を真皮に設定することも可能である。かくして薬液投与装置2は、使い勝手を向上させることができる。
【0145】
ところで、筐体部301には、駆動制御部20が密着する際に該駆動制御部20のコネクタ部212と対向する位置に設けられた孔301Pに隙間なくコネクタ部350が接着される。コネクタ部350は、図10(A)及び(B)に示したように、電気及び各種信号を送受信するためのコネクタ部350Cが複数本集められた電気コネクタ部350Aの外側を防水ゴム350Bで覆う構造でなる。
【0146】
このように薬液投与装置2は、使用者の皮膚を穿刺する穿刺流路針304が設けられる穿刺流路部30が、薬液が貯蔵される薬液バッグ110が設けられた薬液貯蔵送出部10及び送出部130を動作させるモータ208や基板部204が設けられた駆動制御部20に対して別体に設けられる。
【0147】
従って薬液投与装置2では、例えば穿刺に失敗した場合であっても、穿刺流路部30だけを取り替えさせるだけでよく、使い勝手がよい。
【0148】
これに対して従来の薬液投与装置では、使用者の皮膚を穿刺する針、薬液が貯蔵される薬液バッグ、モータ等が全て同一の筐体内に設けられているため、例えば穿刺に失敗した場合には装置全体を取り替えなくてはならず、使い勝手が悪いばかりか、経済的な負担も増えるという問題があった。
【0149】
〔3.薬液投与システムの回路構成等〕
次に、薬液投与システム1の回路構成及び機能的構成を図18を用いて説明する。
【0150】
コントローラ3は、マイクロコンピュータ301、電池302、電池監視部303、モードスイッチ304、数値設定スイッチ305、表示部306、送信部307、受信部308及び通信アンテナ309により構成される。
【0151】
マイクロコンピュータ301は、CPU、RAM、ROM等でなるコンピュータであり、CPUがROMに格納される基本プログラムをRAMに読みだして実行することにより全体を統括制御するとともに、CPUがROMに格納される各種プログラムをRAMに読みだして実行することにより各種処理を実行する。
【0152】
電池302は、各部に電源電力を供給する。電池監視部303は、電池302の有無や残量等を監視し、CPU301に通知する。
【0153】
モードスイッチ304は、薬液を連続的に長時間投与するベーサルモードや薬液を一時的に投与するボーラスモードを設定するためのスイッチである。数値設定スイッチ305は、薬液の1時間当たりの投与量や投与時間などを設定するためのスイッチである。
【0154】
マイクロコンピュータ301は、モードスイッチ304や数値設定スイッチ305に対する操作に応じた内容を表示部306に表示するとともに、その内容を示す信号を送信部307及び通信アンテナ309を介して薬液投与装置2に送信する。
【0155】
また、マイクロコンピュータ301は、薬液投与装置2及び薬液充填装置5から送信された信号を通信アンテナ309で受信すると受信部308を介して取得し、該信号に応じた内容を表示部306に表示することにより使用者に通知するとともに、その内容に応じた処理を実行する。
【0156】
一方、薬液投与装置2は、充電池206から供給される電源電力により電気回路が動作し、駆動制御部20に設けられるマイクロコンピュータ220が全体を統括制御する。
【0157】
マイクロコンピュータ220は、CPU、RAM、ROM等でなるコンピュータであり、CPUがROMに格納される基本プログラムをRAMに読みだして実行することにより全体を統括制御するとともに、CPUがROMに格納される各種プログラムをRAMに読みだして実行することにより各種処理を実行する。
【0158】
マイクロコンピュータ220は、通信アンテナ205で受信したコントローラ3から送信された信号を受信部222を介して受信すると、該信号の内容に応じて各部を動作させる。
【0159】
具体的には、穿刺角度調整機構340を操作させることにより穿刺角度が調整され、薬液投与装置2が使用者に貼付部103を介して貼り付けられた状態で、マイクロコンピュータ220は、薬液を投与する信号がコントローラ3から供給されると、穿刺流路部30が駆動制御部20と接続されているか否かをコネクタ部212及び350の接続により確認する。そして、マイクロコンピュータ220は、穿刺リリース機構330を駆動して使用者に穿刺流路針304及びシース311を穿刺する。
【0160】
そしてマイクロコンピュータ220は、コントローラ3から薬液投与量及び投与速度が示された信号を受信すると、該薬液投与量及び投与速度で薬液を投与するために、モータ207を回転させて送出部130を駆動して使用者の体内に薬液を投与する。
【0161】
このとき薬液投与装置2では、注入部129を介して薬液バッグ110に予め貯蔵された薬液が、エアベントフィルタ104、送出部130、流水センサ303、穿刺流路針304及びシース311などを介して使用者の体内に投与される。
【0162】
薬液を投与している間、マイクロコンピュータ220は、モータ207の回転数をエンコーダ223を介して監視するとともに、流れ検出制御部224を介して薬液が流れているか否かを検出する。なお流れ検出制御部224は、流水センサ303のサーミスタを加熱するとともに、該サーミスタの温度変化を監視する。
【0163】
またマイクロコンピュータ220は、磁気センサ210及び211が検出する磁力に基づいてピストン132が摺動しているか否かを検出する。
【0164】
そしてマイクロコンピュータ220は、モータ207が正常に回転していない場合や、ピストン132が正常に摺動していない場合、又は薬液が流れていない場合には、再び実施し、状態が変わらない場合、各部を停止させ、その旨を送信部221及び通信アンテナ205を介してコントローラ3に送信する。
【0165】
マイクロコンピュータ220は、充電池206を充電する際、受信・充電回路224を制御して充電器4から供給される電気を充電アンテナ203を介して受信して充電池206を充電する。なお充電池206には電池安全回路部225が設けられ、電池安全回路部225が充電中の過充電、過放電及び過電流を防止する。
【0166】
充電器4は、コンセント401、AC/DC変換器402、高周波変換部403及び送信アンテナ404を含む構成とされる。充電器4は、コンセント401から送られてくる交流をAC/DC変換器402で直流に変換し、送信アンテナ404で送信するために高周波変換部403で高周波に変換した後、送信アンテナ404を介して薬液投与装置2に電気を送信する。
【0167】
従って薬液投与装置2では、薬液バッグ110を含む薬液貯蔵送出部10と、穿刺流路針304及びシース311を含む穿刺流路部30とが薬液を用いるという衛生上の観点から一度のみの使用であるのに対して、薬液を用いていない駆動制御部20は薬液貯蔵送出部10及び穿刺流路部30を着脱させることにより何度も使用することができる。このとき駆動制御部20の充電池206は充電器により充電されるので複数回の使用も行える。
【0168】
〔4.薬液充填装置の構成〕
次に、薬液投与装置2の薬液バッグ110に薬液を充填する薬液充填装置5について説明する。
【0169】
〔4−1.薬液充填装置の外観構成〕
薬液充填装置5は、図19に示すように、略直方体でなる本体部501の前面501Aの上側に、使用者の入力操作を受け付ける開始/停止スイッチ502、モード設定スイッチ503及び数値入力スイッチ504と、入力内容や動作内容等を表示する表示部505が設けられる。
【0170】
また本体部501は、薬液投与装置2を保持する薬液投与装置保持部506が前面501Aに設けられる。薬液投与装置保持部506は、薬液投与装置2の底面101Aが手前側となるように薬液投与装置2を保持する。
【0171】
また本体部501は、シリンジ510を保持するシリンジ保持部507及び508が前面501Aに設けられる。
【0172】
シリンジ510は、図20に示すように、円筒型の中空でなる外筒511、及び外筒511にスライド自在に挿入される押し子512からなる。
【0173】
外筒511は、筒部511A、先端接続部511B、フランジ511C、側面接続部511D及び511Eからなり、筒部511Aの末端面が開口されており、該開口から押し子512が挿入される。
【0174】
外筒511は、筒部511Aの先端に細く突き出した先端接続部511Bが形成され、外筒511の末端外周にはフランジ511Cが形成される。外筒511は、先端接続部511Bに注入チューブ520が接続され、筒部511Aの内部空間と注入チューブ520が連通される。
【0175】
また外筒511は、詳しくは後述するように筒部511Aの側面に、外筒511の内部空間と外部空間とを連通する孔が開けられた側面接続部511D及び511Eが形成される。外筒511は、例えばゴム製でなり柔軟性を有する吸引チューブ521及びポンプチューブ522が側面接続部511D及び511Eにそれぞれ接続され、筒部511Aの内部空間と吸引チューブ521及びポンプチューブ522が連通される。
【0176】
押し子512は、ガスケット512A、ロッド512B及びフランジ512Cからなる。ロッド512Bは、一端にガスケット512Aが接続され、他端にフランジ512Cが接続される。ガスケット512Aは、外筒511の内壁に隙間なく密着する。
【0177】
シリンジ保持部507は、外筒511のフランジ511Cが掛かるよう本体部501の前面501Aから突設される。シリンジ保持部507は、外筒511が上下方向に動かないように、樹脂製のフランジ511Cが圧入される凹溝にて、フランジを上下方向からガタ無く挟む構造である。
【0178】
シリンジ保持部508は、外筒511の筒部511Aであって先端接続部511Bの近傍を覆うよう本体部501の前面501Aから突設される。
【0179】
従ってシリンジ保持部507及び508は、外筒511を先端接続部511Bが下方向を向くように垂直に保持することができる。
【0180】
本体部501は、前面501Aに押し子512を上下方向に移動させる押し子駆動機構530が設けられる。押し子駆動機構530は、図21に示すように、モータ531、ギヤヘッド532、送りネジ533及び押し子保持部534からなる。モータ531、ギヤヘッド532及び送りネジ533は本体部501の内部に設けられ、押し子保持部534の一部が前面501Aから突出するようにして設けられる。
【0181】
モータ531は、ギヤヘッド532を介して送りネジ533を回転させ、該送りネジ533に螺合された押し子保持部534を上下方向に移動させる。押し子保持部534は、本体部501の内部でクラッチ機構により送りネジ533に螺合し、本体部501の前面501Aから突出した部分で押し子512のフランジ512Cを上下方向から挟むようにして保持する。
【0182】
このとき押し子保持部534は、押し子512のガスケット512Aが外筒511の筒部511Aに設けられる側面接続部511D及び511Eよりも上側に位置するように押し子512を保持する。
【0183】
従って押し子駆動機構530では、モータ531を回転させることにより押し子512を、ガスケット512Aが本体部501における側面接続部511D及び511Eより上側で上下方向に移動させる。
【0184】
本体部501の先端接続部511Bには、例えばポリプロピレンやポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、シリコンなどでなり、柔軟性を有する注入チューブ520が接続される。注入チューブ520は、先端接続部511Bが接続された端とは反対側の端に注入針523が接続されおり、また先端接続部511Bが接続された端側に該注入チューブ520の内空を塞ぐクランプ540が開閉自在に設けられる。
【0185】
注入針523は、薬液投与装置2の底面101Aに設けられた係合受部101Lに係合する係合部523Aが突設されており、係合部523Aが係合受部101Lに係合した際に針523Bの先端が薬液バッグ110に到達しない長さに設定される。
【0186】
一端に側面接続部511Dが接続される吸引チューブ521は、反対側の端に吸引針部524が接続されており、側面接続部511Dが接続される端側に該吸引チューブ521の内空を塞ぐクランプ541が開閉自在に設けられる。
【0187】
吸引針部524は、2本の針524A及び524Bが設けられており、針524Aには吸引チューブ521が連通され、針524Aよりも短く、バイアル570内の薬液に接しない長さの針524Bには何も接続されておらず両端が開口し、通気針として用いられる。
【0188】
一端に側面接続部511Eが接続されるポンプチューブ522は、本体部501の内部に設けられるポンプ525に反対側の端が接続されており、側面接続部511Eが接続される側に該ポンプチューブ522の内空を塞ぐクランプ542が開閉自在に設けられる。
【0189】
なお、クランプ540、541及び542は、アクチュエータ(図示せず)により開閉させる。
【0190】
ところで、シリンジ保持部508の外筒511と対向する面には、外筒511に入れられる薬液の量を測定する超音波センサ550及び551が外筒511を挟んで送信、受信素子がペアにて所定間隔だけ離して設けられる。この間隔は、外筒511内において超音波センサ550及び551と水平となる面に挟まれる空間が薬液投与装置2の薬液バッグ110に注入する薬液量と同じになるように設定される。
【0191】
シリンジ510の外筒511の筒部511Aに設けられた超音波センサ550及びシリンジ510の外筒511の先端部511Bに設けられた超音波センサ551は、送信素子が受信素子に向かって超音波を発射して、外筒に薬液が満たされている場合と満たされていない場合を受信素子の出力で判定する。
【0192】
具体的には、吸引時に規定の吸引量に満たされたことを外筒511内の液面が上昇し超音波センサ550の送信素子と受信素子の間が薬液で満たされたことを、該超音波センサ550の受信素子の出力が大きくなり一定になったことで検出する。また、注入時に規定量が注入されたことを外筒内の液面(界面)が下がり超音波センサ551の送信素子と受信素子間が空気となり受信素子の出力が小さくなったことで検出する。
【0193】
なお超音波センサ550及び551は、送信素子及び受信素子をそれぞれ1つずつ設けるようにしてもよいし、1つの送信素子に対してスク数の受信素子を設けるようにしてもよい。また超音波センサ550及び551の位置を固定するようにしたが、上下方向に移動できるように例えば上下方向に移動可能なアクチュエータによって支持するようにしてもよい。これにより薬液投与装置2に充填する薬液の充填量を変更することができる。
【0194】
〔4−2.薬液充填装置の回路構成〕
次に、薬液充填装置5の回路構成及び機能的構成を図22を用いて説明する。
【0195】
薬液充填装置5は、電池561から供給される電源電力に各部が動作し、マイクロコンピュータ560が全体を統轄制御する。
【0196】
マイクロコンピュータ560は、CPU、RAM、ROM等でなるコンピュータであり、CPUがROMに格納される基本プログラムをRAMに読みだして実行することにより全体を統括制御するとともに、CPUがROMに格納される各種プログラムをRAMに読みだして実行することにより各種処理を実行する。
【0197】
薬液充填装置5は、マイクロコンピュータ560の他にも電池監視部562、ポンプ駆動部563、押し子駆動部564、押し子監視部565、吸引量検出部566、注入量検出部567、クランプ開閉部568、送信部569、受信部570及び通信アンテナ571が設けられる。
【0198】
電池監視部562は、電池561の有無や残量等を監視し、マイクロコンピュータ560に通知する。ポンプ駆動部563は、ポンプ525を駆動させる。
【0199】
押し子駆動部564は、押し子駆動機構530のモータ531を駆動させ、該モータ531、ギヤヘッド532、送りネジ533、押し子保持部534を介して押し子512を上下方向に移動させる。
【0200】
押し子監視部565は、押し子駆動部564が押し子512を移動させている間、該押し子512が外筒511内を移動しているか否かを例えばモータ531に印可される電流に基づいて検出する。具体的に押し子監視部565は、例えばモータ531に所定閾値以上の過電流が流れている場合には押し子512のガスケット512Aが外筒511の内壁に引っ掛かって移動していないと判断し、その旨をマイクロコンピュータ560に通知する。
【0201】
吸引量検出部566及び注入量検出部567は、超音波センサ550及び551の測定結果を受けて、超音波センサ550及び551が設けられた高さと外筒511内の薬液の高さが同じになったか否かを検出し、検出結果をマイクロコンピュータ560に通知する。
【0202】
クランプ開閉部568は、マイクロコンピュータ560からの指示を受けてクランプ540、541及び542の開閉をアクチュエータを介して行う。
【0203】
マイクロコンピュータ560は、送信部569及び通信アンテナ571を介して各種信号を薬液投与装置2及びコントローラ3に送信し、また薬液投与装置2及びコントローラ3に送信される信号を通信アンテナ571及び受信部568を介して受信する。
【0204】
〔5.薬液充填装置による薬液充填の手順〕
次に、薬液充填装置による薬液を薬液投与装置2の薬液バッグ110に充填する際に使用者が行う操作及びマイクロコンピュータ560が行う充填処理の手順を図23に示すフローチャートを用いて説明する。
【0205】
マイクロコンピュータ560は、充填処理を実行する際、ROMに格納された充填処理プログラムをRAMに展開して実行することにより充填処理を実行する。
【0206】
まず、使用者はステップSP1において、注入チューブ520、吸引チューブ521及びポンプチューブ522が接続されたシリンジ510を本体部501にセットする。具体的には、外筒511をシリンジ保持部508に通してフランジ511Cをシリンジ保持部507に嵌めこみ、また押し子512のフランジ512Cを押し子保持部534に挟み込ませる。なお注入針523にはゴム製のキャップが装着されており、該注入針523は密閉されている。
【0207】
使用者はステップSP2において、薬液が入れられた薬液容器としてのバイアル570のゴム栓570Aをアルコ−ル綿で拭き消毒し、吸引針部524(針524A、針524B)を刺しこみ、針524Aの先端をバイアル570の薬液内に挿入させる。なお、針524Bは挿入してもバイアル570内に入るが薬液には入らない長さに予め設定されている。
【0208】
この状態で使用者が開始/停止スイッチ502を押下操作することにより、マイクロコンピュータ560は充填処理を実行し、ステップSP11において注入チューブ520に設けられたクランプ540を閉じる。なお、このとき吸引チューブ521及びポンプチューブ522にそれぞれ設けられたクランプ541及び542は開いたままである。
【0209】
マイクロコンピュータ660はステップSP11において、ポンプ駆動部563を介してポンプ525を駆動させて吸引を開始させる。
【0210】
ポンプ525が吸引を開始すると外筒511の筒部511Aと押し子512のガスケット512Aに挟まれた内部空間が負圧となり、薬液がバイアル570から吸引チューブ521を介して外筒511内に流入する。このとき、針524Bからバイアル570内に空気が吸い込まれるためバイアル570内は負圧とならず、バイアル570から負圧となった外筒511の内部空間へ薬液が吸い込まれる。また外筒511の内部空間に流入した薬液は重力によって下方に落ちるので、ポンプチューブ42を介してポンプ525内に流入することはない。
【0211】
マイクロコンピュータ560はステップSP13において、薬液投与装置2に充填する量の薬液をバイアル570から外筒511の内部空間に引き出されたか否かを、外筒511の内部空間に貯められた薬液の液面の高さを超音波センサ550及び吸引量検出部566を介して検出する。すなわちマイクロコンピュータ560は、超音波センサ550が設けられた高さまで薬液が外筒511の内部空間に貯められたか否かを検出する。
【0212】
そしてマイクロコンピュータ560は、外筒511の内部空間に超音波センサ550が設けられた高さまで薬液が引き出されるまでポンプ525を稼動させ、薬液投与装置2に充填する量の薬液がバイアル570から外筒511に引き出されたらステップSP14に移ってポンプ525をポンプ駆動部563を介して停止させる。
【0213】
マイクロコンピュータ560はステップSP15において、注入チューブ520のクランプ540を開けると共に、吸引チューブ521のクランプ541及びポンプチューブ522のクランプ542を閉じる。
【0214】
マイクロコンピュータ560はステップSP16において、押し子駆動部564及び押し子駆動機構530を介して押し子512を上方向に移動させ、注入チューブ540内の空気を強制的に吸引することで、注入チューブ540内に存在する空気を取り除く。この作業を複数回行って注入チューブ540から空気を取り除くと、マイクロコンピュータ560は、押し子512を上方向へ移動させるのをやめ、所定量押し子540を下方向へ移動させる。
【0215】
そしてマイクロコンピュータ560は、シリンジ510内の圧力を大気圧にするため、クランプ542を開放する。この操作により、注入チューブ540内が薬液で満たされる。その後、マイクロコンピュータ560は、その旨を表示部505に表示して使用者に通知する。
【0216】
通知を受けた使用者はステップSP3において、注入針523に設けられたゴムキャップを外して係合部523Aを薬液投与装置2の係合受部101Lに係合させ、注入針523の針523Bを注入部104に挿入する。
【0217】
この状態で使用者が再び開始/停止スイッチ502を押下操作すると、マイクロコンピュータ560はステップSP17において、押し子駆動部564及び押し子駆動機構530を介して押し子512を下方向に移動させ、外筒511に引き出された薬液を注入チューブ540を介して薬液投与装置2に注入する。
【0218】
薬液投与装置2では、薬液が注入部104から注入されると、薬液バッグ110のみに流入するのではなく、薬液バッグ110が膨らむ前にノズル105、フィルタ部120、流路管106、送出部130、流路管107、弁体108、穿刺流路部30のノズル302、流水センサ303、穿刺流路針304の各流路に順に流入する。
【0219】
このとき薬液バッグ110、ノズル105、フィルタ部120及び流路管106存在した空気がフィルタ部120から外部に排出される。また送出部130から穿刺流路針304までの流路に存在した空気は、穿刺流路針304の先端部304Bの先にはエアベントフィルタ309Aが設けられているので、該エアベントフィルタ309Aから外部に排出される。なお、穿刺流路針304とシース部310との間にも薬液が流入するがその量は微量であり、かつ存在していた空気も外部に排出される。
【0220】
そして各流路に薬液が満たされた後にさらに注入部104を介して薬液が注入されると、薬液バッグ110に圧力が加わって膨らむようにして薬液が充填される。
【0221】
マイクロコンピュータ560は、外筒511から薬液投与装置2へ注入される薬液量を、外筒511の液面の高さを超音波センサ551及び注入量検出部567を介して検出し、超音波センサ551が設けられた高さが空気で満たされたら、薬液投与装置2に予定された充填量の薬液を注入できたと判断して押し子512の移動を停止させる。
【0222】
このようにして薬液充填装置5は、薬液投与装置2に規定量の薬液を充填することができる。
【0223】
ところで従来の薬液投与装置では、使用者がバイアルから注射器を用いて薬液を引き抜いて薬液を貯蔵する薬液貯蔵部に充填させる。
【0224】
ここで、使用者が注射器を用いてバイアルから薬液を引き抜くには、最初シリンジでエア―を注入してからでないと比較的強い力を必要とし、また、バイアル内の薬液量が少ない場合の工夫、針の扱いには安全上の注意が必要であり、なおかつ衛生を考慮すると、薬液をバイアルから注射器に必要量を引き抜くためには熟練した技術が必要であるなど、使用者の負担が大きい。
【0225】
さらに、薬液を充填する際に薬液貯蔵部内に空気が混入してしまう場合がある。薬液貯蔵部内に空気が混入していると、例えば正確な量の薬液を使用者に注入できないなどの問題が起こる可能性があり、適切に薬液が充填されているとはいえない。そのため、使用者は薬液貯蔵部に空気を入れないように注意を払う必要がある。
【0226】
このように、薬液投与装置の薬液貯蔵部内に適切に薬液を充填するためには、使用者は煩雑な操作を行わなければならなかった。
【0227】
これに対して薬液充填装置5は、使用者にシリンジ510をセットさせ、バイアル570に吸引針部524を挿入させ、注射針523を注入部104に挿入させるといった容易な操作だけを行わせるだけで、薬液投与装置2の薬液バッグ110に正確な量の薬液を充填することができる。
【0228】
従って薬液充填装置5は、従来のよう使用者の負担を軽減し、かつ正確な量の薬液を充填でき、かくして使い勝手を向上することができる。
【0229】
〔6.他の実施の形態〕
〔6−1.他の実施の形態1〕
なお上述した本実施の形態では、シース部310のシース311が穿刺流路針304の先端部304Bから弾性部304Aの前方までの大部分を覆っており、シース部310の伸長部312がシース311の弾性部304A側の一端側の一部と重なる位置から弾性部304Aの直前まで穿刺流路針304を覆うようにした場合について述べた。
【0230】
本発明はこれに限らず、シース部のシース又は伸長部が一端変形するとそのままの形状を維持して元の形状には戻ることがない特性を有しており、穿刺流路針304の弾性部304Aが伸びる際又は縮む際にシース又は伸長部が伸びてそのままの形状を維持するようになされていればよい。
【0231】
例えば、図14と対応する部分に同一符号を付した図24(A)に示すように、一端変形するとそのままの形状を維持して元の形状には戻ることがない特性を有するシース部としてのシース610が穿刺流路針304の先端部304Bから固定部305までを覆う。
【0232】
カシメ306は、シース610が穿刺流路針304に対して滑らないように保持する。なおカシメ306は、シース610に対して接着されており、カシメ306が緩んだ場合でもシース610とは離れなることがない。
【0233】
そしてカシメ306が移動制限部307に接するまで押部324により前方向に押されると、穿刺流路針304の弾性部304Aが伸びるが、このときシース610は伸びることはない。
【0234】
そして押部324がカシメ306の下方で重なり合う部材同士の間に入って該カシメ306の締め付けを緩めると、穿刺流路針304の弾性部304Aが縮む。このときシース610は、カシメ306に接着されているので、カシメ306より前方は変形することなく、カシメ306から固定部305までが弾性部304Aの縮みに応じて伸びる。これにより、柔軟性のあるシース610だけを体内に挿入し続け、金属製でなる穿刺流路針304を体外に戻すことができる。
【0235】
また別例として図24(B)に示すように、シース部620は、穿刺流路針304の先端部304Bから弾性部304Aの直前までをシース621に覆い、弾性部304Aを一端変形するとそのままの形状を維持して元の形状には戻ることがない特性を有する伸長部622で覆う。
【0236】
伸長部622は、固定部305側の一端が穿刺流路針304に固定され、他端がシース621を覆うようにして固定される。なお、カシメ306は、シース621に固定されている必要はない。
【0237】
カシメ306が前方向に移動する際、穿刺流路針304は弾性部304Aが伸び、弾性部304Aが伸びることに応じて伸長部622も伸びる。
【0238】
そして押部324がカシメ306の下方で重なり合う部材同士の間に入って該カシメ306の締め付けを緩めると、穿刺流路針304の弾性部304Aが縮む。このときシース620部は、そのままの形状を維持し続け、シース部620の先端が底面301Aから突出した状態に維持される。
【0239】
これにより穿刺流路部30は、使用者を穿刺する際には先端部304Bが鋭利な金属製の穿刺流路針304で穿刺し、その後、柔軟性のあるシース621だけを体内に挿入し続け、金属製でなる穿刺流路針304を体外に戻すことができる。
【0240】
〔6−2.他の実施の形態2〕
また上述した実施の形態では、表皮から任意の深さに穿刺させるために角度調整機構340により穿刺流路針304及びシース311の底面301Aに対する突出角度を調整するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、表皮から任意の深さに穿刺させるために突出角度を固定したまま、穿刺距離を変更するようにしてもよい。
【0241】
具体的には、図25及び26に示すように、穿刺流路部700は、穿刺流路部30と比較して角度調整機構340に変えて距離調整機構710が設けられている点で異なる。距離調整機構710は、カシメガイド711及び移動制限部712が前後方向に移動可能にレバー713に保持される。
【0242】
レバー713は、筐体部701の上面701Fに設けられる開口701Qの内側及び外側にそれぞれ前後方向に延びる操作部713A及び保持部713Bが該開口701Qを貫通するように配される連結部713Cによって連結された断面が略H型の形状でなる。
【0243】
距離調整機構710は、保持部713Bと筐体部701との間に、該筐体部701の内部に外部から液体が流入することを防止するOリング714が設けられる。また距離調整機構710は、操作部713Aと筐体部701との間に、保持部713Bを筐体部701側に押し付けるバネ715が設けられる。
【0244】
レバー713は、保持部713Bの筐体部701と対向する面側で前後方向の両端に断面が略三角形の突起部713D及び713Eが設けられる。また筐体部701は、突起部713D及び713Eと対向する位置に前後方向に複数並べて、突起部713D及び713Eが係合する溝部701R及び701Sが設けられる。なお筐体部701には、筐体部301とは角度調整機構340のツマミ支持部348が載置される開口301Jが設けられていない。
【0245】
レバー713は、筐体部701の内部に設けられる保持部713Bに移動制限部712が固定される。移動制限部712は、孔が設けられており、該孔に穿刺流路針304及びシース311が挿通される。
【0246】
移動制限部712は、カシメ306を前後方向に移動できるよう案内するカシメガイド711がカシメ306側の面に設けられる。
【0247】
従って距離調整機構710は、レバー713の操作部713Aを使用者に前後方向に操作させることにより、突起部713D及び713Eが溝部701R及び701Sに係合しながらカシメガイド711及び移動制限部712を移動させる。
【0248】
このとき距離調整機構710は、カシメ306と移動制限部712との距離が変更されるので、穿刺機構320によりカシメ306が移動される際に該カシメ306が移動制限部712まで移動する距離を変更することができる。
【0249】
これにより距離調整機構710は、筐体部701の底面701Aから突出する穿刺流路針304及びシース311の穿刺距離を変更することができるので、穿刺角度が固定されていても体表から任意の深さに穿刺することができる。
【0250】
さらに穿刺角度及び穿刺距離の両方を変更するようにしてもよい。この場合、上述した角度調整機構340及び距離調整機構710を両方設けるようにすればよい。
【0251】
〔6−3.他の実施の形態3〕
上述した実施の形態において角度調整機構340は、穿刺流路針304及びシース311を保持する保持部347を中心部342を中心に回転させることにより、穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度を調整するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らない。
【0252】
例えば、図27に示すように、穿刺角度調整機構800は、穿刺流路針304及びシース311を保持すると共に筐体部301の開口301Nを塞ぐ柔軟性を有する部材でなる保持部801が筐体部301に固定された回転軸802を中心に回転自在に設けられる。
【0253】
保持部801は、回転軸802よりも下側をバネ803により後方向に一定の付勢力が加えられ、回転軸802よりも上側を使用者の操作に応じて湾曲方向に沿って移動する軸部804に当接される。軸部804は、一端が保持部801に当接され、他端がツマミ部805に接続される。
【0254】
穿刺角度調整機構800は、ツマミ部805を介して軸部804が湾曲方向に沿って上方に移動されると保持部801の回転軸802より上側を後ろ方向に移動させる。これにより保持部801が回転軸802を中心に回転する(図27(B)で時計回り)。
【0255】
これにより穿刺角度調整800は、底面301Aに対する穿刺流路針304及びシース311の突出角度を小さくすることができ、かくして使用者の表面に対する穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度を小さくすることができる。
【0256】
一方、穿刺角度調整機構800は、ツマミ部805を介して軸部804が湾曲方向に沿って下方向に移動されると、該軸部804が保持部801の回転軸802より上側から離れるように前方へ移動するので、バネ802の付勢力により保持部801を回転軸802を中心に回転させる(図27(B)で反時計回り)。
【0257】
これにより穿刺角度調整800は、底面301Aに対する穿刺流路針304及びシース311の突出角度を大きくすることができ、かくして使用者の表面に対する穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度を大きくすることができる。
【0258】
〔6−4.他の実施の形態4〕
また別例として、図28〜図30に示すように、穿刺流路部900の筐体部901は、上面901Fから前面901Gにかけて傾斜した傾斜面901Hに所定幅及び所定長さの開口901Jが設けられる。開口901Jの一方の側面には、略三角形の溝901Rが所定間隔ごとに複数設けられる。また、901H傾斜面の裏面の901J開口の長手方向の両側にL字のリブを設けてある。
【0259】
角度調整機構910は、ツマミ911、ツマミ支持部912、板バネ913、先端保持部914、板バネ915、係合部916、ステップ部917及びストッパー918により構成される。
【0260】
ツマミ支持部912、板バネ913、先端保持部914、板バネ915及び係合部916は、筐体部901の傾斜面901H、前面901G、底面901A及び背面901Vの内側に沿って連続して接続される。
【0261】
ツマミ911は、筐体部901の傾斜面901Hに設けられた開口901Jを開口901Jの裏側に設置したL字のリブと傾斜面901Hの裏面とで移動可能に保持されたツマミ支持部912とで挟むようにしてネジ911Aによりツマミ支持部912に固定される。
【0262】
ツマミ支持部912は、ツマミ911側に突設された突設部912Aが開口部901J内に位置し、突設部912Aの内部にはめ込まれた板状ばね材で作られ略三角形状の突起部を有する角状のバネである角状バネ912Bが溝901Rに嵌るように配される。
【0263】
ツマミ支持部912は、上面の縁に防水パッキン912Cが設けられており、傾斜面901Hとの間から液体が筐体部901内に進入することを防止する。
【0264】
先端支持部914は、例えばエラストマーでなり、柔軟性を有し、開口901Nを塞ぎかつシース311の外周に接するように配される。
【0265】
先端支持部914は、底面901Aの内側に設けたL字のリブにはめられており、両側が901の前面901G、背面901Vの内側に沿って前後方向にずれるようになっている。その柔軟性により、穿刺流路針304の先端部304B及びシース311の先端が角度調整機構910に移動されてもそれに追従でき、かつ開口部901Nを塞ぎ続ける。よって筐体部301内に液体が進入することを防止することができる。
【0266】
先端支持部914は、穿刺流路針304及びシース311を覆う覆部914Aに接した前方に、半円筒形状の傾きストッパー914Bが上下方向に突設される。これにより先端支持部913が後方向に移動しても、穿刺流路針304及びシース311が90度を確保できる。
【0267】
係合部916は、板バネ915が接続された端とは反対側の端がステップ部917側に突き出した爪部916Aを有し、ステップ部917に留金具918で前後移動可能に保持されている。
【0268】
ステップ部917は、底面901Bの内側であって最前方向に、前方向から後方向にかけて上方向に所定の傾斜角度φ(本実施では52度)で傾斜した傾斜面を有する略三角柱形状に形成される。ステップ部917は、溝901Rの間隔と同じ間隔ごとに複数の段差917Aが傾斜面に設けられ、係合部916の爪部916Aが段差917Aに係合する。
【0269】
このように構成される角度調整機構910は、初期位置として図30(A)に示すように、穿刺流路針304及びシース310の突出角度が最も小さい20度となるように、ツマミ支持部912の突起部912Bが筐体部901の最も上側の溝90Rに係合し、係合部916の爪部916Aがステップ部917の最下段の段差917Aに係合する位置に配される。
【0270】
そして角度調整機構910は、使用者のツマミ911を下方向に移動させる操作に応じて、ツマミ支持部912の突起部912Bが筐体部901の溝90Rに1つずつずれながら係合し、係合部916の爪部916Aがステップ部917の段差917Aを一段ずつずれながら係合していく。これにより角度調整機構910は、穿刺流路針304及びシース310の突出角度を少しずつ大きくしていく。
【0271】
角度調整機構910は、使用者の操作に応じてツマミ911が最下段に移動させると、ツマミ支持部912の角状バネ912Bの突起が筐体部901の最も下側の溝90Rに係合し、係合部916の爪部916Aがステップ部917の段差917Aの最上段に係合する。このとき角度調整機構910では、ストッパー918が筐体部901の上面901Fの内側にあたり、穿刺流路針304及びシース310の突出角度を90度にする。
【0272】
ところで角度調整機構910では、ツマミ911が最上段に位置しているときと、ツマミ911が最下段に位置しているときで穿刺流路針304及びシース310の突出角度が20°から90°に変化するが、これに伴い穿刺流路針304及びシース310の先端と保持部914の下面(穿刺孔)との距離が変化する。
【0273】
従って角度調整機構910では、穿刺流路針304及びシース310と保持部914の下面との変化距離の分を穿刺流路針304及びシース310の先端の移動距離を補正しないと一定の穿刺深さが維持できない。
【0274】
これに鑑み、角度調整機構910は、ストッパー918の位置を調整しているが、穿刺保持部914の前後移動量と穿刺流路針304及びシース310の先端と保持部914の下面(穿刺孔)とは移動距離が異なるため、ステップ部917の傾斜角度によりストッパー918の移動量を(1)式のように補正している。
【0275】
ステップ部917の移動量=穿刺保持部914の前後移動量×COSφ・・・(1)
なお、φはステップ部917の傾斜角度である。
【0276】
このようにして角度調整機構910は、使用者の表面に対する穿刺流路針304及びシース311の穿刺角度を調整することができる。
【0277】
〔6−5.他の実施の形態5〕
さらに上述した実施の形態においては、穿刺リリース機構330が制限部331、バネ332及びアクチュエータ333により構成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、マイクロコンピュータ220による制御を受けて支持板323を開放できるようにするものであればよい。
【0278】
例えば図31に示すように、穿刺リリース機構1000は、制限部331、バネ332、ストッパー1001及びニクロム線1002により構成される。制限部331及びバネ332は、穿刺リリース機構330と同様である。
【0279】
ストッパー1001は、制限部331の回転軸331Aより後側が嵌るように略コの字型に形成された鉤部1001Aの一面を、制限部331の回転軸331Aより後側の上面に当接させる。
【0280】
鉤部1001Aは、細長く形成された融解部1001Bと接続されており、該融解部1001Bを介して筐体部301に固定される。
【0281】
ストッパー1001は、融解部1001Bにマイクロコンピュータ220の制御を受けて電流が流れるニクロム線1002が複数回巻かれる。
【0282】
マイクロコンピュータ220は、穿刺流路針304及びシース311を使用者に穿刺する際、ニクロム線1002に電流を流し、その熱で融解部1001Bを融解させる。このとき穿刺リリース機構1000では、制御部331がストッパー1001から開放され、制限部331がバネ332の自然長に戻ろうとする力により回転軸331Aを中心に反時計回りに回転されて支持板323から離れる。これにより穿刺機構320が穿刺流路針304及びシース311を使用者に穿刺する。
【0283】
〔6−6.他の実施の形態6〕
上述した実施の形態においては、中心部342に凸部342Aが1つ設けられ、支持部341に凹部342Aが複数個設けられるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、中心部342に凸部342Aが複数個設けられ、支持部341に凹部342Aが1つ設けられるようにしてもよい。また、中心部342に凹部が1つ又は複数個設けられ、支持部341に凸部が複数個又は1つ設けられるようにしてもよい。
【0284】
〔6−7.他の実施の形態7〕
上述した実施の形態においては側面接続部511D及び511Eが同一高さに設けられるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、側面接続部511Eを側面接続部511Dよりも高い位置に設けるようにしてもよい。
【0285】
これによりポンプ525がバイアル570から薬液を吸いだす際に、よりポンプ525に薬液が流入することを防止することができる。
【0286】
〔6−8.他の実施の形態8〕
上述した実施の形態においては、送信部221及び受信部222及び流れ検出制御部224をマイクロコンピュータ220とは別のハードウェア構成とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、マイクロコンピュータ220が送信部、受信部及び流れ検出制御部として機能するソフトウェア構成であってもよいし、送信部、受信部及び流れ検出制御部の一部がハードウェア構成でその他がソフトウェア構成であってもよい。
【0287】
また上述した実施の形態においては、電池監視部303、送信部307及び受信部308をマイクロコンピュータ301とは別のハードウェア構成とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、マイクロコンピュータ301が電池監視部、送信部及び受信部として機能するソフトウェア構成であってもよいし、電池監視部、送信部及び受信部の一部がハードウェア構成でその他がソフトウェア構成であってもよい。
【0288】
なお上述した実施の形態においては、電池監視部562、ポンプ駆動部563、押し子駆動部564、押し子監視部565、吸引量検出部566、注入量検出部567及びクランプ開閉部568をマイクロコンピュータ560とは別のハードウェア構成とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、マイクロコンピュータ301が電池監視部、ポンプ駆動部、押し子駆動部、押し子監視部、吸引量検出制御部、注入量検出制御部及びクランプ開閉部として機能するソフトウェア構成であってもよいし、電池監視部、ポンプ駆動部、押し子駆動部、押し子監視部、吸引量検出制御部、注入量検出制御部及びクランプ開閉部の一部がハードウェア構成でその他がソフトウェア構成であってもよい。
【0289】
さらに上述した実施の形態では、薬液充填装置5においてクランプ540、541及び542がマイクロコンピュータ560の制御により開閉するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、使用者により開閉されるクランプを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0290】
本発明は、本発明は、例えば医療分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0291】
1……薬液投与システム、2……薬液投与装置、3……コントローラ、4……充電器、5……薬液充填装置、10……薬液貯蔵送出部、20……駆動制御部、30……穿刺流路部、101……下筐体部、102……上筐体部、110……薬液バッグ、120……フィルタ部、130……送出部、136……駆動用磁石、137……位置検出用磁石、140……圧迫部、201……上筐体部、202……下筐体部、206……充電地、207……モータ、208……ギヤヘッド、209……動力伝達磁石、210、211……磁気センサ、212……コネクタ、304……穿刺流路針、310……シース部、311……シース、312……伸長部、320……穿刺機構、330……穿刺リリース機構、340……角度調整機構、510……シリンジ、525……ポンプ、530……押し子駆動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体表に貼着されて使用される薬液投与装置であって、
使用者に接して配される面を有する筐体部と、
薬液が貯蔵される薬液貯蔵部と、
前記薬液貯蔵部から体内へ薬液が流れる流路を形成し、先端部が前記筐体部の使用者に接着される面から突出することにより生体に穿刺される穿刺部と、
使用者に接着される面に対する前記穿刺部の突出する角度を調整する角度調整部と
を有することを特徴とする薬液投与装置。
【請求項2】
前記穿刺部を所定の長さだけ使用者に接着される面から突出させる移動制限部
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項3】
前記角度調整部は、
前記使用者に接着される面に対する前記穿刺部の突出する角度を20度〜90度の範囲で調整する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液投与装置。
【請求項4】
前記角度調整部は、
前記筐体部の面上に配され、使用者により移動操作される操作部と、
前記操作部が一端に接続され、前記操作部の移動に応じて所定の位置を中心として、前記使用者に接着される面に対して垂直で前記穿刺部が延在する平面上で回転する軸部と、
前記軸部の他端に接続され、前記穿刺部の先端部近傍を保持する保持部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項5】
前記角度調整部は、
前記軸部の回転中心を支持する支持部と、
前記軸部及び前記支持部が接する面同士の一方に突設された凸部と、
前記軸部及び前記支持部が接する面同士の他方に、凸部が嵌る凹部とを有し、
凸部又は凹部は、回転中心を基準とした同心円状に複数設けられる
ことを特徴とする請求項4に記載の薬液投与装置。
【請求項6】
前記移動制限部は、
前記穿刺部を10mm移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の薬液投与装置。
【請求項7】
前記穿刺部の使用者に接着される面から突出させる距離を調整する距離調整部
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の薬液投与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−70715(P2013−70715A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209977(P2011−209977)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】