説明

薬液透過センサ

【課題】 例えば腐食性薬液が用いられる洗浄装置等で使用される流量計、圧力センサ等において、耐腐食性樹脂からなる隔壁を透過して検出部へ漏れ出した腐食性ガス(電解質)を感知でき、この漏れ出しを離隔位置から監視可能な薬液透過センサを提供する。
【解決手段】 一対の電極3a,3aが浸漬された溶媒を収容する溶媒収容部3bに、腐食性薬液中の電解質を溶媒収容部3b内へ透過させる電解質透過隔壁8を設け、電解質透過隔壁8を透過した電解質が溶媒収容部3b内の溶媒に溶解したことによる電極3a,3a間の抵抗変化を検出するように構成するとともに、電解質透過隔壁8を、洗浄装置等における各種センサの検出部16を腐食性薬液から隔離する樹脂隔壁9と同一材の耐腐食性樹脂で形成し、その厚さWを樹脂隔壁9の厚さと略同一の厚さとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食性薬液が導入される耐腐食性樹脂で形成された空間から、前記耐腐食性樹脂の樹脂隔壁を透過した前記腐食性薬液の透過状態を計測する薬液透過センサに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体および液晶デバイスの製造では、洗浄用途などに塩酸、フッ酸などの腐食性薬液を使用することが多い。このような腐食性薬液を使用する装置、機器では、腐食性薬液の収容部および送液流路の形成材質として、耐腐食性を有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル)などのフッ素樹脂が主に使用されている。例えば、腐食性薬液の流量を計測する流量計、腐食性薬液の圧力を計測する圧力センサなどのような各種センサにおいても、腐食性薬液を導入する空間をこのようなフッ素樹脂で形成している。
【0003】
しかし、上記の腐食性薬液がフッ素樹脂からなる樹脂壁に接した状態で一定時間が経過すると、この腐食性薬液からの腐食性ガスが樹脂壁を透過し、接液側とは反対側の空間に腐食性ガスが漏れ出す。
【0004】
この外部へ漏れ出した塩化水素、フッ化水素などの腐食性ガス(以下、電解質ということもある)は、腐食性薬液に用いられる前記各種センサにおける検出部を構成する検出素子、電極、または回路などを腐食し、性能の劣化および故障を引き起こす原因となる。
【0005】
特許文献1には、腐食性薬液の圧力を計測する圧力センサにおいて、圧力検出素子と、該圧力検出素子を収納するセンサ本体との間を密封するシール構造からの腐食性薬液の漏れを感知するために、腐食性薬液の漏れを、漏れ検知ポートを介して薬液反応マットへ導き、腐食性薬液による薬液反応マットの変色を目視することにより腐食性薬液の漏れを外部から確認することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−289725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記の技術では、色の変化を目視で確認しているので、圧力センサに不具合が生じる前に薬液反応マットの変色を確認するために頻繁な点検を要する。また、圧力センサのような腐食性薬液に用いられる前記各種センサを多数設置する際には、これらの一部を視認できない場所に設置する場合がある。なお、この技術は圧力検出素子とセンサ本体との間を密封するシール構造からの腐食性薬液の漏れを感知するものであり、腐食性薬液との接液側から耐腐食性樹脂の内部を通り反対側へ透過する腐食性ガスを感知するものではない。
【0007】
本発明は、腐食性薬液との接液側から耐腐食性樹脂からなる隔壁を透過して、各種センサの検出部へ漏れ出した腐食性ガスを感知できる薬液透過センサを提供することを目的としている。
【0008】
また本発明は、各種センサの検出部への腐食性ガスの漏れ出しを、センサから離隔した位置から監視可能な薬液透過センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薬液透過センサは、腐食性薬液が導入される耐腐食性樹脂で形成された空間から、前記耐腐食性樹脂の樹脂隔壁を透過した前記腐食性薬液の透過状態を計測する薬液透過センサであって、
一対の電極が浸漬された溶媒を収容する溶媒収容部と、該溶媒収容部に前記腐食性薬液中の電解質を透過させる電解質透過隔壁とが設けられた検出部を備え、前記一対の電極により、前記電解質透過隔壁を透過した電解質が前記溶媒収容部内の溶媒に溶解したことによる該電極間の抵抗変化を検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薬液透過センサは、前記電解質透過隔壁が、前記耐腐食性樹脂と同一の樹脂からなり、前記腐食性薬液が導入される前記空間の樹脂隔壁の厚さと略同一の厚さであることを特徴とする。
【0011】
前記耐腐食性樹脂としては、例えばフッ素樹脂を挙げることができる。また、前記薬液透過センサは、例えば、腐食性薬液の流量を測定する流量計、腐食性薬液の圧力を測定する圧力センサと一体に形成することができる。
【0012】
このように、薬液透過センサの電解質透過隔壁と、各種センサ(例えば流量計、圧力センサ等)の検出部を腐食性薬液から隔離する樹脂隔壁とを同一の樹脂で形成するとともに、これらの隔壁の厚さを略同一としている。なお、上記において「薬液透過センサの電解質透過隔壁の厚さが、腐食性薬液が導入される前記空間の樹脂隔壁の厚さと略同一の厚さである」とは、各種センサの検出部など、樹脂隔壁から透過した腐食性ガス(電解質)との接触が好ましくない部位、部材、機器の構成要素等の近傍における樹脂隔壁の厚さに対して、薬液透過センサの電解質透過隔壁の厚さを略同一としたことを意味する。
【0013】
このように構成することで、各種センサに導入された腐食性薬液に接したこれらの隔壁から腐食性ガスが透過する条件は、これらの隔壁がおかれる温度、圧力等の環境条件も含めて略同一となる。従って、これらの隔壁を腐食性ガスが透過して外部への漏れ出し(薬液透過センサでは溶媒への溶解、各種センサでは検出部への漏れ出し)が始まる時間と、それ以降の漏れ出し速度は、これらの隔壁間で略一致する。このため、薬液透過センサでは、各種センサの前記検出部へ腐食性ガスが漏れ出した履歴と略同一の履歴が、溶媒に腐食性ガス(電解質)が溶解したことによる電極間の抵抗変化として感知され、精度よく該検出部への腐食性ガスの漏れ出しを感知することができる。
【0014】
そして、腐食性薬液の透過を一対の電極間の抵抗変化から電気的に検出しているので、この抵抗変化が所定のレベルを超えた際に、例えば、センサと電気的に接続され該センサから離隔した位置に設けられた端末機から警報信号を出力し、その交換、修理等の時期を事前に知らせることによって、急な装置の停止によるライン全体の停止等を防ぐことができる。
【0015】
上記の薬液透過センサの好ましい一態様では、該センサが、前記耐腐食性樹脂で形成されたセンサケースを備え、
該センサケースが、前記腐食性薬液が導入される前記空間に面したセンサ取り付け位置に形成された雌ねじ部に前記センサを螺合固定するねじ溝が外周部に形成されたボルト形状であり、その中央部に前記溶媒収容部を構成する有底の穴部が設けられ、
前記有底の穴部における底部を前記電解質透過隔壁として、該穴部に前記溶媒を収容するとともに、該溶媒に浸漬されるように前記一対の電極が固定され、該溶媒の上面側が封止されている。
【0016】
このように構成することで、例えば、半導体製造装置の洗浄装置等に導入された腐食性薬液に薬液透過センサの電解質透過隔壁が接するように、薬液透過センサを前記装置の配管等に対してねじ込んで固定することができ、溶接等により螺合部の基端側を封止することで、耐圧性の高い固定を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の薬液透過センサは、腐食性薬液との接液側から耐腐食性樹脂の隔壁を透過した腐食性ガスを精度よく感知することができる。
また、腐食性薬液との接液側からの、耐腐食性樹脂の隔壁を介した腐食性ガスの漏れ出しを、この薬液透過センサから離隔した位置から監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。図1は、本発明の薬液透過センサの一実施形態を示した断面図である。この薬液透過センサ1は、塩酸、フッ酸などの腐食性薬液に対して耐腐食性を有する樹脂、例えばPTFE、PFAなどのフッ素樹脂でセンサケース2が形成され、このセンサケース2の中央部には、純水などの高抵抗の溶媒が収容された溶媒収容部3bを構成する有底の穴部が設けられている。
【0019】
溶媒収容部3bに収容された溶媒には、一対の電極3a,3aが浸漬され、これらの電極3a,3aは、絶縁体からなる電極固定部5で固定されている。電極固定部5の上面側は、モールド部6で樹脂封止されている。
【0020】
溶媒収容部3bの底部には、その外面側で腐食性薬液と接する電解質透過隔壁8が設けられている。この電解質透過隔壁8は、用途等に応じ、柔軟な膜状または適度な剛性を有する板状の形態としてセンサケース2と一体に形成される。この電解質透過隔壁8と、溶媒収容部3bと、溶媒収容部3bに収容された溶媒に浸漬された一対の電極3a,3aとにより、検出部4が構成されている。
【0021】
この電解質透過隔壁8に対して塩酸、フッ酸などの腐食性薬液が接した状態で所定時間が経過すると、腐食性薬液からの塩化水素、フッ化水素などの腐食性ガス(電解質)が電解質透過隔壁8の内部を通り溶媒収容部3bの内部へ透過する。この電解質は溶媒収容部3bの内部に収容された溶媒に溶解し、その導電率を増加させる。この導電率の変化は、一対の電極3a,3aの間における抵抗値の変化として信号ケーブル7から前記一対の電極3a間を流れる電流信号が取り出される。
【0022】
この薬液透過センサ1は、例えば腐食性薬液の流量を計測する流量計、腐食性薬液の圧力を計測する圧力センサなどが取り付けられる同一配管上等に取り付けられる。これらの腐食性薬液が導入される空間、例えば流量計の流路、圧力センサの受圧部が面する空間などは、耐腐食性樹脂で形成されている。この耐腐食性樹脂で形成された空間に対して電解質透過隔壁8を露出させ、腐食性薬液が電解質透過隔壁8に接するように薬液透過センサ1を継ぎ手11に取り付ける。
【0023】
本実施形態の薬液透過センサ1では、センサケース2をボルト形状に形成し、その上部にフランジ部2aを設けると共に、外周部にねじ溝2bを設けている。この薬液透過センサ1を、腐食性薬液が流れる流路に取り付けた状態を図2に示す。図示したように、外部から継ぎ手11の流路13内へ貫通する円筒部12の内面には雌ねじ部12aが形成されており、この雌ねじ部12aにセンサケース2のねじ溝2bを螺合させることにより、薬液透過センサ1を円筒部12にねじ込んで固定する。次に、薬液透過センサ1のフランジ部2aと円筒部12の開口周縁部とを溶接することにより(同図の溶接部14)、これらの間を封止する。
【0024】
図1に示したように、腐食性薬液が導入される空間に対して、耐腐食性樹脂からなる樹脂隔壁9を介した反対側には、例えば腐食性薬液の流量を検出する超音波振動子、腐食性薬液の圧力を検出する圧力検出素子などの検出部16が設置されている。この継ぎ手11に取り付けられる薬液透過センサ1の電解質透過隔壁8は、検出部9を腐食性薬液から隔離する樹脂隔壁9と同一材質である樹脂で形成されると共に、その厚さWを樹脂隔壁9と略同一の厚さとしている。この点について、図4に示した薬液透過試験装置による試験結果を参照しながら以下に説明する。
【0025】
この薬液透過試験装置31の内部には、フッ素樹脂からなる薄厚の被試験材料32で隔離された両側空間にそれぞれ純水33と腐食性薬液34とが収容される。純水33には、導電率変化を測定するための一対の電極(図示せず)が浸漬される。被試験材料32の片面と接するように純水33を満たした状態として、次に被試験材料32の反対側の面と接するように腐食性薬液34を満たす。腐食性薬液34からの電解質が被試験材料32を透過して純水33に溶解すると、電極間の導電率が増加し、電解質濃度の増加により導電率は順次増加していく。腐食性薬液の透過量と、腐食性薬液34を満たしてからの日数との関係は、図5のようになる。
【0026】
このように、薬液透過試験装置31の内部に腐食性薬液34を満たしてから所定日数Dの間は電解質が被試験材料32を透過せず、即ち導電率が変化しないが、所定日数Dを経過すると電解質が被試験材料32を透過して純水33に溶解し、電極間の導電率が増加する。この電極間の導電率が増加し始めるまでの日数Dは、被試験材料32の厚さ、材質、および被試験材料32がおかれる温度、圧力などの環境条件に応じて変化する。
【0027】
従って、図1に示したように、継ぎ手11に取り付けられる薬液透過センサ1の電解質透過隔壁8を、検出部16を腐食性薬液から隔離する樹脂隔壁9と同一材質で、且つ略同一の厚さで形成することで、腐食性ガスが、接液面15から検出部16側へ樹脂隔壁9を透過する条件と同一の条件で測定することができ、検出部16への腐食性ガスの漏れ出しを精度よく感知することができる。
【0028】
図3は、本発明の薬液透過センサにおける薬液透過検出回路の一例を示したブロック図である。検出部4に設けられた電極3a,3aには交流発信器21から交流信号が与えられ、腐食性薬液の電解質が電解質透過隔壁8を透過して溶媒収容部3b内の溶媒へ溶解したことによる一対の電極3a,3a間の抵抗値変化が、電流信号として平滑・整流回路22に入力され、平滑、整流された電流信号が比較部23に出力される。電極3a,3a間の抵抗値変化が所定のレベルを超えると、比較部23からの出力によって警報信号が出されるように構成している。なお、薬液透過検出回路はこの構成に限らず、公知の抵抗率計、導電率計などで構成することができるが、電極3a,3a間の抵抗値変化が検出できればさらに簡易な構成であってもよい。
【0029】
図6は、本発明の薬液透過センサを組み込んだ超音波流量計における流量計本体の断面図である。この流量計本体41は、計測対象の腐食性薬液に対して耐腐食性を有するフッ素樹脂で形成されており、腐食性薬液は、外部配管(図示せず)が接続される流入路42から下方へ向かって垂直に、断面形状が円形である測定路44へ流入し、測定路44を通過した後、外部配管が接続される流出路43から上方へ向かって垂直に流出する。
【0030】
流入路42の外側内面および測定路44の端部は平坦面とされ、流入路42から測定路44の端部に渡る連続した同一平面である平面部45が形成されている。流出路側も同様に、流出路43から測定路44の端部に渡る連続した同一平面である平面部46が形成されており、これらの平面部45,46は、測定路44の流路方向に対して垂直面となるように互いに対向している。
【0031】
測定路44の流入路側端部には、超音波振動子およびこれに接続される配線を含むユニットである上流側測定ヘッド50が、平面部45を接液面とした樹脂隔壁9の他面側に超音波振動子が当接するように測定ヘッド取り付け穴48に収納されている。測定路44の流出路側端部にも同様に、下流側測定ヘッド51が測定ヘッド取り付け穴49に収納されている。
【0032】
上流側測定ヘッド50の上方には、薬液透過センサ1が設けられている。この薬液透過センサ1は、平面部45を接液面とした電解質透過隔壁8の外側に形成されたセンサ形成用穴47に純水を収容し、この純水に浸漬した一対の電極を固定すると共に樹脂封止することにより、流量計本体41と一体に形成されている。この薬液透過センサ1では、電解質透過隔壁8と、センサ形成用穴47の奥側で構成される溶媒収容部と、該溶媒収容部に収容された純水に浸漬された一対の電極とにより、検出部が構成されている。
【0033】
本実施形態の超音波流量計は、各測定ヘッド50,51の超音波振動子を駆動回路から出力されるパルス電圧により振動させ、これらの超音波振動子の間で超音波を交互にもしくは同時に発生、送信する。上流側測定ヘッド50の超音波振動子から送信された超音波は下流側測定ヘッド51の超音波振動子で受信され、下流側測定ヘッド51の超音波振動子から送信された超音波は上流側測定ヘッド50の超音波振動子で受信される。圧電変換された受信信号は、増幅回路から電気信号として出力される。
【0034】
上流側測定ヘッド50の超音波振動子から腐食性薬液の流れに対して順方向に送信された超音波信号の伝播速度と、下流側測定ヘッド51の超音波振動子から被測定流体の流れに対して逆方向に送信された超音波信号の伝播速度は、測定路44を流れる腐食性薬液の流速に応じて互いに異なる。上流側測定ヘッド50の超音波振動子から送信された超音波信号が下流側測定ヘッド51の超音波振動子で受信されるまでの伝搬時間t1と、下流側測定ヘッド51の超音波振動子からから送信された超音波信号が上流側測定ヘッド50の超音波振動子で受信されるまでの伝搬時間t2との差t2−t1に基づいて、演算回路(図示せず)を経由して流量が計測される。
【0035】
上流側測定ヘッド50を接液側から離隔する樹脂隔壁9の厚さWと、薬液透過センサ1の電解質透過隔壁8の厚さWは互いに略同一とされ、これにより、樹脂隔壁9を透過し、上流側測定ヘッド50(下流側測定ヘッド51)の超音波振動子側へ漏れ出した腐食性ガスを感知している。
【0036】
図7は、本発明の薬液透過センサを組み込んだ圧力センサの断面図である。この圧力センサ61は、耐腐食性樹脂からなる樹脂部材63で形成された受圧空間64に腐食性薬液を導入して、圧力により変形可能な樹脂隔壁9を介してダイヤフラム型の圧力検出素子62で腐食性薬液の圧力を受けて、圧力に応じた電気信号を圧力検出素子62から出力することにより腐食性薬液の圧力を計測するように構成されている。
【0037】
この圧力センサ61には、受圧空間64を画成する樹脂部材63に外面側から形成したセンサ形成用穴65に純水を収容し、この純水に一対の電極を浸漬して固定すると共に樹脂封止することによって、薬液透過センサ1が圧力センサ61と一体に形成されている。センサ形成用穴65の底部を構成し、腐食性薬液との接液面となる電解質透過隔壁8は、その厚さWが、圧力検出素子62を受圧空間64から隔離する樹脂隔壁9の厚さWと略同一とされている。これにより、樹脂隔壁9を透過し、圧力検出素子62側へ漏れ出した腐食性ガスを感知している。この薬液透過センサ1では、電解質透過隔壁8と、センサ形成用穴65の奥側で構成される溶媒収容部と、該溶媒収容部に収容された純水に浸漬された一対の電極とにより、検出部が構成されている。
【0038】
なお、上述した超音波流量計および圧力センサの各実施形態のように、計測対象の腐食性薬液を導入する空間を構成する耐腐食性樹脂に、腐食性薬液との接液側とは反対側から溶媒および電極を収納する穴を形成するなどして、薬液透過センサを各種センサと一体に形成することで、センサを安価に組み込むことができ、また、メンテナンスが容易になり作業性が向上する。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の薬液透過センサの一実施形態を示した断面図である。
【図2】図2は、図1の薬液透過センサを継ぎ手に取り付けた状態を示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の薬液透過センサにおける薬液透過検出回路の一例を示したブロック図である。
【図4】図4は、薬液透過試験装置の構成を示した断面図である。
【図5】図5は、図4の装置により測定した薬液透過量と、経過日数との関係を示したグラフである。
【図6】図6は、本発明の薬液透過センサを組み込んだ超音波流量計における流量計本体の断面図である
【図7】図7は、本発明の薬液透過センサを組み込んだ圧力センサの断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 薬液透過センサ
2 センサケース
2a フランジ部
2b ねじ溝
3a 電極
3b 溶媒収容部
4 検出部
5 電極固定部
6 モールド部
7 信号ケーブル
8 電解質透過隔壁
9 樹脂隔壁
11 継ぎ手
12 円筒部
12a 雌ねじ部
13 腐食性薬液流路
14 溶接部
15 接液面
16 検出部
21 交流発信器
22 平滑・整流回路
23 比較部
31 薬液透過試験装置
32 被試験材料
33 純水
34 腐食性薬液
41 流量計本体
42 流入路
43 流出路
44 測定路
45 平面部
46 平面部
47 センサ形成用穴
48 測定ヘッド取り付け穴
49 測定ヘッド取り付け穴
50 上流側測定ヘッド
51 下流側測定ヘッド
61 圧力センサ
62 圧力検出素子
63 樹脂部材
64 受圧空間
65 センサ形成用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食性薬液が導入される耐腐食性樹脂で形成された空間から、前記耐腐食性樹脂の樹脂隔壁を透過した前記腐食性薬液の透過状態を計測する薬液透過センサであって、
一対の電極が浸漬された溶媒を収容する溶媒収容部と、該溶媒収容部に前記腐食性薬液中の電解質を透過させる電解質透過隔壁とが設けられた検出部を備え、前記一対の電極により、前記電解質透過隔壁を透過した電解質が前記溶媒収容部内の溶媒に溶解したことによる該電極間の抵抗変化を検出することを特徴とする薬液透過センサ。
【請求項2】
前記電解質透過隔壁が、前記耐腐食性樹脂と同一の樹脂からなり、前記腐食性薬液が導入される前記空間の樹脂隔壁の厚さと略同一の厚さであることを特徴とする請求項1に記載の薬液透過センサ。
【請求項3】
前記耐腐食性樹脂がフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の薬液透過センサ。
【請求項4】
前記薬液透過センサが、前記耐腐食性樹脂で形成されたセンサケースを備え、
該センサケースは、前記腐食性薬液が導入される前記空間に面したセンサ取り付け位置に形成された雌ねじ部に前記薬液透過センサを螺合固定するねじ溝が外周部に形成されたボルト形状であり、その中央部に前記溶媒収容部を構成する有底の穴部が設けられ、
前記有底の穴部における底部を前記電解質透過隔壁として、該穴部に前記溶媒を収容するとともに、該溶媒に浸漬されるように前記一対の電極を固定し、該溶媒の上面側を封止したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬液透過センサ。
【請求項5】
前記薬液透過センサが、前記腐食性薬液の流量を測定する流量計または前記腐食性薬液の圧力を測定する圧力センサと一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬液透過センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−153712(P2006−153712A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346201(P2004−346201)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】