説明

薬物を送達するための組成物

シリコーンと第1の溶媒との混合物、薬物(例えば、親水性または親油性の薬剤など)、ジアルキルスルホコハク酸塩〔例えば、ナトリウムジオクチルスルホスクシネート(DOSS)など〕、および第2の溶媒(例えば、アルコールなど)を含む組成物を提供する。ジアルキルスルホコハク酸塩が薬物を可溶化する。本組成物は、薬物を送達するために、局所的に基質、例えば皮膚などに適用することができる。広範な溶解度範囲を有する薬物が、薬物の分離または結晶化を起こすことなく、本組成物中に可溶性かつ相溶性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年7月11日出願の米国仮特許出願第60/949,042号の利益を請求する。
本発明は、薬物を送達するための組成物、さらに具体的には、シリコーンと第1の溶媒との混合物、薬物、ジアルキルスルホコハク酸塩、および第2の溶媒を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば抗生物質の塩などの薬物を含む組成物は、ヘルスケア技術分野において周知である。これらの組成物は、典型的に無水であり、ワセリン成分またはポリエチレン成分を含み、触感がべたべたしている。組成物がべたべたしていると、患者がこの組成物を使用または再使用することがより少なくなる可能性があり、これによって患者の薬物服用順守を低下させる。無水の組成物は、典型的には、シリコーンベースであり、親水性の薬剤に用いようとする場合には、製剤上の問題がある。例えば、抗生物質の塩、例えば、リン酸クリンダマイシンは、親水性であることが知られている(例えば、水に溶解可能である)ため、リン酸クリンダマイシンを脂溶性無水組成物中で製剤化することは想定されない。一部の親水性薬物は、無水組成物中で製剤化されているが、薬物の結晶、多形体、および結晶の凝集物が経時的に形成される。組成物中での結晶形成および凝集が制御されないことにより、10ミクロンを超える平均直径、典型的には15から20ミクロンの範囲またはそれ以上の平均直径を有する結晶が生じる。このような非制御の結晶形成および凝集により、無水組成物の物理的不安定性がもたらされ、生物学的利用能および/または生物学的同等性が減少する。
【0003】
テトラサイクリン抗生物質の塩を含む無水組成物が、例えば、Daherらの米国特許出願第4,376,118号(特許文献1)に開示されている。(特許文献1)の無水組成物は、テトラサイクリン抗生物質の塩、非水溶性希釈剤、非水溶性溶媒、および非水溶性第2の溶媒を含む。(特許文献1)の無水組成物は経時的に安定であるが、(特許文献1)は、好ましい非水溶性非イオン性第2の溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)であることを明らかにしている。例えば、(特許文献1)の実施例では、ポリエチレングリコール−200が、非水溶性非イオン性第2の溶媒として無水組成物の製造に用いられている。先に上述したように、(特許文献1)のPEGなどのポリエチレン成分は、べたべたしており、患者の薬物服用順守を低下させる。加えて、PEGは、過酸化物を形成する場合があり、これによってテトラサイクリン抗生物質の塩以外の薬物が不安定になり、薬物の皮膚への送達も阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第4,376,118号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、所望の美的特性をもたらし、例えば皮膚に適用した後のべたつきがない(これは、患者の薬剤服用順守のカギである)改良された組成物を提供する機会が、依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリコーンと第1の溶媒との混合物、薬物、ジアルキルスルホコハク酸塩、および第2の溶媒を含む組成物を提供する。ジアルキルスルホコハク酸塩は、薬物を可溶化する。本発明は、薬物を基質に送達する方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、組成物を製造するための、シリコーンと第1の溶媒との混合物、薬物、ジアルキルスルホコハク酸塩、および第2の溶媒の独特の組合せを提供する。広範な溶解度範囲を有する薬物が、本発明の組成物に可溶性かつ相溶性である。ジアルキルスルホコハク酸塩および第2の溶媒の量は、皮膚などの基質への薬物の最適な送達および放出のために、薬物をほぼ飽和状態に維持するように調整することができ、薬物の治療効果が経時的に変化しない。本組成物は、薬物の不安定性の原因となり得る有害な媒体を有していない。加えて、水、pH調整、および加熱は、本組成物の製造に一般に必要ではない。本組成物は、所望の美容的特性、特に触感、例えば皮膚への適用後の非べとつき性等も有することができる。
【0008】
本発明の組成物は、ヘルスケア分野の当業者に知られている様々な用途に使用することができる。これらの用途の例には、これらだけに限定されないが、表皮、皮膚、および真皮への皮膚用途、薬剤、抗菌剤、および栄養剤の用途、経口、経鼻、および埋込型などの内服用途、ならびに家畜用途が含まれる。本組成物は、とりわけ、局所用組成物としての液状形態での用途に好適である。例えば、皮膚に用いるための液状ローションであって、薬物などの成分の1種以上が、皮膚の一層以上に浸透することができるローションに好適である。本組成物は、さまざまな病気(例えば、座瘡または乾癬など)の治療に使用することができる。本組成物は、半固体または固体状で、例えば経皮パッチおよび移植デバイスなどに使用することができる。
【0009】
本組成物は典型的に無水である。「無水」とは、組成物が実質的に水を含んでいないことを意味する。しかし、本組成物は、組成物の一種以上の成分中に残留した水および/または組成物により吸収された大気中の水分に起因して、いくらかの水分含量を有する場合があると理解されたい。本組成物中に水が存在する場合、組成物は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、5質量部未満、あるいは1質量部未満、あるいは0に近いかそれに等しい水を含む。水は、組成物には通常望ましくない。水は、一つには組成物を製造する際に使われた特定成分およびその量次第で、長い間に組成物を不安定化させ、分離させる原因となり得るからである。水は、特定の成分(例えば薬物など)の不安定化または劣化の原因にもなり得(これについては下記にさらに記載する)、組成物の製造に用いる成分の制御されない副反応の原因となる可能性もある。
【0010】
本組成物は、シリコーンと第1の溶媒との混合物、薬物、ジアルキルスルホコハク酸塩、および第2の溶媒を含む。シリコーンは、シリコーンエラストマー、シリコーン接着剤〔例えば、シリコーン感圧接着剤(PSA)〕、液状シリコーンゴム、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンガム、およびこれらの組合せの群から選択することができる。
【0011】
本発明において有用なシリコーンエラストマーは、典型的には、≡Si‐H含有ポリシロキサンと、アルファ、オメガ‐ジエンとの反応生成物を含む。この≡Si‐H含有ポリシロキサンは下記式:
SiO(R’SiO)(R”HSiO)SiR(I)
(式中、R、R’、およびR”は、典型的には、それぞれ独立に、1から6個の炭素原子を有するアルキル基であり、aは0から250であり、bは1から250である)
を有することができる。シリコーンエラストマーの製造に好適な他の≡Si‐H含有ポリシロキサンには、下記式:
HRSiO(R’SiO)SiRH (II)
および/または下記式:
HRSiO(R’SiO)(R”HSiO)SiRH (III)
(式中、R、R’、およびR”は、典型的には、それぞれ独立に、1から6個の炭素原子を有するアルキル基であり、aは0から250であり、およびbは1から250であり、cは0から250である)
を有するものが含まれる。典型的には、≡Si‐H含有ポリシロキサンは、ポリシロキサン(I)と、ポリシロキサン(II)または(III)の少なくとも一種とを含む。アルファ、オメガ‐ジエンは典型的には下記式:
CH=CH(CHCH=CH
(式中、xは1から20である)のものである。シリコーンエラストマーの製造に適するアルファ、オメガ‐ジエンとしては、以下に限定されないが、1,4‐ペンタジエン、1,5‐ヘキサジエン、1,6‐へプタジエン、1,7‐オクタジエン、1,8‐ノナジエン、1,9‐デカジエン、1,11‐ドデカジエン、1,13‐テトラデカジエン、および1,19‐エイコサジエン、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0012】
シリコーンエラストマーは、典型的には、金属触媒の存在下で、≡Si‐H含有ポリシロキサンと、アルファ、オメガ‐ジエンとを反応および架橋させることによって製造する。シリコーンエラストマーの製造に適する金属触媒には、VIII族遷移金属触媒、例えば白金触媒が含まれる。シリコーンエラストマーの製造に適する他の金属触媒には、これに限定されないが、スズ触媒が挙げられる。
【0013】
シリコーンがシリコーンエラストマーである場合、第1の溶媒は、典型的には、ポリシロキサンを含む。ポリシロキサンは、シリコーンエラストマーを膨潤させるのに有用である。特に、第1の溶媒をシリコーンエラストマーと混合して混合物を生成させる際に、第1の溶媒は、シリコーンエラストマーを懸濁および膨潤させて、弾力性のある三次元ネットワークまたはマトリックス、例えばゲルをもたらす役割をする。このゲルは、混合物にせん断力を与えること、例えば、分散ブレード、歯科用混合機などを用いて、シリコーンエラストマーと第1の溶媒とをブレンドして混合物を生成させることによって、速やかに形成させることができる。
【0014】
シリコーンエラストマーとポリシロキサンとの混合物において、ポリシロキサンは、典型的には、低分子量直鎖状ポリシロキサン、低分子量環状ポリシロキサン、または、低分子量直鎖状および環状ポリシロキサンの混合物である。組成物の製造に適するポリシロキサンは、典型的に、以下に限定されないが、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。典型的には、ポリシロキサンは、シクロシロキサン、さらに典型的には、デカメチルシクロペンタシロキサンであり、これは当分野では通例「D5」とよばれている。シリコーンエラストマーと第1の溶媒との混合物を製造するのに好適な他のポリシロキサンには、低分子量直鎖状アルキルポリシロキサン、低分子量アリールポリシロキサン、またはこれらの混合物が挙げられる。使用する場合、低分子量直鎖状ポリシロキサンは、典型的には、下記式:
SiO(RSiO)SiR
(式中、Rは、典型的には、1から6個の炭素原子を有するアルキル基および/またはアリール基(例えばフェニルなど)の群から選択され、yは、典型的には、一般に100mm/s未満の粘度を第1の溶媒にもたらす値である)
のポリシロキサンである。
【0015】
第1の溶媒、例えばポリシロキサンは、典型的には、周囲条件下で液状であり、典型的には、皮膚上への組成物の改良された適用および広がりのために低粘度を有する。第1の溶媒、例えばD5は、典型的には揮発性であり、組成物が皮膚に適用された後少なくとも部分的に蒸発する。しかし、第1の溶媒は、組成物の製造に用いる具体的な溶媒次第で、非揮発性であってもよい。本明細書において用いる用語「揮発性」は、第1の溶媒が、1気圧25℃で0.2mmHgを超える蒸気圧および/または1気圧で300℃未満の沸点を有することを意味する。第1の溶媒は、シリコーンエラストマーの製造の際に存在していてもよいことを理解されたい。言い換えれば、第1の溶媒は、シリコーンエラストマーとの混合物中に本来含まれていてよく、かつ/あるいは、第1の溶媒を、シリコーンエラストマーを製造した後で添加してもよい。
【0016】
混合物は、≡Si‐H含有ポリシロキサンと、およびアルファ、オメガ‐ジエンとを用いて調製して、シクロメチコン(例えばD5)中、典型的には、8%から18%、あるいは12%から13%の非揮発性成分含量で、SiHと、アルファ、オメガ‐ジエンの二重結合とを付加および架橋させることによって、ゲルを形成させることができる。この実施態様では、混合物は、「シクロメチコン(および)ジメチコンクロスポリマー」というINCI名称で一般的に指定される。別の実施態様では、混合物は、「ジメチコン(および)ジメチコンクロスポリマー」を含む。使用する場合、クロスポリマーは、典型的には、緩く架橋したクロスポリマーである。クロスポリマーの緩い架橋は、さらに後述するように、組成物に所望の粘度および美的特性を与えるために有用であると考えられる。
【0017】
シリコーンエラストマーと第1の溶媒との混合物の好適な具体例は、ダウコーニング(登録商標)ST−エラストマー、ダウコーニング(登録商標)9040シリコーンエラストマーブレンド、およびダウコーニング(登録商標)9041シリコーンエラストマーブレンドであり、これらすべて米国ミシガン州ミッドランドのダウコーニングコーポレーションから市販されている。シリコーンエラストマーと第1の溶媒とのさらに好適な混合物は、シュルツらの米国特許第5,654,362号および同第5,888,210号に記載されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンエラストマーは、典型的には、混合物100質量部に基づいて、5から20質量部、あるいは10から15質量部、あるいは12から13質量部の量で存在する。第1の溶媒がポリシロキサンである場合、第1の溶媒は、混合物100質量部に基づいて、典型的には、45から90質量部、あるいは55から90質量部、あるいは60から88質量部の量で存在する。
【0018】
シリコーンエラストマーと第1の溶媒とは、典型的には、5:1から9:1の質量比で存在する。この混合物は、組成物に容易な適用性を与えるのに有用な粘度を有する。混合物は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、60から98質量部の量で存在する。しかし、本発明の目的のために、ここで記載したこれらの量以外に、さまざまな量の混合物、例えば、粘度および/または薬物の投薬などの所望特性を達成するために十分な量(qs)の混合物を使うことができることを認識されたい。
【0019】
シリコーンは、シリコーン接着剤、典型的には、貯蔵型の経皮パッチまたはデバイスに使用することができるシリコーンベースの感圧接着剤(PSA)であってもよい。典型的には、シリコーン接着剤は、シラノール末端封鎖ポリジアルキルジメチルシロキサンと、シリケート樹脂との反応生成物を含む。特定の実施態様では、シリコーン接着剤は、シラノール末端封鎖ジメチルシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応生成物を含む。好適なシリコーン接着剤の具体例は、ダウコーニング(登録商標)7−9800ソフトスキン接着剤、ダウコーニング(登録商標)BIO−PSA7−4502シリコーン接着剤、ダウコーニング(登録商標)BIO−PSA7−4602シリコーン接着剤、ダウコーニング(登録商標)7−4101、ダウコーニング(登録商標)7−4102、ダウコーニング(登録商標)7−4201、ダウコーニング(登録商標)7−4202、ダウコーニング(登録商標)7−4301、ダウコーニング(登録商標)7−4302、ダウコーニング(登録商標)7−4401、ダウコーニング(登録商標)7−402、ダウコーニング(登録商標)7−4501、ダウコーニング(登録商標)7−4601、およびダウコーニング(登録商標)7−4560であり、これらすべてがダウコーニングコーポレーションから市販されている。
【0020】
シリコーンがシリコーン接着剤である場合は、第1の溶媒は、典型的には、ヘプタンなどのアルカン類;トルエンなどのアレーン類;およびエチルアセテートなどのエステル類;ならびにこれらの組み合わせの群から選択される。この実施態様では、第1の溶媒は、さらに後述する加工助剤としての機能を果たす。シリコーン接着剤は、当技術分野で公知の他の基質、例えばパッチなどに適用することもできると理解されたい。特定の実施態様では、シリコーン接着剤を上述した混合物として使用する場合、組成物は、第2の溶媒を実質的に含まないかあるいは完全に含まない。これらの実施態様では、第2の溶媒は、使用する場合には、加工助剤としての機能をも果たす。シリコーン接着剤は、典型的には、混合したシリコーン接着剤と第1の溶媒、すなわち上述した混合物100質量部に基づいて、少なくとも50質量部存在する。このシリコーン接着剤は、典型的には、混合物100質量部に基づいて、40から80質量部、あるいは50から70質量部、あるいは60から65質量部の量で存在する。第1の溶媒、例えばエチルアセテートは、混合物100質量部に基づいて、1から40質量部、あるいは25から40質量部、あるいは25から30質量部の量で存在する。
【0021】
シリコーンは、水酸基で末端化されたジメチルシロキサンであるジメチコノールであってもよい。好適なジメチコノールの具体例は、ダウコーニング(登録商標)ジメチコノナールブレンド20およびST−ジメチコノール40であり、両者ともダウコーニングコーポレーションから市販されている。本発明の目的のための他の好適な溶媒として、ダウコーニング(登録商標)200フルイド〔例えば、ダウコーニング(登録商標)200フルイド、5CST〕、ダウコーニング(登録商標)245フルイド、ドデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、およびイソデシルネオペンタノエートが挙げられる。
【0022】
シリコーンは、液状シリコーンゴムであってもよい。シリコーンが液状シリコーンゴムである場合には、シリコーンは、それぞれ組成物100質量部に基づいて、シリコーンが、典型的には75〜95質量部の量で存在し、第1の溶媒が、典型的には1〜50質量部の量で存在する。
【0023】
本組成物の製造に適する、上述した混合物の一部、およびシリコーンと第1の溶媒との他の混合物は、種々の特許および公開特許に記載されており、これらの特許には、スウィートらの米国特許第4,882,377号、クワタらの米国特許第4,987,169号、Stepniewskiらの米国特許第5,599,533号、シュルツJrらの米国特許第5,654,362号、シュルツJrらの米国特許第5,811,487号、シュルツJrらの米国特許第5,880,210号、Zhangの米国特許第5,889,108号、Zhangの米国特許第5,929,164号、リンらの米国特許第5,948,855号、マインハルツらの米国特許第5,969,035号、カドレックらの米国特許第5,977,280号、ベルグらの米国特許第5,994,459号、ゴルノヴィッチの米国特許第6,015,858号、Stepniewskiらの米国特許第6,027,738号、リンらの米国特許第6,080,394号、リンらの米国特許第6,168,782号、リンらの米国特許第6,177,071号、リンらの米国特許第6,200,581号、リンらの米国特許第6,207,717号、リンらの米国特許第6,221,927号、リンらの米国特許第6,221,979号、リンらの米国特許第6,238,657号、Kilgourらの米国特許第6,346,583号、Kilgourらの米国特許第6,444,745号、Chaiyawatらの米国特許第6,538,061号、およびサンケルらの米国特許出願公開第2004/0228821号が挙げられる。これらの開示全体を参照により本明細書に組み込む。本発明の混合物は、先に記載および例示した1種以上のシリコーンと、1種以上の第1の溶媒との任意の組合せを含むことができることを理解されたい。
【0024】
シリコーンエラストマーと第1の溶媒との混合物は、典型的には、ゲルの形態であり、これは組成物に、所望の粘度および美的特性を与え、組成物の安定性を改良し、かつ、組成物中の薬物を懸濁し、運搬する(これについてはさらに以下に記述する)。組成物が所望の美的特性を、具体的には、触感を有する場合には、消費者は、向上した感覚的満足度および適用のしやすさに起因して、組成物を使用し、またその組成物の使用に適合する可能性がより高いと考えられる。このことは、全体的に見て患者の薬剤服用順守を向上させる。例えば、組成物が局所的に消費者の皮膚に適用され、少なくとも一部は吸収され、かつ/あるいは蒸発した後、適用後の組成物のいくつかの代表的美的特性として、フィルム残留物、べたつき、絹様、粘着性、滑りやすさ、および光沢が挙げられる。本組成物を当技術分野で公知の他の組成物(例えば、ペトロラタムなど、例えば石油ゼリー)と比較すると、本発明の組成物は、一般に、より少ないフィルム残留物、より低いべたつき、より低い粘着性、およびより低い光沢を有し、ペトロラタムと比べて一般により高い絹様およびより高い滑りやすさを有する。ペトロラタムの特性と比較して、本組成物のこのような美的特性は、典型的に患者からより望まれている。ゲルを一般的に用いるが、シリコーンエラストマーと第1の溶媒との本混合物は、ヘルスケア分野の当業者に知られている他の形態であってもよい。例えば、また上述により示唆したとおり、混合物は、組成物に、対応する混合物の粘度および美的特性を与える液状、半固体、ブレンド、またはペーストであってもよい。
【0025】
薬物は、ヘルスケア分野において知られている任意の薬物であってよく、典型的には、医薬品または抗生物質の塩、ビタミン誘導体、または抗菌剤、およびこれらの組合せなどである。組成物は、二種以上の異なる薬物の任意の組合せを含んでもよい。本組成物は、とりわけ、親水性または脂溶性の薬物などの広範な溶解度範囲を有するさまざまな薬物を運搬するために有用である。本組成物を製造するための好適な薬物の例は、これらだけに限定されないが、テトラサイクリン、リン酸クリンダマイシン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、アルプロスタジル、テルビナフィン、クロベタゾールプロピオネート、ケトコナゾール、プロゲステロン、ナイアシンアミド、カルシポトリオール、レチノイド類(レチノイン酸、シス‐レチノイン酸/イソトレチノイン、トランス‐レチノイン酸/トレチノイン、タザロテン、およびアダパレンを含む)、ビタミンD類似体、ビタミンAエステル類、ダプソン、ドキシサイクリン、およびこれらの組合せの群から選択することができる。薬物は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、0.0001から0.5質量部の量で存在する。
【0026】
ジアルキルスルホコハク酸塩は、典型的には、ナトリウムジオクチルスルホスクシネート(DOSS)であり、これは、当技術分野では、ドキュセートナトリウムまたはナトリウムキュセートとも呼ばれる。ジアルキルスルホコハク酸塩は、薬物を可溶化し、特に、親水性および脂溶性の薬物の可溶化ならびに組成物の粘度調節に有用である。具体的には、特定の実施態様では、薬物は完全に可溶化され、典型的には、凝結または結晶化することなく、組成物内で安定した状態に保たれる。大きな結晶(例えば、10ミクロンを超える平均直径を有する結晶など)の形成および薬物の結晶の凝集は、それらが薬物の有効性を阻害する傾向があり、組成物の消費者にとって視覚的にも触覚的にも美観上不快であり得る。DOSSを使用すると、抗生物質を薬物として用いる場合に、安定化効果に起因する相乗的効果も得られると考えられる。典型的には、ジアルキルスルホコハク酸塩は、低分子量アルコール(例えば、エタノール;後述する)との組合せで薬物を安定化するため、加熱またはpH調整は組成物の製造の際、例えば薬物を組成物内に組み入れる際に必要ではない。当技術分野で理解されているように、加熱およびpHは特定の薬物の効用を劣化により失わせる原因となり得る。多くの薬物劣化生成物は有毒であり、望ましくない。ジアルキルスルホコハク酸塩は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、0.01から5質量部の量で存在する。
【0027】
特定の実施態様では、一つには組成物中に用いられる薬物の量に依存して、薬物の一部が完全には可溶化されない。言い換えれば、これらの実施態様では、薬物の一部の量は可溶化し、薬物の一部の量は分散相中に、典型的には10ミクロン以下の平均直径、さらに典型的には約5から約10ミクロンの平均直径を有する微結晶の形態で存在する。これらの実施態様では、結晶形成が制御されて、薬物結晶の凝集、沈降が、一つには組成物の粘度によって、減速され、最小化され、あるいは起こらないようにされる。さらに、組成物は、典型的に、定常状態にあって、組成物が消費者により使われる際に、可溶化された薬物は消費者の皮膚に吸収され、吸収された薬物は、分散相からその後可溶化される薬物で置き換えられるようにされる。言い換えれば、結晶が存在する場合、結晶は、分散相から可溶化されて、以前に可溶化されていた、消費者の皮膚に吸収および/または浸透された薬物と置き換えられて、組成物から消費者の皮膚に薬物が吸収されるまで、ほぼ一定の速度の薬物の拡散が達成されるようにされる。
【0028】
第2の溶媒は、典型的にはアルコールであり、さらに典型的にはアルコール単量体、例えば、1個〜10個の炭素原子と1個のヒドロキシル基を有するアルコールなどである。一般に、本発明の目的のためには、10個を超える炭素原子を有するアルコールは、組成物(またはその一部)の固化をもたらし得る望ましくない融点を有する。したがって、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、およびこれらの組合せの群から選択することができる。アルコールは、前述したアルコールのさまざまな異性体であってもよく、例えば、これらだけに限定されないが、1−プロパノール、1−ブタノール、および1ペンタノールであってもよい。典型的には、アルコールは、エタノールである。第2の溶媒は、ジアルキルスルホコハク酸塩を溶解し、薬物を可溶化することもできる。第2の溶媒は、典型的には、実質的に加水分解して水を形成する(これは上述により説明および例証した望ましくない)エステル類を実質的に含まない。ジアルキルスルホコハク酸塩と、アルコールとは、典型的には、1:1から1:4の質量比で存在する。ジアルキルスルホコハク酸塩と、アルコールとを混合することは、組成物にジアルキルスルホコハク酸塩、したがって薬物を可溶化するのに有効である。例えば、薬剤の塩をは、典型的には、ゲルなどの脂溶性マトリックス中で結晶化する。ジアルキルスルホコハク酸塩および第2の溶媒の量を制御することによって、薬物をより高い濃度(例えば、ほぼ飽和レベルの濃度)で組成物に添加することができる。さらに、上述により示唆したとおり、特定の実施態様では、薬物を、分散相中に存在させて、例えば、飽和レベルを超える濃度で存在させることができる。具体的には、第2の溶媒は、ジアルキルスルホコハク酸塩との組合せで、カプセル化された薬物、媒体、または熱力学的に安定な会合相もしくは構造の形態で、薬物を分散、懸濁、および/または可溶化するためにとりわけ有用である。第2の溶媒は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、0.01から20質量部、あるいは0.1から10質量部の量で存在する。
【0029】
本組成物は、ヘルスケア分野の当業者に知られている添加剤をさらに含むことができる。例えば、添加剤は、皮膚軟化剤;経皮吸収促進剤;香料;酸化防止剤〔例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など〕;紫外線遮蔽剤〔例えば、二酸化チタン(TiO)など〕;ステロイド(例えば、ベタメタゾンなど);pH調整剤(例えば、酸または塩基、例えば炭酸水素ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム);およびこれらの組合せの群から選択することができる。
【0030】
皮膚軟化剤を使用する場合、皮膚軟化剤は、当業者で知られている任意の皮膚軟化剤であってよい。皮膚軟化剤は、組成物の消費者の皮膚を柔らかくし、滑らかにするために有用である。皮膚軟化剤は、典型的には、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、クエン酸トリエチル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、ミリスチルプロピオネート、2‐エチルヘキシルパルミテート、セチルパルミテート、セチルステアレート、トリグリセリド,脂肪酸、脂肪族アルコール(例えばオレイルアルコール)、およびこれらの組合せの群から選択される。好適なトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、好適な脂肪酸は、カプリル酸である。使用する場合、皮膚軟化剤は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、0.1から50質量部、あるいは0.1から25質量部、あるいは0.1から10質量部、あるいは0.1から5質量部の量で存在する。薬物を混合物に可溶化することに加えて、ジアルキルスルホコハク酸塩、例えばDOSSは、皮膚軟化剤を用いる場合には、混合物と、皮膚軟化剤(例えばオレイルアルコール)との間の相溶性を付与するために有用である。例えば、オレイルアルコールを単に混合物に混合すると、二つは分離してしまう。しかし、適切な量のジアルキルスルホコハク酸塩を加えると、混合物と皮膚軟化剤との間の分離は一般に起こらない。ジアルキルスルホコハク酸塩のこのような量は、各成分の量次第であり、日常的な実験によって決めることができる。
【0031】
経皮吸収促進剤を用いる場合、経皮吸収促進剤は、当分野で知られている任意の経皮吸収促進剤であってよい。経皮吸収促進剤は、組成物消費者の皮膚への薬物の浸透を促進するために有用である。経皮吸収促進剤は、典型的には、オレイル酸、リノレン酸、グリセリンモノラウレート、アゾン(1‐ドデシルアザシクロヘプタン‐2‐オン)、ドデシル2‐(N,N‐ジメチルアミノ)プロピオネート、ドデシル2‐(N,N‐ジメチルアミノ)プロピオネート・塩化水素、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびこれらの組合せの群から選択される。使用する場合、経皮吸収促進剤は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、0.01から10質量部、あるいは0.01から5質量部、あるいは0.5から2質量部の量で存在する。
【0032】
界面活性剤を使用する場合、界面活性剤は、当分野で公知の任意の界面活性剤であってよい。条件次第で、界面活性剤は、当分野で乳化剤と呼ばれる場合もある。界面活性剤は、組成物への均一性の付与、薬物の可溶化のために有用であり、かつ、その分配係数によって、界面活性剤は、皮膚への経皮浸透促進剤となり得る。好適な界面活性剤の例は、一般に、非イオン性界面活性剤であり、例えばポリソルベート80などのポリソルベート、例えばソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステル類、ならびにソルビタンセスキオレエートを含む。使用する場合、界面活性剤は、典型的には、組成物100質量部に基づいて、0.01から10質量部、あるいは0.01から5質量部、あるいは0.5から2質量部の量で存在する。
【0033】
本組成物は、シリコーン、第1の溶媒、薬物、ジアルキルスルホコハク酸塩、および第2の溶媒を混合することによって製造することができる。一つの実施態様では、ジアルキルスルホコハク酸塩を、第2の溶媒中に可溶化させて、ブレンドを形成させる。例えば、第2の溶媒(液状)はDOSS(固体)を溶解することができる。次いで、このブレンドを、薬物と混合し、次いで、シリコーンと第1の溶媒との混合物(例えば、シクロメチコンおよびジメチコンクロスポリマー)を、粘度ビルダーおよびマトリックスとして添加して、組成物を製造する。別の実施態様では、ジアルキルスルホコハク酸塩をを溶融させて溶融物を形成させる。次いで、薬物をこの溶融物に混合する。その後、第2の溶媒およびシリコーンと第1の溶媒との混合物を添加して、組成物を製造する。場合により、皮膚軟化剤および/または経皮吸収促進剤などの添加剤を組成物に添加する。本組成物は、各種の混合機および分散ブレードを使用して、容器内で製造することができる。典型的には、pHを変更することは、組成物の製造に必要ではない。加えて、熱の適用は、用いるジアルキルスルホコハク酸塩次第で任意であり、熱をジアルキルスルホコハク酸塩に適用する場合には、組成物全体を加熱することは必要ではない。
【0034】
シリコーン接着剤、例えばPSAを使用する場合、ジアルキルスルホコハク酸塩を、第2の溶媒中で可溶化して、ブレンドを形成させる。次いで、薬物を、シリコーン接着剤(溶媒を含む)と混合して、組成物を形成させる。組成物を、その後、剥離ライナー上にコーティングすることができ、第1の溶媒は、加熱条件または周囲条件下で蒸発して、フィルム状の固体マトリックスまたはパッチが生じる。これらは皮膚に適用することができ、薬物による全身性または局所性の治療効果がもたらされる。
【0035】
上述により示唆したとおり、本明細書において製造する組成物は、基質に薬物を送達するために基質に適用することができる。組成物を適用すると、典型的には、フィルムが基質上に形成される。このフィルムには薬物が含まれており、この薬物がフィルムからあるいはフィルムを通して基質に送達される。基質が皮膚である場合、組成物を皮膚に適用して薬物を皮膚に送達させる。本組成物は、種々の方法、例えば、組成物を皮膚(例えば乾癬斑など)上に直接こすりつける方法によって、適用することができる。あるいは、上述したとおり、組成物を、経皮パッチを皮膚に適用する前に、経皮パッチに塗布しておくことができる。
【0036】
本発明の組成物を説明する以下の実施例は、例証することを目的とするものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0037】
本発明の組成物の実施例1から36を製造する。シリコーンと第1の溶媒との混合物、薬物、ジアルキルスルホコハク酸塩、第2の溶媒、および、任意に、添加剤(例えば、皮膚軟化剤および経皮吸収促進剤など)の1種以上を、標準的なブレンド方法を用いて混合することにより製造する。一般に、ジアルキルスルホコハク酸塩と第2の溶媒中とを分散させ、ブレンドを形成させる。次いで、このブレンドに薬物を添加して、組成物を形成させる。用いた溶媒次第で、溶媒は、組成物から蒸発させても、蒸発させなくてもよい。通常用いるステンレス製容器を、組成物の製造に用いる。薬物が酸化または光酸化に敏感である場合には、窒素パージ/スパージ付の密閉容器またはタンクが必要となり得る。種々の混合手段、例えば、プロペラミキサーまたは歯科用ミキサーなどを使うことができる。組成物を、視覚的に何らかの固化または分離が起きているか否かを見極めるために、静置する。組成物を、顕微鏡、具体的には100倍の顕微鏡下で検査して、何らかの凝集物または結晶が組成物中に形成されていないか否かを、特に薬物に関してさらに見極める。組成物を形成させるために用いた各成分の量および種類を、下記表1から8に、別段の表示がない限り、組成物100質量部に基づく質量部での値を用いて示す。
【0038】
【表1】

【0039】
混合物1は、米国ミシガン州ミッドランドのダウコーニングコーポレーションからダウコーニング(登録商標)ST−エラストマー10の商標名の下で市販されている、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)中のゲルの形態の高分子量シリコーンエラストマーである。それぞれ混合物の100質量部に基づいて、高分子量シリコーンエラストマーは、12から13質量部の量で、D5は、87から88質量部の量で存在する。
【0040】
薬物1は、アルプロスタジルである。
薬物2は、クロベタゾールプロピオネートである。
薬物3は、リン酸クリンダマイシンである。
薬物4は、ダプソンである。
ジアルキルスルホコハク酸塩は、米国カルフォルニア州ガードナのスペクトラム・ケミカルMfg社から市販されているナトリウムジオクチルスルホスクシネート(DOSS)である。
第2の溶媒1は、エタノールである。
皮膚軟化剤は、米国ニュージャージー州エジソンのクローダ社から市販されているジイソプロピルセバケートである。
経皮吸収促進剤1は、米国ニュージャージー州イースト・ウィンザーのNexMed(登録商標)社から市販されているドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオネート(DDAIP)である。
経皮吸収促進剤2は、NexMed(登録商標)社から市販されているドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオネート・塩化水素(DDAIP HCl)である。
【0041】
【表2】

【0042】
薬物5は、過酸化ベンゾイルである。
薬物6は、シプロフロキサシンである。
薬物7は、エリスロマイシンである。
薬物8は、ドキシサイクリンである。
【0043】
混合物2は、ダウコーニングコーポレーションからダウコーニング(登録商標)9040シリコーンエラストマーブレンドの商標名の下で市販されている、D5中の高分子量シリコーンエラストマーである。それぞれ混合物の100質量部に基づいて、高分子量シリコーンエラストマーは、12から13質量部の量で、D5は、87から88質量部の量で存在する。
【0044】
【表3】

【0045】
薬物9は、カルシポトリオールである。
薬物10は、レチノイン酸である。
経皮吸収促進剤3は、オレイン酸である。
【0046】
【表4】

【0047】
混合物3は、2液型(A部およびB部)シリコーン接着剤であり、A部とB部とが1:1で配合されている、白金触媒ポリジメチルシロキサン組成物であり、ダウコーニングコーポレーションからダウコーニング(登録商標)7−9800ソフトスキン接着剤の商標名の下で市販されている。
【0048】
混合物4は、2液型(A部およびB部)シリコーンであり、スズ触媒化され、A部とB部とが9:1で配合されており、ダウコーニングコーポレーションから市販されている。
【0049】
混合物5は、2液型(A部およびB部)液状シリコーンゴムであり、スズ触媒化されており、A部とB部とが9:1で配合されており、ダウコーニングコーポレーションから市販されているものである。
【0050】
薬物11は、ケトコナゾールである。
薬物12は、プロゲステロンである。
【0051】
【表5】

【0052】
混合物6は、ダウコーニングコーポレーションからBIO−PSA(登録商標)7−4602シリコーン接着剤の商標名の下で市販されている、酢酸エチル中のシリコーン接着剤である。それぞれ混合物の100質量部に基づいて、シリコーン接着剤は60質量部の量で、酢酸エチルは40質量部の量で存在する。
【0053】
混合物7は、ダウコーニングコーポレーションからBIO−PSA(登録商標)7−4502シリコーン接着剤の商標名の下で市販されている、酢酸エチル中のシリコーン接着剤である。それぞれ混合物の100質量部に基づいて、シリコーン接着剤は65質量部の量で、酢酸エチルは35質量部の量で存在する。
【0054】
混合物13は、ナイアシンアミドである。
第2の溶媒2は、イソプロパノールである。
【0055】
【表6】

【0056】
薬物14は、トランス−レチノイン酸である。
薬物15は、アダパレンである。
経皮吸収促進剤4は、プロピレングリコールである。
経皮吸収促進剤5は、ジプロピレングリコールである。
【0057】
【表7】

【0058】
混合物8は、ダウコーニングコーポレーションからダウコーニング(登録商標)7−4202シリコーン接着剤の商標名の下で市販されている、ヘプタンまたは酢酸エチル中のシリコーン接着剤である。それぞれ混合物の100質量部に基づいて、シリコーン接着剤は60質量部の量で、ヘプタンまたは酢酸エチルは40質量部の量で存在する。
【0059】
上述した実施例はいずれも、優れた安定性を示した。言い換えれば、沈殿または分離が視覚的に全く観測されなかった。加えて、100倍の顕微鏡下での組成物の検査では、結晶または凝集物が全く検出されなかった。本発明の目的のためには、上述により示した量以外のさまざまな量〔例えば、所望の特性(例えば、粘度および/または薬物の用量など)を達成するのに十分な量(qs)〕の混合物を用いることができることを理解されたい。シリコーン接着剤を用いる実施例(例えば、表5の実施例)では、一般に、各実施例を皮膚に適用する前、あるいは実施例を用いる微生物学的な試験を実施する前に、各混合物の第1の溶媒が蒸発によって除去されていることも理解されたい。上述したとおり、混合物としてシリコーン接着剤を使用する場合、第1の溶媒は、主として加工助剤としての役割を果たす。
【0060】
阻害領域試験のプロトコルは、実施例16で調製した本発明の組成物と、2つの比較例組成物(具体的には、比較例1および2)とについて、ASTM G21の変法を用いて2回実施し、実施例16の組成物の特性における薬物3(すなわち、リン酸クリンダマイシン)の有効性を、代表的な有機体としてP.acnesを使用して決定した。
【0061】
【表8】

【0062】
界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であり、具体的には、スペクトラム・ケミカルMfg社から市販されているポリソルベート80である。
【0063】
阻害領域試験のプロトコルにより、実施例36の組成物が、P.acnesに対して有効であることが明らかとなった。比較例1および2の組成物は、阻害領域を示さなかった。この試験は、実施例16の組成物におけるDOSSの可溶化効果により、リン酸クリンダマイシンの放出が可能になったことを示している。
【0064】
上記実施例により、薬剤、例えば、親水性および脂溶性薬物などが、本発明の組成物中に溶解可能であり相溶性であることが明らかとなった。このことは、DOSSの相乗的な可溶化特性、とりわけエタノールなどのアルコールに溶解された場合の特性に起因すると考えられる。この相乗的な可溶化特性により、親水性薬物を、脂溶性物質、例えば、シリコーンと第1の溶媒との混合物中に相溶化させることができる。
【0065】
ジアルキルスルホコハク酸塩(例えば、DOSS)および第2の溶媒(例えば、エタノール)の量を調整して、薬物をほぼ飽和状態に保って、薬物の放出を最適化することができる。薬物の活性は、阻害領域試験プロトコルによって実証されたとおり、経時的に変化しない。
【0066】
さらに、例えばダプソンなどの溶解度が非常に小さい薬物も、本組成物中に溶解可能であり、相溶性である。したがって、広範な溶解度範囲を有する薬物を、本発明の組成物で製剤化することができる。本組成物は、薬物の不安定性の原因となり得る有害な媒体を有しておらず、かつ、水、pH調整、および加熱は、本発明の組成物の製造に一般に必要ではない。本明細書に記載した組成物は、例えばフィルムの形態である場合にPSAの使用を伴う場合、あるいは、貯蔵中に例えばシリコーンエラストマーベースの混合物(例えば、シクロメチコーンおよびジメチコーンのクロスポリマー)を用いる場合に、粘度の増加によって薬物の化学的安定性も増強される。薬物が、ジアルキルスルホコハク酸塩(例えば、DOSS)によって可溶化(あるいはカプセル化)され、一般に、高粘度の媒体中にあり、かつ、実質的に無水であるため、本発明の組成物は、薬物に関して高められた化学的安定性を有する。
【0067】
本発明は例証的方法で記載されており、用いられている用語は、限定のためよりも説明するための性質の用語であることが意図されていることを理解されたい。上述した教示を踏まえて、本発明の多くの変更および変形が可能であり、本発明は具体的に記述したる方法以外の方法によって実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンと第1の溶媒との混合物;
薬物;
前記薬物を可溶化するためのジアルキルスルホコハク酸塩;および
第1の溶媒とは異なる第2の溶媒
を含む組成物。
【請求項2】
前記シリコーンがシリコーンエラストマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の溶媒が、前記シリコーンエラストマーを膨潤させるためのポリシロキサンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサデカメチルへプタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサンと、前記シリコーンエラストマーとが、5:1から9:1の質量比で存在する、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
いずれも前記組成物100質量部に基づいて、前記シリコーンエラストマーが5〜20質量部の量で存在し、第1の溶媒が45〜90質量部の量で存在し、前記薬物が、0.0001〜15質量部の量で存在し、前記ジアルキルスルホコハク酸塩が0.1〜5質量部の量で存在し、かつ、第2の溶媒が0.1〜20質量部の量で存在する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ジアルキルスルホコハク酸塩が、ナトリウムジオクチルスルホスクシネートを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
第2の溶媒がアルコールを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルコールが、アルコール単量体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルコール単量体が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ジアルキルスルホコハク酸塩と、前記アルコールとが、1:1から1:4の質量比で存在する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬物が、テトラサイクリン、リン酸クリンダマイシン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、アルプロスタジル、テルビナフィン、クロベタゾールプロピオネート、ケトコナゾール、プロゲステロン、ナイアシンアミド、カルシポトリオール、レチノイド類、ビタミンD類似体、ビタミンAエステル類、ダプソン、ドキシサイクリン、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記シリコーンエラストマーが、
≡Si‐H含有ポリシロキサン、および
アルファ、オメガ‐ジエン、
の金属触媒の存在下での反応生成物を含む、請求項2〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
いずれも前記組成物100質量部に基づいて、前記シリコーンエラストマーが75〜95重量部の量で存在し、第1の溶媒が1〜50質量部の量で存在し、前記薬物が、0.0001〜15質量部の量で存在し、前記ジアルキルスルホコハク酸塩が0.1〜5質量部の量で存在し、かつ、第2の溶媒が0.1〜20質量部の量で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記混合物が、シクロメチコンとジメチコンとのクロスポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記混合物が、ジメチコンとジメチコンとのクロスポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記シリコーンが、
シラノール末端封鎖ポリジアルキルシロキサン、および
シリケート樹脂
の反応生成物を含むシリコーン接着剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリジアルキルシロキサンが、ポリジメチルシロキサンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
第2の溶媒が、アルカン類、アレーン類、エステル類、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
いずれも前記組成物100質量部に基づいて、前記シリコーン接着剤が40〜80重量部の量で存在し、第1の溶媒が1〜40質量部の量で存在し、前記薬物が、0.0001〜15質量部の量で存在し、前記ジアルキルスルホコハク酸塩が0.1〜5質量部の量で存在し、かつ、第2の溶媒が0.1〜20質量部の量で存在する、請求項16〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
皮膚軟化薬、経皮吸収促進剤、香料、薬物安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線遮断剤、ステロイド、pH調整剤、およびこれらの組合せの群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物を基質に適用する工程を含む、薬物を基質に送達する方法。
【請求項23】
下記式:
SiO(R’SiO)(R”HSiO)SiR
(式中、R、R’、およびR”は、それぞれ独立に、1から6個の炭素原子を有するアルキル基であり、aは0から250であり、bは1から250である)
を有する≡Si‐H含有ポリシロキサンと、
下記式:
CH=CH(CHCH=CH
(式中、xは1から20である)
を有するアルファ、オメガ‐ジエンとの、
金属触媒およびポリシロキサンの存在下での反応生成物;
薬物;
前記薬物を可溶化させるためのナトリウムジオクチルスルホスクシネート;および
前記ナトリウムジオクチルスルホスクシネートを可溶化させるためのアルコール
を含む、組成物。
【請求項24】
前記ポリシロキサンが、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサデカメチルへプタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、およびこれらの組合せの群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
シラノール末端封鎖ポリジアルキルシロキサン、および
シリケート樹脂
の反応生成物を含むシリコーン接着剤;
第1の溶媒;
薬物;および
前記薬物を可溶化するためのナトリウムジオクチルスルホスクシネート
を含む、組成物。
【請求項26】
前記ナトリウムジオクチルスルホスクシネートを可溶化させるための前記第1の溶媒とは異なるアルコールをさらに含む、請求項25に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−533187(P2010−533187A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516068(P2010−516068)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/008545
【国際公開番号】WO2009/009135
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】