説明

薬物溶出医療デバイスの差示的装填

【課題】本発明は、薬物送達医療デバイスを提供する。
【解決手段】本発明により提供される医療デバイスは、中心部分および外周部分を備える基材;ならびに該基材の少なくとも一部分に配置された第一の生物活性剤であって、より高濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分に存在し、そしてより低濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分から該外周部分に向かって外向きに広がっている、第一の生物活性剤、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2010年2月3日に出願された米国仮特許出願番号61/301,007の利益および優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、薬物送達医療デバイスに関する。より特定すると、本開示は、薬物用量濃度勾配が付与された医療移植物および/または外科手術用移植物、ならびにこれらの移植物を形成する方法、および外科手術部位内の組織への調整された局在した薬物送達のためにこれらの移植物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
外科手術用移植物(例えば、薬物溶出デバイス)は、薬物または他の治療薬の送達のためのビヒクルとして働くことが公知である。代表的に、ステントなどのデバイスは、生物学的に活性な剤でコーティングされて、移植部位に対する処置を提供する。有効な治療的量の選択された薬物が、このデバイスから特定の割合で、長期間にわたって放出されることが一般的に望ましい。コーティング媒体からの薬物の放出は、そのコーティング材料の性質およびこのコーティング材料に組み込まれる薬物に依存し得、薬物放出は、このコーティング材料を通しての拡散によって起こるか、またはこのコーティング材料の分解により起こる。
【0004】
さらに、メッシュなどの移植物は一般に、解剖学的要件に基づいて変更され、そして所望のサイズに切断される。しかし、薬物溶出移植物のあらゆる切断または切り取りは、このデバイスの薬物の正味の量に影響を与え得る。
【0005】
従って、制御可能な薬物放出濃度勾配を含む医療デバイスを提供することが有利である。デバイスの全薬物の正味の量に影響を与えることなく切り取られ得るかまたは切断され得るデバイスを提供することもまた有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本開示による医療デバイスは、中心部分および外周部分を備え、この中心部分とこの外周部分との間で、第一の生物活性剤の濃度勾配を有する。ある実施形態において、この勾配は、この中心部分からこの外周部分へと濃度が増加する。他の実施形態において、この勾配は、この医療デバイスのこの外周部分からこの中心部分へと濃度が増加する。
【0007】
本開示の1つの実施形態によれば、医療デバイスは、少なくとも1つの表面を有する基材を備える。この表面は、中心部分および外周部分を有する。第一の生物活性剤が、この表面の少なくとも一部分にわたって配置される。より高濃度のこの第一の生物活性剤が、この基材のこの中心部分に配置され、そしてより低濃度のこの第一の生物活性剤が、この基材のこの中心部分からこの外周部分へと外向きに広がる。
【0008】
この生物活性剤は、この基材の表面のこの外周部分を通って広がり得る。他の実施形態において、この基材は、この中心部分とこの外周部分との間に位置する中間部分を備え、この中間部分に、より低濃度の生物活性剤が配置される。
【0009】
この生物活性剤は、この基材の表面に、実質的に連続的な濃度勾配としてか、あるいは不連続な濃度勾配として、配置され得る。ある実施形態において、この中間部分は、この中心部分から離れる方に別々に延びる複数の連続的セクションを備え、この場合、生物活性剤は、この基材の各連続的セクションを通って、外周部分に向かって濃度が低下する。これらの連続的セクションは、ある実施形態において、この基材の中心部分に対して同心状である環状リングであり得る。他の実施形態において、これらの連続的セクションは、この基材の中心部分と長手軸方向に整列する帯であり得る。
【0010】
この生物活性剤は、例えば、医療デバイスを形成する材料内に配置され得るか、またはこれらの生物活性剤は、コーティング組成物、ポリマーフィルム、発泡体内に配置され得るか、または流動性状態でポリマー材料内にカプセル化され得る。ある実施形態において、この基材の中間部分は、流動性状態の生物活性剤を含む複数のポリマーカプセルを備える。
【0011】
いくつかの実施形態において、この基材は、この基材の高さ方向に、生物活性剤の濃度勾配を含み得る。例えば、この生物活性剤は、この基材の細孔内に配置され得、これによって、高さ方向に濃度勾配を生じ得る。
【0012】
代替の実施形態において、この基材は、より低濃度の第一の生物活性剤をこの基材の中心部分に含み得、一方で、より高濃度の第二の生物活性剤は、この基材の中心部分から外周部分に向かって外向きに広がる。この第一の生物活性剤は、この第二の生物活性剤とは異なり得る。さらに、このより低濃度は、このより高濃度と比較して治療的により有効であり得る。
【0013】
第一の生物活性剤および第二の生物活性剤は、カプサイシン、ブピバカインまたは塩酸ブピバカインを含有し得る。
【0014】
この医療デバイスはまた、生物活性剤の可視化のための印を、その基材上に備え得る。
【0015】
(発明の要旨)
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
中心部分および外周部分を備える基材;ならびに
該基材の少なくとも一部分に配置された第一の生物活性剤であって、より高濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分に存在し、そしてより低濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分から該外周部分に向かって外向きに広がっている、第一の生物活性剤、
を備える、医療デバイス。
(項目2)
上記第一の生物活性剤が上記基材の上記外周部分を通って広がっている、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目3)
上記第一の生物活性剤が、実質的に連続的な濃度勾配として上記基材に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目4)
上記第一の生物活性剤が、不連続な濃度勾配として上記基材に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目5)
上記より低濃度の第一の生物活性剤が、上記中心部分と上記外周部分との間に位置する上記基材の中間部分に位置している、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目6)
上記中間部分が、上記中心部分から離れる方向に別々に延びる複数の連続的セクションを備え、上記第一の生物活性剤は、各連続的セクションを通って上記基材の上記外周部分に向かって濃度が低下する、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目7)
上記セクションが、上記基材の上記中心部分に対して同心状である環状リングである、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目8)
上記セクションが、上記基材の上記中心部分と長手軸方向に整列した帯である、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目9)
上記第一の生物活性剤がコーティング組成物中に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目10)
上記第一の生物活性剤がポリマーフィルム内に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目11)
上記第一の生物活性剤が発泡体内に配置されている、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目12)
上記第一の生物活性剤が流動性状態でポリマー材料内にカプセル化されている、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目13)
上記基材の上記中間部分が、流動性状態の上記第一の活性剤を収容する複数のポリマーカプセルを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目14)
上記基材が、該基材の高さ方向に上記第一の生物活性剤の濃度勾配を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目15)
上記第一の生物活性剤が、上記基材の細孔内に配置され、これによって、該基材の高さ方向に濃度勾配を生じる、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目16)
上記第一の生物活性剤の可視化のための印を上記基材上にさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目17)
上記第一の生物活性剤が、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、抗不整脈薬、抗うつ薬、血管拡張薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗精神病薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、酵素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目18)
上記第一の生物活性剤が、カプサイシン、ブピバカインおよび塩酸ブピバカインからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目19)
上記第一の生物活性剤が、約1秒〜約21日の範囲の期間にわたって上記基材から放出される、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目20)
上記第一の生物活性剤が、約1分〜約14日の範囲の期間にわたって上記基材から放出される、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目21)
少なくとも1種のさらなる生物活性剤をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目22)
中心部分および外周部分を備えるメッシュを備える医療デバイスであって、該メッシュは、該中心部分と該外周部分との間に第一の生物活性剤の濃度勾配コーティングを有する、医療デバイス。
(項目23)
上記勾配コーティングが、上記中心部分から上記外周部分に向かって増加する、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目24)
上記勾配コーティングが、上記外周部分から上記中心部分に向かって増加する、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目25)
中心部分および外周部分を備える基材;ならびに
該基材の少なくとも一部分に配置された、第一の生物活性剤および第二の生物活性剤であって、より低濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分に存在し、そしてより高濃度の該第二の生物活性剤が、該基材の該中心部分から該外周部分に向かって外向きに広がっている、第一の生物活性剤および第二の生物活性剤、
を備える、医療デバイス。
(項目26)
上記第一の生物活性剤が上記第二の生物活性剤と異なる、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目27)
上記より低濃度が上記より高濃度と比較して治療的により有効である、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目28)
上記第一の生物活性剤または上記第二の生物活性剤が、カプサイシン、ブピバカイン、および塩酸ブピバカインからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の医療デバイス。
(項目29)
中心部分および外周部分を備える基材を提供する工程;
高濃度の第一の生物活性剤を該基材の該中心部分に付ける工程;ならびに
より低濃度の該第一の生物活性剤を、該基材の該中心部分から該外周部分に向けて外向きに広げて付ける工程、
を包含する、メッシュを形成する方法。
【0016】
(摘要)
医療デバイスは、少なくとも1つの表面を有する基材を備える。この表面は、中心部分および外周部分を有する。少なくとも1種の生物活性剤が、この表面の少なくとも一部分にわたって配置される。この医療デバイスは、この中心部分とこの外周部分との間に、少なくとも1種の生物活性剤の濃度勾配を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の実施形態を図示する。これらの図面は、上に与えられた本開示の一般的な説明、および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒になって、本開示の原理を説明する役に立つ。
【図1】図1は、本開示の1つの実施形態に従う、医療デバイスの表面にわたって生物活性剤の実質的に連続的な勾配を有する医療デバイスを概略的に示す。
【図2】図2は、本開示の別の実施形態に従う、医療デバイスの表面の一部分にわたって生物活性剤の実質的に連続的な勾配を有する医療デバイスを概略的に示す。
【図3】図3は、本開示の1つの実施形態に従う、生物活性剤の不連続的な勾配を有する医療デバイスを概略的に示す。
【図4】図4は、本開示の別の実施形態に従う、生物活性剤の不連続的な勾配を有する医療デバイスを概略的に示す。
【図5】図5は、本開示のなお別の実施形態に従う、生物活性剤の不連続的な勾配を有する医療デバイスを概略的に示す。
【図6】図6は、本開示の1つの実施形態に従う、生物活性剤の勾配を高さ方向に有する医療デバイスを概略的に示す。
【図7】図7は、本開示のなお別の実施形態に従う、生物活性剤の不連続な勾配を有する医療デバイスを概略的に示す。
【図8】図8は、本開示の1つの実施形態に従う、生物活性剤の実質的に連続的な勾配、ならびに方位線および印を有する、医療デバイスを概略的に示す。
【図9】図9は、本開示の別の実施形態に従う、生物活性剤の不連続的な勾配、ならびに方位線および印を有する、医療デバイスを概略的に示す。
【図10】図10は、本開示の代替の実施形態に従う、生物活性剤の濃度勾配を有する、医療デバイスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本開示に従う医療デバイスは、基材を備え、この基材の表面または内部に、組織の治療処置のために望ましい生物活性剤が塗布され得るか、またはその内部にかもしくはそれを通して他の様式で装填され得る。この医療デバイスは、任意の外科手術用移植物(例えば、メッシュ、(組織)足場、移植片、ステント、縫合糸、パッチ、三角布、バットレス、外科用綿撒糸、軟部組織修復デバイス、および一般に、任意の機械的移植物、電気的移植物またはデジタル移植物)であり得る。他のいくつかの非限定的な例としては、医療手順/外科手術手順において使用され得る、軟部組織修復デバイス、外科手術用プロテーゼ、および人工器官;または局所的に適用される医療製品(例えば、創傷包帯、被膜、テープ、ガーゼなど)が挙げられる。
【0019】
ある実施形態において、この医療デバイスは、その表面の少なくとも一部分に細孔または開口部を備え得、これらの細孔または開口部内に、生物活性剤が配置され得る。これらの細孔は、表面特徴として存在してもバルク材料特性として存在してもよく、これらの細孔は、部分的にかまたは完全に、この医療デバイスに貫入し、そしてこの医療デバイスの部分にわたって均一に分布し得る。この医療デバイスは、連続気泡構造を有し得、この構造において、これらの細孔は互いに接続されて、相互接続された網目構造を形成する。逆に、この医療デバイスは、不連続気泡であり得、この構造において、これらの細孔は相互接続されていない。本開示を読む当業者は、他の細孔分布パターンおよび構成を想定し得る。これらの細孔は、当業者の知識の範囲内である任意の方法(凍結乾燥またはフリーズドライ、焼結、塩の浸出、糖結晶の浸出またはデンプン結晶の浸出が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して作製され得る。あるいは、開口部は、フィラメント性医療デバイス(例えば、縫合糸およびメッシュ)に、これらのフィラメント間に形成された空隙を介して形成され得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示の医療デバイスは、少なくとも1種の生物活性剤を保有し、この生物活性剤は、この医療デバイスの少なくとも一部分に配置される。ある実施形態において、この生物活性剤は、単一のコーティングまたは複数のコーティングの形態であり得る。これらのコーティングは、もちろん、連続的であっても不連続であってもよい。従って、この生物活性剤は、本開示の医療デバイスにコーティングされるか、または含浸されて、この医療デバイスに特定の生物学的特性または治療特性を提供し得る。用語「生物活性剤」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質の混合物を包含する。従って、生物活性剤は、それ自体で薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素)。生物活性剤は、治療効果もしくは予防効果を提供する任意の薬剤;診断助剤として使用され得る化合物;組織成長、細胞増殖および/もしくは細胞分化に影響を与えるかもしくは関与する化合物;生物学的作用(例えば、免疫応答)を起こし得るかもしくは防止し得る化合物;または1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る化合物であり得る。さらに、組織修復もしくは組織一体化を増強し得、敗血症の危険性を制限し得、医療デバイスの機械的特性を調節し得、そして/または薬学的剤を送達し得る、任意の剤が、このデバイスに組み込まれ得る。単一の生物活性剤が利用され得るか、または代替の実施形態において、種々の生物活性剤が、本開示の医療デバイスに組み込まれ得る。
【0021】
ある実施形態において、第一の生物活性剤は、医療デバイスの中心部分からこの医療デバイスの外周部分に向かって外向きに広がる濃度勾配を生じる様式で、この医療デバイスの少なくとも一部分に配置され得る。任意の数のさらなる生物活性剤もまた、この医療デバイスに配置され得ることが想定される。これらのさらなる生物活性剤は、任意の濃度で、この医療デバイスの任意の位置に配置され得ることが、さらに想定される。
【0022】
本開示に従って利用され得る生物活性剤のクラスの例としては、例えば、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬(例えば、局所、局部、および全身)、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、ホスホリルコリン、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、および酵素が挙げられる。生物活性剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0023】
生物活性剤として含有され得る他の生物活性剤としては、避妊薬;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗がん剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;化学療法剤;エストロゲン;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0024】
医療デバイスに含有され得る適切な生物活性剤の他の例としては、例えば、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにアナログ、ムテイン、ならびにその活性フラグメント;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(例えば、β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インスリン;抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子;血液タンパク質(例えば、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン);性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNAおよびRNAi);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0025】
ある実施形態において、生物活性剤は、以下の薬物(薬物の組み合わせならびに薬物の代替の形態(例えば、代替の塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、プロドラッグおよび水和物)を含む)のうちの少なくとも1種を含み得る。これらのクラス内の具体的な剤は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、その剤が利用されるデバイスの型および処置される組織などの要因に依存する。従って、例えば、局所麻酔剤(例えば、ブピバカイン(MarcainTM、MarcaineTM、SensorcaineTMおよびVivacaineTMのもとで、全てAstraZenecaにより販売され得る)、レボブピバカイン(ChirocaineTMのもとでAstraZenecaにより販売され得る)、ロピバカイン、リドカインなど)は、単独または組み合わせで、疼痛の処置のためまたは麻酔の目的で使用され得る。ある実施形態において、抗菌剤(例えば、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン;テトラサイクリン;アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン);リファンピシン;バシトラシン;ネオマイシン;クロラムフェニコール;ミコナゾール;キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン);ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil));ノンオキシノール9;フシジン酸;ならびにセファロスポリン)もまた、単独または組み合わせで、細菌増殖の処置のために使用され得る。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)、ならびに抗菌多糖類(例えば、フカンおよびその誘導体)が、微生物を殺傷するため、または微生物増殖を防止するために、本開示に生物活性剤として含有され得る。さらに、接着防止剤は、コーティングされた医療デバイスと周囲組織との間で接着が形成されることを防止するために使用され得る。これらの剤のいくつかの例としては、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、アルギネート、コラーゲン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、スチレンスルホン酸、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート(pHEMA)およびリン脂質ビニル;アクリルポリマー(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、およびポリアクリルアミド)、ポリプロピレンオキシド、ホスホリルコリン官能性アクリレート、ホスホリルコリン官能性メタクリレート;ならびにこれらのホモポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
生物活性剤は、医療デバイスの内部または表面に、このデバイスの表面またはその一部分を種々の様式でコーティングすることにより、組み込まれ得る。例えば、これらの生物活性剤は、ポリマーコーティング、乾燥コーティング、フリーズドライ、およびイオン結合、共有結合または親和性結合により、その表面に付けられ得る。コーティングは、当業者に公知である任意の適切な方法を利用して、この医療デバイスに塗布され得る。いくつかの例としては、スプレー、浸漬、層状化、キャスティング、カレンダーがけなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、1種以上の生物活性剤は、適切な生体適合性溶媒中に分散した組成物またはコーティングとして、医療デバイスに塗布され得る。特定の生物活性剤のために適切な溶媒は、当業者の知識の範囲内である。1つの実施形態において、ブピバカインなどの生物活性剤は、塩素化溶媒(例えば、塩化メチレン)と組み合わせられ得る。他の実施形態において、1種以上の生物活性剤は、ポリマーの分解中に生物活性剤を放出する生分解性ポリマーと組み合わせられ得る。これらの生物活性剤は、ポリマー材料と結合しない状態で混合され得るか、または任意の適切な化学結合を介してポリマーに繋留され得る。ある実施形態において、この治療剤は、以下の薬物(薬物の組み合わせならびに薬物の代替の形態(例えば、代替の塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、プロドラッグおよび水和物)を含む)のうちの少なくとも1つを含み得る。なお他の実施形態において、1種以上の生物活性剤は、流動性状態(すなわち、非固体状態)でポリマー材料内にカプセル化され得る。このポリマー材料は、生体内で迅速に腐食し得るか、または他の様式で浸透可能であり、周囲組織内への生物活性剤の迅速な放出を提供し得る。
【0028】
用語「生分解性」は、本明細書中で使用される場合、生体吸収性材料と生体再吸収性材料との両方を包含するように定義される。生分解性とは、分解生成物が身体により排出可能または吸収可能であるように、その材料が身体条件下で分解するかもしくは構造的一体性を失うこと(例えば、酵素分解もしくは加水分解)、または身体内の生理学的条件下で(物理的もしくは化学的に)分解することを意味する。このような材料としては、天然材料、合成材料、生体吸収性材料、および/または非生体吸収性材料、ならびにこれらの組み合わせが含まれることが理解されるべきである。
【0029】
生物活性剤と共に使用され得る代表的な天然生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ペプチド(ラミニンおよびフィブロネクチン(RGD)の配列が挙げられる);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、セルロース、フカン、グリコサミノグリカン、およびこれらの化学的誘導体(化学基(例えば、アルキル、アルキレン)の置換および/または付加、ヒドロキシル化、酸化、ならびに当業者により慣用的になされる他の修飾));ガット;ならびにこれらのコポリマーおよびブレンド(単独または合成ポリマーとの組み合わせ)が挙げられる。コラーゲンとは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0030】
合成により修飾された天然ポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサン)が挙げられる。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。
【0031】
代表的な合成生分解性ポリマーとしては、ラクトンモノマー(例えば、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、ε−カプロラクトン、バレロラクトン、およびδ−バレロラクトン)から調製されたポリヒドロキシ酸、ならびにカーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノンおよびp−ジオキサノン)、ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。これらから形成されるポリマーとしては、ポリ(乳酸);ポリ(グリコール酸);ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(ジオキサノン);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ(ラクチド−co−(ε−カプロラクトン));ポリ(グリコリド−co−(ε−カプロラクトン));ポリ(乳酸−co−グリコール酸);ポリカーボネート;ポリ(偽アミノ酸);ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート);ポリアルキレンオキサレート;ポリオキサエステル;ポリ酸無水物;ポリオルトエステル;ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせが挙げられる。
【0032】
生分解性材料の他の非限定的な例としては、脂肪族ポリエステル;ポリエチレングリコール;グリセロール;コポリ(エーテル−エステル);ならびにこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、および組み合わせが挙げられる。
【0033】
生体で迅速に腐食可能なポリマー(例えば、ポリマーの表面が腐食する際に外部表面に露出するカルボン酸基を有する、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ酸無水物、およびポリオルトエステル)もまた使用され得る。
【0034】
コーティングが生分解性ポリマー材料を含有する場合、この生物活性剤は、移植後約1秒〜約21日の範囲の期間内で身体内に放出され得る。1つの実施形態において、この剤は、移植後約1分〜約14日以内で放出され得る。
【0035】
コーティングからの生物活性剤の放出の割合は、種々の方法により制御され得る。いくつかの例としては、コーティングの表面からの生物活性剤の深さ;生物活性剤のサイズ;生物活性剤の親水性もしくは親油性;生物活性剤の分子構造;薬剤/コーティングのpHおよび/もしくは電離;ならびに生物活性剤、コーティング組成物、および/もしくは医療デバイス材料の間の物理的相互作用および物理化学的相互作用の強度が挙げられるが、これらに限定されない。これらの要因のうちのいくつかを適切に制御することによって、本開示の医療デバイスからの生物活性剤の制御された放出が達成され得る。
【0036】
本開示の実施形態が、ここで添付の図を参照しながら以下に説明される。これらの添付の図は、単なる例であり、本開示の範囲を限定することは意図されない。
【0037】
ここで図面を参照すると、図面において、同じ構成要素は数枚の図全体にわたって同じ参照番号により表されており、図1は、本開示の1つの実施形態による、メッシュ10の形態の医療デバイスを図示する。メッシュ10は、複数の繊維(図示せず)の形態であり得、長手軸方向長さ「L」および横方向の横断幅「W」を規定する。メッシュ10は、メッシュ10の表面を覆ってコーティングされた生物活性剤12を含む。メッシュ10の中心部分14は、最高濃度の生物活性剤12を含み、この濃度は、中間部分18を通ってメッシュ10の外周部分16へと、次第に低下する(すなわち、次第に少なくなる)。従って、生物活性剤12は、メッシュ10の中心部分14におけるより高濃度から、メッシュ10の外周部分16におけるより低濃度まで、実質的に連続的な勾配でメッシュ10に配置される。
【0038】
特定の実施形態において、メッシュ10の中心部分14から外周部分16への生物活性剤濃度の比は、重量%に基づいて少なくとも1.1:1である。ある実施形態において、この比は約20:1〜約2:1であり得、そしていくつかの実施形態において、約10:1〜約5:1であり得る。
【0039】
本開示のメッシュは、生物活性剤の特異的送達を可能にし、一方で依然として、この生物活性剤用量の大部分をこのデバイスの中心部分に維持することによって、患者の解剖学的要件に基づいてこのメッシュのサイズを変更する能力を外科医に提供する。この外科医はさらに、全薬物の正味の量に影響を与えることなく、このメッシュの縁部または外周部分を切り取り得る。さらに、生物活性剤用量の大部分がこのデバイスの中心部分に存在するので、種々の異なるメッシュが、同じ薬物充填仕様を使用して製造され得る。
【0040】
あるいは、メッシュの表面の選択された部分が薬物を装填され得、これによって、例えば図2に図示されるように、薬物装填(生物活性剤)がないメッシュの領域を提供し得る。メッシュ20は、中心部分24、中間部分28、および外周部分26を備える。中心部分24は、中間部分28より高濃度の生物活性剤22を有し、そして外周部分26は、いずれの生物活性剤22でもコーティングされていない。この構成は、薬物の正味の量のいずれにも影響を与えることなく、外科医がメッシュ20を切断することを潜在的に可能にする。
【0041】
従って、このメッシュの薬物を装填される部分、およびその周囲の低用量領域または非コーティング領域は、多数の要因(例えば、装填されるべき薬物の量、メッシュのサイズ、および移植前に外科医により除去され得るメッシュの量など)に依存して、サイズまたはパターンが変動し得る。
【0042】
生物活性剤はまた、図3および図4に図示されるように、同心状に、より高濃度からより低濃度への不連続な勾配で配置され得る。図3に示されるように、生物活性剤32は、メッシュ30の中心部分34の辺りのより高濃度、およびこの中心部分34から離れる方に延びる中間部分38の所定のセクション38aにおけるより低濃度を含む、濃度勾配を形成するように、メッシュ30に分布する。中心部分34および中間部分38は、生物活性剤を含まないメッシュ30の部分により分割される。生物活性剤32は、中心部分34に集中し、そして中間部分38のセクション38aにおいて低下した濃度を有し、その結果、勾配分布は段階的に低下する。例えば、中心部分34は、150mgのブピバカインを含み得、一方で、セクション38aは、75mgのブピバカインを含むように処方され得る。
【0043】
別の非限定的な例において、中心部分34の面積とセクション38aの面積との両方が、25cmであり得る。中心部分34は、500mgの生物活性剤を含み得、一方で、セクション38aは、350mgの生物活性剤を含む。表面積に対して修正すると、中心部分34についての正味の量は、500mg/25cm、すなわち、20mg/cmである。同様に、セクション38aについての正味の量は、350mg/25cm、すなわち、14mg/cmである。これらの正味の量は、非限定的であり、例示的であることが理解されるべきである。
【0044】
図3と同様に、図4は、メッシュ40の中心部分44から、中間部分48の連続的セクション48a、48b、48c、および48dを通り、外周部分46に向かって低下する、同心状に広がる不連続な濃度勾配を図示する。この実施形態において、中間部分38のセクション38aならびに中間部分48の48a、48b、48c、および48dは、中心部分34および44の周りに延びる環状リングである。生物活性剤は、不連続なリングおよび/またはメッシュのセクションにおいて、このメッシュに組み込まれ得ること、ならびにさらに、このメッシュのある部分は、少なくとも1種の生物活性剤を含んでも含まなくてもよいことが理解されるべきである。少なくとも1種の生物活性剤を含むセクションは、当業者により想定されるように、中間部分を通って延びる任意の構成を有し得ることがさらに理解されるべきである。
【0045】
各生物活性剤含有部分(すなわち、中心部分および中間部分)は、異なる型の生物活性剤を、様々な組み合わせおよび量で含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、図4の中心部分44ならびに中間部分48の連続的セクション48a、48b、48c、および48dは、次第に減少する量の単一または複数の生物活性剤を、均一に含み得る。他の実施形態において、中心部分44は、高濃度の1種以上の生物活性剤(この濃度は、中間部分48の選択された数のセクション(例えば、セクション48c)を通して低下する)、および1種以上の他の生物活性剤(後者の生物活性剤は、中間部分48のみを通して(例えば、セクション48aから48dを通して)濃度が低下する)を含み得る。なお他の実施形態において、これらの生物活性剤は、生物活性剤含有部分の数個のセグメントのみを通して配置され得る(例えば、1種の生物活性剤が、このメッシュの片方の半分に配置され得、そして第二の生物活性剤が、このメッシュの残りの半分に配置される)。生物活性剤の種々の組み合わせおよびその医療デバイスへの配置が、本開示に従って利用され得ることが理解されるべきである。
【0046】
さらに、メッシュの任意の部分が、任意の数、任意のサイズおよび任意の形状の勾配コーティングを含み得る。図5に図示されるように、生物活性剤52は、生物活性剤の濃度勾配がメッシュ50の中心部分54から外周部分56に向かって次第に少なくなる限り、メッシュ50に任意の形状で塗布され得る。メッシュ50は、最高濃度の生物活性剤52を有する中心部分54、ならびにメッシュ50の長さ「L」に沿って長手軸方向に延びて中心部分54から外向きに横方向に延びる、帯の形態の連続的セクション58a、58b、58c、および58dを備える。各セクション58a、58b、58c、および58dは、これらのセクションが外周部分56に向かって延びるにつれて、連続的に低下する濃度の生物活性剤52を含む。
【0047】
生物活性剤は、上記のように、コーティング組成物、フィルムまたは発泡体として、メッシュに付けられ得る。例えば、ある実施形態において、生物活性剤および適切な溶媒を含有する組成物が、連続的なコーティングとしてこのメッシュに噴霧されて、このメッシュの表面の一部分に沿って濃度勾配を形成し得る。他の実施形態において、生物活性剤の微小球が、ポリマー材料内に包埋され得、そして硬化させられてフィルムを形成し得、このフィルムが、このメッシュに付けられ得る。なお他の実施形態において、生物活性剤は、凍結乾燥された発泡体内に含まれ得るかまたは凍結乾燥された発泡体をコーティングされ得、この凍結乾燥された発泡体が、このメッシュに付けられ得る。なお代替の実施形態において、生物活性剤は、メッシュの繊維またはフィラメント内に、例えば、適切な生物活性剤をポリマー樹脂に配合することによって、含まれ得る。
【0048】
図6に図示されるように、このメッシュはまた、メッシュ60の高さ方向「H」に濃度勾配を有する生物活性剤62を含み得る。図示されるように、生物活性剤62を含むフィルム61が、メッシュ60を覆って形成される。フィルム61の付着表面「a」は、高濃度の生物活性剤62を含み、この濃度は、自由表面「s」に向かって低下する。他の実施形態において、フィルム61の自由表面「s」が高濃度の生物活性剤62を有し得、この濃度は、付着表面「a」に向かって低下する。なお他の実施形態において、フィルム61は、中心において高い濃度を有し得、この濃度は、自由表面「s」と付着表面「a」との両方に向かって低下する。あるいは、医療デバイス自体に形成された細孔または開口部が、生物活性剤の配置のために利用され得、従って、高さ方向に濃度勾配を生じる。
【0049】
ここで図7を参照すると、差示的薬物装填の別の形態が達成され得、この場合、生物活性剤72は、流動性状態(すなわち、非固体状態)でポリマー材料内にカプセル化され得、そしてメッシュ70に付けられ得る。メッシュ70は、上記のように配置された生物活性剤の乾燥コーティング、フィルム、または発泡体を含む中心部分74を備える。メッシュ70の中間部分78は、生物活性剤72を含むポリマーカプセル79の不連続なベルトである。ポリマーカプセル79は、ポリマー材料のポケットまたはパッチであり得、溶液、ゲル、粒子、または発泡体の形態の生物活性剤のレザバを含む。このポリマーのポケットまたはパッチは、迅速な分解および生物活性剤の放出のために、生体内で迅速に腐食されるポリマーから構成され得るか、または生物活性剤の放出のために、外力によって破壊可能であり得る。
【0050】
ある実施形態において、ポリマーカプセル79は、外科医がメッシュを見ること、およびメッシュを固定するためにファスナー(例えば、タックまたは縫合糸)を配置することを補助し得る。ある実施形態において、ポリマーカプセル79は、外科手術用ファスナーで穿刺され、これによって、生物活性剤を周囲組織上に迅速に放出し、即時の治療的軽減を提供する。例えば、ポリマーカプセル79は、麻酔薬で満たされて、メッシュの固定の際の疼痛の制御を補助し得る。これらの麻酔薬は、防腐剤または抗生物質と組み合わせて使用されて、取り付け後感染の防止/処置を補助し得るか、抗炎症薬と組み合わせて使用されて、取り付け後腫脹の防止/処置を補助し得るか、または当業者の知識の範囲内であるような他の医薬と組み合わせて使用され得る。従って、ポリマーカプセル79は、外科医が外科手術部位内でこのメッシュをより容易に配向させること、このメッシュを組織に適切に固定すること、およびその部位への即時の投薬を提供することによりメッシュの固定に付随する疼痛または不快さを減少させることを可能にする。
【0051】
生物活性剤を含むか、または生物活性剤でコーティングされている、このメッシュの部分は、そのメッシュ自体に明白に印を付けられて、外科医により見えるようにされ得る。これらの印は、可視光、赤外光、紫外光、および/または他の波長の光のもとで可視化され得るインクを利用することにより、付けられ得る。
【0052】
これらのメッシュはまた、方位線で印を付けられ得、外科医が、メッシュの中心と薬物装填の位置との両方に対して、メッシュを配向させることを容易にし得る。これらの方位線は、実線もしくは点線/破線の、直線、曲線、または他の描かれた指標であり得る。これらの印は、本質的に直線であっても同心状であってもよく、距離の尺度(例えば、1/8インチ、cm、もしくはmm)、位置の尺度(例えば、東西南北)、および/または配置の印(例えば、矢印、文)により識別され得る。方位線83、93および印85、95を有するメッシュ80および90のいくつかの例示的な例が、それぞれ図8および図9に図示されている。
【0053】
本開示による医療デバイスをコーティングするために使用される生物活性剤の勾配は、変動し得ることが理解されるべきである。例えば、図10に図示されるように、濃度勾配は、メッシュの外周部分116から中心部分114に向かって増加し得る。1つの実施形態において、中心部分114に配置された、より低濃度の第一の生物活性剤は、外周部分116に配置された、より高濃度の第二の生物活性剤と比較して、治療的により効果的であり得る。他の実施形態において、この外周部分は、中心部分114に配置された第二の生物活性剤とは異なる第一の生物活性剤を含み得る。濃度勾配はまた、1つの側から別の側(例えば、左から右、上から下、角から角など)へと、メッシュの表面を横切って増加し得る。種々の濃度の生物活性剤が、メッシュの任意の部分に沿って配置され得る。他のバリエーションもまた、当業者の知識の範囲内である。
【0054】
本明細書中に記載される医療デバイスは、複数の濃度勾配をさらに含み得ることが想定される。このような実施形態において、単一の生物活性剤が、デバイスの表面を横切るその剤の濃度が1回より多く増減する様式で、この医療デバイスに配置され得る。あるいは、いくつかの実施形態において、複数の生物活性剤が移植物を横切って配置され得、この場合、各生物活性剤は、異なる濃度勾配を呈する。例えば、第一の生物活性剤は、連続的な濃度勾配を生じるように配置され得、そして第二の生物活性剤は、不連続な濃度勾配を生じるように配置され得る。
【0055】
本開示の数個の実施形態が記載されたが、本開示はこれらの実施形態に限定されることは意図されない。なぜなら、本開示は、当該分野が許容すると同程度まで範囲が広いこと、および本明細書も同様に読まれることが意図されるからである。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、本開示の実施形態の例示であると解釈されるべきである。医療デバイス、生物活性剤の濃度勾配、ならびにコーティングの方法およびパターンの、種々の改変およびバリエーションが、上記詳細な説明から当業者に明らかになる。このような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部分および外周部分を備える基材;ならびに
該基材の少なくとも一部分に配置された第一の生物活性剤であって、より高濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分に存在し、そしてより低濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分から該外周部分に向かって外向きに広がっている、第一の生物活性剤、
を備える、医療デバイス。
【請求項2】
前記第一の生物活性剤が前記基材の前記外周部分を通って広がっている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記第一の生物活性剤が、実質的に連続的な濃度勾配として前記基材に配置されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記第一の生物活性剤が、不連続な濃度勾配として前記基材に配置されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記より低濃度の第一の生物活性剤が、前記中心部分と前記外周部分との間に位置する前記基材の中間部分に位置している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記中間部分が、前記中心部分から離れる方向に別々に延びる複数の連続的セクションを備え、前記第一の生物活性剤は、各連続的セクションを通って前記基材の前記外周部分に向かって濃度が低下する、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記セクションが、前記基材の前記中心部分に対して同心状である環状リングである、請求項6に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記セクションが、前記基材の前記中心部分と長手軸方向に整列した帯である、請求項6に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記第一の生物活性剤がコーティング組成物中に配置されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記第一の生物活性剤がポリマーフィルム内に配置されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記第一の生物活性剤が発泡体内に配置されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記第一の生物活性剤が流動性状態でポリマー材料内にカプセル化されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記基材の前記中間部分が、流動性状態の前記第一の活性剤を収容する複数のポリマーカプセルを備える、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記基材が、該基材の高さ方向に前記第一の生物活性剤の濃度勾配を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記第一の生物活性剤が、前記基材の細孔内に配置され、これによって、該基材の高さ方向に濃度勾配を生じる、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記第一の生物活性剤の可視化のための印を前記基材上にさらに備える、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記第一の生物活性剤が、接着防止剤、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、抗不整脈薬、抗うつ薬、血管拡張薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗精神病薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性薬剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、血小板活性化薬物、凝固因子、酵素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記第一の生物活性剤が、カプサイシン、ブピバカインおよび塩酸ブピバカインからなる群より選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記第一の生物活性剤が、約1秒〜約21日の範囲の期間にわたって前記基材から放出される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記第一の生物活性剤が、約1分〜約14日の範囲の期間にわたって前記基材から放出される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項21】
少なくとも1種のさらなる生物活性剤をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項22】
中心部分および外周部分を備えるメッシュを備える医療デバイスであって、該メッシュは、該中心部分と該外周部分との間に第一の生物活性剤の濃度勾配コーティングを有する、医療デバイス。
【請求項23】
前記勾配コーティングが、前記中心部分から前記外周部分に向かって増加する、請求項22に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記勾配コーティングが、前記外周部分から前記中心部分に向かって増加する、請求項22に記載の医療デバイス。
【請求項25】
中心部分および外周部分を備える基材;ならびに
該基材の少なくとも一部分に配置された、第一の生物活性剤および第二の生物活性剤であって、より低濃度の該第一の生物活性剤が、該基材の該中心部分に存在し、そしてより高濃度の該第二の生物活性剤が、該基材の該中心部分から該外周部分に向かって外向きに広がっている、第一の生物活性剤および第二の生物活性剤、
を備える、医療デバイス。
【請求項26】
前記第一の生物活性剤が前記第二の生物活性剤と異なる、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項27】
前記より低濃度が前記より高濃度と比較して治療的により有効である、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項28】
前記第一の生物活性剤または前記第二の生物活性剤が、カプサイシン、ブピバカイン、および塩酸ブピバカインからなる群より選択される、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項29】
中心部分および外周部分を備える基材を提供する工程;
高濃度の第一の生物活性剤を該基材の該中心部分に付ける工程;ならびに
より低濃度の該第一の生物活性剤を、該基材の該中心部分から該外周部分に向けて外向きに広げて付ける工程、
を包含する、メッシュを形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−156355(P2011−156355A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−3462(P2011−3462)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】