説明

薬物転用防止用セラミック構造体

本発明は、転用を防止したまま、薬物の供給を可能にする組成物に関する。この組成物は、薬物とセラミック構造体の組み合わせである。いかなる適当な薬物を使用しても良いが、通常、薬物としては、オピオイド作動薬が使用される。セラミック構造体は、通常、金属酸化物であり、しばしば、ほぼ球形で中心部が中空になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に薬物転用の防止に関する。特に、本発明は、転用を防止した状態で薬物の供給を可能にする、薬物/セラミック構造体の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物転用とは、薬物を処方されていない人によって処方された医薬の使用を意味する。米国では、そのような使用は、薬物乱用のほぼ30%を占める。コカイン中毒に対する挑戦が難しいことを示している。乱用者のほとんどは、過去に薬物乱用の履歴のない人々であり、合法的な医療目的で処方された薬物を用いて中毒者となった人々である。
【0003】
処方された医薬の乱用者が、薬物を転用する際に重視する2つのパラメータは、急速な投与のための投与量および投与形態である。転用者は、しばしば、薬物を取得した後、これを分解し、鼻腔内に供給する。別の投与形態には、水またはアルコール中に薬物を溶解した後、これを整脈内に供給することが含まれる。急速な薬物の導入のためのいずれかの供給態様によって、血流に薬物が提供される。
【0004】
薬物転用を防止するため、いくつかの方法が開発されている。そのような方法の一つには、高分子マトリクスに対象薬物を取り込む方法がある。このアイデアは、高分子マトリクスに薬物を吸収させることを利用するものであり、溶媒への摂取の際に、ゆっくりとした放出しか生じない。換言すれば、抽出処理プロセスを利用しても、人は、直接取り込まれた薬物に接することはできない。しかしながら、この方法は、転用者が、高分子マトリクスは簡単に壊すことができ、吸収した薬物に容易に接することが可能になることに気づいた場合、成立しなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、薬物転用を防止し、抑制するための新しい方法に対するニーズがある。本発明は、そのような手法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、転用を防止した状態で、薬物の供給を可能にする、薬物/セラミック構造体の組み合わせに関する。セラミック構造体は、通常、金属酸化物を含み、酸化物は、チタン、ジルコニウム、スカンジウム、セリウムまたはイットリウムである。いかなる適当な薬物を使用しても良いが、オピオイド作動薬、特にオキシコドンが好ましい。
【0007】
本発明のある態様では、セラミック構造体と薬物を有する組成物が提供される。セラミック構造体は、中空で、ほぼ球形である。薬物は、セラミック構造体の中空部分にコーティングされ、構造の平均径は、10nmから100μmの範囲である。平均粒子径は、以下の範囲である:10nmから100nm、101nmから200nm、201nmから300nm、301nmから400nm、401nmから500nm、501nmから600nm、601nmから700nm、701nmから800nm、801nmから900nm、901nmから1μm、1μmから10μm、11μmから25μm、26μmから100μm。粒子径の変動は、通常、平均直径の10.0%未満であり、平均直径の7.5%未満であることが好ましく、平均直径の5.0%未満であることがより好ましい。
【0008】
セラミック構造体は、通常、チタン酸化物またはジルコニウム酸化物を含む。薬物は、通常、オキシコドン、コデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、メタンドンおよびモルヒネから選択されたオピオイド作動薬である。本発明のセラミック構造体/薬物組み合わせは、可測的な機械的な強度を示す。少なくとも50%の粒子は、5kg/cm2、7.5kg/cm2、10.0kg/cm2、12.5kg/cm2、15.0kg/cm2、17.5kg/cm2または20kg/cm2の力を加えた場合、全体の完全性(例えば、形状、寸法、ポロシティ等)を維持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、転用法を防止した状態で薬物の供給を可能にする、薬物/セラミック構造体の組み合わせに関する。
【0010】
いかなる好適な薬物も、本発明の組み合わせに取り込むことができるが、オピオイド作動薬が好ましい。これに限られる物ではないが、そのようなオピオイド作動薬は、以下のものである:アルフェンタニル、アリルプロダイン、アルファプロダイン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラマイド(bezitramide)、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン(clonitazene)、コデイン、デソモルフィン(desomorphine)、デキシトロモラミド、デゾシン、ジアンプロマイド(diampromide)、ダイアモルフォン、ジヒドロコデイン(dihydrocodeine)、ジヒドロモルヒネ(dihydromorphine)、ジメノキサドール(dimenoxadol)、ジメフェプタノール(dimepheptanol)、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチルブチラート(dioxaphetyl butyrate)、ジピパノン(dipipanone)、エプタゾシン(eptazocine)、エトヘプタジン、エチルメチルチアムフテン(ethylmethylthiamhutene)、エチルモルヒネ、エトニタゼン(etonitazene)、エトルフィン、ジヒドロエトロフィン(dihydroetorphine)、フェンタニール、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン(hydroxypethidine)、イソメタドン、ケトベミドン(ketobemidone)、レボルファノール、レボフェナシルマルファン(levophenacylmorphan)、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール(meptazinol)、メタゾシン(metazocine)、メタオドン、メトポン、モルヒネ、ミロヒネ(myrophine)、ナルセイン、ニコモルフィン(nicomorphine)、ノルレボファノール(norlevorphanol)、ノルメタドン、ナロルフィン、ナルブフェン(nalbuphene)、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン(phenadoxone)、フェノモルファン(phenomorphan)、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラマイド(piritramide)、プロフェプタジン(propheptazine)、プロメドール(promedol)、プロペリジン(propereridine)、プロポキシフェン、サフェンタニル(sufentanil)、チリジン(tilidine)、トラマドール、それらの調合許容塩、立体異性体、エーテル、エステル、およびそれらの混合物。
【0011】
セラミック構造体に取り込まれ得る他の薬物の例には、これに限られるものではないが、以下のものが含まれる:アセトリフィン(acetorphine)、アルファセチルメタドール(alphacetylmethadol)、アルファメプロジン(alphameprodine)、アルファメタドール(alphamethadol)、アルファプロジン、アエンゼチジン(aenzethidine)、ベータセチルメタドール(betacetyllmethadol)、ベータメプロジン(betameprodine)、ベータメタドール(betamethadol)、ベータプロジン(betaprodine)、ブフォテニン、カーフェンタニル、ジアモルフィン(diamorphine)、ジエチルタムブテン(diethylthiambutene)、ジフェノキシン、ジヒドロコデイノン(dihydrocodeinone)、ドロテバノール、エチシクリジン(eticyclidine)、エトキセリジン(etoxeridine)、エトリプタンリン(etryptanrine)、フレチジン(furethidine)、ヒドロモイフィノール(hydromoiphinol)、レボメトルファン、レボモラミド(levomoramide)、メタジルアセテート(methadyl acetate)、メチルデソルフィン(methyldesorphin)、メチルジヒドロニオルフィン(methyldihydroniorphine)、モルフェリジン(morpheridine)、ノラシメタドール(noracymmethadol)、ペチジン、フェナドキソン(phenadoxone)、フェナムプロミド(phenampromide)、フェンシクリジン、サイロシン、ラセメトルファン(racemethorphan)、ラセモラミド(racemoramide)、ラセモルファン(racemorphan)、ロリシクリジン(rolicyclidine)、テノシクリジン(tenocyclidine)、テバコン(thebacon)、テバイン、チリデート(tilidate)、トリメペリジン(trimeperidine)、アセチルヂヒドロコデイン(acetyldihydrocodeine)、アンフェタミン、グルテチミド、レフェタミン(lefetamine)、メクロクアロン(mecloqualone)、メタカロン)、メツカチノン(methcathinone)、メチルアンフェタミン(methylamphetamine)、メチルフェニデート、メチルフェノバルビトン(methylphenobarbitone)、ニココジン(nicocodine)、ニコジコジンク(nicodicodinc)、ノルコデイン(norcodeine)、フェンメトラジン、フォロコジン(pholcodine)、プロピラム(propiram)、ジペプロール(zipeprol)、アルプラゾラム、アミノレックス、ベンズフェタミン、ブロマゼパム、ブロチゾラン(brotizolarn)、カマゼパム(camazepam)、カチン(cathine)、カチノン(cathinone)、エフロージアゼポキシド(ehlordiazepoxide)、クロルフェンテミン、クロバザム、エロナゼパーン(elonazeparn)、クロラゼピック酸(clorazepic acid)、クロチアゼパム(clotoazepam)、クロキサゾラム、デロラゼパム(delorazepam)、デキストロプロポキシフェン、ジアゼパム、ジエチルプロピオン、エスタゾラーン(estazolarn)、エスクロルビノール、エチナメート、ロフラゼプ酸エチル、フェンカムファミン(fencamfamin)、フェネチリン(fenethylline)、フェンプロポレックス(fenproporex)、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ハラゼパム、ハロキサゾラム、ケタゾラム(ketazolam)、ロプラゾラム(loprazolam)、ロラゼパム、ローメタゼパム(lormetazepam)、マジンドール(mazindol)、メダゼパム、メフェノレックス、メフェンテルミン、メプロバメート、メソカーブ(mesocarb)、メチプリロン、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム(oxazolam)、ペモリン、フェンジメトラジン、フェンテルミン、ピナゼパム(pinazepam)、ピパドロール(pipadrol)、プラゼパム、ピロバレロン、テマゼパム、テトラゼパム(tetrazepam)、トリアゾラム、N-エチルアンフェタミン(N-ethylamphetamine)、アタメスタン(atamestane)、ボランジオル(bolandiol)、ボラステロン(bolasterone)、ボラジン(bolazine)、ボルデノン、ボレノール(bolenol)、ボルマンタレート(bolmantalate)、カルステロン)、4-クロロメタンジエノン(4-chloromethandienone)、クロステボール(clostebol)、ドロスタノロン、エンステボール(enestebol)、エピチオスタノール、エチロエストレノール(ethyloestrenol)、フルオキシメステロン、フォルメボロン(formebolone)、フラザボール、メボラジン(mebolazine)、メピトスタン(mepitostane)、メサボロン(mesabolone)、メスタローン(mestarolone)、メタンジエノン(methandienone)、メタンドリオール、メテノロン、メトリボロン(metribolone)、ミボレロン(mibolerone)、ナンドロロン、ノルボレトン(norboletone)、ノルクロステボール(norclostebol)、ノレタンドロロン、オバンドロトン(ovandrotone)、オキサボロン(oxabolone)、オキサドロロン(oxadrolone)、オキシメステロン、オキシメトロン、プラステロン、プロペタンドール(propetandrol)、キノボロン(quinbolone)、ロキシボロン(roxibolone)、シランドロール(silandrone)、スタノロン、スタノゾロ(stanozolo)、ステンボロン(stenbolone)、それらの調合許容塩、立体異性体、エーテル、エステル、およびそれらの混合物。
【0012】
本発明のセラミック構造体は、通常、チタン、ジルコニウム、スカンジウム、セリウムおよびイットリウムの酸化物を個々に、あるいは混合物として含む。セラミックは、チタン酸化物またはジルコニウム酸化物であることが好ましく、チタン酸化物は、特に好ましい。セラミックの構造的な特徴は、合成法または分離技術のいずれかによって制御される。制御可能な特徴の一例は、以下の通りである:1)構造がほぼ中空の球形であるか、ほぼ球形に相互に結合された微粒子の集合体であるか、2)構造の寸法の範囲(例えば、粒子直径)、3)構造の表面積、4)構造が中空である場合の壁の厚さ、5)ポアサイズ範囲、6)構造全体の強度。
【0013】
通常セラミックは、粒子を形成するため、金属塩の水溶液をスプレー加水分解することによって形成され、その後粒子は、回収され、熱処理される。最初に、スプレー加水分解によって、非晶質中空球が提供される。球の表面は、金属酸化物または混合金属酸化物のガラス状膜のアモルファスからなる。材料の焼成または熱処理によって、膜が結晶化し、連結された結晶の骨組みが形成される。通常、焼成によって得られる生成物は、中空状、多孔質状、硬質状の構造である。
【0014】
多くのほぼ球状のセラミック材料は、あるパラメータの変更によって形成される:a)金属組成または元の溶液の混合物の変更、b)溶液濃度の変更、c)焼成条件の変更。また、材料は、既知の空気分級およびふるい分け技術を用いて、寸法で区分けしても良い。
【0015】
ほぼ球状の中空構造の場合、通常、粒子寸法は、10nmから100μmの範囲である。平均粒子直径は、以下の範囲である:10nmから100nm、101nmから200nm、201nmから300nm、301nmから400nm、401nmから500nm、501nmから600nm、601nmから700nm、701nmから800nm、801nmから900nm、901nmから1μm、1μmから10μm、11μmから25μm、26μmから100μm。
【0016】
通常、サンプル全体の粒子寸法の変化は、十分に制御される。例えば、通常、変動は、平均直径の10.0%未満であり、平均直径の7.5%未満であることが好ましく、平均直径の5.0%未満であることがさらに好ましい。
【0017】
セラミック構造体の表面積は、粒子形状、粒子寸法および粒子のポロシティを含むいくつかの因子に依存する。通常、ほぼ球形の粒子の表面積は、0.1m2/gから100m2/gの範囲である。ただし、時には表面積は、0.5m2/gから50m2/gの範囲である。
【0018】
中空粒子の壁の厚さは、10nmから5μmの範囲であり、通常50nmから3μmである。そのような粒子のポア寸法は、1nmから5μmの範囲にあり、しばしば5nmから3μmの範囲にある。
【0019】
本発明のセラミック構造体は、相当の機械的強度を呈する。少なくとも50%の粒子は、それらに、5kg/cm2(45N/cm2)、7.5kg/cm2(67.5N/cm2)、10.0kg/cm2(90N/cm2)、12.5kg/cm2(112.5N/cm2)、15.0kg/cm2(135N/cm2)、17.5kg/cm2(157.5N/cm2)、20kg/cm2(180N/cm2)、35kg/cm2(315N/cm2)、50kg/cm2(450N/cm2)、75kg/cm2(675N/cm2)、100kg/cm2(900N/cm2)、125kg/cm2(1125N/cm2)の力が加わっても、全体の構造(例えば、形状、寸法、ポロシティ等)を維持する。通常、少なくとも60%の粒子が全体構造を維持する。少なくとも70%の粒子が全体構造を維持することが好ましく、少なくとも80%の粒子が全体構造を維持することがより好ましく、少なくとも90%の粒子が全体構造を維持することがさらに好ましい。
【0020】
更なる処理を行わなくても、本発明のセラミック構造体は、親水性である。ただし、親水度の程度は、既知の技術により化学的に改質されても良い。そのような技術には、これに限られるものではないが、マグネシウム、アルミニウム、珪素、銀、亜鉛、リン、マンガン、バリウム、ランタン、カルシウムおよびPEGポリエーテルまたはクラウンエーテル構造を含む塩または水酸化物を持つ構造を処理する技術が含まれる。そのような処理は、特に中空球状の親水性薬物のような薬物を摂取および取り込む構造の特性に影響を及ぼす。
【0021】
あるいは、構造は、適当な化学薬品を用いた処理により、比較的疎水性にしても良い。疎水化剤には、これに限られるものではないが、有機シラン、クロロ有機シラン、有機アルコキシシラン、有機高分子、アルキル化剤が含まれる。さらに、多孔質中空構造を、化学気相成膜法、金属蒸着法、金属酸化物蒸着法、または炭素蒸気成膜法を用いて処理し、表面特性を改質しても良い。
【0022】
セラミック構造体に設置された薬物は、必要に応じて、賦形剤を含んでも良い。賦形剤の例には、これに限られるものではないが、以下のものが含まれる:クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリンn-ブチル、アスパルテーム、アスパルテームおよびラクトース、アルギン酸塩、炭酸カルシウム、カルボポール、カラギナン、セルロース、セルロースおよびラクトースの組み合わせ、ナトリウムクロスカルメロース、クロスポビドン(crospovidone)、D型グルコース、ジブチルセハケート(dibutyl sehacate)、果糖、ゲランガム、グリセリルベヘネート、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、マナトール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテートファタレート(polyvinyl acetate phatalate)、ポビドン、ナトリウムスターチグリコレート、ソルビトール、スターチ、スクロース、トリアセチン、トリエチルエイトレート(triethyleitrate)、キサンタンガム。
【0023】
薬物は、いかなる好適な方法を用いて、本発明のセラミック構造体と組み合わせても良いが、溶媒設置/気化および薬物溶解法が好ましい。溶媒設置/気化の際、選定された薬物は、適当な溶媒に溶解される。そのような溶媒には、これに限られるものではないが、以下のものが含まれる:水、緩衝水、アルコール、エステル、エーテル、塩素消毒溶媒、酸素発生溶媒、有機アミン、アミノ酸、液体糖質、糖質の混合物、超臨界液体または気体(例えば、二酸化炭素)、炭化水素、ポリ酸素発生溶媒、天然のまたは誘導された流体および溶媒、芳香族溶媒、ポリ芳香族溶媒、液体イオン交換樹脂、および他の有機溶媒。溶解した薬物は、多孔質中空セラミック構造体と混合され、得られるサスペンションは、圧力スイング技術または超音波を用いて脱ガス処理される。サスペンションの撹拌の際、適当な方法(例えば、真空処理、低圧または大気下でのスプレー乾燥処理、凍結乾燥処理)を用いて、溶媒の気化が行われる。
【0024】
あるいは、前述のサスペンションをフィルタ処理し、必要に応じて、コーティングセラミック粒子を溶媒で洗浄しても良い。回収された粒子は、標準的な方法で乾燥される。別の代替例は、サスペンションをフィルタ処理し、真空乾燥法、空気流乾燥法、マイクロ波乾燥法および凍結乾燥法のような技術を用いて、ウエットケーキを乾燥させるステップを含む。
【0025】
薬物溶融コーティング法の場合、所望の薬物の溶融物は、低圧条件下(すなわち、脱ガス条件下)で、多孔質中空セラミック構造体と混合される。混合物は、大気圧で平衡になり、撹拌下で冷却される。この処理プロセスによって、構造の内面と外面に薬物の粉末が得られる。薬物は、適当な溶媒を用いた粒子表面の単純な洗浄とその後の乾燥によって、タブレット化される前に粒子表面から除去される。
【0026】
通常、セラミック構造体内部の薬物は、厚さが10nmから10μmの範囲となるようにコーティングされるが、厚さは50nmから5μmの範囲であることが好ましい。粒子に対する薬物の重量比は、通常、1.0から100の範囲であり、2.0から50の範囲であることが好ましい。
【0027】
コーティングされた薬物は、結晶質またはアモルファス(非晶質)のいずれの状態で存在しても良い。結晶質材料は、特徴的な形状を呈し、格子と呼ばれる明白なパターンを形成する原子、イオンまたは分子の配列による劈開面を有する。アモルファス材料は、分子格子構造を有さない。この区別は、材料の粉末回折研究の際に観察される。結晶質材料の粉末回折研究では、粒子直径が約500nmでピークの広がりが始まる。この広がりは、ピークが約5nmで消失するまで、結晶質材料が微細になるとともに継続する。ピークがバックグラウンドノイズと識別できないほどブロードとなった場合、材料は、XRDによって「アモルファス」であると定義され、これは約5nm以下で生じる。
【0028】
粒子上にコーティングされた薬物は、実質的に純粋な状態である。通常、薬物は、少なくとも95.0%の純度であり、少なくとも97.5%の純度であることが好ましく、少なくとも99.5%の純度であることが特に好ましい。換言すれば、薬物の不純物(例えば、加水分解生成物、酸化生成物、光化学的劣化生成物等)は、それぞれ、0.5%未満、2.5%未満または0.5%未満に維持される。
【0029】
本発明の薬物/セラミック構造体の組み合わせは、各種方法で投与される場合、薬物供給を可能にし、通常経口投与によって薬物供給が行われる。通常、組み合わせは、少なくとも含まれている薬物の25%を放出し、少なくとも含まれている薬物の50%を放出することが好ましく、少なくとも含まれている薬物の75%を放出することがさらに好ましい。
【0030】
通常、本発明の薬物/セラミック構造体の組み合わせは、患者に投与される場合、患者への制御された薬物の供給を可能にする。通常、37℃の緩衝水溶液(pHは1.6から7.2)900ml中で100rpmでのLISPパドル法を用いて、組み合わせが評価された場合、以下の溶解プロファイルが得られる:1時間後の薬物の放出率は、5.0%から50.0%;2時間後の薬物の放出率は、10.0%から75.0%;4時間後の薬物の放出率は、20.0%から85.0%;6時間後の薬物の放出率は、25.0%から95.0%。しばしば、4、5または6時間まで、薬物放出が観測され、その後ゼロ次の速度となる。
【0031】
本発明の薬物/セラミック構造体の組み合わせは、特に転用に対する耐性が高い。前述のように、セラミック構造体は、相当の機械的強度を有し、組み合わせ全体についても同様である。通常、この組み合わせに、5.0、7.5、10.0、12.5、15.0、17.5、20.0kg/cm2の力を加えてから、前述のUSPパドル法を用いた評価を行った場合、力を印加する前の溶解速度に対する力を加えた後の溶解速度の比は、2.0未満である。この比は、1.7未満であることが好ましく、1.5未満であることがより好ましく、1.3未満であることがさらに好ましい。
【0032】
通常、本発明の組み合わせにオピオイド作動薬が使用された場合、75ngから750mgの作動薬が含まれる。正確な量は、特定のオピオイド作動薬に依存し、従来の方法を用いて決定することができる。また、正確な投与量の判断に有益な以下の結果を含む、各種オピオイドの等鎮痛薬投与量を整理するための研究が行われている:オキシコドン(13.5mg)、コデイン(90.0mg)、ヒドロコドン(15.0mg)、ヒドロモルフォン(3.375mg)、レボルファノール(1.8mg)、メペリジン(135.0mg)、メタドン(9.0mg)、およびモルヒネ(27.0mg)。
【0033】
オピオイド作動薬の投与量は、NSAIDまたはCOX-2インヒビターのような非オピオイド作動薬を追加して、任意で抑制しても良い。NSAIDの一例には、これに限られるものではないが、以下のものが含まれる:イブロプロフェン、ジクロフェナック、ナプロキセン、ベノキサプロフェン(benoxaprofen)、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン(flubufen)、ケトプロフェン(ketopurofen)、インドプロフェン、ピロプロフェン(piroprofen)、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン(pramoprofen)、ムロプロフェン(muroprofen)、トリオキサプロフェン(trioxaprofen)、スプロフェン(suprofen)、アミノプロフェン(aminoprofen)、チアプロフェン酸、フルプロフェン(fluprofen)、ブクロキシック酸(bucloxic acid)、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラック、チオピナック(tiopinac)、ジドメタシン(zidometacin)、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナック(clidanac)、オキシピナック(oxpinac)、メフェナルニック酸(mefenarnic acid)、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミック酸(niflumic acid)、トルフェナム酸、ジフルリサル(diflurisal)、フルフェニサル(flufenisal)、ピロキシカム、スドキシカム(sudoxicam)、イソキシカム。COX-2インヒビターは、これに限られるものではないが、セレコクシブ、フロスライド(flosulide)、モロキシカム(moloxicam)、6-メトキシ-2ナフチルアセチック酸(6-methoxy-2 naphtylacetic acid)、ビオキシ(vioxy)、ナブメトン、ニメスライド(nimesulide)が含まれる。NSAIDおよびCOX-2インヒビターの有効な投与は、従来技術である。
【0034】
薬物/セラミック構造体の組み合わせは、多くの条件下で有意な安定性を示す。換言すれば、含まれる薬物は、通常の時間では、実質的に分解しない。例えば、25℃で2週間以上経過後の、薬物の純度劣化率は、通常5%未満である。しばしば、この劣化率(例えば、加水分解、酸化、光化学的反応)は、4%、3%、2%または1%未満である。
【0035】
以下、本発明の実施例を示す。これは、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0036】
Tiを15g/L、Clを55g/L含むチタンの酸塩化物とHClの水溶液を、12L/hの速度で、チタンスプレードライヤで放射する。スプレードライヤの出口温度は、250℃であった。アモルファス球からなる中間固体生成物を、バッグフィルタから回収した。中間生成物を、マッフル炉を用いて500℃で8時間焼成した。さらに、一組のサイクロンを用いて焼成材料を分級した。15〜25μmの寸法の粒子を、球としていかなる粒子の存在しないようにスクリーン処理した。X線回折の結果、生成物は、主としてTiO2ルチルからなり、約1%のアナターゼを含むことがわかった。カウントした多数の粒子を平坦金属表面に設置し、別の金属板を上部に設置して、粒子が壊れるまで徐々に圧力を加え、粒子の平均機械的強度を測定した。焼結生成物の走査型電子顕微鏡写真から、この粒子は、ルチル型結晶で構成され、相互に薄膜構造で結合されていることがわかった。薄膜の厚さは、約500nmであり、ポア寸法は、約50nmであった。
【実施例2】
【0037】
溶液中の塩素およびチタンの濃度を変え、ノズル寸法を変えて、500から900℃の異なる温度範囲で実施例1の実験を繰り返した。チタン濃度は、120から15g/Lの範囲で変化させた。全般に、高温ほど、大きく高強度の粒子が形成され、Ti濃度が低くなると、球の寸法が低下し、壁の厚さが厚くなり、粒子の機械的強度が向上する傾向にあった。
【実施例3】
【0038】
条件は、実施例1の場合と同様であるが、この実施例では、スプレーステップの前に、TiO2の25%のLi、NaおよびKの塩化物塩の共晶混合物を溶液に添加し、焼成ステップの後に、洗浄ステップを加えた。洗浄ステップでは、焼成生成物が水中で洗浄され、これにより、最終生成物からアルカリ塩が除去される。塩を追加するステップを用いる利点は、最終生成物の球が厚い壁を有するようになることである。
【実施例4】
【0039】
条件は、実施例1の場合と同様であるが、この実施例では、スプレーの前に、リン酸ナトリウムNa3PO4を、TiO2量の3%となるように溶液に添加した。添加によって、焼成時の生成物のルチル化が迅速化された。この実施例での最終生成物は、他の実施例よりも大きなルチル結晶からなり、高い機械的強度を示した。
【実施例5】
【0040】
実施例1の生成物を水中でスラリー化させ、固形分が40%のスラリーを調製した。コロイド状の銀を、TiO2量の5重量%となるように、スラリーに添加した。コロイド状銀を含むスラリーを、出口温度が250℃のスプレードライヤで放射し、バッグフィルタで回収した。さらに、バッグフィルタ上の中間生成物を、マッフル炉を用いて、600℃で3時間焼成した。走査型電子顕微鏡により、最終生成物は、約2μmの寸法の結合ルチル結晶からなる平均直径が50μmの中空球で構成されていることがわかった。ポア寸法は、約500nmであった。コロイド状銀は、構造の粒子表面に、約2nmの厚さの層を形成した。
【実施例6】
【0041】
配位子としての銀化合物を変え、温度および濃度が異なる条件で実施例5を繰り返した。以下の化合物を配位子として使用した:プロテイン、酵素、高分子、コロイド状金属、金属酸化物および塩、活性調合剤。温度は、配位子の安定性を考慮して選定した。有機化合物を用いる場合、温度は、通常約150℃以下に制限される。
【実施例7】
【0042】
10ml瓶のラテックス(ポリサイエンス:10mL水中、2.5wt%の0.5μmの微小球)を、全量が40mLとなるように蒸留水で希釈した。得られた混合物を、0.36gのタイザー(Tyzor)LA(登録商標)(ジュポン社)で処理した。ラテックス/タイザーLA(登録商標)混合物を、撹拌棒で連続撹拌した。蠕動ポンプを用いて、約0.5mL/hの酸を混合物に加えた。pHを連続的にモニターし、時間に対する値を記録した。混合物のpHを、2となるように滴定した。基板にラテックスが浸漬コーティングされ、有機ラテックスは、600℃での酸化によって除去された。直径が約0.5μmの場合、中空セラミック粒子の変動幅は、通常、平均直径の5.0%未満である。微細な微小球を使用することにより、この処理プロセスで、同様の均一性を有する実質的に微細な粒子を作製することができる(例えば、0.1μm、0.05μmおよび0.02μm)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック構造体および薬物を有する組成物であって、
前記セラミック構造体は、ほぼ球状で中空であり、前記薬物は、前記セラミック構造体の中空部分にコーティングされており、前記構造体の平均直径は、10nmから100μmの範囲にあることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記セラミック構造体は、酸化物を有し、
前記酸化物は、チタン、ジルコニウム、スカンジウム、セリウム、イットリウムおよびそれらの混合物からなる群から選定されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セラミック構造体は、チタン酸化物またはジルコニウム酸化物を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記セラミック構造体は、チタン酸化物を含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記構造体の平均直径は、10nmから1μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記構造体の平均直径は、5μmから25μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記コーティングされた薬物は、オピオイド作動薬であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記オピオイド作動薬は、オキシコドン、コデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メタドンおよびモルヒネからなる群から選定されることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記オピオイド作動薬は、オキシコドンまたはモルヒネであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記セラミック構造体は、ポアを有し、ポア寸法は、1nmから5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記セラミック構造体は、ポアを有し、ポア寸法は、5nmから3μmの範囲にあることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記中空セラミック構造体は、壁を有し、該壁の厚さは、10nmから5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記壁の厚さは、50nmから3μmの範囲にあることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記セラミック構造体は、可測的な機械的強度を示し、
前記機械的強度は、粒子の回収量で表現され、5kg/cm2の力が加わった際に、少なくとも50%の粒子は、該粒子の全体の構造を維持していることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも70%の粒子が該粒子の全体の構造を維持していることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも90%の粒子が該粒子の全体の構造を維持していることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
加えられる力は、10.0kg/cm2であることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
加えられる力は、15.0kg/cm2であることを特徴とする請求項17に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−506699(P2008−506699A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521610(P2007−521610)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/024858
【国際公開番号】WO2006/017336
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507012043)アルテアーナノ,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】