説明

藺草織物を使用した敷物及び藺草織物の裁断端部の処理方法

【課題】 裁断端部を有する藺草織物を使用した敷物において、従来のような裁断端部を縁布で覆ったり、裁断端部を含む裁断側を折り返すような処理方法とは異なる新しい方法で裁断端部を処理することにより、裁断端部から藺草の繊維が解れたり、裁断端部表面の藺草の繊維が擦れることを防止することにある。
【解決手段】藺草織物を使用した敷物A1は、裁断端部431を有する藺草織物43を使用した敷物である。少なくとも藺草織物43の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部431の断面を含む藺草織物43表面全体に、透視性を有する被覆フィルム4が被覆させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藺草織物を使用した敷物、それに使用する藺草敷物構成シート、藺草織物構造体及び藺草織物の裁断端部の処理方法に関する。
更に詳しくは、裁断端部を有する藺草織物を使用した敷物において、従来のような裁断端部を縁布で覆ったり、裁断端部を含む裁断側を折り返すような処理方法とは異なる新しい方法で裁断端部を処理することにより、裁断端部から藺草の繊維が解れたり、裁断端部から露出した藺草の繊維が擦れることを防止したものに関する。
【背景技術】
【0002】
茣蓙や筵に代表される藺草敷物は、蒸し暑い日本の夏に欠かせない敷物として長年消費者に親しまれている。藺草敷物は、天然素材である藺草を使用しているため自然の温もりを強く感じることができ、また落ち着いた和の雰囲気を醸し出すことができる敷物である。そして、近年では、筵をウレタン等のクッション材に張り合わせする等により、藺草カーペットや藺草ラグと呼ばれる商品も提案されている。
【0003】
ところで、藺草敷物は、通常、経糸に対し藺草を交互に織成した藺草織物を基材としている。このため、所要の大きさに裁断した藺草織物をそのまま使用すると、その裁断端部から藺草が解れたり、裁断端部から露出した藺草の繊維が擦れて繊維が逆立ち、ケバ立ちが起きてしまう。
【0004】
したがって、裁断した藺草織物を使用する際には、裁断端部が表面から露出しないような処理を施す必要がある。具体的には、裁断端部を縁布で覆ったり、裁断端部を含む端辺側を裏側に折り返す処理が行われる。
例えば、特許文献1に記載された畳表マットでは、その両方の処理が施されており、特許文献2記載の縁なし畳では、四方の端辺側を畳床の裏面にそれぞれ折り返す処理が施されている。
【特許文献1】登録実用新案第3011235号公報(第1図)
【特許文献2】特開2005−120624号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の裁断端部の処理方法では次のような課題があった。
(1) まず、特許文献1記載の畳表マットのように、藺草織物の裁断個所を縁布で覆う場合は、縁布が敷物表面に必ず現れてしまうので、昔ながらの茣蓙のように、藺草敷物特有の縁布が付いたありきたりのデザインにならざるを得ない。
【0006】
(2) また特許文献2記載の縁なし畳のように、裁断側を折り返した場合では、縁なし畳の四隅部分に藺草織物の裁断端部が位置するようになる。このため、長年使用していると、部屋に敷いた縁なし畳が互いに擦れ合って、この四隅部分の裁断端部が擦れてここから藺草織物が破損しやすい。
【0007】
(3) 更に藺草織物は、藺草の織成方向の関係から、経糸方向には折り曲げやすいが、経糸と直角方向には藺草の茎が折れるような状況になるため、折り曲げにくいという欠点がある。そして、正方形の縁なし畳のように、畳床に対して藺草織物を左右上下の四方向からそれぞれ裏側に折り返す場合、藺草の茎が折れるような方向に折り曲げる表面側の端辺部があり、その部分は他の端辺部に比べて弱く、藺草の繊維が破断しやすい。
【0008】
(4) また更に、上記したような裁断箇所を縁布で覆ったり、裁断側を折り返さなくてはならないといった製造上の制約が、新しい形態の藺草敷物の開発に障害となっている。以下、本願発明者の開発例を挙げながら説明する。
【0009】
本願発明者は、近年、建物の洋風化とともにフローリングの床面が急増していることから、フローリングの床面等に敷いて和室の雰囲気を気軽に楽しめる、カーペットタイプの新しい藺草敷物の開発に着手した。
図8は、本願発明者が開発に着手したカーペットタイプの新しい藺草敷物の概略を示す部分拡大斜視説明図である。
【0010】
図8に示すように、この藺草敷物は、ウッドカーペットを改良したような形態を有する。詳しくは、シート体91に縦長で木製の平板92を複数隣接して並設させ、その平板92の表面に所要の大きさに裁断した藺草織物93を張り合わせたような構造となっている。
【0011】
そして、平板92の適度な重量によりフローリングの床面に敷いても滑りにくく、更に不使用時には、シート体91の裏側を内側にしてロール状に巻き取れば敷物全体をコンパクトに巻き取ることができるといった利点を有する。
しかしながら、この新しい藺草敷物の開発を進める中で、以下のような問題に直面した。
【0012】
即ち、平板92には、平板92の大きさに合わせて細長く裁断した藺草織物93(図8参照)を張り合わせるのであるが、裁断によって生じる裁断端部931をどのようにして処理するかという問題である。この藺草敷物の場合、藺草織物93の裁断端部931は、各平板92の幅方向の両端側に、且つ、平板の長手方向に沿って主に形成される。
【0013】
そこで、従来と同じ処理方法のように(図9を参照)、裁断端部931を縁布94で覆うことが考えられる。しかしながら、平板92は一枚一枚の幅が狭く細長い。このため、各藺草織物93の幅方向の両端側を縁布94でそれぞれ覆ってしまうと、藺草織物93の大部分が縁布94で覆われ、藺草敷物の良さが半減してしまう。また全体的に見ても、一枚の敷物に縁布94が何本も横に走った非常に見苦しいデザインになってしまう。
【0014】
また従来と同じ処理方法のように(図10を参照)、裁断端部931を含む藺草織物93の幅方向の両端側をそれぞれ平板92の底面側まで折り返すことも考えられる。この場合、図9と相違して、縁布94を使わないので見苦しくなることはないが、平板92の幅方向の側面部までも藺草織物93で覆われることになる。このため、例えば部屋に敷いて長年使用していると、並設した平板92側面の藺草織物93が隣接する他の平板92の藺草織物93とこすれ合って(図10で丸Dで囲んだ部分を参照)、藺草繊維の表面が逆立ったりケバ立ったりして破損する可能性が高い。
【0015】
このように、藺草織物93の裁断端部931を縁布94で覆ったり、裁断側を折り返さなくてはならないといった製造上の制約が、新しい藺草敷物の提案とその開発に大きな障害となる。
【0016】
そこで、本願発明者は、藺草織物の裁断端部を縁布で覆ったり、裁断側を折り返すような従来の処理方法とは異なる、新しい裁断端部の処理方法の開発に鋭意に取り組んだ結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0017】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、裁断端部を有する藺草織物を使用した敷物において、従来のような裁断端部を縁布で覆ったり、裁断端部を含む裁断側を折り返すような処理方法とは異なる新しい方法で裁断端部を処理することにより、裁断端部から藺草の繊維が解れたり、裁断端部表面の藺草の繊維が擦れることを防止することにある。
【0018】
また本発明の他の目的は、藺草織物本来の質感や風合いが損なわれることを防止しつつ、上記した目的も達成できるようにした藺草織物を使用した敷物、それに使用する藺草敷物構成シート及び藺草織物の裁断端部の処理方法を提供することにある。
【0019】
更に本発明の他の目的は、耐水性や耐汚染性に優れると共に、上記した目的も達成できるようにした藺草織物を使用した敷物、それに使用する藺草敷物構成シート及び藺草織物の裁断端部の処理方法を提供することにある。
その他の本発明の目的は、以下の説明によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0021】
本発明は、裁断端部(431)を有する藺草織物(43)を使用した敷物であって、少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に、透視性を有する被覆フィルム(4)が被覆させてある、藺草織物を使用した敷物である。
【0022】
本発明は、裁断端部(431)を有する藺草織物(43)を使用した敷物であって、シート体(1)と、該シート体(1)の表面に複数隣接して並設された細長い板状の藺草敷物構成体(2)と、
を備え、該藺草敷物構成体(2)は、板状基体(41)と、該板状基体(41)に積層してまたは該板状基体(41)を覆うようにして設けられた藺草織物(43)と、少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に被覆させてある透視性を有する被覆フィルム(4)と、を有している、藺草織物を使用した敷物である。
また少なくとも藺草敷物構成体(2)の幅方向の両端側の上部は、角張らずに曲面状または丸みをつけて形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明は、裁断端部(431)を有する藺草織物(43)を使用した敷物であって、シート体(1)と、該シート体(1)の表面に複数隣接して並設された細長い板状の藺草敷物構成体(2)と、
を備え、該藺草敷物構成体(2)は、板状基体(41)と、該板状基体(41)の表面側に積層されたクッション材(42)と、該クッション材(42)に積層してまたは板状基体(41)とクッション材(42)を覆うようにして設けられた藺草織物(43)と、少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に被覆させてある熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(4)と、を有しており、該被覆フィルム(4)は、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(43)の表面全体の凹凸に沿って密着させてあり、この密着に伴う圧力で上記クッション材(42)が変形することによって、少なくとも藺草敷物構成体(2)の幅方向の両端側の上部は角張らずに曲面状または丸みをつけて形成されている、藺草織物を使用した敷物である。
【0024】
本発明は、裁断端部(431)を有する藺草織物(461)を使用した敷物であって、板状基体(45)と、該板状基体(45)に積層してまたは該板状基体(45)を覆うようにして設けられた藺草織物(461)と、少なくとも藺草織物(461)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(461)の表面全体に被覆させてある透視性を有する被覆フィルム(462)と、を有している、藺草織物を使用した敷物である。
【0025】
本発明は、裁断端部(431)を有する藺草織物(461)を使用した敷物であって、通気性を有している板状基体(45)と、該板状基体(45)の底面側の通気性を損なわないように、少なくとも該板状基体(45)の表面側に積層してまたは該板状基体(45)の表面側を覆うようにして設けられた藺草敷物構成シート(46)と、を備えており、該藺草敷物構成シート(46)は、藺草織物(461)と、上記藺草織物(461)の表面全体あるいは上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(461)の表面全体に被覆させてある透視性を有する被覆フィルム(462)と、を有している、藺草織物を使用した敷物である。
【0026】
上記被覆フィルム(4)は熱可塑性樹脂からなり、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(43)表面の凹凸に沿って密着するように被覆させてあることが好ましい。
【0027】
本発明は、敷物に使用される藺草敷物構成シートであって、裁断端部(431)を有する藺草織物(461)と、藺草織物(461)の表面全体あるいは上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に被覆させてある熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(462)と、を備えており、該被覆フィルム(462)は、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(461)表面の凹凸に沿って密着するように被覆させてある、藺草敷物構成シートである。
【0028】
本発明は、藺草織物(43)を裁断した後の裁断端部(431)の処理構造を有する藺草織物構造体であって、少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に、熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(4)が被覆させてあり、該被覆フィルム(4)は、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(43)の表面全体の凹凸に沿って密着させてある、藺草織物構造体である。
【0029】
本発明は、藺草織物(43)を裁断した後の裁断端部(431)の処理方法であって、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により、熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(4)が藺草織物(43)表面の凹凸に沿って密着するように、該被覆フィルム(4)で少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体を被覆する、藺草織物の裁断端部の処理方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
(a)本発明によれば、少なくとも藺草織物の表面全体あるいは少なくとも裁断端部の断面を含む藺草織物の表面全体に、透視性を有する被覆フィルムが被覆させてあるので、裁断端部から藺草の繊維が解れたり、裁断端部の表面または裁断端部の断面の藺草が擦れて繊維が逆立ったりケバ立ったりすることを防止できる。また、逆立ったりケバ立ったりした藺草の繊維によって、足の裏などを怪我することを防止できる。このように、少なくとも藺草織物の表面全体を被覆フィルムで被覆すれば、従来のような裁断端部を縁布で覆ったり、裁断端部を含む裁断側を折り返すような処理を施す必要がなくなる。また縁布を使用しないで裁断端部の処理ができるので、藺草織物のデザインの幅が拡がり、新しい形態の藺草織物を使用した敷物の開発が容易となる。
【0031】
(b)被覆フィルムが熱可塑性樹脂からなり、加熱用のヒーターを有する真空吸引被覆装置を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物表面の凹凸に沿って密着するように被覆させてあるものは、藺草織物本来の質感や風合いが損なわれにくい。
【0032】
(c)更に本発明によれば、少なくとも藺草織物の表面全体あるいは少なくとも裁断端部の断面を含む藺草織物面全体が被覆フィルムにより被覆されているので、敷物表面側は耐水性及び耐汚染性を有している。よって、部屋の中だけでなく、湿気が多く、濡れやすい温泉浴場の脱衣所等にも好適に使用できる。また表面に汚れが付着した場合でも、雑巾等で水拭きして簡単に汚れを落とすことができる。
【0033】
(d)シート体と、該シート体の表面に複数隣接して並設された細長い板状の藺草敷物構成体と、を備えているものは、縁布を使用せずに裁断端部の処理ができるので、藺草織物を有する細長い板状の藺草敷物構成体を複数並設して組み合わせても、縁布が何本も横に走ったような見苦しいデザインになることがない。
また、この藺草敷物を部屋に敷く等して使用することで並設された藺草敷物構成体が互いにこすれ合っても、藺草織物の裁断端部の表面または裁断端部の断面も被覆フィルムで被覆されているので、この部分が擦れて藺草の繊維が逆立ったりケバ立ったり、あるいはそこから破れたりすることを防止できる。
【0034】
(e)少なくとも藺草敷物構成体の幅方向の両端側の上部が角張らずに曲面状または丸みをつけて形成されているものは、角張って形成されたものに比べて、隣接する藺草敷物構成体の間に手の指や足の指等を挟むことを防止できる。
また角張らずに曲面状または丸みをつけて形成されていることで、隣接する藺草敷物構成体の境目部分の上方に凹みが形成される。これにより、この境目部分を踏んでも、上記凹みが逃げとなって藺草織物がこの部分から上方に曲り、境目部分の上部の破損が防止される。
【0035】
(f)通気性を有している板状基体と、該板状基体の底面側の通気性を損なわないように、少なくとも該板状基体の表面側に積層してまたは該板状基体の表面側を覆うようにして設けられた藺草敷物構成シートと、を備えているものは、藺草織物を使用した敷物の底部側から、通気性を有する基体シートを通して、表面側の藺草の香りが外部に漂う。したがって、通常の畳と同様に藺草の香りを楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明に係る藺草織物を使用した敷物としては、部屋に敷く藺草カーペットや藺草ラグ、玄関に敷く玄関マット、廊下敷き、キッチンマット、あるいは温泉浴場の脱衣所に敷くマットや敷物、ヨガをするときに敷くヨガ用マット、縁なし畳、公園のベンチに敷くベンチ用座部等の様々な敷物を挙げることができる。
なお、この具体例はあくまで代表的なものであり、特にこれらに限定するものではない。
【0037】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
本発明を図面に示した実施例に基づき更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0039】
図1ないし図3は、本発明に係る藺草織物を使用した敷物の第一の実施例を示す説明図である。以下、「藺草織物を使用した敷物」を単に「藺草敷物」という。
【0040】
図1は、藺草敷物の斜視説明図、
図2は、図1のI−I部分に対応する断面の一部(図1で左端側)を示す藺草織物の部分拡大断面説明図、
図3は、図1に示す藺草敷物を構成する藺草敷物構成体を示す拡大斜視説明図であり、長手方向の中間部分を一部省略して表している。
【0041】
図1及び図2に示す藺草敷物A1は、シート体1と、該シート体1の表面に複数隣接して並設された細長い板状の藺草敷物構成体2と、を備えている。図2に示すように、シート体1の表面には、図3に示す藺草敷物構成体2の底面部21が接着剤で接着して取り付けられている。本実施例では、藺草敷物構成体2の大きさは、幅が約6cm、長さが約85cm、厚みが0.5〜1cmであるが、特にこれに限定するものではない。
【0042】
藺草敷物A1は、ウッドカーペットと同様に、シート体1の裏側を内側にして全体をロール状に巻き取ることができるので、運搬や保管が容易である。また藺草敷物A1の両端側(両端の各藺草敷物構成体2の外側)には、並設された藺草敷物構成体2を両側から挟むようにして縁部材3が取り付けてある。
【0043】
本実施例では、縁部材3は木製素材で形成されている。この縁部材3により、両端の各藺草敷物構成体2の幅方向の外側の側面部22(図2参照)が隠れ、外から見えないようになっている。縁部材3は踏んでも痛くないように角を落とし、丸みをつけて形成されている。縁部材3は、プラスチックやゴム(天然ゴム、合成ゴムを問わない)等のその他の材料で形成することもできる。
【0044】
本実施例では、シート体1は不織布で形成されている。シート体1は、藺草敷物A1を例えばフローリングの床面に敷いても滑りにくいように、少なくとも裏面側(底面側)が滑り止め効果を有するものが好ましい。シート体1は、布製品(織布や編布等)、皮革、合成皮革、柔軟性を有するプラスチックシートやゴム、あるいはそれらを組み合わせたもの等やその他の素材などを使用することもできる。
【0045】
図2及び図3に示すように、藺草敷物構成体2は、表面側にクッション材42が積層された板状基体41と、該クッション材42に積層して設けられた藺草織物43と、少なくとも藺草織物43の全体に被覆させてある熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム4と、を有している。なお、クッション材42を省略することもできる。
【0046】
板状基体41は、薄板状で細長い木製の板で形成されている。例えば板状基体41は、ベニヤ板やMDF(中比重繊維板)で形成することができる。MDFよりもベニヤ板の方が水に強い。よって、湿気が多い場所や水を使うような場所で藺草敷物A1を使用する場合は、ベニヤ板で板状基体41を形成することが好ましい。板状基体41として、プラスチックやゴム(天然ゴム、合成ゴムを問わない)等といったその他の硬質素材を使用することもできる。
【0047】
クッション材42としては、シート体1や藺草織物43との接着性が良いものが好ましい。本実施例では、クッション材42としてフェルトを使用している。その他のクッション材42としては、ポリウレタンフォームやその他の合成樹脂、ゴム(天然ゴム、合成ゴムを問わない)、布、あるいはそれらを組み合わせたもの等を挙げることができる。
【0048】
藺草織物43としては、経糸に対し藺草を交互に織成した筵とも呼ばれる所要の大きさに裁断した藺草織物を使用している。藺草織物43の織り方は、糸引織や双目織、あるいはその他公知の織り方が採用できる。図3に示すように、藺草織物43は、細長い藺草敷物構成体2の大きさに合うように所要の大きさに裁断され、その裁断によって形成された裁断端部431を有している。なお、上記藺草敷物構成体2は、藺草織物43を裁断した後の裁断端部431の処理構造を有する藺草織物構造体を構成する。
【0049】
また本実施例では、経糸方向に沿って細長い形状になるように藺草織物43が裁断されており、藺草織物43の裁断端部431(図2参照)は、藺草敷物構成体2の幅方向の両側に位置している。また藺草織物43の藺草の繊維方向は、藺草敷物構成体2の幅方向と本質的に一致している。
【0050】
被覆フィルム4としては、透明または半透明のポリ塩化ビニルやポリオレフィン製の熱可塑性フィルムを使用している。熱可塑性フィルムの厚みは0.08〜0.10mmのものを使用している。
【0051】
そうして、図2に示すように、板状基体41の表面にクッション材42が接着して積層され、更にクッション材42の表面に藺草織物43が接着して積層されている。この際、藺草織物43は、クッション材42が積層された板状基体41の長手方向の両端の側面部411側(図3参照)も覆うようにして積層されている。この「積層された板状基体41、クッション材42及び藺草織物43」を説明の便宜上、「藺草積層体400」という。そして、最後に藺草積層体400の表面側(藺草織物43の表面全体)と、藺草積層体400の幅方向の両側面を覆うようにして、被覆フィルム4が被覆される。
【0052】
この被覆フィルム4は、後述する加熱用のヒーターを有する真空吸引被覆装置B(図4参照)を用いた加熱操作と真空吸引操作により、藺草織物43の表面全体の凹凸に沿って密着するように被覆させてある。
【0053】
また図2に示すように、被覆フィルム4が被覆されてなる藺草敷物構成体2の表面側のうち、幅方向の両端側は、角部が角張らずに、曲面状または丸みをつけて形成された面取り部23を有している。更に藺草敷物構成体2の長手方向の両端側も同様に、角部が角張らずに、曲面状または丸みをつけて形成された面取り部24(図3参照)を有している。これら面取り部23,24は、後述するように、真空吸引被覆装置Bによる被覆フィルム4の密着に伴う圧力によって上記クッション材42が変形することで形成される。
【0054】
(真空吸引被覆装置Bとそれを使用した被覆フィルム4の被覆方法)
図4は、真空吸引被覆装置を用いて、被覆フィルムを藺草積層体に被覆している状態を示す側面視説明図である。
そのうち、図4(a)は昇降チャンバを降下させる前の状態を示し、図4(b)は昇降チャンバを降下させた後の状態を示している。
【0055】
図5は、吸引チャンバを図4(a)のII−II矢視方向から見たものに対応する平面視概略説明図であり、吸引チャンバの吸引載置面に置いた複数の藺草積層体と成形治具の位置関係を示す説明図である。
【0056】
本実施例では、一つの真空吸引被覆装置Bで複数(図4(a)では7つ)の藺草積層体400を同時に被覆処理した場合の例を挙げて説明する。なお、藺草積層体400を一つずつ被覆処理することもできるが、製造効率を向上させて製品単価を抑えるためには、できるだけ多くの藺草積層体400を同時に被覆処理することが好ましい。
【0057】
まず、真空吸引被覆装置Bと成形用治具について説明する。
藺草積層体400に対する被覆フィルム4の被覆(藺草敷物構成体2の製造)には、図4(a)に示す真空吸引被覆装置Bが使用される。真空吸引被覆装置Bは、上下向かい合わせに配置された昇降チャンバ5と吸引チャンバ6を備えている。
【0058】
昇降チャンバ5は、流体圧シリンダ装置のピストンロッド51先端に連結されており、昇降可能となっている。昇降チャンバ5は、下部側に開口部521を備えた箱状体によって形成された昇降チャンバ本体52を備えている。
【0059】
昇降チャンバ本体52の開口部521側には、開口部521を塞ぐように伸縮性及び耐熱性を備えた加圧用のゴム状弾性膜53が張設されている。ゴム状弾性膜53はシリコン製のシートで形成されている。
【0060】
昇降チャンバ本体52には、昇降チャンバ本体52とゴム状弾性膜53によって区画された空間部54に流体、好ましくは空気の供給または排出を行う空気流通部55が設けてある。更に、昇降チャンバ本体52の内面上部側には、加熱用のヒーター56が設けてある。このヒーター56によって、上記空間部54内の空気及びゴム状弾性膜53が所要の温度に加熱される。
【0061】
他方、吸引チャンバ6の上面部は、藺草積層体400や被覆フィルム4等を載置する吸引載置面61を構成している。吸引チャンバ6は箱状に形成されており、吸引載置面61側には所要の配列状態で複数の通気孔(図示省略)が設けてある。吸引チャンバ6には空気吸引部62を介して真空吸引装置(図示省略)が接続されている。真空吸引装置により、上記通気孔を介して吸引載置面61上に載置した被覆フィルム4を吸引できるように構成されている。
【0062】
また本実施例では、真空吸引被覆装置Bを使用する際に成形用治具を一緒に使用する。図4(a)に示すように、成形用治具は、藺草積層体400載置する載置具71と、載置具71の周囲に配置されたフレーム72(図5も参照)を備えている。
【0063】
載置具71は所要の厚みを有する板状体であり、藺草積層体400よりも一回り小さい。また、フレーム72は図5に示すような平面視L形状の細長い棒状体であり、載置具71に載置された藺草積層体400の四隅部分を外から囲むように四箇所配置されている。フレーム72(図4(a)参照)の高さは載置具71と同程度か、やや高く、載置具71に載置した際の藺草積層体400の高さよりも低くなっている。なお、藺草積層体400の周りを一周囲むことができるようにフレーム72を枠状に形成することもできる。
【0064】
以下、上記した真空吸引被覆装置B及び成形用治具を用いて、藺草積層体400に被覆フィルム4を被覆する方法(ラミネート加工する方法)について説明する。
【0065】
まず、被覆対象である藺草積層体400を吸引チャンバ6に置く前に、スプレーガン等を使用して、藺草積層体400の表面全体(藺草織物43の表面全体と藺草積層体400の幅方向の両側面部)に液状の接着剤を均一に塗布する。塗布後、接着面がセミドライ(半乾きや多少乾いた)状態になるまで室温でやや乾燥させ、接着剤中の水分を適度に蒸発させる。
【0066】
その後、図5に示すように、吸引チャンバ6の吸引載置面61に載置具71(破線で示す)を所要間隔をおいて並べると共に、その上に上記した藺草積層体400を置く。そして、藺草積層体400を取り囲むようにして、藺草積層体400からやや離した位置にフレーム72を配置する。
【0067】
次に、図4(a)に示す昇降チャンバ5において、ヒーター56で昇降チャンバ5のゴム状弾性膜53を加熱しつつ、ゴム状弾性膜53で区画された空間部54に流入した空気を加熱する。ヒーター56は、例えば藺草積層体400表面の温度が80〜100℃になるように設定する。空間部54の空圧は、例えば4kgf/m(39.2kPa)に設定されている。
【0068】
以上のようにして、昇降チャンバ5が加熱された状態において、図5に示すように、藺草積層体400とフレーム72全体を跨るようにして被覆フィルム4(一点鎖線で示す)を被せる。この際、被覆フィルム4はフレーム72よりも外側へはみ出すように被せる。これにより、図4(a)に示すように、各フレーム72と藺草積層体400との間、及び藺草積層体400と藺草積層体400との間には、真空吸引操作により被覆フィルム4が吸引可能な空間部60が形成される。
【0069】
次に、図4(b)に示すように、昇降チャンバ5を降下させ、ゴム状弾性膜53によって藺草積層体400と被覆フィルム4を所定の圧力で押圧する。そして、吸引チャンバ6に接続された真空吸引装置(図示省略)を操作して、吸引載置面61上の吸引孔から真空吸引を行う。この際、ゴム状弾性膜53により加熱軟化した被覆フィルム4及び藺草積層体400が押圧されると共に、真空吸引操作において被覆フィルム4が藺草積層体400の外周下方に吸引される。これにより、被覆フィルム4は延伸して藺草織物43(図3参照)表面の凹凸形状に沿って密着する。
【0070】
更に、藺草積層体400とフレーム72の間、及び藺草積層体400と藺草積層体400にある被覆フィルム4は、空間部60に引き寄せられ、藺草積層体400の側面の全周を取り巻くように延伸した状態で密着し、これにより藺草積層体400の四隅部分に皺ができない。そして、被覆フィルム4は加熱によって硬化した接着剤により、藺草積層体400の表面及び側面の全周に沿って接着される。
【0071】
また、昇降チャンバ5による押圧と吸引チャンバ6による真空吸引によって、被覆フィルム4が藺草織物43の表面全体に密着するが、この密着に伴う圧力によって上記クッション材42(図2参照)の周縁部分が押圧されて変形し、上記した面取り部23,24(図3も参照)が形成される。
【0072】
この昇降チャンバ5による押圧と吸引チャンバ6による真空吸引は、130〜140秒程度行われる。この吸引が終了後、昇降チャンバ5を上昇させ、藺草織物43表面の凹凸に沿って被覆フィルム4が積層された藺草積層体400を取り出す。そして、最後に藺草積層体400の側面の全周からはみ出した被覆フィルム4を切断して、目的とする藺草敷物構成体2(図3参照)を得る。
【0073】
その後、上記したように(図1及び図2参照)、シート体1の表面に藺草敷物構成体2を接着して複数隣接して並設させる。この際、シート体1の両端側に縁部材3を取り付けることができるように、シート体1の両端部にスペースを開けて藺草敷物構成体2を取り付ける。この縁部材3も藺草敷物構成体2と同様に、接着によってシート体1に取り付ける。このようにして、目的とする藺草敷物A1を得る。
【0074】
(作 用)
本実施例に係る藺草敷物A1は、次のように作用する。
図1に示す藺草敷物A1は 所要の大きさに裁断された藺草織物43(図2参照)を使用して形成されている。そして、図2及び図3に示すように、藺草織物43の表面全体を含む藺草積層体400の表面及び側面の全周を、被覆フィルム4で被覆している。
【0075】
藺草織物43は裁断されることによって裁断端部431を有しているが、裁断端部431を含む藺草織物43は被覆フィルム4で覆われているため、その裁断端部431から藺草の繊維が解れたり、裁断端部431から露出した藺草の繊維が擦れるようなことはない。また、逆立ったりケバ立ったりした藺草の繊維によって、足の裏などを怪我することを防止できる。このように、少なくとも藺草織物43の表面全体を被覆フィルム4で被覆すれば、従来のような裁断端部431を縁布で覆ったり、裁断端部431を含む裁断側を折り返すような処理を施す必要はない。
【0076】
よって、縁布を使用せずに裁断端部の処理ができるので、縁布が何本も横に走ったような見苦しいデザインになることはなく、図1に示す本実施例の藺草敷物A1のように、細長の藺草織物43を複数隣接して並設して組み合わせても、全体が一枚の藺草織物で形成されたようなシンプルで洗練されたデザインに仕上げることができる。
【0077】
更に、図2に示すように、藺草織物43の表面だけでなく、藺草積層体400の幅方向の各側面部も被覆フィルム4で覆われている。よって、藺草敷物A1を部屋に敷く等して使用することで並設された藺草敷物構成体2が互いにこすれ合っても、藺草織物43同士が直接接触することはない。したがって、藺草織物43の表面が擦れて繊維が逆立ったりケバ立ったり、あるいは破れたりするようなことはない。
【0078】
しかも、被覆フィルム4は透視性を有し、且つ、加熱用のヒーター56を有する真空吸引被覆装置Bを用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物43表面の凹凸に沿って密着するように被覆させてある。したがって、眼を近づけて見ても、藺草織物43の表面に被覆フィルム4が張られていることを判別することができないか、殆ど判別できないほど緻密に形成されており、藺草織物43本来の質感や風合いが損なわれていない。
【0079】
また図2に示すように、藺草敷物構成体2の幅方向の両端側は、面取り部23により角張らずに曲面状または丸みをつけて形成されている。よって、角張って形成されたものに比べて、並設された藺草敷物構成体2,2の間に手の指や足の指等を挟むことを防止できる。
【0080】
更に、この面取り部23によって、隣接して並設された藺草敷物構成体2,2の境目部分の上方に凹み230が形成される。これにより、この境目部分を踏んでも、上記凹み230が逃げとなって藺草織物A1がこの部分から上方に曲り、境目部分の上部の破損が防止される。
【0081】
また更に、藺草織物43が被覆フィルム4により被覆されているので、敷物表面が耐水性を有している。よって、部屋の中だけでなく、湿気が多く、濡れやすい温泉浴場の脱衣所等にも好適に使用できる。また表面に汚れが付着した場合でも、雑巾等で水拭きして簡単に汚れを落とすことができる。
【0082】
なお、本実施例では、ゴム状弾性膜53を有する真空吸引被覆装置B(図4(a)参照)を用いて被覆フィルム4を被覆したが、ゴム状弾性膜53を有さない真空吸引被覆装置(図示省略)を使用することもできる。即ち、ゴム状弾性膜53による押圧を行うことなく、ヒーター56による加熱操作と吸引チャンバ6による真空吸引操作で被覆フィルム4を被覆することもできる。
【0083】
また図2に示すように、本実施例では、藺草織物43が藺草積層体400(クッション材42)の表面に設けられているが、表面だけではなく藺草積層体400の幅方向の側面部まで覆うようにして設けても良い。この場合でも、藺草織物43の表面全体を被覆フィルム4で被覆すれば、隣接する藺草敷物構成体2が互いにこすれ合っても、藺草織物43同士が直接接触することはない。
【0084】
更に本実施例では、藺草の繊維方向が藺草積層体400の幅方向と本質的に一致するようにして藺草織物43を積層しているが、藺草の繊維方向が藺草積層体400の長手方向と本質的に一致するように藺草織物43を積層しても良い。
【実施例2】
【0085】
図6及び図7は、本発明に係る藺草織物を使用した敷物の第二の実施例を示す説明図である。
図6は、藺草敷物の斜視説明図、
図7は、藺草織物を断面して内部構造を表した側面視説明図である。
【0086】
なお、実施例1と同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、実施例1で説明した箇所については、説明を省略し、主に相異点を説明する。
【0087】
図6に示す藺草敷物である縁なし畳A2は、平面視で矩形状に形成されている。縁なし畳A2は、図7に示すように、通気性を有している板状基体45と、板状基体45の底面側の通気性を損なわないように、少なくとも板状基体45の表面側を覆うようにして設けられた藺草敷物構成シート46を有している。
【0088】
図7に示すように、藺草敷物構成シート46は、裁断端部431を有する藺草織物461と、藺草織物461の表面全体に被覆させてある熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム462を有している。藺草敷物構成シート46は、接着によって藺草織物461の裏側側が板状基体45に取り付けてある。藺草敷物構成シート46は、板状基体45の表面部451と側面部452の全周を覆うようにして、外周縁部分463を板状基体45の底面側に折り曲げて設けてある。なお、藺草敷物構成シート46は、藺草織物461を裁断した後の裁断端部431の処理構造を有する藺草織物構造体を構成する。
【0089】
板状基体45の底面側には、藺草敷物構成シート46の外周縁部分を覆うようにして、通気性を有する基体シート47が接着により取り付けてある。本実施例では、板状基体45としてフェルトを使用し、基体シート47として不織布を使用している。
【0090】
板状基体45は、通気性を有しているものであれば、フェルトに限定するものではなく、連続気泡の多孔性材料(例えばポリウレタンフォーム)や、その他の公知の材料を採用することができる。基体シート47も同様に、通気性を有しているものであれば、布製品(織布や編布等)やその他の公知の材料で形成することができる。
【0091】
上記した藺草敷物構成シート46は、図4(a)に示した同じ真空吸引被覆装置Bを使用して形成することができる。図4(a)を参照する。
即ち、被覆対象である所要の大きさに裁断した藺草織物461を吸引チャンバ6に置く前に、スプレーガン等を使用して藺草織物461の表面全体に、液状の接着剤を均一に塗布する。
【0092】
その後、藺草織物461の表面が上に向くように、吸引チャンバ6の吸引載置面61に直接的に藺草織物461を載置する。そして、藺草敷物A1の表面全体に被覆フィルム462を被せる。この際、被覆フィルム462が藺草織物461よりも外側へはみ出すように被せる。なお、本実施例では、実施例1で使用した成形治具は使用しない。
【0093】
その後は実施例1と同様に、図4(a)に示す昇降チャンバ5において、ヒーター56で昇降チャンバ5のゴム状弾性膜53を加熱しつつ、ゴム状弾性膜53で区画された空間部54に流入した空気を加熱する。
【0094】
次に、昇降チャンバ5を降下させ、ゴム状弾性膜53によって藺草積層体400と被覆フィルム462を所定の圧力で押圧すると共に、吸引チャンバ6に接続された真空吸引装置(図示省略)を操作して真空吸引を行う。これにより、被覆フィルム462は延伸して藺草織物461表面の凹凸形状に沿って密着する。
【0095】
この吸引終了後、昇降チャンバ5を上昇させ、被覆フィルム462が積層された藺草織物461を取り出す。後は、目的とする縁なし畳A2の大きさに合わせて裁断し、目的とする藺草敷物構成シート46を得る。
【0096】
(作 用)
本実施例に係る縁なし畳A2は、次のように作用する。
図6で示した縁なし畳A2では、藺草敷物として被覆フィルム462が表面に被覆された藺草敷物構成シート46を使用している。よって、縁なし畳A2の四隅部分(図6で丸Cで囲んだ分)に藺草織物461の裁断端部431が位置しても、その裁断端部431から藺草が解れたり、裁断端部431から露出した藺草の繊維が擦れるようなことはない。したがって、長年使用して部屋等に敷いた縁なし畳A2が互いに擦れ合っても、この四隅部分の裁断端部431が擦れて、ここから藺草織物461が破損することを防止できる。
【0097】
また、藺草の茎が折れるような方向に藺草織物461を折り曲げて縁なし畳A2の表面側の端辺部48(図6参照)が形成されていても、被覆フィルム462で端辺部48の表面が被覆されているので、端辺部48の強度が増し、藺草の繊維が破断しにくい。
【0098】
更に、藺草敷物構成シート46は、通気性を有する板状基体45の底面側の通気性を損なわないように設けてある。よって、縁なし畳A2の底部側からは、通気性を有する基体シート47と板状基体45を通して、表面側の藺草の香りが外部に漂う。したがって、通常の畳と同様に藺草の香りを楽しむことができる。
【0099】
なお、天然の藺草を模して作った合成樹脂製の模造藺草が提案されている。この模造藺草を織成したものは耐水性を有するが、素材が合成樹脂であるため藺草の香りはしない。これに対し、本実施例では耐水性を有すると共に、藺草の香りも楽しむことができるものなのである。
【0100】
また、その他の構成及び作用・効果は、既に説明した実施例1と同じか大体において同じであるため、説明を省略する。
【0101】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示の実施例に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0102】
更に、特許請求の範囲には、請求項記載の内容の理解を助けるため、図面において使用した符号を括弧を用いて記載しているが、特許請求の範囲を図面記載のものに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る藺草織物を使用した敷物の第一の実施例を示す斜視説明図。
【図2】図1のI−I部分に対応する断面の一部(図1で左端側)を示す藺草織物の部分拡大断面説明図。
【図3】図1に示す藺草敷物を構成する藺草敷物構成体を示す拡大斜視説明図。
【図4】真空吸引被覆装置を用いて、被覆フィルムを藺草積層体に被覆している状態を示す側面視説明図。
【図5】吸引チャンバを図4(a)のII−II矢視方向から見たものに対応する平面視概略説明図。
【図6】本発明に係る藺草織物を使用した敷物の第二の実施例を示す斜視説明図。
【図7】藺草織物を断面して内部構造を表した側面視説明図。
【図8】本願発明者が開発に着手したカーペットタイプの新しい藺草敷物の概略を示す部分拡大斜視説明図。
【図9】裁断端部を縁布で覆った場合の藺草敷物の概略を示す部分拡大斜視説明図。
【図10】裁断端部を含む藺草織物の幅方向の両端側をそれぞれ平板の底面側まで折り返した場合の藺草敷物の概略を示す部分拡大斜視説明図。
【符号の説明】
【0104】
A1 藺草敷物
A2 縁なし畳
B 真空吸引被覆装置
1 シート体
2 藺草敷物構成体
3 縁部材
4 被覆フィルム
5 昇降チャンバ
6 吸引チャンバ
21 底面部
22 側面部
23,24 面取り部
41 板状基体
42 クッション材
43 藺草織物
45 板状基体
46 ヒーター
46 藺草敷物構成シート
47 基体シート
48 端辺部
51 ピストンロッド
52 昇降チャンバ本体
53 ゴム状弾性膜
54 空間部
55 空気流通部
56 ヒーター
60 空間部
61 吸引載置面
62 空気吸引部
71 載置具
72 フレーム
230 凹み
400 藺草積層体
411 側面部
431 裁断端部
451 表面部
452 側面部
461 藺草織物
462 被覆フィルム
463 外周縁部分
521 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断端部(431)を有する藺草織物(43)を使用した敷物であって、
少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に、透視性を有する被覆フィルム(4)が被覆させてある、
藺草織物を使用した敷物。
【請求項2】
裁断端部(431)を有する藺草織物(43)を使用した敷物であって、
シート体(1)と、
該シート体(1)の表面に複数隣接して並設された細長い板状の藺草敷物構成体(2)と、
を備え、
該藺草敷物構成体(2)は、板状基体(41)と、該板状基体(41)に積層してまたは該板状基体(41)を覆うようにして設けられた藺草織物(43)と、少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に被覆させてある透視性を有する被覆フィルム(4)と、を有している、
藺草織物を使用した敷物。
【請求項3】
裁断端部(431)を有する藺草織物(43)を使用した敷物であって、
シート体(1)と、
該シート体(1)の表面に複数隣接して並設された細長い板状の藺草敷物構成体(2)と、
を備え、
該藺草敷物構成体(2)は、板状基体(41)と、該板状基体(41)の表面側に積層されたクッション材(42)と、該クッション材(42)に積層してまたは板状基体(41)とクッション材(42)を覆うようにして設けられた藺草織物(43)と、少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に被覆させてある熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(4)と、
を有しており、
該被覆フィルム(4)は、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(43)の表面全体の凹凸に沿って密着させてあり、この密着に伴う圧力で上記クッション材(42)が変形することによって、少なくとも藺草敷物構成体(2)の幅方向の両端側の上部は角張らずに曲面状または丸みをつけて形成されている、
藺草織物を使用した敷物。
【請求項4】
裁断端部(431)を有する藺草織物(461)を使用した敷物であって、
板状基体(45)と、
該板状基体(45)に積層してまたは該板状基体(45)を覆うようにして設けられた藺草織物(461)と、
少なくとも藺草織物(461)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(461)の表面全体に被覆させてある透視性を有する被覆フィルム(462)と、
を有している、
藺草織物を使用した敷物。
【請求項5】
裁断端部(431)を有する藺草織物(461)を使用した敷物であって、
通気性を有している板状基体(45)と、
該板状基体(45)の底面側の通気性を損なわないように、少なくとも該板状基体(45)の表面側に積層してまたは該板状基体(45)の表面側を覆うようにして設けられた藺草敷物構成シート(46)と、
を備えており、
該藺草敷物構成シート(46)は、藺草織物(461)と、上記藺草織物(461)の表面全体あるいは上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(461)の表面全体に被覆させてある透視性を有する被覆フィルム(462)と、
を有している、
藺草織物を使用した敷物。
【請求項6】
被覆フィルム(4)は熱可塑性樹脂からなり、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(43)表面の凹凸に沿って密着するように被覆させてある、
請求項1,2,4または5記載の藺草織物を使用した敷物。
【請求項7】
敷物に使用される藺草敷物構成シートであって、
裁断端部(431)を有する藺草織物(461)と、藺草織物(461)の表面全体あるいは上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に被覆させてある熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(462)と、を備えており、
該被覆フィルム(462)は、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(461)表面の凹凸に沿って密着するように被覆させてある、
藺草敷物構成シート。
【請求項8】
藺草織物(43)を裁断した後の裁断端部(431)の処理構造を有する藺草織物構造体であって、
少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体に、熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(4)が被覆させてあり、
該被覆フィルム(4)は、加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により藺草織物(43)の表面全体の凹凸に沿って密着させてある、
藺草織物構造体。
【請求項9】
藺草織物(43)を裁断した後の裁断端部(431)の処理方法であって、
加熱用のヒーター(56)を有する真空吸引被覆装置(B)を用いた加熱操作と真空吸引操作により、熱可塑性樹脂からなる透視性を有する被覆フィルム(4)が藺草織物(43)表面の凹凸に沿って密着するように、該被覆フィルム(4)で少なくとも藺草織物(43)の表面全体あるいは少なくとも上記裁断端部(431)の断面を含む藺草織物(43)の表面全体を被覆する、
藺草織物の裁断端部の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−239352(P2007−239352A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64709(P2006−64709)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【特許番号】特許第3863173号(P3863173)
【特許公報発行日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(591017504)株式会社トーシン (4)
【Fターム(参考)】