説明

蛋白含有酸性飲食品

【課題】等電点付近で蛋白質の凝集、沈澱を抑制し、蛋白質分散安定に優れたpH4.1〜6.0の蛋白含有酸性飲食品を提供すること。
【解決手段】ポリグルタミン酸を含有するタンパク質含有酸性飲食品用安定剤を添加することを特徴とする。該ポリグルタミン酸は、構成アミノ酸であるグルタミン酸がαー又はγー結合した直鎖状の水溶性高分子であるが、ポリーγーグルタミン酸が好ましい。使用するポリグルタミン酸の平均分子量は、1万から600万が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリグルタミン酸を含有することを特徴とする蛋白含有酸性飲食品用安定剤及びそれを含有するpH4.1〜6.0の蛋白含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康への意識の高まりから、乳、卵を使用した蛋白含有飲食品が多く商品化されている。特に、食しやすさの点から、果汁などを添加した酸性飲食品が多数開発されるようになってきた。
【0003】
蛋白質は、その構成アミノ酸の種類によって電離性を有し、溶液のpHによって蛋白質全体の荷電状態が変化する。この電荷状態が0になるpHを等電点という。つまり、等電点付近では蛋白質は荷電状態にならず、水に溶けにくくなる。
乳、卵に含まれる蛋白質はpH4.1〜6.0に等電点を有し、等電点に近づくほど、水に溶けにくく、凝集や沈澱が発生しやすい。
【0004】
乳においては、全乳蛋白質中の80%を占めるカゼインの等電点が4.6、カゼイン以外の蛋白質である乳清蛋白質中の大部分を占めるβ−ラクトグロブリンとα−ラクトアルブミンはそれぞれ等電点5.2、4.8であり、卵においては、卵白蛋白質の54%を占めるオボアルブミンの等電点が4.7である。
【0005】
このように、乳、卵の蛋白質はpH4.1〜6.0に等電点を持つため、その等電点からより離れた酸性域、つまりpH3.5〜3.8のあたりに飲食品を設計したものが多い。
しかしながら、pH3.5〜3.8に調整された蛋白含有酸性飲食品は、酸味が強く、蛋白質本来のおいしさが充分発揮されないため、安定性に優れ、風味の良い蛋白含有酸性飲食品の開発が所望されている。
【0006】
pH4.1〜6.0になるように調整された蛋白含有飲食品の調製方法としては、例えば乳飲食品では、カルボキシメチルセルロースナトリウムとジェランガムを使用する方法(例えば特許文献1参照)がある。また、卵飲食品に関しては、pH4.1〜4.7のpH域で、卵蛋白質と乳蛋白質を分散安定化させる方法として、澱粉を添加する方法(例えば特許文献2参照)がある。
【0007】
しかしながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムとジェランガムを添加する方法は、添加量が多くなると粘度が高くなり食感が変化してしまう。また、澱粉を添加する方法は、澱粉の添加でベタ付いた重たい食感を有し、さらに冷蔵保管時に澱粉の老化に伴う澱粉臭が発生する問題があった。
【0008】
したがって、少量の添加量で蛋白質の分散安定化効果が得られる素材が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−300849号公報(第1頁〜7頁)
【特許文献2】特開2000−157178号公報(第1頁〜5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、蛋白質の凝集、沈澱を抑制し、蛋白質分散安定に優れたpH4.1〜6.0の蛋白含有酸性飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、pH4.1〜6.0の蛋白含有酸性飲食品にポリグルタミン酸を含有する蛋白含有酸性飲食品用安定剤を添加することにより上記問題点を解決し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち本発明は、
[1] ポリグルタミン酸を含有することを特徴とする蛋白含有酸性飲食品用安定剤
[2] ポリグルタミン酸が、微生物由来のポリ−γ−グルタミン酸である、請求項1記載の蛋白含有酸性飲食品用安定剤
[3] 等電点が4.1〜6.0の蛋白質と請求項1又は2記載の蛋白含有酸性飲食品用安定剤を含有し、飲食品のpHが4.1〜6.0であることを特徴とする蛋白含有飲食品
[4] 等電点が4.1〜6.0の蛋白質が、乳、卵から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項3記載の蛋白含有飲食品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、pH4.1〜6.0の範囲において、蛋白質の凝集が効果的に抑制され、また風味に優れた蛋白含有酸性飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のpHが4.1〜6.0の蛋白含有酸性飲食品は、等電点が4.1〜6.0の蛋白質とポリグルタミン酸を含有することを特徴とする。
このような特徴を有することで、上記蛋白含有酸性飲食品は、従来の蛋白含有酸性飲食品と比べ、pH4.1〜6.0における蛋白質の凝集・沈澱が生じないため、酸味を抑えた風味に優れた蛋白含有酸性飲食品をつくることができるという優れた効果を発揮する。
【0015】
本発明に用いられるポリグルタミン酸とは、構成アミノ酸であるグルタミン酸がα−又はγ−結合した直鎖状の水溶性高分子であり、グルタミン酸γ−ベンジルエステルのN−カルボン酸無水物を重合させ、臭化水素で脱ベンジル化して得られる合成により製造されるポリ−α−グルタミン酸などもあるが、飲食品へ添加を考慮すると天然のポリグルタミン酸が好ましく、納豆菌、枯草菌などの微生物から産出されるポリ−γ−グルタミン酸がより好ましい。また、ポリグルタミン酸は、処理方法によって様々な分子量のものが調整可能であるが、本発明の効果を得るためには、使用するポリグルタミン酸の平均分子量は500以上、好ましくは平均分子量が500〜2000万、さらに好ましくは平均分子量が1万〜600万である。ここで平均分子量の測定方法に関しては特に限定されるものではないが、通常、ゲル浸透クロマトグラフ法、SDSアクリルアミドゲル電気泳動法、低角レーザ光散乱等が用いられる。
【0016】
ポリグルタミン酸はポリグルタミン酸の塩を含有してもよく、また培養中に産生するフラクタンなど多糖類が含まれても良い。可食塩としてはたとえばポリグルタミン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム塩などが例示できるが、これらの塩は単独でまたは2種類以上併用して使用できる。
【0017】
本発明の蛋白含有酸性飲食品用安定剤は、ポリグルタミン酸は単品で使用しても充分に効果が得られるが、水溶性大豆ヘミセルロース、ペクチン、ペクチン分解物、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどの糊料と併用することに制限はなく、また、形状としては顆粒、粉末、液状など挙げられるが、特に指定されない。
【0018】
本発明のポリグルタミン酸の添加量は制限するものではないが、飲食品の0.001重量%〜10.0重量%、好ましくは0.01重量%〜10.0重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜5.0重量%である。ポリグルタミン酸を添加する方法は特に限定されないが、そのまま加えても、水などに溶解した溶液を添加してもよい。また、発酵乳、発酵卵などにおいては、発酵前の牛乳などにポリグルタミン酸を添加してから発酵して、製造してもよい。
【0019】
本発明で対象とされる蛋白質とは、等電点が4.1〜6.0の蛋白質であるが、蛋白質すべての等電点が4.1〜6.0である必要はなく、蛋白質の50%以上がこの範囲に等電点を有するものであればよい。このような蛋白質として、動植物性蛋白とも使用でき、特に限定されないが、好ましくは乳、卵から選ばれる少なくとも一種類の蛋白質である。
【0020】
本発明における蛋白含有酸性食品は、蛋白質を含有する飲食品全般を示し、例えばpH4.1〜6.0に調整された酸乳飲料、酸性デザート、酸性冷菓、栄養補給を目的とした食品などタンパク質を含有した飲食品、茶碗蒸し、卵焼きなどの惣菜、医療食などであるがこれに制限されるものではない。
【0021】
蛋白含有酸性飲食品をpH4.1〜6.0の範囲になるように調整する方法としては、リンゴ、パイナップル、グレープフルーツ、ストロベリーなど果汁、黒酢、リンゴ酢、ブルーベリー酢などの酢や、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸などの有機酸及びその塩類、リン酸などの無機酸及びその塩類や炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのpH調整剤や、乳酸菌など微生物を乳に作用させて得られる発酵産生物の有機酸による方法等を挙げることができるがこれに制限されるものではない。
【0022】
本発明の蛋白含有酸性飲食品には、本発明の効果に影響を及ぼさない程度で、砂糖、果糖、糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム、ステビアなどの甘味料、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルやレシチンなどの乳化剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、食物繊維、果汁やココアパウダー、コーヒー、紅茶、酸味料、調味料、色素、香料などの添加物を添加することもできる。
【0023】
以下、本発明に関する実験例、比較例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1
ヤクルト薬品工業社製ポリグルタミン酸「納豆菌ガム」1.2gを、約200gの水を秤量した1000ml容ビーカーに添加、スターラーにて室温で10分間撹拌分散後、溶液の総重量を211.8gになるように加水した。あらかじめ18.0重量%脱脂粉乳溶液を95℃、15分間加熱殺菌し、30℃まで放冷した懸濁液にグルコノデルタラクトンを2.0重量%になるように加え、30℃で保温し、各pH(pH4.1、4.3、4.5、4.8、5.3、5.5、6.0)まで低下させた。保存後の脱脂粉乳溶液はヨーグルトカード状に凝固したため、これをプロペラ撹拌機(アズワン社製)で潰した後、さらにホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、3分間微細化した。このようにして得られた酸乳液188.2gを先のポリグルタミン酸溶液に加え、全量400.0gとした。次にこの懸濁液をホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、3分間均質化し、50.0重量%クエン酸液で各pHに補正後、1時間、5℃静置にてし、蛋白質含量2.8重量%の酸性乳飲料を得た。
【0025】
比較例1
太陽化学社製ハイメトキシルペクチン「ネオソフトP−301」1.2gを、約200gの水を秤量した1,000ml容ビーカーに添加、スターラーにて室温で10分間撹拌分散後、90℃まで加熱溶解、室温まで冷却し、溶液の総重量を211.8gになるように加水した。そこに実施例1に記載した手順で調整した各pHの酸乳液188.2gを加え、全量400.0gとした。この溶液をホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、3分間均質化、50.0重量%クエン酸液で各pHに補正後、1時間、5℃にて静置し、蛋白質含量2.8重量%の酸性乳飲料を得た。
【0026】
比較例2
太陽化学社製カルボキシメチルセルロースナトリウム「ネオソフトCC−13」1.2gを、約200gの水を秤量した1,000ml容ビーカーに添加、スターラーにて室温で10分間撹拌分散後、溶液の総重量を211.8gになるように加水した。そこに実施例1に記載した手順で調整した各pHの酸乳液188.2gを加え、全量400.0gとした。この溶液をホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、3分間均質化し、50.0重量%クエン酸液で各pHに補正後、1時間、5℃にて静置し、蛋白質含量2.8重量%の酸性乳飲料を得た。
【0027】
試験例1
<酸性乳飲料の粘度>
得られた酸性乳飲料(実施例1、比較例1〜2)を粘度計(ブルックフィールド社製)にて、測定温度5℃、測定回転数60rpmの条件のもと、粘度測定を行った。結果を表1に示す。
【0028】
<沈澱率の比較>
得られた酸性乳飲料(実施例1、比較例1〜2)約40gをあらかじめ秤量した50mlキャップ付遠沈管に充填し、キャップをした。遠心分離機(日立工機社製)を用いて、3,000rpm、20分間遠心分離を行い、溶液が入ったままの総重量を計測後、遠沈管のキャップをあけ、逆さまにして30秒間、溶液の乳漿部分を取り除いた後、遠沈管を含めた全量を測定し、溶液の入ったままの総重量から乳漿部分を除した全量を引き、沈澱物の重量を求めた。また、溶液の入ったままの総重量と空の遠沈管重量の差から試料の重さを算出した。沈澱物の重量を試料の重量で除した値の割合を乳蛋白沈澱率(%)とした。
沈澱率(%)=(沈澱物の重量/試料の重量)*100
実施例1、比較例1〜2に関して結果を表1に示す。
【0029】
<官能評価>
実施例1、比較例1〜2を、5℃で一昼夜保存後、専門パネラー10名による風味、口当たり、総合評価について官能評価をした。なお、下記に示したように5点満点で、その平均点を算出し、結果を表1に示す。
5点:大変良好である。
4点:良好である。
3点:どちらともいえない。
2点:やや悪い。
1点:悪い。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果から、実施例1は、比較例1、2と異なり、pH4.1〜6.0の幅広い範囲で、特に乳蛋白質の等電点近辺であるpH4.3〜5.3で効果的に乳蛋白質の沈澱を抑制した。また、各々のpHで、実施例1の総合評価は、比較例1、2のそれらより高い得点を得、良好な結果であった。
【0032】
次に卵を用いたpH4.1〜6.0の範囲における蛋白質の凝集抑制について評価した。
【0033】
実施例2
実施例1に使用したポリグルタミン酸4.0gを、196.0gの水を秤量した1,000ml容ビーカーに添加、スターラーで10分間撹拌溶解後、90℃まで加熱溶解した。この溶液を室温まで冷却後、水を加えて全量を200.0gとし、2.0重量%ポリグルタミン酸溶液を調製した。
また、1,000ml容ステンビーカーに水228.0g、砂糖32.0gを計り入れ、50℃まで加熱後、この溶液をディスパー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて2,000rpmで撹拌させながら、太陽化学社製卵白粉末16.0gとあらかじめ調製した2.0重量%ポリグルタミン酸溶液60.0gを添加し、さらに50.0重量%クエン酸溶液で、各pH(pH4.1、4.5、5.0、5.5、6.0)に調整した。次に全量400.0gになるよう水を加え、この懸濁液をホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、3分間均質化し、蛋白質含量3.4重量%の卵白含有酸性溶液を調製した。
【0034】
比較例3
1,000ml容ステンビーカーに水388.0g、砂糖32.0gを加え50℃まで加熱した。この溶液をディスパー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて2,000rpmで撹拌させたところに卵白粉末16.0gを加え、攪拌分散させた後、50.0重量%クエン酸溶液で各pHになるように調整した。そこに全量400.0gになるよう加水し、ホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)で、10,000rpm、3分間均質化し、蛋白質含量3.4重量%の卵白含有酸性溶液を得た。
【0035】
比較例4
太陽化学社製ハイメトキシルペクチン「ネオソフトP−301」4.0gを、196.0gの水を秤量した1,000ml容ビーカーに添加、スターラーで室温にて10分間撹拌分散した。この溶液を90℃まで加熱溶解して室温まで冷却後、溶液の総重量を200.0gになるように加水した。また、別の1,000ml容ステンビーカーに水228.0g、砂糖32.0gを計り入れ、50℃まで加熱後、この溶液をディスパー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて2,000rpmで撹拌させながら、太陽化学社製卵白粉末16.0gとあらかじめ調製した2.0重量%ペクチン溶液60.0gを添加し、さらに50.0重量%クエン酸溶液で、各pHに調整した。次に全量400.0gになるよう水を加え、この懸濁液をホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、3分間均質化し、蛋白質含量3.4重量%の卵白含有酸性溶液を調製した。
【0036】
試験例2
<比重の比較>
各卵白含有酸性溶液(実施例2、比較例3〜4)を調製した後、直ちに96ml容プラスティック容器に充填し、内容物の重量を測定することにより、比重を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
<状態観察>
得られた各卵白含有酸性溶液(実施例2、比較例3〜4)の状態観察を目視にて行い、液状を○、クリーム状を△、ホイップ状を×として、状態観察を行い、結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
一般に、卵白において、蛋白質の変性や凝集が進むほど泡が形成されやすいことが知られている。つまり、泡立ちが抑制され、蛋白質の凝集が抑えられるほど、比重値は高くなる。
表2の比重と状態観察結果から、実施例2は、比較例3、4と比較して、pH4.1〜6.0の各々のpH域において、特に卵白の等電点付近pH4.5以上で、効果的に蛋白質の凝集を抑制した。
【0040】
実施例3
ポリグルタミン酸を添加した酸性カスタードプリンを製造した。
50℃に温めた牛乳500mlにグラニュー糖75.0g、全卵200.0g、実施例1で使用したポリグルタミン酸2.4gおよび太陽化学社製乳化剤「サンソフトNo.681SPV 」0.6gを混合したのち、80℃まで加温して、撹拌溶解させた。その後、ホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、5分間予備乳化後、50.0重量%クエン酸液でpH4.7に調整した。この懸濁液をホモジナイザー(三和機械社製)にて、15MPaで均質化処理を行ったのち、耐熱性プラスティック容器(89ml容)に充填して、アルミで丁寧に蓋をし、150℃に設定したオーブン(藤澤製作所社製)で、天板に高さ約1cmの水を張ったバットへ試料の入ったプラスティック容器を置き、40分間焼成した。
【0041】
比較例5
50℃に温めた牛乳500mlにグラニュー糖77.4g、全卵200.0gおよび太陽化学社製乳化剤「サンソフトNo.681SPV 」0.6gを混合したのち、80℃まで加温して、撹拌溶解させた。その後、ホモミキサー(超高速マルチ撹拌システム「T.K.ロボミックス」特殊機化工業社製)にて、10,000rpm、5分間予備乳化後、50.0重量%クエン酸液でpH4.7に調整した。この懸濁液を、ホモジナイザー(三和機械社製)を用いて、15MPaで均質化処理を行ったのち、耐熱性プラスティック容器(89ml容)に充填、アルミで丁寧に蓋をし、150℃に設定したオーブン(藤澤製作所社製)で、天板に高さ約1cmの水を張ったバットへ試料の入ったプラスティック容器を置き、40分間焼成した。
【0042】
試験例3
<官能評価>
実施例3、比較例5を冷水に30分間浸し、5℃で一昼夜保管後、専門パネラー10名による外観(蛋白質凝集)、食感について官能評価を行った。なお、外観について、下記に示したように3点満点で、その平均点を算出し、結果を表3に示す。
◆外観
3点:蛋白質の凝集がなく、良好な外観である。
2点:蛋白質の細かな凝集がある。
1点:蛋白質の凝集が多くある。
【0043】
【表3】

【0044】
表3より実施例3の酸性カスタードプリンは、比較例4のような凝集物のある不均一な組織やざらつく食感を有さず、組織はきめ細やかでなめらかな食感を有し、酸味とカスタード風味が醸しだす風味が良好なプリンであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグルタミン酸を含有することを特徴とする蛋白含有酸性飲食品用安定剤
【請求項2】
ポリグルタミン酸が、微生物由来のポリ−γ−グルタミン酸である、請求項1記載の蛋白含有酸性飲食品用安定剤
【請求項3】
等電点が4.1〜6.0の蛋白質と請求項1又は2記載の蛋白含有酸性飲食品用安定剤を含有し、飲食品のpHが4.1〜6.0であることを特徴とする蛋白含有飲食品

【公開番号】特開2007−259807(P2007−259807A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91718(P2006−91718)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】