説明

蛍光・燐光検知装置

【課題】紙葉類等に漉き込まれた糸状蛍光発光や細線による燐光発光を検知することが可能な蛍光・燐光検知装置を提供すること。
【解決手段】蛍光発光又は燐光発光を結像レンズによって開口するスリットに結像し、このスリットを通過した発光光量を拡散板で拡散してセンサで検知する蛍光・燐光検知装置において、スリットの縦横の長さを被検出蛍光体の縦横の長さの所定の倍数を超えない範囲で構成することにより、S/N比の良好な蛍光・燐光検知装置にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類など媒体に含まれる蛍光体を検知する装置において、糸状蛍光体や細線の蛍光体を検知する蛍光・燐光検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紫外線励起によって発光する蛍光体を媒体に印刷したり、漉き込ませたりして偽造防止を狙った紙幣、カード又は有価証券が知られている。
【0003】
これらの媒体は、媒体全体に蛍光発光体を塗布したものや、蛍光や燐光を部分的にベタ塗りしたものがある(図9参照)。
【0004】
これらの蛍光や燐光の検出には、紫外線を発光する紫外線発光ランプと、この紫外線発光ランプから発光された紫外線を媒体に照射することにより、媒体に含まれる蛍光体が紫外線によって励起され、当該蛍光体から発せられた励起光を例えば受光素子としてのフォトダイオードで受光する方法が知られている。
【0005】
このように紫外線発光ランプなどの励起光源によって発光する印刷物、シール又はマークを上述したセンサを備えた光学系やカメラなどで検知する方法も知られている。
【0006】
このような従来の検知方法としては、検出する発光部分は比較的面積が大きいベタ塗り図案や、発光強度が強いインクなど、蛍光印刷部分に特徴があり、その特徴を主に検知する比較的簡易な蛍光検知装置が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−109598号公報 (第3頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の検知方法では、
(1)比較的簡易な光学系で検知できていることもあり、外光の影響を受けやすく、発光が無いのに有ると誤検知したり、発光を正しく検知できなかったりする場合があるという課題があった。また、画像入力による装置による蛍光燐光検知は高額になるという課題があった。
【0008】
(2)また、海外紙幣に用いられているように緑、赤、青、黄などの蛍光を発光する糸状の発光体を漉き込ませたものや(図7参照)、細い線で描かれた蛍光や燐光を発光する図案などは(図8参照)、検知エリア(読取範囲)に対して、その検知エリアに入る糸状の発光体の信号レベルが発光体が無い場合の信号レベルに対して低く、検知できないという課題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、紙葉類等に漉き込まれた糸状蛍光発光や細線による燐光発光を検知することが可能な蛍光・燐光検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の蛍光・燐光検知装置は、被検出媒体を搬送する搬送面上に設定された読取面を紫外線で照射する照射手段と、被検出媒体が前記読取面を通過する際、前記照射手段によって励起された被検出媒体に含有又は漉き込まれた蛍光体から放射される蛍光発光を検知する蛍光検知装置と、この蛍光検知装置の搬送下流に配置された燐光検知装置と、を備え、前記蛍光検知装置は、前記照射手段によって紫外線照射される読取面又はこの読取面と相対抗する位置に配置された蛍光基準板から放射される光を結像する結像光学手段と、この結像光学系によって結像された光を検知する蛍光検知手段と、を備え、前記蛍光検知手段は、前記照射手段によって紫外線照射される読取面又はこの読取面と相対抗する位置に配置された蛍光基準板から放射される光を結像する複数の結像光学手段と、この結像光学系によって結像された光を検知する複数の蛍光検知手段と、を備え、前記結像光学手段は、前記読取範囲から反射又は放射される紫外線をカットし、蛍光発光を通過させるフィルタと、このフィルタを通過した光を結像する結像レンズと、を備え、前記蛍光検知手段は、この結像光学手段の直近後方に前記読取面の読取範囲を設定するために配置した所定の開口部を有するスリットと、このスリットを通過した光を拡散する拡散手段と、この拡散手段によって拡散された光を検知するセンサと、を備え、前記読取範囲は、読取面に対して搬送方向の長さである横寸法と搬送方向と直行する縦寸法を有する四角形の範囲に設定するとき、この読取範囲の横寸法及び縦寸法を前記蛍光体の横寸法及び縦寸法に所定の係数を掛けて算出したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4記載の蛍光・燐光検知装置は、被検出媒体を搬送する搬送面上に設定された読取面を紫外線で照射する照射手段と、被検出媒体が前記読取面を通過する際、前記照射手段によって励起された被検出媒体に含有又は漉き込まれた蛍光体から放射される蛍光発光を検知する蛍光検知装置と、この蛍光検知装置の搬送下流に配置された燐光検知装置と、を備え、前記蛍光検知装置は、被検出媒体が前記読取面を通過する際、前記照射手段によって励起された被検出媒体に含有又は漉き込まれた蛍光体から放射される蛍光発光を検知する複数の結像光学手段及びこの結像光学手段に対応する複数の蛍光検知手段を備え、前記結像光学手段は、前記読取範囲から反射又は放射される紫外線をカットし、蛍光発光を通過させるフィルタと、このフィルタを通過した光を結像する結像レンズと、を備え、前記照射手段によって紫外線照射される読取面又はこの読取面と相対抗する位置に配置された蛍光基準板から放射される光を結像し、前記蛍光検知手段は、前記結光学手段の直近後方に前記読取面の読取範囲を設定するために配置した所定の開口部を有するスリットと、このスリットを通過した光を拡散する拡散手段と、この拡散手段によって拡散された光を検知するセンサと、を備え、前記読取範囲は、読取面に対して搬送方向の長さである横寸法と搬送方向と直行する縦寸法を有する四角形の範囲に設定するとき、この読取範囲の横寸法及び縦寸法を前記蛍光体の横寸法及び縦寸法に所定の係数を掛けて算出したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紙葉類等に漉き込まれた糸状蛍光発光や細線による燐光発光を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る蛍光・燐光検知装置100の一例である。 図2(1)は、蛍光検知装置40の正面図である。図2(2)は、図2(1)に示す蛍光検知装置40の左側面図である。以下、これらの図を参照して説明する。
【0015】
蛍光・燐光検知装置100は、例えば、図示しない紙葉類処理装置などに搭載される。紙葉類処理装置は、一括して集積された紙葉類(被検出媒体)を所定の間隔で一枚ずつ取り出して搬送路によって搬送し、本実施例の蛍光・燐光検知装置などの紙葉類判別装置によって当該紙葉類の真偽(真券か偽券か)判別又は正損(正券か損券か)判別を行い、紙葉類の種類、品質、などによって集積、施封などの区分処理を行う装置である。
【0016】
従って、蛍光・燐光検知装置100は、上述した真偽検知を行う手段として用いられることが多い。
【0017】
本実施例では、上記真偽検知を行うために、図7〜図9に示す蛍光体が当該紙葉類に含有又は漉き込まれている場合の蛍光又は燐光の検知を目的とするが、特に、従来検知が困難だった図7に示す糸状蛍光発光体(糸状蛍光発光パターン)又は図8に示す細線発光体(細線発光パターン)の検知を目的とする。
【0018】
本実施例の蛍光・燐光検知装置100は、紙葉類Pが搬送路10上を所定の速度で搬送される場合を前提としている。また、本実施例では、紙葉類Pが長手搬送(紙葉類の長辺を搬送路と平行に搬送)される場合について説明するが、短手搬送(紙葉類の短辺を搬送路と平行に搬送)される場合についても本発明を実施することが可能である。以上のことを前提に以下詳細に説明する。
【0019】
搬送路10は、搬送ローラ(図示しない)及びこの搬送ローラに掛け回した搬送ベルト(図示しない)で構成され、紙葉類Pをこの搬送ベルトで挟持して、又はエア吸い込みによる吸着によって搬送する。図は、このようにして搬送路10上を紙葉類Pが図示矢印A方向に搬送される状態を示す。
【0020】
蛍光・燐光検知装置100は、搬送路10上の読取面11を紫外線によって照射する照射部30、紙葉類Pが読取面11を通過する際、この照射部30によって励起され、当該紙葉類Pから放射された蛍光を検知する蛍光検知装置40、この蛍光検知装置40の搬送下流に配置された燐光検知装置50及び読取面11と相対抗する下部に配置された蛍光基準板21などによって構成される。
【0021】
照射部(照射手段)30は、読取面11を照射するため、2個の紫外線ランプ33a、33bが読取面に対して上流側及び下降側に配置される。
【0022】
紫外線ランプ33a、33bは、搬送路路10の搬送方向と交差する奥行方向に長尺に構成された紫外線を発光するランプで構成され、紙葉類に含有する又は漉き込まれた蛍光体に対し、最適な励起波長を含む紫外線励起ランプが用いられる。
【0023】
紫外線ランプを2個配置する理由は、発光光量を十分に確保する意味と、紙葉類が平坦でない場合に、均一に照射されない場合があり、それを防止する効果がある。
【0024】
また、紫外線ランプ33a、33bの奥行方向の長さは、奥行方向の読取面11の長さLに比べて十分な長さ(例えば3倍程度)とすることによって、読取面11を均一に照射する効果がある。
【0025】
紫外線ランプ33a、33bと読取面11との間には、紫外線透過フィルタ32a、32bが配置される。この紫外線透過フィルタ32a、32bは、紫外線ランプ33a、33bから放射される放射光の中から可視光をカットし、紫外線を透過させる。被検出媒体である紙葉類Pに含有又は漉き込まれた蛍光体は波長の短い紫外線によって励起されるからである。このようにして生成された紫外線によって読取面11が照射される。
【0026】
この読取面11を非検出媒体が通過する際、当該紙葉類に上述した蛍光体が含有又は漉き込まれている場合には、上記紫外線ランプ33a、33bによって当該蛍光体が励起され、当該蛍光体から特定の蛍光色を有する可視光が放射される。いわゆる蛍光発光となる。
【0027】
蛍光検知装置40は、照射部30によって紫外線照射を受けた読取面11又は蛍光基準板21からの反射光を結像する結像光学部(結像光学手段)41及びこの結像光学部41で結像された反射光を検知する蛍光検知部(蛍光検知手段)46で構成される。
【0028】
また、上記読取面11の搬送方向と交差する奥行方向の長さLは、当該読取面11上を紙葉類が通過するため、当該紙葉類Pの有効検知範囲の奥行方向の長さによって設定される。本実施例では、紙葉類Pの両端面は搬送ベルトへのエア吸着によって搬送されるため、紙葉類の奥行方向の全範囲を有効検知範囲に設定することが可能である。このようにして設定された奥行方向の長さLに応じて結像レンズ43の結像倍率が設定される。なお、上記紙葉類Pの有効検知範囲の長さLが長く、蛍光体又は燐光体による発光光量が対外光に対して十分なS/Nが得られない場合には、有効検知範囲を分割し複数の蛍光・燐光検知部で検知する場合もある。詳細は後述する。
【0029】
この蛍光発光は微弱であるために外乱交の影響を受けやすい。従って、この影響を軽減するために、読取面11上に設定された読取範囲から反射される紫外線をカットし、蛍光発光を通過させるためにシャープカットフィルタ(フィルタ)42が配置され、このシャープカットフィルタ42を通過した光が結像レンズ43を通過する。
【0030】
結像レンズ43を通った光は、さらにセンサ感度に不要な波長帯域を除去するための赤外線カットフィルタ44を介してスリット45に結像される。
【0031】
このスリット45の開口面積に結像する光学倍率によって検出エリアの面積が決定され、発光体の検出制度が決定される。
【0032】
なお、この発光体の発行強度によっても適正なスリット45の開口部が決定される。このようにして設定されたスリット45を通過した光は、拡散板47によって拡散され、センサ48の感度面に均一に当たる。この効果は、検知手段としてのセンサが所定の範囲の面積を有し、当該面積内で感度が均一でない場合に有効である。また、製造・組立誤差等を吸収する上で効果がある。
【0033】
本実施例では、上述述したシャープカットフィルタ42、結像レンズ43及び赤外カットフィルタ44は、箱状体の本体の中に一体に組み込んで固定し、塵等の混入がないように構成する。箱状体は、四角形、円筒形など、その形態の制限を受けないが、シャープカットフィルタ42及び赤外カットフィルタ44などは、紙葉類からの発光色によって変更する場合があるため、着脱可能に構成してもよい。この場合は、内部に塵等の混入がないような防塵が必要になる。
【0034】
この光センサ48は、微弱な蛍光を検知するために高感度のセンサが用いられる。例えば光電子増倍管などが使用される。
【0035】
蛍光基準板21は、紫外線ランプ33a、33bの経年変化を検知するための蛍光発光基準板である。紫外線ランプ33a、33bは、時間の経過に伴って紫外線発光光量が低下(経年変化)する。この紫外線発光光量の低下によって、上述した蛍光又は後述する燐光の発光光量が低下する。この発光光量が低下した状態で、蛍光又は燐光を含有又は漉き込まれた紙葉類を検知すると、紙葉類に実際には蛍光体(燐光体)が含有しているのに、当該蛍光体(燐光体)が含有していないと誤検知する場合がある。
【0036】
この不具合を解決するために、紙葉類の搬送を行っていないとき、蛍光検知装置40は、当該蛍光基準板21に用いられている蛍光基準板蛍光面22から放射される蛍光発光光量を検知し、当該蛍光発光光量に応じてセンサ48の出力を増幅する増幅器(図示しない)のゲインを制御する。すなわち、紙葉類が搬送を行っていないとき、所定範囲の蛍光発光光量変動に係らずセンサ48の出力を増幅する増幅器のゲインが一定になるようにする(AGC(Automatic Gain Control)制御と称する)。このAGC制御は従来技術によって達成されており、その詳細の説明を省略する。なお、このAGC制御は、燐光検知装置50のセンサ(検知手段)58の出力を増幅する増幅器(図示しない)に対しても行われる。
【0037】
また、上述した蛍光基準板蛍光面22からの蛍光発光をモニタすることにより上述したAGC制御による紫外線ランプ33a、33bの経年変化を防止することができるのみならず、ランプ切れ検知及びランプ変動検知などの自己診断も可能になる。この蛍光基準板蛍光面22からの反射光量を用いた自己診断方法は後述する。
【0038】
燐光検知装置50では、燐光を検知する。燐光検知装置50は、読取面12からの反射光を結像する結像光学系部51及びこの結像光学部51で結像された反射光を検知する燐光検知部56で構成される。この燐光検知装置50の基本的な構成は蛍光検知装置40と同様であるため、同一部分の説明は省略し、その異なる部分の説明を主に行う。
【0039】
上記燐光は、基本的には蛍光体による蛍光発光であるが、いわゆる蛍光発光よりも長寿命の発光が可能である。従って、このような燐光を検知するには、燐光体に紫外線ランプによって紫外線を照射して励起発光させ、紫外線の影響を受けない状態で発光している光(燐光)を検知することになる。一方、燐光は、蛍光に比べ発光強度が1/10〜1/20程度と低く、外光の影響を受けやすい。従って、この外光の影響を受けなくするために、照射部30の紫外線ランプ33a、33bの光が燐光検知装置50に入力されないように紫外線ランプ33a、33bは、照明カバー34によって覆われる。
【0040】
この燐光検知装置50には、読取面12を照射するために蛍光検知装置40に設けられているような照射部30が設けられていない。燐光は、照射部30の紫外線による紫外線励起を受けた蛍光体が紫外線励起をやめた後にも蛍光体(燐光体)が発光するからであり、上述した理由の通りである。
【0041】
本実施例では、上述したように紙葉類Pが搬送上流に配置された照射部30で紫外線による紫外線励起を受けた後に、さらに搬送され、所定の時間経過後燐光検知装置50の読取面12上を図示矢印A方向に搬送されるため、この燐光検知が可能になる。
【0042】
燐光検知部(燐光検知手段)56は、結像光学部(結像光学手段)51によって結像された光を取り込む部分に本発明の特徴であるスリット56が配置され、このスリット56を通過した光は拡散板57によって拡散される。拡散板57によって拡散された光はセンサ(検知手段)58によって検知される。
【0043】
このスリット56の形状は紙葉類に漉き込まれた蛍光材(燐光材)の形状によって設定される(詳細は後述する)。
【0044】
図3は、糸状蛍光体(又は燐光体)F1の形状に対する読取面形状との関係を示す図であり、スリット45又は57に結像される読取面の読取範囲を示している。従って、例えば、結像レンズ43の結像倍率Mが1/5に設定してある場合、現実のスリット形状は図に示す形状の1/5でよいことになる。以上のことを前提に以下、説明する。
【0045】
糸状蛍光体又は糸状燐光体はその蛍光材質が異なるが、検出するためのスリット45、55との関係では蛍光検知部46及び燐光検知部56を共通にできるため、以下、糸状蛍光体のスリット45に関して説明する。
【0046】
スリット45の開口形状は、搬送方向の幅W2に対して搬送方向と直行する奥行き方向の長さL2で示される。一方、蛍光発光体F1の形状を短手幅W1と長手長さL1で示す。媒体に漉き込まれたり、印刷されたりした蛍光体は、搬送されるスリット45の開口形状に対して様々な向きで配置される。図は、正にこの様々な状態になっている状態を示す。
【0047】
スリット45の開口形状に対して、蛍光発光光量が十分であれば、センサ(検知手段)48の出力(センサ出力)も検出可能なレベルになり、容易に検知可能である。一方、蛍光発光光量が非常に低ければセンサ出力も低く検知不可能になる。すなわち、発光光量が低い場合には、蛍光F1からの発光出力に比べて蛍光F1以外の部分からのノイズ成分の出力が大きくなり、信号対ノイズ比であるS/N比(Signal to Noise ratio)が悪くなり蛍光の検出が不可能になる。
【0048】
この場合、スリット45の開口面積を小さくしノイズ成分の出力を低減するか、センサ感度を高める方法が考えられる。
【0049】
図4は、センサ出力と閾値との関係を示す一例で、センサ出力のダイナミックレンジを100で表してある。図は、スリット開口部に全く蛍光体が掛からないときの信号出力レベル(暗)をノイズレベルとしてノイズNとし、スリット開口部45aに最大に蛍光体が掛かったときの信号レベル(明)を信号Sと表示してある。
【0050】
信号Sが信号として認識するための閾値であるレベル1よりも高ければ、最低限のS/N比(Signal to Noise Ratio)が確保できるため、信号Sを検知することができる。
【0051】
本実施例にかかるスリット開口部45aの縦横寸法L2、W2は、検出する蛍光体の縦横寸法L1、W1を用いて下式(1)、(2)を満たすときに蛍光体の検出が可能である。しかしながら、検出する蛍光体の縦横寸法が同じであっても、その種類、蛍光体の含有量によって蛍光体からの発光光量が異なる場合があり、発光光量が大きい場合には係数m及び係数kの値も大きな値を設定することができるが、発光光量が小さい場合には係数m及び係数kの値は小さな値を設定することになる。また、下式(1)、(2)の範囲を超えてスリット開口部45aの縦寸法L2、横寸法W2を大きくすると、上述したノイズN成分が大きくなり、最低限のS/N比が確保できなくなる。
【0052】
L2=m×L1・・・・・・・・・・・・・(1)
W2=k×W1・・・・・・・・・・・・・(2)
3≦m≦8・・・・・・・・・・・・・・・(3)
3≦k≦7・・・・・・・・・・・・・・・(4)
L1:検出する蛍光体の長さ
W1:検出する蛍光体の幅
L2:スリット開口部45aの縦寸法
W2:スリット開口部45aの横寸法
上述した寸法を図示した例について、m及びkの最大値を用いて読取面での読取可能な最大範囲を、L1=5mm、W1=0.5mm、m=8、k=7の場合について算出すると以下の通りである。なお、m=3、k=3は読取面での読取範囲の最低範囲であって、検知する蛍光体の大きさと、結像レンズの結像倍率との関係でスリットとして製造可能な現実的な範囲に設定される。
【0053】
L2=8×5mm=40mm・・・・・・・(5)
W2=7×0.5mm=3.5mm・・・・(6)
上式(5)、(6)で示される読取面での読取範囲が検知できる最大範囲であるため、たとえば、被検出媒体である紙葉類の幅(本実施例では短手長さ)が上式(5)を超え、読取範囲を大きくする必要がある場合には、蛍光検知部を複数配置し、読取範囲を複数の蛍光検知部で検知する必要がある。この複数の蛍光検知部又は燐光検知部によって蛍光(燐光)を検知する方法は後述する。
【0054】
なお、上式(5)、(6)に設定した場合の現実のスリット開口部は、結像レンズ43の結像倍率M=1/5の場合下記の大きさになる。
【0055】
SL2=40mm/5=8mm・・・・・・(7)
SW2=3.5mm/5=0.7mm・・・(8)
SL2:スリット開口部45aの搬送方向と直行する奥行方向の長さ
SW2:スリット開口部45aの搬送方向の長さ
被検出紙葉類が搬送されて読取面11に到達すると、上述した方法に基づいて設定されたスリット開口部45aに結像された蛍光発光光量は拡散板47によって拡散された後にセンサ(検知手段)48によって検知される。上述した通りである。
【0056】
一方、紙葉類の初期化時又は紙葉類の処理後など、紙葉類の処理を行っていないときには、蛍光・燐光検知部100の自己診断が行われる。この自己診断は紙葉類処理装置からの自己診断指示によって、図示しないCPU(Central Processing Unit)によって蛍光・燐光検知部100内の自己診断が行われ、その結果は紙葉類処理装置に送信される。本願発明は、紙葉類処理装置の発明を目的にしていないため、その説明は省略する。この自己診断では、蛍光基準板蛍光面22から放射される蛍光発光光量を検知し、検知した出力が設定された基準内に入っているかどうかを診断する。
【0057】
具体的には、蛍光基準板蛍光面22から放射される蛍光発光光量が図4に示すレベル1からレベル2の範囲にあるかどうかを下式(9)により確認する。
【0058】
レベル1≦蛍光基準板蛍光面22の蛍光発光光量≦レベル2・・・・・・・(9)
蛍光基準板蛍光面22の蛍光発光光量がレベル1に満たない場合には、紫外線ランプ33a、33bの発光光量が低下していることを示す。紫外線ランプ33a、33bが切れている場合もこの状態になる。また、蛍光発光光量がレベル2を超えている場合には、外乱光が入り込んでいる場合、又は蛍光検知装置40を構成するフィルタ、レンズなどが破損し不要な光が入り込んだ状態が含まれる。これら何れの場合も、蛍光・燐光検知装置100が正常に機能しないために自己診断異常にする。
【実施例2】
【0059】
図5は、本発明の実施例2に係る蛍光検知部を示す。この蛍光検知部は、例えば、実施例1に示す結像レンズ41及び蛍光検知部46からなる受光系を複数個(図示した例では4個)配置したものである。図示した例では、結像レンズと検知部を限られた範囲に複数配置するのが困難であるために、検知部を結像レンズから離れた位置に配置し、その間を光ファイバーなどの導光装置で接続してある。この光ファイバーを用いることで、下方に検知部を移動でき搭載上部の蛍光・燐光検知装置100の検知スペースを小さくできるメリットがある。
【0060】
また、図のように受光系を分割配置にすることによって、以下の効果が期待できる。(1)紙葉類に含有する蛍光体又は漉き込まれた蛍光体の位置が紙葉類の特定の位置にある場合には、このような分割によって個別に検知することが可能になる。
【0061】
(2)検知位置ごとに被検出蛍光体によってシャープカットフィルタなどの特性を変更することが可能になり被検出蛍光体の検知制度を向上することができる。
【0062】
(3)受光系を分割することにより、読取面を複数の受光系で検知するため、各受光系のスリット開口部の大きさを小さくすることができる。この結果、当該検知部のS/N比が向上する。
【0063】
図6は、複数分割の蛍光検知部及び燐光検知部の検知エリアを示す図で、図5に示す複数に分割した蛍光検知部を同様に燐光検知部にも適用した一例である。図中、蛍光検知エリアFA〜FDは、2個の紫外線ランプによって照射され、当該検知エリアFA〜FDの範囲に含まれる蛍光体が検知エリアごとに検知される。
【0064】
一方、上記蛍光検知部の搬送方向下流に隣接して配置される燐光検知部も蛍光検知に対応対して4分割され、4個の燐光検知エリアPA〜PD内の燐光体が検知される。
【0065】
図7は、複数の発光色を有する蛍光体の糸状発光パターンの一例である。また、図8は、細線の燐光体の燐光発行パターンの一例である。
【0066】
発光色が複数の場合、上記シャープカットフィルタを発光色に合わせるか、同一のシャープカットフィルタで検知後、受光出力を検知する際、複数の閾値で発光色を判別することにより発光媒体の特徴を検知することができる。
【0067】
また、細線の燐光パターンのように、紙葉類の偏った位置にある場合には、本実施例の分割検知方法は検知制度が高いために有効である。
【0068】
以上説明したように、本実施例は、複数の蛍光検知部及燐光検知部を用いて紙葉類の蛍光または燐光を検知しているため、実施例1の効果に加えてさらに検知精度を高めた検知が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例1に係る蛍光・燐光検知装置を示す図。
【図2】蛍光検知部の正面図及び左側面図。
【図3】糸状蛍光体又は燐光体の形状に対する読取面形状との関係を示す図。
【図4】センサ出力と閾値との関係を示す図。
【図5】本発明の実施例2に係る蛍光検知部を示す。
【図6】複数分割の蛍光検知部及び燐光検知部の検知エリアを示す図。
【図7】複数の発光色を有する蛍光体の糸状発光パターンの一例。
【図8】細線の燐光体燐光発光パターンの一例。
【図9】従来の蛍光体の発光パターン。
【符号の説明】
【0070】
P 紙葉類
10 搬送路
11、12 読取面
20 蛍光基準板部
21 蛍光基準板
22 蛍光基準板蛍光面
23 蛍光基準板スリット
24 外光防止カバー
30 照射部
31、101 窓
32a、32b 紫外線透過フィルタ
33a、33b 紫外線ランプ
40 蛍光検知装置
41 結像レンズ部
42 シャープカットフィルタ
43 レンズ
44 赤外カットフィルタ
45 スリット
45a スリット開口部
46 蛍光検知部
47 拡散板
48 センサ
50 燐光検知装置
51 結像レンズ部
52 シャープカットフィルタ
53 レンズ
54 赤外カットフィルタ
55 スリット
56 燐光検知部
57 拡散板
58 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出媒体を搬送する搬送面上に設定された読取面を紫外線で照射する照射手段と、
被検出媒体が前記読取面を通過する際、前記照射手段によって励起された被検出媒体に含有又は漉き込まれた蛍光体から放射される蛍光発光を検知する蛍光検知装置と、
この蛍光検知装置の搬送下流に配置された燐光検知装置と、
を備え、
前記蛍光検知装置は、
前記照射手段によって紫外線照射される読取面又はこの読取面と相対抗する位置に配置された蛍光基準板から放射される光を結像する結像光学手段と、
この結像光学手段によって結像された光を検知する蛍光検知手段と、
を備え、
前記結像光学手段は、
前記読取範囲から反射又は放射される紫外線をカットし、蛍光発光を通過させるフィルタと、
このフィルタを通過した光を結像する結像レンズと、
を備え、
前記蛍光検知手段は、
前記結像光学手段の直近後方に前記読取面の読取範囲を設定するために配置した所定の開口部を有するスリットと、
このスリットを通過した光を拡散する拡散手段と、
この拡散手段によって拡散された光を検知する検知手段と、を備え、
前記読取範囲は、
読取面に対して搬送方向の長さである横寸法と搬送方向と直行する縦寸法を有する四角形の範囲に設定するとき、この読取範囲の横寸法及び縦寸法を前記蛍光体の横寸法及び縦寸法に所定の係数を掛けて算出したことを特徴とする蛍光・燐光検知装置。
【請求項2】
前記読取範囲の横寸法は前記蛍光体の横寸法よりは大きく、前記蛍光体の横寸法の7倍以下とし、前記読取範囲の縦寸法は、前記蛍光体の縦寸法よりは大きく縦寸法の8倍以下であることを特徴とする請求項1記載の蛍光・燐光検知装置。
【請求項3】
前記蛍光検知装置又は燐光検知装置の前記スリットと前記拡散板との間に導光手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の蛍光・燐光検知装置。
【請求項4】
被検出媒体を搬送する搬送面上に設定された読取面を紫外線で照射する照射手段と、
被検出媒体が前記読取面を通過する際、前記照射手段によって励起された被検出媒体に含有又は漉き込まれた蛍光体から放射される蛍光発光を検知する蛍光検知装置と、
この蛍光検知装置の搬送下流に配置された燐光検知装置と、
を備え、
前記蛍光検知装置は、
被検出媒体が前記読取面を通過する際、前記照射手段によって励起された被検出媒体に含有又は漉き込まれた蛍光体から放射される蛍光発光を検知する複数の結像光学手段及びこの結像光学手段に対応する複数の蛍光検知手段を備え、
前記結像光学手段は、
前記読取範囲から反射又は放射される紫外線をカットし、蛍光発光を通過させるフィルタと、
このフィルタを通過した光を結像する結像レンズと、
を備え、
前記照射手段によって紫外線照射される読取面又はこの読取面と相対抗する位置に配置された蛍光基準板から放射される光を結像し、
前記蛍光検知手段は、
前記結光学手段の直近後方に前記読取面の読取範囲を設定するために配置した所定の開口部を有するスリットと、
このスリットを通過した光を拡散する拡散手段と、
この拡散手段によって拡散された光を検知する検知手段と、
を備え、
前記読取範囲は、
読取面に対して搬送方向の長さである横寸法と搬送方向と直行する縦寸法を有する四角形の範囲に設定するとき、この読取範囲の横寸法及び縦寸法を前記蛍光体の横寸法及び縦寸法に所定の係数を掛けて算出したことを特徴とする蛍光・燐光検知装置。
【請求項5】
前記蛍光検知装置又は燐光検知装置の前記スリットと前記拡散板との間に導光手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の蛍光・燐光検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−60524(P2010−60524A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228940(P2008−228940)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】