説明

蛍光体及び発光装置

【課題】波長600〜680nmの領域において高輝度の蛍光体および該蛍光体を用いる発光装置の提供。
【解決手段】蛍光体は組成式(1):CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zr〔Mはマグネシウム、バリウム、ベリリウム及び亜鉛から選択され、Aはアルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムから選択され、Bは珪素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選択され、Zはユーロピウム及びセリウムから選択され、0<p<1、0≦q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2、2.7≦n≦3.1〕を有する組成物を含有し、該蛍光体の正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ、液晶用バックライト光源、蛍光灯、発光ダイオードなどの照明ユニットに使用される窒化物蛍光体に関する。本発明はまた、該当窒化物蛍光体の組成及びを該当蛍光体を使用する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光を使用する発光装置は広く使われてきている。特に発光ダイオードが成功裡に開発されてからそれを使った発光装置は周知の冷陰極ランプ、白熱電球などの発光装置に比べて発光効率が高く、体積が小さく、電力消費が低く、そしてコストが低いなど、優れた特徴を有するため、各種の光源として使用される。一方、半導体発光装置は半導体発光素子と蛍光体からなっており、蛍光体は半導体発光素子から発する光を吸収して且つそれを転換する。即ち、半導体発光素子から発する光と蛍光体転換によって発する光とからなる両者を混合して用いる。このような発光装置は蛍光灯、車両照明、ディスプレイ、液晶バックライトなどの各種の分野において使用され、中でも白色発光装置は最も汎用されている。現行の白色発光装置はセリウムを活性中心とするYAG蛍光体(Y3Al5O12:Ce)と青色光を発する半導体発光素子を組み合わせて構成される。しかし、Y3Al5O12:Ce蛍
光体と青色光を発する半導体発光素子を組み合わせて発せられる混合光を使用する際、その色度座標は青色光を発する半導体発光素子の色度座標とY3Al5O12:Ce蛍光体の色度座標
との連結線上に位置するため、この混合光は赤色光を欠いた白色光となり、演色性と色彩飽和度に関して明らかに不十分であった。また、Y3Al5O12:Ceの比較的良好な励起光のス
ペクトル領域と半導体発光素子の発光領域とは不一致であるため、励起光の転換効率が悪く、高輝度の白光光源が容易に得られない。このような色調不良と発光輝度低下の現象を解決するため、近年YAG:Ce蛍光体に赤色を発光できる蛍光体を混入すると共に、赤色を
発する蛍光体の品質改良をも併せて行い、発光輝度を高めることが積極的に展開されてきた。
【0003】
しかし、青色光を吸収して赤色光を発する蛍光体は極めて稀であって、現在業界においての研究開発は窒化物、窒酸化物蛍光体が主流である。既知のものとして、ユーロピウム(Eu)を付活剤としたSr2Si5N8:Eu蛍光体、CaAlSiN3:Eu蛍光体及び一般式はMzSi12-(m+n)Alm+nOnN16-n:Euであるサイアロン蛍光体がある。しかしながら、Sr2Si5N8:Eu蛍光体はその結晶体自身の耐熱性が悪く、長期の使用時に輝度と演色性が共に低下する欠点がある。サイアロン蛍光体はそれ自体に耐久性の問題は無いが、蛍光体の発光輝度は明らかに不足するため、商業上の使用は一般的にはなっていない。CaAlSiN3:Eu蛍光体は比較的良好な耐久性、及びサイアロン蛍光体に比べて良好な輝度を持つが、業界としては蛍光体の発光輝度を更に高め、発光装置により高い発光効率をもたらすことが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のことに鑑みて、本発明の目的は、高輝度の蛍光体材料を提供し、またその蛍光体材料を半導体発光素子と組み合わせて構成される高輝度の発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の蛍光体を提供するに至った。すなわち本発明の蛍光体は組成式CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zr〔式中Mはマグネシウム、バリウム、ベリリウム及び亜鉛から選択され、Aはアルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムから選択
され、Bは珪素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選択され、Zはユーロピウム及びセリウムから選択され、0<p<1、0≦q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2、2.7≦n≦3.1である〕を有す
る組成物を含有し、この蛍光体は以下の測定方法で測定される正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmであること特徴とするものである。すなわち導電度200μS/cm以下の蛍光体を取り、蛍光体対純水が1対100の重量比率となるように純水を加えて混合溶液を調製した
後、容器を密閉し、80℃にて40時間加熱してから混合溶液を室温まで冷却し、そして該混合溶液の水相のカルシウム溶出含量を測定し、正規化する。
【0006】
本発明はまた以下の蛍光体を提供する。
【0007】
正規化カルシウム溶出含量が5〜20ppmである上記蛍光体。
【0008】
q=0である上記蛍光体。
【0009】
0<p<1、0<q<1である上記蛍光体。
【0010】
本発明の蛍光体において、正規化カルシウム溶出含量は1〜25ppmであり、さらに正規
化ストロンチウム溶出含量が1〜20ppmである。正規化ストロンチウム溶出含量は、以下
の方法で測定される。すなわち導電度200μS/cm以下の蛍光体を取り、蛍光体対純水が1
対100の重量比率となるように純水を加えて混合溶液を調製した後、80℃にて40時間加熱
してから混合溶液を室温までに冷却し、そして該混合溶液の水相を取り、その正規化ストロンチウム溶出含量を測定する。
【0011】
上記蛍光体において、好ましくは正規化カルシウム溶出含量は5〜20ppmで、且つ正規
化ストロンチウムの溶出含量は3〜17ppmである。
【0012】
上記蛍光体において、好ましくは0.05≦p≦0.9、0.1≦q≦0.95である。
【0013】
上記蛍光体において、Mはマグネシウム及び亜鉛から選択されるもの、Aはアルミニウム及びガリウムから選択されるもの、Bは珪素及びゲルマニウムから選択されるものであるのが好ましい。
【0014】
好ましくは上記の蛍光体に対し、455nmの光源からの光を使用して照射する時、蛍光体
の発光波長は600〜680nm、その発光色調のCIE 1931色度座標(x,y)は、0.45≦x≦0.72
、0.2≦y≦0.5である。
【0015】
より好ましくは、上記の蛍光体に対し、455nmの光源からの光を使用して照射する時、
蛍光体の発光色調のCIE 色度座標(x,y)は、0.6≦x≦0.7、0.3≦y≦0.4である。
【0016】
本発明が提供する発光装置は、半導体発光素子及び上述の蛍光体を含む。蛍光体は半導体発光素子からの光に励起され、その励起光を転換し、その励起光と異なる光を発する。
【0017】
上述の発光装置は、半導体発光素子が300〜550nmの波長の光を発することができる。
【0018】
本発明によれば、蛍光体における正規化カルシウム溶出含量を特定の範囲に制御することによって、高輝度の蛍光体を得ることができる。更に本発明によると、正規化カルシウム溶出含量及び正規化ストロンチウム溶出含量を同時に特定の範囲内に制御すれば、高輝度の蛍光体を得ることができる。また、本発明によると、該蛍光体に半導体発光素子を組み合わせて、高輝度の発光装置を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】輝度測量装置の使用状態の略図である。
【図2】本発明の発光装置実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の技術内容、特徴及び効能などについて、以下に詳細に述べる。
【0021】
本発明は、提供する蛍光体に、組成式CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zr〔式中Mはマグネシウム、バリウム、ベリリウム及び亜鉛から選択され、Aはアルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムから選択され、Bは珪素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選択され、Zはユーロピウム及びセリウムから選択され、0<p<1、0≦q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2、2.7≦n≦3.1である〕を有する
組成物を含有し、この蛍光体は以下の測定方法で測定される正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmである。すなわち導電度200μS/cm以下の蛍光体を取り、蛍光体対純水が1対100の重量比率となるように純水を加えて混合溶液を調製した後、容器を密閉し、80℃にて40時間加熱してから混合溶液を室温までに冷却し、そして該混合溶液の水相におけるカル
シウムの溶出含量を測定して正規化する。
【0022】
上記の蛍光体において、Mはマグネシウム、バリウム、ベリリウム及び亜鉛から選択されるもの、Aはアルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムから選択される。例えばAは単独のアルミニウム元素成分であっても良いし、またアルミニウム、ガリウムなどからなる元素成分の混合物でも良い。Bは珪素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選択され、例えばBは単独の珪素元素成分であっても良いし、また珪素、ゲルマニウムなどからなる元素成分の混合物でも良い。Z元素はユーロピウム及びセリウムから選択される。Caはカルシウム元素、Srはストロンチウム元素、Oは酸素元素、Nは窒素元素である。
【0023】
組成式CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zrにおいて、0<p<1,0≦q<1,0≦m<1である。mは好ましくは0≦m<1、より好ましくは0≦m≦0.1、最も好ましくは0≦m≦0.05である。a=1である。より好ましくは、Aがアルミニウムである時に発光輝度がよ
り良い。
【0024】
bは好ましくは0.8≦b≦1.2、より好ましくは0.9≦b≦1.1である。より好ましくは、Bが珪素で且つb値が1である時、発光輝度がより良い。
【0025】
tは好ましくは0≦t≦0.3、より好ましくは0≦t≦0.2である。
【0026】
nは好ましくは2.7≦n≦3.1、より好ましくは2.8≦n≦3.1である。
【0027】
m、a、b、tが前述の本発明の範囲内にある時、発光輝度が良好である。
【0028】
rは好ましくは0.00001≦r≦0.1である。更に、Z元素がユーロピウム(Eu)である時、発光輝度がより良好である。r値が0.00001未満であると、発光中心のEuの量が不十分に
なり、発光輝度は低くなる。一方r値が0.1を超えると、Eu原子間において相互干渉が起
きて濃度消光現象を引き起こし、輝度が低くなる。より好ましくは、r値が0.002〜0.03
である時、その発光輝度がより良好である。
【0029】
また、本発明の蛍光体の組成物中において、カルシウムと、ストロンチウムの含有量は
0<p<1、0≦q<1である。q=0の時にも輝度上昇の効果が達せられるが、qが0でない時は、好ましくはp値は0.02〜0.95、q値は0.05〜0.98であって、更に好ましくは
、p=0.05〜0.9、q=0.1〜0.95である。カルシウム、ストロンチウム元素の相対関係は、好ましくは0<(p+q)<1、(p/q)=0.1〜10である。特に本発明の蛍光体は
正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmの範囲にある時、得られた蛍光体の発光輝度は明
らかに上昇する。
【0030】
また、本発明の蛍光体の組成物はカルシウムとストロンチウムを同時に含むことができ、すなわち0<p<1、0<q<1である時において、好ましい正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmで、且つ正規化ストロンチウム溶出含量が1〜20ppmである。更に好ましくは正規化カルシウム溶出含量が5〜20ppmで、正規化ストロンチウム溶出含量が3〜17ppmである時、得られる蛍光体の発光輝度は明らかに上昇する。
【0031】
導電度200μS/cm以下の蛍光体とは、下記の導電度測定方法を用いて測定された導電度
が200μS/cm以下であることを意味する。その導電度測定方法は以下の通りである。純水(導電度は1μS/cm以下)と蛍光体で蛍光体含量が1重量%となる測定用の蛍光体混合溶液
を調製し、その混合溶液を80℃の水浴にて30分間攪拌してから室温になるまで静置冷却し、その上層の透明溶液を取って導電度を測定する。測定された導電度値が200μS/cm以下
であると、該蛍光体は導電度200μS/cm以下の蛍光体である。一方、測定された値が200μS/cmを超えている場合には、まずは蛍光体を酸で洗浄して200μS/cm以下となるまで処理
を行う。この処理を要求するのは、導電性成分を付加して本発明所定の正規化カルシウム溶出含量又は正規化ストロンチウム溶出含量を逃れようとする試みを排除する趣旨である。蛍光体の酸洗浄処理方法は下記の通り行う。0.5重量%の硝酸溶液と蛍光体を蛍光体含
量が1重量%となるように混合した蛍光体酸混合液を調製し、室温にて30分間超音波振動を行ってから濾過し、濾過された蛍光体に100倍の純水を加えて、80℃水浴にて30分間密
閉攪拌洗浄してから再びろ過する。上述の純水による洗浄、ろ過の工程は四回繰り返して、最後にろ過して得られた蛍光体において、前述の導電度測定方法を用いてその導電度値を測定する。
【0032】
正規化カルシウムまたは正規化ストロンチウム溶出含量を測定する時は、導電度200μS/cm以下の蛍光体と純水との混合溶液が1対100の重量比率となるように調整され、加熱過程中に水分が蒸発しないように容器が密閉される。加熱装置はオーブンである。80℃にて40時間加熱した後、蛍光体と水の混合溶液を室温にまで冷却する。
【0033】
正規化(Normalized)カルシウム溶出含量とは、前述の工程後に混合溶液の水相を測定して得たカルシウム含量の値を、組成式CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zr中のp値で除したものである。
【0034】
正規化(Normalized)ストロンチウム溶出含量とは、前述の工程後に混合溶液の水相を測定して得たストロンチウム含量の値を、組成式CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zr中のq値で除し
たものである。
【0035】
455nmの光源からの光を使用して本発明の蛍光体を照射する時、該蛍光体が励起を受け
て発する発光主波長は600〜680nmであり、その発光色調のCIE 1931色度座標(x,y)は0.45≦x≦0.72、0.2≦y≦0.5である。ここで発光主波長とは、発光強度最大の波長を指す。
【0036】
本発明の一つの実施形態において、0<p<1、0≦q<1、0≦m≦0.05、0≦t≦0.1、0.00001≦r≦0.1、p+q+m+r=[1/(1+t)]、a=1、b=(1−t
)/(1+t)、n=(3−t)/(1+t)であり、且つ該蛍光体の正規化カルシウム
溶出含量は1〜25ppmである。発光輝度の面から考えると、蛍光体の組成はCapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zrであって且つ単相としても存在できる。しかし合成過程における助溶剤の添
加、原料中の不純物、処理過程での汚染、原料揮発などの要因の影響を受けて、同時にその他の結晶相または非結晶相が存在する可能性があるが、発光輝度に影響しないのであれば、本発明の主旨には反しない。
【0037】
本発明の蛍光体の実施形態における組成分析の結果によると、計算される各元素のm、a、b、t、n値は使用された原料配合比率から計算されるm、a、b、t、n値とはやや差がある。この現象は、焼成における少量の原料の分解、蒸発、または分析誤差によるものと考えられる。特にt値の差は、例えば開始段階にすでに原料に含まれた酸素、表面に付着した酸素、または原料の計量時に混合や焼成で原料表面の酸化より混入した酸素、及び焼成後に蛍光体表面に吸着された水分もしくは酸素などによってもたらされると考えられる。また、窒素ガス及び/またはアンモニアガスを含有する環境下で焼成を行う時に、原料中の酸素は離脱して窒素に置換されうるため、t、nの判断に若干の差を生じると考えられる。
【0038】
本発明の蛍光体を製造する際、カルシウム、ストロンチウム元素の原料としては、その窒化物を使用するのが好ましい。窒化物の製造方法は、例えば所望の2価金属を選んで高純度窒素の雰囲気下で焼成を行うことからなる。焼成時の雰囲気は高純度の窒素ガスを使用するが、好ましくは純度99.99%以上である。一方窒素ガスの流速は高流速の状態に保つ必要があり、例えば窒化カルシウム焼成時の好ましい流速は10〜70リットル/分、より好
ましくは30〜50リットル/分であって、一方の窒化ストロンチウム焼成時の好ましい流速
は70〜90リットル/分、より好ましくは80〜90リットル/分である。窒素ガスの流速が高すぎたり低すぎたりすると、本発明の特定範囲内にある正規化カルシウム溶出含量及び正規化ストロンチウム溶出含量を有する蛍光体を合成するための適切な窒化物を合成することができない。窒化カルシウムの焼成温度は好ましくは600℃〜900℃の間、より好ましくは700〜800℃の間である。窒化ストロンチウムの焼成温度は好ましくは600℃〜1000℃の間
、より好ましくは700〜900℃の間である。焼成温度が高すぎても低すぎても所望の適切な窒化物が得られない。窒化カルシウムの焼成時間は好ましくは3〜12時間、より好ましくは3〜10時間である。窒化ストロンチウムの焼成時間は好ましくは3〜24時間、より好ましくは5〜24時間である。焼成時間は長すぎても短すぎても所望の適当な窒化物が得られない。焼成の昇温速度は特別に制御する必要があり、即ちカルシウムの融点より200℃程
度低く、またはストロンチウムの融点より150℃程度低い時に、昇温速度は比較的緩やか
に、例えば5℃/分の昇温速度であることが好ましく、より好ましくは3℃/分である。その理由は、金属の窒化反応を進める際、その金属の融点の付近にあるときに昇温速度が速すぎると、表面金属が速やかに融解するに伴って窒化反応が起きやすくなり、その結果所望の適切な窒化カルシウムまたは窒化ストロンチウムが得られないからである。焼成の容器はBN(窒化ホウ素)坩堝、窒化珪素坩堝が好ましく、特にBN(窒化ホウ素)坩堝が最も好ましい。カルシウム、ストロンチウムの窒化反応式は下式で示す通りである。
3Ca+N2→Ca3N2
3Sr+N2→Sr3N2
【0039】
本発明の蛍光体を製造する時に、A元素(+III価)、B元素(+IV価)の原料はそれ
ぞれの窒化物、酸化物、あらゆる形式の化合物を使用できる。例えば、A元素の窒化物(AN)/酸化物(A2O3)、またはA元素、B元素の窒化物(AN、B3N4)を混合して使用できる。ここでの「酸化物」は、酸素と化合した化合物に限らない。例えば炭酸塩、しゅう酸塩などは焼成中に分解するので、実質的に酸化物を構成する該元素と酸素を含む化合物も上述の「酸化物」の範囲にある。窒化物も、該元素と窒素を有する化合物を指す。
【0040】
本発明の蛍光体の原料は各種の異なる形式からなる前駆物質であっても良い。便宜上窒
化物原料を例にとって説明すると、A元素、B元素の各窒化物原料は市販品として調達できるものでよいが、純度が高い方が都合が良いので、3N(99.9%)以上の原料が好ましい。各原料粒子の粒径は反応促進の観点から考えると微粒子が好ましいが、原料の粒径、形状の相異などに応じて、得られた蛍光体の粒径、形状も変動する。従って、最終的に望ましい蛍光体に所要の粒径を得るために、それに近似する粒径の窒化物原料を用意しても良い。Eu元素の原料は市販の酸化物、窒化物原料または金属であっても良く、純度は高いほど良くて、より好ましくは3N(three nines)以上、特に好ましくは4N(four nines)以上の
原料である。
【0041】
原料の混合方式は、乾式法又は湿式法の何れでも良い。例えば、乾式ボールミル式または液体を加えた湿式ボールミル式など多種の実施方式であっても良く、単一の方式に限られない。Ca3N2、Sr3N2を量り取ったり混合したりする場合、これらの化合物は酸化されやすいため、不活性な環境下でグローブボックスにて操作するのが適切である。また、各原料の窒化物は水分の影響を受けやすいため、不活性ガスは十分に水分を除去されたガスであることが望ましい。混合装置はボールミル機または研磨鉢などの通常の装置で良い。
【0042】
本発明の蛍光体を製造する際、各原料を特定の比率で量り取り混合して、坩堝に入れ、その坩堝を高温炉に入れて焼成する。焼成温度は高温であるので、焼成に使用する炉は金属抵抗または石墨抵抗の加熱方式が好ましい。焼成の方式は、常圧焼成法または気圧(気
体で加圧する)焼成法などの外部から機械的に加圧を行わない焼成方式が好ましい。坩堝
は不純物を含まない高純度材質のものが好ましく、例えばAl2O3坩堝、Si3N4坩堝、AlN坩
堝、サイアロン坩堝、BN(窒化ホウ素)坩堝などの不活性の環境下で使用可能である坩堝であって、最も好ましくはBN坩堝であり、それを使うと坩堝に由来する不純物の混入を有効に防止できる。焼成の雰囲気は非酸化性気体であって、例えば窒素、水素、アンモニア、アルゴンなど、または上記気体の任意の組み合わせであって良い。蛍光体の焼成温度は1200℃以上2200℃以下であり、より好ましくは1400℃以上2000℃以下で、昇温速度は3〜15℃/分である。比較的低温下で焼成すると比較的微細な粒径の蛍光体が得られ、比較的高
温下で焼成すると粒径の大き目の蛍光体が得られる。焼成時間は原料の種類によって異なるが、一般に反応時間は1〜10時間が好ましい。焼成時の不活性環境下の圧力は好ましくは0.5MPa以下(特に0.1MPa以下がより好ましい)である。焼成の完了後、室温まで冷却して、ボールミルまたは工業用粉砕機などで粉砕し、続けてろ過、乾燥、仕分けなどの工程を経て、本発明の蛍光体が得られる。
【0043】
高輝度の蛍光体を得るためには、蛍光体を焼成する時に添加される助溶剤、原料中の不純物、処理過程の汚染などの要因による影響を最小限に抑えることを通じて、蛍光体組成中の不純物含量を最小限に抑制する。特にフッ素、ホウ素、塩素、炭素などが大量に存在すると、発光が抑制される。したがって、比較的高純度の原料を選択し、合成工程による汚染を抑えて、上記の各元素成分の含量をそれぞれ1000ppm以下に抑えることが望ましい

【0044】
本発明の蛍光体は、粉体状として使用する時に、平均粒径として20μm以下が好ましい
。その理由は、蛍光体粉体の発光は主にその粒子の表面から発するものであり、その平均粒径(本発明において「平均粒径」は体積中の数粒径(D50)を指す)が20μm以下であれば、蛍光体粉体の重量単位ごとに所定の表面積が確保されて輝度の低下を防止できるからである。また、蛍光体粉体を発光素子上に塗布する場合は、該粉体の密度が高められ、それによっても輝度の低下を防止できる。更に、本発明者らの検討によれば、蛍光体粉体の発光効率の観点から考えれば、平均粒径は1μm以上が好ましい。上記をまとめると、本発明
の蛍光体粉体の平均粒径は好ましくは1μm以上且つ20μm以下で、特に3.0μm以上且つ15μm以下の粒径がより好ましい。ここでの「平均粒径(D50)」は、Beckman Coulter社製のMultisizer-3を用いてコールター法に基づいて測定された値を指す。
【0045】
本発明の蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、電気放出ディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、発光ダイオード(LED)などに適用される。特に、本発
明の蛍光体に455nmの光源からの光を照射する時に、蛍光体の発光主波長は600nm〜680nm
、発光色調のCIE 1931色度座標(x,y)は0.45≦x≦0.72、0.2≦y≦0.5であって、且つ発光輝度が高い。したがって、本発明の蛍光体は特に発光ダイオードに適用されうる。
【0046】
本発明の発光装置は半導体発光素子及び本発明の蛍光体を含む。半導体発光素子は300
〜550nmの波長を発するものが好ましく、特に330〜420nmの紫外(または紫)光半導体発光
素子または420〜500nmの青色半導体発光素子がより好ましい。このような半導体発光素子は、硫化亜鉛または窒化ガリウムなどの各種半導体であっても良いが、発光効率を考えると窒化ガリウム半導体が好ましい。窒化ガリウム発光素子では、有機金属気相化学成長法(MOCVD)またはハイドライド気相成長法(HVPE)などの方法を通じて基板上に窒化物半導体
が形成されるが、InαAlβGa1-α-βN (0<α、0<β、α+β<1)からなる半導体発
光素子が最も好ましい。半導体構造はMIS接合、PIN接合、PN接合などの均質構造、ヘテロ接合構造または二重ヘテロ接合構造の何れでも良い。また、半導体層の材料または混晶度によってその発光波長が制御される。
【0047】
本発明の発光装置において、本発明の蛍光体は単独で使用しても良いし、別の発光特性を有する蛍光体と一緒に使用しても良い、それによって所望の色の発光装置を構成することができる。例えば、330〜420nmの紫外光半導体発光素子の場合、これによって励起されて420nm以上且つ500nm以下の波長を発する青色蛍光体、500nm以上且つ570nm以下の波長を発する緑色蛍光体、及び本発明の蛍光体を組み合わせて使用することができる。上記の青色蛍光体としては、例えばBaMgAl10O17:Euが挙げられ、緑色蛍光体としてはβ-サイアロン蛍光体が挙げられる。この構成により、半導体発光素子から発する紫外線が蛍光体を照射する時に、赤、緑、青の3色が発光され、それを混合して白色の発光装置を形成することができる。
【0048】
また、420〜500nmの青色半導体発光素子を使用し、それによって励起されて550nm以上
且つ600nm以下の波長を発する黄色蛍光体、及び本発明の蛍光体からなる組み合わせを使
用することができる。上記の黄色蛍光体としては、例えば(Y、Gd)3(Al、Ga)5O12:Ceが
挙げられる。この構成により、半導体発光素子から発する青色光が蛍光体を照射すると、赤、黄の2色が発光され、それらは半導体発光素子自身からの青色と混合されて、白色または電球色を帯びた色の照明器具を形成することができる。
【0049】
また、420〜500nmの青色半導体発光素子を使用し、それによって励起されて500nm以上
且つ570nm以下の波長を発する緑色蛍光体、及び本発明の蛍光体からなる組み合わせを使
用することができる。上記の緑色蛍光体としては、例えばβ-サイアロン蛍光体が挙げら
れる。この構成により、半導体発光素子から発する青色光が蛍光体を照射すると、赤、緑の2色が発光され、それらは半導体発光素子自身からの青色と混合されて、白色の照明器具を形成することができる。
【実施例】
【0050】
以下では、本発明の実施例について説明を行うが、本発明はこれに限定されるものではない。最初に測定方法及び原料の由来について説明する。
(1)蛍光体輝度及び色度座標:蛍光体はTOPCON輝度計SR-3Aを用いて、455nmの波長を照射して蛍光体輝度及び色度座標を測定する。輝度値の測定誤差は±0.3%以内である。
(2)蛍光体発光の主波長:Jobin YVONのFluoroMax-3で測定する。発光の主波長とは、455nmの光を使用して蛍光体を励起したときの、蛍光体の最大発光強度の波長を指す。
(3)蛍光体組成元素の分析:
(3-1a) 機器:Jobin YVONのULTIMA-2型感応カップリングプラズマ原子放射スペクトルグラフィー(ICP)を用いて測定する。
(3-1b) サンプルの前処理:0.1gのサンプルを正確に量り取って白金の坩堝に入れ、Na2CO3 1gを加えて均一に混合した後、1200℃の高温炉にて溶融させる(温度条件:室温から2時間かけて1200℃まで昇温して、1200℃で5時間恒温にする)。溶融物は冷却後、酸溶
液として例えば25ml のHCl(36%)を加えて溶解し、透明になるまで加熱する。冷却後に100mlのPFA定量瓶に放置し、純水で標準線まで定量する。
(3-2a) 機器:Horibaの型番EMGA-620Wの窒素酸素分析器。
(3-2b) 測量:蛍光体20mgを錫カプセル内に入れて坩堝に放置して、測定を行う。
(4)正規化カルシウム溶出含量及び正規化ストロンチウム溶出含量の測定:
(4a) 機器:Jobin YVONのULTIMA-2型感応カップリングプラズマ原子放射スペクトルグラフィー(ICP)を用いて測定する。
(4b) 前処理:導電度200μS/cm以下の蛍光体を取り、蛍光体対純水が1対100の重量比
率となるように純水を加えて混合溶液を調製し、その混合溶液を80℃にて40時間加熱した後、室温までに冷却してから0.45nm細孔径のフィルターでろ過し、得られた水相溶液の測定を、ICPを用いて直接行う。
(5)導電度測定機器:SuntexのSC-170
(6)蛍光体D50平均粒径分析:Beckman Coulter Multisizer-3を用いて測定を行う。D50とは、粒径が該値以下の粒子の累積体積が、粒子全体積の50%を占めることを示す。
【0051】
実施例1
準備された所定の金属カルシウム(2N)を純窒素ガス雰囲気にて焼成した。反応条件は、窒素流速が50リットル/分、室温から中間温度までの昇温速度が5℃/分、中間温度である650℃から750℃までの昇温速度が5℃/分であった。750℃の恒温で12時間焼成を行った後、10℃/分の速度で室温まで冷却して、窒化カルシウム(Ca3N2)化合物を得た。
【0052】
準備された所定の金属ストロンチウム(2N)を純窒素ガス雰囲気にて焼成した。反応条件は、窒素流速が85リットル/分、室温から中間温度までの昇温速度が10℃/分、中間温度である620℃から900℃までの昇温速度が1℃/分であった。900℃の恒温で24時間焼成を行った後、10℃/分の速度で室温まで冷却して、窒化ストロンチウム(Sr32)化合物を得た

【0053】
上記の合成で得たCa3N2を0.2/3モル、Sr3N2を0.792/3モル、市販のAlN(3N)を1モル、Si3N4(3N)を1/3モル、Eu2O3(3N)を0.008/2モルの比率で、それぞれの原料粉体を量り取っ
て、窒素雰囲気下でグローブボックス内において研磨鉢を使用して混合した。原料混合粉体における各元素のモル比率を表2に示す。上記の原料混合粉体を窒化ホウ素坩堝に入れて高温炉に入れ、炉内雰囲気を高純度窒素ガス環境とし、気体流量を80リットル/分とし
、10℃/分の昇温速度で1800℃まで上げていき、1800℃にて12時間保持して焼成を行った
。その後10℃/分の速度で室温まで温度を下げ、続けて粉砕、ボールミル、ろ過、乾燥、
仕分けなどの工程を経て、本発明の蛍光体を得た。平均粒径(D50)の分析結果は8.5μmで
あった。窒素酸素分析器およびICP分析結果として、それぞれCa:4.71重量%、Sr:34.33重量%、Al:16.13重量%、Si:16.70重量%、N:23.96重量%、O:1.59重量%、Eu:0.67重量%であった。従って、1モルのAlを基準とした時、実際の組成式はCa0.197Sr0.655Al1Si0.995N2.861O0.166:Eu0.007、即ち、CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zrの式中はp=0.197、q=0.655、m=0、t=0.166、r=0.007、a=1、b=0.995、n=2.861となった。導電度200μS/cm以下の蛍光体0.1gを取り、蛍光体対純水が1対100の重量比率となるように純水を加えて混合してからそのガラス容器を密閉し、その混合溶液を80℃にて40時間加熱した後、室温まで冷却し、測定された該混合溶液の水相中のカルシウム溶出含量は0.47ppmであり、これをpで除した正規化カルシウム溶出含量は0.47/0.197=2.4ppmであった。
該混合溶液の水相中のストロンチウム溶出容量は0.45ppmであり、これをqで除した正規
化ストロンチウム溶出含量は0.45/0.655=0.7ppmであった。また、455nmの光線によって励起された該蛍光体の測定された発光の主波長は616nm、CIE 1931色度座標はx=0.634、y=0.364、発光輝度は167%であった(表3を参照)。本発明における実施例と比較例の発光輝度は、以下に述べる実施例8の蛍光体の発光輝度を100%としたときの相対的な発光輝
度である。
【0054】
実施例2〜4、比較例1〜3
窒化カルシウムの合成条件は表1に従い、原料混合粉体中の各元素のモル比率を表2に示すように調整した。それ以外の工程は実施例1と同様に行った。窒化ストロンチウムの合成も同様に行った。得られた蛍光体の物性の測定結果を表3に示す。表3からわかるように、窒化カルシウムの焼成条件を調整して、正規化カルシウム溶出含量を1〜25ppmの
範囲内とした時、より良好な輝度値が示される。
【0055】
実施例5〜7、比較例4〜5
窒化カルシウムの合成条件は表1に従い、原料混合粉体中の各元素のモル比率を表2に示すように調整した。それ以外の工程は実施例1と同様に行った。窒化ストロンチウムの合成も同様に行った。得られた蛍光体の物性についての測定結果を表3に示す。実施例5の正規化カルシウム溶出量は16.1ppm、正規化ストロンチウム溶出量は0.6ppmであった。
実験の結果、上述と同様の結論が得られた。即ち、正規化カルシウム溶出量を1〜25ppm
の範囲内とした時、より良好な輝度値が示される。
【0056】
実施例8〜10、比較例6〜7
窒化カルシウムの合成条件は表1に従い、原料混合粉体中の各元素のモル比率を表2に示すように調整した。またYとしてはY2O3(3N)を、GeはGeO2(3N)を、ZnはZnO(3N)をそれ
ぞれ使用した。それ以外は実施例1と同様に行った。窒化ストロンチウムの合成も同様に行った。得られた蛍光体の物性についての測定結果を表3に示す。実験の結果、上述と同様の結論が得られた。即ち、正規化カルシウム溶出量を1〜25ppmの範囲内とした時、よ
り良好な輝度値が示される。
【0057】
実施例11〜12
実施例11では所定の金属ストロンチウム(2N)を粉砕後に純窒素ガス雰囲気にて焼成した。反応条件は窒素流速が85リットル/分、昇温速度は10℃/分としたが、620℃辺りから
昇温速度を3℃/分に変えて800℃まで温度を上げた。800℃の恒温で24時間焼成を行った
後、10℃/分の速度で室温まで冷却して、窒化ストロンチウム(Sr3N2)化合物を得た。実施例12の窒化ストロンチウムの合成条件は、焼成を恒温780℃にて20時間で行った以外は
、上記と同様とした。
【0058】
窒化カルシウムの合成条件は表1に従い、原料混合粉体中の各元素のモル比率を表2に示すように調整した。それ以外の工程は実施例1と同様に行った。得られた蛍光体の物性の測定結果を表3に示す。実験結果からわかるように、正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmで正規化ストロンチウム溶出含量が1〜20ppmの範囲内にあった実施例11と、正規化カルシウム溶出含量だけが1〜25ppmの範囲内にあった実施例1と比較すると、実施例
11の発光輝度は相同な色度座標下において明らかに5%上昇した。実施例12と実施例5との比較でも同じ現象があり、その輝度の相対的な差は3%程度であった。これは、正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmで正規化ストロンチウム溶出含量が1〜20ppmm範囲
内にある時、より良好な輝度の上昇効果が示されることを表す。
【0059】
実施例13、比較例8〜9
窒化カルシウムの合成条件は表1に従い、原料混合粉体中の各元素のモル比率を表2に示すように調整した。それ以外の工程は実施例1と同様に行った。得られた蛍光体の物性
の測定結果を表3に示す。実験結果から上述と同様の結論が得られた。即ち、正規化カルシウム溶出量が1〜25ppm範囲内にあるとき、より良好な輝度値が示される。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
本発明の蛍光体の輝度値は、輝度測定器を用いて測定される。図1に示すように、この輝度測定装置は黒色の箱体11、サンプル槽12、光源13、光導入管14、反射鏡15及び輝度計16からなる。サンプル槽12を箱体11中に置き、光源13をサンプル槽12と垂直で且つその上の約5センチの所に設置し、光導入管14の直径は約2センチで且つ光源13と45°の角度なるように設置し、反射鏡15は光導入管14の中にサンプル槽12から約8センチ離して配置し、そして輝度計16は反射鏡15との距離が約40センチとなるよう配置する。サンプル槽12中の蛍光体が光源13に照射され、蛍光体から発した蛍光は光導入管14及び反射鏡15の作用により水平に輝度計16に導かれ、輝度値の測定が行われる。
【0065】
本発明の前述の各実施例及び比較例における蛍光体の輝度測定についてより詳しくは、測定用のサンプル1.3gを量り取ってサンプル槽12に入れ、槽の中に均一となるように押
さえて平坦化した。続けて該サンプル槽12を箱体11内に配置し、発光波長455nmの光源13
からの光を使用して垂直にサンプルを照射し、輝度計16(TOPCON社製、型番はSR-3A)はfield 1°探測方式を用いて、光源照射された蛍光体が発する蛍光の蛍光輝度を測定した。
【0066】
ここで、蛍光体の発光スペクトルの主波長は、発光強度最大の波長を指す。
【0067】
そして、前述の本発明の各実施例の蛍光体サンプルと半導体発光素子を封じて、本発明の発光装置が提供される。
【0068】
図2は、本発明の発光装置の実施例として、半導体発光素子21、蛍光層22及び封装層23を含む発光装置を示す。
【0069】
ここで半導体発光素子21は、導電可能で且つ凹型の受載台212を有する基台211、凹型受載面212に設置して且つ基台211と電気的に接続する発光ダイオード晶粒213を備え、連結
線214は発光ダイオード晶粒213と電気的に接続し、導線215は連結線214と電気的に接続する。基台211と導線215は外部からの電気エネルギーを誘導して発光ダイオード晶粒213に
提供し、発光ダイオード晶粒213は受けた電気エネルギーを光エネルギーに転換して外へ
発する。本実施例は、市販の発光波長455nm、InGaNの青色ダイオード晶粒213(製造社:
奇力光電)を導電銀粉ペースト(グレード:BQ6886、製造社:UNINWELL)を用いて基台211の受載台211に接着させ、続いて発光ダイオード晶粒213の頂点から該発光ダイオード晶粒213と電気的に接続する連結線214及び導線215が延伸されている。
【0070】
上記の蛍光層22は発光ダイオード晶粒213を被覆する。蛍光層22に含まれる蛍光体221は発光ダイオード晶粒213から発する光を受けて励起された後、転換して励起光波長と異な
る光を発する。本実施例において蛍光層22は、蛍光体221を35重量%含有するシリコーン
樹脂を発光ダイオード晶粒213の外表面に塗布し、乾燥及び硬化して形成される。
【0071】
封装層23は半導体発光素子21部分の基台211、連結線214、部分的導線215及び蛍光層22
を被覆する。
【0072】
上記をまとめると、本発明は蛍光体構造における各元素の比率、並びに蛍光体中の正規化カルシウム溶出含量を1〜25ppmの範囲内に制御することによって、発光の主波長が600〜680nmである高輝度の蛍光体が得られる。さらに、該蛍光体に半導体発光素子を搭載す
ると、それと同時に高輝度の発光装置が得られる。
【0073】
上記述べたものは、本発明の比較的良好な実施例を記述したものであって、それをもって本発明の実施範囲が限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の内容に基づいて行われるあらゆる簡単な、同じ効果を奏する変更及び修飾は、すべて本発明の範囲内にある。
【符号の説明】
【0074】
11:箱体
12:サンプル槽
13:光源
14:光導入管
15:反射鏡
16:輝度計
21:半導体発光素子
211:基台
212:受載台
213:発光ダイオード晶粒
214:連結線
215:導線
22:蛍光層
221:蛍光体
23:封装層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体に組成式CapSrqMm-Aa-Bb-Ot-Nn:Zr〔式中Mはマグネシウム、バリウム、ベリリウム及び亜鉛から選択され、Aはアルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテチウムから選択され、Bは珪素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選択され、Zはユーロピウム及びセリウムから選択され、0<p<1、0≦q<1、0≦m<1、0≦t≦0.3、0.00001≦r≦0.1、a=1、0.8≦b≦1.2、2.7≦n≦3.1である〕を有する組成物を含有し、且つ該蛍光体において以下の測定方法、すなわち
導電度200μS/cm以下の蛍光体を取り、
蛍光体対純水が1対100の重量比率となるように純水を加えて混合溶液を調製し、
80℃にて40時間加熱してから混合溶液を室温まで冷却し、
該混合溶液の水相のカルシウム溶出含量を測定し正規化する
により測定される正規化カルシウム溶出含量が1〜25ppmの範囲にあることを特徴とする
蛍光体。
【請求項2】
正規化カルシウム溶出含量が5〜20ppmであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光
体。
【請求項3】
q=0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
0<p<1、0<q<1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項5】
以下の測定方法、すなわち
導電度200μS/cm以下の蛍光体を取り、
蛍光体対純水が1対100の重量比率となるように純水を加えて混合溶液を調製し、
80℃にて40時間加熱してから混合溶液を室温まで冷却し、
該混合溶液の水相のストロンチウム溶出含量を測定し正規化する
ことにより測定される正規化ストロンチウム溶出含量が1〜20ppmの範囲にあることを特
徴とする請求項4の蛍光体。
【請求項6】
正規化カルシウム溶出含量が5〜20ppmの範囲内にあり正規化ストロンチウム溶出含量
が3〜17ppmの範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載の蛍光体。
【請求項7】
0.05≦p≦0.9、0.1≦q≦0.95であることを特徴とする請求項5に記載の蛍光体。
【請求項8】
Mがマグネシウム及び亜鉛から選択され、Aがアルミニウム及びガリウムから選択され、Bが珪素及びゲルマニウムから選択されることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の蛍光体。
【請求項9】
455nmの光源からの光を使用して蛍光体を照射した時に、該蛍光体の発光色調のCIE 1931色度座標(x,y)が0.45≦x≦0.72、0.2≦y≦0.5にあることを特徴とする請求項1
から8の何れかに記載の蛍光体。
【請求項10】
455nmの光源からの光を使用して蛍光体を照射した時に、該蛍光体の発光色調のCIE 1931色度座標(x,y)が0.6≦x≦0.7、0.3≦y≦0.4にあることを特徴とする請求項9に
記載の蛍光体。
【請求項11】
半導体発光素子及び該半導体発光素子から発する光を受け励起された後に、転換してから励起光と異なる光を発する蛍光体を含み、該蛍光体が請求項1〜10のいずれかに記載の
蛍光体であることを特徴とする発光装置。
【請求項12】
半導体発光素子から発する光波長が300〜550nmであることを特徴とする請求項11記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−87289(P2012−87289A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175517(P2011−175517)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(594006345)奇美實業股▲分▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】