説明

蛍光体

【課題】より高い発光輝度を示す蛍光体を提供する。
【解決手段】M1、M2、M3、M4、ハロゲン元素およびOからなる蛍光体(ここで、M1はアルカリ土類金属元素を表わし、M2は3価の金属元素を表わし、M3は付活元素を表わし、M4は4価の金属元素を表わす。)であって、M1:(M2+M3):M4:ハロゲン元素のモル比が、1:4:3:a(ここで、aは0.01以上3以下の範囲の値である。)である蛍光体。M1、M2、M3、M4およびハロゲン元素を含有する金属化合物混合物(ここで、M1、M2、M3、M4は前記と同じ意味を有する。)であって、M1のハロゲン化物、M2のハロゲン化物およびM3のハロゲン化物からなる群から選ばれる1種以上のハロゲン化物を含有する金属化合物混合物を焼成する前記の蛍光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は発光素子に用いられている。発光素子としては、蛍光体の励起源が電子線である電子線励起発光素子(例えば、ブラウン管、フィールドエミッションディスプレイ、表面電界ディスプレイ等)、蛍光体の励起源が紫外線である紫外線励起発光素子(例えば、液晶ディスプレイ用バックライト、3波長型蛍光ランプ、高負荷蛍光ランプ等)、蛍光体の励起源が真空紫外線である真空紫外線励起発光素子(例えば、プラズマディスプレイパネル、希ガスランプ等)、蛍光体の励起源が青色LEDの発する光または紫外LEDの発する光である白色LED、蛍光体の励起源がX線である発光素子(X線撮像装置等)等が挙げられる。蛍光体は、上記のような励起源を照射することにより発光する。
【0003】
従来の蛍光体としては、特許文献1に、Ca(La、Gd)4Si313で表される化合物に付活剤が含有されてなる蛍光体が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−206631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の蛍光体においては、励起源照射後に発光輝度が低下し難いという点では十分であるものの、高い発光輝度を示す蛍光体を得るという観点では、改良の余地があった。本発明の目的は、より高い発光輝度を示す蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記の発明を提供する。
<1>M1、M2、M3、M4、ハロゲン元素およびOからなる蛍光体(ここで、M1はアルカリ土類金属元素を表わし、M2は3価の金属元素を表わし、M3は付活元素を表わし、M4は4価の金属元素を表わす。)であって、M1:(M2+M3):M4:ハロゲン元素のモル比が、1:4:3:a(ここで、aは0.01以上3以下の範囲の値である。)である蛍光体。
<2>M1がBaを含有する前記<1>記載の蛍光体。
<3>M2がGdを含有する前記<1>または<2>に記載の蛍光体。
<4>M3がTbを含有する前記<1>〜<3>のいずれかに記載の蛍光体。
<5>M4がSiである前記<1>〜<4>のいずれかに記載の蛍光体。
<6>ハロゲン元素がFである前記<1>〜<5>のいずれかに記載の蛍光体。
<7>aが1以上2以下の範囲である前記<1>〜<6>のいずれかに記載の蛍光体。
<8>M1、M2、M3、M4およびハロゲン元素を含有する金属化合物混合物(ここで、M1はアルカリ土類金属元素を表わし、M2は3価の金属元素を表わし、M3は付活元素を表わし、M4は4価の金属元素を表わす。)であって、M1のハロゲン化物、M2のハロゲン化物およびM3のハロゲン化物からなる群から選ばれる1種以上のハロゲン化物を含有する金属化合物混合物を焼成する前記<1>記載の蛍光体の製造方法。
<9>焼成時の保持温度が、950℃以上1050℃以下の温度である前記<8>記載の蛍光体の製造方法。
<10>前記<8>または<9>に記載の製造方法により得られる蛍光体。
<11>前記<1>〜<7>のいずれか、または前記<10>に記載の蛍光体を有することを特徴とする蛍光体ペースト。
<12>前記<11>に記載の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
<13>前記<1>〜<7>のいずれか、または前記<10>に記載の蛍光体を有する発光素子。
<14>前記<1>〜<7>のいずれか、または前記<10>に記載の蛍光体を有する真空紫外線励起発光素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明の蛍光体は、より高い発光輝度を示すことから、発光素子用として、特に真空紫外線励起発光素子用として好適であり、さらには、電子線、紫外線、真空紫外線、青色LED、紫外LED、X線等の励起源を照射した後の発光輝度の低下も少なく、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明について説明する。
【0009】
本発明は、M1、M2、M3、M4、ハロゲン元素およびOからなる蛍光体(ここで、M1はアルカリ土類金属元素を表わし、M2は3価の金属元素を表わし、M3は付活元素を表わし、M4は4価の金属元素を表わす。)であって、M1:(M2+M3):M4:ハロゲン元素のモル比が、1:4:3:a(ここで、aは0.01以上3以下の範囲の値である。)である蛍光体を提供する。
【0010】
本発明において、M1としては、Mg、Ca、Sr、Baを挙げることができ、これらを2種以上用いてもよい。より高い発光輝度を示す蛍光体を得る意味で、M1はBaを含有することが好ましく、より好ましくはBaである。
【0011】
本発明において、M2としては、Sc、Y、La、Gdを挙げることができ、これらを2種以上用いてもよい。より高い発光輝度を示す蛍光体を得る意味で、M2はGdを含有することが好ましく、より好ましくはGdである。
【0012】
本発明において、M3としては、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Mnを挙げることができ、これらを2種以上用いてもよい。より高い発光輝度を示す蛍光体を得る意味で、M3はTbを含有することが好ましく、より好ましくはTbである。
【0013】
また、本発明において、M2:M3のモル比としては、通常、3.96:0.04〜3.0:1.0、好ましくは3.8:0.2〜3.2:0.8であり、より好ましくは、3.6:0.4〜3.2:0.8である。
【0014】
本発明において、M4としては、Siおよび/またはGeを挙げることができる。より高い発光輝度を示す蛍光体を得る意味で、M4は、Siであることが好ましい。
【0015】
本発明において、ハロゲン元素としては、F、Cl、Br、Iを挙げることができ、これらを2種以上用いてもよい。より高い発光輝度を示す蛍光体を得る意味で、ハロゲン元素として、Fを含有することが好ましく、より好ましくはFである。
【0016】
また、本発明において、aは、0.01以上3以下の範囲の値であり、より高い発光輝度を示す蛍光体を得る意味で、好ましくは0.1以上2.5以下の範囲の値であり、より好ましくは1以上2以下の範囲の値である。
【0017】
また、本発明において、Oが酸素原子を表すことは言うまでもない。
【0018】
次に、本発明の蛍光体を製造する方法について説明する。本発明の蛍光体は、焼成により本発明の蛍光体となる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。すなわち、M1、M2、M3、M4およびハロゲン元素を含有する金属化合物混合物(ここで、M1はアルカリ土類金属元素を表わし、M2は3価の金属元素を表わし、M3は付活元素を表わし、M4は4価の金属元素を表わす。)を焼成することにより製造することができる。
【0019】
金属化合物混合物の原料であるM1、M2、M3、M4を含有する金属化合物としては、例えば、M1、M2、M3、M4の酸化物を用いるか、または水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩など高温で分解して酸化物になりうるものを用いることができる。また、金属化合物混合物に、ハロゲン元素を含有させるには、M1、M2、M3、M4を含有する金属化合物とハロゲン化アンモニウム(例えばフッ化アンモニウム、塩化アンモニウム等)を混合するか、前記のM1、M2、M3、M4を含有する金属化合物の一部を、M1、M2、M3、M4のハロゲン化物に置き換えて用いればよい。
【0020】
より高い輝度を示す蛍光体を製造する意味では、上記において、金属化合物混合物は、M1のハロゲン化物、M2のハロゲン化物およびM3のハロゲン化物からなる群から選ばれる1種以上のハロゲン化物を含有することが好ましく、M2のハロゲン化物および/またはM3のハロゲン化物を含有することがより好ましい。また、金属化合物混合物が、M2のハロゲン化物および/またはM3のハロゲン化物を含有する場合には、M1を含有する金属化合物としてはM1の炭酸塩を用い、M4を含有する金属化合物としてはM4の酸化物を用いることが好ましい。
【0021】
例えば、本発明において好ましい蛍光体の一つであるBa:(Gd+Tb):Si:Fのモル比が、1:(3.4+0.6):3:aである蛍光体は、BaCO3、Gd23、TbF3およびSiO2を、Ba:Gd:Tb:Siのモル比が1:3.4:0.6:3となるように秤量、混合して得られる金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。ここで、後述の焼成時間、焼成温度を制御することによって、aを制御することができる。
【0022】
前記の混合には、例えばボールミル、V型混合機、攪拌機等の通常工業的に用いられている装置を用いることができる。また、湿式混合、乾式混合のいずれによってもよい。
【0023】
前記の金属化合物混合物を、組成にもよるが、例えば900℃以上1500℃以下の温度範囲にて、0.3時間以上100時間以下の時間範囲で保持して焼成することにより本発明の蛍光体を得ることができる。ここで、焼成時間、焼成温度を制御することにより、蛍光体におけるaを制御することができる。aの範囲において、焼成時間が長くなればなるほど、焼成温度が高くなればなるほど、aは減少する傾向にある。前記の焼成時の保持温度は、950℃以上1050℃以下の温度であることが好ましい。
【0024】
焼成時の雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、空気、酸素、酸素含有窒素、酸素含有アルゴン等の酸化性雰囲気、水素を0.1〜10体積%含有する窒素、水素を0.1〜10体積%含有するアルゴン等の還元性雰囲気が挙げられる。またさらに強い還元雰囲気で焼成するために、適量の炭素を添加して焼成してもよい。また仮焼時の雰囲気は、大気等の酸化性雰囲気、還元性雰囲気のいずれでもよい。
【0025】
また、前記の焼成の前に、金属化合物混合物について、焼成時の保持温度未満の温度で保持して仮焼を行うことも可能である。仮焼を行う雰囲気は不活性ガス雰囲気、酸化性雰囲気もしくは還元性雰囲気のいずれでもよい。また仮焼後に粉砕することもできる。
【0026】
さらに上記方法にて得られる蛍光体を、例えばボールミル、ジェットミル等を用いて粉砕することができる。また、洗浄、分級することができる。また、得られる蛍光体の輝度をさらに向上させるために、焼成を2回以上行うこともできる。
【0027】
次に、本発明の蛍光体を有する蛍光体ペーストについて説明する。
本発明の蛍光体ペーストは、本発明の蛍光体および有機物を主成分として含有し、該有機物としては、溶剤、バインダー等を挙げることができる。本発明の蛍光体ペーストは、従来の発光素子の製造において使用されている蛍光体ペーストと同様に用いることができ、熱処理することにより蛍光体ペースト中の有機物を揮発、燃焼、分解等により除去し、本発明の蛍光体から実質的になる蛍光体層を得ることができる蛍光体ペーストである。
【0028】
本発明の蛍光体ペーストは、例えば、特開平10−255671号公報に開示されているような公知の方法により製造することができ、例えば、本発明の蛍光体とバインダーと溶剤とを、ボールミルや三本ロール等を用いて混合することにより、得ることができる。
【0029】
前記バインダーとしては、セルロース系樹脂(エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、変性セルロースなど)、アクリル系樹脂(アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシアクリレート、フェノキシメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレンアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの単量体のうちの少なくとも1種の重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0030】
また前記溶剤としては、例えば1価アルコールのうち高沸点のもの;エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール;アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルアセテート)などが挙げられる。
【0031】
また、蛍光体ペーストにおいて、用途に応じ、本発明の蛍光体とそれとは異なる蛍光体とを混合して用いてもよい。本発明の蛍光体と異なる蛍光体としては、赤色発光蛍光体としては、3価のユウロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y23:Eu)、3価のユウロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y22S:Eu)などが挙げられ、緑色発光蛍光体としては、セリウム、テルビウム付活リン酸ランタン(LaPO4:Ce、Tb)やテルビウム付活セリウム・テルビウム・マグネシウム・アルミニウム蛍光体((CeTb)MgAl1119:Tb)などが挙げられる。青色発光蛍光体としては、ユウロピウム付活ストロンチウムリン酸塩蛍光体(Sr5(PO43Cl:Eu)、ユウロピウム付活ストロンチウム・バリウム・カルシウムリン酸塩蛍光体((Sr,Ca,Ba)5(PO43Cl:Eu)およびユウロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミニウム蛍光体(BaMg2Al1627:Eu、BaMgAl1017:Eu等)、ケイ酸塩蛍光体((Sr,Ca,Ba)MgSi26:Eu、(Sr,Ca,Ba)3MgSi28:Eu等)などが挙げられる。
【0032】
前記のようにして得られた蛍光体ペーストを、基板に塗布後、熱処理して得られる蛍光体層は耐湿性に優れる。基板としては、材質はガラス、樹脂等が挙げられ、フレキシブルなものであってもよく、形状は板状のもの、容器状のものであってもよい。また、塗布の方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。また、熱処理の温度としては、通常、300℃〜600℃である。また、基板に塗布後、熱処理を行う前に、室温〜300℃の温度で乾燥を行ってもよい。
【0033】
ここで、本発明の蛍光体を有する発光素子の例として、紫外線励起発光素子である三波長形蛍光ランプを挙げてその製造方法について説明する。三波長形蛍光ランプの製造方法としては例えば、特開2004−2569号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体を、発光色が求める白色になるように適宜に混合した三波長発光形蛍光体を、例えば、ポリエチレンオキサイド水溶液などに分散して蛍光体ペーストを調製する。この蛍光体ペーストをガラスバルブの内面に塗布した後に、例えば400℃〜900℃の温度範囲でベーキングして蛍光膜を形成させる。この後、ガラスバルブ端部へのステムの封止、バルブ内の排気、水銀および希ガスの封入、排気管の封切、口金の装着など通常の工程を経て、三波長形蛍光ランプを製造することができる。
【0034】
次に本発明の蛍光体を有する発光素子の例として、真空紫外線励起発光素子であるプラズマディスプレイパネルを挙げてその製造方法について説明する。プラズマディスプレイパネルの製造方法としては例えば、特開平10−195428号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、緑色発光蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体により構成されるそれぞれの蛍光体を、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコールからなるバインダーおよび溶剤と混合して蛍光体ペーストを調製する。背面基板の内面の、隔壁で仕切られアドレス電極を備えたストライプ状の基板表面と隔壁面に、蛍光体ペーストをスクリーン印刷などの方法によって塗布し、300〜600℃の温度範囲で熱処理し、それぞれの蛍光体層を得る。これに、蛍光体層と直交する方向の透明電極およびバス電極を備え、内面に誘電体層と保護層を設けた表面ガラス基板を重ねて接着する。内部を排気して低圧のXeやNe等の希ガスを封入し、放電空間を形成させることにより、プラズマディスプレイパネルを製造することができる。
【0035】
次に本発明の蛍光体を有する発光素子の例として、電子線励起発光素子であるフィールドエミッションディスプレイを挙げてその製造方法について説明する。フィールドエミッションディスプレイの製造方法としては例えば、特開2002−138279号公報に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち、緑色発光蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体により構成されるそれぞれの蛍光体を、それぞれ、例えば、ポリビニルアルコール水溶液などに分散して蛍光体ペーストを調製する。その蛍光体ペーストをガラス基板上に塗布後、熱処理することにより蛍光体層を得てフェイスプレートとする。そのフェイスプレートと多数の電子放出素子を有するリアプレートとを支持枠を介して組立てるとともに、これらの間隙を真空排気しつつ気密封止するなど通常の工程を経て、フィールドエミッションディスプレイを製造することができる。
【0036】
次に本発明の蛍光体を有する発光素子の例として、白色LEDを挙げてその製造方法について説明する。白色LEDの製造方法としては例えば、特開平5−152609号公報および特開平7−99345号公報等に開示されているような公知の方法が使用できる。すなわち本発明の蛍光体を少なくとも含有する蛍光体を、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、シリコンゴムなどの透光性樹脂中に分散させ、その蛍光体を分散させた樹脂を青色LEDまたは紫外LEDを取り囲むように成形することにより、白色LEDを製造することができる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでもない。
【0038】
発光輝度の測定は、蛍光体を真空槽内に設置し、6.7Pa(5×10-2torr)以下の真空に保持し、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機株式会社製H0012型)またはエキシマ172nmランプ(ウシオ電機社製、H0016型)を用いて真空紫外線を照射することで行った。
【0039】
蛍光体中のハロゲン元素の含有量は、次の方法により求めた。
すなわち、秤量した蛍光体粉末試料1gを、ピロ燐酸とともに蒸留フラスコに入れ、蛍光体粉末を加熱溶解し、その後、水蒸気をフラスコ内に導入して(フラスコは145℃に保持)、ハロゲン元素を水蒸気側に十分に抽出して、水蒸気を冷却してハロゲン抽出液を得る(得られるハロゲン抽出液は500ml程度が必要である。)。
得られたハロゲン抽出液を用いて、ハロゲン元素の含有量を定量分析する。ハロゲン元素が、フッ素の場合には、イオン電極装置(例えば、オリオン社製 920A型)を用いてフッ素を定量分析すればよいし、塩素の場合は抽出液をイオンクロマト装置(例えば、ダイオネックス社製 DX−120型)で分析すればよい。
【0040】
蛍光体の粉末X線回折図形は、CuKαの特性X線を用いた粉末X線回折法により測定した。測定装置としては、株式会社リガク製X線回折測定装置RINT2500TTR型を用いた。
【0041】
比較例1
炭酸バリウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と酸化ガドリニウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)と酸化テルビウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)と二酸化珪素(和光純薬工業株式会社製:純度99.99%)を用いて、Ba:Gd:Tb:Siのモル比が1:3.4:0.6:3となるように秤量し、混合した後、2体積%H2含有N2の雰囲気中で1400℃で3時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して、蛍光体1を得た。蛍光体1のX線回折図形を図1に示した。図1により、蛍光体1は、BaGd3.4Tb0.6Si313で表される蛍光体であることがわかった。また、蛍光体1中のフッ素(F)含有量を調べたところ、24ppmであった。
【0042】
蛍光体1に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ、緑色の発光を示し、得られた輝度を100とした。
【0043】
蛍光体1に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ172nmランプ(ウシオ電機社製、H0016型)を用いて真空紫外線を照射したところ、緑色の発光を示し、得られた輝度を100とした。
【0044】
蛍光体1に、バインダー(例えばエチルセルロースとイソプロパノールを1:9で混合したもの)を加え混練後、空気中において600℃で30分保持してバインダーを除去させた後の蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ、緑色の発光を示し、このときの輝度は蛍光体1とほとんど変わらなかった(蛍光体1の輝度に対して、輝度変化が2%以内であった。)。
【0045】
実施例1
炭酸バリウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と酸化ガドリニウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)とフッ化テルビウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と二酸化珪素(和光純薬工業株式会社製:純度99.99%)を用いて、Ba:Gd:Tb:Siのモル比が1:3.4:0.6:3となるように秤量し、混合した後、2体積%H2含有N2の雰囲気中で1000℃で3時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して、蛍光体2を得た。蛍光体2のX線回折図形を図1に示した。図1により、蛍光体2のX線回折図形は、蛍光体1のそれとは異なることがわかった。また、蛍光体2中のフッ素(F)の含有量を調べたところ、25000ppmであり、蛍光体2におけるBa:(Gd+Tb):Si:Fのモル比は、1:4:3:1.4であることがわかった。
【0046】
蛍光体2に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ、緑色の発光を示し、得られた輝度は360(蛍光体1の場合を100とした。)であった。
【0047】
蛍光体2に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ172nmランプ(ウシオ電機社製、H0016型)を用いて真空紫外線を照射したところ緑色の発光を示し、得られた輝度は219(蛍光体1の場合を100とした。)であった。
【0048】
蛍光体2に、バインダー(例えばエチルセルロースとイソプロパノールを1:9で混合したもの)を加え混練後、空気中において600℃で30分保持してバインダーを除去させた後の蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ緑色の発光を示し、このときの輝度は蛍光体2とほとんど変わらなかった(蛍光体2の輝度に対して、輝度変化が2%以内であった。)。
【0049】
実施例2
炭酸バリウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と酸化ガドリニウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)とフッ化ガドリニウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と酸化テルビウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)と二酸化珪素(和光純薬工業株式会社製:純度99.99%)を用いて、炭酸バリウム(BaCO3):酸化ガドリニウム(Gd23):フッ化ガドリニウム(GdF3):酸化テルビウム(Tb47):二酸化珪素(SiO2)のモル比が1:1.4:0.6:0.15:3となるように秤量し、混合した後、2体積%H2含有N2の雰囲気中で1000℃で3時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して、蛍光体3を得た。また、蛍光体3中のフッ素(F)の含有量を調べたところ、25000ppmであり、蛍光体3におけるBa:(Gd+Tb):Si:Fのモル比は、1:4:3:1.4であることがわかった。
【0050】
蛍光体3に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ緑色の発光を示し、得られた輝度は305(蛍光体1の場合を100とした。)であった。
【0051】
蛍光体3に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ172nmランプ(ウシオ電機社製、H0016型)を用いて真空紫外線を照射したところ緑色の発光を示し、得られた輝度は199(蛍光体1の場合を100とした。)であった。
【0052】
蛍光体3に、バインダー(例えばエチルセルロースとイソプロパノールを1:9で混合したもの)を加え混練後、空気中において600℃で30分保持してバインダーを除去させた後の蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ、緑色の発光を示し、このときの輝度は蛍光体3とほとんど変わらなかった(蛍光体3の輝度に対して、輝度変化が2%以内であった。)。
【0053】
実施例3
炭酸バリウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と酸化ガドリニウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)とフッ化ガドリニウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と酸化テルビウム(信越化学工業株式会社製:純度99.99%)とフッ化テルビウム(関東化学株式会社製:純度99.99%)と二酸化珪素(和光純薬工業株式会社製:純度99.99%)を用いて、炭酸バリウム(BaCO3):酸化ガドリニウム(Gd23):フッ化ガドリニウム(GdF3):酸化テルビウム(Tb47):フッ化テルビウム(TbF3):二酸化珪素(SiO2)のモル比が1:1.55:0.3:0.075:0.3:3となるように秤量し、混合した後、2体積%H2含有N2の雰囲気中で1000℃で3時間保持して焼成し、その後室温まで徐冷して、蛍光体4を得た。また、蛍光体4中のフッ素(F)の含有量を調べたところ、25000ppmであり、蛍光体4におけるBa:(Gd+Tb):Si:Fのモル比は、1:4:3:1.4であることがわかった。
【0054】
蛍光体4に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ緑色の発光を示し、得られた輝度は303(蛍光体1の場合を100とした。)であった。
【0055】
蛍光体4に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ172nmランプ(ウシオ電機社製、H0016型)を用いて真空紫外線を照射したところ緑色の発光を示し、得られた輝度は198(蛍光体1の場合を100とした。)であった。
【0056】
蛍光体4に、バインダー(例えばエチルセルロースとイソプロパノールを1:9で混合したもの)を加え混練後、空気中において600℃で30分保持してバインダーを除去させた後の蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の室温(約25℃)の真空槽内で、エキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて真空紫外線を照射したところ緑色の発光を示し、このときの輝度は蛍光体4とほとんど変わらなかった(蛍光体4の輝度に対して、輝度変化が2%以内であった。)。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】蛍光体1および蛍光体2における粉末X線回折図形。
【図2】蛍光体1および蛍光体2における励起スペクトル。(横軸は励起波長、縦軸は発光強度を示す。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1、M2、M3、M4、ハロゲン元素およびOからなる蛍光体(ここで、M1はアルカリ土類金属元素を表わし、M2は3価の金属元素を表わし、M3は付活元素を表わし、M4は4価の金属元素を表わす。)であって、M1:(M2+M3):M4:ハロゲン元素のモル比が、1:4:3:a(ここで、aは0.01以上3以下の範囲の値である。)である蛍光体。
【請求項2】
1がBaを含有する請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
2がGdを含有する請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
3がTbを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項5】
4がSiである請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項6】
ハロゲン元素がFである請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項7】
aが1以上2以下の範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項8】
1、M2、M3、M4およびハロゲン元素を含有する金属化合物混合物(ここで、M1はアルカリ土類金属元素を表わし、M2は3価の金属元素を表わし、M3は付活元素を表わし、M4は4価の金属元素を表わす。)であって、M1のハロゲン化物、M2のハロゲン化物およびM3のハロゲン化物からなる群から選ばれる1種以上のハロゲン化物を含有する金属化合物混合物を焼成する請求項1記載の蛍光体の製造方法。
【請求項9】
焼成時の保持温度が、950℃以上1050℃以下の温度である請求項8記載の蛍光体の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の製造方法により得られる蛍光体。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか、または請求項10に記載の蛍光体を有することを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項12】
請求項11に記載の蛍光体ペーストを基板に塗布後、熱処理することにより得られる蛍光体層。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか、または請求項10に記載の蛍光体を有する発光素子。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか、または請求項10に記載の蛍光体を有する真空紫外線励起発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−57455(P2009−57455A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225590(P2007−225590)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】