説明

蛍光内視鏡装置

【課題】内視鏡挿入部を体腔内から取り出した際、励起光が人物の目に入射するのを確実に防止する。
【解決手段】内視鏡挿入部によって導光された光を受光して撮像部によって撮像された撮像画像内における人物の顔情報を検出する顔情報検出部50と、顔情報検出部において顔情報が検出された際、励起光の照射を禁止させるインターロック部39とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に挿入される内視鏡挿入部を備え、内視鏡挿入部により励起光を被観察部に照射し、その照射によって被観察部から発せられた蛍光を受光して蛍光画像を撮像する蛍光内視鏡装置に関するものであり、特に、上記励起光の安全な照射制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子式内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
また、このような内視鏡システムの1つとして、たとえば、脂肪下の血管走行および血流、リンパ管、リンパ流、胆管走行、胆汁流など通常画像上には現れないものを観察するため、予め被観察部にICG(インドシアニングリーン)を投入し、被観察部に近赤外光の励起光を照射することによってICGの蛍光画像を取得する内視鏡システムが提案されている。
【0004】
ここで、上述したようなICGの蛍光は微弱な光であるため、より鮮明な蛍光画像を得るためには、強い励起光を照射することが必要となる。そこで、たとえば、励起光源として、波長域が狭く励起光と蛍光のコントラストへの影響が少ないレーザ光源が用いられるが、高出力なレーザ光は直視すると目への障害が懸念される。
【0005】
たとえば、手技を終了して内視鏡の挿入部を体腔外に取り出す際、誤って励起光の照射を停止することなく取り出した場合には、近赤外光が目に入射してしまうおそれがあるため危険である。
【0006】
そこで、たとえば、特許文献1においては、内視鏡観察を行う際には、気腹装置によって腹腔内の圧力を上昇させることを利用して、内視鏡挿入部の先端に圧力センサを設け、その圧力センサによって圧力の変化を検出することによって内視鏡挿入部が体腔外に取り出されたことを検出し、励起光の照射を行わないようすることが提案されている。
【0007】
また、特許文献2においては、撮像された画像の輝度、輝度分布、色信号、画像に含まれる直線パターンに基づいて内視鏡挿入部が体腔外に取り出されたことを検出し、励起光の照射を行わないようすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−82041号公報
【特許文献2】特開2002−028125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のように圧力センサを設けるようにしたのでは、内視鏡先端部の細径化が困難となってしまう。また、特許文献2に記載の方法では、内視鏡装置が設置された環境によっては誤検出する場合があり、適切に励起光の照射を禁止できない場合がある。
【0010】
一方、近年、上述したような蛍光画像を取得する内視鏡システムを用いて、癌のリンパ節への転移を確認するため、ICG(インドシアニングリーン)を予め癌近傍に注入し、近赤外光を被観察部に照射して被観察部のリンパ管中を流れるICGの蛍光を検出することが行われている。
【0011】
そして、このようなリンパ節の蛍光観察において癌の転移が発見された場合には、そのリンパ節が切断され体腔外に取り出され、病理検査に提供されることがある。
【0012】
そして、このようにして体腔外に取り出されたリンパ節を病理検査に提供する際には、リンパ節における癌の転移部分を検査し易いようにその転移部分において切断することが望ましいが、このとき転移部分を明確するために、体腔外において内視鏡システムを用いて近赤外光をリンパ節に照射して蛍光画像を見たい場合がある。
【0013】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の装置においては、内視鏡挿入部が体腔外に取り出された場合には、励起光の照射を行うことができないため、上述したような体腔外における蛍光画像の観察を行うことができない。
【0014】
また、たとえ体腔外での蛍光観察が可能となるようにしても、やはり人物の目に励起光が入射してしまうのを防ぐ必要がある。
【0015】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、内視鏡挿入部を体腔内から取り出した際、励起光が人物の目に入射するのを確実に防止することができ、さらに、体腔外においても蛍光観察を可能し、その際においても励起光が人物の目に入射するのを確実に防止することができる蛍光内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の蛍光内視鏡装置は、体腔内に挿入され、励起光を導光して被観察部に照射する内視鏡挿入部と、励起光の照射によって被観察部から発せられ、内視鏡挿入部により導光された蛍光を受光して蛍光画像を撮像する撮像部とを備えた蛍光内視鏡装置において、内視鏡挿入部によって導光された光を受光して撮像部によって撮像された撮像画像内における人物の顔情報を検出する顔情報検出部と、顔情報検出部において顔情報が検出された際、励起光の照射を禁止させるインターロック部とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、上記本発明の蛍光内視鏡装置においては、インターロック部によって励起光の照射が禁止された後、その禁止を解除する禁止解除部と、禁止解除部による禁止解除以降において顔情報の検出結果を確認し、顔情報検出部によって顔情報が検出されている間は、励起光の照射を行わないように制御する励起光照射制御部とを設けることができる。
【0018】
また、上記本発明の蛍光内視鏡装置においては、インターロック部によって励起光の照射が禁止された後、その禁止を解除する禁止解除部と、禁止解除部による禁止解除の後に励起光の照射開始指示を受け付ける照射開始指示受付部と、照射開始指示の受付け以降において顔情報の検出結果を確認し、顔情報検出部によって顔情報が検出されている間は、励起光の照射を行わないように制御する励起光照射制御部とを設けることができる。
【0019】
本発明の蛍光内視鏡装置は、体腔内に挿入され、励起光を導光して被観察部に照射する内視鏡挿入部と、励起光の照射によって被観察部から発せられ、内視鏡挿入部により導光された蛍光を受光して蛍光画像を撮像する撮像部とを備えた蛍光内視鏡装置において、内視鏡挿入部によって導光された光を受光して撮像部によって撮像された撮像画像内における人物の顔情報を検出する顔情報検出部と、顔情報検出部によって顔情報が検出されている間は、励起光の照射を行わないように制御する励起光照射制御部とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、上記本発明の蛍光内視鏡装置においては、顔情報検出部を、撮像画像内における丸い形状の肌色部分を検出し、その肌色部分の撮像画像内における面積の割合が所定の閾値以上となった場合に、肌色部分を顔情報として検出するものとできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の蛍光内視鏡装置によれば、撮像部によって撮像された撮像画像内における人物の顔情報を検出し、顔情報が検出された際には、励起光の照射を禁止させてインターロックを行うようにしたので、内視鏡挿入部を体腔内から取り出した際、励起光が人物の目に入射するのを確実に防止することができる。
【0022】
また、上記本発明の蛍光内視鏡装置において、励起光の照射が禁止された後、その禁止の解除を受け付けるとともに、その禁止解除以降において顔情報の検出結果を確認し、顔情報が検出されている間は、励起光の照射を行わないようにした場合には、一旦、内視鏡挿入部が取り出された後においても、たとえば、上述したようなリンパ節の蛍光画像の撮影を行うことができ、そのリンパ節を病理検査に適した箇所で切断することができるとともに、励起光が人物の目に入射するのを確実に防止することができる。
【0023】
また、上記本発明の蛍光内視鏡装置において、励起光の照射が禁止された後、その禁止の解除を受け付けるとともに、その禁止解除の後に励起光の照射開始指示を受け付け、その照射開始指示の受付け以降において顔情報の検出結果を確認し、顔情報検出部によって顔情報が検出されている間は、励起光の照射を行わないようにした場合にも、上記と同様に、一旦、内視鏡挿入部が取り出された後においても、蛍光画像の撮影を行うことができるとともに、励起光が人物の目に入射するのを確実に防止することができる。
【0024】
本発明の蛍光内視鏡装置によれば、撮像部によって撮像された撮像画像内における人物の顔情報を検出し、顔情報が検出されている間は、励起光の照射を行わないように制御するようにしたので、たとえば、誤って励起光の照射の停止指示を行うことなく内視鏡挿入部を体腔内から取り出した場合においても、励起光が人物の目に入射するのを確実に防止することができる。
【0025】
また、上記本発明の蛍光内視鏡装置において、撮像画像内における丸い形状の肌色部分を検出し、その肌色部分の撮像画像内における面積の割合が所定の閾値以上となった場合に、その肌色部分を顔情報として検出するようにした場合には、肌色部分の面積の割合を取得することによって間接的に内視鏡挿入部と人物の顔との距離情報を取得することができ、内視鏡挿入部が人物の顔に近付いたときに確実に励起光の照射を行わないようにすることができる。また、人物の顔以外のものを顔情報として誤検出して、無意味に励起光の照射が禁止されてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の蛍光内視鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの概略構成図
【図2】体腔挿入部の概略構成図
【図3】体腔挿入部の先端部の概略構成図
【図4】図3の4−4’線断面図
【図5】体腔挿入部の各投光ユニットによって照射される光のスペクトルおよびその光の照射によって被観察部から発せられる蛍光および反射光のスペクトルを示す図
【図6】撮像ユニットの概略構成を示す図
【図7】撮像ユニットの分光感度を示す図
【図8】画像処理装置および光源装置の概略構成を示す図
【図9】本発明の蛍光内視鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの作用を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の蛍光内視鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。本実施形態は、安全性を考慮した励起光の照射制御に特徴を有するものであるが、まずは、そのシステム全体の構成から説明する。図1は、本実施形態の硬性鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0028】
本実施形態の硬性鏡システム1は、図1に示すように、青色光と近赤外光を射出する光源装置2と、光源装置2から射出された青色光を波長変換した白色光と近赤外光を被観察部に照射するとともに、白色光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく通常像と近赤外光の照射により被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像を撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された画像信号に所定の処理を施すとともに、光源装置2に制御信号を出力するプロセッサ3と、プロセッサ3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の蛍光画像および通常画像を表示するモニタ4とを備えている。
【0029】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、腹腔や胸腔などの体腔内に挿入される体腔挿入部30と、体腔挿入部30によって導光された被観察部の通常像および蛍光像を撮像する撮像ユニット20とを備えている。
【0030】
また、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、体腔挿入部30と撮像ユニット20とが着脱可能に接続されている。そして、体腔挿入部30は接続部材30a、挿入部材30b、およびケーブル接続口30cを備えている。
【0031】
接続部材30aは、体腔挿入部30(挿入部材30b)の一端側30Xに設けられており、たとえば撮像ユニット20側に形成された開口20aに嵌め合わされることにより、撮像ユニット20と体腔挿入部30とが着脱可能に接続される。
【0032】
挿入部材30bは、体腔内の撮影を行う際に体腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。挿入部材30bの内部には、被観察部の像を結像するためのレンズ群が収容されており、先端側30Yから入射された被観察部の通常像および蛍光像はレンズ群を介して一端側30Xの撮像ユニット20側に射出される。
【0033】
挿入部材30bの側面にはケーブル接続口30cが設けられており、このケーブル接続口30cに光ケーブルLCが機械的に接続される。これにより、光源装置2と挿入部材30bとが光ケーブルLCを介して光学的に接続されることになる。
【0034】
また、図3に体腔挿入部30の先端側30Yの構成を示す。図3に示すように、体腔挿入部30の先端側30Yには、通常像および蛍光像を結像する撮像レンズ30dと、その撮像レンズ30dを挟んで略対称に白色光を照射する白色光用照射レンズ30e,30fと近赤外光を照射する近赤外光用照射レンズ30g,30hが設けられている。このように白色光用照射レンズ30e,30fおよび近赤外光用照射レンズ30g,30hを撮像レンズ30dに対して対称に2つ設けるようにしているのは、被観察部の凹凸によって通常像および蛍光像に陰影ができないようにするためである。
【0035】
また、図4に、図3の4-4’線断面図を示す。図4に示すように、体腔挿入部30内には、白色投光ユニット70と近赤外投光ユニット60とが設けられている。
【0036】
白色投光ユニット70は、青色光を導光するマルチモード光ファイバ71と、マルチモード光ファイバ71によって導光された青色光の一部を吸収して励起され、緑色〜黄色の可視光を発する蛍光体72とを備えている。蛍光体72は、複数種類の蛍光物質から形成されており、たとえば、YAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光物質などを含んで形成される。
【0037】
そして、蛍光体72の外周を覆うように筒状のスリーブ部材73が設けられており、スリーブ部材73の内部には、マルチモード光ファイバ71を中心軸として保持するフェニール74が挿入されている。さらに、フェニール74の後端側(先端側とは逆側)から延出されるマルチモード光ファイバ71には、その外皮を覆うフレキシブルスリーブ75がスリーブ部材73との間に挿入されている。
【0038】
また、近赤外投光ユニット60は、近赤外光を導光するマルチモード光ファイバ61を備えており、マルチモード光ファイバ61と近赤外光用照射レンズ30hとの間には空間62が設けられている。
【0039】
また、近赤外投光ユニット60にも、空間62の外周を覆うように筒状のスリーブ部材63が設けられており、白色投光ユニット70と同様に、フェニール64およびフレキシブルスリーブ65が設けられている。
【0040】
また、各投光ユニットにおいて使用されるマルチモード光ファイバとしては、たとえば、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径が直径0.3mm〜0.5mmの細径なものを使用することができる。
【0041】
なお、上記では、白色光用照射レンズ30fを含む白色投光ユニット70と近赤外光用照射レンズ30hを含む近赤外投光ユニット60について説明したが、白色光用照射レンズ30eを含む白色投光ユニットと近赤外光用照射レンズ30gを含む近赤外投光ユニットも同様の構成である。
【0042】
ここで、各投光ユニットによって被観察部に照射される光のスペクトルおよびその光の照射によって被観察部から発せられる蛍光および反射光のスペクトルを図5に示す。図5には、白色投光ユニット70の蛍光体72を透過して照射された青色光スペクトルS1と、白色投光ユニット70の蛍光体72において励起されて照射された緑色〜黄色の可視光スペクトルS2と、近赤外投光ユニット60によって照射された近赤外光スペクトルS3と、近赤外投光ユニット60による近赤外光スペクトルS3の照射によって発せられたICG蛍光スペクトルS4とが示されている。
【0043】
なお、本明細書における白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、たとえば、基準光であるR(赤)、G(緑)、B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、たとえば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光なども広義に含むものとする。したがって、白色投光ユニット70は、図5に示すような青色光スペクトルS1と可視光スペクトルS2とを照射するものであるが、これらのスペクトルからなる光も白色光であるとする。
【0044】
図6は、撮像ユニット20の概略構成を示す図である。撮像ユニット20は、体腔挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の蛍光像を撮像して被観察部の蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、体腔挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の通常像を撮像して通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。これらの撮像系は、通常像を反射するとともに、蛍光像を透過する分光特性を有するダイクロイックプリズム21によって、互いに直交する2つの光軸に分けられている。
【0045】
第1の撮像系は、体腔挿入部30から射出された蛍光像を透過するとともに、近赤外光をカットする近赤外光カットフィルタ22と、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21および近赤外光カットフィルタ22を透過した蛍光像L2を結像する第1結像光学系23と、第1結像光学系23により結像された蛍光像L2を撮像する高感度撮像素子24とを備えている。
【0046】
第2の撮像系は、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21を反射した通常像L1を結像する第2結像光学系25と、第2結像光学系25により結像された通常像L1を撮像する撮像素子26を備えている。
【0047】
高感度撮像素子24は、蛍光像L2の波長帯域の光を高感度に検出し、蛍光画像信号に変換して出力するものである。高感度撮像素子24はモノクロの撮像素子である。
【0048】
撮像素子26は、通常像の波長帯域の光を検出し、通常画像信号に変換して出力するものである。撮像素子26の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0049】
ここで、図7に、撮像ユニット20の分光感度のグラフを示す。具体的には、撮像ユニット20は、第1の撮像系がIR(近赤外)感度を有し、第2の撮像系がR(赤)感度、G(緑)感度、B(青)感度を有するように構成されている。
【0050】
また、撮像ユニット20は、撮像制御ユニット27を備えている。撮像制御ユニット27は、プロセッサ3から出力されたCCD駆動信号に基づいて高感度撮像素子24および撮像素子26を駆動制御するとともに、高感度撮像素子24から出力された蛍光画像信号および撮像素子26から出力された通常画像信号に対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブルを介してプロセッサ3に出力するものである。
【0051】
図8は、光源装置2およびプロセッサ3の概略構成を示す図である。プロセッサ3は、図8に示すように、通常画像入力コントローラ31、蛍光画像入力コントローラ32、画像処理部33、メモリ34、ビデオ出力部35、操作部36、TG(タイミングジェネレータ)37、制御部38、インターロック部39および顔情報検出部50を備えている。
【0052】
通常画像入力コントローラ31および蛍光画像入力コントローラ32は、所定容量のラインバッファを備えており、撮像ユニット20の撮像制御ユニット27から出力された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号をそれぞれ一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ31に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ32に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ34に格納される。
【0053】
画像処理部33は、メモリ34から読み出された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。
【0054】
ビデオ出力部35は、画像処理部33から出力された通常画像信号および蛍光画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0055】
操作部36は、所定の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。
【0056】
本実施形態における操作部36は、特に、近赤外光の照射開始指示や、インターロック部39によって近赤外光の照射が禁止された状態を解除するためのインターロック解除指示を受け付けるものである。なお、本実施形態においては、近赤外光の照射開始指示やインターロックの解除指示を操作部36によって受け付けるようにしたが、これに限らず、たとえば、フットペダルの押下によってこれらを受け付けるようにしてもよい。
【0057】
また、TG37は、撮像ユニット20の高感度撮像素子24、撮像素子26および後述する光源装置2のLDドライバ43,46,49を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。
【0058】
制御部38は、システム全体を制御するものであるが、本実施形態においては、特に、顔情報検出部50によって顔情報が検出された際に、励起光の射出を停止するように光源装置2に制御信号を出力するものである。その具体的な励起光の照射制御方法については、後で詳述する。
【0059】
インターロック部39は、顔情報検出部50において顔情報が検出された際、その検出結果に基づいて、制御部38を介して光源装置2に制御信号を出力し、光源装置2からの近赤外光の射出を禁止させるものである。なお、近赤外光の禁止とは、近赤外光の射出を停止させることだけでなく、禁止解除指示が行われるまでは、たとえ近赤外光照射開始指示が行われたとしても近赤外光を射出させないことを意味する。
【0060】
顔情報検出部50は、撮像ユニット20の撮像素子26によって撮像された画像信号に基づいて、撮像画像内における顔情報を検出するものである。本実施形態の顔情報検出部50は、撮像画像内における丸い形状の肌色部分を検出し、撮像画像全体の面積に対する肌色部分の面積の割合が、所定の閾値以上になったときにその肌色部分を顔情報として検出するものである。なお、肌色の検出方法、既に種々の方法が公知であるので詳細な説明は省略する。また、丸い形状の検出方法としては、たとえば、円や楕円などを検出するようにすればよいが、これらの検出方法についても既に種々の方法が公知であるので詳細な説明は省略する。また、顔情報の検出方法についても、上記のような方法に限らず、種々の公知な方法を用いることができる。
【0061】
光源装置2は、図8に示すように、445nmの青色光を射出する青色LD光源40と、青色LD光源40から射出された青色光を集光して光ファイバスプリッタ42に入射させる集光レンズ41と、集光レンズ41によって入射された青色光を光ケーブルLC1と光ケーブルLC2との両方に同時に入射する光ファイバスプリッタ42と、青色LD光源40を駆動するLDドライバ43とを備えている。
【0062】
そして、光ケーブルLC1およびLC2は、それぞれ白色投光ユニット70のマルチモード光ファイバ71に光学的に接続されるものである。
【0063】
また、光源装置2は、750〜790nmの近赤外光を射出する複数の近赤外LD光源44,47と、各近赤外LD光源44,47から射出された近赤外光を集光して光ケーブルLC3,LC4に入射する複数の集光レンズ45,48と、各近赤外LD光源44,47を駆動する複数のLDドライバ46,49とを備えている。
【0064】
そして、光ケーブルLC3およびLC4は、それぞれ近赤外投光ユニット60のマルチモード光ファイバ61に光学的に接続されているものとする。
【0065】
また、本実施形態においては、励起光として近赤外光を用いるようにしたが、上記近赤外光に限定されず、被検者に投入される蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類によって適宜決定される。
【0066】
次に、本実施形態の硬性鏡システムの作用について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0067】
まず、体腔挿入部30が被検者体腔内に挿入され、体腔挿入部30の先端が被観察部の近傍に設置され(S10)、通常画像の撮像および表示が行われる(S12)。
【0068】
具体的には、光源装置2の青色LD光源40から射出された青色光が、集光レンズ41および光ファイバスプリッタ42を介して光ケーブルLC1およびLC2の両方に同時に入射される。そして、さらに青色光は光ケーブルLC1,LC2により導光されて体腔挿入部30に入射され、体腔挿入部30内の白色投光ユニット70のマルチモード光ファイバ71によって導光される。そして、マルチモード光ファイバ71の出射端から出射された青色光は、一部は蛍光体72を透過して被観察部に照射され、一部以外は蛍光体72によって緑色〜黄色の可視光に波長変換され、その可視光が被観察部に照射される。すなわち、青色光と緑色〜黄色の可視光とからなる白色光が被観察部に照射される。
【0069】
そして、白色光の照射によって被観察部から反射された通常像が挿入部材30bの先端30Yの撮像レンズ30dから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0070】
撮像ユニット20に入射された通常像は、ダイクロイックプリズム21によって直角方向に反射され、第2結像光学系25によって撮像素子26の撮像面に結像され、撮像素子26によって撮像される。
【0071】
そして、撮像素子26からそれぞれ出力されたR、G、Bの画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に出力される。
【0072】
そして、プロセッサ3に入力された通常画像信号は、通常画像入力コントローラ31において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム毎の通常画像信号は、画像処理部33において階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後、ビデオ出力部35に順次出力される。
【0073】
そして、ビデオ出力部35は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する。
【0074】
そして、上記のようにして通常画像が表示された状態において、たとえば、癌などが発見され、その癌近傍からリンパが流れ込んでいるリンパ節を病理検査のために切除したい場合には、癌近傍にICGが投与され、そのICGの蛍光画像の撮像および表示が行われる。なお、このとき通常画像の撮像は終了してもよいし、継続してもよい。
【0075】
具体的には、まず、操作部36を用いて近赤外光照射開始指示が入力される(S14)。そして、操作部36から入力された近赤外光の照射開始指示に応じて制御部38からTG37を介して近赤外LD光源44,47を駆動するLDドライバ46,49に近赤外光出射開始の制御信号が出力され、その制御信号に応じてLDドライバ46,49は近赤外光LD光源44,47から近赤外光を出射させる。
【0076】
そして、光源装置2の近赤外LD光源44,47から射出された近赤外光が、集光レンズ45,48を介して光ケーブルLC3,LC4に入射され、光ケーブルLC3,LC4を介して体腔挿入部30に入射され、体腔挿入部30内の近赤外投光ユニット60のマルチモード光ファイバ61によって導光されて被観察部に照射される(S16)。
【0077】
そして、近赤外光の励起光の照射によって被観察部から発せられたICG蛍光像が挿入部材30bの先端30Yの撮像レンズ30dから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0078】
撮像ユニット20に入射されたICG蛍光像は、ダイクロイックプリズム21および近赤外光カットフィルタ22を透過した後、第1結像光学系23により高感度撮像素子24の撮像面上に結像され、高感度撮像素子24によって撮像される。高感度撮像素子24から出力されたICG蛍光画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に出力される。
【0079】
そして、プロセッサ3に入力された蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ32において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム毎の蛍光画像信号は、画像処理部33において所定の画像処理が施された後、ビデオ出力部35に順次出力される。
【0080】
そして、ビデオ出力部35は、入力された蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて蛍光画像を表示する(S18)。
【0081】
そして、蛍光画像が表示された状態において、医師によって所望のリンパ節の切除が行われ、そのリンパ節が体外に取り出されて手技が終了すると、操作部36において近赤外光の照射の停止指示が受け付けられ、その停止指示に応じて制御部38から光源装置2に制御信号が出力されて近赤外光の射出が停止された後、体腔挿入部30が体腔内から取り出される(S20)。
【0082】
そして、体腔挿入部30が体腔内から取り出された後、顔情報検出部50において顔情報が検出されるとその検出結果がインターロック部39に出力され、インターロック部39は、制御部38を介して光源装置2に制御信号を出力し、その後インターロック解除指示が行われるまでは、近赤外光の射出を禁止する(S22)。なお、体腔挿入部30が体腔内から取り出される際、近赤外光の照射停止指示が行われなかった場合には、インターロック部39は、顔情報の検出に応じて、制御部38を介して光源装置2に制御信号を出力し、近赤外光の射出を停止した後、近赤外光の射出を禁止する。
【0083】
そして、ここで、上述したようにして体腔外に取り出されたリンパ節を病理検査に提供する際には、リンパ節における癌の転移部分を検査し易いようにその転移部分において切断することが望ましいが、このとき転移部分を明確するために再度、近赤外光を照射して蛍光画像を見たい場合がある。
【0084】
したがって、このように体外で蛍光画像を撮像する際には(S24,YES)、まず、インターロックを解除するための解除指示が操作部36において行われ、操作部36によって受け付けられたインターロック解除指示信号は制御部38に出力され、制御部38は、入力されたインターロック解除指示信号に応じてインターロック部39によるインターロックを解除する(S26)。
【0085】
そして、制御部38は、インターロック解除指示信号を受け付けると、インターロック解除以降における顔情報検出部50の顔情報の検出結果をモニタする。
【0086】
そして、再び、操作部36を用いて近赤外光照射開始指示が入力され、その開始指示に応じて近赤外光が照射されて蛍光画像の撮像が行われることになるが、このとき制御部38は、顔情報検出部50において顔情報が検出されているか否かを確認し、顔情報が検出されていない場合には、近赤外光照射開始指示に応じて近赤外光の照射を開始し、蛍光画像の撮像を行う(S28,NO)。
【0087】
一方、制御部38は、顔情報検出部50において顔情報が検出されている場合には、近赤外光照射開始指示が行われたとしても、近赤外LD光源44,47から近赤外光が射出されないように制御する(S30)。
【0088】
また、上記実施形態の説明においては、制御部38が、インターロック解除指示信号を受け付けたときから、制御部38が顔情報検出部50における顔情報の検出結果をモニタするようにしたが、インターロック解除指示信号を受け付けたときからではなく、操作部36において近赤外光照射開始指示が受け付けられたときから顔情報検出部50における顔情報の検出結果をモニタし、顔情報を検出してない場合には、近赤外光照射開始指示に応じて近赤外光を射出させ、顔情報を検出している場合には、近赤外光を射出させないようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、体腔挿入部30が取り出された後、顔情報検出部50において顔情報が検出された際、近赤外光の射出を禁止するインターロック部39を設けるようにしたが、このインターロック部39を設けないようにしてもよい。そして、インターロック部39を設けないようにした場合には、制御部38は、顔情報検出部50による顔情報の検出結果を常時モニタする。
【0090】
そして、たとえば、手技が終了した後、誤って操作部36において近赤外光の停止指示が行われることなく体腔挿入部30が体外に取り出された場合には、顔情報検出部50により顔情報が検出された際、その検出結果が制御部38に出力される。
【0091】
そして、制御部38は、顔情報の検出結果に応じて、光源装置2に制御信号を出力し、顔情報検出部50によって顔情報が検出されている間は近赤外光を射出させないようにし、顔情報を検出してない場合にのみ近赤外光照射開始指示に応じて近赤外光を射出させるようにする。
【0092】
また、手技が終了した後に体腔挿入部30が体外に取り出された場合だけでなく、体腔に体腔挿入部30を挿入する前に近赤外光の射出動作の確認や、近赤外光の校正を行う際においても通常画像の撮像を行って顔情報検出部50による顔情報の検出を行い、顔情報検出部50によって顔情報が検出されている間は近赤外光を射出させないようにし、顔情報を検出してない場合にのみ近赤外光照射開始指示に応じて近赤外光を射出させるようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、顔情報検出部50による顔情報検出およびインターロック部39および制御部38によるそのモニタリングの周期は、1回/0.25秒以内であることが望ましい。このような周期とすることにより制御系への負荷も少なく安全な運用することができる。
【0094】
また、上記実施形態は、本発明の画像撮像装置を硬性鏡システムに適用したものであるが、これに限らず、たとえば、軟性内視鏡装置を有するその他の内視鏡システムに適用してもよい。また、内視鏡システムに限らず、体内に挿入される挿入部を備えていない、いわゆるビデオカメラ型の医用画像撮像装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 硬性鏡システム
2 光源装置
3 プロセッサ
4 モニタ
10 硬性鏡撮像装置
20 撮像ユニット
24 高感度撮像素子
28 制御部
30 体腔挿入部
30d 撮像レンズ
30e 白色光用照射レンズ
30e,30f 白色光用照射レンズ
30g,30h 近赤外光用照射レンズ
38 制御部
39 インターロック部
50 顔情報検出部
44,47 近赤外LD光源
60 近赤外投光ユニット
70 白色投光ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入され、前記励起光を導光して被観察部に照射する内視鏡挿入部と、前記励起光の照射によって前記被観察部から発せられ、前記内視鏡挿入部により導光された蛍光を受光して蛍光画像を撮像する撮像部とを備えた蛍光内視鏡装置において、
前記内視鏡挿入部によって導光された光を受光して前記撮像部によって撮像された撮像画像内における人物の顔情報を検出する顔情報検出部と、
該顔情報検出部において前記顔情報が検出された際、前記励起光の照射を禁止させるインターロック部とを備えたことを特徴とする蛍光内視鏡装置。
【請求項2】
前記インターロック部によって前記励起光の照射が禁止された後、該禁止を解除する禁止解除部と、
前記禁止解除部による禁止解除以降において前記顔情報の検出結果を確認し、前記顔情報検出部によって顔情報が検出されている間は、前記励起光の照射を行わないように制御する励起光照射制御部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項3】
前記インターロック部によって前記励起光の照射が禁止された後、該禁止を解除する禁止解除部と、
該禁止解除部による禁止解除の後に前記励起光の照射開始指示を受け付ける照射開始指示受付部と、
前記照射開始指示の受付け以降において前記顔情報の検出結果を確認し、前記顔情報検出部によって顔情報が検出されている間は、前記励起光の照射を行わないように制御する励起光照射制御部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項4】
体腔内に挿入され、前記励起光を導光して被観察部に照射する内視鏡挿入部と、前記励起光の照射によって前記被観察部から発せられ、前記内視鏡挿入部により導光された蛍光を受光して蛍光画像を撮像する撮像部とを備えた蛍光内視鏡装置において、
前記内視鏡挿入部によって導光された光を受光して前記撮像部によって撮像された撮像画像内における人物の顔情報を検出する顔情報検出部と、
前記顔情報検出部によって顔情報が検出されている間は、前記励起光の照射を行わないように制御する励起光照射制御部とを備えたことを特徴とする蛍光内視鏡装置。
【請求項5】
前記顔情報検出部が、前記撮像画像内における丸い形状の肌色部分を検出し、該肌色部分の前記撮像画像内における面積の割合が所定の閾値以上となった場合に、前記肌色部分を顔情報として検出するものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の蛍光内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−50520(P2012−50520A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193883(P2010−193883)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】