説明

蛍光性化合物及び蛍光性樹脂組成物

【解決手段】式(1)で表される蛍光性化合物。


(Xは−O−又は−NR−、R1は炭化水素基及び式(2)の基から選ばれる基、R2は水素原子、炭化水素基、式(2)の基、オルガノキシカルボニル基、ジオルガノカルバモイル基、シアノ基及び式(3)の基から選ばれる基、R3、R4、R5及びR6は水素原子、炭化水素基、式(2)、(4)、(5)及び(6)の基から選ばれる基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも一つは式(2)の基かそれを含有する基、Rは炭化水素基である。)
【効果】水素結合ドナーとなるヘテロ元素−水素結合を含まず、有機溶媒や樹脂との相溶性に優れ、種々の媒体に均一に分散させることができるため、透明性や明度、彩度の高い蛍光性樹脂組成物が容易に得られる。また、分子量分布を持たない単一化合物であるため高純度まで精製することができ、蛍光効率が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蛍光性有機化合物及び蛍光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光性の発色団を有する有機化合物(以下、「蛍光性化合物」という)は、蛍光性の無機化合物に比べると安価であるため、蛍光性インクや蛍光顔料として紙、繊維、樹脂等の着色剤に使用されるが、他にも様々な用途がある。反応性置換基を有する蛍光性化合物は、蛍光タグとしてバイオイメージングに利用されている。また、有機電界発光素子の発光層にも蛍光性化合物を用いることができ、色変換型の有機電界発光素子ではカラーフィルターに蛍光性化合物を使用している(特許文献1:特開2007−213993号公報)。発光ダイオードの色調や輝度の調整にも蛍光性化合物が用いられている(特許文献2:特開2008−98687号公報)。ここで、蛍光性とは光照射により室温下で蛍光を発することを意味する。
【0003】
着色剤は、染料と顔料の二種に大別できる。顔料は、発色団を有する分子の凝集体であり、粒径が大きい。これに対して染料は、溶媒や樹脂等の媒体に溶解させることが可能な発色団含有分子であり、分子構造に依存して固体状態では凝集しているが、媒体中では凝集しないかその程度は低い。分子の凝集体の大きさは光学的に重要であり、一般的に顔料で着色した材料は染料で着色した材料に比べて着色剤の粒径が大きいので、透明性や明度、彩度において劣る。
【0004】
蛍光タグのように分子間で化学反応を行わせる場合を除くと、一般に蛍光性化合物は顔料として使用されることが多い。耐光性を向上させることがその理由の一つであるが、ローダミン、フルオレセイン、シアニン等の代表的な蛍光性化合物が、(1)高極性のイオン性芳香族化合物であって分子間の相互作用が大きく会合しやすいこと、(2)これらの化合物が水素結合を形成するドナー部位(ヘテロ原子−水素結合)とアクセプター部位(カルボニル基等)を分子内に有していることが多いこと等が原因で、低極性の媒体に対する溶解度が低いことも別の理由として挙げられる。
【0005】
上記の理由により、蛍光化合物によって樹脂の着色を行うとき、アクリル樹脂やポリエステル樹脂のような比較的極性の高い樹脂の場合には染料を用いて行うことも可能であるが、ポリオレフィン樹脂やシリコーン樹脂のような極性の低い樹脂の場合には、染料の溶解性が低いために必然的に顔料を用いることとなる。顔料を用いて着色する場合、透明な樹脂組成物を得るためには、顔料を樹脂中で光の波長より小さい大きさに細かく砕きながら均一に分散させる必要があり、これは多くのエネルギーと時間を消費する工程である。
【0006】
極性の低い樹脂との相溶性を向上させる方法として、樹脂に蛍光性化合物を結合させる方法がある。例えば、特許文献3(特開2007−169535号公報)には、アミノシリコーン樹脂と蛍光性化合物を結合させたシリコーン樹脂が記載されている。しかし、この方法では未反応の蛍光性化合物の完全な除去が困難であり、保存中や使用中にこれが凝集して析出するため外観や光学特性が変化し、好ましくない。また、高分子であるために、分子量分布を有しており、分子ごとの化学構造が不均一であるため、蛍光性化合物を樹脂内部で均一に分散した状態にすることが難しい。更に、分子内に複数の蛍光性置換基が近接して存在している場合、エキシマー発光により色調が変化する可能性もある。
【0007】
上記の代表的な蛍光性化合物以外に、クマリンやキノリノンのような単純な構造の化合物のなかにも強い蛍光を発するものがあり、例えば、クマリン誘導体は繊維や紙の蛍光増白剤として使用されている(特許文献4:特開平6−294097号公報)。また、特許文献5及び6(特開平7−278133号公報,特開2010−198002号公報)には、クマリン誘導体を光重合性組成物中に増感剤や光重合開始剤として添加することが開示されている。更に、特許文献7(特開2003−268107号公報)にはクマリン部位の光二量化反応によって重合する多官能性モノマーが示されている。
【0008】
しかしながら、蛍光性化合物としてみた場合、光二量化やラジカル発生等光化学反応が起こりやすい化合物は蛍光量子収率が低く、また化学的に安定でないため好ましくない。また、前述の蛍光性化合物の一般的な特性は、クマリン誘導体やキノリノン誘導体にも該当し、低極性の樹脂に対しては相溶性が乏しく、着色剤としての使用は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−213993号公報
【特許文献2】特開2008−98687号公報
【特許文献3】特開2007−169535号公報
【特許文献4】特開平6−294097号公報
【特許文献5】特開平7−278133号公報
【特許文献6】特開2010−198002号公報
【特許文献7】特開2003−268107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、有機溶媒への溶解性、及び樹脂又はプレポリマーやモノマーとの相溶性、特にシリコーン樹脂との相溶性に優れ、簡便な方法で樹脂組成物をつくることができる蛍光性化合物及びこれを含有する蛍光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する新規な蛍光性化合物を見出し、これを用いることによって上記課題が解決できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記蛍光性化合物及びそれを含有する樹脂組成物を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で表される蛍光性化合物。
【化1】

(式(1)において、Xは−O−又は−NR−を表す。R1は炭素数1〜20のフッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、及び下記式(2)で表されるシロキサン含有基から選ばれる基を表す。R2は水素原子、炭素数1〜20のフッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、下記式(2)で表されるシロキサン含有基、−C(O)−ORで表されるオルガノキシカルボニル基、−C(O)−NR2で表されるジオルガノカルバモイル基、シアノ基、及び下記式(3)で表される複素環式置換基から選ばれる基である。R3、R4、R5及びR6は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜20のハロゲン原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、下記式(4)で表されるジオルガノアミノ基、下記式(5)で表されるオルガノキシ基、下記式(6)で表されるオルガノスルファニル基、及び下記式(2)のシロキサン含有基から独立に選ばれる置換基である。R3とR4、R4とR5、R5とR6はそれぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも一つは、下記式(2)で表されるシロキサン含有基であるか又はそれを置換基として含有する基である。Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基であって、式(1)の化合物に複数のR及び/又はR1が含まれる場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式(2)において、Sxはケイ素原子数2〜10であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20の一価炭化水素基が結合した直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表し、ケイ素原子がAと結合している。Aは炭素数1〜20の二価炭化水素基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の二価炭化水素基を表す。A1は−O−、−S−、−NR−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−NR1−C(O)−、−C(O)−NR1−及び単結合のいずれかを表す。)
【化3】

(式(3)において、X1は−O−、−S−又は−NR−を表し、R7は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20のハロゲン原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、ハロゲン原子及び水素原子から独立に選ばれる基を表す。)
【化4】

(式(4)において、R8は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。)
【化5】

(式(5)において、R9は炭素数1〜20の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。)
【化6】

(式(6)において、R10は炭素数1〜20の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。)
請求項2:
一般式(1)において、R4又はR5が式(2)で表される置換基であって、A1が−NR−である請求項1に記載の蛍光性化合物。
請求項3:
一般式(1)において、R2が水素原子である請求項1又は2に記載の蛍光性化合物。
請求項4:
請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光性化合物及び樹脂を含有する蛍光性樹脂組成物。
請求項5:
前記樹脂が、シリコーン樹脂である請求項4に記載の蛍光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蛍光性化合物は、水素結合ドナーとなるヘテロ元素−水素結合を含まず、有機溶媒や樹脂との相溶性に優れており、種々の媒体に均一に分散させることができるため、透明性や明度、彩度の高い蛍光性樹脂組成物が容易に得られる。また、分子量分布を持たない単一化合物であるため高純度まで精製することができ、蛍光効率が高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の蛍光性化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化7】

【0015】
上記一般式(1)において、Xは−O−又は−NR−を表す。ここで、Rは炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の一価炭化水素基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ウンデセニル基、オクタデセニル基等の不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのなかでも、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基が好ましい。式(1)の化合物には、複数のRが含まれることがあるが、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0016】
上記一般式(1)において、R1は炭素数1〜20、特に炭素数1〜6のフッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、及び下記式(2)で表されるシロキサン含有基から選ばれる基を表す。フッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基R1の具体例としては、Rの具体例として挙げた一価炭化水素基に加えて、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロベンジル基、トリフルオロメチルフェニル基等のフッ素原子で置換された一価炭化水素基が挙げられる。これらのなかでも、特にメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロベンジル基が好ましい。式(1)の化合物には、複数のR1が含まれることがあるが、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0017】
【化8】

一般式(2)において、Sxはケイ素原子数2〜10、特にケイ素原子数2〜5であって該ケイ素原子が炭素数1〜20、特に炭素数1〜6の一価炭化水素基、例えばアルキル基で置換されていてもよい、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のオルガノシロキサニル基を表す。Sxはケイ素原子がAと結合しており、ケイ素−水素結合やケイ素−アルコキシ結合のような反応性の置換基を含まない。Sxの具体例としては、ペンタメチルジシロキサン−1−イル基、3,3,3−トリエチル−1,1−ジメチルジシロキサン−1−イル基、ペンタエチルジシロキサン−1−イル基、3−ビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、3−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、3,3,3−トリイソプロピル−1,1−ジメチルジシロキサン−1−イル基、1,1−ジフェニル−3,3,3−トリメチルジシロキサン−1−イル基、3−メチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン−1−イル基、1−シクロヘキシル−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル基、ノナメチルテトラシロキサン−1−イル基、ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル基、トリデカメチルヘキサシロキサン−1−イル基、ペンタデカメチルヘプタシロキサン−1−イル基、ヘプタデカメチルオクタシロキサン−1−イル基、ノナデカメチルノナシロキサン−1−イル基、ヘンイコサメチルデカシロキサン−1−イル基等の直鎖状オルガノシロキサニル基;1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル基、1−ペンタメチルジシロキサニルオキシ−1,3,3,5,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1−イル基、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,5,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン−1−イル基、1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−3,3,3−トリメチルジシロキサン−1−イル基等の分岐鎖状オルガノシロキサニル基;1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル基、1,3,5,7−テトラメチル−3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン−1−イル基等の環状オルガノシロキサニル基等が挙げられる。これらのなかでも、特にペンタメチルジシロキサン−1−イル基、ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル基、ノナメチルテトラシロキサン−1−イル基、ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル基、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル基が好ましい。
【0018】
上記一般式(2)において、Aは炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の二価炭化水素基、又は1個以上の不連続な−O−、−S−、−NR−(Rは上記と同様である。)もしくはこれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20、特に炭素数2〜12の二価炭化水素基を表す。Aで表される基の例としては、メチレン基、1,2−エタンジイル基、1,1−エタンジイル基、1,2−エテンジイル基、1,1−エテンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基、1,3−ブタンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、1,4−シクロヘキサンジイル基、1,7−ヘプタンジイル基、1,8−オクタンジイル基、1,9−ノナンジイル基、1,10−デカンジイル基、1,11−ウンデカンジイル基、1,12−ドデカンジイル基、1,13−トリデカンジイル基、1,14−テトラデカンジイル基、1,15−ペンタデカンジイル基、1,16−ヘキサデカンジイル基、1,17−ヘプタデカンジイル基、1,18−オクタデカンジイル基、1,19−ノナデカンジイル基、1,20−イコサンジイル基等の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族二価炭化水素基;1,3−ベンゼンジイル基、1,4−ベンゼンジイル基、2−メチル−1,4−ベンゼンジイル基、3−メチル−1,4−ベンゼンジイル基、2,5−ジメチル−1,4−ベンゼンジイル基、1,8−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基、4−エチルベンゼン−1,2’−ジイル基、4−プロピルベンゼン−1,3’−ジイル基等の芳香族二価炭化水素基;2−オキサ−1,3−プロパンジイル基、3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基、3−オキサ−2−メチル−1,5−ペンタンジイル基、3−オキサ−1,6−ヘキサンジイル基、3−オキサ−2−メチル−1,5−ヘキサンジイル基、3−オキサ−2−メチル−1,6−ヘキサンジイル基、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基、3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基、3−メチル−3−アザ−1,5−ペンタンジイル基、3−メチル−3−アザ−1,6−ヘキサンジイル基、3−フェニル−3−アザ−1,6−ヘキサンジイル基、3−メチル−3−アザ−7−オキサ−1,9−ノナンジイル基、3−チア−1,5−ペンタンジイル基、3,6−ジチア−1,8−オクタンジイル基等のヘテロ原子を含む二価炭化水素基等が挙げられる。これらのなかでも、特にメチレン基、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,11−ウンデカンジイル基、1,3−ベンゼンジイル基、1,4−ベンゼンジイル基が好ましい。
AはSx及びA’と結合しているが、1,2−プロパンジイル基等のように、Aが非対称な置換基である場合において、Sx及びA’と結合する方向は任意である。
【0019】
上記一般式(2)において、A1は−O−、−S−、−NR−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−NR1−C(O)−、−C(O)−NR1−及び単結合のいずれかを表す。Rは、前記と同様の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R1は、前記と同様の炭素数1〜20のフッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基である。
【0020】
一般式(2)において、Sx、A、A1は任意の組み合わせが可能である。Sxがペンタメチルジシロキサン−1−イル基である場合について例示すると、一般式(2)で表されるシロキサン含有基の具体例としては、ペンタメチルジシロキサン−1−イルメチル基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル基、1−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エテニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブチル基、5−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ペンチル基、6−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキシル基、7−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘプチル基、8−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)オクチル基、9−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ノニル基、10−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)デシル基、11−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ウンデシル基、12−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ドデシル基、14−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)テトラデシル基、16−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキサデシル基、18−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)オクタデシル基、20−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)イコシル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェニル基、4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]フェニル基、4−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]フェニル基、4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]フェニル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エチル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エチル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エチル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エチル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロピル基等の置換炭化水素基;(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)メトキシ基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブトキシ基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブトキシ基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェノキシ基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エトキシ基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロポキシ基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エトキシ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エトキシ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロポキシ基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシ基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシ基、1−メチル−2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシ基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチルスルファニル}エトキシ基等の置換オルガノキシ基;(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)メチルスルファニル基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチルスルファニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピルスルファニル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェニルスルファニル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチルスルファニル}エチルスルファニル基、3−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピルスルファニル}プロピルスルファニル基、1−メチル−2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エチルスルファニル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピルスルファニル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エチルスルファニル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピルスルファニル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エチルスルファニル基等の置換オルガノスルファニル基;N−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)メチル−N−メチルアミノ基、N−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]−N−メチルアミノ基、N−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]−N−エチルアミノ基、N−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]−N−プロピルアミノ基、N−{(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}−N−メチルアミノ基、N−{(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}−N−エチルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−イソプロピルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−アリルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ブチルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ヘキシルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−オクチルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−デシルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−フェニルアミノ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ナフチルアミノ基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−メチルアミノ基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−エチルアミノ基、
N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−フェニルアミノ基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ナフチルアミノ基、N−[4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブチル]−N−メチルアミノ基、N−[4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェニル]−N−メチルアミノ基、N−[4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]フェニル]−N−メチルアミノ基、N−[4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]フェニル]−N−メチルアミノ基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エチル−N−メチルアミノ基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピル−N−メチルアミノ基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エチル−N−メチルアミノ基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピル−N−メチルアミノ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エチル−N−メチルアミノ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エチル−N−メチルアミノ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロピル−N−メチルアミノ基、N,N−ビス[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ基等の置換ジオルガノアミノ基、(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)メトキシカルボニル基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシカルボニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブトキシカルボニル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェノキシカルボニル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エトキシカルボニル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロポキシカルボニル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシカルボニル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシカルボニル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エトキシカルボニル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エトキシカルボニル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロポキシカルボニル基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシカルボニル基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシカルボニル基、1−メチル−2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシカルボニル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチルスルファニル}エトキシカルボニル基等の置換オルガノキシカルボニル基;(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)アセトキシ基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピオニルオキシ基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピオニルオキシ基、5−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ペンタノイルオキシ基、6−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキサノイルオキシ基、
11−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ウンデカノイルオキシ基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ベンゾイルオキシ基、{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}アセチル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピオニルオキシ基、{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}アセトキシ基、3−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピオニルオキシ基、{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}アセトキシ基、{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}アセトキシ基、3−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]プロピオニルオキシ基、3−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]プロピオニルオキシ基等の置換アシロキシ基;N−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)メチル−N−メチルカルバモイル基、N−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]−N−メチルカルバモイル基、N−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]−N−エチルカルバモイル基、N−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]−N−プロピルカルバモイル基、N−{(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}−N−メチルカルバモイル基、N−{(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}−N−エチルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−イソプロピルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−アリルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ブチルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ヘキシルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−オクチルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−デシルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−フェニルカルバモイル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ナフチルカルバモイル基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−メチルカルバモイル基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−エチルカルバモイル基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−フェニルカルバモイル基、N−[2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−ナフチルカルバモイル基、N−[4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブチル]−N−メチルカルバモイル基、N−[4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェニル]−N−メチルカルバモイル基、N−[4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]フェニル]−N−メチルカルバモイル基、N−[4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]フェニル]−N−メチルカルバモイル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エチル−N−メチルカルバモイル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピル−N−メチルカルバモイル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エチル−N−メチルカルバモイル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピル−N−メチルカルバモイル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エチル−N−メチルカルバモイル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エチル−N−メチルカルバモイル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロピル−N−メチルカルバモイル基、N,N−ビス[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]カルバモイル基等の置換カルバモイル基;N−メチル−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)アセタミド基、N−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピオンアミド基、N−メチル−5−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ペンタンアミド基、N−メチル−6−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキサンアミド基、N−メチル−11−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ウンデカンアミド基、N−メチル−4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ベンズアミド基、N−メチル−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}アセタミド基、N−メチル−3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピオンアミド基、N−メチル−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}アセタミド基、N−メチル−3−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピオンアミド基、N−メチル−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}アセタミド基、N−メチル−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}アセタミド基、N−メチル−3−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]プロピオンアミド基、N−メチル−3−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]プロピオンアミド基等の置換アミド基等が挙げられる。
【0021】
式(2)で示される基としては、Sxの好ましい例、Aの好ましい例及びA1を組み合わせて得られる基が好ましい。特に3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ基、3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロポキシ基、3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロポキシ基、3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロポキシ基、3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ基、3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロポキシ基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N−[3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N−[3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N−[3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N−[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N−[3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルアミノ基、N,N−ビス[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ基、N,N−ビス[3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ基、N,N−ビス[3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ基、N,N−ビス[3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ基、N,N−ビス[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ基、N,N−ビス[3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、N−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N−[3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N−[3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N−[3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N−[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N−[3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル]−N−プロピルカルバモイル基、N,N−ビス[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]カルバモイル基、N,N−ビス[3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロピル]カルバモイル基、N,N−ビス[3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロピル]カルバモイル基、N,N−ビス[3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル]カルバモイル基、N,N−ビス[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]カルバモイル基、N,N−ビス[3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル]カルバモイル基がより好ましい。
【0022】
上記一般式(1)において、R2は水素原子、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12のフッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、−C(O)−ORで表されるオルガノキシカルボニル基、−C(O)−NR2で表されるジオルガノカルバモイル基、シアノ基、及び下記式(3)で表される複素環式置換基から選ばれる基である。Rは、前記と同様の炭素数1〜20の一価炭化水素基である。R2の一価炭化水素基の具体例としては、R1について説明したものと同様である。
【0023】
−C(O)−ORで表されるオルガノキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ブテニルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
−C(O)−NR2で表されるジオルガノカルバモイル基の例としては、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、メチルプロピルカルバモイル基、ジイソプロピルカルバモイル基、メチルアリルカルバモイル基、ジアリルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、シクロヘキシルメチルカルバモイル基、オクチルメチルカルバモイル基、デシルメチルカルバモイル基、ドデシルメチルカルバモイル基、テトラデシルメチルカルバモイル基、ヘキサデシルメチルカルバモイル基、オクタデシルメチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0024】
【化9】

【0025】
上記式(3)において、X1は−O−、−S−又は−NR−を表しており、Rは前記と同様に炭素数1〜20の一価炭化水素基である。R7は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20、特に炭素数1〜6のハロゲン原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、ハロゲン原子、及び水素原子から独立に選ばれる基を表す。R7の具体例としては、式(2)の具体例として挙げた基の他に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロピニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ウンデセニル基、オクタデセニル基等の不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等の芳香族炭化水素基;トリフルオロプロピル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、ブロモメチル基、3−ブロモプロピル基、3−ヨードプロピル基、3−ヨードブチル基等のハロゲン原子で置換された一価炭化水素基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)において、R3、R4、R5、R6は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12のハロゲン原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、下記式(4)で表されるジオルガノアミノ基、下記式(5)で表されるオルガノキシ基、下記式(6)で表されるオルガノスルファニル基、及び上記式(2)のシロキサン含有基から独立に選ばれる置換基である。R3〜R6の一価炭化水素基の具体例としては、R1について説明した基に加えて、クロロメチル基、クロロプロピル基、クロロヘキシル基、クロロフェニル基、ブロモプロピル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、ヨードプロピル基、ヨードフェニル基等のハロゲン原子で置換された一価炭化水素基が挙げられる。
【0027】
【化10】

【0028】
上記式(4)において、R8は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の不連続な−O−、−S−、−NR−、もしくはそれらの組み合わせを含んでいてもよい炭素数2〜20、特に炭素数2〜12の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接せず、従って、R8は炭素原子が窒素原子と結合している。
【0029】
【化11】

【0030】
上記式(5)において、R9は炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の不連続な−O−、−S−、−NR−又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい炭素数2〜20、特に炭素数2〜12の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接せず、従って、R9は炭素原子が酸素原子と結合している。
【0031】
【化12】

【0032】
式(6)において、R10は炭素数1〜20、特に1〜12の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の不連続な−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでいてもよい炭素数2〜20、特に炭素数2〜12の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接せず、従って、R10は炭素原子が硫黄原子と結合している。
【0033】
8、R9、R10の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ウンデセニル基、オクタデセニル基等の不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等の芳香族炭化水素基;メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−エトキシエチル基、3−エトキシプロピル基、ジメチルアミノメチル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基、3−(ジメチルアミノ)プロピル基、2−(ジエチルアミノ)エチル基、3−(ジエチルアミノ)プロピル基、3−(ジイソプロピルアミノ)プロピル基、2−(メチルスルファニル)エチル基、3−(メチルスルファニル)プロピル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2−エトキシエトキシ)エチル基、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル基、3−(2−メトキシエトキシ)プロピル基、3−(2−エトキシエトキシ)プロピル基、2−{2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ}エチル基、2−{2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ}エチル基、3−{2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ}プロピル基、3−{2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ}プロピル基、2−[{2−(ジメチルアミノ)エチル}(メチル)アミノ]エチル基、2−[{2−(ジエチルアミノ)エチル}(メチル)アミノ]エチル基、2−[{2−(ジメチルアミノ)エチル}(エチル)アミノ]エチル基、2−[{2−(ジエチルアミノ)エチル}(エチル)アミノ]エチル基、3−[{2−(ジメチルアミノ)エチル}(メチル)アミノ]プロピル基、3−[{2−(ジエチルアミノ)エチル}(メチル)アミノ]プロピル基、2−{2−(メチルスルファニル)エチルスルファニル}エチル基、2−{2−(エチルスルファニル)エチルスルファニル}エチル基、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル基、2−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]エチル基、3−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]プロピル基、3−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]プロピル基等の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む一価炭化水素基、及び上記に例示した式(2)のシロキサン含有基等が挙げられる。但し、式(2)の例として挙げた基のうち、置換オルガノキシ基、置換ジオルガノアミノ基、置換オルガノスルファニル基、置換アシロキシ基、置換アミド基はR8、R9、R10の定義には含まれない。
【0034】
上記の一般式(1)における置換基R3とR4、R4とR5、R5とR6は互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。この場合、一般式(1)の構造は、具体的には下式(7a)〜(7f)のように表される縮環構造を形成する。但し、環構造を形成する場合、下記式(7)においてR3a、R4a、R5a、R6aはそれぞれR3、R4、R5、R6から水素原子1個又は2個を除くことにより得られる二価又は三価の基である。
【0035】
【化13】

【0036】
上記一般式(1)で表される本発明の蛍光性化合物において、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち、少なくとも一つは上記式(2)で表されるシロキサン含有基であるか、又はそれを置換基として含有する基である。従って、上記一般式(1)で表される化合物には一つ以上の一般式(2)で表される基が含まれている。また、上記一般式(1)で表される蛍光性化合物には水素結合ドナーとなるヘテロ原子−水素結合、例えば窒素−水素結合、酸素−水素結合等が含まれない。
【0037】
本発明の上記一般式(1)で表される蛍光性化合物はシロキサン含有基を含むが、シロキサン部分は構造が明確に規定されており、分子量分布を有するシロキサン混合物ではない。従って、一般式(1)で表される化合物も混合物ではなく単一化合物である。組成物を製造する際には、蛍光発色団のモル濃度が組成物の蛍光特性を決定する重要な因子であるので、モル濃度を正確に決定するために単一化合物であることが望ましい。
【0038】
本発明の蛍光性化合物は、蛍光特性を最大に発揮させるためにできる限り高純度に精製することが望ましい。上述のように、一般式(1)の本発明の蛍光性化合物は単一化合物であるため、高純度まで精製することが可能である。精製方法としては、例えば通常の有機化合物と同様に、再結晶や晶析、溶媒による洗浄、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー等の方法が挙げられる。本発明の蛍光性化合物の純度は液体クロマトグラフィー法で95%以上が好ましく、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である。不純物を多く含む場合には式(1)の化合物自体の蛍光特性が低下することがあり、また蛍光性樹脂組成物を製造する際に濁りが生じることがあるため組成物としても蛍光特性が低下する場合がある。液体クロマトグラフィー法による純度決定は、順相、逆相のいずれの条件でも可能である。順相では、例えばGLサイエンス社製Inertsil(登録商標)Diolカラムを、逆相では、例えばウォーターズ社製XBridge(登録商標)C18カラムを使用することができる。また、サイズ排除クロマトグラフィーも有効な方法であり、例えば東ソー社製TSK−GEL SuperH2000カラムを使用することができる。本発明においては、GLサイエンス社製Inertsil(登録商標)Diolカラムを使用して測定する。
【0039】
本発明の蛍光性樹脂組成物は、本発明の蛍光性化合物を内部に含有している樹脂である。マトリクスとなる樹脂は限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン等の熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、EPDM,スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等のエラストマー等が挙げられる。特にシリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジン、シリコーンゲル等のシリコーン樹脂が好ましい。本発明の蛍光性樹脂組成物は液体、固体、ゴム、ゲル等のいずれの状態であってもよい。
【0040】
本発明の蛍光性樹脂組成物中では、蛍光性化合物は凝集せず均一に分散していることが好ましい。また、本発明の蛍光性樹脂組成物においては、本発明の蛍光化合物を含めて蛍光性化合物を二種類以上含有していても構わない。
【0041】
本発明の蛍光性樹脂組成物において、蛍光性化合物の含有量は任意であるが、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。マトリクス樹脂に相溶する範囲で蛍光性化合物の含有量を決定することが好ましい。蛍光性化合物の性質やマトリクス樹脂の性質によるが、蛍光性化合物の含有量が多すぎると濃度消光によって蛍光強度が低下することがあり、含有量が少なすぎると蛍光強度が十分でなくなる可能性がある。
【0042】
本発明の蛍光性樹脂組成物は、樹脂以外の成分を含んでいてもよい。例えば水、メタノール、エタノール、ヘキサン、イソオクタン、デカン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の溶媒、シリカゲル、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボン、水酸化マグネシウム等のフィラー、シランカップリング剤やテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のケイ素化合物、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等のラジカル重合開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の光重合開始剤、塩化白金酸、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、ベンジリデンジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム等の金属化合物、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維、ベンゾフェノン誘導体やヒンダードアミン化合物等の紫外線吸収剤及び光安定剤、フタル酸エステルやアジピン酸エステル等の可塑剤、リン酸エステル等の難燃剤等が挙げられる。これらの成分の含有量は組成物の発光特性を妨げない範囲で任意に決定することができ、通常0.01〜80質量%の範囲である。
【0043】
本発明の蛍光性化合物は、例えばクマリン構造やキノリノン構造を公知の方法で形成した後に、シロキサン含有基を結合させることにより製造することができる。シロキサン含有基を結合させる方法としては、例えばSi−H結合を有するシロキサンを用いる脂肪族不飽和基へのヒドロシリル化反応や、ハロゲン化炭化水素基を有するシロキサンを用いる求核置換反応等が挙げられるが、これに限定されない。
【0044】
本発明の蛍光性樹脂組成物への蛍光性化合物の添加方法としては、例えば樹脂と蛍光性化合物を混練して分散させる方法、液状の樹脂モノマーやプレポリマーに蛍光性化合物をあらかじめ混合溶解させてから付加重合あるいは縮重合させる方法、樹脂ワニスに蛍光性化合物を溶解させる方法等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。以下の構造式中、Meはメチル基を示す。
【0046】
[実施例1]7−{N−プロピル−N−[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ}−4−トリフルオロメチルクマリン(化合物1)の合成
窒素雰囲気下、7−(N−アリル−N−プロピルアミノ)−4−トリフルオロメチルクマリン693.4mg(2.22mmol)、白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の2質量%キシレン溶液10.2mgを仕込み、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン551.4mg(2.48mmol)を10分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を室温で1時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、分取液体クロマトグラフィーにより精製して黄色液体844.6mgを得た。
この溶液のNMRスペクトル及びMSスペクトルを測定した結果、7−{N−プロピル−N−[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ}−4−トリフルオロメチルクマリンであることが確認された。高速液体クロマトグラフィー(HPLC、カラム:GLサイエンス社製Inertsil(登録商標) Diol、移動相:ヘキサン/クロロホルム=7/3(質量比)、UV検出器、波長254nm)により求めた純度は99.2%であった。
【0047】
1H−NMR(600MHz,d in CDCl3):0.01(s,3H),0.06−0.08(m,18H),0.42−0.45(m,2H),0.94(t,3H),1.59−1.65(m,4H),3.27−3.31(m,4H),6.33(s,1H),6.47(d,1H),6.57(dd,1H),7.44(dd,1H)
MS (EI)m/z:533 (M+),518,504,284
【0048】
実施例1で製造された化合物1の構造を下記式(8)に示す。
【化14】

【0049】
化合物1の紫外可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルをエタノール中で測定した。最長吸収極大波長は404nm、モル吸光係数は2.28×104であり、最大蛍光波長は513nm(励起波長:404nm)であった。
【0050】
[実施例2]7−{N−プロピル−N−[3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ}−4−トリフルオロメチルクマリンの合成
窒素雰囲気下、7−(N−アリル−N−プロピルアミノ)−4−トリフルオロメチルクマリン577.6mg(1.40mmol)、白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の2質量%キシレン溶液6.9mgを仕込み、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサン574.5mg(1.54mmol)を10分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を室温で2時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、分取液体クロマトグラフィーにより精製して黄色液体731.6mgを得た。この溶液のNMRスペクトル及びMSスペクトルを測定した結果、7−{N−プロピル−N−[3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ}−4−トリフルオロメチルクマリン(化合物2)であることが確認された。HPLC(実施例1と同条件)により求めた純度は99.6%であった。
【0051】
1H−NMR(600MHz,d in CDCl3):0.02(s,6H),0.030(s,1H),0.032(s,1H),0.06(s,1H),0.08(s,1H),0.50−0.54(m,2H),0.94(t,3H),1.59−1.65(m,4H),3.27−3.31(m,4H),6.34(s,1H),6.47(d,1H),6.57(dd,1H),7.44(dd,1H)
MS(EI) m/z:681 (M+),666,284
【0052】
実施例2で製造された化合物2の構造を下記式(9)に示す。
【化15】

【0053】
化合物2の紫外可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルをエタノール中で測定した。最長吸収極大波長は404nm、モル吸光係数は2.14×104であり、最大蛍光波長は513nm(励起波長:404nm)であった。
【0054】
[実施例3]7−{N−プロピル−N−[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ}−4−メチルクマリン(化合物3)の合成
窒素雰囲気下、7−(N−アリル−N−プロピルアミノ)−4−メチルクマリン707.1mg(2.75mmol)、白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の2質量%キシレン溶液10.2mgを仕込み、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン678.5mg(3.05mmol)を10分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を40℃で2時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、分取液体クロマトグラフィーにより精製して薄黄色液体903.6mgを得た。この溶液のNMRスペクトル及びMSスペクトルを測定した結果、7−{N−プロピル−N−[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ}−4−メチルクマリンであることが確認された。HPLC(実施例1と同条件)により求めた純度は99.9%であった。
【0055】
1H−NMR(600MHz,d in CDCl3):0.01(s,3H),0.06−0.08(m,18H),0.41−0.45(m,2H),0.93(t,3H),1.58−1.64(m,4H),2.30(s,1H),3.25−3.30(m,4H),5.90(s,1H),6.44(d,1H),6.53(dd,1H),7.33(d,1H)
MS(EI) m/z:479 (M+),464,450,230
【0056】
実施例3で製造された化合物3の構造を下記式(10)に示す。
【化16】

【0057】
化合物3の紫外可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルをエタノール中で測定した。最長吸収極大波長は375nm、モル吸光係数は1.99×104であり、最大蛍光波長は449nm(励起波長:375nm)であった。
【0058】
[実施例4]化合物1を含有するシリコーン樹脂組成物の製造
ガラスバイアル中に実施例1で製造した化合物1を53.4mg秤量し、透明シリコーン樹脂SIM−360主剤(信越化学工業(株)製)を室温下で撹拌しながら少量ずつ添加した。溶液が透明となったときに溶解したと判断し、溶解度を計算すると130mmol/Lであった。この混合物に主剤に対して10質量%の硬化剤を添加して混合し、脱泡後に150℃で30分加熱して硬化させ、蛍光性のシリコーン樹脂組成物を得た。なお、化合物1の濃度は上記の濃度以下で任意に変更することが可能であった。
【0059】
[実施例5]化合物2を含有するシリコーン樹脂組成物の製造
実施例4と同様にして化合物2のSIM−360主剤への溶解度を測定したところ、190mmol/Lであった。この混合物に主剤に対して10質量%の硬化剤を添加して混合し、脱泡後に150℃で30分加熱して硬化させ、蛍光性のシリコーン樹脂組成物を得た。なお、化合物2の濃度は上記の濃度以下で任意に変更することが可能であった。
【0060】
[比較例1]7−(N−アリル−N−プロピルアミノ)−4−トリフルオロメチルクマリン(化合物4)のシリコーン樹脂への溶解度測定
本比較例1で使用した化合物4の構造を下記式(11)に示す。実施例4と同様にして化合物4のSIM−360主剤への溶解度を測定したところ、25mmol/Lであった。化合物4にはシロキサン含有置換基がなく、実施例4及び実施例5と比較すると明らかに溶解性が低い。
【化17】

【0061】
[比較例2]7−{N−[3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]アミノ}−4−トリフルオロメチルクマリン(化合物5)のシリコーン樹脂への溶解度測定
本比較例2で使用した化合物5の構造を下記式(12)に示す。実施例4と同様にして化合物5のSIM−360主剤への溶解度を測定したところ、0.9mmol/Lであった。化合物5にはシロキサン含有置換基があるものの、水素結合ドナーとなる窒素−水素結合があり、実施例4及び実施例5と比較すると明らかに溶解性が低い。
【化18】

【0062】
[実施例6]化合物3を含有するシリコーン樹脂組成物の製造
実施例4と同様にして化合物3のSIM−360主剤への溶解度を測定したところ、40mmol/Lであった。この混合物に主剤に対して10質量%の硬化剤を添加して混合し、脱泡後に150℃で30分加熱して硬化させ、蛍光性のシリコーン樹脂組成物を得た。なお、化合物3の濃度は上記の濃度以下で任意に変更することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の蛍光性化合物は、蛍光インクや波長変換材料等に使用することができる。例えばシリコーン樹脂のような低極性の樹脂の着色が透明性を損なわずに可能となるので、高透明性の蛍光性樹脂組成物が得られ、有用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される蛍光性化合物。
【化1】

(式(1)において、Xは−O−又は−NR−を表す。R1は炭素数1〜20のフッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、及び下記式(2)で表されるシロキサン含有基から選ばれる基を表す。R2は水素原子、炭素数1〜20のフッ素原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、下記式(2)で表されるシロキサン含有基、−C(O)−ORで表されるオルガノキシカルボニル基、−C(O)−NR2で表されるジオルガノカルバモイル基、シアノ基、及び下記式(3)で表される複素環式置換基から選ばれる基である。R3、R4、R5及びR6は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜20のハロゲン原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、下記式(4)で表されるジオルガノアミノ基、下記式(5)で表されるオルガノキシ基、下記式(6)で表されるオルガノスルファニル基、及び下記式(2)のシロキサン含有基から独立に選ばれる置換基である。R3とR4、R4とR5、R5とR6はそれぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。但し、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも一つは、下記式(2)で表されるシロキサン含有基であるか又はそれを置換基として含有する基である。Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基であって、式(1)の化合物に複数のR及び/又はR1が含まれる場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式(2)において、Sxはケイ素原子数2〜10であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20の一価炭化水素基が結合した直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表し、ケイ素原子がAと結合している。Aは炭素数1〜20の二価炭化水素基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の二価炭化水素基を表す。A1は−O−、−S−、−NR−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−NR1−C(O)−、−C(O)−NR1−及び単結合のいずれかを表す。)
【化3】

(式(3)において、X1は−O−、−S−又は−NR−を表し、R7は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20のハロゲン原子で置換されていてもよい一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、ハロゲン原子及び水素原子から独立に選ばれる基を表す。)
【化4】

(式(4)において、R8は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。)
【化5】

(式(5)において、R9は炭素数1〜20の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。)
【化6】

(式(6)において、R10は炭素数1〜20の一価炭化水素基、上記式(2)で表されるシロキサン含有基、又は1個以上の−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。)
【請求項2】
一般式(1)において、R4又はR5が式(2)で表される置換基であって、A1が−NR−である請求項1に記載の蛍光性化合物。
【請求項3】
一般式(1)において、R2が水素原子である請求項1又は2に記載の蛍光性化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光性化合物及び樹脂を含有する蛍光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、シリコーン樹脂である請求項4に記載の蛍光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−232930(P2012−232930A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102774(P2011−102774)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】