説明

融着エポキシ樹脂用の非焼結イソシアネート改質エポキシ樹脂

少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を、少なくとも1種のヒドロキシ基含有エポキシ樹脂及び/又は少なくとも1種のエポキシ樹脂及びエポキシ基間に架橋結合を形成できる少なくとも1種の二官能価若しくは多官能価求核性化合物の組合せと反応させることによって得られる、エポキシ−末端熱硬化性オキサゾリジノン環含有ポリマー。これらのポリマーは少なくとも約45℃の開始ガラス転移温度を有し、硬化状態で少なくとも約160℃の開始ガラス転移温度を示すことができる。これらのポリマーを含む粉体コーティング組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、融着エポキシ樹脂コーティング用の実質的に焼結されていないイソシネート改質エポキシ樹脂及びこれらの樹脂を含む粉体コーティング組成物に関する。この組成物は、特に、炭化水素を生産施設から処理施設まで高温(>110℃)で輸送するパイプラインのための防蝕融着エポキシ樹脂(Fusion-Bonded Epoxy)(FBE)コーティング又はプライマーの製造に適することができる。
【背景技術】
【0002】
超深部の貯留層及びタールサンドの開発によってオイル及びガスパイプラインの使用温度が上昇するに従って、パイプコーティング業界は業界のニーズを満たす高性能防蝕コーティング及び断熱多層系を開発し続けている。現在のところ、パイプコーティング業界は、約140℃までの温度で稼働するパイプラインの防蝕要件を満たすコスト効率の良いFBEコーティング系を提供することができる。しかし、使用温度の高い次世代パイプラインはこれより高温で稼働することが予測される。この要件を満たすために、パイプコーティング業界は、より高い使用温度で稼働するパイプラインを腐蝕から保護できるFBEコーティング又はプライマー系を必要としている。更に、コスト競争力を持つためには、FBEコーティング又はプライマー系は最新粉体コーティング技術を用いて適用できるものでなければならない。
【0003】
FBEコーティング組成物の主成分は固体エポキシ樹脂(SER)であり、これが被覆の性質を大きく左右する。FBEコーティング用途に使用するSERに強く求められる性質の1つは開始ガラス転移温度(ガラス転移開始温度)(onset glass transition temperature)Tgである。開始ガラス転移温度は、特に夏に、空調管理されていない倉庫で又は樹脂若しくは樹脂を基材とする粉体コーティング配合物の輸送中に頻繁に遭遇する高温多湿条件下の樹脂ペレットの焼結又は融着を回避するためには少なくとも約45℃である。
【0004】
粉体コーティング組成物への配合後、SERはFBEコーティングにバランスの良い物理的性質も与えなければならない。完成FBEコーティングの重要な性質の1つは開始ガラス転移温度であり、これが基材の使用温度より高くなければならない。FBEコーティングに望まれるもう1つの性質は基材への良好な密着性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
意外なことに、特定の型のエポキシ樹脂と1種又はそれ以上のポリイソシアネート化合物を用いてイソシアネート改質エポキシ樹脂を製造することによって、粉体コーティング組成物への混和時に開始ガラス転移温度が少なくとも約160℃のFBEコーティングを提供できる、開始ガラス転移温度が少なくとも約45℃のSERを製造することが可能であることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a1)少なくとも1種の(好ましくは液体の)ヒドロキシ基含有エポキシ樹脂及び/又は(a2)少なくとも1種のエポキシ樹脂(例えばヒドロキシル基含有樹脂又はヒドロキシ基を全く含まないかごくわずかしか含まない樹脂)及びエポキシ基間に架橋結合を形成できる少なくとも1種の二官能価若しくは多官能価求核性化合物の組合せを、(b)少なくとも1種のポリイソシアネート化合物と、(c)オキサゾリジノン環の形成及びポリマーの分岐を促進できる少なくとも1種の触媒の存在下で反応させることによって得ることができる、エポキシ−末端熱硬化性オキサゾリジノン環含有ポリマーを提供する。未硬化状態では、これらのポリマーは少なくとも約45℃の開始ガラス転移温度を有する。更に、硬化状態では、これらの樹脂は少なくとも約160℃の開始ガラス転移温度を示すことができる。開始ガラス転移温度は、例えば示差走査熱量測定法(DSC)によって測定できる。
【0007】
本発明のポリマーの一面において、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物はポリマーMDI(ポリマー4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート))又はトルエンジイソシアネート(TDI)とポリマーMDIとのブレンドを含むことができる。例えばポリマーMDI対TDIの重量比は約10:90〜約90:10であることができる。
【0008】
本発明のポリマーの別の面において、少なくとも1種のヒドロキシ基含有エポキシ樹脂はヒドロキシ基含有ジグリシジルエーテルを含むことができる。例えば少なくとも約10%(好ましくは少なくとも約20%)のジグリシジルエーテル分子がヒドロキシ基含有オリゴマーであることができる。
【0009】
本発明のポリマーの別の面において、(a1)はビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含むことができる。
【0010】
別の面において、重量比(a1):(b)は約75:25〜約85:15であることができる。例えばこの重量比は約77:23〜約81:19、例えば約78:22〜約80:20であることができる。
【0011】
本発明のポリマーは、また、少なくとも1種の触媒(c)、例えば2−フェニル−イミダゾールのようなイミダゾールを、総ポリマーに基づき、好ましくは約100〜約2000ppmの濃度で含む。
【0012】
本発明のポリマーの更に別の面において、ポリマー中のオキサゾリジノン環対イソシアヌレート環の(モル)比は、約95:5〜約100:0であることができ、且つ/又はポリマーは少なくとも約400eq/grのエポキシ当量を有することができる。
【0013】
本発明の更なる面において、これらのポリマーは、融着エポキシ樹脂(FBE)コーティングを製造するための粉体コーティング組成物への使用に適することができる。
【0014】
本発明は、また、(a)本発明に係る前述の1種又はそれ以上の熱硬化性ポリマー(その種々の態様を含む)及び(b)熱硬化性ポリマー用の1種又はそれ以上の硬化触媒を含む熱硬化性粉体コーティング組成物を提供する。
【0015】
一面において、これらの組成物は、組成物の総重量に基づき、約10〜約99重量%の(a)を含むことができる。
【0016】
本発明は、また、基材に融着エポキシ樹脂(FBE)コーティング又はプライマーをコーティングする方法、及びこの方法によってコーティングされた基材を提供する。この方法は、本明細書中に記載した本発明に係る粉体コーティング組成物を用いる粉体コーティングプロセスに基材を供することを含む。
【0017】
この方法の一面において、基材は金属(例えば鋼)基材を含むことができ、且つ/又は基材はパイプを含むことができる。
【0018】
本発明は、また、本明細書中に記載した本発明に係る粉体コーティング組成物から製造された融着エポキシ樹脂コーティングで表面が被覆された基材を提供する。
【0019】
この基材の一面において、その表面の融着エポキシ樹脂コーティングは少なくとも約160℃の開始ガラス転移温度を有することができる。
【0020】
本発明は、また、未硬化状態の開始ガラス転移温度が少なくとも約45℃であり且つ硬化状態で少なくとも約160℃の開始ガラス転移温度を示すことができるエポキシ−末端オキサゾリジノン環含有ポリマーの製造方法を提供する。この方法は、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物[例えばポリイソシアネート化合物(好ましくはトルエンジイソシアネート(TDI)及びポリマー4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(ポリマーMDI)を含む]を、(a1)少なくとも1種の(好ましくは液体の)ヒドロキシ基含有エポキシ樹脂及び/又は(a2)少なくとも1種のエポキシ樹脂及びエポキシ基間に架橋結合を形成できる少なくとも1種の二官能価若しくは多官能価求核性化合物の組合せと(b)エポキシ基とイソシアネート基の間の反応を触媒できる少なくとも1種の化合物との混合物に添加することを含んでなる。この添加は、イソシアヌレート環の形成よりもオキサゾリジノン環の形成に有利に働く条件下で(例えばそのような速度及び温度において)実施する。添加完了後、得られた混合物を、少なくとも約45℃の開始ガラス転移温度を有するエポキシ−末端オキサゾリジノン環含有ポリマーを生成するのに充分な時間、高温に保持する。
【0021】
この方法の一面において、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物の添加は2工程又はそれ以上で実施できる。例えばTDIとポリマーMDIを別々に添加することができ、且つ/又はTDIとポリマーMDIとの混合物を添加することができる。
【0022】
別の面において、この添加は少なくとも約150℃、例えば少なくとも約155℃又は少なくとも約160℃の温度で実施できる。
【0023】
本発明の更に別の面において、高い保持温度は少なくとも約160℃であることができる。
【0024】
更なる面において、前記の少なくとも1種のエポキシ樹脂は、ヒドロキシ基含有ビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むことができる。例えば前記ジグリシジルエーテル分子の少なくとも約10%(好ましくは少なくとも約20%)がヒドロキシ基含有オリゴマーであることができる。
【0025】
別の面において、ポリマーMDI対TDIの重量比は約10:90〜約90:10であることができ、且つ/又は製造されるポリマーは少なくとも約400のエポキシ当量を有することができる。
【0026】
本発明は、また、本明細書中に記載した本発明に係る方法によって製造されたポリマー(その種々の態様を含む)を提供する。
【0027】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明の説明に記載し、一部は本発明の説明から明らかになり、或いは本発明の実施によって知ることができる。本発明は、明細書及び特許請求の範囲に特に記載された組成物、生成物及び方法によって実現及び達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明を、更に、以下の詳細な説明において図面を参照して本発明の典型的な例示態様の非限定的例によって説明する。
【図1】図1は後述の実施例6のポリマーの開始ガラス転移温度を求めるためのDSCサーモグラムを示し;
【図2】図2は後述の実施例12の硬化粉体コーティング組成物の開始ガラス転移温度を求めるためのDSCサーモグラムを示し;
【図3】図3は後述の実施例12の粉体コーティング組成物から製造されたFBEコーティングの開始ガラス転移温度を求めるためのDSCサーモグラムを示し;
【図4】図4は後述の実施例7bのポリマーの温浸時間(digestion time)の関数としてのポリマーEEW及びポリマー開始ガラス転移温度を示すグラフを示し;
【図5】図5は後述の実施例7bのポリマーのポリマーエポキシ当量(EEW)の関数としてのポリマー開始ガラス転移温度を示すグラフを示し;
【図6】図6は後述の実施例7bのポリマーのポリマーEEWの関数としての溶融粘度(melt viscosity)を示すグラフを示し;
【図7】図7は後述の実施例7cのポリマーの温浸時間の関数としてのポリマーEEW及びポリマー開始ガラス転移温度を示すグラフを示し;
【図8】図8は後述の実施例7cのポリマーのポリマーEEWの関数としてのポリマー開始ガラス転移温度を示すグラフを示し;
【図9】図9は後述の実施例7cのポリマーのポリマーEEWの関数としての溶融粘度を示すグラフを示し;
【図10】図10は後述の実施例7b及び7cのポリマーのポリマーEEWの関数としてのポリマー開始ガラス転移温度を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
特に断らない限り、化合物又は成分への言及は、その化合物又は成分を単独で、そして化合物の混合物のように他の化合物又は成分との組合せで含む。
【0030】
本明細書中で使用する単数形の表現(a,an及びthe)は、前後関係からそうでないことが明白に示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0031】
特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用する成分の量、反応条件などを表す全ての数値は、あらゆる場合において用語「約」によって修飾されているものと理解すべきである。従って、そうでないことが示されない限り、以下の明細書及び添付した特許請求の範囲中に記載した数値パラメーターは、本発明が得ようとする目的の性質によって異なり得る近似値である。最低限でも、特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を制限しようとする意図と見なされないように、各数値パラメーターは有効数字の数を考慮して、普通の丸めを適用することによって解釈しなければならない。
【0032】
更に、本明細書内における数値範囲の記載は、その範囲内の全ての数値及び範囲を開示するものと見なす。例えば範囲が約1〜約50であるならば、例えば1、7、34、46.1、23.7又はその範囲内の全ての他の値若しくは範囲を含むと見なす。
【0033】
以下の詳細は、例証として、本発明の態様の事例的解説のみを目的として記載し、本発明の原則及び概念的態様の最も有用で理解し易い説明と考えられるものを提供するために示す。この点に関しては、本発明の基本的理解に必要とされるより詳しく本発明の態様を示すことはしないが、以下の説明から、本発明のいくつかの形態を実際に具体化できる方法が当業者に明らかになる。
【0034】
本発明のエポキシ−末端熱硬化性オキサゾリジノン環含有ポリマーは、好ましくは少なくとも1種の(好ましくは液体であるが、液体に限定するものではない)ヒドロキシ基含有エポキシ樹脂と、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物又はトルエンジイソシアネート(TDI)及びポリマー4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(ポリマーMDI)を含む(例えばそれらからなることができるか又はそれらから本質的になることができる)2種若しくはそれ以上のポリイソシアネート化合物の混合物との反応生成物並びに適当な触媒を含む。
【0035】
ヒドロキシ基含有エポキシ樹脂は単一の樹脂であってもよいし、又は2種若しくはそれ以上のエポキシ樹脂の混合物であってもよい。1種より多いエポキシ樹脂が存在する場合には、これらのエポキシ樹脂の少なくとも1種(好ましくはそれら全て)がヒドロキシ基を含む。非限定的例として、エポキシ樹脂の分子の好ましくは約7%超、例えば少なくとも約10%、例えば少なくとも約15%、又は少なくとも約20%が1つ又はそれ以上のヒドロキシ基を含む。
【0036】
本発明のイソシアネート改質エポキシ末端熱硬化性ポリマーの製造に使用できるヒドロキシ基含有エポキシ樹脂の非限定的具体例としては、例えばビスフェノールA、臭素化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールK(4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン)、ビスフェノールS(4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホン)、ヒドロキノン、レソルシノール、1,1−シクロヘキサンビスフェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのようなジオールのジグリシジルエーテル;例えばヘキサヒドロフタル酸のようなジカルボン酸のジグリシジルエステル;ジエポキシ化合物、例えばシクロオクテンジエポキシド、ジビニルベンゼンジエポキシド、1,7−オクタジエンジエポキシド、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,5−ヘキサジエンジエポキシド及び4−シクロヘキセンカルボキシレート4−シクロヘキセニルメチルエステルのジエポキシド;並びにフェノールノボラック、クレゾールノボラック及びビスフェノールAノボラックのようなノボラックのグリシジルエーテル誘導体が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の2種又はそれ以上の混合物も同様に使用できる。
【0037】
本発明に使用するエポキシ樹脂の好ましい例としては、例えばビスフェノールAのようなビスフェノールのヒドロキシ基含有ジグリシジルエーテルが挙げられる。本発明のポリマーの製造に使用する全エポキシ樹脂の少なくとも約20重量%、例えば少なくとも約50重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%又は少なくとも約90重量%(例えば約100重量%)が、例えばビスフェノールAのような1種又はそれ以上のビスフェノール類のジグリシジルエーテルからなるならば、特に好ましい。ビスフェノール(A)ジグリシジルエーテルは好ましくはオリゴマー(アルカリの存在下における、例えばビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応時に生成される例えばオリゴマー)を、全ジグリシジルエーテル分子の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%が1つ又はそれ以上のヒドロキシ基を含むような比率で含む。ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのエポキシ当量{EEW;本明細書中では、[(平均)分子量]÷[分子当たりのエポキシ基の数]と定義する}は、例えば少なくとも約180であることができるが、通常は約250以下、例えば約230以下、又は約210以下である。
【0038】
本発明の熱硬化性樹脂の製造に好ましいイソシアネート出発原料は少なくとも2つの成分、即ちTDIとポリマーMDIを含む。好ましくはポリマーMDI:TDIの重量比は少なくとも約10:90、例えば少なくとも約55:45又は少なくとも約60:40であるが、通常は約90:10以下である。別の例において、ポリマーMDI:TDIの重量比は約50:50〜約90:10であることができる。
【0039】
ポリマーMDIは多くの場合、平均イソシアネート官能価(即ち分子当たりのイソシアネート基の平均数)が約3.5以下、例えば約3以下、約2.8以下又は約2.7以下であるが、通常は約2.1以上、例えば約2.2以上又は約2.3以上である。
【0040】
本発明の熱硬化性ポリマーの製造に使用するTDIは2,4−及び2,6−異性体の混合物であることができる。市販TDIはこれらの異性体を約80:20(2,4:2,6)の比で含むことが多いが、任意の他の異性体比、例えば約50:50、約65:35、約100:0及び約0:100も同様に適当である。
【0041】
TDI及びポリマーMDI成分の他に、本発明のポリマーを製造するためのイソシアネート出発原料は1種又はそれ以上の追加イソシアネート化合物を含むことができる。このようなイソシアネート化合物の非限定的具体例としては、(モノマー)MDI、メタンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート(例えばブタン−1,1−ジイソシアネート)、エチレン−1,2−ジイソシアネート、トランス−ビニレンジイソシアネート、プロパン−1,3−ジイソシアネート、2−ブテン−1,4−ジイソシアネート、2−メチルブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート、オクタン−1,8−ジイソシアネート、ジフェニルシランジイソシアネート、ベンゼン−1,3−ビス(メチレンイソシアネート)、ベンゼン−1,4−ビス(メチレンイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ビス(メチレンイソシアネート)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、1,3−及び1,4−ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン(ADI)、キシレンジイソシアネートの異性体、ビス(4−ベンゼンイソシアネート)エーテル、ビス(4−ベンゼンイソシアネート)スルフィド及びビス(4−ベンゼンイソシアネート)スルホン並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
本発明の熱硬化性ポリマーを製造するためのイソシアネート出発原料の少なくとも約20重量%、例えば少なくとも約50重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%又は少なくとも約90重量%(例えば約100重量%)が、ポリマーMDI又はTDIとポリマーMDIとの混合物から構成されるならば、特に好ましい。
【0043】
触媒の存在下におけるエポキシ基とイソシアネート基との反応は、2つの主な型の環構造、即ちイソシアヌレート環(イソシアネート基の三量化による)及びオキサゾリジノン環(イソシアネート基とエポキシ基との反応による)を生じる可能性がある。例えばジエポキシ化合物とジイソシアネート化合物との反応(適当な触媒の存在下で高温で実施)は以下のように図示できる:
【0044】
【化1】

【0045】
前記反応式において、R1は芳香族ジイソシアネートの二価残基を表し{例えばTDIの場合にはCH3−C63を、ポリマーMDIの場合には−C64−[CH2−C63NCO]m−CH2−C64−(m=1,2,3など)を表す}、R2はジエポキシドの二価残基を表す[例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルの場合にはCH2−O−C64−C(CH32−C64−O−CH2を表す]。
【0046】
本発明の熱硬化性ポリマー中のオキサゾリジノン環:イソシアヌレート環の比(例えばオキサゾリジノン及びイソシアヌレートに関するそれぞれ1750及び1710cm-1におけるFT−IRピーク高さによって求めることができる)は通常少なくとも約95:5(且つ約100:0以下)である。好ましくは、この比は少なくとも約98:2、例えば少なくとも約99:1である。換言すれば、前記式のxの平均値は好ましくは0に近い。
【0047】
オキサゾリジノン環対イソシアヌレート環の比は、例えば反応温度、触媒の量及び型、エポキシ化合物とイソシアネート化合物の相対比並びにイソシアネート化合物の添加速度のようなパラメーターを変更することによって影響される可能性がある。この点に関しては、例えば米国特許第5,112,932号(引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる)を参照できる。後述の実施例は、エポキシ−末端イソシアネート改質ポリマー中のオキサゾリジノン環対イソシアヌレート環の目的とする高い比を得ることができる方法を例示する。
【0048】
本発明の熱硬化性ポリマーは当業者によく知られた方法で製造できる。この点に関しては、例えば米国特許第5,112,932号及びEP 0 113 575 A1(引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる)を参照できる。
【0049】
ポリマーの形成、即ちオキサゾリジノン環(及びイソシアヌレート環)の形成に適当な触媒の非限定的例としては、求核性アミン及びホスフィン、アンモニウム及びホスホニウム塩が挙げられる。それらの具体例としては、窒素複素環、例えばアルキル化イミダゾール類(例えば2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール及び4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−5−メチルイミダゾール);他の複素環、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ジアザビシクロオクテン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、ピペリジン;トリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン;ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン及びトリエチルホスフィン;第四アンモニウム及びホスホニウム塩、例えばトリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムアセテート、トリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド及びベンジルトリフェニルホスホニウムブロミドが挙げられる。Al、Fe、Mg若しくはZnをベースとするルイス酸、例えばカルボン酸亜鉛、有機亜鉛キレート化合物、オクタン酸第一錫及びトリアルキルアルミニウム化合物並びにアンチモン含有触媒、例えばトリ有機アンチモンジ−及びテトラヨージドは、本発明のポリマーの製造に使用できる触媒の更なる非限定的例である(言うまでもなく、1種より多くの触媒を使用できる)。好ましい触媒はイミダゾール化合物である。特に好ましい触媒は2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール及び4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−5−メチルイミダゾール)並びにそれらの混合物である。
【0050】
触媒又は触媒混合物は、一般に、エポキシ及びイソシアネート出発原料の総合重量に基づき、約0.01〜約2重量%、例えば約0.02〜約1重量%又は約0.02〜約0.1重量%の量で使用する。
【0051】
反応は、通常、溶媒の不存在下で実施する。反応温度は通常約150〜約180℃の範囲である。好ましくは、反応は約155〜約175℃の温度で実施する。最も好ましくは、反応は約160〜約165℃の温度で実施する。
【0052】
本発明の熱硬化性ポリマーは、好ましくは少なくとも約330、例えば少なくとも約350、少なくとも約380又は少なくとも約400であるが、通常約1,000以下、例えば約500以下のエポキシ当量(EEW)を有する。図5に示されるように、ポリマーのEEWと開始ガラス転移温度Tgの間には相関関係があり、EEWの増加につれて開始ガラス転移温度が上昇する。そしてまた、エポキシ樹脂へのイソシアネート成分の添加完了後の高温(たとえば反応温度)における温浸(インキュベーション)時間を増加させることによって、EEW(及び開始ガラス転移温度)を増加させることができる(図4に示す通り)。理論によって拘束するつもりはないが、高温における温浸(インキュベーション)時間の間に、ポリマー中に存在するヒドロキシ基(ヒドロキシ基含有エポキシ樹脂出発原料に由来)は触媒の存在下でポリマーのエポキシ基と反応してポリマー分子を分岐させ、ひいてはEEWの増加(及び開始ガラス転移温度の上昇)をもたらすと推測される。
【0053】
EEWは、主に、温浸時間及び温浸温度によって決まる。例えば温浸時間を制御することによって目的EEWに達することができる。好ましい温浸温度は約160〜約180℃、例えば約165〜約175℃の範囲である。
【0054】
望ましいEEWに達するために、エポキシ樹脂(ヒドロキシ基を有する又は有さない)を1種又はそれ以上の二官能価又は多官能価求核性化合物と合することもできる。これらの化合物は、ポリイソシアネートの添加前若しくは添加中に及び/又はポリイソシアネート添加完了後に、エポキシ樹脂に添加できる。これらの求核性化合物の非限定的例としては、アミン硬化剤、例えばジシアンジアミド及びジアミノジフェニルメタン;ポリカルボン酸及び無水物、例えば無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、無水メチルナジック酸(nadic methyl anhydride)(NMA)、無水コハク酸物及び無水マレイン酸;フェノール化合物、例えばトリス(ヒドロキシフェニル)エタン又は−メタン;ポリオール、例えばグリセリン及びトリス(ヒドロキシメチル)メタンなど;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0055】
本発明の粉体コーティング組成物は通常、組成物の総重量に基づき、約10〜約99重量%の熱硬化性ポリマーを含む。本発明の粉体コーティング組成物は本発明の熱硬化性ポリマーを、組成物の総重量に基づき、通常少なくとも約10重量%、例えば少なくとも約30重量%、少なくとも約50重量%又は少なくとも約60重量%であって、通常約99重量%以下、例えば約95重量%以下、約90重量%以下又は約85重量%以下の量で含む。
【0056】
本発明の組成物の更なる成分としては、エポキシ基間及び/又はエポキシ基とヒドロキシ基の間の架橋反応のための硬化剤及び硬化促進剤、顔料、流れ調整剤並びに充填剤から選ばれた添加剤が挙げられるが、これらに限定するものではない。これらの添加剤の具体例は当業者にはよく知られている。
【0057】
適当な硬化剤の非限定的例としては、アミン硬化剤、例えばジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド、ポリアミノアミド;ポリマーチオール;ポリカルボン酸及び無水物、例えば無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、無水メチルナジック酸(NMA)、ポリアゼライン酸ポリ無水物(polyazealic polyanhydride)、無水コハク酸物、無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸コポリマー;並びにフェノール系硬化剤、例えばフェノールノボラック樹脂;更にそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0058】
適当な硬化促進剤の非限定的例としては、置換又はエポキシ改質イミダゾール類、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール;第三アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン及びトリブチルアミン;ホスホニウム塩、例えばエチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド及びエチルトリフェニルホスホニウムアセテート;アンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド;並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。硬化剤及び硬化促進剤は好ましくは、粉体コーティング組成物の総重量に基づき、約0.5〜約20重量%の総量で使用する。
【0059】
本発明の粉体コーティング組成物は、組成物の成分を実質的に均一にブレンドする任意の方法によって調製できる。例えばドライブレンド、セミドライブレンド又は溶融ブレンド法を使用できる。次いで、ブレンドを微粉砕して、粉体コーティング組成物を形成することができる。粉体コーティング組成物の粒子は好ましくは約300ミクロン以下の粒度を有する。
【0060】
本発明の粉体コーティング組成物は、例えば流動床焼結(FBS)、静電粉体コーティング(EPC)及び静電流動床(EFB)のような任意の望ましい粉体コーティング法によって基材に適用できる。
【0061】
流動床焼結(FBS)法においては、予熱した基材(例えば金属パイプ)を、空気流によって浮遊状態に保たれた粉体コーティング組成物中に浸漬する。被覆しようとする基材は、例えば少なくとも約200℃、例えば少なくとも約240℃であるが通常は約350℃以下、例えば約300℃以下の温度に予熱し、流動床と接触させる(例えばその中に浸漬する)。基材の浸漬時間は、特に目的被覆厚によって異なる。
【0062】
静電粉体コーティング(EPC)法においては、粉体コーティング組成物は圧縮空気によって、高電圧の直流によって通常約30〜約100kVの電圧をかけるアプリケーター中に吹き込み、被覆しようとする基材の表面に噴霧する。次に、それを適当なオーブン中で焼成する。粉体はその電荷によって低温の基材に密着する。別法として、静電的に帯電した粉体を、パイプのような加熱基材に噴霧し、基材の余熱によって又は外部熱を用いて硬化させることもできる。
【0063】
静電流動床(EFB)法においては、粉体を含む流動床上に環状の又は部分的に環状の電極を取り付けることによって前記操作を組合せて、例えば約50〜約100kVの静電荷を生じさせる。基材は、粉体コーティングが完全に硬化する特有の温度で加熱する。
【0064】
本発明の粉体コーティング組成物は多くの基材をコーティングできる。好ましい基材は金属(例えば鉄、鋼、銅)、特に金属パイプである。本発明の粉体コーティング組成物でコーティングできる他の基材の例はセラミック及びガラス材料などである。本発明の粉体コーティング組成物から製造されるコーティングは、例えば高い使用温度(例えば110℃又はそれ以上)で稼働するパイプライン用のコーティング材料として使用できる。
【0065】
本発明の焼結及び非焼結樹脂並びにコーティング組成物は、電機子及び固定子へのコーティングによってコイル、変圧器及びモーターの電気的絶縁に使用することもできる。また、これは、マグネットワイヤ、バスバー及び動かない(torpid)コアのコーティングにも使用できる。特に、前記は、UL Electrial Insulation Systemsの認定を必要とする家庭電化製品用の分数馬力モーター(fractional horsepower motor)などの製造業者によって使用されることができる。FBE法は、各粉体粒子が、完全硬化及び規定性能特性を達成するのに必要な成分を全て含むことを保証する。本発明の適正に配合されたポリマーは電気積層板用(electrical laminate application)としても使用できる。
【実施例】
【0066】
本発明を以下の非限定的実施例によって更に説明する。これらの実施例中、反応は全て、乾燥条件下で一定の動的窒素パージを用いて実施した。以下に報告した温度は約±2℃の精度で示してある。反応温度は2つのランプを用いて調節した。ランプの一方は温度調節器(DigiSense,ID# 1603ECTC−3)に接続してある。エポキシ当量(EEW)値は、Mettler DL55 Auto−Titratorを用いてEEW滴定によって得た。開始ガラス転移温度Tgの値は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定した。
【0067】
実施例1
ガラス反応器に、実質的にオリゴマー(ヒドロキシ基)を有さないビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.332(登録商標),The Dow Chemical Company)270.84gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール105mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、PAPI 94(ポリマーMDI,The Dow Chemical Company,平均分子量325,平均イソシアネート官能価2.5)80.90gを165〜180℃において滴加した。その後、反応混合物を180℃で2.5時間インキュベートした。得られたポリマーはEEWが375g/eq.であり、40℃の開始Tgを示した。
【0068】
実施例2
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.383(登録商標),The Dow Chemical Company)615.5gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール(Aldrich,>98%)300mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、PAPI 94 153gを165〜180℃において滴加した。その後、反応混合物を180℃で0.75時間インキュベートした。得られたポリマーはEEWが351g/eq.であり、28.5℃の開始Tgを示した。
【0069】
実施例3
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.383(登録商標),The Dow Chemical Company)1193gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール(Aldrich,>98%)500mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、PAPI 94(ポリマーMDI,The Dow Chemical Company,平均分子量325,平均イソシアネート官能価2.5)336.5gを165〜180℃において滴加した。次いで、反応混合物を180℃で0.75時間インキュベートした。得られたポリマーはEEWが384g/eq.であり、37.4℃の開始Tgを示した。
【0070】
実施例4
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.383(登録商標),The Dow Chemical Company)676.0gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール320mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、PAPI 27(ポリマーMDI,The Dow Chemical Company,平均分子量387,平均官能価2.9)169.0gを165〜180℃において滴加した。次いで、反応混合物を180℃で0.75時間インキュベートした。得られたポリマーはEEWが346g/eq.であり、26.6℃の開始Tgを示した。
【0071】
実施例5
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.383(登録商標),The Dow Chemical Company)1200.0gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール500mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、PAPI 27 319gを165〜170℃において滴加した。次いで、反応混合物を170℃で0.5時間インキュベートした。得られたポリマーはEEWが360g/eq.であり、31℃の開始Tgを示した。
【0072】
実施例6
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.383(登録商標))1202gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール(Aldrich,>98%)500mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、トルエンジイソシアネート(VORANATE T−80,The Dow Chemical Companyから入手可能な,2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネートの80:20異性体混合物の混合物)127.8gを10分間にわたって添加し、次いで165〜175℃においてポリマーMDI(PAPI 27)191.7gを添加した。ポリマーMDIの添加後、反応混合物を90分間温浸させた。得られたポリマーはEEWが413g/eq.であり、46℃の開始Tgを示した。図1はこのポリマーのDSCサーモグラムを示す。
【0073】
実施例7a
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.383(登録商標))1202gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール(Aldrich,>98%)500mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、165〜175℃においてポリマーMDI(PAPI 27)とTDI(VORANATE T−80)の60:40(重量%)混合物319gを滴加した。その後、反応混合物を90分間温浸させた。得られたポリマーはEEWが418g/eq.であり、45℃の開始Tgを示した。
【0074】
実施例7b
180℃におけるインキュベーションを2.5時間行った以外は、実施例7aに記載したのと同じ反応体比及び反応条件を用いた。サンプルをEEW、溶融粘度及びTgについて30分毎に分析した。得られた結果を以下の表Iに要約する。
【0075】
【表1】

【0076】
図4は、前記操作のスケールアップにおいてなされたポリマー温浸時間の増加につれて、ポリマーEEW及びTgが増加することを示している。このポリマーに関するEEWと開始Tg及び溶融粘度との関係を表Iに示し且つ図5及び6に図示してある。
【0077】
ポリマーのEEW及びTgは共に温浸時間の増加につれてほぼ直線的に増加することがわかる。溶融粘度はEEW約411まではEEWとは本質的に独立し、EEW約415で著しく増加し始める。
【0078】
実施例7c
ビスフェノールAジグリシジルエーテルを、前記実施例1で用いた実質的にオリゴマー(ヒドロキシ基)を有さないビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R. 332(登録商標))で置き換える以外は、実施例7b(スケールアップ例)を繰り返した。図7は、得られたポリマーのポリマーEEW及びTgが温浸時間の増加によって実質的に影響されないことを示している。このポリマーに関するEEWと開始Tg及び溶融粘度との関係を以下の表IIに示し且つ図8及び9に図示する。
【0079】
【表2】

【0080】
図10は、実施例7bと7cのポリマーに関する開始Tgに対する温浸時間の影響を示し、比較する。温浸時間の増加によって、オリゴマー(ヒドロキシ基)含有ビスフェノールAジグリシジルエーテルから製造されたポリマーのTgは著しく上昇するが、実質的にオリゴマー(ヒドロキシ基)を有さないビスフェノールAジグリシジルエーテルから製造されたポリマーのTgは実質的に影響されないことがわかる。
【0081】
実施例8
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.383(登録商標))700gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール(Aldrich,>98%)350mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、165〜175℃においてポリマーMDI(PAPI 27)とTDI(VORANATE T−80)の80:20(重量%)混合物191.4gを滴加した。その後、反応混合物を90分間温浸させた。得られたポリマーはEEWが415g/eq.であり、45.3℃の開始Tgを示した。
【0082】
実施例9
ガラス反応器に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(D.E.R.332(登録商標),The Dow Chemical Company)400.1gを装入した。160〜165℃に加熱後、2−フェニルイミダゾール154mgを加えた。2−フェニルイミダゾールの溶解後、165〜180℃においてPAPI 27及びTDI(2,4−及び2,6−異性体の60:40異性体混合物)106.34gを滴加した。その後、反応混合物を180℃で2.5時間インキュベートした。得られたポリマーはEEWが386g/eq.であり、37℃の開始Tgを示した。0.5時間のインキュベーション時間後にトリス(ヒドロキシフェニル)エタン6.28gを添加し且つ更に2時間インキュベーションを続けると、得られたポリマーはEEWが410であり、開始Tgが43℃であった。
【0083】
実施例10
実施例2において製造したポリマー452.2g、Amicure CG 1200(Air Productsから入手可能なジシアンジアミド粉末)16.4g、Epicure P 101(Shell Chemicalから入手可能なビスフェノールAエポキシ樹脂との2−メチルイミダゾール付加物)6.9g、Curezol 2PHZ−PW(Shikokuから入手可能なイミダゾールエポキシ硬化剤)4.6g、Modaflow Powder III(流れ調整剤,ミズーリ州セントルイスのUCB Surface Specialties製のシリカ担体中アクリル酸エチル/アクリル酸2−エチルヘキシルコポリマー)4.6g、Minspar 7(長石充填剤)120.6g及びCab−O−Sil M5(Cabot Corp.から入手可能なコロイドシリカ)3.0gを配合することによって、融着エポキシ樹脂コーティング粉体配合物を調製した。242℃において加熱した鋼棒を得られたコーティング粉末中に浸漬し、次いで242℃で2分間硬化させ、10分間水冷した。得られた融着エポキシ樹脂コーティングは、159℃の開始Tg及び鋼基材への良好な密着性を示した。
【0084】
実施例11
実施例3において製造したポリマー564.8g、Amicure CG 1200 18.4g、Epicure P 101 8.5g、Curezol 2PHZ−PW 5.6g、Modaflow Powder III 5.6g、Minspar 7 147g及びCab−O−Sil M5 3.8gを配合することによって、融着エポキシ樹脂コーティング粉体配合物を調製した。242℃において加熱した鋼棒を得られたコーティング粉末中に浸漬し、次いで242℃で2分間硬化させ、10分間水冷した。得られた融着エポキシ樹脂コーティングは、160℃の開始Tg及び鋼基材への良好な密着性を示した。
【0085】
実施例12
実施例4において製造したポリマー468.2g、Amicure CG 1200 17.1g、Epicure P 101 7.1g、Curezol 2PHZ−PW 4.7g、Modaflow Powder III 4.7g、Minspar 7 123.4g及びCab−O−Sil M5 3.1gを配合することによって、融着エポキシ樹脂粉体コーティング配合物を調製した。242℃において加熱した鋼棒を、この粉末中に浸漬して、165℃の開始Tg及び鋼基材への良好な密着性を示す融着エポキシ樹脂コーティングを生成した。
【0086】
図2は、硬化粉体コーティング配合物のDSCサーモグラフを示し、図3は対応するFBEコーティングのDSCサーモグラフを示す。
【0087】
実施例13
実施例5において製造したポリマー752.3g、Amicure CG 1200 26.61g、Epicure P 101 11.3g、Curezol 2PHZ−PW 7.49g、Modaflow Powder III 5g、Minspar 7 197.3g及びCab−O−Sil M5 5.0gを配合することによって、融着エポキシ樹脂粉体コーティング配合物を調製した。242℃において加熱した鋼棒を、この粉末中に浸漬して、163℃の開始Tg及び鋼基材への良好な密着性を示す融着エポキシ樹脂コーティングを生成した。
【0088】
実施例14
実施例6において製造したポリマー602.9g、Amicure CG 1200 18.35g、Epicure P 101 9.22g、Curezol 2PHZ−PW 10.5g、Modaflow Powder III 4g、Minspar 7 155.0g及びCab−O−Sil M5 4.0gを配合することによって、融着エポキシ樹脂粉体コーティング配合物を調製した。242℃において加熱した鋼棒を、この粉体中に浸漬して、162℃の開始Tg及び鋼基材への良好な密着性を示す融着エポキシ樹脂コーティングを生成した。
【0089】
実施例15
実施例7aにおいて製造したポリマー468.2g、Amicure CG 1200 17.07g、Epicure P 101 7.01g、Curezol 2PHZ−PW 4.7g、Modaflow Powder III 4.7g、Minspar 7 123.4g及びCab−O−Sil M5 3.1gを配合することによって、融着エポキシ樹脂粉体コーティング配合物を調製した。242℃において加熱した鋼棒をこの粉体中に浸漬して、160℃の開始Tg及び鋼基材への良好な密着性を示す融着エポキシ樹脂コーティングを生成した。
【0090】
実施例16
実施例8において製造したポリマー603g、Amicure CG 1200 18.43g、Epicure P 101 9.4g、Curezol 2PHZ−PW 10.62g、Modaflow Powder III 4.0g、Minspar 7 155g及びCab−O−Sil M5 4.0gを配合することによって、融着エポキシ樹脂粉体コーティング配合物を調製した。242℃において加熱した鋼棒をこの粉体中に浸漬して、163℃の開始Tg及び鋼基材への良好な密着性を示す融着エポキシ樹脂コーティングを生成した。
【0091】
以下の表IIIは、配合例10〜16を要約する。
【0092】
【表3】

【0093】
本発明をそのいくつかの変形に関してかなり詳細に説明したが、他の変形も可能であり、本明細書を読み且つ図面を検討すれば、当業者には記載されたその変形の交替と並び換え及びその変形の相当物が明白になるであろう。また、本明細書中の変形の種々の特徴をさまざまに組合せて本発明の更なる変形を提供できる。更に、いくつかの用語は説明を明確にするために用いたのであって、本発明を限定するために用いたのではない。従って、添付した特許請求の範囲は、本明細書中に含まれる好ましい変形の説明に限定するべきではなく、本発明の真の精神及び範囲に含まれる全てのこのような交替と並び換え及び相当物を含むべきである。
【0094】
本発明について詳述したが、本発明の方法は発明の範囲又はその任意の態様から逸脱しないならば、広く且つ同等の範囲の条件、配合物及び他のパラメーターを用いて実施できることが当業者にはわかるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)少なくとも1種のヒドロキシ基含有エポキシ樹脂及び(a2)少なくとも1種のエポキシ樹脂とエポキシ基間に架橋結合を形成できる少なくとも1種の二官能価又は多官能価求核性化合物との組合せの少なくとも一方を、(b)少なくとも1種のポリイソシアネート化合物と、(c)オキサゾリジノン環の形成及びポリマーの分岐を促進できる少なくとも1種の触媒の存在下で、反応させることによって得ることができる、未硬化状態で少なくとも約45℃の開始ガラス転移温度を有し且つ硬化状態で少なくとも約160℃の開始ガラス転移温度を示すことができるエポキシ−末端熱硬化性オキサゾリジノン環含有ポリマー。
【請求項2】
前記の少なくとも1種のヒドロキシ基含有エポキシ樹脂がジグリシジルエーテルを含み且つ前記グリシジルエーテル分子の少なくとも約10%がヒドロキシ基含有オリゴマーである請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記の少なくとも1種のヒドロキシ基含有エポキシ樹脂がビスフェノールAジグリシジルエーテルを含む請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
ビスフェノールAジグリシジルエーテルと前記の少なくとも1種のポリイソシアネート化合物との重合比が約77:23〜約81:19である請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
前記の少なくとも1種のポリイソシアネート化合物がポリマー4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(ポリマーMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)又はポリマーMDIとTDIとの混合物を含む請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
前記の少なくとも1種のポリイソシアネート化合物がトルエンジイソシアネート(TDI)及びポリマーMDIを含み、ポリマーMDI:TDIの重量比が約10:90〜約90:10である請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマー中のイソシアヌレート環に対するオキサゾリジノン環の比が約95:5〜約100:0である請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーが少なくとも約400のエポキシ当量を有する請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリマーが融着エポキシコーティングを製造するための粉体コーティング組成物への使用に適当である請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
前記組成物が(a)請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性ポリマー及び(b)(a)のための1種又はそれ以上の硬化触媒を含んでなる熱硬化性粉体コーティング組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の粉体コーティング組成物から製造された融着エポキシ樹脂コーティングを表面に有する基材。
【請求項12】
基材を請求項10に記載の粉体コーティング組成物を用いる粉体コーティング法に供することを含んでなる、融着エポキシ樹脂(FBE)コーティングを有する基材を提供する方法。
【請求項13】
前記基材が金属基材を含み且つ前記基材がパイプを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法によって製造された被覆基材。
【請求項15】
未硬化状態の開始ガラス転移温度が少なくとも約45℃であり且つ硬化状態で最高約160℃までの開始ガラス転移温度を示すことができる、エポキシ−末端オキサゾリジノン環含有ポリマーの製造方法であって、(i)少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を、イソシアヌレート環の形成よりもオキサゾリジノン環の形成に有利な条件下で、(a1)少なくとも1種のヒドロキシ基含有エポキシ樹脂並びに/又は(a2)少なくとも1種のエポキシ樹脂及びエポキシ基間に架橋結合を形成できる少なくとも1種の二官能価若しくは多官能価求核性化合物の組合せと、(b)エポキシ基とイソシアネート基との反応を触媒でき且つポリマーの分岐を促進できる少なくとも1種の化合物との混合物に添加し;そして(ii)前記(i)による添加の完了後に、得られた混合物を、エポキシ−末端オキサゾリジノン環含有ポリマーが、(b)の存在下で、分岐し且つ少なくとも約45℃のポリマー開始ガラス転移温度を生じるのに充分な時間、高温に保つことを含んでなる方法。
【請求項16】
前記の少なくとも1種のポリイソシアネート化合物がポリマー4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(ポリマーMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)又はポリマーMDIとTDIと混合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
TDIとポリマーMDIとを別々に添加するか、又はTDIとポリマーMDIとの混合物を添加する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記の少なくとも1種のポリイソシアネート化合物添加工程(i)を2工程又はそれ以上の工程で実施する請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記添加工程(i)を少なくとも約150℃の温度で実施し且つ前記工程(ii)の高温が少なくとも約160℃である請求項15に記載の方法。
【請求項20】
(a1)がビスフェノールAグリシジルエーテルを含み、且つ前記ジグリシジルエーテル分子の少なくとも約10%がヒドロキシル基含有オリゴマーである請求項15に記載の方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法によって製造されたポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−503259(P2011−503259A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532168(P2010−532168)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/081281
【国際公開番号】WO2009/058715
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】