説明

螺旋状集束具及び螺旋状集束具による光ファイバの集束方法

【課題】複数の光ファイバを所定の束に集束する螺旋状集束具を使用し、集束作業を簡単・適正に行えるようにする。
【解決手段】複数の光ファイバを所定の束(21a、21b、21c、又は21d)に集束する螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)である。そして、前記螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)は、チューブ状の本体に左回りの螺旋部25と右回りの螺旋部27が反転部29を介して、軸線Xにそって交互に連なる形状に係る分断部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバ(例えば、光ファイバ心線を被覆層で覆った光ファイバケーブル)用の螺旋状集束具、及び螺旋状集束具による光ファイバの集束方法に係り、特に光配線基盤等で光ファイバを束ねて一束化するために用いる螺旋状集束具、及び螺旋状集束具を用いた光ファイバの集束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば光配線盤内では、光ファイバ(例えば、光ファイバ心線を被覆層で覆った光ファイバケーブル)束(例えば、数百本から数千本)を取りまとめるために、市販の樹脂製スパイラルチューブ等(プラスチックの帯をスパイラル状に巻いた保護用物品で日用品として使われている)が使われている。そして、光ファイバ束にスパイラルチューブを取り付けるためには、スパイラルチューブの端部を導入端として、スパイラルチューブを回転させねじりながら、光ファイバ束の周囲に巻き付けている。
【0003】
逆に、スパイラルチューブが巻き付けられた光ファイバ束から、目的の一本(例えば、不良の光ファイバ)の光ファイバを取り出すことは非常に困難であるため、光ファイバチューブを光ファイバ束から全て外す作業が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−168284号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の光ファイバ螺旋状集束具には、以下のような問題があった。すなわち、上述のスパイラルチューブを光ファイバ(例えば、光ファイバ心線を被覆層で覆った光ファイバケーブル)束に巻き付けるには、この作業はスパイラルチューブが長く撚り数が多い程、作業性が悪くなるという問題があった。
【0006】
すなわち、光ファイバ束(例えば、数百本から数千本)をスパイラルチューブに巻き付ける現行の光配線盤内での狭い集線構造は、スパイラルチューブの取り付け、および、その後の光ファイバ取り出し時、および開放時の作業性が悪いという問題があった。
【0007】
本願発明の目的は、上記従来のものが持つ問題点を排除して、光ファイバの取り纏め集束作業、開放作業、及び集束された光ファイバ群の中から必要な本数の光ファイバの取り出しを容易にする螺旋状集束具及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、複数の光ファイバを所定の束に集束する螺旋状集束具であって、前記螺旋状集束具は、チューブ状の本体に、左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して、軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成された螺旋状集束具である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記反転部は、前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で、同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と、前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で、同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されている請求項1に記載の螺旋状集束具である。
【0010】
請求項3に係る発明は、光配線基盤収納ボックスには、複数の光ファイバが接続された光配線基盤が収納され、前記螺旋状集束具により前記複数の光ファイバを所定の束に集束する請求項1又は2に記載の螺旋状集束具である。
【0011】
請求項4に係る発明は、複数の光ファイバを所定の束に集束する光ファイバ集束方法であって、チューブ状の本体に、左回り螺旋部と右回り螺旋部とが、反転部を介して、軸線に沿って交互に連なる形状に係る分断部が形成された螺旋状集束具による集束作業に際し、前記複数の光ファイバを所定の束にまとめ、任意の反転部へ差し込み、そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら前記所定の束を内部へ取り込んでいき、隣り合う次の反転部に達したら、その次の反転部へ前記所定の束を差し込み、そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら隣り合う次の反転部に達するまで前記所定の束を内部へ取り込む回転動作を順次繰返す光ファイバ集束方法である。
【0012】
請求項5に係る発明は、チューブ状の本体に、左回り螺旋部と右回り螺旋部とが、反転部を介して、軸線に沿って交互に連なる形状に係る分断部が形成された螺旋状集束具により前記集束された、複数の光ファイバから、特定の光ファイバを取り出す際に、任意の反転部から前記特定の光ファイバを取り出し、隣り合う次の反転部に達したら、その次の反転部から取り出す動作を順次繰返す光ファイバ取り出し方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明の螺旋状集束具によれば、チューブ状の本体に形成された分断部を、左回り螺旋部と右回り螺旋部とが反転部を介して、軸線に沿って交互に連なった構成としたので、従来のように一方の端から順々に集束線を巻き付ける必要はなく、どの反転部からでもよく、任意の反転部へ光ファイバ(光ファイバケーブル)束を差し込み、そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させることで、特に、ガラス等の素材により形成され破損等を起し易い(取り扱いが難しい)光ファイバ束を内部へ取り込むことが可能となるため作業性が向上するという効果を奏する。
【0014】
逆に螺旋状集束具から光ファイバ束を開放するには、光ファイバ束に対して螺旋状集束具を沿わせて螺旋状集束具を左右にねじりながら開放できる。また、集束された光ファイバ群の中から必要な本数の光ファイバの取り出しを容易にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光ファイバのネットワークを説明する説明図である。
【図2】光配線基盤における複数の光ファイバの集束を説明する説明図である。
【図3】螺旋状集束具の概略を示す斜視図である。
【図4】螺旋状集束具の側面方向から見た側面図である。
【図5】螺旋状集束具の取り付けを説明する説明図である。
【図6】螺旋状集束具の取り付けを説明する説明図である。
【図7】螺旋状集束具から特定の光ファイバの取り出しを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、光ファイバ通信のネットワーク1を示している。光ファイバ通信のネットワーク1は、中央局3と、都道府県局5と、区市町村局7と所番地局9と各家11とを備えている。各局(中央局3、都道府県局5、区市町村局7、所番地局9)において、光ファイバは細かく分散され最終的に各家11へ配線されるものである。
【0018】
図2に、一例として都道府県局5に配置された光配線基盤収納ボックス5Aにおける複数の光ファイバ(例えば、光ファイバ心線を被覆層で覆った光ファイバケーブル)の束を示す。
【0019】
光配線基盤収納ボックス5Aは、収納ケース13と扉15とを備えている、前記収納ケース13内には、光配線基盤支持部17が左右に立設され、各光配線基盤支持部17の間には、複数の単位光配線基盤19が各段毎に配置されている。
【0020】
前記複数の単位光配線基盤19には複数の光ファイバが接続され各光ファイバ束を、所定の光ファイバ束単位毎に各螺旋状集束具で集束している。すなわち、光ファイバ束21aを螺旋状集束具23aで集束している。同様に、光ファイバ束21bを螺旋状集束具23bで集束し、光ファイバ束21cを螺旋状集束具23cで集束し、光ファイバ束21dを螺旋状集束具23dで集束している。この螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)の素材としては、剛性を備えた合成樹脂、合成ゴム等で形成することができる。
【0021】
光ファイバは、例えばガラス等の素材を含んで形成されているため湾曲する力に弱いものである。すなわち、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)を光ファイバ束(21a、21b、21c、又は21d)の立ち上がりのストレートの箇所に配置することが好ましい。
【0022】
図3は、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)の概略を示す斜視図である。図4は、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)のX軸方向(矢印AR1方向)から見た側面図である。
【0023】
複数の光ファイバ(例えば、光ファイバ心線を被覆層で覆った光ファイバケーブル)を集束する螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)であるチューブ状(換言すればパイプ状)の本体には、X軸に沿い左回りの螺旋部25と右回りの螺旋部27が反転部29を介して、軸線Xにそって交互に連なる形状に係る分断部が形成されている。また、前記分断部は、チューブ本体の長手方向の一方の端から他方の端まで形成されている。さらに、前記分断部は、チューブ本体を、例えばカッター等により切断して形成するものである。換言すれば、分断部は、チューブ本体が切断された切断形状であり、通常は分断面間の隙間は僅かか、又は無いが、チューブを左右に引き延ばした場合には空間領域が形成される。なお、左回りの螺旋部25、右回りの螺旋部27、反転部29のそれぞれは分断部であることは当然である。なお、前記分断部の分断面間は通常の状態で所定の間隔が空いた状態に形成してもよい。作業性が向上するためである。
【0024】
そして、前記反転部29は、前記左回り螺旋部25から右回り螺旋部27に続く間が突起状(例えば円弧形状)(符号29bで示した範囲)で、同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と、前記L/R反転部と向きが異なると共に右回り螺旋部(図示省略)から左回り螺旋部25に続く間が突起状(例えば円弧形状)(符号29aで示した範囲)で、同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されている。
【0025】
また、前記反転部29は、軸線X(矢印AR1)から見た側面において前記左回り螺旋部25及び右回り螺旋部27によって形成される同一円周上に位置されている。また、前記左回り螺旋部25と右回り螺旋部27は、例えば、等しいスパイラル状の螺旋巻数となっている。
【0026】
前記左回り螺旋部25と右回り螺旋部27は、各螺旋の間が少なくとも前記反転部29を残して密着に近づけることにより巻き数を増加させることができる。すなわち、D1=0、D2=0に近づけるに従い巻き数を増加させることができる。通常は、前記左回り螺旋部25と右回り螺旋部27は、各螺旋の分断部間が前記反転部29と共に開いている。
【0027】
なお、例えば、前記左回り螺旋部25と右回り螺旋部27は、1.6〜1.7の螺旋巻数となっていることが好ましい。すなわち、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)の集束力と光ファイバ束(21a、21b、21c、又は21d)への取り付け作業の作業性のバランスに優れるためである。
【0028】
なお、図4に示す、D3の寸法を変えることにより光ファイバの集束数を変化させることができるとともに、D4の寸法(チューブの厚さ)を変化させることにより集束強度を変化させることができる。
【0029】
図5、図6を参照し、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)の光ファイバ束(21a、21b、21c、又は21d)への取り付け(図5において矢印AR2方向から取り付ける)を説明する。
【0030】
複数の光ファイバを所定の束に集束する光ファイバ集束方法であって、チューブ状の本体に左回り螺旋部25と右回り螺旋部27とが、反転部29を介して、軸線Xに沿って交互に連なる形状に係る分断部が形成された螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)による集束作業に際し、複数の光ファイバを所定の束(21a、21b、21c、又は21d)にまとめ、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)の任意の反転部29へ差し込み、そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら所定の束(21a、21b、21c、又は21d)を内部へ取り込んでいき、隣り合う次の反転部29に達したら、その次の反転部29へ所定の束(21a、21b、21c、又は21d)を差し込み、そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら隣り合う次の反転部29に達するまで所定の束を内部へ取り込む回転動作を順次繰返す。これらの作業を、所定の束23a、所定の束23b、所定の束23c、所定の束23dという具合に順次行う。なお、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)は、識別できるように形成し(色等を変えておく)、所定の束(21a、21b、21c、又は21d)の機能毎(例えば、通信先による分類)に取り付けるようにしても良い。
【0031】
図7は、螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)から特定の光ファイバの取り出しを示す。
【0032】
チューブ状の本体に、左回り螺旋部25と右回り螺旋部27とが、反転部29を介して、軸線Xに沿って交互に連なる形状に係る分断部が形成された螺旋状集束具(23a、23b、23c、又は23d)により前記集束された、複数の光ファイバ(光ファイバケーブル)から、特定の光ファイバと取り出す際に、前記螺旋状支持具(23a、23b、23c、又は23d)の任意の反転部29から前記特定の光ファイバWを取り出し(矢印AR3方向に取り出す)その後、回転させ隣り合う次の反転部29に達したら、その次の反転部29から取り出す動作を順次繰返す。
【0033】
なお、各反転部29の形状は、正面(第1図紙面方向)から見たように、向きが異なる滑らかな円弧状の反転部が交互に連なった形状をなすことが望ましいが、必ずしも円弧状には限定されない。つまり、加工成形の容易性、あるいは作業容易性を鑑みて滑らかな円弧状以外に、円弧状に近似できる多角形(例えば三角形)などの適宜形状をなすことは本発明の範囲内である。
【0034】
この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0035】
1 光通信ネットワーク
3 中央局
5 都道府県局
7 区市町村局
9 所番地局
11 各家
13 光配線基盤収納ボックス
15 扉
17 光配線基盤支持部
19 光配線基盤
21 光ファイバ束
23 螺旋状集束具
25 左回り螺旋部
27 右回り螺旋部
29 反転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバを所定の束に集束する螺旋状集束具であって、
前記螺旋状集束具は、チューブ状の本体に、左回りの螺旋部と右回りの螺旋部が反転部を介して、軸線にそって交互に連なる形状に係る分断部が形成されたことを特徴とする螺旋状集束具。
【請求項2】
前記反転部は、前記左回り螺旋部から右回り螺旋部に続く間が突起状で、同一線上に揃う同じ向きのL/R反転部と、前記L/R反転部と向きが異なると共に前記右回り螺旋部から左回り螺旋部に続く間が突起状で、同一線上に揃う同じ向きのR/L反転部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の螺旋状集束具。
【請求項3】
光配線基盤収納ボックスには、複数の光ファイバが接続された光配線基盤が収納され、前記螺旋状集束具により前記複数の光ファイバを所定の束に集束することを特徴とする請求項1又は2に記載の螺旋状集束具。
【請求項4】
複数の光ファイバを所定の束に集束する光ファイバ集束方法であって、
チューブ状の本体に、左回り螺旋部と右回り螺旋部とが、反転部を介して、軸線に沿って交互に連なる形状に係る分断部が形成された螺旋状集束具による集束作業に際し、前記複数の光ファイバを所定の束にまとめ、任意の反転部へ差し込み、そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら前記所定の束を内部へ取り込んでいき、隣り合う次の反転部に達したら、その次の反転部へ前記所定の束を差し込み、そのまま差し込み方向へ螺旋に沿って回転させながら隣り合う次の反転部に達するまで前記所定の束を内部へ取り込む回転動作を順次繰返すことを特徴とする光ファイバ集束方法。
【請求項5】
チューブ状の本体に、左回り螺旋部と右回り螺旋部とが、反転部を介して、軸線に沿って交互に連なる形状に係る分断部が形成された螺旋状集束具により前記集束された、複数の光ファイバから、特定の光ファイバと取り出す際に、任意の反転部から前記特定の光ファイバを取り出し、隣り合う次の反転部に達したら、その次の反転部から取り出す動作を順次繰返すことを特徴とする光ファイバ取り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−224288(P2010−224288A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72238(P2009−72238)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(591102660)協栄線材株式会社 (24)
【Fターム(参考)】