説明

螺着式導水盤セット

【課題】導水盤とフィルタ膜との水密効果を良好に保ち、簡便に組み立てることができる螺着式導水盤セットを提供する。
【解決手段】螺着式導水盤セットは、フィルタ膜30を挟持し、複数の導水盤10及び複数の水密部材20を備える。導水盤10は、回動可能に重ねられ、盤状の本体11と、軸方向に沿って本体に穿設された穿孔12と、穿孔12の環状壁面上に、軸方向に周設された複数の環設孔13と、本体11の一方の側盤面から外側に延伸され、環設孔13の端部に対応するように設けられた複数の螺合部14と、本体の他方の側盤面111から環設孔13に向かって延伸された複数の組み合わせ部15と、環設孔13が周設され、本体11の2つの側盤面111に内側に凹設された位置決め部16とをそれぞれ有する。位置決め部16には、本体11の2つの側盤面111に穿設された少なくとも1つの連結孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ薄膜の挟持装置に関し、特に、フィルタ薄膜を挟持し、互いに重ねて用いる螺着式導水盤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、フィルタを緊密に挟持する挟持装置は、フィルタ膜の挟着に用いる1組の導水盤を含む。また、互いに隣接した導水盤同士は、回動可能に重ねられている。各導水盤は、本体と、軸方向に沿って本体に穿設された中央穿孔と、軸方向を中心とし、本体に等間隔に穿設された環設孔と、本体に凸出した複数の盤面であり、環設孔の端部に位置する複数の螺着部と、環設孔に対応するように、本体のもう一つの盤面に形成された複数の組み合わせ部と、穿孔孔壁に形成され、フィルタ膜に連通した複数の導水槽と、を含む。このように、導水盤の螺着部は、隣接した他の導水盤の環設孔に貫設され、2つの導水盤の盤面間に、フィルタ膜を重ねて配置する。続いて、組み立てる際、2つの導水盤を互いに反対方向に回転させ、導水盤の螺着部と隣接した他の導水盤の組み合わせ部とを嵌着させて螺着し、フィルタ膜を固定する。
【0003】
また、導水盤セットが高い水密効果を得ることができるように、導水盤は、両側の盤面上に、環設孔の環槽が周設され、環槽上に配置されたO型ワッシャにより、互いに隣接した2つの導水盤の盤面でフィルタ膜を緊密に挟設し、フィルタ膜により濾過されない水が導水盤の中央部に設けた穿孔に直接滲入することを防ぎ、濾過効果を得る。
【0004】
導水盤の盤面とフィルタ膜の膜面との間にワッシャを挟設することにより、水密防漏性を高めることができるが、ワッシャと導水盤とは単に貼り合わされた関係であり、固着状態ではない。また、導水盤は、互いに螺着させなければ組み立てることができない。そのため、ワッシャは、2種類の異なる方向に回転されて発生するねじり剪断力(そのうちの一つは時計回りであり、もう一つは逆時計回りである)を受ける。この2種類の剪断力の大きさは、導水盤、フィルタ膜との間に発生するワッシャの摩擦力に応じて決定される。当業者であれば分かるように、導水盤とフィルタ膜とは異なる材料からなるため、相対的に摩擦係数も異なり、大きさ、方向がそれぞれ異なる剪断力にワッシャは耐える必要がある上、これら2種類の異なる剪断力の作用により、導水盤の環槽からワッシャが外れたり、ねじれ変形が発生したりするため、フィルタ膜の膜面と導水盤の盤面との間に間隙が発生し、導水盤セットの水密効果が失われる虞がある。
【0005】
また、導水盤の2つの盤面には、それぞれワッシャが取り付けられているが、垂直に組み立てると、導水盤の盤面の下向きの側部のワッシャが環槽から自然に外れることがあるため、導水盤を位置決めして組み立てることが非常に不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7396462号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、導水盤とフィルタ膜との水密効果を良好に保ち、簡便に組立てることができる螺着式導水盤セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、フィルタ膜を挟持し、複数の導水盤及び複数の水密部材を備える螺着式導水盤セットであって、前記導水盤は、回動可能に重ねられ、盤状の本体と、軸方向に沿って前記本体に穿設された穿孔と、前記穿孔の環状壁面上に、軸方向に周設された複数の環設孔と、前記本体の一方の側盤面から外側に延伸され、前記環設孔の端部に対応するように設けられた複数の螺合部と、前記本体の他方の前記側盤面から前記環設孔に向かって延伸された複数の組み合わせ部と、前記環設孔が周設され、前記本体の2つの前記側盤面に内側に凹設された位置決め部と、をそれぞれ有し、前記位置決め部には、前記本体の2つの前記側盤面に穿設された少なくとも1つの連結孔を有し、前記導水盤それぞれの前記螺合部は、隣接した他の前記導水盤の前記環設孔に貫設され、隣接した他の前記導水盤の前記螺合部に対応した開放位置と、隣接した他の前記導水盤の組み合わせ部に対応した係合位置との間で揺転し、前記水密部材は、前記導水盤の前記位置決め部上にそれぞれ固設され、前記本体の2つの前記側盤面の当接部に対応するように、前記当接部間に配置され、前記連結孔内に延伸される接触部と、を有することを特徴とする螺着式導水盤セットが提供される。
【0009】
前記位置決め部には、前記本体の2つの前記側盤面に内側に凹設された2つの浅い環溝と、軸方向に対して垂直に周設され、前記本体の両側の前記浅い環溝と連通した前記連結孔と、を有し、互いに隣接した前記連結孔により嵌着リブが構成されていることが好ましい。
【0010】
前記導水盤の前記位置決め部は、前記本体の径方向で外側に向かって延伸した切欠きを複数有することが好ましい。
【0011】
前記水密部材は、前記導水盤の前記切欠きに対応した耳部を有することが好ましい。
【0012】
前記水密部材は、熱可塑性ゴム、熱可塑性加硫ゴム又は熱可塑性エラストマーの熱可塑性材料からなることが好ましい。
【0013】
前記導水盤の前記螺合部は、垂直に延設された垂直セクションと、前記垂直セクションに水平方向に延設された水平セクションと、前記垂直セクションと前記水平セクションとの接続箇所に設けられた内側に凹んだ係合縁と、を有し、前記組み合わせ部は、先端縁に設けられた凸部を有し、互いに隣接した2つの前記導水盤が互いに係合位置に位置合わせされると、前記組み合わせ部が前記垂直セクションに係合され、内側に凹設された前記係合縁に前記凸部が嵌入されて係合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の螺着式導水盤セットは、以下(1)及び(2)の効果を有する。
(1)水密部材と導水盤とを螺着して結合することにより、2つの導水盤が回されて係合されたときに、導水盤の本体上の嵌着リブと切欠きとにより水密部材が制限されるため、引っ張ったり押したりしても導水盤の本体から外れず、導水盤の位置決め部上に水密部材を安定的に位置決めし、水密部材が外れたり、位置がずれたり、曲がったりすることを防ぐことができる。そのため、導水盤の2つの側盤面と、フィルタ膜の膜面との間に隙間が生じることを防ぎ、水の品質を確保することができる。
(2)各導水盤は、水密部材だけを組み合わせて使用する上、水密部材が導水盤上に位置決めされるため、垂直に位置決めして組み合わせる際、水密部材が導水盤から分離されることがない。そのため、迅速かつ確実に位置決めして組み立て、簡便に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による螺着式導水盤セットを示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による導水盤と水密部材とが結合されたときの状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による2つの導水盤を互いに組み合わせ、開放位置にあるときの状態を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による2つの導水盤を互いに組み合わせ、係合位置にあるときの状態を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態による互いに隣接した導水盤が係合したときの状態を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による導水盤の螺合部と、隣接した他の導水盤の組み合わせ部とを嵌合させたときの状態を示す部分拡大図である。
【図7】本発明の一実施形態による水密部材を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、これによって本発明が限定されるものではない。
【0017】
図1を参照する。図1に示すように、本発明の一実施形態による螺着式導水盤セットは、少なくとも複数の導水盤10及び複数の水密部材20から構成される。
【0018】
図1及び図2を参照する。図1及び図2に示すように、本実施形態の導水盤10は、回動可能に互いに重ねられ、盤状の本体11と、軸方向Xに沿って本体11に穿設された穿孔12と、穿孔12の環状壁面121上に、軸方向Xに対して周設された3つの環設孔13と、本体11の一方の側盤面111から外側に延伸され、環設孔13の端部に対応するように設けられた3つの螺合部14と、本体11の他方の側盤面112から環設孔13に向かって延伸された3つの組み合わせ部15と、環設孔13が周設され、本体11の2つの側盤面111,112の内側に凹設された位置決め部16と、をそれぞれ含む。各導水盤10の螺合部14は、隣接した他の導水盤10の環設孔13中に貫設され、隣接した他の導水盤10の螺合部14に対応した開放位置(図3参照)と、隣接した他の導水盤10の組み合わせ部15に対応した係合位置(図4参照)との間で揺動する。本実施形態において、螺合部14は、側盤面111に垂直に延設された垂直セクション141と、垂直セクション141に水平方向に延設された水平セクション142と、垂直セクション141と水平セクション142との接続箇所に設けられた内側に凹んだ係合縁143と、を有する。組み合わせ部15は、螺合部14の形状に対応するように逆L字状に形成され、先端縁に設けられた凸部151を有する。
【0019】
また、図2及び図7に示すように、位置決め部16には、本体11の2つの側盤面111,112から内側に凹設された2つの浅い環溝161と、軸方向Xに対して垂直に周設され、浅い環溝161に連通した複数の連結孔162と、を有し、互いに隣接した連結孔162により嵌着リブ163が構成されている。本実施形態の位置決め部16は、本体11の浅い環溝161に沿って、径方向で外側に向かって延伸した複数の切欠き164を有する。
【0020】
前述の水密部材20は、例えば、熱可塑性ゴム(Thermoplastic Rubber:TPR)、熱可塑性加硫ゴム(Thermoplastic Vulcanizate:TPV)、熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer:TPE)などの自己潤滑性材料からなり、導水盤10の位置決め部16上にそれぞれ固設されている。本実施形態では、射出成形方式により、導水盤10の位置決め部16上に水密部材20を嵌設させ、水密部材20と導水盤10とを係合させて一体成形する。各水密部材20は、浅い環溝161に対応した2つの当接部21,22と、当接部21,22の間に配置され、連結孔162内に延設された複数の接触部23と、切欠き164内まで対応するように延伸された複数の耳部24と、を有する。前述の当接部21,22及び接触部23は、完全に嵌固され、導水盤10上の嵌着リブ163を覆い、導水盤10の位置決め部16から水密部材20が外れることがない上、水密部材20が有する潤滑性により、導水盤10を回動させる際に発生する摩擦抵抗力を下げることができる。
【0021】
ここで、前述の水密部材20の当接部21,22は、導水盤10の2つの側盤面111,112から突出され、導水盤10とフィルタ膜30の膜面とを密着させ、水漏れを防止することができる(但し、フィルタ膜の水発生側には水を通すことができる)。
【0022】
図1及び図3に示すように、本実施形態の螺着式導水盤セットを組み立てる際、まず、各導水盤10間にフィルタ膜30を配置した後(以下では、説明の便宜上、他の導水盤のと、その導水盤の各部位を表す符号に「’」を加えて記載する)、隣接した他の導水盤10’の環設孔13’中に、導水盤10の螺合部14が貫設されると、導水盤10の螺合部14が、隣接した他の導水盤10’の螺合部14’の開放位置に位置合わせした後、時計回りに導水盤10を回転させる。図4に示すように、互いに隣接した2つの導水盤10,10’が係合位置に位置すると、導水盤10’の組み合わせ部15’に、導水盤10の垂直セクション141が係合され、係合縁143に凸部151’を嵌入させて(図5及び図6参照)係合し、2つの導水盤10,10’を螺着させて一体にすることにより、導水盤10,10’の外縁の水密部材20の当接部21,22により、フィルタ膜30が緊密に圧迫され、良好な水密効果を得ることができる。
【0023】
上述したことから分かるように、本発明の螺着式導水盤セットは、以下(1)及び(2)の長所を有する。
(1)水密部材20と導水盤10とを螺着して結合させることにより、2つの導水盤10,10’が回されて係合されると、導水盤10の本体11上の嵌着リブ163と切欠き164とにより水密部材20が制限されるため、引っ張ったり押したりしても導水盤10の本体11から外れず、導水盤10の位置決め部16上に水密部材20を安定的に位置決めし、水密部材20が外れたり、位置がずれたり、曲がったりすることを防ぐことができる。そのため、導水盤10の2つの側盤面111,112と、フィルタ膜30の膜面との間に隙間が生じることを防ぎ、水の品質を確保することができる。
(2)各導水盤10は、水密部材20だけを組み合わせて使用する上、水密部材20が導水盤10上に位置決めされるため、垂直方向で位置決めして組み合わせる際、水密部材20が導水盤10から分離されることがない。そのため、迅速かつ確実に位置決めを行い、簡便に組み立てることもできる。
【0024】
また、導水盤10の中央部に設けられた穿孔12は、環設孔13と直接に連通されているため、導水盤10全体の重量を減らすことができる。
【0025】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0026】
10 導水盤
11 本体
12 穿孔
13 環設孔
14 螺合部
15 組み合わせ部
16 位置決め部
20 水密部材
21 当接部
22 当接部
23 接触部
24 耳部
30 フィルタ膜
111 側盤面
112 側盤面
121 環状壁面
141 垂直セクション
142 水平セクション
143 係合縁
151 凸部
161 浅い環溝
162 連結孔
163 嵌着リブ
164 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ膜を挟持し、複数の導水盤及び複数の水密部材を備える螺着式導水盤セットであって、
前記導水盤は、回動可能に重ねられ、盤状の本体と、軸方向に沿って前記本体に穿設された穿孔と、前記穿孔の環状壁面上に、軸方向に周設された複数の環設孔と、前記本体の一方の側盤面から外側に延伸され、前記環設孔の端部に対応するように設けられた複数の螺合部と、前記本体の他方の前記側盤面から前記環設孔に向かって延伸された複数の組み合わせ部と、前記環設孔が周設され、前記本体の2つの前記側盤面に内側に凹設された位置決め部と、をそれぞれ有し、
前記位置決め部には、前記本体の2つの前記側盤面に穿設された少なくとも1つの連結孔を有し、前記導水盤それぞれの前記螺合部は、隣接した他の前記導水盤の前記環設孔に貫設され、隣接した他の前記導水盤の前記螺合部に対応した開放位置と、隣接した他の前記導水盤の組み合わせ部に対応した係合位置との間で揺転し、
前記水密部材は、前記導水盤の前記位置決め部上にそれぞれ固設され、前記本体の2つの前記側盤面の当接部に対応するように、前記当接部間に配置され、前記連結孔内に延伸される接触部と、を有することを特徴とする螺着式導水盤セット。
【請求項2】
前記位置決め部には、前記本体の2つの前記側盤面に内側に凹設された2つの浅い環溝と、軸方向に対して垂直に周設され、前記本体の両側の前記浅い環溝と連通した前記連結孔と、を有し、互いに隣接した前記連結孔により嵌着リブが構成されていることを特徴とする請求項1に記載の螺着式導水盤セット。
【請求項3】
前記導水盤の前記位置決め部は、前記本体の径方向で外側に向かって延伸した切欠きを複数有することを特徴とする請求項1に記載の螺着式導水盤セット。
【請求項4】
前記水密部材は、前記導水盤の前記切欠きに対応した耳部を有することを特徴とする請求項3に記載の螺着式導水盤セット。
【請求項5】
前記水密部材は、熱可塑性ゴム、熱可塑性加硫ゴム又は熱可塑性エラストマーの熱可塑性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の螺着式導水盤セット。
【請求項6】
前記導水盤の前記螺合部は、垂直に延設された垂直セクションと、前記垂直セクションに水平方向に延設された水平セクションと、前記垂直セクションと前記水平セクションとの接続箇所に設けられた内側に凹んだ係合縁と、を有し、
前記組み合わせ部は、先端縁に設けられた凸部を有し、互いに隣接した2つの前記導水盤が互いに係合位置に位置合わせされると、前記組み合わせ部が前記垂直セクションに係合され、内側に凹設された前記係合縁に前記凸部が嵌入されて係合されることを特徴とする請求項1に記載の螺着式導水盤セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−232230(P2012−232230A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100618(P2011−100618)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(511107500)新世膜科技股▲分▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】