血中コレステロールの検査方法および検査装置
【課題】血中コレステロールを非侵襲に検査する方法および装置を提供する。
【解決手段】血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して第1画像を取得するステップ(a)と、ステップ(a)の後に、検査光を検査部位に照射して第2画像を取得するステップ(b)と、第1画像と第2画像を比較して、血中コレステロール量を判断するステップ(c)と、を備える。検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれた近赤外光であることが好ましく、ステップ(c)における第1画像と第2画像の比較は、第1画像の輝度と第2画像の輝度を比較することが好ましい。
【解決手段】血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して第1画像を取得するステップ(a)と、ステップ(a)の後に、検査光を検査部位に照射して第2画像を取得するステップ(b)と、第1画像と第2画像を比較して、血中コレステロール量を判断するステップ(c)と、を備える。検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれた近赤外光であることが好ましく、ステップ(c)における第1画像と第2画像の比較は、第1画像の輝度と第2画像の輝度を比較することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間やその他の動物の血中コレステロールを検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心疾患や脳血管疾患などの重大疾病の要因とされる、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防に対して関心が高まっている。その中でも、心筋梗塞や脳梗塞といった重大疾患の原因である、動脈硬化は非常に注目され、その予防に関心が高まってきた。柔軟性を失い硬くなった血管壁の表面に異成分が付着しやすくなりプラークを作るが、動脈硬化は、このプラークが大きくなって、血管が詰まりやすくなる状態を示す。心臓にて血管が詰まった状態を心筋梗塞、脳にて血管が詰まれば脳梗塞であり、破れると脳出血となる。
動脈硬化の主たる危険因子として考えられるのが高コレステロール血症である。高コレステロール血症とは、一般に血液中の血清総コレステロール濃度が220mg/dL以上の状態を示す。コレステロール(Cholesterol)は水に溶けにくい性質を持つため、生体内では蛋白質と結びつき、リポ蛋白質を形成し移動する。血中コレステロールは大きく2つに分類され、低比重リポ蛋白コレステロール(Low Density Lipoprotein Cholesterol:LDL−C)と、高比重リポ蛋白コレステロール(High Density Lipoprotein Cholesterol:HDL−C)である。これらのうち、LDL−Cは動脈硬化症の発現と密接に関係することが知られている(例えば、非特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1は、波長400nm〜2500nmの範囲またはその一部範囲の波長光を血液または血液由来物に照射し、その反射光、透過光または透過反射光を検出して吸光度スペクトルデータを得た後、その中の測定全波長あるいは特定波長の吸光度を、予め作成した解析モデルを用いて解析することによって臨床生化学検査、臨床疾病検査を可能とした。特許文献1は、検査対象として、コレステロールを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285922号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】William P. Castelli:The triglyceride issue: A view from Framingham,American Heart Journal,Vol.112,P.432-437,(1986)
【非特許文献2】飯塚幸澄,櫻井栄一,田中頼久:高コレステロール摂食ラットの血清,肝臓およびリポタンパク中の脂質濃度に及ぼすセレンの影響,YAKUGAKU ZASSHI,Vol.121,P.93-96,(2001)
【非特許文献3】Russell Ross, Ph.D., and John A. Glomset, M.D.:The pathogenesis of atherosclerosis (First of Two Parts),New England Journal of medicine,Vol.295,P.369-377,(1976)
【非特許文献4】Russell Ross, Ph.D.:Atherosclerosis-an inflammatory disease,The New England Journal of Medicine,Vol.340,P.115-126,(1999)
【非特許文献5】桑井太郎,武市敏明,原島敬一郎,鈴木正人,渡辺圭一,石田信彦,林潤一:高コレステロール血症ウサギにおける赤血球変形能の低下に対するL-アルギニン/NOカスケードの影響,日本ヘモレオロジー学会誌,Vol.19,P.31-39,(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動脈硬化の予防は重大疾患である心筋梗塞や脳梗塞を防ぐためにも非常に重要であると言える。その動脈硬化を予防するために、動脈硬化の危険因子とされる高コレステロール血症の検査が、医療機関ではなく各家庭で、手軽に日常的かつ非侵襲的に行うことが望まれる。特許文献1によれば、コレステロール値を測定できるものの、血液または血液由来物に検査光を照射するものであるから、非侵襲的にコレステロール値を検査できない。
そこで本発明は、人間やその他の動物の血中コレステロールを非侵襲的に検査する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、血中にコレステロールが多く含まれている血管の像と、コレステロールが正常な血管の像を比較、観察したところ、両者の血管像の性状に有意な差が確認された。この知見に基づく本発明の血中コレステロールの検査方法は、血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して第1画像を取得するステップ(a)と、ステップ(a)の後に、検査光を検査部位に照射して第2画像を取得するステップ(b)と、第1画像と第2画像の比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するステップ(c)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に用いる検査光としては、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれる近赤外光であることが好ましい。近赤外光は、生体内における透過能力が優れており、生体内に入る近赤外光は生体内を透過または生体内で反射して透過光または反射光として生体内から出る。なお、近赤外光とは可視光(波長:約400〜700nm)よりも波長が長い赤外線の一種である。この波長領域の光は、生体透過性の高さと血中のヘモグロビンによる吸光度が高い性質により、血管を画像として検出することが可能となる。すなわち、近赤外光を用いることで、生体内部の情報を得ることが可能である。この血管を画像として認識する技術が静脈認証に用いられている。
本発明において、ステップ(c)における第1画像と第2画像の比較は、第1画像の輝度と第2画像の輝度を比較することにより行うことができる。輝度を比較することにより第1画像と第2画像の性状の差を把握するのが容易であるとともに、輝度は血管像をグレースケールの平均値にする等により容易に求めることができるからである。
本発明において、血管を圧迫した状態で第1画像、第2画像を取得することが好ましい。血管を圧迫することにより、血管像の性状の変化が顕著になるからである。
【0009】
本発明は、以上説明した血中コレステロールの検査方法を実行する装置を提供する。この装置は、血管を含む生体を透過する検査光を照射して得られる血管像を保持する血管像保持部と、先行して取得された第1画像と、第1画像が取得された後に取得された第2画像との比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するデータ処理部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
以上の装置において、検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれる近赤外光であること、データ処理部における第1画像と第2画像の比較は、第1画像の輝度と第2画像の輝度を比較すること、血管像を得る際に血管を圧迫するカフを備えることが好ましいことは、上述の通りである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して取得される第1画像、第2画像を比較して、血中コレステロール量を判断できるので、血中コレステロールを非侵襲的に検査することができる。したがって本発明によれば、コレステロールの検査を家庭で日常的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明者による実験に用いた装置構成を示す図である。
【図2】実験に用いたラットのコレステロール濃度を、高コレステロールモデルと正常モデルを対比して示すグラフである。
【図3】高コレステロールモデルのラットの尾を透過した近赤外光像を示す図である。
【図4】正常モデルのラットの尾Tを透過した近赤外画像を示す図である。
【図5】圧迫時間による近赤外画像の輝度の変化の関係を示すグラフであり、(a−1)、(b−1)、(c−1)は高コレステロールモデルに40mmHg、60mmHg、80mmHgの圧迫力(カフ圧)を加えた場合を示し、(a−2)、(b−2)、(c−2)は通常モデルに40mmHg、60mmHg、80mmHgの圧迫力(カフ圧)を加えた場合を示している。
【図6】圧迫時間による近赤外画像の輝度の変化を示すグラフであり、(d−1)、(e−1)は高コレステロールモデルに100mmHg、150mmHgの圧迫力を加えた場合を示し、(d−2)、(e−2)は通常モデルに100mmHg、150mmHgの圧迫力を加えた場合を示している。
【図7】圧迫力と近赤外光の輝度変化量との関係を、高コレステロールモデルと正常モデルを対比して示すグラフである。
【図8】高コレステロールになると近赤外光の輝度の変化量が大きくなる理由を説明する図である。
【図9】実施形態によるコレステロール検査装置の構成を示す図である。
【図10】第1形態によるコレステロール検査装置のコントローラの構成を示す図である。
【図11】図10のコントローラの輝度記憶部の記憶内容を示す図である。
【図12】第2形態によるコレステロール検査装置のコントローラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ラットによる実験>
ラットを用いて行なった実験を説明する。実験概要は以下の通りである。
ラットの尾を圧迫し、尾の血液量に変化を与えながら、尾の背側から近赤外光を照射し、透過した光をCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮影し、透過像を連続的に取得した。取得した近赤外画像から、輝度を求め、さらにその経時的な変化を求めた。
【0014】
ラットは、コレステロールの高い飼料(高コレステロール食)を8週間与える群(10例)と、通常食を8週間与える群(10例)に分類した。通常食には、日本クレア株式会社製の一般標準飼料CLEA Rodent Diet CE-2粉末タイプ(以下、単にCE−2)を用い、高コレステロール食は、CE−2に1.5%のコレステロール(和光純薬工業株式会社製)と、0.5%のコール酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)と、ビタミンD2(和光純薬工業株式会社製)を1.8 million IU/kg混入し作製した。
ここで、高コレステロールモデル(6例)と、正常モデル(7例)の血清中総コレステロール濃度を測定した結果を図2に示す。
血清中総コレステロール濃度(平均)は、高コレステロールモデルでは223.8±43.23mg/dLであり、正常モデルでは64.51±5.964mg/dLである。高コレステロール食を与えることで、高コレステロールモデルの血清中総コレステロール濃度は正常モデルに比べ約3.5倍となった。両モデル間においてt検定を行った結果、高コレステロールモデルの方が有意に大きいことが確認された。p値は0.01以下である。
【0015】
実験に用いた撮影装置10は、図1に示すように、ラットRの尾Tに向けて近赤外光を発光、照射するLED(Light Emitting Diode)光源1と、尾Tを透過した近赤外光を撮影するCCDカメラ2と、ラットRを載せるとともにCCDカメラ2を固定するテーブル3と、CCDカメラ2で撮影された画像を取り込むパーソナルコンピュータ(PC)4、ラットRの尾Tに圧迫力を加えるカフ(Cuff)5とから構成される。なお、テーブル3の天板には、図示を省略したスリットが天板の表裏を貫通して設けられており、ラットRの尾Tがこのスリット上に位置するように天板に載せられる。なお、テーブル3の天板より下の部分は、周囲の光の影響をなくすために、黒色に塗られたアクリル板で囲んだ。また、それ以外の部分は、同様の理由から、黒色の緩衝材で覆った。LED光源1には、株式会社アイテックシステム社製の近赤外光面照明LEDライトLMC−61×61−10IR(中心波長:880nm)を用いた。なお、この実験では単波長の光を用いたが、異なる波長を組合せた複合波長を用いることもできる。
以上の撮影装置10を用い、ラットRの尾Tの背側より近赤外光を照射し、透過した近赤外光をスリットの下部に設けたCCDカメラ2で受光して近赤外画像を取得する。ラットRの尾Tには、以下説明する条件で、カフ5により圧迫力を加える。
【0016】
尾Tを圧迫したときの近赤外画像の変化を把握するため、圧迫時間を300秒とした。圧迫の前後における像の変化を得るため、圧迫前60秒と圧迫解放後60秒間も画像を取得し、画像取得の間隔は1秒とした。
圧迫力による画像の変化を調査するために、圧迫力は、40、60、80、100mmHgと、さらに150mmHgの5段階とした。圧迫力を変えて次の実験を行う場合、前回の圧迫力による影響が出ないとされる15分間以上の間隔を設けた。
【0017】
高コレステロールモデル1例と、正常モデル1例の尾Tの近赤外画像の変化をそれぞれ図3、図4に示す。図3、図4において、上から0秒(撮影開始時)、60秒(圧迫開始時)、120秒(圧迫中(1))、240秒(圧迫中(2))、360秒(解放時)、365秒(解放直後)、420秒(撮影終了時)の近赤外画像を示す。さらに、図3、図4において、左から圧迫力が40mmHg、60mmHg、80mmHg、100mmHg、150mmHgの近赤外画像を示す。
図3より、高コレステロールモデルの近赤外画像について、全圧迫力で実験開始時の0秒と圧迫開始時の60秒の画像に変化は見られない。また、圧迫力が40mmHgでは圧迫による近赤外画像の変化は見られない。しかし、圧迫力が60mmHg、80mmHg、100mmHgでは、圧迫開始時の60秒から120秒、240秒、360秒にかけて近赤外画像が、徐々に黒色に変化することが確認できる。その変化は圧迫力が増大するほど、より全体が黒色へと変化している。また、圧迫力解放時の360秒から解放直後の365秒では、近赤外画像が明るくなった。さらに、実験終了時の420秒では撮影開始時と、同様の画像が得られた。
また、圧迫力が150mmHgでは、他の圧迫力とは違い、圧迫中の近赤外画像の変化は確認できず、解放後に画像が黒色へと変化した、その変化は測定終了時で最も濃くなった。
図4に示すように、正常モデルの近赤外画像についても、高コレステロールモデルと同様の傾向を示した。
【0018】
高コレステロールモデル、正常モデルともに、撮影された近赤外画像(縦76pixel×横164pixel)のグレースケール値の平均値を算出した。算出されたグレースケール値の平均値を近赤外画像の輝度とし、輝度の時間的変化を求めた。
【0019】
<圧迫力:40mmHg>
圧迫力が40mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図5(a−1)に、圧迫力が40mmHgの通常モデル5例分の輝度データを図5(a−2)に示す。
0秒〜60秒間は、ラットRの尾Tにカフを巻きつけるだけで圧迫はしない状態(圧迫力0mmHg)である。60秒から360秒まではそれぞれの圧迫力で尾Tを圧迫している。360秒から420秒では圧迫力が解放(圧迫力0mmHg)されている。
図5(a−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、実験開始時(0秒)から圧迫直前(60秒)間の輝度の変化は見られなかった。圧迫力が40mmHgでは、圧迫直後から輝度は減少し始めた。輝度の変化は圧迫開始から約60秒で止まり、その後はほぼ一定の値を保っている。さらに圧迫力の解放後は輝度が回復した。
図5(a−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示す。ただし、圧迫直後からの輝度の減少は少ない。
【0020】
<圧迫力:60mmHg>
圧迫力が60mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図5(b−1)に、圧迫力が60mmHgの通常モデル5例分の輝度データを図5(b−2)に示す。
図5(b−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、40mmHgと同様に実験開始時(0秒)から圧迫直前(60秒)間の輝度の変化は見られなかった。圧迫力が40mmHgに比べ、60mmHgでは、圧迫直後からの輝度の変化が大きかった。輝度の変化は圧迫開始から約120秒で止まり、その後はほぼ一定の値を保っている。また、圧迫力の解放後は輝度が回復した。
図5(b−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示すが、やはり、圧迫後からの輝度の減少は少ない。
【0021】
<圧迫力:80mmHg>
圧迫力が80mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図5(c−1)に、また、通常モデル5例分の輝度データを図5(c−2)に示す。
図5(c−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、圧迫力が60mmHgと同様に圧迫前の輝度の変化は見られなかった。圧迫力が40mmHg、60mmHgに比べ、圧迫後の変化はさらに大きくなった。40mmHg、60mmHgとは対照的に、輝度の減少は圧迫力の解放直前まで続いた。圧迫力の解放後の輝度は、40mmHg、60mmHgと同様に回復した。
図5(c−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示すが、やはり、圧迫直後からの輝度の減少は少ない。
【0022】
<圧迫力:100mmHg>
圧迫力が100mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図6(d−1)に、また、通常モデル5例分の輝度データを図6(d−2)に示す。
図6(d−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、圧迫力が60mmHg、80mmHgと同様に圧迫前の輝度の変化は見られなかった。圧迫直後に輝度は減少し始め、輝度の変化は解放の直前まで続いた。圧迫力の解放後は、輝度は回復した。
図6(d−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示すが、圧迫直後からの輝度の減少は少ない。
【0023】
<圧迫力:150mmHg>
圧迫力が150mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図6(e−1)に、また、通常モデル5例分の輝度データを図6(e−2)に示す。
図6(e−1)、(e−2)に示すように、高コレステロールモデル、通常モデルの場合ともに、圧迫前は他の結果と同様に変化は見られない。しかし、圧迫中は他の圧迫力とは異なる変化を示す。
【0024】
次に、高コレステロールモデルと正常モデルの圧迫前後における輝度の変化量を、圧迫力別に比較した。同じ圧迫力における輝度の変化量の、モデル間での比較にt検定を用いてp値を求めた。図7に比較の結果を示す。
圧迫力が80mmHgと100mmHgにおいて輝度の変化量は、高コレステロールモデルの方が正常モデルに比べて、有意に大きい結果を示し、5%の有意差が得られた。この結果、輝度の変化量を求める場合、圧迫力を80mmHg又は100mmHgとするのが好ましいが、これはあくまでラットRに対する値であり、他の動物について好ましい圧迫力は各々実験的に確認することが必要である。
【0025】
血液中のコレステロールの濃度が上昇すると、赤血球の変形能(deformability)が低下することが知られている(例えば、非特許文献5)。赤血球の変形能の低下が進行すると、溶血を起こす可能性が高くなる。溶血(hemolysis)とは、赤血球の膜が破壊され、ヘモグロビンが血液中に遊離する現象である。
以上のことから、高コレステロールモデルにおいては、ラットRにコレステロールを与えることで赤血球の変形能が低下し、赤血球の一部では溶血が発症しているものと推測される。さらに高コレステロールモデルでは、図8に示すように、うっ血により血液中に赤血球から遊離したヘモグロビンと、赤血球が混在することから、血液中に含まれる赤血球の停滞する隙間に、溶血により遊離したヘモグロビンが浸入することで、全体のヘモグロビン量が増加したと推測される。その結果、ラットRの尾Tの圧迫前後における近赤外光の輝度の変化量は、高コレステロールモデルの方が正常モデルに比べ有意に増加したものと解される。このメカニズムは、実際に実験を行なったラットに限らず、動物に共通するものであるから、人間についても適用される。
【0026】
以上より、近赤外画像の輝度変化を捉えることにより、コレステロール濃度を検査することができる。
近赤外画像の輝度変化によるコレステロール濃度の検査には、第1形態と第2形態の少なくとも2つの形態が考えられる。
<第1形態>
第1形態は、コレステロール濃度の増減を検査するものである。これには、生体の検査部分に所定の圧迫を加えながら得た近赤外画像(第1画像)の輝度変化量を取得しておく。このときの輝度変化量をBR1−1とする。時を異にして、同様の条件下で近赤外画像(第2画像)の輝度変化量を取得する。この輝度変化量をBR1−2とする。BR1−1とBR1−2を比較することにより、コレステロール濃度の増減を知ることができる。つまり、BR1−1<BR2−1であればコレステロール濃度が上がり、BR1−1>BR2−1であればコレステロール濃度が下がったことになる。
【0027】
<第2形態>
第2形態は、コレステロール濃度の絶対値を検査するものである。
第1形態と同様に輝度変化量を取得する。この輝度変化量をBR2−1とし、その後に取得される輝度変化量をBR2−2とする。
BR2−1、BR2−2を取得する際に、コレステロール濃度を別途測定する。この測定は、血液を採取して行うものであるが、測定方法は問われない。BR2−1に対応する測定されたコレステロール濃度をCD2−1、BR2−2に対応するコレステロール濃度をCD2−2とする。これら値より輝度変化量とコレステロール濃度との相関関係(式)を得る。相関式(1)は、求めるコレステロール濃度をyCDとし、得られる輝度変化量をxBRとすると、以下の通りである。
【0028】
yCD=a・xBR+b
={(BR2−2)−(BR2−1)}/{(CD2−2)−(CD2−1)}…(1)
【0029】
相関式が得られたならば、以後は、輝度変化量xBRを取得すればコレステロール濃度(推定値)を測定できる。なお、以上の相関式(1)は簡易な例の一つであり、本発明を限定するものでない。
【0030】
第1形態、第2形態を実行できるコレステロール検査装置20の例を図9に基づいて説明する。なお、コレステロール検査装置20は人の指を検査対象部位とする例について述べるが、本発明は、腕、足、その他の部位を検査対象とすることができるし、人以外の動物のコレステロール濃度を検査することもできる。
コレステロール検査装置20は、近赤外光を発光して血管BVを含む人の指(生体)Fに照射する光源21と、光源21から照射され指Fを透過する近赤外光(以下、透過光ということがある)を受光し、撮影するCCDカメラ22を備えている。光源21は、パーソナルコンピュータPCからなるコントローラ24の指示に従って発光が制御される。CCDカメラ22は、コントローラ24の指示に従って透過光を撮影して近赤外画像を取得する。コントローラ24は、取得された近赤外画像を取り込む。取り込んだ後の近赤外画像の処理については、後述する。
【0031】
コレステロール検査装置20は、指F内の血管BVに圧迫力を与えるカフ23を備えている。カフ23には、流路L1上に配置される流量調整弁26を介してポンプ25から供給されるエアが流入する。カフ23には流路L2が接続され、ポンプ25からカフ23に供給されるエアは流路L2に流入する。流路L2は、流路L2−1と流路L2−2に分岐され、流路L2−1には圧力計27が接続され、流路2−2には排気弁28が接続されている。
流量調整弁26、圧力計27および排気弁28はコントローラ24に接続されている。流量調整弁26は、コントローラ24の指示に従ってその開度が調整され、カフ23に流入するエア量を制御する。コントローラ24は、圧力計27からカフ23内の圧力値情報を取得する。また、排気弁28は、コントローラ24の指示に従ってその開度が調整され、コントローラ24は、カフ23から排気するエア量を制御する。
以上のように構成されているので、コントローラ24は、圧力計27から取得する圧力値情報に基づいて、流量調整弁26および排気弁28の開度を調整することにより、カフ23が血管BVを圧迫する力(カフ圧)が検査用の圧迫力に一致するように制御する。
【0032】
<コントローラ24:第1形態>
図10は、第1形態を実行する場合のコントローラ24の構成例を示している。
コントローラ24は、カフ圧制御部24aと、検査処理部24bとから構成される。
カフ圧制御部24aは、前述したように、カフ圧が検査用の圧迫力に一致するように、圧力計27から取得する圧力値情報に基づいて、流量調整弁26および排気弁28の開度を調整する。カフ圧を印加する時間は適宜調整できる。例えば、上述した実験と同様の時間だけ印加できるが、十分に輝度変化が生じる範囲で、印加時間は極力短いことが検査時間の短縮にとって望ましい。
【0033】
検査処理部24bは、画像記憶部241、輝度算出部242、輝度記憶部243および輝度比較部244を備えている。
画像記憶部241は、CCDカメラ22で撮影された近赤外画像を取り込み、記憶する。近赤外画像の記憶の時間間隔は任意であり、たとえば前述した実験と同様に1秒間隔でもよいし、それ以上、以下の間隔にすることもできる。
輝度算出部242は、画像記憶部241に記憶された近赤外画像の輝度を算出する。具体的には、近赤外画像のグレースケール値の平均値を求め、これを当該画像の輝度とする。逐次記憶された近赤外画像について輝度を求めることにより、図5、図6に示す輝度の時間変化を認識できる。輝度算出部242は、輝度の時間変化に基づいて、輝度変化量を算出する。輝度変化量は、圧迫開始時の輝度と圧迫開始から所定時間経過後の輝度の差(または比)として求められる。圧迫開始時の輝度をBi、圧迫開始から所定時間経過後の輝度をBeとすると、輝度変化量BRはBe−Bi(またはBe/Bi)で与えられる。
【0034】
輝度算出部242で得られた輝度変化量BRは、それが求められた時刻と対応付けられて輝度記憶部243に記憶される。また、輝度記憶部243は、コレステロール検査装置20の利用者毎に、輝度変化量BRを記憶できる。したがって、輝度記憶部243は、例えば図11に示すように、コレステロール検査装置20の利用者毎の輝度変化量BRを時系列的に記憶することができる。なお、図11において、測定日時の欄の数値は、暦年、月、日、時を各々2桁で示している。
【0035】
輝度比較部244は、新たに輝度変化量が得られたならば、輝度記憶部243に記憶されている輝度変化量と比較して、輝度変化量の増減を求める。図11を参照して、増減の求め方の一例を説明する。
例えば、利用者Aについて、今回新たに得られた輝度変化量が6回目とすると、前回(5回目)の輝度変化量が15であるから、今回の輝度変化量は前回に比べて減少している。これは、コレステロール濃度がこの2月で減ったことを意味する。この場合、例えば「前回測定時よりもコレステロールが減りました。このまま健康管理を怠らないように!」といったメッセージを、PCのディスプレイ上に表示させることができる。
また、利用者Bについては、前回の輝度変化量が35であるのに対して、今回の輝度変化量は50であるから、この2月でコレステロールが増えている。この場合、例えば「前回測定時よりもコレステロールがずいぶん増えています。食事を含め健康管理に注意しましょう!」といったメッセージを、PCのディスプレイ上に表示させることができる。
【0036】
以上では、今回の輝度変化量と前回の輝度変化量を比較したが、これに限らず、今回の輝度変化量と1回目の輝度変化量とを比較する等、過去に記憶された輝度変化量との比較を任意に行うことができる。また、今回の輝度変化量も含め、求められた輝度変化量を折れ線グラフにして示すこともできる。
【0037】
<コントローラ24:第2形態>
図12は、第2形態を実行する場合のコントローラ24の構成例を示している。なお、図10に示した第1形態と同様の構成部分には図10と同じ符号を付して、その説明を省略する。
コントローラ24は、カフ圧制御部24aと、検査処理部24cとから構成される。
検査処理部24cは、画像記憶部241、輝度算出部242およびコレステロール算出部245を備えている。
【0038】
コレステロール算出部245は、例えば前述した相関式(1)(yCD=a・xBR+b)を保持している。コレステロール算出部245は、輝度算出部242で得られた輝度変化量を取得し、相関式(1)に代入することにより、コレステロール値を算出する。
【0039】
コレステロール算出部245は、コレステロール値を算出したならば、「あなたのコレステロール値は、****です」といったメッセージを、PCのディスプレイ上に表示させることができる。
また、コレステロール算出部245は、利用者毎に算出されたコレステロール値を逐次記憶し、今回算出されたコレステロール値に加えて、記憶された過去のコレステロール値を表示させること、さらに第1形態と組み合せてコレステロール値の増減を表示させることもできる。
【0040】
以上の通りであり、本発明によれば、非侵襲的にコレステロールの増減、コレステロール値を求めることができるので、利用者が日常的に手軽にコレステロールを把握して健康管理を行うことができ、重大疾患等の予防に貢献するところが大きい。
【0041】
以上の実施形態では、透過光を撮影したが、反射光を撮影することにより近赤外画像(血管像)を取得することもできる。
また、以上の実施形態では、輝度を求めて比較したが、圧迫力を加えた後に一定輝度に到達するまでの時間によりコレステロールを判断することもできる。また、輝度に代えて光度を求めることにより、コレステロールを判断することもできる。
また、以上では圧迫力を与えて輝度の変化を顕在化したが、指の静脈を撮影する場合には肘を曲げることによっても、輝度の変化を顕在化できる。また、運動する、冷却する、薬(アルコール)を飲む、食事するなどによって、輝度の変化を顕在化できる。
【符号の説明】
【0042】
20…コレステロール検査装置
21…光源
22…カメラ
23…カフ
24…コントローラ
24a…カフ圧制御部、24b,24c…検査処理部
241…画像記憶部、242…輝度算出部、243…輝度記憶部、244…輝度比較部、
245…コレステロール算出部
25…ポンプ
26…流量調整弁
27…圧力計
28…排気弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間やその他の動物の血中コレステロールを検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心疾患や脳血管疾患などの重大疾病の要因とされる、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防に対して関心が高まっている。その中でも、心筋梗塞や脳梗塞といった重大疾患の原因である、動脈硬化は非常に注目され、その予防に関心が高まってきた。柔軟性を失い硬くなった血管壁の表面に異成分が付着しやすくなりプラークを作るが、動脈硬化は、このプラークが大きくなって、血管が詰まりやすくなる状態を示す。心臓にて血管が詰まった状態を心筋梗塞、脳にて血管が詰まれば脳梗塞であり、破れると脳出血となる。
動脈硬化の主たる危険因子として考えられるのが高コレステロール血症である。高コレステロール血症とは、一般に血液中の血清総コレステロール濃度が220mg/dL以上の状態を示す。コレステロール(Cholesterol)は水に溶けにくい性質を持つため、生体内では蛋白質と結びつき、リポ蛋白質を形成し移動する。血中コレステロールは大きく2つに分類され、低比重リポ蛋白コレステロール(Low Density Lipoprotein Cholesterol:LDL−C)と、高比重リポ蛋白コレステロール(High Density Lipoprotein Cholesterol:HDL−C)である。これらのうち、LDL−Cは動脈硬化症の発現と密接に関係することが知られている(例えば、非特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1は、波長400nm〜2500nmの範囲またはその一部範囲の波長光を血液または血液由来物に照射し、その反射光、透過光または透過反射光を検出して吸光度スペクトルデータを得た後、その中の測定全波長あるいは特定波長の吸光度を、予め作成した解析モデルを用いて解析することによって臨床生化学検査、臨床疾病検査を可能とした。特許文献1は、検査対象として、コレステロールを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285922号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】William P. Castelli:The triglyceride issue: A view from Framingham,American Heart Journal,Vol.112,P.432-437,(1986)
【非特許文献2】飯塚幸澄,櫻井栄一,田中頼久:高コレステロール摂食ラットの血清,肝臓およびリポタンパク中の脂質濃度に及ぼすセレンの影響,YAKUGAKU ZASSHI,Vol.121,P.93-96,(2001)
【非特許文献3】Russell Ross, Ph.D., and John A. Glomset, M.D.:The pathogenesis of atherosclerosis (First of Two Parts),New England Journal of medicine,Vol.295,P.369-377,(1976)
【非特許文献4】Russell Ross, Ph.D.:Atherosclerosis-an inflammatory disease,The New England Journal of Medicine,Vol.340,P.115-126,(1999)
【非特許文献5】桑井太郎,武市敏明,原島敬一郎,鈴木正人,渡辺圭一,石田信彦,林潤一:高コレステロール血症ウサギにおける赤血球変形能の低下に対するL-アルギニン/NOカスケードの影響,日本ヘモレオロジー学会誌,Vol.19,P.31-39,(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動脈硬化の予防は重大疾患である心筋梗塞や脳梗塞を防ぐためにも非常に重要であると言える。その動脈硬化を予防するために、動脈硬化の危険因子とされる高コレステロール血症の検査が、医療機関ではなく各家庭で、手軽に日常的かつ非侵襲的に行うことが望まれる。特許文献1によれば、コレステロール値を測定できるものの、血液または血液由来物に検査光を照射するものであるから、非侵襲的にコレステロール値を検査できない。
そこで本発明は、人間やその他の動物の血中コレステロールを非侵襲的に検査する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、血中にコレステロールが多く含まれている血管の像と、コレステロールが正常な血管の像を比較、観察したところ、両者の血管像の性状に有意な差が確認された。この知見に基づく本発明の血中コレステロールの検査方法は、血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して第1画像を取得するステップ(a)と、ステップ(a)の後に、検査光を検査部位に照射して第2画像を取得するステップ(b)と、第1画像と第2画像の比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するステップ(c)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に用いる検査光としては、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれる近赤外光であることが好ましい。近赤外光は、生体内における透過能力が優れており、生体内に入る近赤外光は生体内を透過または生体内で反射して透過光または反射光として生体内から出る。なお、近赤外光とは可視光(波長:約400〜700nm)よりも波長が長い赤外線の一種である。この波長領域の光は、生体透過性の高さと血中のヘモグロビンによる吸光度が高い性質により、血管を画像として検出することが可能となる。すなわち、近赤外光を用いることで、生体内部の情報を得ることが可能である。この血管を画像として認識する技術が静脈認証に用いられている。
本発明において、ステップ(c)における第1画像と第2画像の比較は、第1画像の輝度と第2画像の輝度を比較することにより行うことができる。輝度を比較することにより第1画像と第2画像の性状の差を把握するのが容易であるとともに、輝度は血管像をグレースケールの平均値にする等により容易に求めることができるからである。
本発明において、血管を圧迫した状態で第1画像、第2画像を取得することが好ましい。血管を圧迫することにより、血管像の性状の変化が顕著になるからである。
【0009】
本発明は、以上説明した血中コレステロールの検査方法を実行する装置を提供する。この装置は、血管を含む生体を透過する検査光を照射して得られる血管像を保持する血管像保持部と、先行して取得された第1画像と、第1画像が取得された後に取得された第2画像との比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するデータ処理部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
以上の装置において、検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれる近赤外光であること、データ処理部における第1画像と第2画像の比較は、第1画像の輝度と第2画像の輝度を比較すること、血管像を得る際に血管を圧迫するカフを備えることが好ましいことは、上述の通りである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して取得される第1画像、第2画像を比較して、血中コレステロール量を判断できるので、血中コレステロールを非侵襲的に検査することができる。したがって本発明によれば、コレステロールの検査を家庭で日常的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明者による実験に用いた装置構成を示す図である。
【図2】実験に用いたラットのコレステロール濃度を、高コレステロールモデルと正常モデルを対比して示すグラフである。
【図3】高コレステロールモデルのラットの尾を透過した近赤外光像を示す図である。
【図4】正常モデルのラットの尾Tを透過した近赤外画像を示す図である。
【図5】圧迫時間による近赤外画像の輝度の変化の関係を示すグラフであり、(a−1)、(b−1)、(c−1)は高コレステロールモデルに40mmHg、60mmHg、80mmHgの圧迫力(カフ圧)を加えた場合を示し、(a−2)、(b−2)、(c−2)は通常モデルに40mmHg、60mmHg、80mmHgの圧迫力(カフ圧)を加えた場合を示している。
【図6】圧迫時間による近赤外画像の輝度の変化を示すグラフであり、(d−1)、(e−1)は高コレステロールモデルに100mmHg、150mmHgの圧迫力を加えた場合を示し、(d−2)、(e−2)は通常モデルに100mmHg、150mmHgの圧迫力を加えた場合を示している。
【図7】圧迫力と近赤外光の輝度変化量との関係を、高コレステロールモデルと正常モデルを対比して示すグラフである。
【図8】高コレステロールになると近赤外光の輝度の変化量が大きくなる理由を説明する図である。
【図9】実施形態によるコレステロール検査装置の構成を示す図である。
【図10】第1形態によるコレステロール検査装置のコントローラの構成を示す図である。
【図11】図10のコントローラの輝度記憶部の記憶内容を示す図である。
【図12】第2形態によるコレステロール検査装置のコントローラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ラットによる実験>
ラットを用いて行なった実験を説明する。実験概要は以下の通りである。
ラットの尾を圧迫し、尾の血液量に変化を与えながら、尾の背側から近赤外光を照射し、透過した光をCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮影し、透過像を連続的に取得した。取得した近赤外画像から、輝度を求め、さらにその経時的な変化を求めた。
【0014】
ラットは、コレステロールの高い飼料(高コレステロール食)を8週間与える群(10例)と、通常食を8週間与える群(10例)に分類した。通常食には、日本クレア株式会社製の一般標準飼料CLEA Rodent Diet CE-2粉末タイプ(以下、単にCE−2)を用い、高コレステロール食は、CE−2に1.5%のコレステロール(和光純薬工業株式会社製)と、0.5%のコール酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)と、ビタミンD2(和光純薬工業株式会社製)を1.8 million IU/kg混入し作製した。
ここで、高コレステロールモデル(6例)と、正常モデル(7例)の血清中総コレステロール濃度を測定した結果を図2に示す。
血清中総コレステロール濃度(平均)は、高コレステロールモデルでは223.8±43.23mg/dLであり、正常モデルでは64.51±5.964mg/dLである。高コレステロール食を与えることで、高コレステロールモデルの血清中総コレステロール濃度は正常モデルに比べ約3.5倍となった。両モデル間においてt検定を行った結果、高コレステロールモデルの方が有意に大きいことが確認された。p値は0.01以下である。
【0015】
実験に用いた撮影装置10は、図1に示すように、ラットRの尾Tに向けて近赤外光を発光、照射するLED(Light Emitting Diode)光源1と、尾Tを透過した近赤外光を撮影するCCDカメラ2と、ラットRを載せるとともにCCDカメラ2を固定するテーブル3と、CCDカメラ2で撮影された画像を取り込むパーソナルコンピュータ(PC)4、ラットRの尾Tに圧迫力を加えるカフ(Cuff)5とから構成される。なお、テーブル3の天板には、図示を省略したスリットが天板の表裏を貫通して設けられており、ラットRの尾Tがこのスリット上に位置するように天板に載せられる。なお、テーブル3の天板より下の部分は、周囲の光の影響をなくすために、黒色に塗られたアクリル板で囲んだ。また、それ以外の部分は、同様の理由から、黒色の緩衝材で覆った。LED光源1には、株式会社アイテックシステム社製の近赤外光面照明LEDライトLMC−61×61−10IR(中心波長:880nm)を用いた。なお、この実験では単波長の光を用いたが、異なる波長を組合せた複合波長を用いることもできる。
以上の撮影装置10を用い、ラットRの尾Tの背側より近赤外光を照射し、透過した近赤外光をスリットの下部に設けたCCDカメラ2で受光して近赤外画像を取得する。ラットRの尾Tには、以下説明する条件で、カフ5により圧迫力を加える。
【0016】
尾Tを圧迫したときの近赤外画像の変化を把握するため、圧迫時間を300秒とした。圧迫の前後における像の変化を得るため、圧迫前60秒と圧迫解放後60秒間も画像を取得し、画像取得の間隔は1秒とした。
圧迫力による画像の変化を調査するために、圧迫力は、40、60、80、100mmHgと、さらに150mmHgの5段階とした。圧迫力を変えて次の実験を行う場合、前回の圧迫力による影響が出ないとされる15分間以上の間隔を設けた。
【0017】
高コレステロールモデル1例と、正常モデル1例の尾Tの近赤外画像の変化をそれぞれ図3、図4に示す。図3、図4において、上から0秒(撮影開始時)、60秒(圧迫開始時)、120秒(圧迫中(1))、240秒(圧迫中(2))、360秒(解放時)、365秒(解放直後)、420秒(撮影終了時)の近赤外画像を示す。さらに、図3、図4において、左から圧迫力が40mmHg、60mmHg、80mmHg、100mmHg、150mmHgの近赤外画像を示す。
図3より、高コレステロールモデルの近赤外画像について、全圧迫力で実験開始時の0秒と圧迫開始時の60秒の画像に変化は見られない。また、圧迫力が40mmHgでは圧迫による近赤外画像の変化は見られない。しかし、圧迫力が60mmHg、80mmHg、100mmHgでは、圧迫開始時の60秒から120秒、240秒、360秒にかけて近赤外画像が、徐々に黒色に変化することが確認できる。その変化は圧迫力が増大するほど、より全体が黒色へと変化している。また、圧迫力解放時の360秒から解放直後の365秒では、近赤外画像が明るくなった。さらに、実験終了時の420秒では撮影開始時と、同様の画像が得られた。
また、圧迫力が150mmHgでは、他の圧迫力とは違い、圧迫中の近赤外画像の変化は確認できず、解放後に画像が黒色へと変化した、その変化は測定終了時で最も濃くなった。
図4に示すように、正常モデルの近赤外画像についても、高コレステロールモデルと同様の傾向を示した。
【0018】
高コレステロールモデル、正常モデルともに、撮影された近赤外画像(縦76pixel×横164pixel)のグレースケール値の平均値を算出した。算出されたグレースケール値の平均値を近赤外画像の輝度とし、輝度の時間的変化を求めた。
【0019】
<圧迫力:40mmHg>
圧迫力が40mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図5(a−1)に、圧迫力が40mmHgの通常モデル5例分の輝度データを図5(a−2)に示す。
0秒〜60秒間は、ラットRの尾Tにカフを巻きつけるだけで圧迫はしない状態(圧迫力0mmHg)である。60秒から360秒まではそれぞれの圧迫力で尾Tを圧迫している。360秒から420秒では圧迫力が解放(圧迫力0mmHg)されている。
図5(a−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、実験開始時(0秒)から圧迫直前(60秒)間の輝度の変化は見られなかった。圧迫力が40mmHgでは、圧迫直後から輝度は減少し始めた。輝度の変化は圧迫開始から約60秒で止まり、その後はほぼ一定の値を保っている。さらに圧迫力の解放後は輝度が回復した。
図5(a−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示す。ただし、圧迫直後からの輝度の減少は少ない。
【0020】
<圧迫力:60mmHg>
圧迫力が60mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図5(b−1)に、圧迫力が60mmHgの通常モデル5例分の輝度データを図5(b−2)に示す。
図5(b−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、40mmHgと同様に実験開始時(0秒)から圧迫直前(60秒)間の輝度の変化は見られなかった。圧迫力が40mmHgに比べ、60mmHgでは、圧迫直後からの輝度の変化が大きかった。輝度の変化は圧迫開始から約120秒で止まり、その後はほぼ一定の値を保っている。また、圧迫力の解放後は輝度が回復した。
図5(b−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示すが、やはり、圧迫後からの輝度の減少は少ない。
【0021】
<圧迫力:80mmHg>
圧迫力が80mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図5(c−1)に、また、通常モデル5例分の輝度データを図5(c−2)に示す。
図5(c−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、圧迫力が60mmHgと同様に圧迫前の輝度の変化は見られなかった。圧迫力が40mmHg、60mmHgに比べ、圧迫後の変化はさらに大きくなった。40mmHg、60mmHgとは対照的に、輝度の減少は圧迫力の解放直前まで続いた。圧迫力の解放後の輝度は、40mmHg、60mmHgと同様に回復した。
図5(c−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示すが、やはり、圧迫直後からの輝度の減少は少ない。
【0022】
<圧迫力:100mmHg>
圧迫力が100mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図6(d−1)に、また、通常モデル5例分の輝度データを図6(d−2)に示す。
図6(d−1)に示すように、高コレステロールモデルの場合、圧迫力が60mmHg、80mmHgと同様に圧迫前の輝度の変化は見られなかった。圧迫直後に輝度は減少し始め、輝度の変化は解放の直前まで続いた。圧迫力の解放後は、輝度は回復した。
図6(d−2)に示すように、通常モデルの場合も高コレステロールモデルと同様の傾向を示すが、圧迫直後からの輝度の減少は少ない。
【0023】
<圧迫力:150mmHg>
圧迫力が150mmHgの高コレステロールモデル5例分の輝度データを図6(e−1)に、また、通常モデル5例分の輝度データを図6(e−2)に示す。
図6(e−1)、(e−2)に示すように、高コレステロールモデル、通常モデルの場合ともに、圧迫前は他の結果と同様に変化は見られない。しかし、圧迫中は他の圧迫力とは異なる変化を示す。
【0024】
次に、高コレステロールモデルと正常モデルの圧迫前後における輝度の変化量を、圧迫力別に比較した。同じ圧迫力における輝度の変化量の、モデル間での比較にt検定を用いてp値を求めた。図7に比較の結果を示す。
圧迫力が80mmHgと100mmHgにおいて輝度の変化量は、高コレステロールモデルの方が正常モデルに比べて、有意に大きい結果を示し、5%の有意差が得られた。この結果、輝度の変化量を求める場合、圧迫力を80mmHg又は100mmHgとするのが好ましいが、これはあくまでラットRに対する値であり、他の動物について好ましい圧迫力は各々実験的に確認することが必要である。
【0025】
血液中のコレステロールの濃度が上昇すると、赤血球の変形能(deformability)が低下することが知られている(例えば、非特許文献5)。赤血球の変形能の低下が進行すると、溶血を起こす可能性が高くなる。溶血(hemolysis)とは、赤血球の膜が破壊され、ヘモグロビンが血液中に遊離する現象である。
以上のことから、高コレステロールモデルにおいては、ラットRにコレステロールを与えることで赤血球の変形能が低下し、赤血球の一部では溶血が発症しているものと推測される。さらに高コレステロールモデルでは、図8に示すように、うっ血により血液中に赤血球から遊離したヘモグロビンと、赤血球が混在することから、血液中に含まれる赤血球の停滞する隙間に、溶血により遊離したヘモグロビンが浸入することで、全体のヘモグロビン量が増加したと推測される。その結果、ラットRの尾Tの圧迫前後における近赤外光の輝度の変化量は、高コレステロールモデルの方が正常モデルに比べ有意に増加したものと解される。このメカニズムは、実際に実験を行なったラットに限らず、動物に共通するものであるから、人間についても適用される。
【0026】
以上より、近赤外画像の輝度変化を捉えることにより、コレステロール濃度を検査することができる。
近赤外画像の輝度変化によるコレステロール濃度の検査には、第1形態と第2形態の少なくとも2つの形態が考えられる。
<第1形態>
第1形態は、コレステロール濃度の増減を検査するものである。これには、生体の検査部分に所定の圧迫を加えながら得た近赤外画像(第1画像)の輝度変化量を取得しておく。このときの輝度変化量をBR1−1とする。時を異にして、同様の条件下で近赤外画像(第2画像)の輝度変化量を取得する。この輝度変化量をBR1−2とする。BR1−1とBR1−2を比較することにより、コレステロール濃度の増減を知ることができる。つまり、BR1−1<BR2−1であればコレステロール濃度が上がり、BR1−1>BR2−1であればコレステロール濃度が下がったことになる。
【0027】
<第2形態>
第2形態は、コレステロール濃度の絶対値を検査するものである。
第1形態と同様に輝度変化量を取得する。この輝度変化量をBR2−1とし、その後に取得される輝度変化量をBR2−2とする。
BR2−1、BR2−2を取得する際に、コレステロール濃度を別途測定する。この測定は、血液を採取して行うものであるが、測定方法は問われない。BR2−1に対応する測定されたコレステロール濃度をCD2−1、BR2−2に対応するコレステロール濃度をCD2−2とする。これら値より輝度変化量とコレステロール濃度との相関関係(式)を得る。相関式(1)は、求めるコレステロール濃度をyCDとし、得られる輝度変化量をxBRとすると、以下の通りである。
【0028】
yCD=a・xBR+b
={(BR2−2)−(BR2−1)}/{(CD2−2)−(CD2−1)}…(1)
【0029】
相関式が得られたならば、以後は、輝度変化量xBRを取得すればコレステロール濃度(推定値)を測定できる。なお、以上の相関式(1)は簡易な例の一つであり、本発明を限定するものでない。
【0030】
第1形態、第2形態を実行できるコレステロール検査装置20の例を図9に基づいて説明する。なお、コレステロール検査装置20は人の指を検査対象部位とする例について述べるが、本発明は、腕、足、その他の部位を検査対象とすることができるし、人以外の動物のコレステロール濃度を検査することもできる。
コレステロール検査装置20は、近赤外光を発光して血管BVを含む人の指(生体)Fに照射する光源21と、光源21から照射され指Fを透過する近赤外光(以下、透過光ということがある)を受光し、撮影するCCDカメラ22を備えている。光源21は、パーソナルコンピュータPCからなるコントローラ24の指示に従って発光が制御される。CCDカメラ22は、コントローラ24の指示に従って透過光を撮影して近赤外画像を取得する。コントローラ24は、取得された近赤外画像を取り込む。取り込んだ後の近赤外画像の処理については、後述する。
【0031】
コレステロール検査装置20は、指F内の血管BVに圧迫力を与えるカフ23を備えている。カフ23には、流路L1上に配置される流量調整弁26を介してポンプ25から供給されるエアが流入する。カフ23には流路L2が接続され、ポンプ25からカフ23に供給されるエアは流路L2に流入する。流路L2は、流路L2−1と流路L2−2に分岐され、流路L2−1には圧力計27が接続され、流路2−2には排気弁28が接続されている。
流量調整弁26、圧力計27および排気弁28はコントローラ24に接続されている。流量調整弁26は、コントローラ24の指示に従ってその開度が調整され、カフ23に流入するエア量を制御する。コントローラ24は、圧力計27からカフ23内の圧力値情報を取得する。また、排気弁28は、コントローラ24の指示に従ってその開度が調整され、コントローラ24は、カフ23から排気するエア量を制御する。
以上のように構成されているので、コントローラ24は、圧力計27から取得する圧力値情報に基づいて、流量調整弁26および排気弁28の開度を調整することにより、カフ23が血管BVを圧迫する力(カフ圧)が検査用の圧迫力に一致するように制御する。
【0032】
<コントローラ24:第1形態>
図10は、第1形態を実行する場合のコントローラ24の構成例を示している。
コントローラ24は、カフ圧制御部24aと、検査処理部24bとから構成される。
カフ圧制御部24aは、前述したように、カフ圧が検査用の圧迫力に一致するように、圧力計27から取得する圧力値情報に基づいて、流量調整弁26および排気弁28の開度を調整する。カフ圧を印加する時間は適宜調整できる。例えば、上述した実験と同様の時間だけ印加できるが、十分に輝度変化が生じる範囲で、印加時間は極力短いことが検査時間の短縮にとって望ましい。
【0033】
検査処理部24bは、画像記憶部241、輝度算出部242、輝度記憶部243および輝度比較部244を備えている。
画像記憶部241は、CCDカメラ22で撮影された近赤外画像を取り込み、記憶する。近赤外画像の記憶の時間間隔は任意であり、たとえば前述した実験と同様に1秒間隔でもよいし、それ以上、以下の間隔にすることもできる。
輝度算出部242は、画像記憶部241に記憶された近赤外画像の輝度を算出する。具体的には、近赤外画像のグレースケール値の平均値を求め、これを当該画像の輝度とする。逐次記憶された近赤外画像について輝度を求めることにより、図5、図6に示す輝度の時間変化を認識できる。輝度算出部242は、輝度の時間変化に基づいて、輝度変化量を算出する。輝度変化量は、圧迫開始時の輝度と圧迫開始から所定時間経過後の輝度の差(または比)として求められる。圧迫開始時の輝度をBi、圧迫開始から所定時間経過後の輝度をBeとすると、輝度変化量BRはBe−Bi(またはBe/Bi)で与えられる。
【0034】
輝度算出部242で得られた輝度変化量BRは、それが求められた時刻と対応付けられて輝度記憶部243に記憶される。また、輝度記憶部243は、コレステロール検査装置20の利用者毎に、輝度変化量BRを記憶できる。したがって、輝度記憶部243は、例えば図11に示すように、コレステロール検査装置20の利用者毎の輝度変化量BRを時系列的に記憶することができる。なお、図11において、測定日時の欄の数値は、暦年、月、日、時を各々2桁で示している。
【0035】
輝度比較部244は、新たに輝度変化量が得られたならば、輝度記憶部243に記憶されている輝度変化量と比較して、輝度変化量の増減を求める。図11を参照して、増減の求め方の一例を説明する。
例えば、利用者Aについて、今回新たに得られた輝度変化量が6回目とすると、前回(5回目)の輝度変化量が15であるから、今回の輝度変化量は前回に比べて減少している。これは、コレステロール濃度がこの2月で減ったことを意味する。この場合、例えば「前回測定時よりもコレステロールが減りました。このまま健康管理を怠らないように!」といったメッセージを、PCのディスプレイ上に表示させることができる。
また、利用者Bについては、前回の輝度変化量が35であるのに対して、今回の輝度変化量は50であるから、この2月でコレステロールが増えている。この場合、例えば「前回測定時よりもコレステロールがずいぶん増えています。食事を含め健康管理に注意しましょう!」といったメッセージを、PCのディスプレイ上に表示させることができる。
【0036】
以上では、今回の輝度変化量と前回の輝度変化量を比較したが、これに限らず、今回の輝度変化量と1回目の輝度変化量とを比較する等、過去に記憶された輝度変化量との比較を任意に行うことができる。また、今回の輝度変化量も含め、求められた輝度変化量を折れ線グラフにして示すこともできる。
【0037】
<コントローラ24:第2形態>
図12は、第2形態を実行する場合のコントローラ24の構成例を示している。なお、図10に示した第1形態と同様の構成部分には図10と同じ符号を付して、その説明を省略する。
コントローラ24は、カフ圧制御部24aと、検査処理部24cとから構成される。
検査処理部24cは、画像記憶部241、輝度算出部242およびコレステロール算出部245を備えている。
【0038】
コレステロール算出部245は、例えば前述した相関式(1)(yCD=a・xBR+b)を保持している。コレステロール算出部245は、輝度算出部242で得られた輝度変化量を取得し、相関式(1)に代入することにより、コレステロール値を算出する。
【0039】
コレステロール算出部245は、コレステロール値を算出したならば、「あなたのコレステロール値は、****です」といったメッセージを、PCのディスプレイ上に表示させることができる。
また、コレステロール算出部245は、利用者毎に算出されたコレステロール値を逐次記憶し、今回算出されたコレステロール値に加えて、記憶された過去のコレステロール値を表示させること、さらに第1形態と組み合せてコレステロール値の増減を表示させることもできる。
【0040】
以上の通りであり、本発明によれば、非侵襲的にコレステロールの増減、コレステロール値を求めることができるので、利用者が日常的に手軽にコレステロールを把握して健康管理を行うことができ、重大疾患等の予防に貢献するところが大きい。
【0041】
以上の実施形態では、透過光を撮影したが、反射光を撮影することにより近赤外画像(血管像)を取得することもできる。
また、以上の実施形態では、輝度を求めて比較したが、圧迫力を加えた後に一定輝度に到達するまでの時間によりコレステロールを判断することもできる。また、輝度に代えて光度を求めることにより、コレステロールを判断することもできる。
また、以上では圧迫力を与えて輝度の変化を顕在化したが、指の静脈を撮影する場合には肘を曲げることによっても、輝度の変化を顕在化できる。また、運動する、冷却する、薬(アルコール)を飲む、食事するなどによって、輝度の変化を顕在化できる。
【符号の説明】
【0042】
20…コレステロール検査装置
21…光源
22…カメラ
23…カフ
24…コントローラ
24a…カフ圧制御部、24b,24c…検査処理部
241…画像記憶部、242…輝度算出部、243…輝度記憶部、244…輝度比較部、
245…コレステロール算出部
25…ポンプ
26…流量調整弁
27…圧力計
28…排気弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して第1画像を取得するステップ(a)と、
前記ステップ(a)の後に、前記検査光を前記検査部位に照射して第2画像を取得するステップ(b)と、
前記第1画像と前記第2画像の比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するステップ(c)と、
を備える血中コレステロールの検査方法。
【請求項2】
前記検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれる近赤外光である請求項1に記載の血中コレステロールの検査方法。
【請求項3】
前記ステップ(c)における前記第1画像と前記第2画像の比較は、
前記第1画像の輝度と前記第2画像の輝度を比較する請求項1または2に記載の血中コレステロールの検査方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)において、前記血管を圧迫した状態で前記第1画像を取得し、
前記ステップ(b)において、前記血管を圧迫した状態で前記第2画像を取得する請求項1〜3に記載の血中コレステロールの検査方法。
【請求項5】
血管を含む生体を透過する検査光を照射して得られる血管像を保持する血管像保持部と、
先行して取得された第1画像と、前記第1画像が取得された後に取得された第2画像との比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するデータ処理部と、
を備える血中コレステロールの検査装置。
【請求項6】
前記検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれた近赤外光である請求項5に記載の血中コレステロールの検査装置。
【請求項7】
前記データ処理部における前記第1画像と前記第2画像の比較は、
前記第1画像の輝度と前記第2画像の輝度を比較する請求項5または6に記載の血中コレステロールの検査装置。
【請求項8】
前記血管像を得る際に前記血管を圧迫するカフを備える請求項5〜7のいずれかに記載の血中コレステロールの検査装置。
【請求項1】
血管を含む生体を透過する検査光を検査部位に照射して第1画像を取得するステップ(a)と、
前記ステップ(a)の後に、前記検査光を前記検査部位に照射して第2画像を取得するステップ(b)と、
前記第1画像と前記第2画像の比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するステップ(c)と、
を備える血中コレステロールの検査方法。
【請求項2】
前記検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれる近赤外光である請求項1に記載の血中コレステロールの検査方法。
【請求項3】
前記ステップ(c)における前記第1画像と前記第2画像の比較は、
前記第1画像の輝度と前記第2画像の輝度を比較する請求項1または2に記載の血中コレステロールの検査方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)において、前記血管を圧迫した状態で前記第1画像を取得し、
前記ステップ(b)において、前記血管を圧迫した状態で前記第2画像を取得する請求項1〜3に記載の血中コレステロールの検査方法。
【請求項5】
血管を含む生体を透過する検査光を照射して得られる血管像を保持する血管像保持部と、
先行して取得された第1画像と、前記第1画像が取得された後に取得された第2画像との比較に基づいて、血中コレステロール量を判断するデータ処理部と、
を備える血中コレステロールの検査装置。
【請求項6】
前記検査光は、波長が700〜1200nmの範囲から選ばれた近赤外光である請求項5に記載の血中コレステロールの検査装置。
【請求項7】
前記データ処理部における前記第1画像と前記第2画像の比較は、
前記第1画像の輝度と前記第2画像の輝度を比較する請求項5または6に記載の血中コレステロールの検査装置。
【請求項8】
前記血管像を得る際に前記血管を圧迫するカフを備える請求項5〜7のいずれかに記載の血中コレステロールの検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【公開番号】特開2010−246578(P2010−246578A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95780(P2009−95780)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
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