血液レオロジー測定装置、及び血液レオロジー計測方法
【課題】 非侵襲で測定する際に、指紋や静脈を検出することによって、被験者毎に生体内の動脈と、センサとの位置関係を同じ条件で測定し、血液レオロジーの時間変化の評価を正確に行う血液レオロジー測定装置及び血液レオロジー計測方法を提供する。
【解決手段】 被験者特有の静脈パターンや指紋パターンを検出、認識、記憶し、測定の度に記憶した静脈パターンや指紋パターンと、検出した静脈パターンや指紋パターンとが一致するようにセンサ位置を調整して、血液の流動性(サラサラ/ドロドロ度)を表す血液レオロジー指標値を測定する。
【解決手段】 被験者特有の静脈パターンや指紋パターンを検出、認識、記憶し、測定の度に記憶した静脈パターンや指紋パターンと、検出した静脈パターンや指紋パターンとが一致するようにセンサ位置を調整して、血液の流動性(サラサラ/ドロドロ度)を表す血液レオロジー指標値を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に血液のサラサラ/ドロドロ度と称される流動性を表す血液レオロジーを測定する血液レオロジー測定装置及び血液レオロジー計測方法にかかわり、特に動脈を流れる血流を測定し、人体組織の活動の基になる微小循環血流を見極め、健康の評価、疾患の診断、薬品の効果の評価等を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の健康の評価、疾患の診断、人体への薬品の効果の評価、食品の健全性・機能性の評価等を行うために、血液レオロジーを計測して、その結果から前記の評価や診断を行っていくことが従来から行われている。従来の技術としては、血液流動性測定装置として被検者から血液を採取し、リソグラフィックな手法で製作されたマイクロチャネルアレイを用いて、定圧下の血流の通過時間から血液レオロジーを計測する方法が知られている(非特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、従来のようなマイクロチャネルアレイを用いた血液レオロジー測定法では、どうしても被検者から血液を採取するために、注射針を用いて肘部に針を刺し、採血を行わなければならない。従って、食品成分の血液レオロジーへの影響をみるためのin vitro試験を行うとしても、同じ人から1日何回も血液採取を行うことができず、連続試験が困難であるという問題がある。また、医療機関を離れて個人が自宅等で自ら採血をして血液レオロジー測定を行おうとしても、従来例のような血液流動性測定装置を用いた方法では、自宅に機器を置くこともできず、適切な処理もできないため、医療機関でしか測定ができないという問題もあった。
【0004】
ところで、血液レオロジーと生体内の動脈の血流速度は強い相関があると考えられている。すなわち、血液の粘性が高い場合、血流速度は遅く、一方、粘性が低い場合は血流速度が速いと考えられている。そのため、生体内の血流速度を計測することで、間接的に血液レオロジーを知ることが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−159250号公報
【非特許文献1】菊池佑二「毛細血管モデルを用いた全血流動性の測定」(食品研究成果情報,NO.11 1999年発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非侵襲で測定を行う場合、生体内の動脈の位置を詳細に把握することは困難であるため、センサと動脈の位置関係が測定するたびに異なる可能性があり、血液レオロジーの時間変化を測定する場合に、正確な時間変化を評価できない可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、非侵襲で測定する際に、被験者毎に生体内の動脈と、センサとの位置関係を同じ条件で測定する血液レオロジー測定装置を提供することによって、血液レオロジーの時間変化の評価を正確にする事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る血液レオロジー測定装置は、上記課題を解決するために、生体の静脈もしくは指紋と動脈の相対位置は固体の成長による変化はあるものの、急激に変化しないことを利用する。具体的には、生体内の静脈によって赤外光の吸収が起こることを利用して、被験者特有の静脈パターンを検出、認識、記憶し、測定の度に記憶した静脈パターンと検出した静脈パターンを一致するように、センサ位置を調整する機能を有することによって、上述の課題を解決するものである。もしくは、生体表面の指紋を検出することにより、指紋パターンを認識することにより、測定位置を調整する機能を有することによって、上述の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
生体表面から生体内の動脈に超音波を送受信し、血液レオロジーを求め、さらに、静脈もしくは指紋のパターン認識を行うことによって、被験者毎に生体内の動脈と、センサとの位置関係を同じ条件で測定する血液レオロジー測定装置を提供することができ、血液レオロジーの時間変化の評価を正確に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明での測定断面図を模式的に表したものである。図2は本発明に係る血液レオロジー測定装置の構成の1例を示すブロック図である。
センサ部1は2対の超音波センサA11及び超音波センサB12と光センサ13から構成されている。超音波センサA11は発信素子A111と受信素子A112から構成され、超音波センサB12は発信素子B121と受信素子B122から構成される。これらの発信素子及び受信素子はPZTなどの圧電素子が適している。また、これらの発信素子及び受信素子と皮膚51の間には、超音波の送受信をスムーズに行うための音響整合層14を、センサ部1に設けている。音響整合層を複数層にし、表面層を皮膚51に密着できる柔らかい樹脂にすることで、皮膚51の皺や指紋とセンサ部1との間に空気層が無くすことができ、超音波を効率よく送受信できるようになる。
【0010】
センサ部1において、超音波センサを2対用いる理由であるが、生体内の血管は生体表面に対して、必ず並行になっているわけでなく、図3に示すように、生体表面、即ち、皮膚51に対して斜めになっている可能性があり、センサ部1と動脈52とでなす角を2対の超音波センサから得られるドップラーシフト量から求めることにより、正確に血流の速度を求めることが可能になるからである。センサ部1は本体の筐体に組み込まれており、図示しないが、フレキシブル配線基板等によりセンサ部1と回路部2は接続されている。図3に示すとおり、超音波センサ11及び超音波センサ12の角度及び間隔などの配置位置は、超音波センサ11によって送受信される超音波と、超音波センサ12によって送受信される超音波が交差する部分と、測定する動脈52が重なるように設計することで、様々な測定部位での正確な測定が可能となる。
【0011】
光センサ13は発光素子131と受光素子132から構成され、生体5を透過させ、図4の様な静脈のパターンを得ることができる。発光素子131には波長740nm〜780nmのLEDを用い、受光素子132はCCDカメラを用いる。図1では、透過光を検出する構造になっているが、反射光を検出するセンサ構造でもよい。
【0012】
回路部2は発信素子111及び121を駆動する超音波送信回路21と、受信素子112及び122からの受信信号を受信し、ドップラー信号を検波する超音波受信検波回路22と、発光素子131を駆動する発光回路24と、受光素子132からの信号を受信する受光回路25と、センサ部1を移動させるためのセンサ部移動回路23によって構成される。超音波受信検波回路22と受光回路25の信号は演算部3に送られる。センサ部移動回路23は演算部3からの信号を受け、例えば、図示しない駆動機構に取り付けられたセンサ部1を移動させることができる。センサ部1を移動させる駆動機構については、既存の歯車機構や摺動機構を応用することにより容易に構成可能であり、詳細については割愛する。ここで、センサ部1及び上記駆動機構が検知手段を構成し、また、FFT演算部31、血液レオロジー指標演算処理部32、及び情報取得部35が血液レオロジー計測手段を構成する。
【0013】
演算部3は、はFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)演算処理部31と血液レオロジー指標演算処置部32と画像処理部33とデータベース照合部34と情報取得部35から構成される。FFT演算処理部31は受信検波回路22で得られるドップラー信号に対してFFT演算を行い、その結果を血液レオロジー指標演算処置部32に送る。血液レオロジー指標演算処置部32ではFFT演算処理部31の演算結果を更に演算処理すると共に、情報取得部35で得られる血圧や温度やセンサ部1と生体5との接触圧力の情報から、血液レオロジーを求める。これらの結果は、出力部4に送られる。
【0014】
画像処理部33は受光回路25からの信号を演算することにより、静脈パターンを作成し、そのデータをデータベース照合部34に送る。データベース照合部34では、測定の度に画像処理部33で得られたデータとデータベース照合部34内のデータと照合を行い、必要に応じてセンサ部移動回路23に信号を送る。データベース照合部34は、血液レオロジー指標演算処置部32の結果を蓄積することができる。データベース照合部34のデータ及び、血液レオロジー指標演算処置部32の結果は、出力部4に送られる。
ここで、画像処理部33、データベース照合部34、及びセンサ移動回路23が画像処理手段を構成する。
【0015】
出力部4はモニター或いはスピーカーであり、演算部3からのデータ及び結果をモニター上に表示或いは音により表現する。
【0016】
食品摂取による血液レオロジーへの影響を評価する場合などには、数分間隔で測定する。生体表面から動脈位置は詳細にわからないので、センサ部と動脈の位置関係は必ずしも同じ位置関係にあるとはかぎらなかったが、静脈パターンを検出することによって、同じ位置を測定することができるようになる。なぜなら、特定の被験者における、動脈と静脈の相対位置はすぐに変化するものではないからである。
【0017】
図4は静脈パターンの1例である。これは、ある被験者が測定を行った時に画像処理部33によって得られる。この情報を予めデータベース照合部34に記録しておく。この被験者が改めて測定した時、同様に画像処理部33によって図5のような静脈パターンが得られる。この時、予め記録しておいた静脈パターンを呼び出し、比較する(図6)。データベースに記録されている静脈55と、測定している静脈54にはずれがある場合は、図7に示すように、センサ部1を移動させる。この状態ならば、前回測定した静脈と今回測定する静脈とセンサ部の位置関係は一致するので、センサ部と動脈の位置関係も同じになるので、被験者によって、必ず動脈52とセンサ部1の関係は一致し、被験者Aならば、必ず図8に示す位置関係で測定ができ、被験者Bならば、必ず図9に示す方向で測定ができるようになる。
【0018】
また、食品摂取による血液レオロジーへの影響を評価する場合などには、多くの被験者が測定を行う。この場合、被験者が測定の度に装置を操作してから、測定することで個々の被験者による血液レオロジーの変化は評価できるものの、操作が煩雑であり、装置操作ミスが起こるということがあった。被験者個々の静脈パターンは特有なものであるので、静脈パターンを認識することで、被験者が特定でき、度重なる測定においては、被験者の操作を非常に軽減できるようになる。
【0019】
図10は被験者の認識と測定位置を同じにする本装置での測定フローチャートである。測定を開始すると、画像処理部33によって測定位置を認識する。このデータをデータベース照合部34内のデータと比較することで初めて測定する被験者であるか、既に測定したことのある被験者かを判断し、初めて測定する被験者であれば、被験者の名前・生年月日・性別等の情報を登録し、血液レオロジー測定を行い、測定データ及び測定位置をデータベース照合部34に記録すると共に、結果を出力部4によって表現して、終了する。
【0020】
既に測定したことのある被験者である場合は、測定位置のずれの有無を判断し、ずれがある場合は、センサ部1を移動させ、再度測定位置のずれの有無を判断する。すれが無くなるまで繰り返し、ずれがなくなったら、測定を開始する。測定結果をデータベース照合部34に追加して記録し、結果を図11のように、出力部4によって表現して、終了する。測定結果、血液レオロジーの時間変動、名前などの情報は、静脈パターンによって認識された被験者と特定の装置の操作管理者を除いて、閲覧できなく、個人情報の保護ができるようになっている。被験者以外の人の測定結果や性別などを閲覧するためには、パスワードが必要になっているが、操作管理者以外の人が、パスワードを入手しても、静脈パターンによって操作管理者であるかの判断ができるため、被験者の情報を保護できる。
測定部位が指尖部位のように、生体表面に特有の皺、即ち、指紋がある場合には指紋を測定することによって、動脈とセンサの位置関係を固定することが可能になる。図12は、本発明に係る血液レオロジー測定装置を用いて、測定している一例を示す断面図である。
【0021】
図13は本発明に係る血液レオロジー測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図14は指紋パターンの一例である。これは、ある被験者が測定を行った時に画像処理部33によって得られる。この情報を予めデータベース照合部34に記録しておく。この被験者が改めて測定した時、同様に画像処理部33によって図15のような指紋パターンを得られる。この時、予め記録しておいた指紋パターンを呼び出し、比較する(図16)。データベースに記録されている指紋57と、測定している指紋56にはずれがある場合は、図17に示すように、センサ部1を移動させる。この状態ならば、前回測定した指紋と今回測定する指紋とセンサ部の位置関係は一致するので、センサ部と動脈の位置関係も同じになるので、被験者によって、必ず動脈52とセンサ部1の関係は一致し、被験者毎にセンサ部1と動脈52の位置関係は固定された状態で測定ができるようになる。指紋の取得方法は、画像から得る方法に限らない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、医療および健康維持・増進を目的として、体液の流動性を示す指標としての血液レオロジーを採血することなく求めることができる。また、食品が血液に及ぼす影響を容易に正確に把握できるようになるので、食品開発における検査装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】測定断面の1例を示す図
【図2】血液レオロジー測定装置の構成の1例を示すブロック図
【図3】測定断面の1例を示す図
【図4】静脈パターンを示す図
【図5】静脈パターンを示す図
【図6】静脈パターンの比較例を示す図
【図7】静脈パターンがマッチングした例を示す図
【図8】センサ部と動脈の位置関係を示す図
【図9】センサ部と動脈の位置関係を示す図
【図10】測定フローチャート
【図11】結果表示例を示す図
【図12】測定断面の1例を示す図
【図13】血液レオロジー測定装置の構成の1例を示すブロック図
【図14】指紋パターンを示す図
【図15】指紋パターンを示す図
【図16】指紋パターンの比較例を示す図
【図17】指紋パターンがマッチングした例を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 センサ部
11 超音波センサA
111 発信素子A
112 受信素子A
12 超音波センサB
121 発信素子B
122 受信素子B
13 光センサ
131 発光素子
132 受光素子
14 音響整合層
2 回路部
21 超音波送信回路
22 超音波受信検波回路
23 センサ部移動回路
24 発光回路
25 受光回路
3 演算部
31 FFT演算処理部
32 血液レオロジー指標演算処置部
33 画像処理部
34 データベース照合部
35 情報取得部
4 出力部
5 生体
51 皮膚
52 動脈
53 生体組織
54 静脈
55 データベースに記録されている静脈
56 指紋
57 データベースに記録されている指紋
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に血液のサラサラ/ドロドロ度と称される流動性を表す血液レオロジーを測定する血液レオロジー測定装置及び血液レオロジー計測方法にかかわり、特に動脈を流れる血流を測定し、人体組織の活動の基になる微小循環血流を見極め、健康の評価、疾患の診断、薬品の効果の評価等を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の健康の評価、疾患の診断、人体への薬品の効果の評価、食品の健全性・機能性の評価等を行うために、血液レオロジーを計測して、その結果から前記の評価や診断を行っていくことが従来から行われている。従来の技術としては、血液流動性測定装置として被検者から血液を採取し、リソグラフィックな手法で製作されたマイクロチャネルアレイを用いて、定圧下の血流の通過時間から血液レオロジーを計測する方法が知られている(非特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、従来のようなマイクロチャネルアレイを用いた血液レオロジー測定法では、どうしても被検者から血液を採取するために、注射針を用いて肘部に針を刺し、採血を行わなければならない。従って、食品成分の血液レオロジーへの影響をみるためのin vitro試験を行うとしても、同じ人から1日何回も血液採取を行うことができず、連続試験が困難であるという問題がある。また、医療機関を離れて個人が自宅等で自ら採血をして血液レオロジー測定を行おうとしても、従来例のような血液流動性測定装置を用いた方法では、自宅に機器を置くこともできず、適切な処理もできないため、医療機関でしか測定ができないという問題もあった。
【0004】
ところで、血液レオロジーと生体内の動脈の血流速度は強い相関があると考えられている。すなわち、血液の粘性が高い場合、血流速度は遅く、一方、粘性が低い場合は血流速度が速いと考えられている。そのため、生体内の血流速度を計測することで、間接的に血液レオロジーを知ることが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−159250号公報
【非特許文献1】菊池佑二「毛細血管モデルを用いた全血流動性の測定」(食品研究成果情報,NO.11 1999年発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非侵襲で測定を行う場合、生体内の動脈の位置を詳細に把握することは困難であるため、センサと動脈の位置関係が測定するたびに異なる可能性があり、血液レオロジーの時間変化を測定する場合に、正確な時間変化を評価できない可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、非侵襲で測定する際に、被験者毎に生体内の動脈と、センサとの位置関係を同じ条件で測定する血液レオロジー測定装置を提供することによって、血液レオロジーの時間変化の評価を正確にする事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る血液レオロジー測定装置は、上記課題を解決するために、生体の静脈もしくは指紋と動脈の相対位置は固体の成長による変化はあるものの、急激に変化しないことを利用する。具体的には、生体内の静脈によって赤外光の吸収が起こることを利用して、被験者特有の静脈パターンを検出、認識、記憶し、測定の度に記憶した静脈パターンと検出した静脈パターンを一致するように、センサ位置を調整する機能を有することによって、上述の課題を解決するものである。もしくは、生体表面の指紋を検出することにより、指紋パターンを認識することにより、測定位置を調整する機能を有することによって、上述の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
生体表面から生体内の動脈に超音波を送受信し、血液レオロジーを求め、さらに、静脈もしくは指紋のパターン認識を行うことによって、被験者毎に生体内の動脈と、センサとの位置関係を同じ条件で測定する血液レオロジー測定装置を提供することができ、血液レオロジーの時間変化の評価を正確に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明での測定断面図を模式的に表したものである。図2は本発明に係る血液レオロジー測定装置の構成の1例を示すブロック図である。
センサ部1は2対の超音波センサA11及び超音波センサB12と光センサ13から構成されている。超音波センサA11は発信素子A111と受信素子A112から構成され、超音波センサB12は発信素子B121と受信素子B122から構成される。これらの発信素子及び受信素子はPZTなどの圧電素子が適している。また、これらの発信素子及び受信素子と皮膚51の間には、超音波の送受信をスムーズに行うための音響整合層14を、センサ部1に設けている。音響整合層を複数層にし、表面層を皮膚51に密着できる柔らかい樹脂にすることで、皮膚51の皺や指紋とセンサ部1との間に空気層が無くすことができ、超音波を効率よく送受信できるようになる。
【0010】
センサ部1において、超音波センサを2対用いる理由であるが、生体内の血管は生体表面に対して、必ず並行になっているわけでなく、図3に示すように、生体表面、即ち、皮膚51に対して斜めになっている可能性があり、センサ部1と動脈52とでなす角を2対の超音波センサから得られるドップラーシフト量から求めることにより、正確に血流の速度を求めることが可能になるからである。センサ部1は本体の筐体に組み込まれており、図示しないが、フレキシブル配線基板等によりセンサ部1と回路部2は接続されている。図3に示すとおり、超音波センサ11及び超音波センサ12の角度及び間隔などの配置位置は、超音波センサ11によって送受信される超音波と、超音波センサ12によって送受信される超音波が交差する部分と、測定する動脈52が重なるように設計することで、様々な測定部位での正確な測定が可能となる。
【0011】
光センサ13は発光素子131と受光素子132から構成され、生体5を透過させ、図4の様な静脈のパターンを得ることができる。発光素子131には波長740nm〜780nmのLEDを用い、受光素子132はCCDカメラを用いる。図1では、透過光を検出する構造になっているが、反射光を検出するセンサ構造でもよい。
【0012】
回路部2は発信素子111及び121を駆動する超音波送信回路21と、受信素子112及び122からの受信信号を受信し、ドップラー信号を検波する超音波受信検波回路22と、発光素子131を駆動する発光回路24と、受光素子132からの信号を受信する受光回路25と、センサ部1を移動させるためのセンサ部移動回路23によって構成される。超音波受信検波回路22と受光回路25の信号は演算部3に送られる。センサ部移動回路23は演算部3からの信号を受け、例えば、図示しない駆動機構に取り付けられたセンサ部1を移動させることができる。センサ部1を移動させる駆動機構については、既存の歯車機構や摺動機構を応用することにより容易に構成可能であり、詳細については割愛する。ここで、センサ部1及び上記駆動機構が検知手段を構成し、また、FFT演算部31、血液レオロジー指標演算処理部32、及び情報取得部35が血液レオロジー計測手段を構成する。
【0013】
演算部3は、はFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)演算処理部31と血液レオロジー指標演算処置部32と画像処理部33とデータベース照合部34と情報取得部35から構成される。FFT演算処理部31は受信検波回路22で得られるドップラー信号に対してFFT演算を行い、その結果を血液レオロジー指標演算処置部32に送る。血液レオロジー指標演算処置部32ではFFT演算処理部31の演算結果を更に演算処理すると共に、情報取得部35で得られる血圧や温度やセンサ部1と生体5との接触圧力の情報から、血液レオロジーを求める。これらの結果は、出力部4に送られる。
【0014】
画像処理部33は受光回路25からの信号を演算することにより、静脈パターンを作成し、そのデータをデータベース照合部34に送る。データベース照合部34では、測定の度に画像処理部33で得られたデータとデータベース照合部34内のデータと照合を行い、必要に応じてセンサ部移動回路23に信号を送る。データベース照合部34は、血液レオロジー指標演算処置部32の結果を蓄積することができる。データベース照合部34のデータ及び、血液レオロジー指標演算処置部32の結果は、出力部4に送られる。
ここで、画像処理部33、データベース照合部34、及びセンサ移動回路23が画像処理手段を構成する。
【0015】
出力部4はモニター或いはスピーカーであり、演算部3からのデータ及び結果をモニター上に表示或いは音により表現する。
【0016】
食品摂取による血液レオロジーへの影響を評価する場合などには、数分間隔で測定する。生体表面から動脈位置は詳細にわからないので、センサ部と動脈の位置関係は必ずしも同じ位置関係にあるとはかぎらなかったが、静脈パターンを検出することによって、同じ位置を測定することができるようになる。なぜなら、特定の被験者における、動脈と静脈の相対位置はすぐに変化するものではないからである。
【0017】
図4は静脈パターンの1例である。これは、ある被験者が測定を行った時に画像処理部33によって得られる。この情報を予めデータベース照合部34に記録しておく。この被験者が改めて測定した時、同様に画像処理部33によって図5のような静脈パターンが得られる。この時、予め記録しておいた静脈パターンを呼び出し、比較する(図6)。データベースに記録されている静脈55と、測定している静脈54にはずれがある場合は、図7に示すように、センサ部1を移動させる。この状態ならば、前回測定した静脈と今回測定する静脈とセンサ部の位置関係は一致するので、センサ部と動脈の位置関係も同じになるので、被験者によって、必ず動脈52とセンサ部1の関係は一致し、被験者Aならば、必ず図8に示す位置関係で測定ができ、被験者Bならば、必ず図9に示す方向で測定ができるようになる。
【0018】
また、食品摂取による血液レオロジーへの影響を評価する場合などには、多くの被験者が測定を行う。この場合、被験者が測定の度に装置を操作してから、測定することで個々の被験者による血液レオロジーの変化は評価できるものの、操作が煩雑であり、装置操作ミスが起こるということがあった。被験者個々の静脈パターンは特有なものであるので、静脈パターンを認識することで、被験者が特定でき、度重なる測定においては、被験者の操作を非常に軽減できるようになる。
【0019】
図10は被験者の認識と測定位置を同じにする本装置での測定フローチャートである。測定を開始すると、画像処理部33によって測定位置を認識する。このデータをデータベース照合部34内のデータと比較することで初めて測定する被験者であるか、既に測定したことのある被験者かを判断し、初めて測定する被験者であれば、被験者の名前・生年月日・性別等の情報を登録し、血液レオロジー測定を行い、測定データ及び測定位置をデータベース照合部34に記録すると共に、結果を出力部4によって表現して、終了する。
【0020】
既に測定したことのある被験者である場合は、測定位置のずれの有無を判断し、ずれがある場合は、センサ部1を移動させ、再度測定位置のずれの有無を判断する。すれが無くなるまで繰り返し、ずれがなくなったら、測定を開始する。測定結果をデータベース照合部34に追加して記録し、結果を図11のように、出力部4によって表現して、終了する。測定結果、血液レオロジーの時間変動、名前などの情報は、静脈パターンによって認識された被験者と特定の装置の操作管理者を除いて、閲覧できなく、個人情報の保護ができるようになっている。被験者以外の人の測定結果や性別などを閲覧するためには、パスワードが必要になっているが、操作管理者以外の人が、パスワードを入手しても、静脈パターンによって操作管理者であるかの判断ができるため、被験者の情報を保護できる。
測定部位が指尖部位のように、生体表面に特有の皺、即ち、指紋がある場合には指紋を測定することによって、動脈とセンサの位置関係を固定することが可能になる。図12は、本発明に係る血液レオロジー測定装置を用いて、測定している一例を示す断面図である。
【0021】
図13は本発明に係る血液レオロジー測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図14は指紋パターンの一例である。これは、ある被験者が測定を行った時に画像処理部33によって得られる。この情報を予めデータベース照合部34に記録しておく。この被験者が改めて測定した時、同様に画像処理部33によって図15のような指紋パターンを得られる。この時、予め記録しておいた指紋パターンを呼び出し、比較する(図16)。データベースに記録されている指紋57と、測定している指紋56にはずれがある場合は、図17に示すように、センサ部1を移動させる。この状態ならば、前回測定した指紋と今回測定する指紋とセンサ部の位置関係は一致するので、センサ部と動脈の位置関係も同じになるので、被験者によって、必ず動脈52とセンサ部1の関係は一致し、被験者毎にセンサ部1と動脈52の位置関係は固定された状態で測定ができるようになる。指紋の取得方法は、画像から得る方法に限らない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、医療および健康維持・増進を目的として、体液の流動性を示す指標としての血液レオロジーを採血することなく求めることができる。また、食品が血液に及ぼす影響を容易に正確に把握できるようになるので、食品開発における検査装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】測定断面の1例を示す図
【図2】血液レオロジー測定装置の構成の1例を示すブロック図
【図3】測定断面の1例を示す図
【図4】静脈パターンを示す図
【図5】静脈パターンを示す図
【図6】静脈パターンの比較例を示す図
【図7】静脈パターンがマッチングした例を示す図
【図8】センサ部と動脈の位置関係を示す図
【図9】センサ部と動脈の位置関係を示す図
【図10】測定フローチャート
【図11】結果表示例を示す図
【図12】測定断面の1例を示す図
【図13】血液レオロジー測定装置の構成の1例を示すブロック図
【図14】指紋パターンを示す図
【図15】指紋パターンを示す図
【図16】指紋パターンの比較例を示す図
【図17】指紋パターンがマッチングした例を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 センサ部
11 超音波センサA
111 発信素子A
112 受信素子A
12 超音波センサB
121 発信素子B
122 受信素子B
13 光センサ
131 発光素子
132 受光素子
14 音響整合層
2 回路部
21 超音波送信回路
22 超音波受信検波回路
23 センサ部移動回路
24 発光回路
25 受光回路
3 演算部
31 FFT演算処理部
32 血液レオロジー指標演算処置部
33 画像処理部
34 データベース照合部
35 情報取得部
4 出力部
5 生体
51 皮膚
52 動脈
53 生体組織
54 静脈
55 データベースに記録されている静脈
56 指紋
57 データベースに記録されている指紋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面から生体内の動脈血流に対して超音波を送受信する超音波センサ部と前記生体表面から前記生体を撮像する撮像部とからなるセンサ部を有する検知手段と、前記撮像部で得られた画像を画像処理する画像処理部を有する画像処理手段と、該画像処理手段で処理された処理画像を記憶し保管する画像データベースと、前記超音波センサ部から出力される信号を演算処理し、前記画像処理手段で処理された処理画像と対応させて前記動脈血流の流動性を計測する血液レオロジー計測手段と、からなることを特徴とする血液レオロジー測定装置。
【請求項2】
前記検知手段は、更に、前記センサ部の位置を移動させる駆動機構を有し、前記画像処理手段は、前記画像処理部から出力された前記処理画像と前記画像データベースに保管され且つ前記処理画像と対応する保管画像との照合を行うデータベース照合部と、前記データベース照合部で照合した前記処理画像と前記保管画像が重なり合うように前記駆動機構を制御して前記センサ部の位置を移動させるセンサ部移動回路とを有することを特徴とする請求項1に記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項3】
前記処理画像及び前記保管画像は、前記生体内の静脈に係わるパターン画像であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項4】
前記処理画像及び前記保管画像は、前記生体の指紋に係わるパターン画像であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記生体に光を照射する発光手段と、照明された領域を撮像する撮像手段とからなることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項6】
前記データベース照合部は、前記静脈及び前記指紋またはそのいずれかを用いて個人認証を行う個人認証機能を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項7】
生体表面から該生体を撮像する撮像工程と、撮像した画像と対応させて前記生体内の動脈血流の流動性を計測する血液レオロジー計測工程とを含むことを特徴とする血液レオロジー計測方法。
【請求項8】
更に、前記撮像工程において得られた前記画像を記憶し保管する記憶工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の血液レオロジー計測方法。
【請求項9】
前記撮像工程は、撮像された画像を画像処理する画像処理工程と、画像処理された処理画像と保管された保管画像とを照合する照合工程と、照合された前記処理画像と前記保管画像とが重なり合うように、前記生体表面から該生体を撮像する撮像部と前記生体内の動脈血流の流動性を検出する検出部とからなるセンサ部の位置を移動させる移動工程と、を有することを特徴とする請求項8に記載の血液レオロジー計測方法。
【請求項1】
生体表面から生体内の動脈血流に対して超音波を送受信する超音波センサ部と前記生体表面から前記生体を撮像する撮像部とからなるセンサ部を有する検知手段と、前記撮像部で得られた画像を画像処理する画像処理部を有する画像処理手段と、該画像処理手段で処理された処理画像を記憶し保管する画像データベースと、前記超音波センサ部から出力される信号を演算処理し、前記画像処理手段で処理された処理画像と対応させて前記動脈血流の流動性を計測する血液レオロジー計測手段と、からなることを特徴とする血液レオロジー測定装置。
【請求項2】
前記検知手段は、更に、前記センサ部の位置を移動させる駆動機構を有し、前記画像処理手段は、前記画像処理部から出力された前記処理画像と前記画像データベースに保管され且つ前記処理画像と対応する保管画像との照合を行うデータベース照合部と、前記データベース照合部で照合した前記処理画像と前記保管画像が重なり合うように前記駆動機構を制御して前記センサ部の位置を移動させるセンサ部移動回路とを有することを特徴とする請求項1に記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項3】
前記処理画像及び前記保管画像は、前記生体内の静脈に係わるパターン画像であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項4】
前記処理画像及び前記保管画像は、前記生体の指紋に係わるパターン画像であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記生体に光を照射する発光手段と、照明された領域を撮像する撮像手段とからなることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項6】
前記データベース照合部は、前記静脈及び前記指紋またはそのいずれかを用いて個人認証を行う個人認証機能を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の血液レオロジー測定装置。
【請求項7】
生体表面から該生体を撮像する撮像工程と、撮像した画像と対応させて前記生体内の動脈血流の流動性を計測する血液レオロジー計測工程とを含むことを特徴とする血液レオロジー計測方法。
【請求項8】
更に、前記撮像工程において得られた前記画像を記憶し保管する記憶工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の血液レオロジー計測方法。
【請求項9】
前記撮像工程は、撮像された画像を画像処理する画像処理工程と、画像処理された処理画像と保管された保管画像とを照合する照合工程と、照合された前記処理画像と前記保管画像とが重なり合うように、前記生体表面から該生体を撮像する撮像部と前記生体内の動脈血流の流動性を検出する検出部とからなるセンサ部の位置を移動させる移動工程と、を有することを特徴とする請求項8に記載の血液レオロジー計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−218039(P2006−218039A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33413(P2005−33413)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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