説明

血液分析装置、血液分析方法、及びコンピュータプログラム

【課題】 異常リンパ球、芽球、及び異型リンパ球を区別して検出可能な血液分析装置、血液分析方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】
血液分析装置1は、試料調製部22において、溶血剤を含有する第1試薬と蛍光色素を含有する第2試薬と血液検体とを混合して第1測定試料を調製し、溶血剤を含有する第3試薬と蛍光色素を含有する第4試薬と血液検体とを混合して第2測定試料を調製し、それぞれの測定試料を検出部23によって測定し、検出部23から出力される測定データを情報処理ユニット5において処理することにより、血液検体中に異常リンパ球、芽球、及び異型リンパ球のそれぞれが存在するか否かを判定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検体を光学的に測定し、血液検体に含まれる血球を分類する血液分析装置及び血液分析方法、並びにコンピュータに血液を分析させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
正常な末梢血液中にはリンパ球、単球、好塩基球、好酸球、及び好中球の5種類の白血球が存在し、多くの血球計数装置は血液検体中の白血球をかかる5つの種類に分類する機能を有している。一方、ウイルス感染症又は造血器腫瘍等の疾患においては、正常な末梢血液中には存在しない細胞が出現する。末梢血液中に出現する異常な白血球には、異常な単核球が含まれ、この異常単核球は、反応性のものと腫瘍性のものに大別できる。反応性の異常単核球としては、ウイルス感染又は薬物アレルギー等で見られる「異型リンパ球(atypical lymphocyte)」がある。腫瘍性の異常単核球は、成熟したものと幼若なものとにさらに分類される。腫瘍性の成熟単核球としては、慢性リンパ性白血病(CLL)で見られる「異常リンパ球(abnormal lymphocyte)」がある。また、腫瘍性の幼若単核球としては、急性白血病で見られる「芽球(blast)」がある。末梢血液中から異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出することは、上記のような疾患のスクリーニング又は診断を行う上で極めて有用である。
【0003】
特許文献1には、白血球を4つ又は5つに分類する試薬を用いて異型リンパ球及び骨髄芽球を正常白血球と区別して検出することが開示されている(図12、14を参照)。また、特許文献2には、白血球を5つに分類する試薬を用いて、異常リンパ球及び芽球からなる細胞群を、正常白血球と区別して検出することが開示されている(図2参照)。特許文献1及び2に開示されている技術は、白血球を分類するための試薬として、カチオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を含む溶血剤と、核酸を染める蛍光色素を含む染色液とを用いる点において共通している。
【0004】
また、特許文献3には、所定の試薬を用いて、骨髄芽球を成熟白血球及び幼若顆粒球と区別して検出することが開示されている(図1、2、5参照)。この文献には、上記の試薬として、ノニオン性界面活性剤及び可溶化剤を含む溶血剤と、核酸を染める蛍光色素とが開示されている。また、特許文献4には、所定の試薬を用いて、リンパ芽球と骨髄芽球と成熟白血球と幼若顆粒球とを区別して検出することが開示されている(図13A、13B参照)。この文献には、上記の試薬として、ノニオン性界面活性剤及び可溶化剤を含む溶血剤と、核酸を染める蛍光色素とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−91024号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0023129号明細書
【特許文献3】特開2007−263894号公報
【特許文献4】特開2010−237147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2においては、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球が蛍光強度及び散乱光強度においてほぼ同じ領域に出現するため、これらを区別することはできない。また、特許文献3及び4の何れにおいても、異型リンパ球と異常リンパ球とを区別して検出することは記載されていない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その一の目的は、異常リンパ球、芽球、及び異型リンパ球を区別して検出可能な血液分析装置、血液分析方法、及びコンピュータプログラムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、反応性の異常単核球および腫瘍性の異常単核球を区別して検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の血液分析装置は、血液検体から第1血液検体と第2血液検体とを分注する分注部と、前記分注部によって分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して第1測定試料を調製し、前記分注部によって分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して第2測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された第1測定試料及び第2測定試料のそれぞれに光を照射する光源と、前記光源により光が前記第1測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第1蛍光信号及び受光された散乱光に関する第1散乱光信号を出力し、前記光源により光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第2蛍光信号及び受光された散乱光に関する第2散乱光信号を出力する受光部と、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号、並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出する情報処理部と、前記情報処理部による検出結果に基づく出力を行う出力部と、を備える。
【0009】
この態様において、前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞を検出し、前記血液検体から前記細胞を検出した場合に、前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出するように構成されていてもよい。
【0010】
上記態様において、前記情報処理部は、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞を検出した場合に、血液検体から第2血液検体を分注し、第2測定試料を調製するように前記分注部及び前記試料調製部を制御するように構成されていてもよい。
【0011】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体に含まれる白血球を複数の種類に分類すると共に、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞を検出するように構成されていてもよい。
【0012】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づき、所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞を、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞として検出するように構成されていてもよい。
【0013】
上記態様において、前記所定範囲の蛍光強度は、正常リンパ球から得られる蛍光強度よりも大きくてもよい。
【0014】
上記態様において、前記情報処理部は、前記所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞の数を反映した値を取得し、取得した値と所定の閾値とを比較することにより、前記所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞を検出するように構成されていてもよい。
【0015】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第2蛍光信号に基づき、所定範囲の蛍光強度を示す細胞を、異常リンパ球として検出するように構成されていてもよい。
【0016】
上記態様において、前記所定範囲の蛍光強度は、正常リンパ球から得られる蛍光強度よりも大きくてもよい。
【0017】
上記態様において、前記情報処理部は、前記所定範囲の蛍光強度を示す細胞の数を反映した値を取得し、取得した値と所定の閾値とを比較することにより、前記所定範囲の蛍光強度を示す細胞を検出するように構成されていてもよい。
【0018】
上記態様において、前記受光部は、前記光源により光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる前方散乱光及び側方散乱光を受光して、受光された前方散乱光に関する前方散乱光信号及び受光された側方散乱光に関する側方散乱光信号を含む前記第2散乱光信号を出力するように構成されており、前記情報処理部は、前記前方散乱光信号及び前記側方散乱光信号に基づき、所定範囲の前方散乱光強度及び側方散乱光強度を示す細胞を、芽球として検出するように構成されていてもよい。
【0019】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異常リンパ球及び芽球が検出されなかった場合に、前記血液検体から異型リンパ球を検出するように構成されていてもよい。
【0020】
本発明の他の態様の血液分析装置は、血液検体から第1血液検体と第2血液検体とを分注する分注部と、前記分注部によって分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して第1測定試料を調製し、前記分注部によって分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して第2測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された第1測定試料及び第2測定試料のそれぞれに光を照射する光源と、前記光源により光が前記第1測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第1蛍光信号及び受光された散乱光に関する第1散乱光信号を出力し、前記光源により光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第2蛍光信号及び受光された散乱光に関する第2散乱光信号を出力する受光部と、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号、並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から反応性の異常単核球及び腫瘍性の異常単核球を区別して検出する情報処理部と、前記情報処理部による検出結果に基づく出力を行う出力部と、を備える。
【0021】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異常単核球を検出し、前記血液検体から前記異常単核球を検出した場合に、前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から反応性の異常単核球及び腫瘍性の異常単核球を区別して検出するように構成されていてもよい。
【0022】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体に含まれる白血球を複数の種類に分類すると共に、前記血液検体から異常単核球を検出するように構成されていてもよい。
【0023】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づき、所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞を、異常単核球として検出するように構成されていてもよい。
【0024】
本発明の一の態様の血液分析方法は、血液検体から第1血液検体と第2血液検体とを分注するステップと、分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して第1測定試料を調製するステップと、調製された第1測定試料に光を照射するステップと、光が前記第1測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第1蛍光信号及び受光された散乱光に関する第1散乱光信号を取得するステップと、分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して第2測定試料を調製するステップと、調製された第2測定試料に光を照射するステップと、光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第2蛍光信号及び受光された散乱光に関する第2散乱光信号を取得するステップと、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出するステップと、検出結果に基づく出力を行うステップと、を有する。
【0025】
本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、通信部と、出力部とを備えるコンピュータに、血液検体から分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して調製された第1測定試料に光を照射したときに生じる蛍光及び散乱光に関する第1蛍光信号及び第1散乱光信号を、前記通信部に受信させるステップと、血液検体から分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して調製された第2測定試料に光を照射したときに生じる蛍光及び散乱光に関する第2蛍光信号及び第2散乱光信号を、前記通信部に受信させるステップと、前記通信部により受信された前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号、並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出するステップと、検出結果に基づく情報を、前記出力部に出力させるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る血液分析装置、血液分析方法、及びコンピュータプログラムによれば、異常リンパ球、芽球、及び異型リンパ球を区別して検出することが可能となる。また、本発明に係る血液分析装置によれば、反応性の異常単核球および腫瘍性の異常単核球を区別して検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態に係る血液分析装置の外観を示す斜視図。
【図2】実施の形態に係る測定ユニットの構成を示すブロック図。
【図3】光学検出器の概要構成を示す模式図。
【図4】実施の形態に係る情報処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図5】実施の形態に係る血液分析装置の検体分析動作の手順を示すフローチャート。
【図6】実施の形態に係る血液分析装置の第1測定工程での動作手順を示すフローチャート。
【図7】実施の形態に係る血液分析装置の第1データ処理の手順を示すフローチャート。
【図8】第1測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラム。
【図9】実施の形態に係る血液分析装置の第2測定工程での動作手順を示すフローチャート。
【図10】実施の形態に係る血液分析装置の第2データ処理の手順を示すフローチャート。
【図11】第2測定データにおける前方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラム。
【図12】第2測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラム。
【図13】第2測定データにおける前方散乱光強度及び側方散乱光強度のスキャッタグラム。
【図14A】急性骨髄性白血病患者から採取した血液検体を測定したときのスキャッタグラムの例。
【図14B】慢性リンパ性白血病患者から採取した血液検体を測定したときのスキャッタグラムの例。
【図14C】異型リンパ球を含有する血液検体を測定したときのスキャッタグラムの例。
【図14D】正常な血液検体を測定したときのスキャッタグラムの例。
【図15】実施の形態に係る血液分析装置の分析結果画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
[血液分析装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る血液分析装置の外観を示す斜視図である。本実施の形態に係る血液分析装置1は、血液検体に含まれる白血球、赤血球、血小板等を検出し、各血球を計数する多項目血球分析装置である。図1に示すように、血液分析装置1は、測定ユニット2と、測定ユニット2の前面側に配置された検体搬送ユニット4と、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4を制御可能な情報処理ユニット5とを備えている。
【0030】
患者から採取された末梢血である血液検体は、検体容器(採血管)に収容される。複数の検体容器がサンプルラックに保持され、このサンプルラックが検体搬送ユニット4により搬送されて、血液検体が測定ユニット2へ供給される。
【0031】
<測定ユニットの構成>
測定ユニットの構成について説明する。図2は、測定ユニットの構成を示すブロック図である。図2に示すように、測定ユニット2は、検体である血液を検体容器(採血管)Tから吸引する検体吸引部21と、検体吸引部21により吸引した血液から測定に用いられる測定試料を調製する試料調製部22と、試料調製部22により調製された測定試料から血球を検出する検出部23とを有している。また、測定ユニット2は、検体搬送ユニット4のラック搬送部43によって搬送されたサンプルラックLに収容された検体容器Tを測定ユニット2の内部に取り込むための取込口(図1参照)と、サンプルラックLから検体容器Tを測定ユニット2の内部に取り込み、検体吸引部21による吸引位置まで検体容器Tを搬送する検体容器搬送部25とをさらに有している。
【0032】
図2に示すように、検体吸引部21は、吸引管211を有している。また、検体吸引部21はシリンジポンプを備えている。また、吸引管211は、鉛直方向に移動可能であり、下方に移動されることにより、吸引位置まで搬送された検体容器T内の血液を吸引するように構成されている。
【0033】
試料調製部22は、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2を備えている。吸引管211は、シリンジポンプによって検体容器Tから所定量の全血検体を吸引し、吸引された検体は、第1混合チャンバMC1と第2混合チャンバMC2の位置へ移送され、前記シリンジポンプによって、それぞれのチャンバMC1,MC2へ所定量の全血検体を分配供給する。また、試料調製部22は、第1混合チャンバMC1及び第2混合チャンバMC2を加温するためのヒータHを備えている。
【0034】
試料調製部22は、第1試薬を収容する試薬容器221a、第2試薬を収容する試薬容器221b、第3試薬を収容する試薬容器222a、第4試薬を収容する試薬容器222b、及びシース液(希釈液)を収容する試薬容器223にチューブを介して接続されている。また、試料調製部22はコンプレッサに接続されており、当該コンプレッサにより発生される圧力により試薬容器221a,221b,222a,222b,223からそれぞれの試薬を分取することが可能となっている。
【0035】
第1試薬は、白血球を少なくとも4つのサブクラスに分類するための溶血剤である。この溶血剤としては、界面活性剤の中でも特に溶血力が強いといわれているカチオン性界面活性剤を含むものを使用する。この溶血剤を使用することで、赤血球を溶血させ、正常な白血球及び異常単核球(異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球)の細胞膜に損傷を与えることができる。このため、正常白血球及び異常単核球は、後述する蛍光色素により染色されやすくなる。
【0036】
ここで、カチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩型界面活性剤又はピリジニウム塩型界面活性剤が好ましい。より具体的には、構造式(I)又は(II)で表される全炭素数9〜30の界面活性剤が挙げられる。
【化1】

【化2】

(式(I)及び(II)において、R1は炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基、R2およびR3は炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基、R4は炭素数1〜4のアルキルおよびアルケニル基又はベンジル基、Xはハロゲン原子である。)
【0037】
R1としては、炭素数が6、8、10、12及び14のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、特に直鎖のアルキル基が好ましい。より具体的なR1としてはオクチル基、デシル基、及びドデシル基が挙げられる。また、R2およびR3としては、特にメチル基、エチル基、及びプロピル基が好ましい。また、R4としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が好ましい。
【0038】
また、第1試薬にはノニオン性界面活性剤をさらに含んでもよい。ノニオン性界面活性剤としては、以下の構造式(III)で示されるポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤が好ましい。
【化3】

(式中、R1は炭素数8〜25のアルキル、アルケニル又はアルキニル基;R2はO、
【化4】

またはCOO;nは10〜50の整数を表す。)で表されるポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤を用いるのが、好ましい。
【0039】
なお、第1試薬は、上述のカチオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤以外の成分を含むことができる。溶血剤に含むことができるその他の成分としては、例えば、有機酸、緩衝剤等が挙げられる。
【0040】
ここで、有機酸としては、分子内に少なくとも1つの芳香環を有する有機酸又はその塩が好ましい。より具体的には、安息香酸、フタル酸、馬尿酸、サリチル酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びそれらのその塩等が挙げられる。
【0041】
また、緩衝剤としては、例えば、クエン酸塩、HEPES及びリン酸塩等が挙げられる。なお、緩衝剤としては、溶血剤のpHを、4.5〜11.0、好ましくは5.0〜10.0に保つ緩衝剤が好ましい。
【0042】
上述した第1試薬を使用することで、正常白血球及び異常単核球は、後述する蛍光色素により染色されやすくなり、さらに正常白血球は、リンパ球、単球、好酸球、好酸球以外の顆粒球の間で大きさ等に差異が生じるようになる。このため、血球由来の蛍光信号(蛍光強度)と散乱光信号(散乱光強度)に基づいて、正常白血球を少なくとも4つのサブクラスに分類すると共に、異常単核球を検出することができる。
【0043】
また、第1試薬としては、市販の白血球分類用の溶血試薬を用いることもできる。市販の白血球分類用の溶血試薬としては、例えば、シスメックス(株)製のストマトライザー4DLが挙げられる。ストマトライザー4DLは、上述のカチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤と有機酸とを含み、上述のpH範囲内の溶血剤である。
【0044】
第2試薬は、血液試料中の有核細胞を蛍光染色するための試薬である。かかる第2試薬には、核酸を染色するための蛍光色素が含有されている。このような色素を用いることにより、核酸を持たない赤血球はほとんど染色されず、核酸を有する白血球及び有核赤血球等の有核の血球が染色される。なお、核酸を染色できる蛍光色素は、光源から照射される光によって適宜選択することができる。
【0045】
具体的な核酸を染色できる蛍光色素としては、例えば、プロピジウムアイオダイド、エチジウムブロマイド、エチジウム−アクリジンヘテロダイマー、エチジウムジアジド、エチジウムホモダイマー−1、エチジウムホモダイマー−2、エチジウムモノアジド、トリメチレンビス[[3‐[[4‐[[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]メチレン]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐1‐イル]プロピル]ジメチルアミニウム]・テトラヨージド(TOTO−1)、4‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐2(3H)‐イリデン)メチル]‐1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]キノリニウム・ジヨージド(TO−PRO−1)、N,N,N',N'‐テトラメチル‐N,N'‐ビス[3‐[4‐[3‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]‐2‐プロペニリデン]‐1,4‐ジヒドロキノリン‐1‐イル]プロピル]‐1,3‐プロパンジアミニウム・テトラヨージド(TOTO−3)、又は2‐[3‐[[1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐4‐イリデン]‐1‐プロペニル]‐3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム・ジヨージド(TO−PRO−3)、及び以下の構造式(IV)で示される蛍光色素が挙げられる。この中でも、以下構造式(IV)で示される蛍光色素が好ましい。
【0046】
【化5】

(式中、R1及びR4は、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル基、エーテル基を有するアルキル基、エステル基を有するアルキル基、又は置換基を有しても良いベンジル基であり、;R2及びR3は、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアルコキシ基であり;Zは硫黄原子、酸素原子、又はメチル基を有する炭素原子であり;nは0,1,2又は3であり;X−はアニオンである。)
【0047】
ここで、構造式(IV)中、R1及びR4のいずれか一方が炭素数6〜18のアルキル基の場合、他方は水素原子又は炭素数6未満のアルキル基であることが好ましい。炭素数が6〜18のアルキル基としては、炭素数6、8又は10のアルキル基が好ましい。R1及びR4のベンジル基の置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数2〜20のアルキニル基が挙げられ、特にメチル基又はエチル基が好ましい。R2及びR3のアルケニル基としては、炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられる。R2及びR3のアルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられ、特にメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。X−におけるアニオンとしては、F−、Cl−、Br−、I−のようなハロゲンイオン、CF3SO3−、BF4−などが挙げられる。
【0048】
上記の核酸を染色できる蛍光色素の第2試薬中での濃度は、蛍光色素の種類により適宜設定することができる。例えば、構造式(IV)で示される蛍光色素の濃度としては、0.2〜0.6pg/μLが好ましく、特に0.3〜0.5pg/μLが好ましい。なお、第2試薬は、核酸を染色できる蛍光色素を1種類又は2種類以上含むこともできる。
【0049】
また、第2試薬としては、市販の白血球分類用の染色試薬を用いることもできる。市販の白血球分類用の染色試薬としては、例えば、シスメックス(株)製のストマトライザー4DSが挙げられる。ストマトライザー4DSは、上述の構造式(IV)で示される蛍光色素を含む染色試薬である。
【0050】
シース液は後述するシースフローセルへと供給される液体である。かかるシース液は、希釈液としても使用される。このシース液としては、例えばシスメックス(株)製セルパック(II)が挙げられる。
【0051】
第3試薬は、異常リンパ球、異型リンパ球、及び芽球を区別して検出するため溶血剤である。第3試薬としては、ノニオン性界面活性剤を含み、カチオン性界面活性剤を実質的に含まないものが使用できる。この溶血剤を使用することで、赤血球を溶血し、正常白血球及び異常単核球(異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球)の細胞膜に損傷を与えることができる。このため、正常白血球及び異常単核球は後述する蛍光色素により染色されやすくなる。
【0052】
なお、「異常リンパ球(abnormal lymphocyte)」とは腫瘍性の成熟リンパ球を指す。この異常リンパ球は、慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫等の疾患のある患者の末梢血中に出現する。また、「異型リンパ球(atypical lymphocyte)」とは、抗原刺激により活性化したリンパ球で、刺激に反応して形態変化したものを指す。この異型リンパ球は、ウイルス感染症、薬物アレルギー等の疾患のある患者の末梢血中に出現する。異型リンパ球は反応性の異常単核球である。
【0053】
また、「芽球」とは、骨髄芽球(myeloblast)及びリンパ芽球(lymphblast)等の未成熟な白血球である腫瘍性の幼若単核球を指す。骨髄芽球は、急性骨髄性白血病の患者の末梢血中に出現し、リンパ芽球は、急性リンパ性白血病の患者の末梢血中に出現する。なお、異常リンパ球および芽球を含む腫瘍性の異常単核球は、造血器官の腫瘍に起因する異常単核球である。
【0054】
ここで、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤が好ましい。具体的なポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤としては、以下の構造式(V)
R1−R2−(CH2CH2O)n−H (V)
(式中、R1は炭素数9〜25のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であり、R2は−O−、−COO−又は
【化6】

であり、nは10〜40の整数である)
で示されるものが挙げられる。
【0055】
上記の構造式(V)で表される具体的な界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(16)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルなど挙げられ、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテルが好ましい。なお、第3試薬は、界面活性剤を1種類又は2種類以上含むことができる。
【0056】
第3試薬に含まれる界面活性剤の濃度は、界面活性剤の種類、溶血剤の浸透圧等に応じて適宜選択できる。例えば、界面活性剤がポリオキシエチレンオレイルエーテルである場合、第3試薬に含まれる界面活性剤の濃度は、0.5〜50.0g/Lであり、好ましくは1.0〜20.0g/Lである。
【0057】
なお、第3試薬は、溶血した赤血球を十分に収縮させて測定に影響をおよぼさないゴースト集団にするために、上述のノニオン性界面活性剤以外に可溶化剤を含むことができる。この可溶化剤は、ノニオン性界面活性剤による赤血球の溶血作用を補助するために用いられる。第3試薬に含まれる可溶化剤としてはアニオン性界面活性剤を用いることができ、サルコシン誘導体、コール酸誘導体、メチルグルカンアミド、n−オクチルβ−グルコシド、シュークロースモノカプレート、N−ホルミルメチルロイシルアラニンなどが挙げられ、特にサルコシン誘導体が好ましい。なお、第3試薬は、可溶化剤を1種類又は2種類以上含むことができる。
【0058】
サルコシン誘導体としては、以下の構造式(VI)
【化7】

(式中、R1はC10−22のアルキル基であり、nは1〜5である。)
で示される化合物及びその塩が挙げられる。具体的なサルコシン誘導体としては、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム、ラウロイルサルコシンなどが挙げられ、特にN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムが好ましい。
【0059】
コール酸誘導体としては、以下の構造式(VII)
【化8】

(式中、R1は水素原子又は水酸基である。)
で示される化合物及びその塩が挙げられる。具体的なコール酸誘導体としては、CHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、CHAPSO([(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート)などが挙げられる。
【0060】
メチルグルカンアミドとしては、以下の構造式(VIII)
【化9】

(式中、nは5〜7である。)
で示される化合物が挙げられる。具体的なメチルグルカンアミドとしては、MEGA8(オクタノイル−N−メチルグルカミド)、MEGA9(ノナノイル−N−メチルグルカミド)、MEGA10(デカノイル−N−メチルグルカミド)などが挙げられる。
【0061】
第3試薬に含まれる可溶化剤の濃度は、用いる可溶化剤の種類に応じて適宜選択できる。例えば、可溶化剤としてサルコシン誘導体を用いる場合、第3試薬に含まれる可溶化剤の濃度は、0.05〜3.0g/Lであり、好ましくは0.1〜1.0g/Lである。コール酸誘導体を用いる場合、第3試薬に含まれる可溶化剤の濃度は、0.1〜10.0g/Lであり、好ましくは0.2〜2.0g/Lである。メチルグルカンアミドを用いる場合、第3試薬に含まれる可溶化剤の濃度は、1.0〜8.0g/Lであり、好ましくは2.0〜6.0g/Lである。n−オクチルβ−グルコシド、シュークロースモノカプレート、N−ホルミルメチルロイシルアラニンを用いる場合、第3試薬に含まれる可溶化剤の濃度は、0.01〜50.0g/Lであり、好ましくは0.05〜30.0g/Lである。
【0062】
第3試薬のpHは、5.0〜9.0が好ましく、より好ましくは6.5〜7.5、さらに好ましくは6.8〜7.3である。第3試薬のpHは、緩衝剤又はpH調整剤で調整できる。緩衝剤としては、例えばHEPES、MOPS(3-morpholinopropanesulfonic acid)又はMOPSO(2-Hydroxy-3-morpholinopropanesulfonic acid)などのグッド緩衝剤、リン酸緩衝剤などが挙げられる。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸などが挙げられる。
【0063】
第3試薬の浸透圧は、上述の界面活性剤の種類及び第3試薬中の濃度に応じて、適宜設定することができる。具体的な第3試薬の浸透圧としては、10〜600mOsm/kgが挙げられる。また、第3試薬の浸透圧は、糖類、アミノ酸、塩化ナトリウムなどを第3試薬に添加することにより調整してもよい。具体的な糖類としては、単糖類、多糖類、糖アルコールなどが挙げられる。単糖類としては、グルコース、フルクトースが好ましい。多糖類としては、アラビノースが好ましい。糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、リビトールが好ましい。ここで、第3試薬に添加する糖類としては、糖アルコールが好ましく、特にキシリトールが好ましい。キシリトールを第3試薬に添加する場合、キシリトールの第3試薬中の濃度は、1.0〜75.0g/L、特に20.0〜50.0g/Lが好ましい。具体的なアミノ酸としては、バリン、プロリン、グリシン、アラニンなどが挙げられ、特にグリシン、アラニンが好ましい。グリシンを第3試薬に添加する場合、グリシンの第3試薬中の濃度は、1.0〜50.0g/L、特に10.0〜30.0g/Lが好ましい。
【0064】
また、第3試薬の電気伝導度は、0.01〜3mS/cmが好ましく、特に0.1〜2mS/cmが好ましい。さらに第3試薬には、キレート剤又は防腐剤などを添加することもできる。キレート剤としては、EDTA−2K、EDTA−3Naなどが挙げられる。防腐剤としては、Proxel GXL(Avecia社製)、マテリアルTKM−A(株式会社エーピーアイ コーポレーション)などが挙げられる。
【0065】
上述した第3試薬を使用することで、正常白血球及び異常単核球は、後述する蛍光色素により染色されやすくなり、さらに異常単核球は、異常リンパ球、異型リンパ球、芽球の間で染色の度合い及び細胞の大きさ等に差異が生じる。このため、血球由来の蛍光信号(蛍光強度)と散乱光信号(散乱光強度)に基づいて、異常単核球を異常リンパ球、異型リンパ球、芽球に区別して検出することができる。
【0066】
第4試薬は、血液試料中の有核細胞を蛍光染色するための試薬である。かかる第4試薬には、核酸を染色できる蛍光色素が含有されている。この蛍光色素としては、核酸を蛍光染色できるものであれば特に限定されない。このような色素を用いることにより、核酸を持たない赤血球はほとんど染色されず、核酸を有する異常リンパ球等の有核の血球は染色される。なお、核酸を染色できる蛍光色素は、光源から照射される光によって適宜選択することができる。核酸を染色できる蛍光色素としては、例えば、プロピジウムアイオダイド、エチジウムブロマイド、エチジウム−アクリジンヘテロダイマー、エチジウムジアジド、エチジウムホモダイマー−1、エチジウムホモダイマー−2、エチジウムモノアジド、トリメチレンビス[[3‐[[4‐[[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]メチレン]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐1‐イル]プロピル]ジメチルアミニウム]・テトラヨージド(TOTO−1)、4‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐2(3H)‐イリデン)メチル]‐1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]キノリニウム・ジヨージド(TO−PRO−1)、N,N,N',N'‐テトラメチル‐N,N'‐ビス[3‐[4‐[3‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]‐2‐プロペニリデン]‐1,4‐ジヒドロキノリン‐1‐イル]プロピル]‐1,3‐プロパンジアミニウム・テトラヨージド(TOTO−3)、又は2‐[3‐[[1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐4‐イリデン]‐1‐プロペニル]‐3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム・ジヨージド(TO−PRO−3)、及び以下の構造式(IX)〜(XXII)で示される蛍光色素が挙げられる。
【0067】
<構造式(IX)>
【化10】

(式中、R1及びR2は、低級アルキル基であり;nは1又は2であり;X−はアニオンであり;Zは硫黄原子、酸素原子、又は低級アルキル基で置換された炭素原子である)。
【0068】
構造式(IX)中、低級アルキル基とは炭素数1〜6の直鎖又は分枝のアルキル基である。具体的な低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。また、Zとしては、硫黄原子が好ましい。X−におけるアニオンは、ハロゲンイオン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素イオン)、ハロゲン化ホウ素イオン(BF4−、BCl4−、BBr4−など)、リン化合物イオン、ハロゲン酸素酸イオン、フルオロ硫酸イオン、メチル硫酸イオン、芳香環ハロゲン或いはハロゲンをもつアルキル基を置換基として有するテトラフェニルホウ素化合物イオンなどが挙げられ、ヨウ素イオンが好ましい。
【0069】
構造式(IX)で示されるもののうち、特に好ましい核酸を染色できる蛍光色素は、次の構造式(X)で示されるNK−321である。
【化11】

【0070】
<構造式(XI)>
【化12】

(式中、R1及びR2は、低級アルキル基であり;nは1又は2であり;X−はアニオンである)。
【0071】
構造式(XI)における低級アルキル基、並びにX−のアニオンは、構造式(IX)と同様である。
【0072】
構造式(XI)で示されるもののうち、特に好ましい核酸を染色できる蛍光色素は、次の構造式(XII)により示される。
【化13】

【0073】
<構造式(XIII)>
【化14】

(式中、R1は水素原子又は低級アルキル基であり;R2及びR3は水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり;R4は水素原子、アシル基又は低級アルキル基であり;R5は水素原子又は置換されていてもよい低級アルキル基であり;Zは硫黄原子、酸素原子、又は低級アルキル基で置換された炭素原子であり;nは1又は2であり;X−はアニオンである)。
【0074】
構造式(XIII)における低級アルキル基、並びにX−のアニオンは、構造式(IX)と同様である。低級アルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。具体的な低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。アシル基としては、脂肪族カルボン酸から誘導されたアシル基が好ましい。具体的なアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられ、特にアセチル基が好ましい。置換されていてもよい低級アルキル基の置換基としては、水酸基及びハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)が挙げられる。置換されていてもよい低級アルキル基は、1〜3個の置換基で置換されることができる。置換されていてもよい低級アルキル基としては、特に1個の水酸基で置換された低級アルキル基が好ましい。なお、Zとしては硫黄原子が好ましく、X−は、臭素イオン又はBF4−が好ましい。
【0075】
構造式(XIII)で示されるもののうち、特に好ましい核酸を染色できる蛍光色素は、以下の3つの構造式(XIV)〜(XVI)により示される。
【化15】

【0076】
【化16】

【0077】
【化17】

【0078】
<構造式(XVII)>
【化18】

(式中、X1及びX2は、独立してCl又はIである)
【0079】
<構造式(XVIII)>
【化19】

【0080】
<構造式(XIX)>(NK−1570)
【化20】

【0081】
<構造式(XX)>(NK−1049)
【化21】

【0082】
<構造式(XXI)>(NK−98)
【化22】

【0083】
<構造式(XXII)>(NK−141)。
【化23】

【0084】
上記の核酸を染色できる蛍光色素のうち、第4試薬に含まれる特に好ましい蛍光色素は、次の構造式(XXIII)で示されるNK−321である。
【化24】

【0085】
上記の核酸を染色できる蛍光色素の第4試薬中の濃度は、10〜500mg/Lが好ましく、特に30〜100mg/Lが好ましい。なお、第4試薬は、核酸を染色できる蛍光色素を1種類又は2種類以上含むことができる。
【0086】
検出部23は、第1測定及び第2測定を行うことができる光学検出器Dを有している。第1測定では、血液検体中に存在する白血球(正常白血球)がLYMPH(リンパ球)、EO(好酸球)、NEUT(好中球)とBASO(好塩基球)とによってなる血球群、及びMONO(単球)の4つのサブクラスに分類される。かかる第1測定においては、血液検体、第1試薬、及び第2試薬が混合された測定試料(第1測定試料)が光学検出器Dに供給され、このときに光学検出器Dによって光学情報(蛍光強度、前方散乱光強度及び側方散乱光強度)が検出される。第1測定によって得られた光学情報は情報処理ユニット5に供給され、これによって血液検体中の正常白血球が4分類される。また、情報処理ユニット3は、第1測定によって得られた光学情報に基づいて、後述するように血液検体中に異常単核球(異常リンパ球、異型リンパ球、及び芽球からなるグループ)を検出することができる。
【0087】
第2測定では、血液検体中の異常リンパ球及び芽球が検出される。かかる第2測定においては、血液検体、第3試薬、及び第4試薬が混合された測定試料(第2測定試料)が光学検出器Dに供給され、このときに光学検出器Dによって光学情報(蛍光強度、前方散乱光強度及び側方散乱光強度)が検出される。第2測定によって得られた光学情報は情報処理ユニット5に供給され、これによって第1測定によって検出された血液検体中の異常単核球が異常リンパ球、異型リンパ球、及び芽球の何れであるかが特定される。
【0088】
図3は、光学検出器Dの概要構成を示している。この光学検出器Dは、フローセル231に測定試料及びシース液を送り込み、フローセル231中に液流を発生させ、フローセル231内を通過する液流に含まれる血球に半導体レーザ光を照射して測定するものであり、シースフロー系232、ビームスポット形成系233、前方散乱光受光系234、側方散乱光受光系235、蛍光受光系236を有している。
【0089】
シースフロー系232は、フローセル231内に測定試料をシース液に包まれた状態で流すように構成されている。ビームスポット形成系233は、半導体レーザ237から照射された光が、コリメータレンズ238とコンデンサレンズ239とを通って、フローセル231に照射されるよう構成されている。また、ビームスポット形成系233は、ビームストッパ240も備えている。
【0090】
前方散乱光受光系234は、前方への散乱光を前方集光レンズ241によって集光し、ピンホール242を通った光をフォトダイオード(前方散乱光受光部)243で受光するように構成されている。
【0091】
側方散乱光受光系235は、側方への散乱光を側方集光レンズ244にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラー245で反射させ、フォトダイオード(側方散乱光受光部)246で受光するよう構成されている。
【0092】
光散乱は、光の進行方向に血球のような粒子が障害物として存在すると、粒子により光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさ及び材質に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度及び顆粒の量)に依存する。したがって、これら散乱光強度は、白血球の分類、異常単核球の検出、及び芽球の検出その他の測定に利用することができる。
【0093】
蛍光受光系236は、ダイクロイックミラー245を透過した光をさらに分光フィルタ247に通し、アバランシェフォトダイオード(蛍光受光部)248で受光するよう構成されている。
【0094】
蛍光物質により染色された血球に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する情報を得ることができる。したがって、蛍光強度の差は、白血球の分類、異常単核球の検出、異常リンパ球の検出、芽球の検出等に利用することができる。
【0095】
次に、図2に戻って、検体容器搬送部25の構成について説明する。検体容器搬送部25は、検体容器Tを把持可能なハンド部25aを備えている。ハンド部25aは、互いに対向して配置された一対の把持部材を備えており、この把持部材を互いに近接及び離反させることが可能である。かかる把持部材を、検体容器Tを挟んだ状態で近接させることにより、検体容器Tを把持することができる。また、検体容器搬送部25は、ハンド部25aを上下方向及び前後方向(Y方向)に移動させることができ、さらに、ハンド部25aを揺動させることができる。これにより、サンプルラックLに収容され、検体供給位置43aに位置した検体容器Tをハンド部25aにより把持し、その状態でハンド部25aを上方に移動させることによりサンプルラックLから検体容器Tを抜き出し、ハンド部25aを揺動させることにより、検体容器T内の検体を撹拌することができる。
【0096】
また、検体容器搬送部25は、検体容器Tを挿入可能な穴部を有する検体容器セット部25bを備えている。上述したハンド部25aによって把持された検体容器Tは、撹拌完了後移動され、把持した検体容器Tを検体容器セット部25bの穴部に挿入する。その後、把持部材を離反させることにより、ハンド部25aから検体容器Tが開放され、検体容器セット部25bに検体容器Tがセットされる。かかる検体容器セット部25bは、ステッピングモータの動力によって、図中Y1及びY2方向へ水平移動可能である。
【0097】
測定ユニット2の内部には、バーコード読取部26が設けられている。検体容器セット部25bは、バーコード読取部26の近傍のバーコード読取位置26a及び検体吸引部21による吸引位置へ移動可能である。検体容器セット部25bがバーコード読取位置26aへ移動したときには、バーコード読取部26により検体バーコードが読み取られる。また、検体容器セット部25bが吸引位置へ移動したときには、検体吸引部21により、セットされた検体容器Tから検体が吸引される。
【0098】
<情報処理ユニットの構成>
次に、情報処理ユニット5の構成について説明する。情報処理ユニット5は、コンピュータにより構成されている。図4は、情報処理ユニット5の構成を示すブロック図である。情報処理ユニット5は、コンピュータ5aによって実現される。図4に示すように、コンピュータ5aは、本体51と、画像表示部52と、入力部53とを備えている。本体51は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、バス51jによって接続されている。
【0099】
CPU51aは、RAM51cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような血液分析用並びに測定ユニット2及び検体搬送ユニット4の制御用のコンピュータプログラム54aを当該CPU51aが実行することにより、コンピュータ5aが情報処理ユニット5として機能する。
【0100】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する処理をCPU51aに実行させるためのコンピュータプログラム54aも、このハードディスク51dにインストールされている。また、このコンピュータプログラム54aは、イベントドリブン型のコンピュータプログラムである。
【0101】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体54に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体54には、コンピュータを情報処理ユニット5として機能させるためのコンピュータプログラム54aが格納されており、コンピュータ5aが当該可搬型記録媒体54からコンピュータプログラム54aを読み出し、当該コンピュータプログラム54aをハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0102】
また、ハードディスク51dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム54aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0103】
入出力インタフェース51fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース51fには、キーボード及びマウスからなる入力部53が接続されており、ユーザが当該入力部53を使用することにより、コンピュータ5aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース51fは、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4に接続されている。これにより、情報処理ユニット5は、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4のそれぞれを制御可能となっている。
【0104】
通信インタフェース51gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース51gはLANを介してホストコンピュータ6に接続されている(図2参照)。コンピュータ5aは、通信インタフェース51gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続されたホストコンピュータ6との間でデータの送受信が可能である。
【0105】
[血液分析装置の測定動作]
以下、本実施の形態に係る血液分析装置1の動作について説明する。血液分析装置1は、以下に示すような検体分析動作を実行する。図5は、血液分析装置1による検体分析動作の手順を示すフローチャートである。
【0106】
図5に示すように、検体分析動作においては、まず、検体の初検(1回目の測定)が行われる。初検は、測定ユニット2により第1測定試料を測定する第1測定工程(ステップS1)と、第1測定工程によって得られた測定データを情報処理ユニット5により解析処理する第1データ処理(ステップS2)とによって構成される。
【0107】
まず、検体容器Tを保持したサンプルラックLがオペレータによって検体搬送ユニット4に載置される。検体搬送ユニット4によってサンプルラックLが搬送され、測定対象の検体が収容されている検体容器Tが検体供給位置43aに位置する。次に、測定ユニット2のハンド部25aにより、当該検体容器Tが把持され、サンプルラックLからこの検体容器Tが取り出される。ハンド部25aはその後揺動運動を行い、検体容器Tの内部の検体が撹拌される。次に、検体容器セット部25bにこの検体容器Tが挿入され、Y方向へと検体容器セット部25bが移動し、バーコード読取部26による検体バーコード読み取りを行った後、吸引位置に到達する。その後、以下の第1測定工程が実行される。
【0108】
第1測定工程
まず、第1測定工程について説明する。血液分析装置1は、第1測定工程では、全血検体(17μL)と第1試薬(1mL)と第2試薬(20μL)とを混合して第1測定試料を作成し、この第1測定試料を光学検出器Dにてフローサイトメトリー法によって測定する。ここで第1試薬としては、上述のストマトライザー4DLを使用し、第2試薬としては、上述のストマトライザー4DSを用いる。
【0109】
図6は、第1測定工程での血液分析装置1の動作手順を示すフローチャートである。まず、CPU51aは、検体吸引部21を制御して、吸引管211により検体容器Tの全血検体を定量吸引する(ステップS101)。ステップS101の処理は、具体的には、吸引管211が検体容器Tの中に挿入され、シリンジポンプの駆動によって、全血検体が定量(80.0μL)吸引される。
【0110】
次に、CPU51aは、測定ユニット2を制御することにより、試薬容器221aから第1試薬(1mL)を、試薬容器221bから第2試薬(20μL)を、吸引管211から全血検体(17μL)を第1混合チャンバMC1にそれぞれ供給する(ステップ102)。
【0111】
次に、CPU51aは、第1混合チャンバMC1への第1試薬、第2試薬及び全血検体の供給から21.8秒間経過したか否かを判定し(ステップS103)、21.8秒間待機する。ここで、ヒータにより第1混合チャンバMC1は41℃に加温されており、これにより、第1試薬と第2試薬と血液検体との混合液が41℃で21.8秒加温され、第1測定試料が調製される。
【0112】
そして、第1測定試料を対象に光学検出器Dにて光学測定が行われる(ステップS104)。ステップS104の処理においては、具体的には、第1測定試料とシース液とが同時に光学検出器Dのフローセル231に供給され、そのときの前方散乱光がフォトダイオード243で受光され、側方散乱光がフォトダイオード246で受光され、蛍光がアバランシェフォトダイオード248で受光される。このような光学検出器Dの各受光素子により出力される出力信号(アナログ信号)は、A/D変換器によりデジタル信号に変換され、所定の信号処理が施されてデジタルデータである第1測定データに変換され、情報処理ユニット5にこの第1測定データが送信される。この信号処理においては、第1測定データに含まれる特徴パラメータとして、前方散乱光信号(前方散乱光強度)、側方散乱光信号(側方散乱光強度)、及び蛍光信号(蛍光強度)が得られる。これにより、第1測定工程が終了する。また、後述するように、情報処理ユニット5のCPU51aは、第1測定データに対して所定の解析処理を実行することにより、NEUT、LYMPH、EO、BASO、MONO、及びWBC等の数値データを含む分析結果データを生成し、ハードディスク51dに分析結果データを記憶する。
【0113】
第1データ処理
次に、第1データ処理について説明する。図7は、本実施の形態に係る血液分析装置の第1データ処理の手順を示すフローチャートである。血液分析装置1の情報処理ユニット5は、測定ユニット2から第1測定データを受信する(ステップS151)。CPU51aによって実行されるコンピュータプログラム54aはイベントドリブン型のプログラムであり、第1測定データを受信するイベントが発生すると、ステップS152の処理が呼び出される。
【0114】
CPU51aは、第1測定データを用いて正常白血球を複数のサブクラスに分類し、各サブクラスに属する血球の数を計数する(ステップS152)。また、CPU51aは、第1測定データを用いて異常単核球の細胞群(以下、「異常単核球群」という。)を検出し、検出された異常単核球群に含まれる血球数CN1を計数する(ステップS153)。
【0115】
ステップS152及びS153の処理について詳しく説明する。図8は、第1測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムである。図8に示す第1測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムでは、幼若顆粒球のクラスター、好酸球のクラスター、好中球と好塩基球とによってなる血球群のクラスター、リンパ球のクラスター、及び単球のクラスターが現れる。図8のスキャッタグラムに示されるように、第1測定データの側方散乱光強度及び蛍光強度を利用することにより、正常白血球を、好酸球、好中球と好塩基球とによってなる血球群、リンパ球、及び単球に分類することができる。また、ここでは説明を省略するが、血液分析装置1は、血液検体を所定の試薬と混合して好中球と好塩基球とを個別に検出するための測定試料を調整し、この測定試料を光学検出器Dで測定することによって得られた測定データを用いて、好中球と好塩基球とを個別に検出することができる。血液分析装置1は、こうして得られた好中球及び好塩基球の検出結果と、上記の第1測定データの解析によって得られた4つのサブクラスの検出結果とを用いて、血液検体に含まれる正常白血球を5つのサブクラス(好酸球、好中球、好塩基球、リンパ球、及び単球)に分類する。ステップS152の処理においては、CPU51aは、第1測定データの前方散乱光強度、側方散乱光強度及び蛍光強度を用いて、成熟した白血球をサブクラスに分類し、それぞれのサブクラスに属する血球数を計数する。
【0116】
また、本実施の形態においては、図8において破線で示す側方散乱光強度及び蛍光強度の範囲を、異常単核球群の検出領域A1として定める。図8に示すように、検出領域A1は、リンパ球の出現領域よりも蛍光強度が高い部分に設けられる。本願発明者らは、臨床検体を使用した実験を行い、実験結果の詳細な検討を実施した結果、この検出領域A1において、異型リンパ球、異常リンパ球、リンパ芽球及び骨髄芽球の何れもが出現することを見出した。したがって、この検出領域A1を用いることで、異常単核球の有無を精度良く検出することができるが、検出領域A1では、検出された異常単核球が異常リンパ球、芽球、及び異型リンパ球の何れであるかを特定することはできないことが分かった。ステップS153においては、上述した検出領域A1の内部に出現する細胞群が異常単核球群として検出され、血球数CN1が計数される。
【0117】
次にCPU51aは、CN1が所定の閾値T1より大きいか否かを判定する(ステップS154)。閾値T1は、血液検体中に異常単核球が存在するか否かを判定するための基準値である。CN1が閾値T1よりも大きい場合には、血液検体中に異常単核球が存在すると判定され、CN1が閾値T1以下の場合には、血液検体中に異常単核球が存在しないと判定される。
【0118】
ステップS154において、CN1≦T1の場合には(ステップS154においてNO)、CPU51aは、RAM51cに設けられた再検フラグに「0」をセットする(ステップS155)。ここで、再検フラグは再検(血液分析装置1による2回目の検体測定)の要否を示す情報であり、「1」がセットされている場合には再検が必要であることを示し、「0」がセットされている場合には再検が不要であることを示す。その後、CPU51aは、ステップS157へ処理を移す。
【0119】
一方、ステップS154において、CN1>T1の場合には(ステップS154においてYES)、CPU51aは、再検が必要と判断し、RAM51cに設けられた再検フラグに「1」をセットする(ステップS156)。その後、CPU51aは、ステップS157へ処理を移す。
【0120】
CPU51aは、上述のようにして得た分析結果(再検フラグを含む)をハードディスク51dに格納する(ステップS157)。次にCPU51aは、ハードディスク51dに記憶した分析結果を示す分析結果画面を画像表示部52に表示させ(ステップS158)、第1データ処理を終了する。
【0121】
図5を参照し、検体分析動作について説明する。上記のような初検を終了した後、血液分析装置1のCPU51aは、再検の要否結果を確認する(ステップS3)。検体の再検が不要な場合、即ち、再検フラグに「0」がセットされている場合には(ステップS3においてNO)、血液分析装置1は検体分析動作を終了する。一方、検体の再検が必要な場合、即ち、再検フラグに「1」がセットされている場合には(ステップS3においてYES)、血液分析装置1は、検体の再検を実行する。再検は、初検が実施された血液検体が、異常リンパ球を含んでいるか否か、芽球を含んでいるか否か、及び異型リンパ球を含んでいるか否かを判定するための動作である。かかる再検は、ステップS1と同様の第1測定工程(ステップS4)と、測定ユニット2により第2測定試料を測定する第2測定工程(ステップS5)と、第1測定工程及び第2測定工程によって得られた測定データを情報処理ユニット5により解析処理する第2データ処理(ステップS6)とによって構成される。なお、再検における第1測定工程は、初検における第1測定工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0122】
第2測定工程
次に、第2測定工程について説明する。この第2測定工程は、第1測定工程と時間的に一部重複して実行される。血液分析装置1は、第2測定工程では、全血検体(17.0μL)と第3試薬(1000μL)と第4試薬(20μL)とを混合して第2測定試料を作成し、この第2測定試料を光学検出器Dにてフローサイトメトリー法によって測定する。
【0123】
ここで、本実施の形態においては、第3試薬として、以下に示される試薬が用いられる。
<第3試薬>
MOPS 2.09g/L
ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル 1.25g/L
N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 0.268g/L
EDTA−2K 0.5g/L
上記各成分を混合しさらにNaOHを添加してpHを7.3に調製した。第3試薬の浸透圧は37mOsm/Kg、電気伝導度は0.745mS/cmであった。
<第4試薬>
NK−321
50mg/L
エチレングリコールに溶解されたNK−321(50mg/L)を第4試薬とした。
【0124】
図9は、第2測定工程での血液分析装置1の動作手順を示すフローチャートである。まず、CPU51aは測定ユニット2を制御することにより、試薬容器222aから第3試薬(1000μL)を、試薬容器222bから第4試薬(20μL)を、吸引管211から全血検体(17.0μL)を、第1混合チャンバMC1にそれぞれ供給する(ステップS201)。このステップS201において第1混合チャンバMC1に供給される検体は、上述したステップS101において吸引管211により吸引された全血検体の一部である。つまり、ステップS101においては、第1混合チャンバMC1に供給する検体と、第2混合チャンバMC2に供給される検体とが一度に検体容器Tから吸引される。
【0125】
次に、CPU51aは、第1混合チャンバMC1への第3試薬、第4試薬及び全血検体の供給から18.5秒間経過したか否かを判定し(ステップS202)、18.5秒間待機する。ここで、ヒータにより第1混合チャンバMC1は34.0℃に加温されており、これにより、第3試薬と第4試薬と血液検体との混合液が34.0℃で18.5秒加温され、第2測定試料が調製される。
【0126】
そして、第2測定試料を対象に光学検出器Dにて光学測定が行われる(ステップS203)。ステップS203の処理においては、具体的には、第2測定試料とシース液とが同時に光学検出器Dのフローセル231に供給され、そのときの前方散乱光がフォトダイオード243で受光され、側方散乱光がフォトダイオード246で受光され、蛍光がアバランシェフォトダイオード248で受光される。このような光学検出器Dの各受光素子により出力される出力信号(アナログ信号)は、上述した第1測定工程と同じくデジタル信号に変換され、所定の信号処理が施されてデジタルデータである第2測定データに変換され、情報処理ユニット5にこの第2測定データが送信される。この信号処理においては、第2測定データに含まれる特徴パラメータとして、前方散乱光信号(前方散乱光強度)、側方散乱光信号(側方散乱光強度)、及び蛍光信号(蛍光強度)が得られる。これにより、第2測定工程が終了する。また、後述するように、情報処理ユニット5のCPU51aは、第2測定データに対して所定の解析処理を実行することにより、異常リンパ球、芽球、又は異型リンパ球を検出し、この検出結果を含む分析結果データを生成し、ハードディスク51dに分析結果データを記憶する。
【0127】
第2データ処理
次に、第2データ処理について説明する。図10は、本実施の形態に係る血液分析装置の第2データ処理の手順を示すフローチャートである。血液分析装置1の情報処理ユニット5は、測定ユニット2から第1測定データを受信し(ステップS301)、また第2測定データを受信する(ステップS302)。CPU51aによって実行されるコンピュータプログラム54aはイベントドリブン型のプログラムであり、第1測定データ及び第2測定データを受信するイベントが発生すると、ステップS303の処理が呼び出される。
【0128】
CPU51aは、第1測定データを用いて正常白血球を複数のサブクラスに分類し、各サブクラスに属する血球の数を計数する(ステップS303)。また、CPU51aは、第1測定データを用いて異常単核球の細胞群(以下、「異常単核球群」という。)を検出し、検出された異常単核球群に含まれる血球数CN1を計数する(ステップS304)。ステップS303の処理は上述したステップS152の処理と同様であり、ステップS304の処理は上述したステップS153の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0129】
次にCPU51aは、CN1が所定の閾値T1より大きいか否かを判定する(ステップS305)。閾値T1は、上述したステップS154における閾値T1と同じ基準値である。CN1が閾値T1よりも大きい場合には、血液検体中に異常単核球が存在すると判定され、CN1が閾値T1以下の場合には、血液検体中に異常単核球が存在しないと判定される。
【0130】
ステップS305において、CN1≦T1の場合には(ステップS305においてNO)、CPU51aは、RAM51cに設けられた異常リンパ球フラグ、異型リンパ球フラグ、及び芽球フラグのそれぞれに「0」をセットする(ステップS306)。ここで、異常リンパ球フラグは血液検体における異常リンパ球の有無を示すフラグであり、「1」がセットされている場合には異常リンパ球が存在していることを示し、「0」がセットされている場合には異常リンパ球が存在していないことを示す。また、異型リンパ球フラグは血液検体における異型リンパ球の有無を示すフラグであり、「1」がセットされている場合には異型リンパ球が存在していることを示し、「0」がセットされている場合には異型リンパ球が存在していないことを示す。同じく、芽球フラグは血液検体における芽球の有無を示すフラグであり、「1」がセットされている場合には芽球が存在していることを示し、「0」がセットされている場合には芽球が存在していないことを示す。その後、CPU51aは、ステップS314へ処理を移す。
【0131】
一方、ステップS305において、CN1>T1の場合には(ステップS305においてYES)、CPU51aは、第2測定データを用いて異常リンパ球の細胞群(以下、「異常リンパ球群」という。)を検出し、検出された異常リンパ球群に含まれる血球数CN2を計数する(ステップS307)。
【0132】
ステップS307の処理について詳しく説明する。図11は、第2測定データにおける前方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムであり、図12は、第2測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムである。図11に示す第2測定データにおける前方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムでは、芽球のクラスター、顆粒球(好中球と好酸球と好塩基球とからなる血球群)のクラスター、リンパ球のクラスター、及び単球のクラスターが現れる。また、図12に示す第2測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムでも、芽球のクラスター、顆粒球のクラスター、リンパ球のクラスター、及び単球のクラスターが現れる。
【0133】
本実施の形態においては、図11において破線で示す前方散乱光強度及び蛍光強度の範囲を、異常リンパ球群の検出領域A2として定める。図11に示すように、検出領域A2は、リンパ球及び単球の出現領域よりも蛍光強度が高い部分に設けられる。本願発明者らは、臨床検体を使用した実験を行い、実験結果の詳細な検討を実施した結果、この検出領域A2及び図12に示す領域A21において異常リンパ球が出現し、図11に示す領域A31及び図12に示す領域A32において芽球が出現することを見出した。また、発明者らは、詳細に実験結果を評価した結果、第2測定データにおける前方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラム並びに側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムにおいては、異型リンパ球は、上述した領域A2、A21、A31、及びA32の何れにも出現せず、正常白血球の出現領域に出現することを見出した。したがって、図11に示す領域A2または図12に示す領域A21を用いることで、異常リンパ球を異型リンパ球及び芽球と区別して検出できることが分かった。ステップS307においては、上述した検出領域A2の内部に出現する細胞群が異常リンパ球群として検出され、血球数CN2が計数される。なお、ステップS307においては、図12に示す検出領域A21の内部に出現する細胞群を異常リンパ球群として検出してもよい。
【0134】
次にCPU51aは、CN2が所定の閾値T2より大きいか否かを判定する(ステップS308)。閾値T2は、血液検体中に異常リンパ球が存在するか否かを判定するための基準値である。ステップS308では、CN2が閾値T2よりも大きい場合には、血液検体中に異常リンパ球が存在すると判定され、CN2が閾値T2以下の場合には、血液検体中に異常リンパ球が存在しないと判定される。
【0135】
ステップS308において、CN2>T2の場合には(ステップS308においてYES)、CPU51aは、RAM51cに設けられた異常リンパ球フラグに「1」をセットし、異型リンパ球フラグ、及び芽球フラグのそれぞれに「0」をセットする(ステップS309)。その後、CPU51aは、ステップS314へ処理を移す。
【0136】
一方、ステップS308において、CN2≦T2の場合には(ステップS308においてNO)、CPU51aは、第2測定データを用いて芽球の細胞群(以下、「芽球群」という。)を検出し、検出された芽球群に含まれる血球数CN3を計数する(ステップS310)。
【0137】
ステップS310の処理について詳しく説明する。図13は、第2測定データにおける前方散乱光強度及び側方散乱光強度のスキャッタグラムである。図13に示す第2測定データにおける前方散乱光強度及び側方散乱光強度のスキャッタグラムでは、顆粒球のクラスター、リンパ球のクラスター、及び単球のクラスターが現れる。また、本実施の形態においては、図13において破線で示す前方散乱光強度及び側方散乱光強度の範囲を、芽球群の検出領域A3として定める。図13に示すように、検出領域A3は、リンパ球の出現領域よりも前方散乱光強度が高い部分に設けられる。本願発明者らは、臨床検体を使用した実験を行い、実験結果の詳細な検討を実施した結果、この検出領域A3において芽球が出現し、異常リンパ球及び異型リンパ球が出現しないことを見出した。したがって、検出領域A3を用いることで、芽球を異常リンパ球及び異型リンパ球と区別して検出できることが分かった。ステップS310においては、上述した検出領域A3の内部に出現する細胞群が芽球群として検出され、血球数CN3が計数される。なお、上述したように、図11に示す領域A31および図12に示す領域A32において芽球が出現し、これらの領域には異常リンパ球および異型リンパ球が出現しないことも本願発明者らは見出している。そのため、領域A31または領域A32を用いて、芽球を異常リンパ球および異型リンパ球と区別して検出してもよい。
【0138】
次にCPU51aは、CN3が所定の閾値T3より大きいか否かを判定する(ステップS311)。閾値T3は、血液検体中に芽球が存在するか否かを判定するための基準値である。ステップS311では、CN3が閾値T3よりも大きい場合には、血液検体中に芽球が存在すると判定され、CN3が閾値T3以下の場合には、血液検体中に芽球が存在しないと判定される。また、ステップS311の処理を実行する場合には、既にステップS305において血液検体中に異常単核球が存在すると判定されており、しかもステップS308において血液検体中に異常リンパ球が存在しないと判定されている。このため、ステップS311においてCN3が閾値T3以下の場合には、血液検体中に異型リンパ球が存在すると判定される。
【0139】
換言すれば、ステップS305において血液検体中に異常単核球が存在すると判定された上で、ステップS308又はステップS311において、CN2>T2又はCN3>T3と判定された場合には、血液検体中に存在する異常単核球が腫瘍性の異常単核球(造血器官の腫瘍に起因する異常単核球)であると判定されたことになる。また、ステップS305において血液検体中に異常単核球が存在すると判定された上で、ステップS308及びステップS311において、CN2≦T2であり、且つCN3≦T3と判定された場合には、血液検体中に存在する異常単核球が反応性のものであると判定されたことになる。
【0140】
ステップS311において、CN3>T3の場合には(ステップS311においてYES)、CPU51aは、RAM51cに設けられた芽球フラグに「1」をセットし、異常リンパ球フラグ及び異型リンパ球フラグのそれぞれに「0」をセットする(ステップS312)。その後、CPU51aは、ステップS314へ処理を移す。
【0141】
一方、ステップS311において、CN3≦T3の場合には(ステップS311においてNO)、CPU51aは、RAM51cに設けられた異型リンパ球フラグに「1」をセットし、異常リンパ球フラグ及び芽球フラグのそれぞれに「0」をセットする(ステップS313)。その後、CPU51aは、ステップS314へ処理を移す。
【0142】
CPU51aは、上述のようにして得た分析結果(異常リンパ球フラグ、異型リンパ球フラグ、及び芽球フラグを含む)をハードディスク51dに格納する(ステップS314)。次にCPU51aは、ハードディスク51dに記憶した分析結果を示す分析結果画面を画像表示部52に表示させ(ステップS315)、第2データ処理を終了する。
【0143】
以上の再検が終了すると、検体分析動作が終了する。
【0144】
次に、具体的な血液検体を上記の再検で測定したときのスキャッタグラムの例を示し、本実施の形態に係る血液分析装置1による測定データの分析について説明する。図14A〜図14Dは、血液分析装置1のスキャッタグラムの例を示す図である。図14Aは、急性骨髄性白血病患者から採取した血液検体Aを測定したときのスキャッタグラムの例を示している。図14Bは、慢性リンパ性白血病患者から採取した血液検体Bを測定したときのスキャッタグラムの例を示している。図14Cは、異型リンパ球を含有する血液検体Cを測定したときのスキャッタグラムの例を示している。また、図14Dは、正常な血液検体Dを測定したときのスキャッタグラムの例を示している。
【0145】
急性骨髄性白血病患者の末梢血には、骨髄芽球が出現する。図14Aに示すように、この血液検体Aの第1測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラム(白血球分類用のスキャッタグラム)SG11では、異常単核球群の検出領域A1に、検出された血球に対応する粒子が存在している。つまり、このスキャッタグラムSG11から分かるように、血液検体Aからは異常単核球群が検出される。また、血液検体Aの第2測定データにおける前方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラム(異常リンパ球検出用のスキャッタグラム)SG12では、異常リンパ球の検出領域A2に、検出された血球に対応する粒子が実質的に存在していない(ごく僅かだけ存在しているが、血球数が閾値T2を超えていない)。図14Aには、血液検体Aの第2測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムSG13も参考として示している。このスキャッタグラムSG13においても、異常リンパ球の出現領域A21には、実質的に血球が存在していないことが分かる。さらに、血液検体Aの第2測定データにおける前方散乱光強度及び側方散乱光強度のスキャッタグラム(芽球検出用のスキャッタグラム)SG14では、芽球の検出領域A3に、検出された血球に対応する粒子が存在している。つまり、このスキャッタグラムSG14から分かるように、血液検体Aからは芽球群が検出される。よって、本実施の形態に係る血液分析装置1が血液検体Aを分析したときには、CN1>T1且つCN2≦T2且つCN3>T3となり、芽球が存在すると判定される。
【0146】
慢性リンパ性白血病患者の末梢血には、成熟したリンパ性白血病細胞である異常リンパ球が出現する。図14Bに示すように、血液検体Bの白血球分類用のスキャッタグラムSG21では、異常単核球群の検出領域A1に、検出された血球に対応する粒子が存在している。つまり、このスキャッタグラムSG21から分かるように、血液検体Bからは異常単核球群が検出される。また、血液検体Bの第2測定データにおける異常リンパ球検出用のスキャッタグラムSG22では、異常リンパ球の検出領域A2に、検出された血球に対応する粒子が存在している。図14Bには、血液検体Bの第2測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムSG23も参考として示している。このスキャッタグラムSG23においても、異常リンパ球の出現領域A21には、血球が存在していることが分かる。さらに、血液検体Bの第2測定データにおける芽球検出用のスキャッタグラムSG24では、芽球の検出領域A3に、検出された血球に対応する粒子が実質的に存在していない。つまり、スキャッタグラムSG22から分かるように、血液検体Bからは異常リンパ球群が検出される。よって、本実施の形態に係る血液分析装置1が血液検体Bを分析したときには、CN1>T1且つCN2>T2となり、異常リンパ球が存在すると判定される。
【0147】
図14Cに示すように、異型リンパ球を含有する血液検体Cの白血球分類用のスキャッタグラムSG31では、異常単核球群の検出領域A1に、検出された血球に対応する粒子が存在している。つまり、このスキャッタグラムSG31から分かるように、血液検体Cからは異常単核球群が検出される。また、血液検体Cの第2測定データにおける異常リンパ球検出用のスキャッタグラムSG32では、異常リンパ球の検出領域A2に、検出された血球に対応する粒子が実質的に存在していない。図14Cには、血液検体Cの第2測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムSG33も参考として示している。このスキャッタグラムSG33においても、異常リンパ球の出現領域A21には、血球が実質的に存在していないことが分かる。さらに、血液検体Cの第2測定データにおける芽球検出用のスキャッタグラムSG34では、芽球の検出領域A3に、検出された血球に対応する粒子が実質的に存在していない。つまり、スキャッタグラムSG32及びSG34から分かるように、血液検体Cからは異常リンパ球群及び芽球群の何れも検出されない。よって、本実施の形態に係る血液分析装置1が血液検体Cを分析したときには、CN1>T1且つCN2≦T2且つCN3≦T3となり、異型リンパ球が存在すると判定される。
【0148】
正常な末梢血には、異常単核球は出現しない。図14Dに示すように、血液検体Dの白血球分類用のスキャッタグラムSG41では、異常単核球群の検出領域A1に、検出された血球に対応する粒子が実質的に存在していない。つまり、このスキャッタグラムSG41から分かるように、血液検体Dからは異常単核球群が検出されない。また、血液検体Dの第2測定データにおける異常リンパ球検出用のスキャッタグラムSG42では、異常リンパ球の検出領域A2に、検出された血球に対応する粒子が実質的に存在していない。図14Dには、血液検体Dの第2測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムSG43も参考として示している。このスキャッタグラムSG43においても、異常リンパ球の出現領域A21には、血球が実質的に存在していないことが分かる。さらに、血液検体Dの第2測定データにおける芽球検出用のスキャッタグラムSG44では、芽球の検出領域A3に、検出された血球に対応する粒子が実質的に存在していない。スキャッタグラムSG42及びSG44から分かるように、血液検体Dからは異常リンパ球群及び芽球群の何れも検出されない。よって、本実施の形態に係る血液分析装置1が血液検体Dを分析したときには、CN1≦T1となり、異常単核球が存在しないと判定される。
【0149】
図15は、血液分析装置1の分析結果画面を示す図である。図15は、血液検体Bの分析結果画面を示している。図15に示すように、分析結果画面R1においては、測定された測定項目(WBC、RBC、PLT等)の数値データが表示される。血液検体Bには異常リンパ球が含まれており、この血液検体Bに係る分析結果データでは、異常リンパ球フラグが「1」に、芽球フラグ及び異型リンパ球フラグが「0」にそれぞれセットされている。したがって、血液検体Bの分析結果画面R1では、図15に示すように、異常リンパ球が存在している可能性を示す情報である「Abn Lympho?」の表示が、Flagの欄FLGに付される。また、ここでは図示しないが、芽球フラグが「1」にセットされており、異常リンパ球フラグ及び異型リンパ球フラグがそれぞれ「0」にセットされている場合には、フラグ表示欄FLGに「Blasts?」が表示される。異型リンパ球フラグが「1」にセットされており、異常リンパ球フラグ及び芽球フラグがそれぞれ「0」にセットされている場合には、フラグ表示欄FLGに「Atypical Lympho?」が表示される。さらに、異常リンパ球フラグ、芽球フラグ及び異型リンパ球フラグの全てに「0」がセットされている場合には、上記の「Abn Lympho?」、「Blasts?」及び「Atypical Lympho?」の何れも分析結果画面に表示されない。これによって、オペレータは分析結果画面を見るだけで、その血液検体において異常リンパ球が検出されたか否か、芽球が検出されたか否か、及び異型リンパ球が検出されたか否かを把握することができる。また、この分析結果画面R1には、第1測定データの側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムSG21が表示される。さらに、この分析結果画面R1には、第2測定データの側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムSG23が表示される。オペレータはこれらのスキャッタグラムを参照することによって、血液分析装置1による異常リンパ球、芽球、異型リンパ球の検出結果の根拠を把握することができ、また血液分析装置1による異常リンパ球、芽球、異型リンパ球の検出結果の妥当性を判断することができる。
【0150】
以上のような構成とすることにより、血液分析装置1は、血液検体と、溶血剤が含有された第1試薬と、核酸を染色する蛍光色素が含有された第2試薬とを混合して調製した第1測定試料を光学検出器Dにより測定することにより、異常単核球を検出することができる。また、血液分析装置1は、異常単核球が検出された場合において、血液検体と、溶血剤が含有された第3試薬と、核酸を染色する蛍光色素が含有された第4試薬とを混合して調製した第2測定試料を光学検出器Dにより測定することにより、異常単核球が異常リンパ球であるか、芽球であるか、異型リンパ球であるかを判定することができる。
【0151】
(その他の実施の形態)
なお、試料調製部22における、血液検体と第1試薬と第2試薬との混合及び血液検体と第3試薬と第4試薬との混合の際のそれぞれの反応温度及び反応時間は、血液検体中の血球の損傷及び染色の状態により適宜設定すればよく、特に制限されない。具体的には、反応温度が高いときは反応時間を短くし、反応温度が低いときは反応時間を長くするように調整することができる。より具体的には、血液検体と試薬の混合は、20℃〜45℃の温度において、3〜40秒間行うことが好ましい。
【0152】
また、上述した実施の形態においては、溶血剤を含む第3試薬及び核酸を染色できる蛍光色素を含む第4試薬を用いて、第2測定工程を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。溶血剤及び核酸染色色素を含む1つの試薬を血液検体と混合して第2測定試料を調製し、異常リンパ球、芽球、及び異型リンパ球の検出を行う構成としてもよい。この場合、界面活性剤、可溶化剤及び蛍光色素の濃度は、上記試薬を混合した際に、上述の濃度になるように調整される。
【0153】
また、上述した実施の形態においては、第1測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度に基づいて異常単核球の検出を行っているが、前方散乱光強度及び蛍光強度に基づいて異常単核球の検出を行ってもよい。
【0154】
また、上述した実施の形態においては、第1測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度において、異常単核球の検出領域A1の内部に出現した血球数CN1が閾値T1より大きいか否かによって、血液検体中に異常単核球が存在するか否かが判定される構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1測定データにおける側方散乱光強度及び蛍光強度において、異常単核球の検出領域A1の内部に出現した血球数の全白血球数に対する割合を求め、この割合が所定の基準値よりも大きいか否かを判定することで、異常単核球が存在するか否かを判定する構成としてもよい。また、異常リンパ球の検出においても、第2測定データにおける前方散乱光強度及び蛍光強度において、異常リンパ球の検出領域A2の内部に出現した血球数の全白血球数に対する割合を求め、この割合が所定の基準値よりも大きいか否かを判定することで、異常リンパ球が存在するか否かを判定する構成としてもよい。同様に、芽球の検出においても、第2測定データにおける前方散乱光強度及び側方散乱光強度において、芽球の検出領域A3の内部に出現した血球数の全白血球数に対する割合を求め、この割合が所定の基準値よりも大きいか否かを判定することで、芽球が存在するか否かを判定する構成としてもよい。
【0155】
また、上述した実施の形態においては、第2測定試料をフローサイトメータにて光学測定し、蛍光強度、前方散乱光強度、及び側方散乱光強度を含む光学信号を取得し、かかる光学信号を用いて血液検体中に異常リンパ球が存在するか否か、芽球が存在するか否か、異型リンパ球が存在するか否かを判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。蛍光強度と共に、前方散乱光強度及び側方散乱光強度以外の散乱光情報(前方広角散乱光強度等)を取得し、当該散乱光情報と蛍光強度とを用いて、血液検体中に異常リンパ球が存在するか否か、芽球が存在するか否か、異型リンパ球が存在するか否かを判定する構成としてもよい。同じく、第1測定試料の光学測定においても、蛍光強度と共に、前方散乱光強度及び側方散乱光強度以外の散乱光情報(前方広角散乱光強度等)を取得し、当該散乱光情報と蛍光強度とを用いて、白血球の分類及び異常単核球の検出を行う構成としてもよい。
【0156】
また、上述した実施の形態においては、CPU51aが上記のコンピュータプログラム54aを実行することにより、測定ユニット2の制御及び測定データの処理を行う構成について述べたがこれに限定されるものではない。上記コンピュータプログラム54aと同様の処理を実行することが可能なFPGA又はASIC等の専用ハードウェアにより、測定ユニット2の制御及び測定データの処理を実行する構成としてもよい。
【0157】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ5aによりコンピュータプログラム54aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したコンピュータプログラム54aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0158】
また、上述した実施の形態においては、血液検体中に異常リンパ球が存在するか否かを判定し、異常リンパ球が存在しないと判定した後に、血液検体中に芽球が存在するか否かを判定しているが、本発明はこれに限られない。まず血液検体中に芽球が存在するか否かを判定し、芽球が存在しないと判定した後に、血液検体中に異常リンパ球が存在するか否かを判定するようにしてもよい。これによっても、異常単核球が異常リンパ球であるか、芽球であるか、異型リンパ球であるかを判定することができる。
【0159】
また、上述した実施の形態においては、初検において第1測定試料を測定し、血液検体中に異常単核球が存在するか否かを判定し、異常単核球が存在すると判定された場合に、再検において第2測定試料を測定し、これによって血液検体中に異常リンパ球が存在するか否か、芽球が存在するか否か、及び異型リンパ球が存在するか否かを判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。1回目の検体測定(初検)において、第1測定工程と第2測定工程を実行し、第1測定工程によって得られた第1測定データに基づいて、血液検体中に異常単核球が存在するか否かを判定し、異常単核球が存在すると判定された場合に、第2測定工程によって得られた第2測定データに基づいて、血液検体中に異常リンパ球が存在するか否か、芽球が存在するか否か、及び異型リンパ球が存在するか否かを判定する構成(つまり、上記の実施の形態の再検に相当する動作を初検において実行する構成)としてもよい。また、上記の実施の形態においては、再検においても第1測定工程を実行し、血液検体中に異常単核球が存在するか否かを判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。再検においては第2測定工程のみを実行し、これによって得られた第2測定データを用いて、血液検体中に異常リンパ球が存在するか否か、芽球が存在するか否か、及び異型リンパ球が存在するか否かを判定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0160】
1 血液分析装置
2 測定ユニット
22 試料調製部
221a,221b,222a,222b,223 試薬容器
23 検出部
231 フローセル
237 半導体レーザ
243 フォトダイオード
246 フォトダイオード
248 アバランシェフォトダイオード
5 情報処理ユニット
5a コンピュータ
51 本体
51a CPU
51b ROM
51c RAM
51d ハードディスク
51h 画像出力インタフェース
52 画像表示部
54a コンピュータプログラム
MC1,MC2 混合チャンバ
H ヒータ
D 光学検出器
R1 分析結果画面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検体から第1血液検体と第2血液検体とを分注する分注部と、
前記分注部によって分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して第1測定試料を調製し、前記分注部によって分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して第2測定試料を調製する試料調製部と、
前記試料調製部によって調製された第1測定試料及び第2測定試料のそれぞれに光を照射する光源と、
前記光源により光が前記第1測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第1蛍光信号及び受光された散乱光に関する第1散乱光信号を出力し、前記光源により光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第2蛍光信号及び受光された散乱光に関する第2散乱光信号を出力する受光部と、
前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号、並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出する情報処理部と、
前記情報処理部による検出結果に基づく出力を行う出力部と、
を備える、
血液分析装置。
【請求項2】
前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞を検出し、前記血液検体から前記細胞を検出した場合に、前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出するように構成されている、
請求項1に記載の血液分析装置。
【請求項3】
前記情報処理部は、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞を検出した場合に、血液検体から第2血液検体を分注し、第2測定試料を調製するように前記分注部及び前記試料調製部を制御するように構成されている、
請求項2に記載の血液分析装置。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体に含まれる白血球を複数の種類に分類すると共に、前記血液検体から、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞を検出するように構成されている、
請求項2又は3に記載の血液分析装置。
【請求項5】
前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づき、所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞を、異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球のいずれかである細胞として検出するように構成されている、
請求項2乃至4の何れか1項に記載の血液分析装置。
【請求項6】
前記所定範囲の蛍光強度は、正常リンパ球から得られる蛍光強度よりも大きい、
請求項5に記載の血液分析装置。
【請求項7】
前記情報処理部は、前記所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞の数を反映した値を取得し、取得した値と所定の閾値とを比較することにより、前記所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞を検出するように構成されている、
請求項5又は6に記載の血液分析装置。
【請求項8】
前記情報処理部は、前記第2蛍光信号に基づき、所定範囲の蛍光強度を示す細胞を、異常リンパ球として検出するように構成されている、
請求項2乃至7の何れか1項に記載の血液分析装置。
【請求項9】
前記所定範囲の蛍光強度は、正常リンパ球から得られる蛍光強度よりも大きい、
請求項8に記載の血液分析装置。
【請求項10】
前記情報処理部は、前記所定範囲の蛍光強度を示す細胞の数を反映した値を取得し、取得した値と所定の閾値とを比較することにより、前記所定範囲の蛍光強度を示す細胞を検出するように構成されている、
請求項8又は9に記載の血液分析装置。
【請求項11】
前記受光部は、前記光源により光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる前方散乱光及び側方散乱光を受光して、受光された前方散乱光に関する前方散乱光信号及び受光された側方散乱光に関する側方散乱光信号を含む前記第2散乱光信号を出力するように構成されており、
前記情報処理部は、前記前方散乱光信号及び前記側方散乱光信号に基づき、所定範囲の前方散乱光強度及び側方散乱光強度を示す細胞を、芽球として検出するように構成されている、
請求項2乃至10の何れか1項に記載の血液分析装置。
【請求項12】
前記情報処理部は、前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異常リンパ球及び芽球が検出されなかった場合に、前記血液検体から異型リンパ球を検出するように構成されている、
請求項2乃至11の何れか1項に記載の血液分析装置。
【請求項13】
血液検体から第1血液検体と第2血液検体とを分注する分注部と、
前記分注部によって分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して第1測定試料を調製し、前記分注部によって分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して第2測定試料を調製する試料調製部と、
前記試料調製部によって調製された第1測定試料及び第2測定試料のそれぞれに光を照射する光源と、
前記光源により光が前記第1測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第1蛍光信号及び受光された散乱光に関する第1散乱光信号を出力し、前記光源により光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第2蛍光信号及び受光された散乱光に関する第2散乱光信号を出力する受光部と、
前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号、並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から反応性の異常単核球及び腫瘍性の異常単核球を区別して検出する情報処理部と、
前記情報処理部による検出結果に基づく出力を行う出力部と、
を備える、
血液分析装置。
【請求項14】
前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異常単核球を検出し、前記血液検体から前記異常単核球を検出した場合に、前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から反応性の異常単核球及び腫瘍性の異常単核球を区別して検出するように構成されている、
請求項13に記載の血液分析装置。
【請求項15】
前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づいて、前記血液検体に含まれる白血球を複数の種類に分類すると共に、前記血液検体から異常単核球を検出するように構成されている、
請求項14に記載の血液分析装置。
【請求項16】
前記情報処理部は、前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号に基づき、所定範囲の蛍光強度及び散乱光強度を示す細胞を、異常単核球として検出するように構成されている、
請求項14又は15に記載の血液分析装置。
【請求項17】
血液検体から第1血液検体と第2血液検体とを分注するステップと、
分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して第1測定試料を調製するステップと、
調製された第1測定試料に光を照射するステップと、
光が前記第1測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第1蛍光信号及び受光された散乱光に関する第1散乱光信号を取得するステップと、
分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して第2測定試料を調製するステップと、
調製された第2測定試料に光を照射するステップと、
光が前記第2測定試料に照射されたときに生じる蛍光及び散乱光を受光して、受光された蛍光に関する第2蛍光信号及び受光された散乱光に関する第2散乱光信号を取得するステップと、
前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出するステップと、
検出結果に基づく出力を行うステップと、
を有する、
血液分析方法。
【請求項18】
通信部と、出力部とを備えるコンピュータに、
血液検体から分注された第1血液検体と、核酸を染める第1蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含む第1溶血剤とを混合して調製された第1測定試料に光を照射したときに生じる蛍光及び散乱光に関する第1蛍光信号及び第1散乱光信号を、前記通信部に受信させるステップと、
血液検体から分注された第2血液検体と、核酸を染める第2蛍光色素と、カチオン性界面活性剤を含まず他の界面活性剤を含む第2溶血剤とを混合して調製された第2測定試料に光を照射したときに生じる蛍光及び散乱光に関する第2蛍光信号及び第2散乱光信号を、前記通信部に受信させるステップと、
前記通信部により受信された前記第1蛍光信号及び前記第1散乱光信号、並びに前記第2蛍光信号及び前記第2散乱光信号に基づいて、前記血液検体から異型リンパ球、異常リンパ球、及び芽球を区別して検出するステップと、
検出結果に基づく情報を、前記出力部に出力させるステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【公開番号】特開2012−233889(P2012−233889A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96223(P2012−96223)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】