血液成分濃度の非侵襲連続測定法
本発明は、血液成分濃度の非侵襲測定法であって、放射線源(12)を、それぞれ異なる波長の数種類の放射線ビーム(14)を放射する方法に関する。第1の光検出器(18)は、検査する身体部分(16)で反射した、各波長の測定用放射線(14)を受光する。第2の光検出器(22)は、検査する身体部分(16)を透過した、各波長の測定用放射線(24)を受光する。その後、検査する身体部分(16)で吸収された、各波長の測定用放射線(14)を、第1の放射線受光器(18)による反射放射線(20)の測定および第2の放射線受光器(22)による透過放射線(24)の測定に基づいて算出する。異なる成分の濃度を、各波長について算出された測定用放射線(14)の吸収から計算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分濃度の非侵襲連続計測法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ヒトの血液は、乾燥質量基準(すなわち、全ての非結合水が除去されている)で最大38.5%までのヘモグロビンで構成されるが、これは湿潤物質基準(すなわち、生理的に通常の状態)では約15%である。そのヘモグロビンには以下の成分が含まれる。
− 酸素不飽和ヘモグロビン(RHb)
− 酸素飽和ヘモグロビン(O2Hb)
− カルボキシヘモグロビン(COHb)
− メトヘモグロビン(MetHb)
【0003】
図1にヒトの血液組成を例示する。医療上の目的で、ヘモグロビン濃度、特に、上記4種のヘモグロビン誘導体濃度を測定する必要がしばしば生じる。しかしながら、本発明は、血液のさらに別の成分の測定にも使用することができる。したがって、ヘモグロビンに関して記載した全ての特徴は、他の血液成分の濃度測定にも使用することができる。
【0004】
血液中のヘモグロビン含有量の測定に、Hb分光光度計を使用することが知られている。Hb分光光度計は化学試薬を充填したキャピラリーギャップを備える。少量の血液、例えば一滴の血液を前記キャピラリーギャップに加えると、化学分解が生起され、ギャップの光透過性が変化する。光透過性の変化は光度計により検知することができる。
【0005】
上記のタイプの装置は、Hb値を測定するために患者から血液を採取しなければならないという欠点を有している。
【0006】
さらに、米国特許出願公開第2005/0267346A1号明細書には、異なる波長領域における吸収の測定から血液成分の濃度を測定する方法が開示されている。しかしながら、前記公開公報は、n≧2バンド以内の電磁放射線を血液成分濃度の測定に使用する方法に関するものである。この方法では、検出する各物質を前記バンドの1つに割り当てる必要がある。しかしながら、実際、これには大きな制約を伴う。なぜなら、多くの血液成分を検出する場合に、適切な吸収構造を有する、対応する数の異なるバンドを見出すことは殆ど不可能であるからである。
【0007】
米国特許第6104938号明細書には、異なる波長について身体部分の透過光およびそれぞれの反射光の強度を求めることによって血液成分濃度を測定する方法が記載されている。この計算方法は、光が透過または反射する部分にのみ適用されるものであって、両方を組み合わせた評価には適用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、多くの血液成分、特に、比較的多くの血液成分濃度を非侵襲的に測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は請求項1の特徴により達成される。
【0010】
血液成分濃度の測定方法は次の工程を含む。
a.放射線源により、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線を放射線源から放射する工程、
b.検査する身体部分で反射された、前記複数の波長の測定用放射線を、第1の受光器で受光する工程、
c.検査する身体部分を透過した、前記複数の波長の測定用放射線を、第2の受光器で受光する工程、
d.第1の放射線受光器による前記反射放射線の測定および第2の放射線受光器による前記透過放射線の測定に基づいて、検査する身体部分により引き起こされた各波長の測定用放射線の吸収を算出する工程、
e.各波長の測定用放射線について算出された前記吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する工程。
【0011】
本発明の方法の出発点は、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線を放射するのに適した装置である。前記装置は、また、検査する身体部分によって反射された測定用放射線を受光する第1の受光器を備える。さらに、検査する身体部分を透過した測定用放射線を受光する第2の受光器が設けられている。検査する身体部分は、例えば、ヒトの指とすることができる。測定用放射線としては、例えば、可視領域の光および/または近赤外領域の赤外線などの電磁放射線を使用することができる。本出願人によって出願された特許出願「血液成分の濃度検出装置(Apparatus for detection of concentrations of blood constituents)」に記載の装置を使用することが特に好ましい。
【0012】
本発明は、血液の種々の成分、例えばヘモグロビンや水は、放射線の吸収度が異なるであろうという考えに基づいている。具体的には、種々の血液成分の吸収度が大きく異なるような特定の波長の放射線、例えば光が存在する。そのような波長を放射するという観点から放射線源を選択すれば、本発明の装置により得られる結果を良好なものにすることができる。
【0013】
本発明の理論的基礎はランベルト・ベールの法則にある。
I/I0=10−ECd (1)
I 出射/透過強度
I0 入射強度
E (特定の波長に対する)血液成分の吸光係数(モル吸光係数)
C 濃度
d 層の厚さ
【0014】
ランベルト・ベールの法則は、放射線が吸収物質中を通過するとき、その強度が物質の濃度によってどのように変化するかを示すものである。これに関連して、吸光係数は透過光と入射光との比から求められる。
【0015】
したがって、本発明においては、第1の放射線受光器は、検査する身体部分によって反射した放射線を測定するよう作動する。また、第2の放射線受光器は、検査する身体部分を透過した放射を測定するよう作動する。
【0016】
先述したように、放射線の波長によって吸収度が異なるため、使用する波長を適切に選択することにより、算出した吸収度を基に、さらに計算を行うことによって種々の血液成分の濃度を算出することができる。この方法の基準点として、血液成分が同じ吸収度を示す、所謂、等吸収点の波長を使用することもできる。
【0017】
このように、異なる波長を放射する放射線源を使用すれば、吸収に特に明確な差が表れるような波長そのもので測定が行われることになるため、異なる血液成分の濃度を極めて正確に測定することが可能になる。例えば、ヘモグロビン誘導体を測定するには、下記波長が特に有利であることがわかった。
・カルボキシヘモグロビンを酸化ヘモグロビンと区別するためには、540nm±5nm、562nm±5nm、573nm±5nm
・メトヘモグロビンを酸化ヘモグロビンと区別するためには、623nm±5nm
・全てのヘモグロビン誘導体を互いに区別するためには、660nm±10nm(なぜなら、この波長で全ての成分が異なる吸収度を示すからである)
・全ヘモグロビンを水と区別するためには、805nm±10nm(なぜなら、この波長では水による吸収はなく、ヘモグロビンのみの吸収が生じるからである)
・基準点としては、950nm±10nm(なぜなら、そこでは全ての成分が同一の吸収度(等吸収点)を示すからである)
・水を全ヘモグロビンと区別するためには、1200nm±50nm(なぜなら、この波長ではヘモグロビンによる吸収はなく、水のみの吸収が生じるからである)
【0018】
ヘモグロビンに関する、血液組成の異なるパラメータの測定を可能にするためには、複数の異なる波長を組織に向けて準平行的に放射しなければならない。波長の選択は、既に一部記載したように、次のことを基準になされるであろう。
1.ヘモグロビン誘導体の吸収特性
2.水の吸収特性
3.特定の波長の皮膚に対する侵入深さおよびそれぞれの透過性
4.各種誘導体の吸収スペクトルにおける等吸収点
5.放射線源の技術的可能性
【0019】
使用する波長を選択する際、皮膚の光の窓を考慮することが特に好ましい。ヒトの皮膚では、光の窓は約350nm〜1650nmの波長領域にある。
【0020】
特に、本方法は、波長毎に測定された吸収値を保存すること、および、前述した方法の工程を繰り返すことを含み、波長毎に測定された吸収値が、各繰り返しサイクルで保存されることが好ましい。その後、波長毎に吸収の時間的変化が示されるように、波長毎に放射された放射線の個々の吸収値を統合する。この表示は、例えば、曲線の形または表の形で行われる。
【0021】
各繰り返しサイクルで波長毎に測定された吸収値の保存、吸収の時間的変化を示すための波長毎の吸収値の統合、およびその変化の表示は、演算器により、演算器が検査する身体部分または患者の身体と相互依存しない状態で行う。
【0022】
測定する血液成分の数と少なくとも同じ数の波長を使用することが好ましい。例えば、血液中の前述した4種類のヘモグロビン誘導体および水の濃度を測定しようとする場合、少なくとも5種類の異なる波長を使用する必要がある。より正確な測定を行うには、さらに多くの波長、すなわち、全部で8種類の波長で、強度を測定することが適切であり得る。血液成分濃度比を算出する方法としては、例えば、線形方程式系による算出法、発見的アルゴリズムを用いる算出法、および相関に基づく算出法などが挙げられる。これらの方法については、本願の実施形態に関連してより詳細に説明する。後に、複数の個々の血液成分について容積脈拍の変化を求めることができるよう、全ての方法で異なる特性の波長が使用される。実際に個々の血液成分濃度を知るために、各血液成分について測定されるのは、全体の容積脈拍の変化ではなく、使用した波長の吸収変化における決定的ポイントでの種々の吸収値のみである。これらの決定的ポイントは、例えば、吸収変化の最大値である。
【0023】
スナップショット、すなわち、異なる波長の吸収値が測定される単一の測定だけでなく、容積脈拍が変化する過程の異なる時点で、複数の測定を行うことが特に好ましい。特に、吸収変化の脈動部分を検知するには、例えば、その後に変化曲線の最大点(心拡張期)との差が求められるように、変化曲線の最小点(心収縮期)もまた必要である。何故なら、さもなければ、DC成分を考慮することができないからである。さらに、非常に数多くの測定を行うことにより、完全な脈容量変化曲線を求めることができ、これにより、この曲線から他の情報を引き出すことも可能になる。例えば、計算アルゴリズムへの入力データとして、最大値を使用する代わりに、互いの関係について面積積分を使用することができる。
【0024】
使用する大部分の波長で、全血液成分の吸収からの混合信号(容積脈拍の和)が得られる。検出された互いに対する吸収振幅比から、例えば上述した算出方法により、個々の物質および波長に固有の吸光係数を使用して、互いに対する血液成分の濃度比を算出することができる。前記吸光係数は、体積当たりの物質の量および体積当たりの質量の両者と関連させることができる。したがって、算出すべき比は、体積当たりの個々の血液成分の質量比かまたは体積比のいずれかに対応する。
【0025】
血液成分濃度を算出する装置について、以下により詳しく説明する。
【0026】
前記装置は、検査する身体部分によって引き起こされた放射線の吸収を計算するため、第1および第2の放射線受光器に接続された演算装置であって、前記計算が測定された放射線の反射部分と透過部分を基になされる装置を備える。前記演算装置は、例えばコンピュータとすることができる。好ましくは、検査する身体部分による放射線の吸収の計算は、演算装置で、演算装置と検査する身体部分との間の相互依存性が要求されない方法により、行うことができる。例えば、演算装置は、特定のソフトウエアプログラムを走らせる装置として設計することができる。
【0027】
放射線源と、検査する身体部分により反射された放射線を受光する第1の放射線受光器とは、検査する身体部分に対して同じ側に配置されることが特に好ましい。その後、透過放射線を受光する第2の放射線受光器を、検査する身体部分の第2の側で、第1の放射線受光器とは反対側に配置することができる。
【0028】
血液中のヘモグロビン濃度をより正確に測定するため、かつ/またはヘモグロビン誘導体の濃度を測定するために、放射線源は個々の異なる波長の複数の放射線源を含むことがさらに好ましい。前記個々の放射線源は、例えば、LED、レーザーダイオードまたはフィルターを有する白色光LEDとして構成することができる。異なるヘモグロビン誘導体は、放射線の吸収度に関し、特定の波長で特に顕著な差を示すため、この特徴は特に有利である。異なるヘモグロビン誘導体、および、例えば水などの他の血液成分それぞれの吸収度の差が特に大きい波長を使用して測定を行うことは、特に有利である。
【0029】
本発明の装置のさらに好ましい特徴を以下に示す。
【0030】
装置は、第1および第2の放射線受光器が互いに反対側に配置され、したがって、第1および第2の放射線受光器の間に、検査する身体部分を収容するための収容室が形成されるように構成されることが特に好ましい。この配置で、放射線源と第1の放射線受光器を1つの平面内に位置させることができる。
【0031】
放射線源を、例えばLEDの形態の光源として設計し、かつ、第1および第2の放射線受光器を、例えばフォトダイオードの形態の受光器として設計することが特に好ましい。
【0032】
LEDは、前記収容室の第1の側、好ましくは第1の受光器の周囲に、円形状に配置することができる。
【0033】
放射線源が、径方向に配置された、少なくとも2つの同一波長の個別の光源を備えるならば、検査する身体部分に特に均一に放射線を当てることができる。使用する波長の数が多いために、構築上の理由から、同一波長の2つの個々の光源を互いに反対側に配置することができない場合は、1つの波長につき1つの個別の光源をそれぞれ使用することができる。この場合、個々の光源からの放射線が、検査する身体部分、例えばヒトの指が配置される位置で収束するように、個々の光源の第1の受光器に向いていない側の面を、好ましくは角度で15°傾けることが特に好ましい。
【0034】
検出差を生じさせなくするために、第1の受光器および第2の受光器は、同じタイプであることが好ましく、例えば、光検出器で構成することができる。例えば、400nm〜1650nmというかなり広範囲の波長をカバーするために、二色検出器を使用することが好ましい。この検出器は、例えば、400nm〜1100nmの波長範囲を有するシリコンからなる受光面、および、例えば、1000nm〜1700nmの波長範囲を有する、インジウム・ガリウム・ヒ素からなる受光面を備える。しかしながら、例えば、異なる材料からなる3つの受光面を有する検出器を使用することもできる。重要なことは、350nm〜1650nmの範囲全体を検出し得ることである。
【0035】
直接の迷光(シャント光)が第1の受光器に入射するのを防止するために、光源は第1の受光器から隔離手段により、好ましくは光不透過性の内部および外部シェルにより隔離されている。外部シェルの内壁には、放射される光を均一化するために白色のコーティングが施されている。シェルは、放射線が所定の表面(実質的に指パッドの表面に対応)に放射されるように、円錐形にすることができる。さらに、2つの受信信号(組織、散乱など)間の差から得られるかく乱要因を考慮するために、反射センサーが、互いに近接した2つの受光器を特に備えるようにすることもできる。
【0036】
衛生上の理由、およびより良い取り扱いのために、前記シェルは光源および第1の受光器に強固に取り付けることができる。さらに、シェルの間の窪みには、好ましくは透明で、傷が付きにくく、硬く、かつ/または生体適合性を有する接着剤を充填することができる。前記接着剤は、シェルと共に、僅かに内側に湾曲した(凹形の)形状に仕上げることができる。この配置の反対側に、透過放射線受光器が位置する。
【0037】
装置は、その第1の側と第2の側それぞれに、収容室の範囲を定める第1および第2の収容要素を備えることができる。第1および第2の収容要素は、装置が検査する身体部分、例えば指に固定されるように、クランプ機構により互いに結合させることができる。
【0038】
第1および第2の放射線受光器は、浮かせた状態で支持し、それによって、検査する身体部分との最適な接触が保証され、均一な再現性のある接触圧が得られるようにすることが好ましい。特に、第1および第2の放射線受光器は、検査する身体部分および結合手段それぞれに直接取り付けられることに注意すべきである。
【0039】
非常に狭い測定可能領域に光が集中するように、LEDと皮膚との間、および皮膚と受光面との間それぞれの光学的結合に、ガラスファイバケーブルを使用することが特に好ましい。
【0040】
信号の質を向上させるために、本発明の装置は、放射線源、例えば透過LEDの放射線強度を、使用するケーブル毎に、自動的、かつ連続的に追跡することができるように構成することができる。出力信号が小さすぎる場合、または大きすぎる場合、それぞれ伝送電力が自動的に増幅されるか、または減衰される。この因子は、これを信号の評価に含ませるために、定量的な再現性がなければならない。同じ原理が、放射線受光器、特に二色検出器の強度にも適用することができる。したがって、例えば、8個のLED(8種類の波長)を使用する場合には、8つの追跡プロセスが実行され、検出器(2個の受光面それぞれに、透過および反射)を使用する場合には、4つの追跡プロセスを実行することができる。
【0041】
本発明の装置は多くの用途で使用することができる。例えば、ヘモグロビン濃度の連続的な非侵襲測定に、ここに記述した装置を使用することができる。さらに、微小血管疾患の検出に本装置を使用することができる。さらに、血圧の連続的非侵襲検出に使用することができる。本発明の装置は、また、さらに別の方法、特に診断または医療の方法に使用することができる。
【0042】
特に、本発明の装置は、1種または複数の血液成分の容積脈拍変化を測定するのに適している。測定された容積脈拍変化から、また、特に容積脈拍変化の形から、例えば患者の血圧または微小血管疾患の存在に関する情報などの、さらなる医学上の結果を引き出すことができる。個々の血液成分の容積脈拍変化は、例えば単一波長の使用により検出することができる。この場合、使用した波長において測定された吸収の変化は、測定すべき血液成分の容積脈拍変化に対応する。容積脈拍の変化を正確に測定するには、既述の基準にしたがって使用する波長を選択する必要がある。
【0043】
1つの独立した発明は、異なる血液成分の濃度測定を行う装置の操作方法に関する。これについては、本願の中で記載した装置を使用することができる。前記装置が、異なる波長の複数の測定用放射線を放射するのに適した、少なくとも1つの放射線源を備えることが、必須である。本発明の方法においては、それぞれ1つの波長の測定用放射線を放射するために、好ましくは連続的に放射線源を作動させる。すなわち、毎回連続的に、特定波長の測定用放射線を放射するよう、放射線源を駆動させる。特に、これに関連して、放射線源を、それぞれ1つの波長の測定用放射線源を放射する、例えばLEDなどの複数の個々の放射線源により形成することができる。それぞれ1つの波長の測定用放射線を連続的に放射する代わりに、異なる波長の測定用放射線を同時に放射するのに適した放射線源を備えることもできる。ここで使用する第1および第2の放射線受光器は、個々の放射された波長の測定用放射線を別々に受光するのに適するように構成されていなければならない。これは、例えば、それぞれが、例えば周波数フィルターを使用して、放射された特定の周波数バンドの放射線を受光する、複数の個々の放射線受光器を備えることによって実現することができる。しかしながら、各波長は連続して放射されることが好ましい。
【0044】
さらに、本発明の方法においては、検査する身体部分により反射された各波長の測定用放射線は、第1の放射線受光器が受光する。さらに、検査する身体部分を透過した各波長の測定用放射線は、第2の放射線受光器が受光する。その後、検査する身体部分により引き起こされた放射線の吸収が、波長毎に算出される。この算出は、第1の放射線受光器による反射放射線の測定と、第2の放射線受光器による透過放射線の測定に基づいて行われる。
【0045】
そうでなければ、本発明の方法は、本発明の装置に関連して記載した全ての特徴を含むことができる。
【0046】
特に、本方法は、各波長毎に検出された吸収値を保存する工程、および前述した本方法の工程を繰り返す工程を含み、検出された各波長の吸収値が、繰り返しサイクル毎に保存されることが好ましい。その後、各波長における吸収の時間的変化を表すために、放射された放射線の個々の吸収値を波長毎に統合する。これは、例えば曲線または表で表され、容積脈拍の変化と称する。
【0047】
各繰り返しサイクルの各波長で測定された吸収値の保存、吸収の時間的変化を表すための各波長における吸収値の統合、および前記変化の表示は、演算装置で、前記演算装置が検査する身体部分または患者の身体と相互依存しない状態で行うことが好ましい。
【0048】
要約すると、本発明の方法には以下の工程が含まれる。
a.それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線を連続的に放射する工程、
b.検査する身体部分で反射された各波長の測定用放射線を第1の受光器により受光する工程、
c.検査する身体部分を透過した各波長の測定用放射線を第2の受光器により受光する工程、
d.検査する身体部分により引き起こされた放射線の吸収を、第1の放射線受光器による前記反射放射線の測定、および第2の放射線受光器による前記透過放射線の測定に基づいて算出する工程、
e.前記方法の工程a.〜d.を複数回繰り返す工程であって、測定用放射線の各波長に対するそれぞれの吸収値を、各繰り返しサイクル毎に保存する工程、
f.保存された吸収値を統合して、測定用放射線の各使用波長に対する吸収の時間的変化(容積脈拍の変化)を表示する工程。
【0049】
特に、前記方法の工程d.およびf.は演算装置により、前記演算装置が検査する身体部分と相互依存しない状態で行われる。
【0050】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ヒトの血液組成の概観。
【図2】血液成分濃度の測定に適した装置を示す概略図。
【図3】ヒトの皮膚への光放射の浸透深さを示すグラフ。
【図4】通常のヘモグロビン濃度(150g/l)のヒトの血液の吸収スペクトルを示すグラフ。
【図5】通常の吸収スペクトルと、カルボキシヘモグロビンおよびヘモグロビンがそれぞれ高濃度の場合の吸収スペクトルとの比較を示すグラフ。
【図6】ヘモグロビンおよび水の吸収スペクトルを示すグラフ。
【図7】波長に依存する各種ヘモグロビン誘導体の吸収係数を示すグラフ。
【図8】複数の個別の放射線源および放射線受光器の制御を示すグラフ。
【図9】放射線受光器の読み出し挙動を示す概略図。
【図10】異なる波長の吸収変化を示すグラフ。
【図11】反射放射線受光器用較正装置を示す概略図。
【図12】透過放射線受光器用較正装置を示す概略図。
【図13】容積脈拍曲線を正規化する係数を計算するための光強度を示すグラフ。
【図14】計算で得られた、容積脈拍曲線を正規化する係数を示すグラフ。
【図15】線形方程式系により濃度を算出するためのプロセス図。
【図16】反射の測定を示す概略図。
【図17】透過の測定を示す模式図。
【図18】本発明の装置の第1の収容要素を示す概略図。
【図19】第1の放射線受光器を示す断面図。
【図20】放射線受光器の検出範囲を示すグラフ。
【図21】放射線受光器の検出範囲を示すグラフ。
【図22】2つの異なる波長λにおける2つの物質の典型的な吸光曲線であって、僅かな厚さの変化Δd(血液の脈拍)により生じた強度差ΔIを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図2のように、本発明の方法の実施に適した装置は、検査する身体部分16に向けて測定用放射線14を放射する放射線源12を備えている。検査する身体部分16はヒトの指であることが好ましい。しかしながら、それに代えて、例えばヒトの耳たぶやその他の適切な身体部分なども測定に使用することができる。
【0053】
前記装置10は、さらに、検査する身体部分16によって反射された放射線20を受光するように配置された第1の放射線受光器18を備えている。図示した実施形態においては、第1の放射線受光器は、第1の収容要素28内に配置されている。前記第1の収容要素28内には、放射線源12もまた配置されている。
【0054】
装置10は、さらに、検査する身体部分16を透過した放射線24を受光するように配置された第2の放射線受光器22を備えている。図示した実施形態においては、第2の放射線受光器22は、第1の収容要素28とは反対側に位置する第2の収容要素30内に配置されている。ここで、「反対側」は、2つの収容要素28、30、並びに第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22が、例えば指16がそれらの間に位置するように配置されていることを意味する。
【0055】
放射された測定用放射線14は、少なくとも一部が検査する身体部分16によって反射され、その結果、測定用放射線14の一部が、反射放射線20として第1の放射線受光器18に向けて反射されることになる。
【0056】
前記放射線14の少なくとも一部は、検査する身体部分16を通過し、透過放射線24として第2の放射線受光器22に入射する。第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22は、好ましくはフォトダイオードとして設計される。
【0057】
装置は、さらに、第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22に接続された演算装置26を含む。測定された放射線の反射部分20と透過部分24が前記演算装置26に送られ、その放射線部分の測定値から、検査する身体部分16によって引き起こされた放射線14の吸収が算出される。
【0058】
演算装置26は、例えば、前記演算を実行する特定のソフトウエアプログラムによって作動するPCとして設計することができる。特に、前記演算は、透過放射線と反射放射線の測定時点とは異なる時でもPCで行うことができる。したがって、本発明に必須の演算工程は、これまで記載してきた患者の特徴を物理的に検出することから独立して行われる。
【0059】
本発明の方法は、特に、例えばコンピュータまたはマイクロプロセッサなどの制御装置41により制御することができる。前記制御装置41は装置10の一部とすることができる。
【0060】
本発明の方法を実施するには、他の適切な装置を使用することもできる。そのような装置は、少なくとも1つの、異なる波長の測定用放射線を放射する放射線源を備えることが必須である。
【0061】
放射される波長は、例えばヒトの皮膚が放射線を透過し得る領域のものである。この領域は光の窓と呼ばれ、約350nm〜1650nmの波長領域にある(図7参照)。前記領域の外側では、皮膚の吸収が大きいため、放射線がさらに深く組織に入り込むことはほとんど不可能である。
【0062】
図6に示すように、例えばヒトの血液中のヘモグロビン誘導体および水が、吸収度に関して特に顕著な差を示すのは、これらの決定的な波長においてである。
【0063】
例えば、光源12が異なる波長を放射するように構成されたLEDを複数含むことが特に好ましい。この場合、その動作のON、OFFが例えば1.2kHzの周波数で連続的に行われ、互いに異なる2つの波長が同時には放射されないように、LEDを制御することができる。例えば周波数フィルターにより、特定の周波数帯の放射線のみを受光し得る複数の放射線受光器を備えているなら、異なる波長の測定用放射線を時間的に並列に放射することも可能である。しかしながら、好ましいのは、個々の放射線源のシーケンシャルな作動であり、その場合、1.2kHzに限らず、他の適当な周波数領域を使用することもできる。
【0064】
受信信号の表示は、所謂通常動作またはロックイン動作で行うことができる。ロックイン動作では信号品質が改善される。ロックイン方法を適用するには、ロックイン増幅器は、各LEDのスイッチオン状態時に1回、および、LEDのスイッチオフ状態時に1回、信号を検出しなければならない。したがって、LEDのクロックパルスの速度は、通常動作とロックイン動作とでは異なり得る。ロックイン動作では、LEDの制御周波数をロックイン増幅器に必要な周波数に合わせることができる。
【0065】
ロックインの原理は、非常に微小な信号にフィルターをかけ、増幅する方法である。この方法では、周波数と位相が既知の参照信号が測定信号の上に変調され、他の周波数の直流電圧およびノイズを消去する。
【0066】
通常動作およびロックイン動作のいずれにおいても、一定成分(一定部分/オフセット)とパルス状の交流成分(交流部分)とを決定する。一定成分は照射された組織の生理学的特性により決まる。これは、例えば、組織の特性や脈動部分のない血管(小静脈など)など、様々な原因により影響される。このオフセットの上に、血液の容積変化から生じるパルス状の交流成分(交流部分)が乗る。
【0067】
DC成分は、補正部分とみなすことができる。ACと一定成分を分離するアナログまたはデジタルフィルタを使用する場合には、他の選択が存在する。原理上は、このことは両モードで可能であるが、少なくとも通常動作では、充分な信号品質を得るために行うべきである。そうしなければ、あらゆる外乱もまた増幅されるからである。
【0068】
図8および9に、数個のLEDのクロック動作と、反射光を受光するフォトダイオード18および透過光を受光するフォトダイオード22のクロック動作を示す。これについては、僅かに5種類の波長を使用した場合を図9に示す。同様にして、図9に示した読み取り動作の原理は、波長数がより多い場合にもより少ない場合にも適用することができる。図8の例に示すように、8種類の異なる波長を使用することが好ましい。
【0069】
所謂サンプルアンドホールド動作を図示する。図面の下半分に、使用した2つの検出器表面の2つの検出器信号を1つの波長領域毎に示す。ここでは、シリコンからなる受光面が400nm〜1100nmの波長領域をカバーし、インジウム・ガリウム・ヒ素からなる受光面が1000nm〜1700nmの波長領域をカバーする。540、562、573、623、660、805および950nmのLEDが作動する毎に、反射20および透過24した測定用放射線がシリコン受光面により検出される。検出器でそれぞれの時点で受信した信号値は、波長毎に読み取られ(サンプル)、保持され(ホールド)、波長が再度立ち上がるまでに保存される。1250nmのLEDおよびインジウム・ガリウム・ヒ素センサーを同一のクロック条件で使用すれば、対応するプロセスが実行される。この一連の動作が繰り返され、個々のサンプル(値)がさらに処理される。図9に示すように、これは各波長に対し連続して行われる。
【0070】
このように、第1サイクルで、例えば8種類の波長が放射され、それらの反射光20および透過光24部分が測定され、その後、保存される。続く繰り返しサイクルで読み取られた値から、放射線14の各波長における個々の吸収値が統合されて、各波長の吸収の時間的変化が示される。
【0071】
濃度比を算出する第1の選択肢は、線形方程式系の使用である。
【0072】
方程式(1)から出発して、次式が、放射線が透過する厚さd0の層の微小変化(d−d0)に対して近似的に適用される(テイラー級数)。
I/I0 = 10−ECd0−2.3EC(d−d0)+.. (2)
d 層の厚さ(全体)
d0 特定の時点(例えば、心臓拡張期)における層の厚さ(全体)
【0073】
層の厚さdの変化が、組織中の血液の脈動でのみ生じる場合は、(d−d0)の値は小さいので、級数展開の線形項のみを使用しても生じる誤差は非常に小さい。方程式(2)によれば、透過強度は、一定値10−ECd0と、放射線が透過する組織の直径の脈動による変化により生じる通常かなり小さな部分とからなる。
【0074】
本発明においては、透過光波の強度を、心臓収縮期(Is)および心臓拡張期(Id)に測定し、その強度差を得ることが好ましい。フォトトランジスタの信号は入射強度に比例すると推定される。
【0075】
式(2)から、以下が導かれる。
(Is−Id)/I0=10−ECd0−2.3EC(ds−d0)−{10−ECd0−2.3EC(dd−d0)} (3)
(Is−Id)=−2.3EC(ds−dd)I0 (4)
【0076】
これは、心臓の収縮期と拡張期の間の強度差の測定値が、モル吸光係数Eおよび血液成分濃度Cに比例し、かつ行路差(ds−dd)に比例することを意味している。
【0077】
因子ECは、透過光の吸収度Aの測定値である。
A=EC (5)
【0078】
特定の波長の吸収は、観察する血液成分の物質濃度に正比例し、所定の波長での血液成分の吸収係数に比例する。すなわち、所定の体積当たりの物質濃度が高いほど、あるいは、吸収係数値が高いほど、吸収は大きくなる。
【0079】
特定の波長λおよび血液成分の濃度Cbnに対して、次式が成り立つ。
Abn=E(λ、bn)*Cbn (6)
【0080】
方程式(4)から、吸収度Aと測定された強度差ΔI=(Is−Id)との相互関係が得られる。まだ今のところ、全照射強度から組織内での吸収を差し引いたものが受光器に到達すると考えられている。実際はそうではない。さらに厚さの差(ds−dd)も常に未知である。このため、吸収は未知の係数KT(透過測定の定数)を除いては正確に測定することができる。
ΔI=KTA (7)
ΔI 身体部分を透過した光の心臓収縮期と心臓拡張期における強度差
KT 測定された強度と透過測定における吸収との相互関係を表す定数
【0081】
この係数が、全ての波長における全ての測定で(実質的に)一定であることが重要である。
【0082】
ここまで、透過の測定について演算の例を説明してきた。実際には、特定の波長では、吸収が非常に強く、信号/ノイズの比が好ましくないことが明らかになっている。そのような場合には、反射の測定が望ましい。
【0083】
反射の測定では、この係数は透過の測定のそれとは異なる。反射の測定には次の式が成り立つ。
ΔI=KRA (8)
KR 測定された強度と反射の測定における吸収との相互関係を表す定数
【0084】
吸収は、個々の血液成分b1...bn毎に加算されると考えられる。濃度Cが高過ぎる場合にはこの規則性はなくなる。
【0085】
したがって、所定の波長λで、全吸収Agは次式で表される。
Ag=Ab1+Ab2+・・・+Abn (9)
Ag 全吸収
Ab1 血液成分1の吸収
Ab2 血液成分2の吸収
Abn 血液成分nの吸収
【0086】
方程式(6)と結びつけると、次式が成り立つ。
Ag(λ)=E(λ、b1)*Cb1+E(λ、b2)*Cb2+・・・E(λ、bn)*Cbn (10)
E(λ、bn) 波長λにおける血液成分nの吸収係数
Cbn 血液成分nの濃度
【0087】
それぞれの場合で既知のものは、使用した各波長で測定された全吸収Ag(それぞれ係数KTおよびKRを除く)および、使用した波長における血液成分の各吸収係数である。物質濃度の各部分は未知であり、演算しなければならない。
【0088】
今や、全体積に対する血液成分の各部分を算出するために、方程式(10)に対応してn*n方程式系を構築することができる。
【0089】
例えば、5種類の異なる濃度を算出する必要がある場合、方程式を解くために5種類の異なる波長で測定を行わなければならない。これにより、正確に解くことができる5×5の線形方程式系が得られる。しかしながら、部分的に透過の、かつ部分的に反射の測定が行われる場合は、透過および反射の測定で条件が異なることを示す係数(KT/KR)を算出するために、さらに別の方程式が必要である。
【0090】
例えば、波長λ1〜λ3で透過の測定が行われ、かつ波長λ3〜λ5で反射の測定が行われるならば、次の方程式(11)の系が得られる。ここでは、波長λ3での測定が、透過および反射の両方で行われている。
方程式(11)
AgT(λ1)=E(λ1、b1)*Cb1+E(λ1、b2)*Cb2+E(λ1、b3)*Cb3+E(λ1、b4)*Cb4+E(λ1、b5)*Cb5
AgT(λ2)=E(λ2、b1)*Cb1+E(λ2、b2)*Cb2+E(λ2、b3)*Cb3+E(λ2、b4)*Cb4+E(λ2、b5)*Cb5
AgT(λ3)=E(λ3、b1)*Cb1+E(λ3、b2)*Cb2+E(λ3、b3)*Cb3+E(λ3、b4)*Cb4+E(λ3、b5)*Cb5
AgR(λ3)=(KT/KR)*{E(λ3、b1)*Cb1+E(λ3、b2)*Cb2+E(λ3、b3)*Cb3+E(λ3、b4)*Cb4+E(λ3、b5)*Cb5}
AgR(λ4)=(KT/KR)*{E(λ4、b1)*Cb1+E(λ4、b2)*Cb2+E(λ4、b3)*Cb3+E(λ4、b4)*Cb4+E(λ4、b5)*Cb5}
AgR(λ5)=(KT/KR)*{E(λ5、b1)*Cb1+E(λ5、b2)*Cb2+E(λ5、b3)*Cb3+E(λ5、b4)*Cb4+E(λ5、b5)*Cb5}
AgT(λn) 波長λnにおける透過の全吸収
AgR(λn) 波長λnにおける反射の全吸収
【0091】
方程式系(11)は、未知の値として5個の濃度Cbnおよび係数(KT/KR)を含み、したがって明らかにこれを解くことができる。測定が透過のみまたは反射のみで行われるならば、方程式の数は波長の数nにまで減らされる。他方、結果の精度を上げるために、未知の値より式が多いという冗長的な算出も行うことができる。マトリックスまたは代入により方程式系(11)を解き、それぞれの係数および吸収測定の結果を挿入することにより、個別の物質濃度Cb1〜Cb5を直ちに得られる。
【0092】
方程式系(11)が、身体部分に照射された強度I0および光検出器の感度が全ての波長で同じであるか、または、対応する正規化がなされているという前提に基づいていることは理解されよう。これについては、図14およびそれぞれの説明を参照されたい。
【0093】
強度差ΔIに基づく吸収Ag(λ)の測定は、未知の定数KTおよびKRのみを除いて正確に測定することができるため、濃度の絶対値を決定するパラメータはない。したがって、最も高濃度の物質濃度に尺度100%を割り振ることが認められる。しかしながら、水部分を含む主な血液成分を決定することによって、数%の誤差は別として血液組成がわかる。
【0094】
血液成分の濃度を算出するプロセス図の一例を図15に示す。
【0095】
反射操作での測定では、条件が透過操作よりも複雑であることから、通常、補正を行う必要があることを指摘しておきたい。特に、血液成分に対し、異なる波長では、異なる光散乱が起きることを考慮すべきである。
【0096】
濃度比を算出する第2の可能性は、発見的大洪水アルゴリズムによって与えられる。
【0097】
8種類の異なる波長が使用され、毎回、付随する全吸収が測定される。ここで重要なことは、絶対値の測定ではなく、大洪水アルゴリズムで使用される測定値の相互関係である。測定値は、最大の吸収が100%に対応するようスケール変換される。したがって、残りの7種類の波長の各吸収は100%より小さい値となる。
【0098】
ここで、理論的に可能な第1のランダムな血液組成を仮定する。
【0099】
含有する血液成分の、物質に固有で、かつ波長に固有の吸収係数の値から、各波長について理論的に予想される全吸収を計算する。実際の測定と全く同様に、理論的吸収も100%にスケール変換する。
【0100】
この最初に計算された吸収スペクトルと実際に測定された吸収スペクトルとの相関をとる。そこから得られる相関係数がアルゴリズムの出発点である。
【0101】
ここで、各ラウンドで、先の理論的に仮定された血液組成を僅かに変更させ、得られた吸収スペクトルと測定された吸収スペクトルとの相関を再度とる。この新しい相関係数を、ラウンド毎に僅かに増加する閾値と比較する。
【0102】
閾値が現在の相関係数を超えるならば、新しく算出された理論的血液組成は放棄され、前のものから新しい血液組成が算出される。
【0103】
閾値が現在の相関係数を超えないならば、閾値を僅かに増加させ、新たに算出された血液組成を次のラウンドの出発点として使用する。
【0104】
現在の閾値を変更させるような血液組成の変化が、それ以上起こり得ないならば、アルゴリズムを終了する。
【0105】
現在の血液組成が、実際に測定された血液組成に対する良好な近似に対応するとみなすことができる。
【0106】
発見的アルゴリズムの結果に関してより良い検証を行うために、アルゴリズムは、僅かに異なるパラメータ(different marginal parameters)と、異なる出発点とを使用して、複数回実施することができる。
【0107】
この洪水法では、僅かに異なるパラメータを使用することによって、それが測定値と良好に適合しない場合にも、「水レベル」と呼ぶ閾値を超えるときには受け入れられる近隣の解へ向けて探索が行われる。この方法の過程で、この閾値は、ゼロから出発して、現在の解が改善されなくなるまで、連続的に増加する。この方法によれば、計算費用を殆どかけずに良好な近似を得ることができる。
【0108】
濃度比は、さらに、相関によって決定することができる。
【0109】
物質および波長に固有の吸収係数に基づき、理論的に可能な血液組成の仮定の下で、個々の光の波長について期待される、対応する全吸収を計算することが可能である。これについては、吸収の相互関係がここでもまた極めて重要である。
【0110】
決定すべき各物質の濃度が、それぞれ、可能な最小の部分から可能な最大の部分まで小さな刻みで表されるような、そうした理論的に考えられる吸収スペクトルの1セットが計算される。本発明者らの場合、これらは
− 水44〜54%
− 酸化ヘモグロビン50〜100%、
− 非酸化ヘモグロビン1〜50%、
− カルボキシヘモグロビン1〜60%、
− メトヘモグロビン1〜70%
である。
【0111】
ここで、測定された吸収スペクトルと、上のようにして予め計算しておいた全てのスペクトルとの相関をとる。測定されたスペクトルと最良の相関を示すスペクトルを有する、理論的に決定された血液成分の濃度比が、実際の濃度比に良く近似する。
【0112】
この方法の精度は、第一に、使用できるハードウエアの計算能力により決まる。利用できる計算能力が高ければ高いほど、選択でき濃度等級はより細かくなり、得られる結果はより正確になるであろう。
【0113】
大洪水アルゴリズムに対するこの方法の優位性は、結果が明瞭で発見的性質がないことであり、これは、パラメータ分布の、ゼロより大きい刻み幅に起因して、結果に不可避的な不正確性が存在することを考慮したとしても、決定されたものより良い結果を得る可能性が決してないことを意味する。
【0114】
大洪水アルゴリズムでは、得られた結果が最良の結果に対応するものであると確実にいうことはできない。このことを補うために、アルゴリズムは異なる出発点から複数回実行される。
【0115】
この方法の利点は、アルゴリズム終了の少し前にパラメータの刻み幅を減少させることにより、算出結果が相関法に較べてより正確な結果を示すことができる点である。
【0116】
以上説明した計算法では、各波長について検出された容積脈拍曲線(図10)を出発点とする。曲線は、個々の心臓周期に分割され、各周期について各波長で最大値が求められる。その後、各波長について最大値(振幅)の平均値が計算される。したがって、使用した波長の数に応じて、5ないし6個の、相互関係として考慮すべき平均吸収値が得られる。上述した計算法により、血液成分の比例濃度が計算される。これらの濃度から、例えば、酸素飽和度、全ヘモグロビン、またはヘマトクリット値などのさらなるパラメータを算出することができる。
【0117】
測定結果の一般的な改善を行うために、異なる時間間隔で装置の較正を行うことができる。この目的のためには、例えば、反射受光器の較正シェルとして構成された、図11に示す第1の較正装置48を使用することができる。LEDの実際の光強度を測定するために、まず、検査する身体部分がない状態で装置の較正を行う。
【0118】
反射放射線受光器用18を較正するために、半球状の較正シェル48を反射センサー18上に、放射面も含まれるように配置する。前記較正シェル48は、個々のLEDの光強度を検出できるように、光の乱反射によって刺激される白色の内表面50を備える。
【0119】
さらに、図12に示すように、透過光部分用センサー22の較正を行うために、透過光部分用受光器22と反射受光器18との間に、好ましくはフラストコニカル状の較正シェル52を使用することができる。前記較正シェルも、白色内表面54、さらには、2つの検出器表面の間の中央に配置された白色膜56を備える。前記白色膜56は、LEDから透過光部分用受光器へ放射線が直接到達するのを防止し、同時に無指向性の乱反射光を発生させる。この測定により、透過用受光器22に関して、各LEDの光強度が測定される。
【0120】
図13cは、各LEDについて測定した全光強度を示す。この測定はゼロ測定と呼ばれ、上述の較正シェルにより行われる。さらに計算を進めるにあたって、均一な放射を仮定できるようにするために、100%への強度の正規化が行われる。この過程で、各LEDについて光強度の正規化係数が得られる(図14c)。較正のためのこの測定は、各センサーヘッドについて1回行われ、決められた時間間隔、例えば2ないし3年毎に行われる。使用する光強度が減衰していく光源、例えばLEDの光強度が低下するために、この方法が必要である。
【0121】
上述の較正の後、身体部分について測定を行うことができる。この後に続く方法の工程は、個々にまたは全体として本発明の方法に含まれ得る。DC成分およびAC成分を検出することが好ましい。検出された脈動性の光の吸収を比較することができるよう、各波長におけるDC成分に応じて、それらを正規化しなければならない。この目的のためには、1回の測定につき少なくとも1回、各波長におけるDC成分を測定する。
【0122】
一例として、図14bに、透過光部分を示す。図に示すように、大部分の光が組織(骨、皮膚、およびその成分(例えば、メラニン、ビリルビンなどのヘモグロビンの分解物、小静脈など))により吸収されている。
【0123】
指のない状態で行う較正で測定された光強度では(図13c)、図14に示すように、光強度係数(1.33;1.25;1.00など)が検出される。さらに、DC成分を100%へ正規化するための係数も検出される(図14:20.00;33.33;12.5など)。
【0124】
演算は次表に示すように行われる。
【0125】
【表1】
【0126】
例えば、波長542nmでは、ピーク値3AUが測定されている(ランダム単位)。このピーク値に光強度係数(ここでは1.33)を乗じると、4AUが得られる。その後、この結果に一定成分の係数(ここでは20)を乗じる。得られた80AUを、その後、アナログ増幅度1で除する。この除算では、各波長はその増幅度により特徴付けられる(図14:542nm:1;560nm:1;577nm:1;660nm:10;805nm:5;950nm:20;1200nm:20))。
【0127】
したがって、542nmの脈動性AC成分の絶対強度は、80.00AUである。正規化した値を相互に比較できるよう、残りの波長についても、同じ原理でAC成分の計算が行われる。この系統的アプローチにより、DC成分が除かれ、脈動的変化を受ける部分のみが考慮されるようになる。DC成分は、皮膚の色、皮膚の状態(角質化)、骨格構造、および測定部位に依る他の特性によって、人それぞれ個々の値をとる。
【0128】
しかしながら、先に説明したように、本発明の方法では、他の演算方法も適用することができる。
【0129】
以下に、図16〜21を参照しながら、異なる血液成分の濃度の測定に適した装置の種々の実施形態をさらに詳しく説明する。
【0130】
図16は、本発明の装置の一実施形態を用いて行われた反射の測定を示す概略図である。この方法では、放射線源12は測定用放射線14を放射する。前記放射線源12は、好ましくは、複数のLED12a〜12hで構成することができる。放射された測定用放射線14は、検査する身体部分16により少なくとも一部が反射され、測定用放射線14の一部が反射放射線20として第1の放射線受光器18に向けて反射される。
【0131】
検査する身体部分16を透過した放射線24の測定を、図17に概略的に示す。この場合もまた、放射線源12は検査する身体部分16に向けて測定用放射線14を放射する。放射線14の少なくとも一部は検査する身体部分16を透過し、透過放射線24として第2の放射線受光器22に入射する。第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22は、フォトダイオードとして設計することが好ましい。
【0132】
さらに、図2に示すように、装置は、第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22に接続された演算装置26を備える。測定された放射線の反射部分20および透過部分24は前記演算装置26へ送られ、この装置は、測定された放射線部分から、検査すべき身体部分16により生じた、放射線14の吸収を算出することができる。
【0133】
演算装置26は、例えば、上述した演算を実行するための特定のソフトウエアプログラムをその上で走らせるPCとして設計することができる。特に、PCでは、これらの演算を、透過および反射放射線の測定とは異なる時間に行うことができる。したがって、本発明に必須の演算工程は、これまで述べてきた患者の特徴の物理的検出から独立して実施することができる。
【0134】
図18に示すように、装置10は、放射線源12が複数の個々の放射線源12a〜12hを備えるように設計することが特に好ましい。これらの個々の放射線源は、LEDで構成することができ、第1の放射線受光器18の周りに円形状に配置される。
【0135】
図18および19に示すように、第1の受光器18は、好ましくは円形状の分離手段32内に配置される。それは、内側不透光性シェル32a、および、白色コーティングが施された内壁を有する外側不透光性シェル32bを備えることができる。この構成では、LED12a〜12hは、内側シェル32aおよび外側シェル32bの間のスペース33に配置される。LEDは、第1の受光器18とは反対側に15°の角度がつけられる。これにより、検査する身体部分16が配置される位置に、測定用放射線が収束される。
【0136】
好ましくは、下部34では、内側シェル32aおよび外側シェル32bは、例えば回路基板などの基板36から上方に垂直に伸び、それから上部35で角度βで内側に、すなわち第1の受光器18の方に曲げられていることが好ましい。この配置と、LEDが例えば15度の角度で傾いていることによって、検査する身体部分16に向けての測定用放射線14の放射に狭い隙間37のみを利用できるようにすることが可能となる。これによって、迷光(シャント光)が光源12から第1の放射線受光器18に直接放射されるのを有効に防止することができる。この測定の目的は、第1の放射線受光器18が、検査する身体部分16で反射された放射線20のみを受けることにある。
【0137】
内側シェル32aおよび外側シェル32bの間に空間33が形成され、その中に、LED12a〜12hが、例えば前記回路基板36上に配置される。前記空間33には、例えば透明な接着剤を充填することができる。
【0138】
血液中の異なるヘモグロビン誘導体や水が異なる波長を異なる程度に吸収するという事実に基づき、個々の光源12a〜12hを次の波長を放射するよう構成することができる。
・540nm±5nm、562nm±5nm、573nm±5nm
・623nm±5nm
・660nm±10nm
・805nm±10nm
・950nm±10nm
・1200nm±50nm
【0139】
使用した受光器表面の検出可能な波長領域を、図20および21に、グラフで示す。図21に示した特性曲線は2つの異なるインジウム・ガリウム検出器を表す。左側の検出器(L1713−05/−09)を使用することが特に好ましい。
【0140】
8種の波長のうち7種はシリコン検出器で検出される。1100nmを超える波長は、それに応じてインジウム・ガリウム・ヒ素系フォトダイオードにより検出される。
【0141】
図2に示すように、検査する身体部分16は、第1の収容要素28と第2の収容要素30の間に配置された収容室38に収容されることが好ましい。
【0142】
本装置は、さらに、クランプ機構40、例えばスプリング機構を備えることができる。それは、装置10を検査する身体部分16に適用できるように、第1の収容要素28および第2の収容要素30に連結される。装置10を、例えば指16に、より容易に装着できるように、2個の作動突起42を設けることができる。
【0143】
装置10は、個々の光源12a〜12hをシーケンシャルに作動させる制御装置41を備えることが特に好ましい。
【0144】
図22は、方程式系を使用する簡単な例により、血液成分の濃度を計算する方法を概略的に示す。次の方法の工程を実施することが好ましい。
1.身体組織に異なる波長λ光を放射する工程
2.透過または反射光部分の強度曲線Iを測定する工程
3.心臓収縮期および拡張期の間の強度差Is−Idを求める工程。
4.身体組織に予想される血液成分の既知の吸光係数Eを方程式系(11)に代入する工程
5.方程式系(11)を解く工程
6.最も高濃度の血液成分を100%にセットする工程
7.さらに他の成分の濃度を求める工程
【0145】
以下に、簡単な例により必要な演算について説明する。
【0146】
ランベルト−ベールの法則から
I/I0=10−ECd
I 透過強度
I0 入射強度
E (特定の波長に対する)血液成分の吸収係数(モル吸光係数)
C 血液成分の濃度
d 層の厚さ
であり、放射線が透過する厚さdの層の微小変化Δdに対して、近似的に次が得られる。
(Is−Id)/I0=−2.3EC(ds−dd)
ds 心臓収縮期の層の厚さ(全体で)
dd 心臓拡張期の層の厚さ(全体で)
【0147】
血液成分のモル吸光係数Eと濃度Cの積は、全吸収Agと定義される。
Ag=E*C
【0148】
上の2つの方程式を比較すると、照射強度I0および行路差Δd=(ds−dd)が全ての測定で同じならば、全吸収は測定できる強度差ΔI=(Is−Id)に比例することが明らかである。
ΔI〜Ag
【0149】
図22は、2つの異なる波長λにおける2つの異なる物質の吸光曲線を示す。この図から、距離の変化Δdが非常に小さい場合、各回の強度変化ΔIは非常に小さいため、上で導いた線形近似が妥当であることがわかる。
【0150】
2つの物質1および2(血液成分b1およびb2)で、2つの波長λ1およびλ2の吸光係数は既知である。
E(λ1,b1)、E(λ2,b1)、E(λ1,b2)およびE(λ2,b2)
【0151】
さらに、血液成分の濃度Cがあまり高くない場合、個々の成分の吸収を加算できることが知られている。このことから、次が得られる。
Ag(λ)=E(λ,b1)*C1+E(λ,b2)*C2
Ag(λ)=(特定の波長に対する)全吸収
E(λ,bn)=波長λに対する血液成分の吸収係数(既知)
Cn=血液成分nの濃度
【0152】
2つの異なる波長λ1およびλ2に対して、方程式系が得られる。
Ag(λ1)=E(λ1,b1)*C1+E(λ1,b2)*C2
Ag(λ2)=E(λ2,b1)*C1+E(λ2,b2)*C2
【0153】
仮定した値を使用して(一例として)
E(λ1,b1)=1
E(λ2,b1)=2
E(λ1,b2)=0.25
E(λ2,b2)=1.5
C1=1
C2=2
とすると、次が得られる。
Ag(λ1)=1*1+0.25*2=1.5
Ag(λ2)=2*1+1.5*2=3
【0154】
しかしながら、実際には、(異なる波長に対して)モル吸光係数Eおよび全吸収Agのみが既知である。しかしながら、濃度C(例題では既知と仮定した)は計算されるべきものである。この計算は以下のように行われる。
【0155】
未知の濃度C1およびC2を含む場合には、方程式系は以下のようになる:
Ag(λ1)=1*C1+0.25*C2=1.5K0
Ag(λ2)=2*C1+1.5*C2=5K0
K0 照射強度I0および行路差Δd(血液脈動)により求められる定数
【0156】
第1の方程式から、次が得られる。
C1=1.5K0−0.25*C2
【0157】
第2の式から得られるのは、
2*(1.5K0−0.25C2)+1.5C2=5K0
C2=2K0
【0158】
C2を方程式系の第1の方程式に代入すると、次が得られる。
1C1+0.25*2K0=1.5K0
C1=1K0
【0159】
上で決めたように、最も高濃度の血液成分、すなわちC2を100%に設定する。
【0160】
これにより、次が得られる。
C2=100%
C1=50%
【0161】
このように、血液成分濃度は、非常に簡単で、かつ容易に確認される例により計算された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分濃度の非侵襲連続計測法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ヒトの血液は、乾燥質量基準(すなわち、全ての非結合水が除去されている)で最大38.5%までのヘモグロビンで構成されるが、これは湿潤物質基準(すなわち、生理的に通常の状態)では約15%である。そのヘモグロビンには以下の成分が含まれる。
− 酸素不飽和ヘモグロビン(RHb)
− 酸素飽和ヘモグロビン(O2Hb)
− カルボキシヘモグロビン(COHb)
− メトヘモグロビン(MetHb)
【0003】
図1にヒトの血液組成を例示する。医療上の目的で、ヘモグロビン濃度、特に、上記4種のヘモグロビン誘導体濃度を測定する必要がしばしば生じる。しかしながら、本発明は、血液のさらに別の成分の測定にも使用することができる。したがって、ヘモグロビンに関して記載した全ての特徴は、他の血液成分の濃度測定にも使用することができる。
【0004】
血液中のヘモグロビン含有量の測定に、Hb分光光度計を使用することが知られている。Hb分光光度計は化学試薬を充填したキャピラリーギャップを備える。少量の血液、例えば一滴の血液を前記キャピラリーギャップに加えると、化学分解が生起され、ギャップの光透過性が変化する。光透過性の変化は光度計により検知することができる。
【0005】
上記のタイプの装置は、Hb値を測定するために患者から血液を採取しなければならないという欠点を有している。
【0006】
さらに、米国特許出願公開第2005/0267346A1号明細書には、異なる波長領域における吸収の測定から血液成分の濃度を測定する方法が開示されている。しかしながら、前記公開公報は、n≧2バンド以内の電磁放射線を血液成分濃度の測定に使用する方法に関するものである。この方法では、検出する各物質を前記バンドの1つに割り当てる必要がある。しかしながら、実際、これには大きな制約を伴う。なぜなら、多くの血液成分を検出する場合に、適切な吸収構造を有する、対応する数の異なるバンドを見出すことは殆ど不可能であるからである。
【0007】
米国特許第6104938号明細書には、異なる波長について身体部分の透過光およびそれぞれの反射光の強度を求めることによって血液成分濃度を測定する方法が記載されている。この計算方法は、光が透過または反射する部分にのみ適用されるものであって、両方を組み合わせた評価には適用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、多くの血液成分、特に、比較的多くの血液成分濃度を非侵襲的に測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は請求項1の特徴により達成される。
【0010】
血液成分濃度の測定方法は次の工程を含む。
a.放射線源により、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線を放射線源から放射する工程、
b.検査する身体部分で反射された、前記複数の波長の測定用放射線を、第1の受光器で受光する工程、
c.検査する身体部分を透過した、前記複数の波長の測定用放射線を、第2の受光器で受光する工程、
d.第1の放射線受光器による前記反射放射線の測定および第2の放射線受光器による前記透過放射線の測定に基づいて、検査する身体部分により引き起こされた各波長の測定用放射線の吸収を算出する工程、
e.各波長の測定用放射線について算出された前記吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する工程。
【0011】
本発明の方法の出発点は、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線を放射するのに適した装置である。前記装置は、また、検査する身体部分によって反射された測定用放射線を受光する第1の受光器を備える。さらに、検査する身体部分を透過した測定用放射線を受光する第2の受光器が設けられている。検査する身体部分は、例えば、ヒトの指とすることができる。測定用放射線としては、例えば、可視領域の光および/または近赤外領域の赤外線などの電磁放射線を使用することができる。本出願人によって出願された特許出願「血液成分の濃度検出装置(Apparatus for detection of concentrations of blood constituents)」に記載の装置を使用することが特に好ましい。
【0012】
本発明は、血液の種々の成分、例えばヘモグロビンや水は、放射線の吸収度が異なるであろうという考えに基づいている。具体的には、種々の血液成分の吸収度が大きく異なるような特定の波長の放射線、例えば光が存在する。そのような波長を放射するという観点から放射線源を選択すれば、本発明の装置により得られる結果を良好なものにすることができる。
【0013】
本発明の理論的基礎はランベルト・ベールの法則にある。
I/I0=10−ECd (1)
I 出射/透過強度
I0 入射強度
E (特定の波長に対する)血液成分の吸光係数(モル吸光係数)
C 濃度
d 層の厚さ
【0014】
ランベルト・ベールの法則は、放射線が吸収物質中を通過するとき、その強度が物質の濃度によってどのように変化するかを示すものである。これに関連して、吸光係数は透過光と入射光との比から求められる。
【0015】
したがって、本発明においては、第1の放射線受光器は、検査する身体部分によって反射した放射線を測定するよう作動する。また、第2の放射線受光器は、検査する身体部分を透過した放射を測定するよう作動する。
【0016】
先述したように、放射線の波長によって吸収度が異なるため、使用する波長を適切に選択することにより、算出した吸収度を基に、さらに計算を行うことによって種々の血液成分の濃度を算出することができる。この方法の基準点として、血液成分が同じ吸収度を示す、所謂、等吸収点の波長を使用することもできる。
【0017】
このように、異なる波長を放射する放射線源を使用すれば、吸収に特に明確な差が表れるような波長そのもので測定が行われることになるため、異なる血液成分の濃度を極めて正確に測定することが可能になる。例えば、ヘモグロビン誘導体を測定するには、下記波長が特に有利であることがわかった。
・カルボキシヘモグロビンを酸化ヘモグロビンと区別するためには、540nm±5nm、562nm±5nm、573nm±5nm
・メトヘモグロビンを酸化ヘモグロビンと区別するためには、623nm±5nm
・全てのヘモグロビン誘導体を互いに区別するためには、660nm±10nm(なぜなら、この波長で全ての成分が異なる吸収度を示すからである)
・全ヘモグロビンを水と区別するためには、805nm±10nm(なぜなら、この波長では水による吸収はなく、ヘモグロビンのみの吸収が生じるからである)
・基準点としては、950nm±10nm(なぜなら、そこでは全ての成分が同一の吸収度(等吸収点)を示すからである)
・水を全ヘモグロビンと区別するためには、1200nm±50nm(なぜなら、この波長ではヘモグロビンによる吸収はなく、水のみの吸収が生じるからである)
【0018】
ヘモグロビンに関する、血液組成の異なるパラメータの測定を可能にするためには、複数の異なる波長を組織に向けて準平行的に放射しなければならない。波長の選択は、既に一部記載したように、次のことを基準になされるであろう。
1.ヘモグロビン誘導体の吸収特性
2.水の吸収特性
3.特定の波長の皮膚に対する侵入深さおよびそれぞれの透過性
4.各種誘導体の吸収スペクトルにおける等吸収点
5.放射線源の技術的可能性
【0019】
使用する波長を選択する際、皮膚の光の窓を考慮することが特に好ましい。ヒトの皮膚では、光の窓は約350nm〜1650nmの波長領域にある。
【0020】
特に、本方法は、波長毎に測定された吸収値を保存すること、および、前述した方法の工程を繰り返すことを含み、波長毎に測定された吸収値が、各繰り返しサイクルで保存されることが好ましい。その後、波長毎に吸収の時間的変化が示されるように、波長毎に放射された放射線の個々の吸収値を統合する。この表示は、例えば、曲線の形または表の形で行われる。
【0021】
各繰り返しサイクルで波長毎に測定された吸収値の保存、吸収の時間的変化を示すための波長毎の吸収値の統合、およびその変化の表示は、演算器により、演算器が検査する身体部分または患者の身体と相互依存しない状態で行う。
【0022】
測定する血液成分の数と少なくとも同じ数の波長を使用することが好ましい。例えば、血液中の前述した4種類のヘモグロビン誘導体および水の濃度を測定しようとする場合、少なくとも5種類の異なる波長を使用する必要がある。より正確な測定を行うには、さらに多くの波長、すなわち、全部で8種類の波長で、強度を測定することが適切であり得る。血液成分濃度比を算出する方法としては、例えば、線形方程式系による算出法、発見的アルゴリズムを用いる算出法、および相関に基づく算出法などが挙げられる。これらの方法については、本願の実施形態に関連してより詳細に説明する。後に、複数の個々の血液成分について容積脈拍の変化を求めることができるよう、全ての方法で異なる特性の波長が使用される。実際に個々の血液成分濃度を知るために、各血液成分について測定されるのは、全体の容積脈拍の変化ではなく、使用した波長の吸収変化における決定的ポイントでの種々の吸収値のみである。これらの決定的ポイントは、例えば、吸収変化の最大値である。
【0023】
スナップショット、すなわち、異なる波長の吸収値が測定される単一の測定だけでなく、容積脈拍が変化する過程の異なる時点で、複数の測定を行うことが特に好ましい。特に、吸収変化の脈動部分を検知するには、例えば、その後に変化曲線の最大点(心拡張期)との差が求められるように、変化曲線の最小点(心収縮期)もまた必要である。何故なら、さもなければ、DC成分を考慮することができないからである。さらに、非常に数多くの測定を行うことにより、完全な脈容量変化曲線を求めることができ、これにより、この曲線から他の情報を引き出すことも可能になる。例えば、計算アルゴリズムへの入力データとして、最大値を使用する代わりに、互いの関係について面積積分を使用することができる。
【0024】
使用する大部分の波長で、全血液成分の吸収からの混合信号(容積脈拍の和)が得られる。検出された互いに対する吸収振幅比から、例えば上述した算出方法により、個々の物質および波長に固有の吸光係数を使用して、互いに対する血液成分の濃度比を算出することができる。前記吸光係数は、体積当たりの物質の量および体積当たりの質量の両者と関連させることができる。したがって、算出すべき比は、体積当たりの個々の血液成分の質量比かまたは体積比のいずれかに対応する。
【0025】
血液成分濃度を算出する装置について、以下により詳しく説明する。
【0026】
前記装置は、検査する身体部分によって引き起こされた放射線の吸収を計算するため、第1および第2の放射線受光器に接続された演算装置であって、前記計算が測定された放射線の反射部分と透過部分を基になされる装置を備える。前記演算装置は、例えばコンピュータとすることができる。好ましくは、検査する身体部分による放射線の吸収の計算は、演算装置で、演算装置と検査する身体部分との間の相互依存性が要求されない方法により、行うことができる。例えば、演算装置は、特定のソフトウエアプログラムを走らせる装置として設計することができる。
【0027】
放射線源と、検査する身体部分により反射された放射線を受光する第1の放射線受光器とは、検査する身体部分に対して同じ側に配置されることが特に好ましい。その後、透過放射線を受光する第2の放射線受光器を、検査する身体部分の第2の側で、第1の放射線受光器とは反対側に配置することができる。
【0028】
血液中のヘモグロビン濃度をより正確に測定するため、かつ/またはヘモグロビン誘導体の濃度を測定するために、放射線源は個々の異なる波長の複数の放射線源を含むことがさらに好ましい。前記個々の放射線源は、例えば、LED、レーザーダイオードまたはフィルターを有する白色光LEDとして構成することができる。異なるヘモグロビン誘導体は、放射線の吸収度に関し、特定の波長で特に顕著な差を示すため、この特徴は特に有利である。異なるヘモグロビン誘導体、および、例えば水などの他の血液成分それぞれの吸収度の差が特に大きい波長を使用して測定を行うことは、特に有利である。
【0029】
本発明の装置のさらに好ましい特徴を以下に示す。
【0030】
装置は、第1および第2の放射線受光器が互いに反対側に配置され、したがって、第1および第2の放射線受光器の間に、検査する身体部分を収容するための収容室が形成されるように構成されることが特に好ましい。この配置で、放射線源と第1の放射線受光器を1つの平面内に位置させることができる。
【0031】
放射線源を、例えばLEDの形態の光源として設計し、かつ、第1および第2の放射線受光器を、例えばフォトダイオードの形態の受光器として設計することが特に好ましい。
【0032】
LEDは、前記収容室の第1の側、好ましくは第1の受光器の周囲に、円形状に配置することができる。
【0033】
放射線源が、径方向に配置された、少なくとも2つの同一波長の個別の光源を備えるならば、検査する身体部分に特に均一に放射線を当てることができる。使用する波長の数が多いために、構築上の理由から、同一波長の2つの個々の光源を互いに反対側に配置することができない場合は、1つの波長につき1つの個別の光源をそれぞれ使用することができる。この場合、個々の光源からの放射線が、検査する身体部分、例えばヒトの指が配置される位置で収束するように、個々の光源の第1の受光器に向いていない側の面を、好ましくは角度で15°傾けることが特に好ましい。
【0034】
検出差を生じさせなくするために、第1の受光器および第2の受光器は、同じタイプであることが好ましく、例えば、光検出器で構成することができる。例えば、400nm〜1650nmというかなり広範囲の波長をカバーするために、二色検出器を使用することが好ましい。この検出器は、例えば、400nm〜1100nmの波長範囲を有するシリコンからなる受光面、および、例えば、1000nm〜1700nmの波長範囲を有する、インジウム・ガリウム・ヒ素からなる受光面を備える。しかしながら、例えば、異なる材料からなる3つの受光面を有する検出器を使用することもできる。重要なことは、350nm〜1650nmの範囲全体を検出し得ることである。
【0035】
直接の迷光(シャント光)が第1の受光器に入射するのを防止するために、光源は第1の受光器から隔離手段により、好ましくは光不透過性の内部および外部シェルにより隔離されている。外部シェルの内壁には、放射される光を均一化するために白色のコーティングが施されている。シェルは、放射線が所定の表面(実質的に指パッドの表面に対応)に放射されるように、円錐形にすることができる。さらに、2つの受信信号(組織、散乱など)間の差から得られるかく乱要因を考慮するために、反射センサーが、互いに近接した2つの受光器を特に備えるようにすることもできる。
【0036】
衛生上の理由、およびより良い取り扱いのために、前記シェルは光源および第1の受光器に強固に取り付けることができる。さらに、シェルの間の窪みには、好ましくは透明で、傷が付きにくく、硬く、かつ/または生体適合性を有する接着剤を充填することができる。前記接着剤は、シェルと共に、僅かに内側に湾曲した(凹形の)形状に仕上げることができる。この配置の反対側に、透過放射線受光器が位置する。
【0037】
装置は、その第1の側と第2の側それぞれに、収容室の範囲を定める第1および第2の収容要素を備えることができる。第1および第2の収容要素は、装置が検査する身体部分、例えば指に固定されるように、クランプ機構により互いに結合させることができる。
【0038】
第1および第2の放射線受光器は、浮かせた状態で支持し、それによって、検査する身体部分との最適な接触が保証され、均一な再現性のある接触圧が得られるようにすることが好ましい。特に、第1および第2の放射線受光器は、検査する身体部分および結合手段それぞれに直接取り付けられることに注意すべきである。
【0039】
非常に狭い測定可能領域に光が集中するように、LEDと皮膚との間、および皮膚と受光面との間それぞれの光学的結合に、ガラスファイバケーブルを使用することが特に好ましい。
【0040】
信号の質を向上させるために、本発明の装置は、放射線源、例えば透過LEDの放射線強度を、使用するケーブル毎に、自動的、かつ連続的に追跡することができるように構成することができる。出力信号が小さすぎる場合、または大きすぎる場合、それぞれ伝送電力が自動的に増幅されるか、または減衰される。この因子は、これを信号の評価に含ませるために、定量的な再現性がなければならない。同じ原理が、放射線受光器、特に二色検出器の強度にも適用することができる。したがって、例えば、8個のLED(8種類の波長)を使用する場合には、8つの追跡プロセスが実行され、検出器(2個の受光面それぞれに、透過および反射)を使用する場合には、4つの追跡プロセスを実行することができる。
【0041】
本発明の装置は多くの用途で使用することができる。例えば、ヘモグロビン濃度の連続的な非侵襲測定に、ここに記述した装置を使用することができる。さらに、微小血管疾患の検出に本装置を使用することができる。さらに、血圧の連続的非侵襲検出に使用することができる。本発明の装置は、また、さらに別の方法、特に診断または医療の方法に使用することができる。
【0042】
特に、本発明の装置は、1種または複数の血液成分の容積脈拍変化を測定するのに適している。測定された容積脈拍変化から、また、特に容積脈拍変化の形から、例えば患者の血圧または微小血管疾患の存在に関する情報などの、さらなる医学上の結果を引き出すことができる。個々の血液成分の容積脈拍変化は、例えば単一波長の使用により検出することができる。この場合、使用した波長において測定された吸収の変化は、測定すべき血液成分の容積脈拍変化に対応する。容積脈拍の変化を正確に測定するには、既述の基準にしたがって使用する波長を選択する必要がある。
【0043】
1つの独立した発明は、異なる血液成分の濃度測定を行う装置の操作方法に関する。これについては、本願の中で記載した装置を使用することができる。前記装置が、異なる波長の複数の測定用放射線を放射するのに適した、少なくとも1つの放射線源を備えることが、必須である。本発明の方法においては、それぞれ1つの波長の測定用放射線を放射するために、好ましくは連続的に放射線源を作動させる。すなわち、毎回連続的に、特定波長の測定用放射線を放射するよう、放射線源を駆動させる。特に、これに関連して、放射線源を、それぞれ1つの波長の測定用放射線源を放射する、例えばLEDなどの複数の個々の放射線源により形成することができる。それぞれ1つの波長の測定用放射線を連続的に放射する代わりに、異なる波長の測定用放射線を同時に放射するのに適した放射線源を備えることもできる。ここで使用する第1および第2の放射線受光器は、個々の放射された波長の測定用放射線を別々に受光するのに適するように構成されていなければならない。これは、例えば、それぞれが、例えば周波数フィルターを使用して、放射された特定の周波数バンドの放射線を受光する、複数の個々の放射線受光器を備えることによって実現することができる。しかしながら、各波長は連続して放射されることが好ましい。
【0044】
さらに、本発明の方法においては、検査する身体部分により反射された各波長の測定用放射線は、第1の放射線受光器が受光する。さらに、検査する身体部分を透過した各波長の測定用放射線は、第2の放射線受光器が受光する。その後、検査する身体部分により引き起こされた放射線の吸収が、波長毎に算出される。この算出は、第1の放射線受光器による反射放射線の測定と、第2の放射線受光器による透過放射線の測定に基づいて行われる。
【0045】
そうでなければ、本発明の方法は、本発明の装置に関連して記載した全ての特徴を含むことができる。
【0046】
特に、本方法は、各波長毎に検出された吸収値を保存する工程、および前述した本方法の工程を繰り返す工程を含み、検出された各波長の吸収値が、繰り返しサイクル毎に保存されることが好ましい。その後、各波長における吸収の時間的変化を表すために、放射された放射線の個々の吸収値を波長毎に統合する。これは、例えば曲線または表で表され、容積脈拍の変化と称する。
【0047】
各繰り返しサイクルの各波長で測定された吸収値の保存、吸収の時間的変化を表すための各波長における吸収値の統合、および前記変化の表示は、演算装置で、前記演算装置が検査する身体部分または患者の身体と相互依存しない状態で行うことが好ましい。
【0048】
要約すると、本発明の方法には以下の工程が含まれる。
a.それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線を連続的に放射する工程、
b.検査する身体部分で反射された各波長の測定用放射線を第1の受光器により受光する工程、
c.検査する身体部分を透過した各波長の測定用放射線を第2の受光器により受光する工程、
d.検査する身体部分により引き起こされた放射線の吸収を、第1の放射線受光器による前記反射放射線の測定、および第2の放射線受光器による前記透過放射線の測定に基づいて算出する工程、
e.前記方法の工程a.〜d.を複数回繰り返す工程であって、測定用放射線の各波長に対するそれぞれの吸収値を、各繰り返しサイクル毎に保存する工程、
f.保存された吸収値を統合して、測定用放射線の各使用波長に対する吸収の時間的変化(容積脈拍の変化)を表示する工程。
【0049】
特に、前記方法の工程d.およびf.は演算装置により、前記演算装置が検査する身体部分と相互依存しない状態で行われる。
【0050】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ヒトの血液組成の概観。
【図2】血液成分濃度の測定に適した装置を示す概略図。
【図3】ヒトの皮膚への光放射の浸透深さを示すグラフ。
【図4】通常のヘモグロビン濃度(150g/l)のヒトの血液の吸収スペクトルを示すグラフ。
【図5】通常の吸収スペクトルと、カルボキシヘモグロビンおよびヘモグロビンがそれぞれ高濃度の場合の吸収スペクトルとの比較を示すグラフ。
【図6】ヘモグロビンおよび水の吸収スペクトルを示すグラフ。
【図7】波長に依存する各種ヘモグロビン誘導体の吸収係数を示すグラフ。
【図8】複数の個別の放射線源および放射線受光器の制御を示すグラフ。
【図9】放射線受光器の読み出し挙動を示す概略図。
【図10】異なる波長の吸収変化を示すグラフ。
【図11】反射放射線受光器用較正装置を示す概略図。
【図12】透過放射線受光器用較正装置を示す概略図。
【図13】容積脈拍曲線を正規化する係数を計算するための光強度を示すグラフ。
【図14】計算で得られた、容積脈拍曲線を正規化する係数を示すグラフ。
【図15】線形方程式系により濃度を算出するためのプロセス図。
【図16】反射の測定を示す概略図。
【図17】透過の測定を示す模式図。
【図18】本発明の装置の第1の収容要素を示す概略図。
【図19】第1の放射線受光器を示す断面図。
【図20】放射線受光器の検出範囲を示すグラフ。
【図21】放射線受光器の検出範囲を示すグラフ。
【図22】2つの異なる波長λにおける2つの物質の典型的な吸光曲線であって、僅かな厚さの変化Δd(血液の脈拍)により生じた強度差ΔIを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図2のように、本発明の方法の実施に適した装置は、検査する身体部分16に向けて測定用放射線14を放射する放射線源12を備えている。検査する身体部分16はヒトの指であることが好ましい。しかしながら、それに代えて、例えばヒトの耳たぶやその他の適切な身体部分なども測定に使用することができる。
【0053】
前記装置10は、さらに、検査する身体部分16によって反射された放射線20を受光するように配置された第1の放射線受光器18を備えている。図示した実施形態においては、第1の放射線受光器は、第1の収容要素28内に配置されている。前記第1の収容要素28内には、放射線源12もまた配置されている。
【0054】
装置10は、さらに、検査する身体部分16を透過した放射線24を受光するように配置された第2の放射線受光器22を備えている。図示した実施形態においては、第2の放射線受光器22は、第1の収容要素28とは反対側に位置する第2の収容要素30内に配置されている。ここで、「反対側」は、2つの収容要素28、30、並びに第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22が、例えば指16がそれらの間に位置するように配置されていることを意味する。
【0055】
放射された測定用放射線14は、少なくとも一部が検査する身体部分16によって反射され、その結果、測定用放射線14の一部が、反射放射線20として第1の放射線受光器18に向けて反射されることになる。
【0056】
前記放射線14の少なくとも一部は、検査する身体部分16を通過し、透過放射線24として第2の放射線受光器22に入射する。第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22は、好ましくはフォトダイオードとして設計される。
【0057】
装置は、さらに、第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22に接続された演算装置26を含む。測定された放射線の反射部分20と透過部分24が前記演算装置26に送られ、その放射線部分の測定値から、検査する身体部分16によって引き起こされた放射線14の吸収が算出される。
【0058】
演算装置26は、例えば、前記演算を実行する特定のソフトウエアプログラムによって作動するPCとして設計することができる。特に、前記演算は、透過放射線と反射放射線の測定時点とは異なる時でもPCで行うことができる。したがって、本発明に必須の演算工程は、これまで記載してきた患者の特徴を物理的に検出することから独立して行われる。
【0059】
本発明の方法は、特に、例えばコンピュータまたはマイクロプロセッサなどの制御装置41により制御することができる。前記制御装置41は装置10の一部とすることができる。
【0060】
本発明の方法を実施するには、他の適切な装置を使用することもできる。そのような装置は、少なくとも1つの、異なる波長の測定用放射線を放射する放射線源を備えることが必須である。
【0061】
放射される波長は、例えばヒトの皮膚が放射線を透過し得る領域のものである。この領域は光の窓と呼ばれ、約350nm〜1650nmの波長領域にある(図7参照)。前記領域の外側では、皮膚の吸収が大きいため、放射線がさらに深く組織に入り込むことはほとんど不可能である。
【0062】
図6に示すように、例えばヒトの血液中のヘモグロビン誘導体および水が、吸収度に関して特に顕著な差を示すのは、これらの決定的な波長においてである。
【0063】
例えば、光源12が異なる波長を放射するように構成されたLEDを複数含むことが特に好ましい。この場合、その動作のON、OFFが例えば1.2kHzの周波数で連続的に行われ、互いに異なる2つの波長が同時には放射されないように、LEDを制御することができる。例えば周波数フィルターにより、特定の周波数帯の放射線のみを受光し得る複数の放射線受光器を備えているなら、異なる波長の測定用放射線を時間的に並列に放射することも可能である。しかしながら、好ましいのは、個々の放射線源のシーケンシャルな作動であり、その場合、1.2kHzに限らず、他の適当な周波数領域を使用することもできる。
【0064】
受信信号の表示は、所謂通常動作またはロックイン動作で行うことができる。ロックイン動作では信号品質が改善される。ロックイン方法を適用するには、ロックイン増幅器は、各LEDのスイッチオン状態時に1回、および、LEDのスイッチオフ状態時に1回、信号を検出しなければならない。したがって、LEDのクロックパルスの速度は、通常動作とロックイン動作とでは異なり得る。ロックイン動作では、LEDの制御周波数をロックイン増幅器に必要な周波数に合わせることができる。
【0065】
ロックインの原理は、非常に微小な信号にフィルターをかけ、増幅する方法である。この方法では、周波数と位相が既知の参照信号が測定信号の上に変調され、他の周波数の直流電圧およびノイズを消去する。
【0066】
通常動作およびロックイン動作のいずれにおいても、一定成分(一定部分/オフセット)とパルス状の交流成分(交流部分)とを決定する。一定成分は照射された組織の生理学的特性により決まる。これは、例えば、組織の特性や脈動部分のない血管(小静脈など)など、様々な原因により影響される。このオフセットの上に、血液の容積変化から生じるパルス状の交流成分(交流部分)が乗る。
【0067】
DC成分は、補正部分とみなすことができる。ACと一定成分を分離するアナログまたはデジタルフィルタを使用する場合には、他の選択が存在する。原理上は、このことは両モードで可能であるが、少なくとも通常動作では、充分な信号品質を得るために行うべきである。そうしなければ、あらゆる外乱もまた増幅されるからである。
【0068】
図8および9に、数個のLEDのクロック動作と、反射光を受光するフォトダイオード18および透過光を受光するフォトダイオード22のクロック動作を示す。これについては、僅かに5種類の波長を使用した場合を図9に示す。同様にして、図9に示した読み取り動作の原理は、波長数がより多い場合にもより少ない場合にも適用することができる。図8の例に示すように、8種類の異なる波長を使用することが好ましい。
【0069】
所謂サンプルアンドホールド動作を図示する。図面の下半分に、使用した2つの検出器表面の2つの検出器信号を1つの波長領域毎に示す。ここでは、シリコンからなる受光面が400nm〜1100nmの波長領域をカバーし、インジウム・ガリウム・ヒ素からなる受光面が1000nm〜1700nmの波長領域をカバーする。540、562、573、623、660、805および950nmのLEDが作動する毎に、反射20および透過24した測定用放射線がシリコン受光面により検出される。検出器でそれぞれの時点で受信した信号値は、波長毎に読み取られ(サンプル)、保持され(ホールド)、波長が再度立ち上がるまでに保存される。1250nmのLEDおよびインジウム・ガリウム・ヒ素センサーを同一のクロック条件で使用すれば、対応するプロセスが実行される。この一連の動作が繰り返され、個々のサンプル(値)がさらに処理される。図9に示すように、これは各波長に対し連続して行われる。
【0070】
このように、第1サイクルで、例えば8種類の波長が放射され、それらの反射光20および透過光24部分が測定され、その後、保存される。続く繰り返しサイクルで読み取られた値から、放射線14の各波長における個々の吸収値が統合されて、各波長の吸収の時間的変化が示される。
【0071】
濃度比を算出する第1の選択肢は、線形方程式系の使用である。
【0072】
方程式(1)から出発して、次式が、放射線が透過する厚さd0の層の微小変化(d−d0)に対して近似的に適用される(テイラー級数)。
I/I0 = 10−ECd0−2.3EC(d−d0)+.. (2)
d 層の厚さ(全体)
d0 特定の時点(例えば、心臓拡張期)における層の厚さ(全体)
【0073】
層の厚さdの変化が、組織中の血液の脈動でのみ生じる場合は、(d−d0)の値は小さいので、級数展開の線形項のみを使用しても生じる誤差は非常に小さい。方程式(2)によれば、透過強度は、一定値10−ECd0と、放射線が透過する組織の直径の脈動による変化により生じる通常かなり小さな部分とからなる。
【0074】
本発明においては、透過光波の強度を、心臓収縮期(Is)および心臓拡張期(Id)に測定し、その強度差を得ることが好ましい。フォトトランジスタの信号は入射強度に比例すると推定される。
【0075】
式(2)から、以下が導かれる。
(Is−Id)/I0=10−ECd0−2.3EC(ds−d0)−{10−ECd0−2.3EC(dd−d0)} (3)
(Is−Id)=−2.3EC(ds−dd)I0 (4)
【0076】
これは、心臓の収縮期と拡張期の間の強度差の測定値が、モル吸光係数Eおよび血液成分濃度Cに比例し、かつ行路差(ds−dd)に比例することを意味している。
【0077】
因子ECは、透過光の吸収度Aの測定値である。
A=EC (5)
【0078】
特定の波長の吸収は、観察する血液成分の物質濃度に正比例し、所定の波長での血液成分の吸収係数に比例する。すなわち、所定の体積当たりの物質濃度が高いほど、あるいは、吸収係数値が高いほど、吸収は大きくなる。
【0079】
特定の波長λおよび血液成分の濃度Cbnに対して、次式が成り立つ。
Abn=E(λ、bn)*Cbn (6)
【0080】
方程式(4)から、吸収度Aと測定された強度差ΔI=(Is−Id)との相互関係が得られる。まだ今のところ、全照射強度から組織内での吸収を差し引いたものが受光器に到達すると考えられている。実際はそうではない。さらに厚さの差(ds−dd)も常に未知である。このため、吸収は未知の係数KT(透過測定の定数)を除いては正確に測定することができる。
ΔI=KTA (7)
ΔI 身体部分を透過した光の心臓収縮期と心臓拡張期における強度差
KT 測定された強度と透過測定における吸収との相互関係を表す定数
【0081】
この係数が、全ての波長における全ての測定で(実質的に)一定であることが重要である。
【0082】
ここまで、透過の測定について演算の例を説明してきた。実際には、特定の波長では、吸収が非常に強く、信号/ノイズの比が好ましくないことが明らかになっている。そのような場合には、反射の測定が望ましい。
【0083】
反射の測定では、この係数は透過の測定のそれとは異なる。反射の測定には次の式が成り立つ。
ΔI=KRA (8)
KR 測定された強度と反射の測定における吸収との相互関係を表す定数
【0084】
吸収は、個々の血液成分b1...bn毎に加算されると考えられる。濃度Cが高過ぎる場合にはこの規則性はなくなる。
【0085】
したがって、所定の波長λで、全吸収Agは次式で表される。
Ag=Ab1+Ab2+・・・+Abn (9)
Ag 全吸収
Ab1 血液成分1の吸収
Ab2 血液成分2の吸収
Abn 血液成分nの吸収
【0086】
方程式(6)と結びつけると、次式が成り立つ。
Ag(λ)=E(λ、b1)*Cb1+E(λ、b2)*Cb2+・・・E(λ、bn)*Cbn (10)
E(λ、bn) 波長λにおける血液成分nの吸収係数
Cbn 血液成分nの濃度
【0087】
それぞれの場合で既知のものは、使用した各波長で測定された全吸収Ag(それぞれ係数KTおよびKRを除く)および、使用した波長における血液成分の各吸収係数である。物質濃度の各部分は未知であり、演算しなければならない。
【0088】
今や、全体積に対する血液成分の各部分を算出するために、方程式(10)に対応してn*n方程式系を構築することができる。
【0089】
例えば、5種類の異なる濃度を算出する必要がある場合、方程式を解くために5種類の異なる波長で測定を行わなければならない。これにより、正確に解くことができる5×5の線形方程式系が得られる。しかしながら、部分的に透過の、かつ部分的に反射の測定が行われる場合は、透過および反射の測定で条件が異なることを示す係数(KT/KR)を算出するために、さらに別の方程式が必要である。
【0090】
例えば、波長λ1〜λ3で透過の測定が行われ、かつ波長λ3〜λ5で反射の測定が行われるならば、次の方程式(11)の系が得られる。ここでは、波長λ3での測定が、透過および反射の両方で行われている。
方程式(11)
AgT(λ1)=E(λ1、b1)*Cb1+E(λ1、b2)*Cb2+E(λ1、b3)*Cb3+E(λ1、b4)*Cb4+E(λ1、b5)*Cb5
AgT(λ2)=E(λ2、b1)*Cb1+E(λ2、b2)*Cb2+E(λ2、b3)*Cb3+E(λ2、b4)*Cb4+E(λ2、b5)*Cb5
AgT(λ3)=E(λ3、b1)*Cb1+E(λ3、b2)*Cb2+E(λ3、b3)*Cb3+E(λ3、b4)*Cb4+E(λ3、b5)*Cb5
AgR(λ3)=(KT/KR)*{E(λ3、b1)*Cb1+E(λ3、b2)*Cb2+E(λ3、b3)*Cb3+E(λ3、b4)*Cb4+E(λ3、b5)*Cb5}
AgR(λ4)=(KT/KR)*{E(λ4、b1)*Cb1+E(λ4、b2)*Cb2+E(λ4、b3)*Cb3+E(λ4、b4)*Cb4+E(λ4、b5)*Cb5}
AgR(λ5)=(KT/KR)*{E(λ5、b1)*Cb1+E(λ5、b2)*Cb2+E(λ5、b3)*Cb3+E(λ5、b4)*Cb4+E(λ5、b5)*Cb5}
AgT(λn) 波長λnにおける透過の全吸収
AgR(λn) 波長λnにおける反射の全吸収
【0091】
方程式系(11)は、未知の値として5個の濃度Cbnおよび係数(KT/KR)を含み、したがって明らかにこれを解くことができる。測定が透過のみまたは反射のみで行われるならば、方程式の数は波長の数nにまで減らされる。他方、結果の精度を上げるために、未知の値より式が多いという冗長的な算出も行うことができる。マトリックスまたは代入により方程式系(11)を解き、それぞれの係数および吸収測定の結果を挿入することにより、個別の物質濃度Cb1〜Cb5を直ちに得られる。
【0092】
方程式系(11)が、身体部分に照射された強度I0および光検出器の感度が全ての波長で同じであるか、または、対応する正規化がなされているという前提に基づいていることは理解されよう。これについては、図14およびそれぞれの説明を参照されたい。
【0093】
強度差ΔIに基づく吸収Ag(λ)の測定は、未知の定数KTおよびKRのみを除いて正確に測定することができるため、濃度の絶対値を決定するパラメータはない。したがって、最も高濃度の物質濃度に尺度100%を割り振ることが認められる。しかしながら、水部分を含む主な血液成分を決定することによって、数%の誤差は別として血液組成がわかる。
【0094】
血液成分の濃度を算出するプロセス図の一例を図15に示す。
【0095】
反射操作での測定では、条件が透過操作よりも複雑であることから、通常、補正を行う必要があることを指摘しておきたい。特に、血液成分に対し、異なる波長では、異なる光散乱が起きることを考慮すべきである。
【0096】
濃度比を算出する第2の可能性は、発見的大洪水アルゴリズムによって与えられる。
【0097】
8種類の異なる波長が使用され、毎回、付随する全吸収が測定される。ここで重要なことは、絶対値の測定ではなく、大洪水アルゴリズムで使用される測定値の相互関係である。測定値は、最大の吸収が100%に対応するようスケール変換される。したがって、残りの7種類の波長の各吸収は100%より小さい値となる。
【0098】
ここで、理論的に可能な第1のランダムな血液組成を仮定する。
【0099】
含有する血液成分の、物質に固有で、かつ波長に固有の吸収係数の値から、各波長について理論的に予想される全吸収を計算する。実際の測定と全く同様に、理論的吸収も100%にスケール変換する。
【0100】
この最初に計算された吸収スペクトルと実際に測定された吸収スペクトルとの相関をとる。そこから得られる相関係数がアルゴリズムの出発点である。
【0101】
ここで、各ラウンドで、先の理論的に仮定された血液組成を僅かに変更させ、得られた吸収スペクトルと測定された吸収スペクトルとの相関を再度とる。この新しい相関係数を、ラウンド毎に僅かに増加する閾値と比較する。
【0102】
閾値が現在の相関係数を超えるならば、新しく算出された理論的血液組成は放棄され、前のものから新しい血液組成が算出される。
【0103】
閾値が現在の相関係数を超えないならば、閾値を僅かに増加させ、新たに算出された血液組成を次のラウンドの出発点として使用する。
【0104】
現在の閾値を変更させるような血液組成の変化が、それ以上起こり得ないならば、アルゴリズムを終了する。
【0105】
現在の血液組成が、実際に測定された血液組成に対する良好な近似に対応するとみなすことができる。
【0106】
発見的アルゴリズムの結果に関してより良い検証を行うために、アルゴリズムは、僅かに異なるパラメータ(different marginal parameters)と、異なる出発点とを使用して、複数回実施することができる。
【0107】
この洪水法では、僅かに異なるパラメータを使用することによって、それが測定値と良好に適合しない場合にも、「水レベル」と呼ぶ閾値を超えるときには受け入れられる近隣の解へ向けて探索が行われる。この方法の過程で、この閾値は、ゼロから出発して、現在の解が改善されなくなるまで、連続的に増加する。この方法によれば、計算費用を殆どかけずに良好な近似を得ることができる。
【0108】
濃度比は、さらに、相関によって決定することができる。
【0109】
物質および波長に固有の吸収係数に基づき、理論的に可能な血液組成の仮定の下で、個々の光の波長について期待される、対応する全吸収を計算することが可能である。これについては、吸収の相互関係がここでもまた極めて重要である。
【0110】
決定すべき各物質の濃度が、それぞれ、可能な最小の部分から可能な最大の部分まで小さな刻みで表されるような、そうした理論的に考えられる吸収スペクトルの1セットが計算される。本発明者らの場合、これらは
− 水44〜54%
− 酸化ヘモグロビン50〜100%、
− 非酸化ヘモグロビン1〜50%、
− カルボキシヘモグロビン1〜60%、
− メトヘモグロビン1〜70%
である。
【0111】
ここで、測定された吸収スペクトルと、上のようにして予め計算しておいた全てのスペクトルとの相関をとる。測定されたスペクトルと最良の相関を示すスペクトルを有する、理論的に決定された血液成分の濃度比が、実際の濃度比に良く近似する。
【0112】
この方法の精度は、第一に、使用できるハードウエアの計算能力により決まる。利用できる計算能力が高ければ高いほど、選択でき濃度等級はより細かくなり、得られる結果はより正確になるであろう。
【0113】
大洪水アルゴリズムに対するこの方法の優位性は、結果が明瞭で発見的性質がないことであり、これは、パラメータ分布の、ゼロより大きい刻み幅に起因して、結果に不可避的な不正確性が存在することを考慮したとしても、決定されたものより良い結果を得る可能性が決してないことを意味する。
【0114】
大洪水アルゴリズムでは、得られた結果が最良の結果に対応するものであると確実にいうことはできない。このことを補うために、アルゴリズムは異なる出発点から複数回実行される。
【0115】
この方法の利点は、アルゴリズム終了の少し前にパラメータの刻み幅を減少させることにより、算出結果が相関法に較べてより正確な結果を示すことができる点である。
【0116】
以上説明した計算法では、各波長について検出された容積脈拍曲線(図10)を出発点とする。曲線は、個々の心臓周期に分割され、各周期について各波長で最大値が求められる。その後、各波長について最大値(振幅)の平均値が計算される。したがって、使用した波長の数に応じて、5ないし6個の、相互関係として考慮すべき平均吸収値が得られる。上述した計算法により、血液成分の比例濃度が計算される。これらの濃度から、例えば、酸素飽和度、全ヘモグロビン、またはヘマトクリット値などのさらなるパラメータを算出することができる。
【0117】
測定結果の一般的な改善を行うために、異なる時間間隔で装置の較正を行うことができる。この目的のためには、例えば、反射受光器の較正シェルとして構成された、図11に示す第1の較正装置48を使用することができる。LEDの実際の光強度を測定するために、まず、検査する身体部分がない状態で装置の較正を行う。
【0118】
反射放射線受光器用18を較正するために、半球状の較正シェル48を反射センサー18上に、放射面も含まれるように配置する。前記較正シェル48は、個々のLEDの光強度を検出できるように、光の乱反射によって刺激される白色の内表面50を備える。
【0119】
さらに、図12に示すように、透過光部分用センサー22の較正を行うために、透過光部分用受光器22と反射受光器18との間に、好ましくはフラストコニカル状の較正シェル52を使用することができる。前記較正シェルも、白色内表面54、さらには、2つの検出器表面の間の中央に配置された白色膜56を備える。前記白色膜56は、LEDから透過光部分用受光器へ放射線が直接到達するのを防止し、同時に無指向性の乱反射光を発生させる。この測定により、透過用受光器22に関して、各LEDの光強度が測定される。
【0120】
図13cは、各LEDについて測定した全光強度を示す。この測定はゼロ測定と呼ばれ、上述の較正シェルにより行われる。さらに計算を進めるにあたって、均一な放射を仮定できるようにするために、100%への強度の正規化が行われる。この過程で、各LEDについて光強度の正規化係数が得られる(図14c)。較正のためのこの測定は、各センサーヘッドについて1回行われ、決められた時間間隔、例えば2ないし3年毎に行われる。使用する光強度が減衰していく光源、例えばLEDの光強度が低下するために、この方法が必要である。
【0121】
上述の較正の後、身体部分について測定を行うことができる。この後に続く方法の工程は、個々にまたは全体として本発明の方法に含まれ得る。DC成分およびAC成分を検出することが好ましい。検出された脈動性の光の吸収を比較することができるよう、各波長におけるDC成分に応じて、それらを正規化しなければならない。この目的のためには、1回の測定につき少なくとも1回、各波長におけるDC成分を測定する。
【0122】
一例として、図14bに、透過光部分を示す。図に示すように、大部分の光が組織(骨、皮膚、およびその成分(例えば、メラニン、ビリルビンなどのヘモグロビンの分解物、小静脈など))により吸収されている。
【0123】
指のない状態で行う較正で測定された光強度では(図13c)、図14に示すように、光強度係数(1.33;1.25;1.00など)が検出される。さらに、DC成分を100%へ正規化するための係数も検出される(図14:20.00;33.33;12.5など)。
【0124】
演算は次表に示すように行われる。
【0125】
【表1】
【0126】
例えば、波長542nmでは、ピーク値3AUが測定されている(ランダム単位)。このピーク値に光強度係数(ここでは1.33)を乗じると、4AUが得られる。その後、この結果に一定成分の係数(ここでは20)を乗じる。得られた80AUを、その後、アナログ増幅度1で除する。この除算では、各波長はその増幅度により特徴付けられる(図14:542nm:1;560nm:1;577nm:1;660nm:10;805nm:5;950nm:20;1200nm:20))。
【0127】
したがって、542nmの脈動性AC成分の絶対強度は、80.00AUである。正規化した値を相互に比較できるよう、残りの波長についても、同じ原理でAC成分の計算が行われる。この系統的アプローチにより、DC成分が除かれ、脈動的変化を受ける部分のみが考慮されるようになる。DC成分は、皮膚の色、皮膚の状態(角質化)、骨格構造、および測定部位に依る他の特性によって、人それぞれ個々の値をとる。
【0128】
しかしながら、先に説明したように、本発明の方法では、他の演算方法も適用することができる。
【0129】
以下に、図16〜21を参照しながら、異なる血液成分の濃度の測定に適した装置の種々の実施形態をさらに詳しく説明する。
【0130】
図16は、本発明の装置の一実施形態を用いて行われた反射の測定を示す概略図である。この方法では、放射線源12は測定用放射線14を放射する。前記放射線源12は、好ましくは、複数のLED12a〜12hで構成することができる。放射された測定用放射線14は、検査する身体部分16により少なくとも一部が反射され、測定用放射線14の一部が反射放射線20として第1の放射線受光器18に向けて反射される。
【0131】
検査する身体部分16を透過した放射線24の測定を、図17に概略的に示す。この場合もまた、放射線源12は検査する身体部分16に向けて測定用放射線14を放射する。放射線14の少なくとも一部は検査する身体部分16を透過し、透過放射線24として第2の放射線受光器22に入射する。第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22は、フォトダイオードとして設計することが好ましい。
【0132】
さらに、図2に示すように、装置は、第1の放射線受光器18および第2の放射線受光器22に接続された演算装置26を備える。測定された放射線の反射部分20および透過部分24は前記演算装置26へ送られ、この装置は、測定された放射線部分から、検査すべき身体部分16により生じた、放射線14の吸収を算出することができる。
【0133】
演算装置26は、例えば、上述した演算を実行するための特定のソフトウエアプログラムをその上で走らせるPCとして設計することができる。特に、PCでは、これらの演算を、透過および反射放射線の測定とは異なる時間に行うことができる。したがって、本発明に必須の演算工程は、これまで述べてきた患者の特徴の物理的検出から独立して実施することができる。
【0134】
図18に示すように、装置10は、放射線源12が複数の個々の放射線源12a〜12hを備えるように設計することが特に好ましい。これらの個々の放射線源は、LEDで構成することができ、第1の放射線受光器18の周りに円形状に配置される。
【0135】
図18および19に示すように、第1の受光器18は、好ましくは円形状の分離手段32内に配置される。それは、内側不透光性シェル32a、および、白色コーティングが施された内壁を有する外側不透光性シェル32bを備えることができる。この構成では、LED12a〜12hは、内側シェル32aおよび外側シェル32bの間のスペース33に配置される。LEDは、第1の受光器18とは反対側に15°の角度がつけられる。これにより、検査する身体部分16が配置される位置に、測定用放射線が収束される。
【0136】
好ましくは、下部34では、内側シェル32aおよび外側シェル32bは、例えば回路基板などの基板36から上方に垂直に伸び、それから上部35で角度βで内側に、すなわち第1の受光器18の方に曲げられていることが好ましい。この配置と、LEDが例えば15度の角度で傾いていることによって、検査する身体部分16に向けての測定用放射線14の放射に狭い隙間37のみを利用できるようにすることが可能となる。これによって、迷光(シャント光)が光源12から第1の放射線受光器18に直接放射されるのを有効に防止することができる。この測定の目的は、第1の放射線受光器18が、検査する身体部分16で反射された放射線20のみを受けることにある。
【0137】
内側シェル32aおよび外側シェル32bの間に空間33が形成され、その中に、LED12a〜12hが、例えば前記回路基板36上に配置される。前記空間33には、例えば透明な接着剤を充填することができる。
【0138】
血液中の異なるヘモグロビン誘導体や水が異なる波長を異なる程度に吸収するという事実に基づき、個々の光源12a〜12hを次の波長を放射するよう構成することができる。
・540nm±5nm、562nm±5nm、573nm±5nm
・623nm±5nm
・660nm±10nm
・805nm±10nm
・950nm±10nm
・1200nm±50nm
【0139】
使用した受光器表面の検出可能な波長領域を、図20および21に、グラフで示す。図21に示した特性曲線は2つの異なるインジウム・ガリウム検出器を表す。左側の検出器(L1713−05/−09)を使用することが特に好ましい。
【0140】
8種の波長のうち7種はシリコン検出器で検出される。1100nmを超える波長は、それに応じてインジウム・ガリウム・ヒ素系フォトダイオードにより検出される。
【0141】
図2に示すように、検査する身体部分16は、第1の収容要素28と第2の収容要素30の間に配置された収容室38に収容されることが好ましい。
【0142】
本装置は、さらに、クランプ機構40、例えばスプリング機構を備えることができる。それは、装置10を検査する身体部分16に適用できるように、第1の収容要素28および第2の収容要素30に連結される。装置10を、例えば指16に、より容易に装着できるように、2個の作動突起42を設けることができる。
【0143】
装置10は、個々の光源12a〜12hをシーケンシャルに作動させる制御装置41を備えることが特に好ましい。
【0144】
図22は、方程式系を使用する簡単な例により、血液成分の濃度を計算する方法を概略的に示す。次の方法の工程を実施することが好ましい。
1.身体組織に異なる波長λ光を放射する工程
2.透過または反射光部分の強度曲線Iを測定する工程
3.心臓収縮期および拡張期の間の強度差Is−Idを求める工程。
4.身体組織に予想される血液成分の既知の吸光係数Eを方程式系(11)に代入する工程
5.方程式系(11)を解く工程
6.最も高濃度の血液成分を100%にセットする工程
7.さらに他の成分の濃度を求める工程
【0145】
以下に、簡単な例により必要な演算について説明する。
【0146】
ランベルト−ベールの法則から
I/I0=10−ECd
I 透過強度
I0 入射強度
E (特定の波長に対する)血液成分の吸収係数(モル吸光係数)
C 血液成分の濃度
d 層の厚さ
であり、放射線が透過する厚さdの層の微小変化Δdに対して、近似的に次が得られる。
(Is−Id)/I0=−2.3EC(ds−dd)
ds 心臓収縮期の層の厚さ(全体で)
dd 心臓拡張期の層の厚さ(全体で)
【0147】
血液成分のモル吸光係数Eと濃度Cの積は、全吸収Agと定義される。
Ag=E*C
【0148】
上の2つの方程式を比較すると、照射強度I0および行路差Δd=(ds−dd)が全ての測定で同じならば、全吸収は測定できる強度差ΔI=(Is−Id)に比例することが明らかである。
ΔI〜Ag
【0149】
図22は、2つの異なる波長λにおける2つの異なる物質の吸光曲線を示す。この図から、距離の変化Δdが非常に小さい場合、各回の強度変化ΔIは非常に小さいため、上で導いた線形近似が妥当であることがわかる。
【0150】
2つの物質1および2(血液成分b1およびb2)で、2つの波長λ1およびλ2の吸光係数は既知である。
E(λ1,b1)、E(λ2,b1)、E(λ1,b2)およびE(λ2,b2)
【0151】
さらに、血液成分の濃度Cがあまり高くない場合、個々の成分の吸収を加算できることが知られている。このことから、次が得られる。
Ag(λ)=E(λ,b1)*C1+E(λ,b2)*C2
Ag(λ)=(特定の波長に対する)全吸収
E(λ,bn)=波長λに対する血液成分の吸収係数(既知)
Cn=血液成分nの濃度
【0152】
2つの異なる波長λ1およびλ2に対して、方程式系が得られる。
Ag(λ1)=E(λ1,b1)*C1+E(λ1,b2)*C2
Ag(λ2)=E(λ2,b1)*C1+E(λ2,b2)*C2
【0153】
仮定した値を使用して(一例として)
E(λ1,b1)=1
E(λ2,b1)=2
E(λ1,b2)=0.25
E(λ2,b2)=1.5
C1=1
C2=2
とすると、次が得られる。
Ag(λ1)=1*1+0.25*2=1.5
Ag(λ2)=2*1+1.5*2=3
【0154】
しかしながら、実際には、(異なる波長に対して)モル吸光係数Eおよび全吸収Agのみが既知である。しかしながら、濃度C(例題では既知と仮定した)は計算されるべきものである。この計算は以下のように行われる。
【0155】
未知の濃度C1およびC2を含む場合には、方程式系は以下のようになる:
Ag(λ1)=1*C1+0.25*C2=1.5K0
Ag(λ2)=2*C1+1.5*C2=5K0
K0 照射強度I0および行路差Δd(血液脈動)により求められる定数
【0156】
第1の方程式から、次が得られる。
C1=1.5K0−0.25*C2
【0157】
第2の式から得られるのは、
2*(1.5K0−0.25C2)+1.5C2=5K0
C2=2K0
【0158】
C2を方程式系の第1の方程式に代入すると、次が得られる。
1C1+0.25*2K0=1.5K0
C1=1K0
【0159】
上で決めたように、最も高濃度の血液成分、すなわちC2を100%に設定する。
【0160】
これにより、次が得られる。
C2=100%
C1=50%
【0161】
このように、血液成分濃度は、非常に簡単で、かつ容易に確認される例により計算された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液成分濃度の非侵襲測定法であって、次の工程:
a.放射線源(12)により、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線(14)を放射する工程、
b.検査する身体部分(16)で反射された、前記複数の波長の測定用放射線(14)を、第1の受光器(18)で受光する工程、
c.検査する身体部分(16)を透過した、前記複数の波長の測定用放射線(24)を、第2の受光器(22)で受光する工程、
d.第1の放射線受光器(18)による前記反射放射線(20)の測定および第2の放射線受光器(22)による前記透過放射線(24)の測定に基づいて、検査する身体部分(16)によって生じた、各波長の測定用放射線(14)の吸収を算出する工程、
e.各波長の測定用放射線(14)について算出された前記吸収に基づいて、血液成分の濃度を算出する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記方法の工程a〜dを複数回繰り返し、かつ測定用放射線の各波長に対するそれぞれの吸収値を、各繰り返しサイクル毎に保存する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各波長に対する保存された吸収値を統合して、測定用放射線(14)の各波長に対する吸収の時間的変化を表示する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
使用する波長の数が、少なくとも算出する血液成分の数である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各波長について算出された測定用放射線(14)の吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する前記工程が、線形方程式系を使用して行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各波長について算出された測定用放射線(14)の吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する前記工程が、発見的大洪水アルゴリズムを使用して行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各波長について算出された測定用放射線(14)の吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する前記工程が、相関により行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
先行工程:
−放射線源(12)の光強度について正規化係数を求める工程
を特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1回の測定につき少なくとも1回、得られた吸収変化の一定成分を各波長について測定する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各波長について測定された吸収変化の交流成分を、各波長について測定された一定成分に応じて正規化する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各波長で検出された吸収変化のDCおよび交流成分を分離するために、アナログおよび/またはデジタルフィルタを使用する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
検出された吸収変化の一定成分が補正部分として含まれる請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
放射線源(12)により、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線(14)を放射する前記工程が、シーケンシャルに行われる請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
検査する身体部分(16)によって吸収された放射線(14)の放射部分を測定するための装置の、非侵襲、好ましくは血液成分濃度の連続測定を行うための、使用。
【請求項15】
検査する身体部分(16)によって吸収された放射線(14)の放射部分を測定するための装置の、微小血管の疾病を診断するための使用。
【請求項16】
検査する身体部分(16)によって吸収された放射線(14)の放射部分を測定するための装置の、血液経路における1つまたは複数の血液成分の容積脈拍の変化を測定するための使用。
【請求項1】
血液成分濃度の非侵襲測定法であって、次の工程:
a.放射線源(12)により、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線(14)を放射する工程、
b.検査する身体部分(16)で反射された、前記複数の波長の測定用放射線(14)を、第1の受光器(18)で受光する工程、
c.検査する身体部分(16)を透過した、前記複数の波長の測定用放射線(24)を、第2の受光器(22)で受光する工程、
d.第1の放射線受光器(18)による前記反射放射線(20)の測定および第2の放射線受光器(22)による前記透過放射線(24)の測定に基づいて、検査する身体部分(16)によって生じた、各波長の測定用放射線(14)の吸収を算出する工程、
e.各波長の測定用放射線(14)について算出された前記吸収に基づいて、血液成分の濃度を算出する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記方法の工程a〜dを複数回繰り返し、かつ測定用放射線の各波長に対するそれぞれの吸収値を、各繰り返しサイクル毎に保存する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各波長に対する保存された吸収値を統合して、測定用放射線(14)の各波長に対する吸収の時間的変化を表示する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
使用する波長の数が、少なくとも算出する血液成分の数である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各波長について算出された測定用放射線(14)の吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する前記工程が、線形方程式系を使用して行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各波長について算出された測定用放射線(14)の吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する前記工程が、発見的大洪水アルゴリズムを使用して行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各波長について算出された測定用放射線(14)の吸収に基づいて、血液成分濃度を算出する前記工程が、相関により行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
先行工程:
−放射線源(12)の光強度について正規化係数を求める工程
を特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1回の測定につき少なくとも1回、得られた吸収変化の一定成分を各波長について測定する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各波長について測定された吸収変化の交流成分を、各波長について測定された一定成分に応じて正規化する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各波長で検出された吸収変化のDCおよび交流成分を分離するために、アナログおよび/またはデジタルフィルタを使用する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
検出された吸収変化の一定成分が補正部分として含まれる請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
放射線源(12)により、それぞれ異なる波長の複数の測定用放射線(14)を放射する前記工程が、シーケンシャルに行われる請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
検査する身体部分(16)によって吸収された放射線(14)の放射部分を測定するための装置の、非侵襲、好ましくは血液成分濃度の連続測定を行うための、使用。
【請求項15】
検査する身体部分(16)によって吸収された放射線(14)の放射部分を測定するための装置の、微小血管の疾病を診断するための使用。
【請求項16】
検査する身体部分(16)によって吸収された放射線(14)の放射部分を測定するための装置の、血液経路における1つまたは複数の血液成分の容積脈拍の変化を測定するための使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2010−521266(P2010−521266A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554039(P2009−554039)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053397
【国際公開番号】WO2008/116835
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509263526)エンフェルディス ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】ENVERDIS GMBH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053397
【国際公開番号】WO2008/116835
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509263526)エンフェルディス ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】ENVERDIS GMBH
【Fターム(参考)】
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