説明

血漿中の薬物レベルの初期上昇速度が急速な24時間経口オピオイド製剤の投与による、疼痛の治療方法

【課題】経口持続放出性オピオイド製剤の提供。
【解決手段】患者を治療するにあたって、オピオイド鎮痛薬の最低有効濃度がより速やか
に得られるように、投与したとき、早期に急速なオピオイド吸収をもたらす24時間経口
持続放出性オピオイド製剤が用いられる。こうした持続放出性オピオイド製剤は、ヒト患
者への経口投与後に少なくとも約24時間にわたり鎮痛効果を発現するのに効果的な速度
でオピオイド鎮痛薬を放出させる、有効量の少なくとも1種の遅延物質を含有し、1時間
〜約8時間の吸収半減期を示す点に特徴がある。これらの持続放出性オピオイド製剤を利
用してヒト患者をタイトレーションする方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮痛剤、特にオピオイド鎮痛剤の生体利用が可能な持続放出性医薬であって
、経口投与したときの効果が長期化された製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
すべての持続放出性製剤は、その薬剤の投与後の薬理学的応答の期間を、急速放出投与
剤の投与後に通常経験される期間より長くすることを目的としている。この応答期間の長
期化は、対応する短期作用性の即時放出製剤では達成できない多くの固有の治療上の利益
をもたらす。これは、激痛を緩和する治療が必要なガン患者またはその他の患者の治療に
おいて、特にあてはまることである。なぜならば、この場合、疼痛を除去するために、オ
ピオイド鎮痛薬の血中レベルを治療上効果のある値に維持しなければならないからである
。薬剤の効果的で安定した血中レベルを維持するためには、従来の急速作用性の薬物治療
を頻繁に注意深く実施しないと、その化合物の急速な吸収と体排泄および代謝による不活
性化に起因して、活性薬物の血中レベルに高低差が生じ、このため鎮痛効果の維持におい
て重大な問題が生起する。
【0003】
担体から活性化合物を持続放出させる組成物の製造および使用に関する従来の技術報告
は、基本的に、消化管の生理液体への活性物質の放出に関するものである。しかし、活性
物質が単に胃腸液中に存在するだけでは、生物学的利用能の確証にはならないことが一般
に認識されている。
【0004】
吸収されるためには、活性薬効物質が溶液状態になければならない。投与剤1単位から
ある活性物質が与えられた比率で溶解するのに必要な時間は、標準化された条件下で実施
された試験方法によって、特定の基準時間内に投与剤1単位から放出される活性薬効物質
の量の比率によって決定される。胃腸管内の生理液体が、溶解時間を決定する際の媒体で
ある。当分野の現状において、医薬組成物に関する溶解時間を測定するための多くの良好
な試験操作法が認められており、これらの試験操作法は世界中の薬局方の解説に記載され
ている。
【0005】
慢性疼痛の治療におけるオピオイド鎮痛薬の使用を手引きする際の基本原則は、個々の
患者の間で異なる、および同一患者内で変化する、オピオイドの必要量に合わせた、投与
量の個別化である。疼痛治療の専門家は、タイトレーション(titration)の重要性を強調
する。オピオイドのある投与量に対する各患者の応答における、この患者別の大きな差異
により、特定の患者に対して適当な投与量を決定することが必要となる。オピオイド鎮痛
薬に対する応答における患者別の差異には、多くの要因が関わっているが、1つの重要な
要因は、代謝および薬物速度論における患者別の大きな変動に基づくものである。
【0006】
最も効果的に適量決定されるオピオイド類は、長い(12〜72時間)、およびより変動し
やすい半減期を有する鎮痛薬(例えばメサドン(methadone) 、レボルファノール(levorph
anol) )に比較して、3〜5時間の比較的短い消失半減期を有するもの(例えば、モルヒ
ネ(morphine)、ヒドロモルフォン(hydromorphone) 、オキシコドン(oxycodone) )である
。半減期が短い方の薬物は、数日から一週間またはそれ以上ということではなく、約1日
で定常状態濃度に到達する。定常状態においてのみ、一定の投与スケジュールにおける効
能と副作用間のバランスが持続することを予測し得る。患者が投与開始後1日程度で大体
定常状態になることが確実ならば、その投与量がこの場合適当であるかどうかをずっと迅
速に評価することができる。
【0007】
当業界で、1日1回用経口投与剤が開発され、市販されている。しかし、現在のところ
、24時間持続放出性オピオイド鎮痛製剤は市販されていない。けれども、12時間持続放出
性製剤での経験から、オピオイド鎮痛薬治療を受けようとする患者に適量決定するために
は、非経口製剤、即時放出溶液または錠剤その他などの、即時放出性オピオイド鎮痛投与
剤を使用する必要があるという、医療界における一般認識が導かれている。即時放出性オ
ピオイド製剤を使用することによって、患者を好適な定常状態値に到達させた後にのみ、
患者を持続放出性経口オピオイド製剤に移行させることができる。
【0008】
したがって、一般医にとっては、同一の投与剤でオピオイド鎮痛治療を受ける患者の適
量決定と、この患者の適量決定後の長期維持治療の両方に使用するために、好適な薬物速
度論指標(例えば吸収特性)およびそれに伴う患者の薬力学上の応答(例えば疼痛の除去
)を与える持続放出性オピオイド鎮痛製剤を利用できることが非常に望まれると思われる
。これによって、上記のように、患者に対し、長期治療のための持続放出性投与剤に移行
する前に、最初に即時放出性オピオイド投与剤を適量決定する必要がなくなる。好ましく
は、患者に投与する薬剤が1日に1回だけになるように、持続放出性製剤の効力存続期間
が約12時間よりも長いものがよい。好ましくは、持続放出性投与剤が約12時間以上の期間
疼痛の除去効果を与えるだけでなく、これに加えて、オピオイド鎮痛治療を受ける患者に
、同一の持続放出性投与剤を適量決定にも長期治療にも使用し得るような、薬物速度論的
および薬力学的特性を与えるものがよい。
【0009】
現在入手できる経口オピオイド鎮痛製剤の多くは、毎日4〜6時間毎に投与しなければ
ならない。限られた2、3種のみがより頻度の少ない12時間投与用に製剤されている。
【0010】
また、オピオイド鎮痛治療を受けようとする患者の適量決定に好適な吸収特性を与え、
しかも少なくとも12時間の間鎮痛作用を与えるのに十分なオピオイド鎮痛薬を持続して放
出するような薬物製剤を開発する必要がある。これによって、患者に最初、オピオイド鎮
痛薬の即時放出性投与剤(例えば、非経口、経口、直腸内)で適量決定し、その後患者を
オピオイド鎮痛薬の持続放出性製剤に移行させる必要がなくなる。
【0011】
オピオイド鎮痛薬の始原型とされるモルヒネは、1日2回用の制御放出剤に製剤化され
ている(すなわち、Purdue Frederic Companyから市販されている、MS Contin(登録商標
)錠剤;および F.H.Faulding and Companyから市販されている、Kapanol(登録商標);
および Roxaneから市販されている、以前にはRoxanol(登録商標)SRと称されたOramorph
(登録商標)SR)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
悪影響率が高まることなく鎮痛作用が長期化された経口投与用オピオイド製剤は非常に
望まれる。このようなオピオイド鎮痛薬の経口持続放出性製剤とは、生物学的利用能があ
り、経口投与したときに、約24時間またはそれ以上の鎮痛作用期間が得られるほどの、薬
物の効果的な血中レベル(例えば血漿レベル)の定常状態が得られるものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の目的は、1日1回投与に好適な、オピオイド鎮痛薬の経口投与薬剤
によって、患者に激痛の緩和治療をするための方法を提供することである。
【0014】
さらに別の本発明の目的は、好適なQ12H(12時間毎)鎮痛治療で得られる以上の鎮痛
効果を与える1日1回用オピオイド鎮痛製剤によって、患者を治療するための方法を提供
することである。
【0015】
またさらに別の本発明の目的は、オピオイドを持続して放出させ、同時にオピオイド鎮
痛治療を受ける患者に適量決定するのにも使用することができる、オピオイド鎮痛投与剤
を提供することである。
【発明の効果】
【0016】
上記およびその他の目的にともなって、本発明は、オピオイド鎮痛薬の24時間投与剤を
提供するためには、投与時に強くはなくとも測定し得る痛みを有する患者の多くにおいて
最少の鎮痛作用濃度にすみやかに到達させるための、初期に急速にオピオイドを放出する
鎮痛剤を使用して、疼痛用の持続放出性製剤を作製することが重要であるという、驚くべ
き発見に、一部関連している。本発明の投与剤の独特な放出特性によって、オピオイド鎮
痛治療を受ける患者に適量決定するための、本発明の一種類の投与剤を使用して、1日1
回持続放出性経口投与用オピオイド製剤にオピオイド鎮痛薬の持続性放出をさせることが
可能である。この製剤は、オピオイド鎮痛薬と、ヒト患者への経口投与後に少なくとも約
24時間にわたり鎮痛効果を与えるのに効果的な速度でオピオイド鎮痛薬を放出させる有効
量の少なくとも1種の遅延物質を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の製剤は、ヒトに投与したとき、1.5 〜約8時間の吸収半減期を示すことにより
特徴づけられるオピオイドの血漿濃度を早期に急速に上昇させる。好適な実施態様におい
て、本発明の1日1回用経口持続放出性製剤は2〜約4時間の吸収半減期を示す。
【0018】
本発明はまた、持続放出性経口オピオイド製剤を使用して、ヒト患者に適量決定するた
めの方法をも目指している。この方法の第一段階は、上記および以下の節に記載した、本
発明の1日1回用経口持続放出性オピオイド製剤の単位用量を1日1回の基準でヒト患者
に投与することからなっている。その後、この方法は、このヒト患者におけるその製剤に
より引き出された薬物速度論的および薬力学的パラメーターをモニターし、その薬物速度
論的および/または薬力学的パラメーターが、その患者の反復治療に適しているか否かを
判定するという、次の段階を含む。もしその薬物速度論的および/または薬力学的パラメ
ーターが満足のゆくものでないと判定された場合には、異なる量のオピオイド鎮痛薬を含
有する単位用量の持続放出性オピオイド鎮痛製剤を投与することによって、患者に投与す
るオピオイド鎮痛薬の用量を調節するか、または、この薬物速度論的および/または薬力
学的パラメーターが適当であると考えられる場合には、単位用量中のオピオイド鎮痛薬の
用量を先に投与した量に維持することによって、患者の適量決定を行なう。患者において
適当な定常状態の薬物速度論的/薬力学的パラメーターが達成されるまで、オピオイド鎮
痛薬の用量をさらに調節することによって、タイトレーションを続ける。その後、治療が
終了するまで、経口持続放出性製剤中のオピオイド鎮痛薬のこの用量の投与を、1日1回
の基準で続ける。
【0019】
用語”生物学的利用能”は、本発明の意味としては、薬物(例えばオピオイド鎮痛薬)
が単位投与剤から吸収される程度として定義される。
【0020】
用語”持続放出”は、本発明の意味としては、約24時間またはそれ以上の期間にわたっ
て、血液(例えば、血漿)中レベルが治療範囲にあって、しかも毒性レベルよりも低い範
囲に維持されるような速度での薬物(例えば、オピオイド鎮痛薬)の放出として定義され
る。
【0021】
オピオイド血漿濃度に関する用語”速やかな上昇速度”は、本発明の意味としては、製
剤が約1.5 〜約8時間のT1/2 (abs)、すなわち吸収半減期を示すことを意味するものと
して定義される。
【0022】
用語T1/2 (abs)は、本発明の意味としては、吸収可能なオピオイドの用量の1/2が
血漿に移動するのに必要な時間量として定義される。この値は、”見かけの”吸収半減期
ではなく、”真の”値(消失過程の影響を考慮に入れる)として計算される。
【0023】
用語”定常状態”は、ある薬物の血漿レベルが、その薬物について、治療効果のある最
小またはそれ以上のレベルで最小血漿毒性レベルより低いレベルに達成し、そして続く薬
物の投与に際してこのレベルが維持されることを意味する。オピオイド鎮痛薬に関しては
、最少治療効果レベルは、当該患者において疼痛の除去が達成される量によって、部分的
には決定される。疼痛の測定は極めて主観的なものであり、患者間で大きな個人差が生じ
得ることは、医療分野での専門家にとって、よく理解できるはずである。
【0024】
用語”維持治療”および”長期治療”は、本発明の意味としては、患者がオピオイド鎮
痛薬について上記定義の定常状態となるように適量決定を受けた後、患者に施される薬物
治療として定義される。
【0025】
オピオイド鎮痛薬の定常状態投与時においても、大部分の患者は測定し得るかまたは有
意の疼痛を有し続ける。制御放出オピオイド治療への当業界の現状での試みは、繰り返し
投与に際して、ゼロオーダーの薬物速度論量を示し、そしてオピオイドレベルにおける極
大から極小への変動が最小であるような製剤を提供することである。このゼロオーダー放
出は、極めて遅いオピオイドの吸収と、時間に対し、大体において水平な血清濃度曲線を
与えるものである。水平な血清濃度曲線は、効果は得られるが、オピオイド鎮痛薬に通常
伴う副作用が最小となるような、効果において見掛け上定常状態レベルになったことにな
るので、一般的に都合がよいと考えられる。しかし、この方式によって持続放出性オピオ
イドを製剤すると、次のオピオイド経口投与を受ける時間に近ずいたとき、患者がしばし
ば相当程度の不快感を体験することがわかっている。
【0026】
ここで、驚くべきことに、実質的に水平な血清濃度曲線は示さないが、その代わりにオ
ピオイドのより速やかな早期放出を与え、そのため、投与時に強くはなくとも測定可能な
疼痛を有する患者の多くにおいて、より速やかに最少鎮痛効果濃度に到達し得る、24時間
経口オピオイド製剤によって、より急速でより大きな鎮痛効果が得られることが発見され
た。オピオイド経口鎮痛薬の定常状態投与においても、大部分の患者は測定可能なまたは
強い疼痛を有し続けてきたことがわかっているので、ここで開示される経口オピオイド治
療の新規な手段での治療は極めて効果的であると思われる。本発明の方法はより急速で大
きな鎮痛効果が得られるのに、より高い血漿濃度ピークが見られる場合に普通は予測され
る副作用の影響があまり大きくはないという事実もまた、驚くべきことで、予測しなかっ
たことである。
【0027】
オピオイド(例えばモルヒネ)鎮痛薬の効果的な血漿レベルを定義することは、極めて
難しい。しかし、一般的には、ある特定のオピオイドについて、それ以下では鎮痛作用を
与えない、血漿中の”最少の鎮痛効果濃度”(MEAC)がある。例えば血漿モルヒネレ
ベルと鎮痛作用は間接的な関係であるけれども、血漿レベルがより高ければ、一般的によ
り強い疼痛除去に結びつく。血漿オピオイドレベルのピーク時間と薬物効果のピーク時間
との間にはラグタイムまたはヒステリシスがある。これはオピオイド鎮痛薬による疼痛治
療に関して一般的にあてはまることである。
【0028】
本発明の持続放出性1日1回用製剤は、この経口持続放出性製剤を絶食状態で(すなわ
ち食物抜きで)投与した場合に、約1〜約8時間の吸収半減期を示すことにより特徴づけ
られるオピオイドの血漿濃度が、早期に速やかな上昇速度を示すように、設定されるとい
う事実によって特徴づけられる。ある実施態様においては、吸収半減期は好ましくは約1
〜約6時間であり、より好ましくは約1〜約3時間である。
【0029】
本発明の製剤は、驚くほど速い薬物の血漿濃度のピークまでの時間(すなわちtmax
を有することによってもさらに特徴づけられるといえる。本発明の持続放出性製剤のtma
xは約2〜約10時間程度となりうる。ある好適な実施態様においては、これらの
製剤によって与えられるtmaxは約4〜約9時間程度でありうる。
【0030】
本発明の24時間オピオイド経口持続放出性製剤の投与により、鎮静化、呼吸速度、瞳孔
径、および/または各処置(すなわち経口投与剤の投与)後、継続して被験者によって回
答されるオピオイド効果の質問からの総合得点などの、ある種の薬効の到達点が、血漿濃
度曲線の早期の間(例えば経口投与後4〜8時間)ずっと強いことが示される。疼痛強度
の差異(SPID)と総合疼痛除去(TOTPAR)の合計などの鎮痛効果の他の尺度は
、本発明の請求範囲の方法によると、すべてにおいてより高い得点を与え、また一方にお
いて、多くの場合、それに伴った悪影響(一般に、主として軽度または中度の傾眠、吐気
および/またはめまい)もまたより少ない。
【0031】
本発明において使用することができるオピオイド鎮痛薬化合物には以下の物質が含まれ
る;アルフェンタニル(alfentanil)、アリルプロジン(allylprosine)、アルファプロジン
(alphaprodine)、アニレリジン(anileridine) 、ベンジルモルフィン(benzyl-morphine)
、ベジトラミド(bezitramide) 、ブプレノルフィン( buprenorphine)、ブトルファノール
(butorphanol) 、クロニタゼン(clonitazene) 、コデイン(codeine) 、シクラゾシン(cyc
lazocine) 、デソモルヒネ(desomorphine)、デキストロモラミド(dextromoramide)、デゾ
シン(dezocine)、ジアンプロミド(di-ampromide)、ジヒドロコデイン(dihydrocodeine)、
ジヒドロモルヒネ(dihydromorphine) 、ジメノキサドール(dimenoxadol) 、ジメフェプタ
ノール(dimepheptanol) 、ジメチルチアンブテン(di-methylthiambutene)、ジオキサフェ
チルブチレート(dioxaohetylbutyrate)、ジピパノン(dipipanone)、エプタゾシン(eptazo
cine)、エトヘプタジン(ethoheptazine) 、エチルメチルチアンブテン(ethylmethylthiam
butene)、エチルモルヒネ(ethylmorphine) 、エトニタゼンフェンタニル(etonitazene fe
ntanyl)、ヘロイン(heroin) 、ヒドロコドン(hydrocodone) 、ヒドロモルホン( hydromor
phone)、ヒドロキシペチジン(hydroxypethidine)、イソメタドン(isomethadone)、ケトベ
ミドン(ketobemidone)、レバロルファン(levallorphane)、レボルファノール(levorphano
l)、レボフェナシルモルファン(levophenacylmorphane)、ロフェンタニル(lofentanil)、
メペリジン(meperidine)、メプタジノール(meptazinol) 、メタゾシン(metazocine)、メ
タドン(methadone) 、メトポン(metopon) 、モルヒネ(morphine)、ミロフィン(myrophine
) 、ナルブフィン(nalbuphine)、ナルセイン(narceine)、ニコモルヒネ(nicomorphine)、
ノルレボルファノール(nor-levorphanol) 、ノルメタドン(normethadone)、ナロルフィン
(nalorphine)、ノルモルヒネ(normorphine) 、ノルピパノン(norpipanone) 、オピウム(o
pium) 、オキシコドン(oxycodone) 、オキシモルフォン(oxymorphone)、パパベレタム(pa
paveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、フェナドキソン(phenadoxone)、フェノモルフ
ァン(phenomorphan)、フェナゾシン(phenazocine)、フェノペリジン(phenoperidine)、ピ
ミノジン(piminodine)、ピリトラミド(piritramide)、プロフェプタジン(propheptazine)
、プロメドール(promedol)、プロペリジン(properidine)、プロピラム(propiram)、プロ
ポキシフェン(propoxyphene)、スフェンタニル(sufentanil)、トラマドール(tramadol)、
チリジン(tilidine) 、これらの塩類、前記のいずれかの混合物、ミューアゴニスト/ア
ンタゴニストの混合物、ミューアゴニストの組合せ、およびこれらに類するもの。オピオ
イド鎮痛薬は遊離塩基、塩、複合体その他の形態でよい。いくつかの好ましい実施態様に
おいて、オピオイド鎮痛薬は、ヒドロモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、コデ
イン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、ブプレノルヒネ、前記のいずれかの塩、および前記
のいずれかの混合物からなる群から選択される。
【0032】
ある好ましい実施態様において、本発明の持続放出性オピオイド経口投与剤は、治療薬
効成分として、ヒドロモルホン塩酸塩約4〜約64 mg の量のヒドロモルホンを含有する。
別の好ましい実施態様において、オピオイド鎮痛薬はモルヒネを含み、本発明の持続放出
性経口投与剤は重量約 5 mg 〜約800 mgのモルヒネを含有する。あるいはまた、投与剤が
他のヒドロモルホンまたはモルヒネの塩または塩基の同モル量を含有してもよい。オピオ
イドがモルヒネであるいくつかの好ましい実施態様において、モルヒネ硫酸塩用量 30 mg
とした場合、最大血漿濃度は約 2 ng/ml〜約 14 ng/ml であり、好ましくは約 3 ng/ml〜
約 8 ng/mlである。別の好ましい実施態様において、オピオイド鎮痛薬はオキシコドンを
含み、本発明の持続放出性経口投与剤はオキシコドン約 5 mg〜約400 mgを含有する。そ
の他の好ましい実施態様において、投与剤は実質的に同等の治療効果を与えるのに適当な
量のその他のオピオイド鎮痛薬を含有する。
【0033】
本発明の持続放出性投与剤は、一般的に、オピオイド鎮痛薬の血中レベルが高い時によ
く伴われる吐気、嘔吐または眠気などの併発副作用の限度および/または程度が実質的に
有意に増大することなく、治療レベルに到達し、それを維持する。また、本投与剤を使用
することによって、薬物嗜癖の危険が減少することを示唆する証拠もある。さらに、好都
合なことに、本発明の持続放出性投与剤はpH、例えば pH 1.6〜7.2、に無関係に、ある
速度でオピオイド鎮痛薬を放出する。言い換えると、本発明の投与剤は、経口投与に際す
る”投与量のダンピング(dumping) ”を回避する。
【0034】
本発明において、経口オピオイド鎮痛薬は、1日1回用法を可能にするため、鎮痛作用
期間が長期化するように製剤された。驚くべきことに、これらの製剤は、従来の即時放出
性薬剤と比較し得る一日の投与量において、薬剤の悪影響の程度が低くなり、また、疼痛
の制御を維持しながら、従来の経口薬物よりも少ない1日当たりの量で投与できる。
【0035】
本発明の持続放出性製剤に使用する遅延物質は当業界で既知の物質の1つでよく、アク
リルポリマー、アルキルセルロース、セラック、ゼイン、水素化植物油、水素化ヒマシ油
、および前記のいずれかの混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明のいくつかの好ましい実施態様において、持続放出性オピオイド投与剤は、活性
成分を含む複数の支持体を含んでおり、これらの支持体が遅延物質を含む持続放出性コー
ティング剤でコーティングされる。本発明のコーティング剤は、強くてなめらかできれい
な連続フィルムを形成し得るもので、着色料およびその他のコーティング添加剤を担持す
ることができ、非毒性、不活性、そして非粘着性でなければならない。
【0037】
本発明の持続放出性製剤は、目的とする治療薬効剤の持続性放出を獲得するために、ヒ
ーズ、長球、微小球、シード、ペレット、イオン交換樹脂ビーズ、およびその他の多粒子
系などの多粒子系とともに使用されてもよい。本発明にしたがって調製したビーズ、顆粒
、長球またはペレットその他をカプセルに入れるかその他のいずれかの好適な単位投与剤
にすることができる。
【0038】
本発明中の支持体が不活性な薬理学的ビーズである場合は、この不活性な薬理学的ビー
ズは約 8メッシュ〜50メッシュである。いくつかの好ましい実施態様において、このビー
ズは、例えば nu pariel 18/20 ビーズである。
【0039】
本発明のいくつかの好ましい実施態様において、持続放出性オピオイド投与製剤は、活
性成分を含む複数の支持体を含み、これらの支持体が遅延物質を含む持続放出性コーティ
ング剤でコーティングされる。本発明のコーティング剤は、強くてなめらかできれいな連
続フィルムを形成し得るもので、着色料およびその他のコーティング添加剤を担持するこ
とができ、非毒性、不活性、そして非粘着性でなければならない。
【0040】
本発明で述べるような長期間にわたって鎮痛効果を与えるのに十分なオピオイドの持続
放出を得るためには、治療薬効剤を含む支持体を、重量が約2〜約30%増加するのに十分
な量の疎水性物質でコーティングしてもよい。ただし、被覆は、使用する特定のオピオイ
ド鎮痛薬化合物の物理的特性と目的とする放出速度によってとりわけ大きく左右されるも
のである。
【0041】
本発明で述べるような長期間にわたって鎮痛効果を与えるのに十分なオピオイドの持続
放出を得るためには、治療薬効剤を含む支持体を、重量が約2〜約30%増加するのに十分
な量の遅延物質でコーティングしてもよい。ただし、被覆は、使用する特定のオピオイド
鎮痛薬化合物の物理的特性と目的とする放出速度によってとりわけ大きく左右されるもの
である。
【0042】
この遅延物質(典型的には疎水性である)のために使用される溶媒は、水、メタノール
、エタノール、メチレンクロライドおよびこれらの混合物を含む、薬理学的に許容される
どんな溶媒でもよい。しかし、コーティングは疎水性物質の水性分散物を基礎とするもの
が好ましい。
【0043】
本発明のいくつかの好ましい実施態様において、持続放出性コーティング剤を含む疎水
性ポリマーは、薬理学的に許容されるアクリルポリマーで、以下の物質を含むがこれらに
限定されるものではない;アクリル酸とメタクリル酸の共重合体、メチルメタクリレート
共重合体、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキ
ルメタクリレート共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸
アルキルアミド共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸無水物)
、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)共重合体
、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体およびグリシジルメタク
リレート共重合体。
【0044】
いくつかの好ましい実施態様において、このアクリルポリマーはアンモニオメタクリレ
ート共重合体の1つまたはそれ以上からなっている。アンモニオメタクリレート共重合体
は当業界でよく知られており、低割合の第4級アンモニウム基を含むアクリルおよびメタ
クリル酸エステルの完全に重合した共重合体として、NF XVIIに記載されている。
【0045】
ある好ましい実施態様において、アクリルコーティング剤は、水性分散物の形態で使用
するアクリル樹脂ラッカーで、例えばRohm Pharma から商品名 Eudragit (登録商標)で
市販されているものがある。さらに好ましい実施態様において、アクリルコーティング剤
は、Rohm Pharma からそれぞれ商品名 Eudragit (登録商標)RL 30 D および Eudragit
(登録商標)RS 30 D で市販されている2種類のアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。
【0046】
Eudragit(登録商標) RL 30 Dおよび Eudragit (登録商標)RS 30 D は低割合の第4
級アンモニウム基を含むアクリルおよびメタクリル酸エステルの共重合体であり、中性の
ままの(メタ)アクリルエステルに対するアンモニウム基のモル比は、Eudragit(登録商
標) RL 30 D においては1:20、および Eudragit (登録商標)RS 30 D においては1
:40である。平均分子量はおよそ150,000 である。略号の区別 RL (高透過性)および R
S (低透過性)はこれらの樹脂剤の透過性に関連するものである。
【0047】
Eudragit(登録商標)RL/RS混合物は水および消化液に不溶性である。しかし、同一の
もので形成されたコーティングは水性溶液および消化液中で膨張性があり、透過性がある

【0048】
本発明の Eudragit (登録商標)RL/RS分散物は、望ましい溶解特性を有する持続放出
性製剤を最終的に得るために必要とされる、どんな割合でも混合することができる。例え
ば、100% Eudragit (登録商標)RL、50% Eudragit (登録商標)RLと50%Eudragit
(登録商標)RS、および10% Eudragit (登録商標)RL:90% Eudragit(登録商標)RS
から製造した遅延化コーティングによって、目的とする持続放出性製剤が得られる。もち
ろん、当業者であれば、例えば Eudragit (登録商標)L などの、他のアクリルポリマー
を使用してもよいことを認識するであろう。
【0049】
他の好ましい実施態様において、本発明の支持体をコーティングするのに使用し得る疎
水性ポリマーは、エチルセルロースなどの疎水性アルキルセルロース物質である。当業者
であれば、本発明の疎水性ポリマーコーティングに含まれるエチルセルロースの一部また
は全部を、他のアルキルセルロースポリマーを含む他のセルロースポリマーで置換しても
よいことを察知するであろう。
【0050】
市販のエチルセルロース水性分散物として、Aquacoat(登録商標)(FMC Corp.,Philad
elphia,Pennsylvania,U.S.A.)がある。Aquacoat(登録商標)は、エチルセルロースを水
に不混和性の有機溶媒中に溶解し、これを界面活性剤および安定剤の存在下で水中エマル
ジョン化することによって調製する。ホモジナイズによってサブミクロンの(submicron)
小滴を生成させた後、有機溶媒を真空蒸発させ、擬似ラテックスを形成させる。製造段階
では擬似ラテックス中に可塑剤は加えられていない。したがって、これをコーティング剤
として使用する前に、Aquacoat(登録商標)に好適な可塑剤をあらかじめ十分混合するこ
とが必要である。
【0051】
別のエチルセルロース水性分散物が Surelease(登録商標)(Colorcon,Inc.,West Poi
nt,Pennsylvania,U.S.A.)として市販されている。この製品は、製造過程において、分散
物中に可塑剤を加え入れることによって調製される。ポリマーの高温溶融物、可塑剤(ジ
ブチルセバケート)および安定剤(オレイン酸)の均一混合物を調製し、その後アルカリ
溶液で希釈して、直接支持体上に適用することができる、水性分散物を得る。
【0052】
コーティング剤が疎水性ポリマーの水性分散物を含んでいる、本発明の実施態様におい
て、疎水性ポリマーの水性分散物中に可塑剤の有効量を含有させると、フィルムの物理的
性質がさらに改善されることになる。例えば、エチルセルロースは比較的高いガラス転移
温度を有し、通常のコーティング条件下では、可とう性フィルムを形成しないので、エチ
ルセルロースをコーティング物質として使用する前に可塑化する必要がある。一般に、コ
ーティング溶液中に含まれる可塑剤の量は、フィルム形成剤の濃度に基づくもので、例え
ば、最も普通には、フィルム形成剤の約1〜約50重量%である。しかし、可塑剤の濃度は
、特定のコーティング溶液および適用方法について、注意深く実験した後にのみ、正確に
決めることができるものである。
【0053】
エチルセルロース用の好適な可塑剤の例として、ジブチルセバケート、ジエチルフタレ
ート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、およびトリアセチンなどの水不溶
性可塑剤が含まれる。ただし、他の水不溶性可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル
酸エステル、ヒマシ油その他など)を使用することも可能である。トリエチルシトレート
が特に好ましい。
【0054】
本発明のアクリルポリマー用の好適な可塑剤の例として、トリエチルシトレート NF XV
I 、トリブチルシトレートなどのクエン酸エステルやジブチルフタレートが含まれるが、
1,2−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエ
チルフタレート、ヒマシ油、およびトリアセチンも可能である。ただし、他の水不溶性可
塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ヒマシ油その他など)を使用する
ことも可能である。トリエチルシトレートが特に好ましい。
【0055】
本発明の製剤の持続放出特性を、例えば以下のような方法によって変更することができ
る;疎水性コーティングの厚さを変える;使用する特定の疎水性材料を変えるか、または
例えば異種のアクリル樹脂ラッカーの割合を変える;可塑剤の添加方法を変える(例えば
、持続放出性コーティングを疎水性ポリマーの水性分散物から形成させる場合);疎水性
ポリマーに対する可塑剤の割合を変える;さらに別の成分または賦形剤を含有させる;製
造方法を変える;その他。
【0056】
オピオイドで被覆した、持続放出性長球またはビーズは、例えば水にオピオイド鎮痛薬
を溶解し、それからこの溶液を Wurster挿入を使用して、支持体、例えば nu pariel 18/
20ビーズ上に噴霧することによって、調製することができる。オピオイドが支持体に結合
するのを助けるため、および/または溶液を着色するため、その他のため、ビーズをコー
ティングする前に、任意に別の成分も添加される。例えば、着色料を含むかまたは含まな
い、ヒドロキシプロピルメチルセルロースその他を含む製造物を溶液に添加し、ビーズに
適用する前にこの溶液を混合する(例えば、約1時間)。形成された被覆支持体、この例
ではビーズは、その後、治療薬効剤と疎水性持続放出性コーティングを分断するため、任
意に障壁剤でオーバーコートされてもよい。好適な障壁剤の例はヒドロキシプロピルメチ
ルセルロースを含むものである。しかし、当分野で知られているどんなフィルム形成剤を
使用してもよい。障壁剤は最終生成物の溶解率に影響しないものが望ましい。
【0057】
その後、このHPMC保護された(任意)オピオイドのビーズを、好ましくは効果的な
量の可塑剤を含む疎水性ポリマーでオーバーコートすることができる。
【0058】
本発明のコーティング溶液は、好ましくは、フィルム形成剤、可塑剤、および溶媒系(
すなわち水)に加えて、美化のためと生成物を識別するための着色剤を含有する。色素は
、疎水性ポリマーの水性分散物にではなく、またはこれに添加すると共に、治療薬効剤の
溶液に、添加してもよい。
【0059】
可塑化された疎水性ポリマーの水性分散物を、当分野で知られた任意の好適な噴霧装置
を使用して、噴霧によって、治療薬効剤を含む支持体上に適用することができる。好まし
い方法として、Wurster 流動床系が使用される。この方法において、アクリルポリマーの
コーティング剤が噴霧される間、下部から注入される空気の噴出によって、核物質が流動
化され、乾燥作用を受ける。治療薬効剤の物理的性質、可塑剤の組み入れ方法、その他を
考慮して、コーティングされた支持体が水性溶液、例えば胃液にさらされたときに、治療
薬効剤のあらかじめ定めた持続放出を得るのに十分な量の疎水性ポリマーの水性分散物を
、好適に適用する。疎水性ポリマーでコーティングした後、ビーズにOpadry(登録商標)
などのフィルム形成剤によるさらなるオーバーコートを任意に適用する。このオーバーコ
ートは、一部において、ビーズの凝集を実質的に減少させるためになされる。
【0060】
次に、治療薬効剤の安定した放出速度を得るため、このコーティングされたビーズを硬
化させる。
【0061】
コーティング剤がエチルセルロースの水性分散物を含む場合、コーティングされた支持
体は、好ましくは、ここに参考として引用する、米国特許第5,273,760 号の記載にしたが
って、コーティング溶液(すなわちエチルセルロース)のガラス転移温度よりも高い温度
において、また硬化終点、例えば約60℃に達するまでは約60%〜約100%の相対湿度にお
いて、そして約48〜約72時間、約60%〜約100 %の相対湿度において、硬化を行う。
【0062】
アクリルコーティングを目指す、本発明の好ましい実施態様において、可塑化したアク
リルポリマーのTgより高い温度で、必要な時間、コーティングされた支持体を加熱(ov
en)硬化させることによって、安定化した生成物を得る。このとき、特定の製剤に関する
最適温度および時間は、実験で定められる。本発明のいくつかの実施態様において、ここ
に参考として引用する、米国特許第5,286,493 号の記載にしたがって、約45℃の温度で約
24〜約48時間またはそれ以上の時間、加熱硬化することによって、安定化した生成物が得
られる。

本発明の持続放出性製剤からの治療的に活性な薬剤の放出は、1種若しくはそれ以上の
放出改変剤により、またはコーティングを介して1個若しくはそれ以上の経路を提供する
ことにより、さらに影響し得る。すなわち所望の速さに調節できる。水溶性物質に対する
疎水性ポリマーの割合は、他の因子のなかでも、必要な放出速度と選んだ材料の溶解性特
性により決定される。
【0063】
細孔の形成剤として機能する、放出改変剤は、有機または無機であってもよく、そして
使用する環境においてコーティング剤から溶解され、抽出され、または濾過され得る物質
を含む。細孔の形成剤は、1種またはそれ以上の、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
のような親水性ポリマーを含有できる。本発明の持続放出性被覆剤は、澱粉およびゴムの
ような侵食を促進する試薬もまた含むことができる。本発明の持続放出性被覆剤は、ポリ
マー鎖中に炭酸塩群が再出現する炭酸の線状ポリエステルを含むポリカーボネートのよう
な、使用する環境で微小孔のある薄片を作りだすのに有用な物質もまた含むことができる
。放出改変剤は半透性ポリマーもまた含有できる。ある好ましい実施態様では、放出改変
剤は、ヒドロキプロピルメチルセルロース、ラクトース、金属ステアリン酸塩および前記
の混合物から選ばれる。本発明の持続放出性コーティング剤は、少なくとも1つの経路、
オリフィスまたは同様のものを含む出口の手段もまた含むことができる。経路は、米国特
許第3,845,770 号; 第3,916,889 号; 第4,063,064 号; および第4,088,864 号( 全てを参
照によりここに引用する) に開示されている方法により形成できる。経路は円形、三角形
、四角形、楕円、不規則などのいずれの形もとることができる。
【0064】
本発明の他の実施態様では、本発明は多微粒子持続放出性マトリックスを利用できる。
持続放出性マトリックスに含まれる適切な材料は、
(a) ゴム、セルロースエーテル、アクリル樹脂およびタンパク質由来物質の如き親水性
ポリマー。これらのポリマーの中で、セルロースエーテル、特にヒドロキシアルキルセル
ロースおよびカルボキシアルキルセルロースが好ましい。経口剤形では1〜80重量% の少
なくとも1種の親水性または疎水性のポリマーを含むことができる。
【0065】
(b) 脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、鉱油および植物油並びに
ワックスの如き、消化可能な、長鎖(C8〜C50特にC12〜C40)、置換または非置換の炭化水
素。25〜90℃の融点を有する炭化水素が好ましい。これらの長鎖の炭化水素物質の中で、
脂肪(脂肪族) アルコールが好ましい。経口剤形では少なくとも1種の消化可能な長鎖の
炭化水素を(重量で)60%まで含有できる。
【0066】
(c) ポリアルキレングリコール。経口剤形では少なくとも1種のポリアクキレングリコ
ールを60重量%まで含有できる。
【0067】
例えば、適切なマトリックスは少なくとも1種の水溶性のヒドロキシアルキルセルロー
ス、少なくとも1種のC12〜C36、好ましくはC14〜C22の脂肪族アルコール、および、場合
により少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含むものにできる。少なくとも1種
のヒドロキシアルキルセルロースは、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロ
キシプロピルメチルセルロースおよび特にヒドロキシエチルセルロースの如きヒドロキシ
(C1〜C6) アルキルセルロースである。本経口剤形の少なくとも1種のヒドロキシアルキ
ルセルロースの量は、とりわけ、必要なオピオイド放出の正確な速度により決定されるで
あろう。少なくとも1種の脂肪族アルコールは、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチ
ルアルコールまたはステアリルアルコールにできる。ある好ましい実施態様では、少なく
とも1種の脂肪族アルコールはセチルアルコールまたはセトステアリルアルコールである
。本経口剤形の少なくとも1種の脂肪族アルコールの量は、上記のように、必要なオピオ
イド放出の正確な速度により決定されるであろう。それはまた少なくとも1種のポリアル
キレングリコールが経口剤形に存在するか存在しないかにも依存するであろう。少なくと
も1種のポリアルキレングリコールが存在しない場合は、経口剤形は好ましくは20〜50重
量%の少なくとも1種の脂肪族アルコールを含む。少なくとも1種のポリアルキレングリ
コールが経口剤形に存在している場合は、少なくとも1種の脂肪族アルコールおよび少な
くとも1種のポリアルキレングリコールを合わせた量は好ましくは総用量の20〜50重量%
を構成する。
【0068】
1つの実施態様では、例えば、少なくとも1 種のヒドロキシアルキルセルロースまたは
アクリル樹脂の、少なくとも1種の脂肪族アルコール/ポリアルキレングリコールに対す
る比により、かなりの程度、製剤からのオピオイドの放出速度が決定される。少なくとも
1種のヒドロキシアルキルセルロースの、少なくとも1種の脂肪族アルコール/ポリアル
キレングリコールに対する比は1:2 と1:4 との間が好ましく、1:3 と1:4 との間が特に好
ましい。
【0069】
少なくとも1種のポリアルキレングリコールは、例えばポリプロピレングリコールまた
は好ましくはポリエチレングリコールにできる。少なくとも1種のポリアルキレングリコ
ールの平均分子量は、好ましくは1000〜15000、特に1500〜12000である。
【0070】
もう1つの適切な持続放出性マトリックスはアルキルセルロース( 特にエチルセルロー
ス) 、C12〜C36脂肪族アルコールおよび場合によりポリアルキレングリコールを含有する
であろう。
【0071】
上記の成分に加えて、持続放出性マトリックスは適切な量の他の材料、例えば、製剤学
の分野では慣用されている希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒補助剤、着色剤、香味剤および
グライダント(glidant) も含むことができる。
【0072】
これらの持続放出性のマトリックスは、例えば、以下により製造できる:
(a) 少なくとも1種の水溶性のヒドロキシアルキルセルロースおよびオピオイドまたは
オピオイド塩を含有する顆粒を形成する、
(b) 顆粒を含むヒドロキシアルキルセルロースを少なくとも1種のC12-C36 脂肪族アル
コールと混合し、そして
(c) 場合により、圧縮し、そして顆粒を成形する。好ましくは、水を用いるヒドロキシ
アルキルセルロース/オピオイドを湿潤造粒により顆粒を形成する。湿潤造粒工程中に添
加する水の量は、例えば、オピオイドの乾燥重量の1.5〜5 倍、特に1.75〜3.5倍にできる

【0073】
さらに他の別の実施態様では、球状化剤は活性成分と共に球状化して回転楕円体を形成
できる。微細含水ラクトースが、粉末層化技術により製造される硫酸モルヒネ持続放出性
製剤に好ましく利用されるが、微結晶質セルロースが好ましい。適切な微結晶質セルロー
スは、例えば、Avicel PH 101 (登録商標、FMC 株式会社) として販売されている物質で
ある。このような実施態様では、活性な成分および球状化試薬に加えて、回転楕円体は結
合剤もまた含むことができる。粘性が低く水溶性ポリマーのような適切な結合剤は製剤学
の当業者には公知であろう。しかしながら、ヒドロキシプロピルセルロースのような水溶
性のヒドロキシ低級アルキルセルロースが好ましい。さらに(またはこれとは別に) 、回
転楕円体は水不溶性ポリマー、メタクリル酸エチルアクリレートコポリマーまたはエチル
セルロースの如き、特にアクリルポリマー、アクリルコポリマーを含むことができる。こ
のような実施態様では、持続放出性コーティング剤は一般に、(a) ワックス、単独で、ま
たは脂肪アルコールと混合してのいずれかで; または(b) セラックまたはゼイン、のよう
な水不溶性物質を含むであろう。
【0074】
本発明の基質は溶融造粒技術により製造することもできる。このような状況では、微細
に分割した形態のオピオイドを(これも微粒子形態である) 結合剤そして他の任意の不活
性成分と組み合わせ、その後、例えば、高剪断混合機で混合物を機械によりペレット(顆
粒、球体) を形成させることにより、混合物を球状にする。その後、ペレット(顆粒、球
体) を、必要な大きさのペレットを得るために篩にかけることができる。結合物質は好ま
しくは微粒子形態で、そして約40℃以上の融点を有する。適切な結合物質は、例えば、水
素化ひまし油、水素化植物油、他の水素化脂肪、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪
酸グリセリドなどを含む。
【0075】
本発明のある好ましい実施態様では、即時放出形態での有効量のオピオイドが、投与す
る24時間持続放出性一回量オピオイド製剤に含まれる。即時放出形態のオピオイドは、血
液(例えば、血漿) 中のオピオイドの最大濃度に達する時間を短縮するのに有効な量が含
まれている。このような実施態様では、即時放出形態の有効量のオピオイドにより本発明
の基質をコーティングできる。例えば、製剤からの持続的なオピオイドの放出が制御放出
コーティングによるものである場合は、即時放出層により制御放出コーティングの表面が
オーバーコートされるであろう。一方、オピオイドが制御放出マトリックスに組み込まれ
ている基質の表面上に、即時放出層をコーティングできる。オピオイドの有効一回量を含
む多数の持続放出性基質(例えば、ペレット、球体、ビーズなどを含む多微粒子系) が硬
質ゼラチンカプセルに組み込まれている場合は、オピオイド用量の即時放出部分を、カプ
セル内の粉末または顆粒として十分量の即時放出オピオイドを含有させることにより、ゼ
ラチンカプセルに組み込むことができる。これとは別に、ゼラチンカプセル自体をオピオ
イドの即時放出層でコーティングできる。当業者はさらにオピオイドの即時放出部分を一
回量に組み込む他の別法に気がつくであろう。このような別法は、添付された請求の範囲
により包括されるものとみなす。このような有効量の即時放出オピオイドを一回量に含む
ことにより、患者の比較的高度の苦痛体験が有意に減少されることが見いだされた。
【0076】
剤形は上記の方法のいずれかと一致する剤形を調製するか、または製剤学の分野の当業
者に既知の他の方法により提供できる。 上記に加えて、持続放出性オピオイド製剤は錠
剤としても製造できる。このような例では、錠剤はオピオイドおよび遅延物質に加えて、
製剤学の分野で慣用されている適切な量の他の物質、例えば、希釈剤、潤滑剤、結合剤、
造粒補助剤、着色剤、香味剤およびグライダントを所望により微粒子の約50重量% までの
量を含むことができる。経口剤形を製剤するために使用できる製剤学的に許容しうる担体
および賦形剤の特定の例は、製剤学的賦形剤の便覧(Handbook of Pharmaceutical Excipi
ents) 、American Pharmaceutical Association (1986)に記載されており、参照によりこ
こに引用する。固体経口剤形を製造するための技術および組成物は、製剤学的剤形: 錠剤
(Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets)(Lieberman, Lachman and Schwartz, editors)
Second Edition, published by Marcel Delker, Inc. に記載されており、参照によりこ
こに引用する。錠剤(圧縮および成形) 、カプセル(硬質および軟質ゼラチン) および丸剤
の製造のための技術および組成物もまたレミングトンの製剤学科学(Remington's Pharmac
eutical Science)(Arthur Osol, editor), 1553-1593(1980)に記載されており、参照によ
りここに引用する。
【0077】
本発明の持続放出性オピオイド製剤を用いてヒト患者をタイトレーションするために、
投薬間隔の過程にわたって多数の血液試料を患者から採取する。その後、このようにして
得られた試料を試験し、オピオイド鎮痛剤の血漿レベル、およびそれらの活性な代謝物を
測定する。その後、このようにして得られた値を利用して別の薬物速度論的パラメーター
を測定できる。患者が十分な薬効反応を前記の剤形で得ているかどうかの決定は、例えば
、予備測定した血液値との参照、患者に与えた主観的痛感試験の結果、患者の薬物の副作
用のプロフィールなどによりなされるであろう。その後、用量をより高く、またはより低
く調節することが必要であるかどうかを決定できる。
【0078】
持続放出性単位製剤の投与を、持続放出性製剤での十分な薬効反応を維持するために、
一回量の投薬間隔で続ける。好ましくは、十分な薬効反応が約12〜約24時間、最も好まし
くは約24時間またはそれ以上持続するであろう。
【0079】
持続放出性単位製剤の投与を、前記の持続放出性製剤での前記の十分な薬効反応を維持
するために、一回量の投与間隔で続ける。
【0080】
必要であれば、上記の工程を、持続放出性単位製剤により十分な薬効反応が測定される
まで繰り返す。
【0081】
上記の方法に従って、持続放出性オピオイド鎮痛製剤を用いて患者のタイトレーション
を測定できる。その後の維持治療を、同様の持続放出性製剤を用いて提供できる。
【0082】
以下の実施例は本発明の種々の態様を説明するものである。特許請求の範囲をいかよう
にも制限するものではない。
【実施例】
【0083】
実施例 1〜2
実施例1において、Eudragit(登録商標) RSを含む5% W/W持続放出性コーティングの硫
酸モルヒネ持続放出性ビーズを、10% 即時放出硫酸モルヒネオーバーコートを含めて製造
した。実施例2では、Eudragit(登録商標) RSを含む8%W/W 持続放出性コーティングの硫
酸モルヒネ持続放出性ビーズを、10% 即時放出硫酸モルヒネオーバーコートを含めて製造
した。
【0084】
硫酸モルヒネビーズをまず、ロータープロセシング(rotor processing)技術を使用して
製造した。持続放出性コーティングを施す硫酸モルヒネビーズの製剤を以下の表1に示す

【0085】
【表1】

【0086】
その後、持続放出性コーティングを硫酸モルヒネビーズに施した。実施例1および2の
持続放出性コーティングの製剤を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
持続放出性コーティングを以下の通りに製造した。Eudragit RS30Dをクエン酸トリエチ
ルおよびタルクを用いて約30分間可塑化した。多量の硫酸モルヒネビーズを、1.2 mmの噴
霧ノズルを装備したGlattaのWurster Insertに装入し、そしてビーズを実施例 1および2
でそれぞれ5%および8%の重量増加までコーティングした。その後、最終保護Opadry分散オ
ーバーコートをWurster Insert中で施した。完了後、ビーズを45℃の乾燥炉中で2 日間硬
化した。その後、硬化ビーズを30 mg の強度でゼラチンカプセルに充填した。
【0089】
溶解試験を、ゼラチンカプセルについてU.S.P.装置(Apparatus) II (パドル(Paddle)法
) により実施した。カプセルを最初の1時間100 rpm 37℃で類似胃液( 酵素不含) 700 ml
中に入れ、そして最初の1時間の後に、類似胃液( 酵素不含) 900ml 中に入れた。実施例
1および2における時間に関しての溶解した硫酸モルヒネの割合の結果を以下の表3に示
す:
【0090】
【表3】

【0091】
実施例1〜2の臨床評価
10人の正常で健康な男子被験者を、四様式の無作為の、単回投与、クロスオーバー薬物
速度論的/薬力学的研究に登録し、同一の製品およびモルヒネ CR 30 mg の錠剤(MS Conti
n(登録商標))と比較して、それぞれ絶食状態で、血漿モルヒネ濃度と薬力学的のパラメー
ターを使用して、実施例1の薬物速度論的/薬力学的プロフィールに対する食物の影響を
特徴づけした。実施例2とモルヒネ制御放出 30 mg錠剤 (MS Contin(登録商標))との比
較も実施した。血漿モルヒネ濃度を、以下を含む薬物速度論的パラメーターの計算に使用
した: (a) 吸収および消失速度; (b) 曲線下面積(AUC); (C) 最大血漿濃度 (Cmax); (d)
最大血漿濃度までの時間 (Tmax); (e) T1/2 (消失) 。モルヒネの血漿濃度と比較した薬
力学的効果を以下の薬力学的パラメーターから得られたデータから記載する: 生理的気分
、鎮静作用、呼吸速度、瞳孔測定および間接質問票。
臨床実験評価
血液試料を、血液学( ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球計算、鑑別白血球計算、
血小板計算) および血液化学分析( カルシウム、無機リン酸塩、尿酸、総タンパク質、ア
ルブミン、コレステロール、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH) 、総
ビリルビン、血清グルタミン酸- オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)、血清グルタミ
ン酸- ピルビン酸トランスアミナーゼ (SGPT) 、絶食血中グルコース、血中尿素窒素(BUN
) 、血清クレアチン事前および事後(72 時間) 実験(すなわち、第4相投薬の72時間後)
のために採血した。尿検体を、尿検査(比重、グルコース、アルブミン、胆汁、pH, アセ
トン、鏡検試験、事前および事後(72 時間) 研究(すなわち、第4相投薬の72時間後)
のために採取した。禁制の薬物のための予備試験尿検査をスクリーニング過程中および該
薬物の各投与の投与直前( 第1相から第4相までの一日目) に実施した。
【0092】
血漿モルヒネ濃度を、投薬の直前(0時間) およびその後、各投薬後0.5 、1 、2 、2.5
、3 、3.5 、4 、5 、6 、8 、10、12、18、24、36、48および72時間後に採血した血液試
料から測定した。それぞれ約10 ml の血液試料を抗凝固剤であるエチレンジアミン四酢酸
(EDTA)溶液を含有している管に入れた。遠心分離後、血漿を2 本の5mlのラベルを付けた
ポリプロピレンの管に分注し、−20℃で凍結した。試料の片方を2 日間凍結しておくのに
十分なドライアイス中で指名の分析研究所に輸送し、そしてもう一方を予備として実験場
所で凍結して保有した。
薬力学的測定
以下の薬力学的パラメーターの測定を基準として採血の直前(投薬前30分以内) および
その後、各投薬の0.5 、1 、2 、2.5 、3 、3.5 、4 、5 、6 、8 、10、12、18、24、36
、48および72時間後に実施した。
【0093】
生理的気分(被験者日誌票の可視的アナログスケール(VAS) により測定) −採血の10分
前。VAS は一端を最悪の気分(Worst Mood)に、そして他端を最良の気分(Best Mood) に設
定した。
【0094】
鎮静作用(被験者日誌票のVAS により測定) −採血の10分前。VAS は一端を睡眠(Asleep
)に、そして他端を覚醒(Awake) に設定した。
【0095】
呼吸速度(1分間当たりの呼吸) −採血の5分以内。(データを被験者日誌票に記録した)

瞳孔の径−瞳孔計により測定−採血の5分以内。全期間において左眼のみ測定した。(
データを被験者日誌票に記録した)
図1は実施例1(絶食) の時間に対する平均鎮静曲線をグラフに表したものである
。図2は実施例2(絶食) の時間に対する平均鎮静曲線をグラフに表したものである。図
3は実施例1(絶食) の時間に対する平均呼吸速度曲線をグラフに表したものである。図
4は実施例2(絶食) の時間に対する平均呼吸速度曲線をグラフに表したものである。
【0096】
血漿モルヒネ濃度を高性能液体クロマトグラフィーにより測定した。個々の時間に対す
る血漿モルヒネ濃度から計算した算術平均 Cmax 、Tmax 、AUC 、半減期および経口生物
学的利用能を以下の表4および表5に示した:
【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

【0099】
* MS Contin(登録商標) と比較して、統計的に有意( p <.0500)(未変換データに基づ
く)
F0 (%)=経口生物学的利用能( 試験薬の最小自乗平均/ 対照の最小自乗平均)
表6は MS Contin(登録商標) 並びに実施例1および2の投薬後の平均(±S.D.) 血漿モ
ルヒネ濃度(ng/ml) を提供する。
【0100】
【表6】

【0101】
表7は MS Contin(登録商標) および実施例1〜2の投薬後の平均(±S.D.) 薬物速度論
的パラメーターを提供する。
【0102】
【表7】

【0103】
実施例1(絶食) と MS Contin(登録商標)(絶食) とを比較すると、Cmaxに統計的な有意
差が見られた。Tmax、AUC(0,72)、AUC(0,00) およびT1/2 (elim) またはT1/2 (abs) では
2つの処置の間で統計的な有意差はなかった。すべての薬物速度論的パラメーターの90%
信頼区間は80〜120%信頼限界からはみ出していた。
【0104】
実施例1(摂食) と MS Contin(登録商標)(絶食) とを比較すると、Cmax に統計的に有
意な差が見られた。Tmax、AUC (0,72)、AUC (0,00)およびT1/2(elim) またはT1/2 (abs)
では2つの処置の間で統計的に有意な差はなかった。すべての薬物速度論的パラメーター
の90% 信頼区間は80〜120%信頼限界からはみ出していた。
【0105】
実施例1の摂食状態と絶食状態とを比較すると、Cmax、Tmax、AUC (0,72)、AUC (0,00)
およびT1/2 (elim) またはT1/2 (abs) において統計的に有意な差はなかった。すべての
薬物速度論的パラメーターの90% 信頼区間は80〜120%信頼限界からはみ出していた。
【0106】
実施例1の吸収に対する摂食の影響はより大きな Cmaxおよび延長したTmaxおよびT1/2
(abs) の値により特徴付けられる。しかしながら、吸収の程度 (AUC を基にして) は絶食
および摂食状態では3%以下の差であった。
【0107】
実施例2(絶食) を MS Contin(登録商標)(絶食) と比較すると、Cmax、Tmax、AUC (0,7
2)、AUC (0,00)およびT1/2 (elim) に統計的に有意な差が見られた。2つの処置の間でT1
/2 (abs)には統計的に有意な差がなかった。すべての薬物速度論的パラメーターの90% 信
頼区間は80〜120%信頼限界からはみ出していた。
【0108】
90%信頼区間分析に基づくと、絶食または摂食状態での実施例1も実施例2のビーズも
MS Contin(登録商標) 錠剤と同等ではなかった。しかしながら、いずれの試験的な制御放
出モルヒネ製剤も MS Contin(登録商標) 錠剤と生物学的同等製剤ではなかったが、両者
とも、比較的低いCmax及び延長した Tmaxおよび明白なT1/2 (elim)値を提供した。
【0109】
各被験者および処置のlog変換濃度に対する各薬物力学的パラメーターの線形回帰は、R
2値が20% またはそれ以上を有する240のうち48回帰(48/240; 20%) となり、そのうちの8(
8/240; 3%)が50% またはそれ以上の値を有していた。処置のみで分析すると、すべてのR2
値が10% 以下となった。これらの値により、薬物力学的測定とlog濃度との間の有意な線
形関係は示されなかった。
【0110】
平均ヒステリシス曲線を検討することにより、瞳孔の径とモルヒネの濃度との間に関係
がある可能性が示唆された。 MS Contin(登録商標) および実施例1では、瞳孔の径はモ
ルヒネの濃度が増加するにつれて減少し、その後、モルヒネの濃度が減少するにつれて増
加する傾向があった。図 5は実施例 1(絶食) の時間に対する平均瞳孔径の曲線をグラフ
に表したものである。図 6は実施例2(絶食) の時間に対する平均瞳孔径の曲線をグラフ
に表したものである。モルヒネ濃度と他のいずれのパラメーターとの間にも関係は見いだ
されなかった。
【0111】
2人の被験者(20%) により、 MS Contin(登録商標) の投与中に6種の副作用が報告さ
れた。3 人の被験者(30%) により、制御放出モルヒネビーズ(実施例1; 絶食) の投与中
に6種の副作用が報告された。以下の各処置群の1人の被験者により、1種の副作用が報
告された: 実施例1(摂食) および実施例2(絶食) 。試験中に、理学的検査またはEKG 結
果、臨床実験値またはバイタル・サイン(Vital sign)の測定での臨床的に重大な変化は生
じなかった。

修正した特定薬物作用のアンケート
アンケートはDrug Addiction I(Martin, W.R. 編集) pp. 197-258, Springer-Verlag,
New York中の Jasinski, D.R. (1977) Assessment of the Abuse Potential of Morphine
-Like Drugs (Methods Used in Man) 〔モルヒネ様薬物の濫用性の評価(ヒトに用いる方
法)〕並びにDrug and Alcohol Dependence 27:7-17中の Preston, K.L., Jasinski, D.R
.および Testa, M. (1991) Abuse Potential and Pharmacological Comparison of Trama
dol and Morphine 〔トラマドールとモルヒネの濫用性および薬理学的比較〕において採
用されたアンケートを修正したものであった。このアンケートは被験者と観察者によって
評価される10の項目から成るものであった。これらの項目はアヘン剤−アゴニスト薬物
の徴候に関係したもので、以下のとおりであった。
被験者への質問
1.薬物のなんらかの作用を感じますか?
2.肌がかゆいですか?
3.リラックスしていますか?
4.眠いですか?
5.酔っていますか?
6.神経質になっていますか?
7.精力に満ちていますか?
8.話したいですか?
9.吐き気がありますか?
10. めまいがしますか?
被験者は、一端が「全然なし」、他端が「非常にある」により固定された100-mmVAS
に沿って縦印をつけることにより各質問に答えた。
観察者への質問
1.被験者はなんらかの薬物作用を示していますか?
2.被験者は肌をかいていますか?
3.被験者はリラックスしていますか?
4.被験者は酔っていますか?
5.被験者は神経質になっていますか?
6.被験者は話をしていますか?
7.被験者は吐いていますか?
8.被験者は混乱していますか?
9.被験者は落ち着きがないですか?
10. 被験者は汗をかいていますか?
観察者は、一端が「全然なし」、他端が「非常にある」により固定された100-mmVAS
に沿って縦印をつけることにより各質問に答えた。図7は、実施例1(絶食)についての
平均被験者アンケート対時間曲線をグラフにより表したものである。図8は、実施例2(
絶食)についての平均被験者アンケート対時間曲線をグラフにより表したものである。

副作用体験
直接質問した際に自発的に報告されたり誘導された副作用の体験を記録し、容認される
場合は、すぐに主だった研究者が検討して、重症度、持続期間および中和措置の開始を決
定した。被験者は基線状態に戻るまで監視されることになっていた。
分析
血漿モルヒネの分析は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使って実施した。
測定限界は0.5ng/mLであった。付録Vは血漿モルヒネの分析記録を含んでいる。

統計的および薬物測定的方法
パラメーター
各被験者および処置から集めた連続血漿モルヒネ値は、その系列のすべての数値からゼ
ロ時間値を差し引くことによりゼロ時間値に関して補正した。
【0112】
ゼロ時間値が最低アッセイ感度を越えた連続データセットは、上記のように、データ解
析に受け入れがたいと考えた。基線補正を行った血漿濃度を用いて、それぞれの被験者お
よび処置について次のパラメーターを概算した。
【0113】
max(ng/ml)−最大観察血漿モルヒネ値;
max (hours )−投薬時間に対するCmax の発生時間;
1/2 (elim; hours )−
1/2 elim)−0.693/Ke
〔ここでKe は SAS Release 6.07 (SAS Institute, Cary, NC)
中のPROC NLIN により計算した最終一次見掛け排出速度定数である〕に従って計算した血
漿モルヒネ排出の見掛け半減期;
1/2 (abs; hours)−
1/2(abs)−0.693/Ka
に従って計算した吸収の見掛け半減期。
【0114】
図9は、実施例1(摂食、絶食)および実施例2(絶食)のカプセルと比べたときの、
比較例(MS Contin 30mg)(絶食)により得られた平均血漿モルヒネ濃度−時間プロフィ
ールをグラフにより表したものである。
【0115】
上記の結果から、実施例1の製剤は、実施例2の製剤と比べて、より早期により高いC
max に達するが、モルヒネの吸収度はやや低いことがわかる。鎮静、呼吸速度、瞳孔の大
きさに関する時間−作用データの視覚的検討、並びにそれぞれの処置後に連続して被験者
により記録されたアンケートのスコアの合計からは、時間−作用曲線の早期(例えば4〜
8時間)における各薬力学的終点の強度がより大きいことが明らかである。

実施例3
硫酸モルヒネの比較的高い負荷を有するビーズは Glatt Rotor Processorで粉末重層法
を用いて製造した。高負荷ビーズの処方を下記の表8に示す。
【0116】
【表8】

【0117】
持続放出性コーティングはアクリルポリマー(すなわち、Eudragit(登録商標) RL)
を含むものであった。安定性をさらに高めるために、Eudragit層とモルヒネ即時放出層の
間にHPMC保護コートも加えた。実施例3の持続放出性コーティングの処方を下記の表
9に示す。
【0118】
【表9】

【0119】
持続放出性コーティングと即時放出性コーティングは次のようにして被覆した。Eudrag
it RL 30D をクエン酸トリエチルおよびタルクで約30分間可塑化した。1.2mmのス
プレーノズルを備えた Glattの Wurster Insert に1回量の硫酸モルヒネビーズを入れ、
5%の重量増加となるまでビーズをコーティングした。次に、Wurster Insertで最終保護
Opadry分散体オーバーコートを施した。完了時に、45℃の乾燥オーブン内で2日間ビー
ズを硬化させた。その後、硬化ビーズを30mgの含量でゼラチンカプセルに充填した。
【0120】
次に、これらのカプセルを溶解試験に付した。溶解試験は USP Apparatus II (Paddle
法)を用いて完成品に対して実施した。カプセルを最初の1時間は100rpm、37℃
で700mlの擬似胃液(酵素不含)の中に入れ、その後900mlの擬似腸液(酵素不
含)に入れた。溶解試験の結果を下記の表10に示す。
【0121】
【表10】

【0122】
実施例3の臨床評価
13人の正常で健康な男性被験者が、実施例3の1回30mg量(カプセル)の薬物速
度論並びに薬力学に及ぼす食物の影響を調べる5通りのクロスオーバー、ランダム化、オ
ープンラベル実験に登録した。これらの摂食および絶食被験者における持続放出性製剤の
薬物速度論的並びに薬力学的結果はまた、絶食被験者におけるMS Contin(登録商標)30m
g 錠剤の結果と比較された。血漿モルヒネ濃度を用いて次の薬物速度論的パラメーターを
計算した:(a)見掛けの吸収および排出速度、(b)曲線下面積(area-under-the-cur
ve: AUC)、(c)最大血漿濃度(Cmax )、(d)最大血漿濃度に対する時間(Tma
x )、(e)T1/2 (abs) および(f)T1/2 (elim)。薬力学的作用は気分、鎮静、呼吸
速度、瞳孔測定および被験者の付随的アンケートの評価により判定した。
【0123】
血漿モルヒネ濃度は高性能液体クロマトグラフィー法により測定した。すべての被験者
がこの実験を終えて、生体薬物学的分析に加わった。個々の血漿モルヒネ濃度−時間から
算出した算術平均Cmax 、Tmax 、AUC、半減期、並びに経口生物学的利用能のデータ
を下記の表11および12に示す。
【0124】
【表11】

【0125】
【表12】

【0126】
表13は、MS Contin(登録商標)および実施例3を投与した後の平均(±SD)血漿
モルヒネ濃度(ng/ml)を示す。
【0127】
【表13】

【0128】
表14は、MS Contin(登録商標)および実施例3を投与した後の平均(±SD)薬物
速度論的パラメーターを示す。
【0129】
【表14】

【0130】
摂食および絶食条件下で投与した実施例3の30mgカプセルの最小自乗法による平均
AUCの比は、摂食条件下のAUC値が絶食条件下のAUC値の±20%以内であること
を示す。Cmaxの値は摂食条件下において64%大きかった。摂食条件下のTmax の値は
絶食条件下で投与した時のほぼ50%であった。見掛け吸収速度は摂食条件下で約35%
大きく、そして摂食条件下の見掛け排出速度は絶食条件下のそれの約35%であり、この
ことはモルヒネの吸収が食物の存在によって遅くなり、排出速度が高まることを示してい
る。
【0131】
実施例3の30mgカプセルとMS Contin(登録商標)30mg錠剤の最小自乗法によ
る平均AUCの比は、実施例3のAUC(0,72)値が MS Contin(登録商標)のそれ
の±20%以内であり、AUC(0,00)値が実施例3の場合に44%大きいことを示
す。実施例3のCmax の値は MS Contin(登録商標)のそれの29.5%であった。摂食
条件下のTmax の値は実施例3のそれの5倍以上であった。実施例3の見掛け吸収速度は
約91%大きく、そして実施例3の見掛け排出速度は MS Contin(登録商標)のそれの1
6倍以上であり、このことはモルヒネの吸収および排出が実施例3の場合により遅いこと
を示している。
【0132】
それぞれの被験者および処置についてのlog変換濃度に対する各薬力学的パラメータ
ーの直線回帰の結果から、315の回帰のうち74(24%)が20%以上のR2値を有
し、315のうち12(4%)が50%以上の値を有していた。処置のみで分析した場合
、10%より高いR2値はゼロであった。20%以上の各R2値に関しては、log濃度に
対する被験者のMSDEQ〔Modified Specific Drug Effect Questionnaire (修正特定
薬物作用アンケート)〕スコアの63の回帰のうち21(33%)に見いだされ、そして
63のうち7(11%)が50%以上であった。これらの値は、log濃度と被験者のM
SDEQスコアの間の可能な直線関係を示している。また、平均ヒステリシス曲線の検討
からも、モルヒネ濃度と被験者のMSDEQスコアの間に存在しうる関係が明らかである
。それぞれの製剤について、被験者のMSDEQスコアはモルヒネ濃度の上昇とともに増
加し、その後モルヒネ濃度が低下するにつれて減少する傾向があった。モルヒネ濃度とそ
の他の薬力学的パラメーターの間には何の関係も観察されなかった。
【0133】
図10は、実施例3(摂食、絶食)のカプセルと比較したときの、比較例(MS Contin
30 mg)(絶食)により得られた平均モルヒネ濃度−時間のプロフィールをグラフで表し
てある。図11は、実施例3(絶食)についての平均鎮静対時間曲線をグラフにより表し
てある。図12は、実施例3(絶食)についての平均呼吸速度対時間曲線を示すグラフで
ある。図13は、実施例3(絶食)についての平均瞳孔寸法対時間曲線を示すグラフであ
る。図14は、実施例2(絶食)についての平均被験者MSDEQ対時間曲線を示すグラ
フである。

実施例4
硫酸モルヒネの比較的高い負荷を有するビーズは Glatt Rotor Processorで粉末重層法
を用いて製造した。高負荷ビーズの処方を下記の表15に示す。
【0134】
【表15】

【0135】
これらの即時放出性基体ビーズは Glatt Rotor Processorで粉末重層法を用いて製造し
た。
【0136】
持続放出性コーティングはエチルセルロースアクリルポリマー(すなわち、Aquacoat E
CD 30 )を含むものであった。安定性をさらに高めるために、Aquacoat層の後にHPMC
保護コートも含めた。実施例4の持続放出性コーティングの処方を下記の表16に示す。
【0137】
【表16】

【0138】
持続放出性コーティングと最終オーバーコートは次のようにして被覆した。Aquacoat E
CD 30 とMethocel E5 Premium の混合物をクエン酸トリエチルで約30分間可塑化した。
1.2mmのスプレーノズルを備えた Glattの Wurster Insert に1回量の硫酸モルヒネ
ビーズを入れ、25%の重量増加となるまでビーズをコーティングした。遅延コーティン
グの完了時に、60℃/80%RHの温度/湿度チャンバーに入れてビーズを3日間硬化
させた。その後、硬化ビーズを60℃の乾燥オーブン内で1日乾燥させた。乾燥した硬化
ビーズを1.2mmのスプレーノズルを備えた Glattの Wurster Insert に入れ、最終保
護Opadry分散体オーバーコートを施した。完成した持続放出性ビーズは低負荷即時放出性
硫酸モルヒネビーズとともに60mgの合計含量で同一のゼラチンカプセルに個々に充填
した。持続放出性ビーズは90%つまり54mgのカプセル含量を占め、そして即時放出
性ビーズが10%つまり6mgのカプセル含量を占めていた。
【0139】
次に、これらのカプセルを溶解試験に付した。溶解試験は USP Apparatus II (Paddle
法)を用いて完成品に対して実施した。カプセルを最初の1時間は100rpm、37℃
で700mlの擬似胃液(酵素不含)の中に入れ、その後900mlの擬似腸液(酵素不
含)に入れた。溶解試験の結果を下記の表17に示す。
【0140】
【表17】

【0141】
実施例5
硫酸モルヒネの比較的高い負荷を有するビーズは Glatt Rotor Processorで粉末重層法
を用いて製造した。高負荷ビーズの処方を下記の表18に示す。
【0142】
持続放出性コーティングはアクリルポリマー(すなわち、Eudragit(登録商標) RS/RL
)を含むものであった。安定性をさらに高めるために、Eudragit層の後にHPMC保護コ
ーティングも含めた。実施例5の持続放出性コーティングの処方を下記の表18に示す。
【0143】
【表18】

【0144】
持続放出性コーティングと最終コーティングは次のようにして被覆した。Eudragit RS/
RL 30Dをクエン酸トリエチルおよびタルクで約30分間可塑化した。1.2mmのスプレ
ーノズルを備えた Glattの Wurster Insert に1回量の硫酸モルヒネビーズを入れ、5%
の重量増加となるまでビーズをコーティングした。次に、Wurster Insertで最終保護 Opa
dry 分散体オーバーコートを施した。完了時に、45℃の乾燥オーブン内で2日間ビーズ
を硬化させた。その後、硬化ビーズを60mgの含量でゼラチンカプセルに充填した。
【0145】
次に、これらのカプセルを溶解試験に付した。溶解試験は USP Apparatus II (Paddle
法)を用いて完成品に対して実施した。カプセルを最初の1時間は100rpm、37℃
で700mlの擬似胃液(酵素不含)の中に入れ、その後900mlの擬似腸液(酵素不
含)に入れた。溶解試験の結果を下記の表19に示す。
【0146】
【表19】

【0147】
実施例6
マトリックスビーズ
硫酸モルヒネの比較的高い負荷を有するマトリックスビーズはGlatt Rotor Processor
で粉末重層法を用いて製造した。高負荷マトリックスビーズの処方を下記の表20に示す

【0148】
【表20】

【0149】
マトリックス成分はエチルセルロースポリマー(すなわち、Aquacoat ECD 30 )を含む
ものであった。安定性をさらに高めるために、Aquacoat層の後にHPMC保護コートも含
めた。
【0150】
マトリックスビーズは次のごとく製造した。Aquacoat ECD 30をクエン酸トリブチルで
約30分間可塑化した。硫酸モルヒネ粉末とラクトースをホバートミキサーで約5分間ブ
レンドした。1回量の糖ビーズを1.2mmスプレーノズル/粉末供給アセンブリーを備
えた Glattのローターインサートに入れた。スプレーノズル/粉末供給アセンブリーの上
に精密粉末供給装置を配置し、硫酸モルヒネ/ラクトースブレンドを入れた。その後、結
合剤として可塑化疎水性ポリマー分散体(すなわち、Aquacoat ECD 30とクエン酸トリブ
チル)を用いて糖ビーズに硫酸モルヒネ/ラクトースブレンドを重層した。重層法の完了
後、最終保護Opadry分散体オーバーコートを施した。次に、60℃の乾燥オーブン内でビ
ーズを1日硬化させた。最後に、硬化ビーズを60mgの含量でゼラチンカプセルに充填
した。
【0151】
次に、これらのカプセルを溶解試験に付した。溶解試験は USP Apparatus II (Paddle
法)を用いて完成品に対して実施した。カプセルを最初の1時間は100rpm、37℃
で700mlの擬似胃液(酵素不含)の中に入れ、その後900mlの擬似腸液(酵素不
含)に入れた。溶解試験の結果を下記の表21に示す。
【0152】
【表21】

【0153】
実施例4、5および6の臨床評価
14人の正常で健康なヒト被験者が、食物の存在下または不在下で実施例1、2または
3の1回量の薬物速度論および薬力学に及ぼす食物の影響を調べる6通りのクロスオーバ
ー、ランダム化、オープンラベル実験に登録した。血漿サンプルのモルヒネ濃度を分析し
、次の薬物速度論的結果を算出した。その結果を下記の表22に示す。
【0154】
【表22】

【0155】
実施例7
塩酸ヒドロモルホンの8mg1日1回カプセル
薬物負荷
ヒドロモルホンビーズを調製するにあたって、塩酸ヒドロモルホンを水に溶かし、Opad
ry Y-5-1442 を加え、約1時間混合して20w/w%懸濁液を得た。その後、この懸濁液
を Wursterインサートを使って Nu-Pareil 18/20メッシュビーズにスプレーした。
【0156】
第一のオーバーコート
ヒドロモルホン負荷ビーズを Wursterインサートを使って Opadry Light Pinkの5w/
w%増量で被覆した。このオーバーコートは保護コーティングとして施した。
【0157】
遅延コート
第一のオーバーコートの被覆後、Eudragit RS 30D と Eudragit RL 30Dの遅延コーティ
ング混合物(RS対RL、90:10)の5重量%増量でヒドロモルホンビーズを被覆し
た。Eudragit懸濁液にはクエン酸トリエチル(可塑剤)とタルク(粘着防止剤)も添加し
た。Wurster インサートを使ってこのコーティング懸濁液を施した。
【0158】
第二のオーバーコート
遅延コーティングの被覆が完了したら、ヒドロモルホンビーズを5重量%の増量となる
までWurster インサートを使って Opadry Light Pinkの最終オーバーコートで被覆した。
このオーバーコートも保護コーティングとして施した。
【0159】
硬化
最終オーバーコートの被覆後、ヒドロモルホンビーズを45℃のオーブン内で2日間硬
化させた。
【0160】
カプセル封入
ビーズは塩酸ヒドロモルホンの8mg含量でサイズ#2透明ゼラチンカプセルに手で充
填した。
【0161】
実施例7の処方を下記の表23に示す。
【0162】
【表23】

【0163】
溶解試験
上記のカプセルをUSPの方法論を用いて試験し、次の結果を有することがわかった。
【0164】
時間 開始
1時間 17.2
2時間 48.4
4時間 77.4
8時間 93.3
12時間 97.2
18時間 98.8
24時間 98.8

1回量のランダム化、クロスオーバー生物学的利用能実験は、上記の8mg制御放出性
塩酸ヒドロモルホンカプセルと対照としての2つの即時放出性4mg錠剤(Dilaudid(登
録商標))を用いて摂食および絶食条件下で実施した。血液サンプルのヒドロモルホン濃
度を検査し、次の薬物速度論的パラメーターを算出した。結果を下記の表24に示す。
【0165】
【表24】

【0166】
上述した実施例は排他的であることを意味するものではない。当業者には本発明の多く
の他の変更が自明であり、これらも特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0167】
以下の図面は本発明の実施態様を図示するものであり、請求の範囲に包含される本発明
の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、実施例1(絶食)の時間対平均鎮静化曲線を図示するものである。
【図2】図2は、実施例2(絶食)の時間対平均鎮静化曲線を図示するものである。
【図3】図3は、実施例1(絶食)の時間対平均呼吸速度曲線を図示するものである。
【図4】図4は、実施例2(絶食)の時間対平均呼吸速度曲線を図示するものである。
【図5】図5は、実施例1(絶食)の時間対平均瞳孔径曲線を図示するものである。
【図6】図6は、実施例2(絶食)の時間対平均瞳孔径曲線を図示するものである。
【図7】図7は、実施例1(絶食)の時間対平均被験者質問曲線を図示するものである。
【図8】図8は、実施例2(絶食)の時間対平均被験者質問曲線を図示するものである。
【図9】図9は、実施例1(摂食および絶食)および実施例2(絶食)のカプセルと比較した、比較例(MS Contin 30 mg )(絶食)を使用して得られた、時間対平均血漿モルヒネ濃度曲線を図示するものである。
【図10】図10は、実施例3(摂食および絶食)のカプセルと比較した、比較例(MS Contin 30 mg )(絶食)を使用して得られた、時間対平均血漿モルヒネ濃度曲線を図示するものである。
【図11】図11は、実施例3(絶食)の時間対平均鎮静化曲線を図示するものである。
【図12】図12は、実施例3(絶食)の時間対平均呼吸速度曲線を図示するものである。
【図13】図13は、実施例3(絶食)の時間対平均瞳孔径曲線を図示するものである。
【図14】図14は、実施例2(絶食)の時間対平均被験者の改変した特別の薬物効果についての質問曲線を図示するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎮痛有効量のオピオイド鎮痛薬が塗布されている複数の不活性医薬ビーズを含有する経口持続放出性オピオイド医薬製剤であって、
前記オピオイド鎮痛薬が、ヒドロモルホン、その医薬的に許容可能な塩、および前記のものの任意の混合物より成る群から選ばれ、
前記不活性医薬ビーズは、有効量の医薬的に許容可能な、アクリル系ポリマー、疎水性セルロース物質、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性ポリマーが上塗り(オーバーコート)されており、
前記製剤は1日1回の経口投与で鎮痛効果をもたらし、
前記医薬製剤の1服をヒトの患者に投与したとき、約1時間〜約8時間の吸収半減期(吸収可能なオピオイドの用量の1/2が血漿に移動するのに必要な時間量)、4時間〜9時間以内に最高血漿濃度到達時間(Tmax)、および患者への製剤投与から6時間後の血漿濃度が、患者への製剤投与から約24時間後の前記オピオイド血漿水準に対し、少なくとも約2.26倍の血漿濃度を与え、
前記投薬製剤が、患者に投与した後、約24時間またはそれ以上にわたり効果的な鎮痛治療を提供する、
経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項2】
経口持続放出製剤が約1時間〜約6時間の吸収半減期をもたらす、請求項1に記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項3】
オピオイド鎮痛薬が約2〜64mgのヒドロモルホンからなる、請求項1又は2のいずれか1項に記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項4】
前記オピオイドの容量の一部が即時放出形態で前記製剤中に含まれている、請求項1〜3のいずれかに記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項5】
前記患者への製剤投与から6時間後の血漿濃度が、前記患者への製剤投与から約24時間後の前記オピオイド血漿水準の、約2.26倍から約2.47倍である、請求項1〜4のいずれかに記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項6】
経口持続放出性製剤が、約1.5時間〜約8時間の吸収半減期をもたらす、請求項1〜4のいずれかに記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項7】
疎水性ポリマーが医薬的に許容可能なアクリル系ポリマーである、請求項1〜6のいずれかに記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項8】
アクリル系ポリマーが、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキル共重合体、メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(無水メタクリル酸)、メタクリル酸メチル、ポリメタクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)共重合体、ポリアクリルアミド、グリシジルメタクリル酸共重合体およびそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項7に記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項9】
ヒドロモルホン、医薬的に許容可能な塩、および前記のものの任意の混合物より成る群から選ばれる、有効量のオピオイド鎮痛薬、および前記オピオイド鎮痛薬を取り囲むコーティングを含有する経口持続放出性医薬製剤であって、
前記コーティングは疎水性ポリマーを含み、
前記コーティングには通路が設けられ、
前記製剤はヒトの患者に1製剤を投与したとき、約1時間〜約8時間の吸収半減期をもたらし、
前記患者への製剤投与後4時間〜9時間以内に最高血漿濃度到達時間(Tmax)をもたらし、
前記製剤がヒトの患者に対し1日1回の投与に適した、
経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項10】
前記オピオイド鎮痛薬が、約2mg〜約64mgのヒドロモルホンである、請求項9に記載の経口持続放出性オピオイド医薬製剤。
【請求項11】
鎮痛有効量のオピオイド鎮痛薬が塗布されている複数の不活性医薬ビーズを含有する、1日1回投与用の経口持続放出性オピオイド医薬製剤の調製方法であって、
前記オピオイド鎮痛薬が、ヒドロモルホン、前記のものの任意の医薬的に許容可能な塩、および前記のものの任意の混合物より成る群から選ばれ、
前記オピオイドをヒトに投与したときに、約1時間〜約8時間の吸収半減期をもたらし、4時間〜9時間以内の最高血漿濃度到達時間(Tmax)を与え、および患者への製剤投与から6時間後の血漿濃度が、患者への製剤投与から約24時間後の前記オピオイド血漿水準に対し、少なくとも約2.26倍の血漿濃度を有する有効速度で放出されるために有効な速度で前期オピオイドが放出されるように前記不活性医薬ビーズには、医薬的に許容可能なアクリル系ポリマー、疎水性セルロース物質、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性ポリマーの有効量が上塗り(オーバーコート)されていて、
前記製剤は、投与後約24時間またはそれ以上にわたり効果的な治療を提供する、方法。
【請求項12】
経口持続放出性製剤が1時間〜約6時間の吸収半減期を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
経口持続放出性製剤が、1.5時間〜約8時間の吸収半減期を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
患者への製剤投与から6時間後の血漿濃度が患者への製剤投与から約24時間後の前記オピオイド血漿水準に対し少なくとも約2.26倍から約2.47倍の血漿濃度である請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−290901(P2006−290901A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178333(P2006−178333)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【分割の表示】特願平7−515254の分割
【原出願日】平成6年11月22日(1994.11.22)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】