説明

血管形成及び/又は増加した血管透過性に関連する疾病の治療におけるゲムシタビンと、そして場合により電離放射と組み合わせたキナゾリン誘導体ZD6474の使用

本発明は、ゲムシタビンと組み合わせたZD6474の投与を含む、ヒトのような温血動物(場合により、電離放射で処置されている)における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成方法、特に癌、特に固形腫瘍に関連する癌の治療方法;ZD6474及びゲムシタビンを含む医薬組成物;療法によるヒト又は動物体の治療方法に使用するためのZD6474とゲムシタビンとを含む組み合わせ製品;ZD6474とゲムシタビンとを含むキット;ヒトのような温血動物(場合により、電離放射で処置されている)における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成における医薬の製造におけるZD6474とゲムシタビンとの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ゲムシタビンと組み合わせたZD6474の投与を含む、ヒトのような温血動物(場合により、電離放射で処置されている)における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成方法、特に癌、特に固形腫瘍に関連する癌の治療方法;ZD6474及びゲムシタビンを含む医薬組成物;療法によるヒト又は動物体の治療方法に使用するためのZD6474とゲムシタビンとを含む組み合わせ製品;ZD6474とゲムシタビンとを含むキット;ヒトのような温血動物(場合により、電離放射で処置されている)における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成における医薬の製造におけるZD6474とゲムシタビンとの使用に関する。
【0002】
正常な血管形成は、胚成長、創傷治癒及び数種の構成の女性生殖機能のを含む種々のプロセスに重要な役割を果たす。望ましくない又は病的な血管形成は、糖尿病性網膜症、乾癬、癌、慢性関節リュウマチ、アテローム、カポジ肉腫及び血管種を含む病状に関連する(Fan 等, 1995, Trends Pharmacol. Sci. 16: 57-66; Folkman, 1995, Nature Medicine 1: 27-31)。血管透過性の変更は、正常な生理学的プロセス及び病的生理学的プロセスの双方に役割を果たすと考えられる(Cullinan-Bove 等, 1993, Endocrinology 133: 829-837; Senger 等, 1993, Cancer and Metastasis Reviews, 12: 303-324)。インビトロで内皮細胞成長促進活性を持つ数種のポリペプタイドは、酸性線維芽細胞成長因子及び塩基性線維芽細胞成長因子(aFGF & bFGF)並びに血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)に関連して同定されてきた。そのレセプターの制限された発現の理由で、VEGFの成長因子は、両FGFと対照的に、内皮細胞に向けて相対的に特異的である。最近の証拠は、VEGFが正常及び病的血管形成双方(Jakeman 等, 1993, Endocrinology, 133: 848-859; Kolch 等, 1995, Breast Cancer Research and Treatment, 36:139-155)並びに血管透過性(Connolly 等, 1989, J. Biol. Chem. 264: 20017-20024)に対して重要な刺激剤であることを示す。抗体を用いるVEGFの隔離(sequestration)によるVEGF作用のアンタゴニズムは、腫瘍増殖の抑制をもたらすことができる(Kim et al, 1993, Nature 362: 841-844)。
【0003】
レセプターチロシンキナーゼ(Receptor Tyrosine Kinases :RTKs)は細胞の血漿膜を横切る生化学信号の伝達に重要である。これらの伝達膜分子は、血漿膜中のセグメントにより細胞内チロシンキナーゼ領域に連結された細胞外リガンド−結合領域から特徴的に構成される。リガンドのレセプターに対する結合はレセプター関連チロシンキナーゼ活性の刺激をもたらし、当該活性は、レセプター及びその他の細胞内分子の双方にチロシン残基のリン酸化に導く。チロシンリン酸化のこれらの変化は種々の細胞応答に導く信号性カスケードを開始する。今日まで、アミノ酸配列相同により定義される、少なくとも19の区別的RTKサブファミリーが同定されている。これらのサブファミリーのうちの一つが、現在のところfms様チロシンキナーゼレセプターであるFlt-1、キナーゼ挿入領域−含有レセプターであるKDR(FLK-1とも称する)、及び別のfms様チロシンキナーゼレセプターであるFlt-4によって構成される。これらの関連RTKs、Flt-1及びKDRのうちの二つは、高親和性のVEGFを結合することが示されている(De Vries 等, 1992, Science 255: 989-991; Terman 等, 1992, Biochem. Biophys. Res. Comm. 1992, 187: 1579-1586)。VEGFの、外来細胞中に発現されたこれらのレセプターへの結合は、細胞タンパク質及びカルシウムフラックスのチロシンリン酸化状態の変化と関連されてきた。
【0004】
VEGFレセプターチロシンキナーゼのインヒビターであるキナゾリン誘導体が国際特許出願国際公開WO 98/13354及びWO 01/32651に記載されている。WO 98/13354及びWO 01/32651には、化合物は、VEGFレセプターチロシンキナーゼ(VEGF RTK)に対して活性を有するが、一方、上皮成長因子(epidermal growth factor: EGF)レセプターキナーゼ(EGF RTK)に対していくらか活性を有すると記載されている。
ZD6474は、4-(4-ブロモ-2-フルオロアニリノ)-6-メトキシ-7-(1-メチルピペリジン-4-イルメトキシ)キナゾリン:
【0005】
【化1】

【0006】
である。
ZD6474は、WO 98/13354の広い一般的開示の範囲内に入り、WO 01/32651に例示されている。ZD6474はVEGF RTKの強力なインヒビターであり、EGF RTKに対してもいくらかの活性を示す。ZD6474は、一日一回の経口投与に従うモデルの範囲内で広スペクトル抗腫瘍活性を引き出すことが示された(Wedge S.R., Ogilvie D.J., Dukes M. 等, Proc. Am. Assoc. Canc. Res. 2001; 42: アブストラクト 3126)。
【0007】
WO 98/13354およびWO 01/32651では、それらの発明の化合物は:「単独療法として適用できる、又は本発明の化合物に一種以上のその他の物質及び/又は治療剤を加えることを含むことができる。このような共同治療は、治療の個々の成分の同時、逐次または別個の投与により達成できる」と記述する。
【0008】
次いで、WO 98/13354 及び WO 01/32651は、外科的、放射線による及び成長因子機能の抑制剤を含む種々のタイプの化学療法剤を含むこのような共同治療の例示に続く。
WO 98/13354 及びWO 01/32651中には癌を含むいずれかの疾病状態の治療のための本発明の化合物とゲムシタビンとの組み合わせを示唆する記載はどこにもない。
【0009】
WO 98/13354 及び WO 01/32651のどこにも、提案されているZD6474とゲムシタビンとの特定の組み合わせがない。
WO 98/13354 及び WO 01/32651のどこにも、本発明のいずれかの化合物の使用がその他の治療と併用して驚くべき利点作用を生じさせることの記載はない。
【0010】
Baker等, Cancer Research 62, 1996 2003, April 1, 2002に、VEGF RTK インヒビター(PTK 787)、EGF RTKインヒビター(PKI 166)及びゲムシタビンの三重組み合わせが記載されている。著者は、PTK 787とゲムシタビン又はPKI 166とゲムシタビンとの組み合わせが利点があるが、三重組み合わせは追加の治療効果を生じさせないと結論した。
【0011】
Bruns等, International Journal of Cancer vol 102, 2002年2月発行 101-108頁にゲムシタビンとDC101, VEGF レセプター-2 抗体 (抗-KDR 抗体)との組み合わせが記載されている。
【0012】
予期しないでしかも驚いたことに、WO 98/13354 及びWO 01/32651に列挙された組み合わせ療法の広範な記載から特定の選択を有する組み合わせに使用した特定の化合物ZD6474、すなわち、ゲムシタビンとの組み合わせが単独で使用したZD6474及びゲムシタビンのいずれかの一つよりも顕著により優れた効果を生じさせることを我々は今見出した。特に、ゲムシタビンとの組み合わせで使用されるZD6474は、単独で使用したZD6474及びゲムシタビンのいずれかの一つよりも固形腫瘍について顕著により優れた効果を生じさせる。
【0013】
ゲムシタビンは(INN) 2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン1塩酸塩(β-異性体)である。
ゲムシタビンはGemzar TM (Lilly社の商標)としても知られており、細胞毒性剤である。それはDNA合成の阻害をもたらす代謝拮抗物質である。
【0014】
本発明の治療方法の抗−癌作用には、抗−腫瘍作用、応答速度、疾病進行までの時間及び生存率等があるが、これらに限定されない。本発明の治療方法の抗腫瘍作用には、腫瘍増殖の抑制、腫瘍増殖の遅延、腫瘍の軽減、腫瘍の収縮、治療の中止による腫瘍の再増殖までの増加作用、疾病進行の遅延化等があり、これらに限定されない。本発明の治療方法を固形腫瘍を有する又は有しない癌の治療を必要とするヒトのような温血動物に施すとき、当該治療方法は、例えば、抗腫瘍作用の程度、応答速度、疾病進行までの時間及び生存率のうちの一以上により測ることのできる作用を生じさせうるということが予期される。
【0015】
本発明では、ヒトのような温血動物において抗血管形成及び/または血管透過性減少作用の形成方法を提供するものであり、当該方法は前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を投与し、有効量のゲムシタビンをその前後若しくは同時に投与することを含む。
【0016】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における癌の治療方法を提供するものであり、当該方法は前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を投与し、有効量のゲムシタビンをその前後若しくは同時に投与することを含む。
【0017】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における固形腫瘍に関連する癌の治療方法を提供するものであり、当該方法は前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を投与し、有効量のゲムシタビンをその前後若しくは同時に投与することを含む。
【0018】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における抗血管形成及び/または血管透過性減少作用の形成方法を提供するものであり、当該方法は前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を投与し、有効量のゲムシタビンをその前後若しくは同時に投与することを含み、ここでZD6474及びゲムシタビンは各々場合により薬学的に許容できる賦形剤又はキャリヤーと共に投与できる。
【0019】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における癌の治療方法を提供するものであり、当該方法は前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を投与し、有効量のゲムシタビンをその前後若しくは同時に投与することを含み、ここでZD6474及びゲムシタビンは各々場合により薬学的に許容できる賦形剤又はキャリヤーと共に投与できる。
【0020】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における固形腫瘍に関連する癌の治療方法を提供するものであり、当該方法は前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を投与し、有効量のゲムシタビンをその前後若しくは同時に投与することを含み、ここでZD6474及びゲムシタビンは各々場合により薬学的に許容できる賦形剤又はキャリヤーと共に投与できる。
【0021】
本発明の別の局面では、ZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩、及びゲムシタビンを、薬学的に許容できる賦形剤又はキャリヤーと共に含む医薬組成物も提供する。
本発明の別の局面では、ZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩及びゲムシタビンを含む、ヒトまたは動物体の療法による治療方法に使用するための組み合わせ製品を提供する。
【0022】
本発明の別の局面では、ZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩及びゲムシタビンを含むキットを提供する。
本発明の別の局面では、
a)第1単位投与形態のZD6474又はその薬学的に許容できる塩
b)第2投与形態のゲムシタビン
c)第1及び第2投与形態を収容するための容器手段
を含むキットを提供する。
【0023】
本発明の別の局面では、
a)第1単位投与形態の、薬学的に許容できる賦形剤又はキャリヤーと共に含むZD6474又はその薬学的に許容できる塩
b)第2投与形態の、薬学的に許容できる賦形剤又はキャリヤーと共に含むゲムシタビン
c)第1及び第2投与形態を収容するための容器手段
を含むキットを提供する。
【0024】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における抗血管形成及び/または血管透過性減少作用の形成に使用するための医薬の製造におけるZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩、及びゲムシタビンの使用を提供する。
【0025】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における抗癌作用の形成に使用するための医薬の製造におけるZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩、及びゲムシタビンの使用を提供する。
【0026】
本発明の別の局面では、ヒトのような温血動物における抗腫瘍作用の形成に使用するための医薬の製造におけるZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩、及びゲムシタビンの使用を提供する。
【0027】
本発明の別の局面では、療法治療の必要なヒトのような温血動物に対する、有効量のZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩と、場合により薬学的に許容できる賦形剤若しくはキャリヤーの投与、その投与と同時、その投与に続いて又はその投与と別個の有効量のゲムシタビンの投与を含む(ここでゲムシタビンは薬学的に許容できる賦形剤若しくはキャリヤーと共に投与できる)療法組み合わせ治療を提供する。このような療法治療には抗血管形成及び/又は血管透過性作用、抗癌作用及び抗腫瘍作用等がある。
【0028】
本明細書中で定義するような本発明の組み合わせ治療は、前記治療の個々の成分の同時、逐次又は別個投与により達成できる。本明細書中で定義するような組み合わせ治療は、単一の療法として施用しても本発明の組み合わせ療法に加えて外科的、放射線治療又は追加の化学療法と関連させることもできる。
【0029】
外科的手術は、本明細書で記載するZD6474との組み合わせ治療の投与前、その間又はその後の、腫瘍の部分的又は完全切除の段階を含むことができる。
本発明の組み合わせ治療と共に任意に使用するためのその他の化学療法剤には、WO 01/32651に記載されているものがある(当該公報を本明細書に参照として含める)。このような化学療法剤には化学療法剤の5種の主要なカテゴリーをカバーできる:
(i) 血管標的剤を含むその他の抗血管形成剤;
(ii) 細胞分裂停止剤;
(iii)生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン);
(iv) 抗体(例えば、エドレコロマブ);
(v) 抗増殖/抗新生物形成薬及びその組み合わせ(医薬癌研究に使用される)
等である。
【0030】
本発明の組み合わせ治療と共に使用するための化学療法剤の特定の例は、シスプラチンのような白金抗ガン剤であり、このような組み合わせは肺癌や膀胱癌に特に有用であることが期待される。
【0031】
ZD6474、ゲムシタビン及び電離放射の三重組み合わせの投与は、ZD6474、ゲムシタビン及び電離放射いずれか単独で達成されるものよりも、ZD6474及びゲムシタビンの組み合わせで達成されるものよりも、ZD6474及び電離放射の組み合わせで達成されるものよりも、ゲムシタビン及び電離放射の組み合わせで達成されるものよりも、大きい、抗腫瘍効果のような効果を生じさせることができる。
【0032】
本発明では、ヒトのような温血動物において抗血管形成及び/又は血管透過減少作用の形成方法を提供することであり、当該方法は、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含む。
【0033】
本発明の別の態様では、ヒトのような温血動物において癌の治療方法を提供することであり、当該方法は、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含む。
【0034】
本発明の別の態様では、ヒトのような温血動物において固形腫瘍に関連する癌の治療方法を提供することであり、当該方法は、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含む。
【0035】
本発明の別の態様では、ヒトのような温血動物において抗血管形成及び/又は血管透過減少作用の形成方法を提供することであり、当該方法は、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含み、ZD6474及びゲムシタビンの各々は、場合により、薬学的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと共に投与できる。
【0036】
本発明の別の態様では、ヒトのような温血動物において癌の治療方法を提供することであり、当該方法は、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含み、ZD6474及びゲムシタビンの各々は、場合により、薬学的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと共に投与できる。
【0037】
本発明の別の態様では、ヒトのような温血動物において固形腫瘍に関連する癌の治療方法を提供することであり、当該方法は、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含み、ZD6474及びゲムシタビンの各々は、場合により、薬学的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと共に投与できる。
【0038】
本発明の別の態様では、電離放射と共に治療されるヒトのような温血動物において抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用をもたらすのに使用される医薬の製造におけるZD6474又はその薬学的に許容できる塩及びゲムシタビンの使用を提供する。
【0039】
本発明の別の態様では、電離放射と共に治療されるヒトのような温血動物において抗癌作用をもたらすのに使用される医薬の製造におけるZD6474又はその薬学的に許容できる塩及びゲムシタビンの使用を提供する。
【0040】
本発明の別の態様では、電離放射と共に治療されるヒトのような温血動物において抗腫瘍作用をもたらすのに使用される医薬の製造におけるZD6474又はその薬学的に許容できる塩及びゲムシタビンの使用を提供する。
【0041】
本発明の別の態様では、療法組み合わせ治療の必要なヒトのような温血動物に、有効量のZD6474若しくはその薬学的に許容できる塩を、場合により薬学的に許容できる賦形剤若しくはキャリヤーと共に投与すること、そして有効量のゲムシタビンを、場合により薬学的に許容できる賦形剤若しくはキャリヤーと共に投与すること、そして有効量の電離放射の投与を含み、ここで、ZD6474、ゲムシタビン及び電離放射は同時に、逐次的にまたは別個にそして任意の投与順序で投与できる、療法組み合わせ治療を提供する。
【0042】
電離放射で治療されるヒトのような温血動物とは、ZD6474及びゲムシタビンを含む医薬、若しくは組み合わせ治療の投与前、投与後又は投与と同時に電離放射で治療されるヒトのような温血動物を意味する。例えば、前記電離放射は、ZD6474及びゲムシタビンを含む医薬、若しくは組み合わせ治療の投与の一週間前若しくは一週間後の期間内にヒトのような温血動物に与えることができる。これは、ZD6474、ゲムシタビン及び電離放射を別個に若しくは逐次的に任意の順序で投与することができ、または同時に投与することができることを意味する。温血動物は、ZD6474、ゲムシタビン及び電離放射の各々同時の作用を経験できる。
【0043】
本発明の一態様では、電離放射は、ZD6474及びゲムシタビンのいずれかの投与前又はZD6474及びゲムシタビンのいずれかの投与後に投与される。
本発明の一態様では、電離放射は、ZD6474及びゲムシタビンの双方の投与前又はZD6474及びゲムシタビンの双方の投与後に投与される。
【0044】
本発明の一態様では、ZD6474は、温血動物が電離放射で処置された後に温血動物に投与される。
本発明の別の一態様では、本発明の治療方法の効果は、前記治療に単独で使用される各成分の効果の和、すなわち、単独使用されるZD6474及びゲムシタビンの各々又は単独で使用されるZD6474、ゲムシタビン及び電離放射の各々の効果の和に少なくとも等しいことが期待される。
【0045】
本発明の別の一態様では、本発明の治療方法の効果は、前記治療に単独で使用される各成分の効果の和、すなわち、単独使用されるZD6474及びゲムシタビンの各々又は単独で使用されるZD6474、ゲムシタビン及び電離放射の各々の効果の和よりも大きいことが期待される。
【0046】
本発明の別の一態様では、本発明の治療方法の効果は相乗効果であることが期待される。
本発明では、組み合わせ治療は、効果が、例えば、応答の程度、応答速度、症状進行までの時間又は生存期間により測定されるとき、その慣用用量において組み合わせ治療の成分の一方又は他方を投与時に達成しうるよりも、治療的により優れている場合に相乗効果を示すとして定義される。例えば、組み合わせ治療の効果は、ZD6474又はゲムシタビン又は電離放射単独で達成され得る効果よりも組み合わせ治療の効果がより優れている場合に相乗効果がある。さらに、組み合わせ治療の効果は、ZD6474又はゲムシタビン又は電離放射単独に対して応答しない(又は殆ど応答しない)患者群に有利な効果が得られる場合に相乗効果がある。加えて、組み合わせ治療の効果は、成分の一方がその慣用的用量で投与され、他の成分(1種又は複数種)減少させた用量で投与される場合、例えば、応答の程度、応答速度、症状進行までの時間又は生存期間により測定され、そして治療効果が、組み合わせ治療の各成分の慣用量を投与するとき達成できるものと等しい場合に相乗効果を与えるとして定義される。特に、ZD6474又はゲムシタビン又は電離放射の慣用用量が、応答の程度、応答速度、症状進行までの時間又は生存期間の損失をもたらさず、特に、応答の持続性に損失をもたらさず、しかも各成分の慣用用量が使用されるときに困難な副作用が起こるよりも少ない状態で、ZD6474又はゲムシタビン又は電離放射の慣用用量を少なくできる場合に、相乗性が存在するとみなされる。
【0047】
前述したように、本明細書中で定義したとおりの本発明の組み合わせ治療は、抗血管形成及び/又は血管透過性効果に特徴を有する。血管形成及び/又は血管透過性の増加は、癌(白血病、多発性骨髄症及びリンパ腫を含む)、糖尿病、乾癬、慢性関節リュウマチ、カポジ肉腫、血管種、急性及び慢性ネフロパシー、アテローム、動脈再発狭窄症、自己免疫疾患、急性炎症、リンパ浮腫、子宮内膜症、機能不全子宮出血並びに加齢関連黄斑変性を含む網膜血管増殖を伴う眼疾患を含む広範囲の疾患症状に存在する。本発明の組み合わせ治療は、癌やカポジ肉腫のような疾患の予防及び治療に特に有用であることが期待される。より詳細には、本発明のこのような組み合わせ治療は、例えば、結腸、膵臓、膀胱、乳房、前立腺、肺及び皮膚の、初期及び再発固形腫瘍の増殖を有利に遅延させることが期待される。本発明の組み合わせ治療は、特に、例えば、中皮腫、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer: NSCLC)のような膵臓癌や肺癌の腫瘍の増殖を有利に遅延させることが期待される。より詳細には、本発明のこのような組み合わせ治療は、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫を含むVEGFを伴う癌の形成を抑制すること、及びさらに、例えば、VEGF、特に、結腸、膵臓、膀胱、乳房、前立腺、肺、外陰部及び皮膚、特に、NSCLCの一定の腫瘍を含むそれらの増殖及び拡大についてVEGFに顕著に依存するような腫瘍と関連するような初期及び再発固形腫瘍の増殖を抑制することが期待される。
【0048】
本発明の別の態様では、ZD6474及びゲムシタビン、場合により電離放射の併用は、VEGFと関連する初期及び再発固形腫瘍、特に、それらの増殖及び拡大についてVEGFに依存するような固形腫瘍を抑制することが期待される。
【0049】
本発明の別の態様では、ZD6474及びゲムシタビン、場合により電離放射の併用は、VEGF及びEGFと関連する初期及び再発固形腫瘍、特に、それらの増殖及び拡大についてVEGF及びEGFに依存するような固形腫瘍を抑制することが期待される。
【0050】
本明細書中に記載される組成物は経口投与に適した形態、例えば、錠剤又はカプセル、点鼻投与又は吸入による投与に適した形態、例えば、粉末又は溶液として、非経口注射(静脈、皮下、筋肉内、血管内若しくは輸液)に適した形態、例えば、無菌溶液、懸濁液若しくはエマルション、局所投与に適した形態、例えば、軟膏若しくはクリーム、直腸投与に適した形態、例えば、ざ剤であることができ、あるいは投与の経路が腫瘍に直接注射による若しくは局部(regional or local)送達によることができる。本発明の別の態様では、組み合わせ治療のZD6474は、内視鏡内、気管内、病変部内、経皮、静脈内、皮下内、腹腔内、腫瘍内に送達できる。好ましくは、ZD6474は経口的に投与される。概して、本明細書で記載される組成物は慣用的な賦形剤を使用する慣用的な方法で調製できる。本発明の組成物は単位投与形態で有利に存在する。
【0051】
ZD6474は、10〜500mg/動物の体表1m2の範囲内の単位用量で温血動物に、例えば、ヒトにおいておおよそ0.3〜15mg/kgで標準的には投与される。例えば、0.3〜15mg/kg、好ましくは、0.5〜5mg/kgの範囲内の単位用量が予定され、これは標準的に治療するのに有効な用量である。錠剤やカプセルのような単位投与形態は、普通、例えば、25〜500mgの活性成分を含有する。好ましくは、0.5〜5mg/kgの一日用量が使用される。
【0052】
ゲムシタビンは公知のクリニカルプラクティスにしたがって投与できる。例えば、NSCLCにおいて推薦されるゲムシタビンの用量は、30分静脈点滴により与えられる1000mg/m2である。これを3週間、週一回繰り返すことができ、次いで、1週間休薬期間を置く。次いで、この4週サイクルを繰り返すことができる。患者が過度の毒性を経験した場合、投与量の減少が必要となりうる。膵臓癌の場合、ゲムシタビンの推奨される用量は、30分静脈点滴により与えられる1000mg/m2である。これを7週間、週一回繰り返すことができ、次いで、1週間休薬する。次のサイクルは、毎4週のうち継続して3週間週1度の注射から構成できる。患者が過度の毒性を経験した場合、投与量の減少が必要となりうる。
【0053】
投与量及び投与計画は特定の疾病症状及び患者の全症状にしたがって変動できる。投与量及び投与計画は、本発明の組み合わせ治療に加えて、一種以上の追加の化学療法剤が使用される場合も変動できる。投与計画を、特定の患者を治療している医師により決定され得る。
【0054】
放射線治療は、臨床放射線治療の公知の方法に従って投与できる。電離放射の投与量は、臨床放射線治療に使用される公知の投与量である。使用される放射線治療は、例えば、γ線、X線、及び/又はラジオアイソトープからの放射の直接送達の使用を含みうる。マイクロ波及びUV照射のようなDNA損傷化因子のその他の形態も、本発明に包含される。例えば、X線は一日に1.8〜2.0Gyを週に5日、5〜6週間を用量とすることができる。標準的には、総分割用量(fractionated dose)は45〜60Gy範囲内にある。単回のより大用量、例えば、5〜10Gyは放射線治療の過程の一部として投与され得る。単回投与は、手術時に投与され得る。過分割照射を使用でき、それによりX線の小用量を経過期間にわたって規則正しく投与され、例えば多くの日数にわたって1時間当たり0.1Gy投与される。ラジオアイソトープの投与量範囲は広く変動し、アイソトープの半減期、発される放射線の強度と種類、及び細胞による取り込みに依存する。
【0055】
上述したように、特定の疾病症状の療法又は予防法に要求される各療法の用量の大きさは、治療される宿主、投与経路及び治療される病気の重篤度に依存して必然的に変動し得る。したがって、最適の投与量は、特定の患者を治療する医者により決定され得る。例えば、毒性を低下させるために組み合わせ治療の成分の上述の用量を減少させることが必要又は望ましいことがある。
【0056】
本発明は、ゲムシタビンとZD6474又はZD6474の塩との組み合わせに関する。
医薬組成物に使用するためのZD6474の塩は薬学的に許容できる塩であり得るが、その他の塩がZD6474及びその薬学的に許容できる塩の生成に有用であり得る。このような塩は、薬学的に許容できるカチオンを提供する無機又は有機の塩基を用いて形成できる。無機又は有機の塩基を用いるような塩には、例えば、ナトリウム塩若しくはカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩若しくはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又は例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリン若しくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンを用いる塩等がある。
【0057】
ZD6474は、ZD6474を製造する公知の方法のいずれかにしたがって合成できる。例えば、ZD6474は、WO 01/32651に記載された方法のいずれか、例えば、WO 01/32651の実施例2(a)、2(b)及び2(c)に記載されたような方法で製造できる。
ゲムシタビンは商業的に入手できる。
【0058】
ゲムシタビンと組み合わせたZD6474の活性を例証するために下記の試験を使用できる。
ヌードマウスにおける初期膵臓腫瘍増殖及び転移局所増殖におけるZD6474及びゲムシタビン治療の作用を研究するモデル
ヌードマウス(1群あたり10匹)の膵臓内に、1×106のL3.6plヒト膵臓ガン細胞を注射した。マウスは、腫瘍注射後下記の8日の治療レジメのいずれかを受けた。
【0059】
1群− 毎日経口適用による食塩水を与えた対照群
2群− ZD6474の毎日1回投与(50mg/kg 経口強制投与)
3群− ゲムシタビンを週2回投与(各処理週の2日目と5日目) (腹腔内注射(i.p.)による100mg/kg投与)
4群− ZD6474 の毎日1回投与(50mg/kg 経口強制投与)及び週2回のゲムシタビン(各処理週の2日目と5日目) (GEM:100mg/kg投与(i.p.))
腫瘍注入後32日目に動物を犠牲にした。膵臓腫瘍、肝臓転移、リンパ節転移、腹腔癌腫の発生率を評価した。初期膵臓腫瘍の重量を測定した。肉眼で観察した拡大した全てのリンパ節及び肝臓節が組織病理学(H&E 染色)により確認された。
【0060】
表1に結果を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
対照腫瘍(1231mg)の平均重量比較すると、処置した動物の腫瘍は836mg (ゲムシタビン) 541mg (ZD6474) 及び308mg (ゲムシタビン + ZD6474)の平均重量に到達した。肝臓転移は、対照で6/10及びゲムシタビン処置動物で4/9存在したが、ZD6474又は組み合わせの動物でわずかそれぞれ1/10及び0/5動物しか肝臓転移を示さなかった。リンパ節転移は対照で10/10及びゲムシタビン処置動物で9/9存在したが、ZD6474又は組み合わせの動物でわずかそれぞれ3/10及び1/5動物しかリンパ節転移を示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトのような温血動物における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成方法であって、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、投与することを含む方法。
【請求項2】
ヒトのような温血動物における癌の治療方法であって、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、投与することを含む方法。
【請求項3】
固形癌に関連する願の治療のための請求項2に記載の治療方法。
【請求項4】
ZD6474又はその薬学的に許容できる塩と、ゲムシタビンとを、薬学的に許容できる賦形剤または担体と共に含む医薬組成物。
【請求項5】
ZD6474又はその薬学的に許容できる塩と、ゲムシタビンとを含むキット。
【請求項6】
ヒトのような温血動物における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成に使用するための医薬の製造におけるZD6474又はその薬学的に許容できる塩とゲムシタビンとの使用。
【請求項7】
ヒトのような温血動物の抗癌作用の形成に使用するための医薬の製造におけるZD6474又はその薬学的に許容できる塩とゲムシタビンとの使用。
【請求項8】
抗癌作用が抗腫瘍作用を含む請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ヒトのような温血動物における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成方法であって、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、且つ有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含む方法。
【請求項10】
ヒトのような温血動物における癌の治療方法であって、前記動物に有効量のZD6474又はその薬学的に許容できる塩を、有効量のゲムシタビンの投与前、投与後又は投与と同時に、且つ有効量の電離放射前、放射後又は放射と同時に投与することを含む方法。
【請求項11】
固形癌に関連する癌の治療のための請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電離放射で処置されるヒトのような温血動物における抗血管形成及び/又は血管透過性減少作用の形成に使用するための医薬の製造におけるZD6474又はその薬学的に許容できる塩とゲムシタビンとの使用。
【請求項13】
電離放射で処置されるヒトのような温血動物の抗癌作用の形成に使用するための医薬の製造におけるZD6474又はその薬学的に許容できる塩とゲムシタビンとの使用。
【請求項14】
抗癌作用が抗腫瘍作用を含む請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2006−504723(P2006−504723A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542620(P2004−542620)
【出願日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004334
【国際公開番号】WO2004/032937
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】