説明

衛生設備室

【課題】洗い場を確保する等の衛生設備室の各機能の使い勝手を低下させることなく省スペース化を図り、延いては、省かれたスペースを住居内の他の用途に振り向けて居住スペースを拡大することができる衛生設備室を提供する。
【解決手段】浴槽及び洗い場を有する浴室スペースと、便器を有するトイレスペースと、上記浴室スペースと上記トイレスペースとを離隔する位置に配置され、上記浴室スペース及び上記トイレスペースの何れからも使用可能な洗面化粧台とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽、シャワー装置、洗面化粧台、便器等の衛生設備を一室内に納めた衛生設備室に関する。
【背景技術】
【0002】
バブル時代に高騰した都心部の地価も、バブル崩壊によりある程度下落したことから、そのアメニティに惹かれて、都心に住居を構える都心回帰の現象が起きている。
【0003】
この中心となるのが、シングル(特に女性)世帯と、カップル(DINKS等)世帯である。彼等にとっても、都心部でのマンション購入費又は家賃は決して安いものではないので、住居の面積も限られたものとなる。それでも彼等は、自分達のライフスタイルに合った質の高い住居を望んでいる。
【0004】
これを住居を供給する側から見れば、限られた面積を有効に利用して、それによって浮いた面積から自由に使える空間を作り出した物件を供給することが販売、賃貸のポイントとなる。そのためにまず着目されるのが、浴室、洗面化粧室、トイレ等の衛生設備を備える部屋である。
【0005】
伝統的な間取りでは、洗面化粧室は脱衣室を兼ねて浴室前に配置されることが多いものの、それぞれ独立した室を形成し、トイレに至ってはこれらとは全くの別室として形成される。したがって、それぞれの室は同時使用も可能である。
【0006】
これらの床面積の合計が住居の総床面積に占める割合は大きいので、まずこの面積を削減することが検討される。この床面積削減方法の一つに、洗面化粧室をトイレと一体化させる、或いは廃止する方法がよく行われている。トイレの中に洗面化粧室の機能を盛り込むといっても、面積が限られているので小さな洗面器しか採用できず、使い勝手が悪く、また、十分な収納スペースを確保できない。第一、便器の横で化粧等をすることに抵抗感を覚える女性は多い。洗面化粧室を廃止したものでは、化粧のためには寝室等に別途ドレッサーを購入しなければならず、また、洗面、歯磨き等はキッチンの流し台で行うしかなく、快適な都市生活とはいえない。
【0007】
他方、シャワーを有する浴槽と便器、洗面化粧台の三つを一つの室内に収める、いわゆる 3 in 1 と呼ばれるものも広く行われている。しかし、洗い場がないので、シャワーを浴びるのも体を洗うのも浴槽内に行わねばならないが、水滴飛散防止のためにカーテンで仕切られているので圧迫感がある。そして、入浴後は、飛散した水滴や湿気等でトイレも使い辛くなる等、使用者にとって決して使い勝手のよいものとはいえない。さらに、備品それぞれの使用空間も十分に確保されておらず、閉塞感を与えるものになっているし、一人分の空間しかないので、同時に二人以上で使用することができない。上述した方法と同様、便器の横で化粧等をすることに抵抗感を与える場合がある。
【0008】
これら広く行われている方法以外にも種々の提案がなされている。例えば、浴槽と、洗面化粧台が配設される洗面スペースと、脱衣スペースとが順に並設されて成る浴室ユニットであって、洗面スペース床面を防水仕様とし、浴槽と洗面スペースとの間に左右に開閉する第一の間仕切りを設け、洗面スペースと脱衣スペースとの間に左右に開閉する第二の間仕切りを設けて成る浴室ユニットがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この浴室ユニットによれば、第一の間仕切りを閉じるとともに第二の間仕切りを開けて、洗面スペースと脱衣スペースとを一つの広い洗面化粧室として使用することができ、第一の間仕切りを開けるとともに第二の間仕切りを閉じて、浴槽の設置されたスペースと洗面スペースとを、入浴時に広い浴室として使用することもできる。さらに、第一の間仕切りと第二の間仕切りとの両方を閉じて、洗面スペースを独立した洗面化粧室として使用することも可能である。
【0010】
しかしながら、洗面スペースの外に脱衣スペ−スを設けなければならない必然性はなく、スペ−ス的には無駄であり、衛生設備室の面積低減に資するとは思えない。
【0011】
また、シャワーを有するシャワールームと便器を有するトイレルームと洗面化粧台を設けた洗面所とを互いに一体化して一ユニットに納め、上記洗面化粧台を通路側に面するように設けられたサニタリーユニットも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
このサニタリーユニットによれば、通路を洗面作業時のスペースとして使用することができて、その分だけシャワールームとトイレルームとをそれぞれ広くスペースをとることができ、シャワー、便器、洗面化粧台といった内部商品の互いの配置に無理をすることなく、結果として、使用者にとっての使い勝手を良いものとすることができる。
【0013】
しかしながら、通路を洗面作業時のスペースとして使用するので、通行の邪魔になることがある。また、快適な都市生活には浴室を別途設ける必要があり、このサニタリーユニットは、2階建て以上のような住宅の2台目のトイレおよび洗面化粧台として採用できるにとどまるものである。
【特許文献1】特開平9−144346号公報
【特許文献2】特開2001−178663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、洗い場を確保する等の衛生設備室の各機能の使い勝手を低下させることなく省スペース化を図り、ひいては、省かれたスペースを住居内の他の用途に振り向けて居住スペースを拡大することができる衛生設備室を提供することを目的とするものである。
【0015】
本発明の他の目的は、浴室及びトイレの同時使用も可能な機能的な衛生設備室を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、新しいライフスタイルに適合した衛生設備室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る衛生設備室は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、浴槽及び洗い場を有する浴室スペースと、便器を有するトイレスペースと、上記浴室スペースと上記トイレスペースとを離隔する位置に配置され、上記浴室スペース及び上記トイレスペースの何れからも使用可能な洗面化粧台とを備えるものである。
【0018】
前記洗面化粧台は、好適には、請求項2に記載したように、前記浴室スペースと前記トイレスペースとの境界となる線を軸として左右対称の洗面器を備え、その対称軸上に水栓及び排水口を配置することが望ましい。
【0019】
そして、前記浴室スペース及びトイレスペースは、好適には、請求項3に記載したように、それぞれ専用の出入り口を備えるようにすることもできる。
【0020】
また、前記衛生設備室は、好適には、請求項4に記載したように、全開時において、前記洗面化粧台の前記浴室スペース側のカウンタトップ上の開口を閉塞し、閉時において、前記浴槽の前記洗い場に面する側のリム上の開口を閉塞する片開き戸を備える構成とすることができる。
【0021】
他方、前記洗面化粧台は、好適には、請求項5に記載したように、その上部の上記浴室スペース及び上記トイレスペースの何れからも使用可能な位置に、上部収納キャビネットを備え、該キャビネットの扉は、左右いずれの方向にも開閉可能に形成されることが望ましい。
【0022】
また、好適には、請求項6に記載したように、前記洗面化粧台の洗面器下部を、前記浴室スペースからアクセス可能な浴室用キャビネットと、前記トイレスペースからアクセス可能なトイレ用キャビネットとに区画してもよい。
【0023】
一方、前記便器は、好適には、請求項7に記載したように、該便器の便座を起こした状態における天端と略同一高さにおいて上記便器の周囲から便器背面側の壁及び両側方の壁に至る区域に横設された天板と、該天板の前面下部から床面までに立設された側板とにより囲繞され、上記便座とともに上記天板をも掩蔽する便座カバーを備える構成とすることができ、請求項8に記載したように、前記便器の側方の壁と上記便器の側面との間に、前記床から前記便座カバーに至る高さに立設された間仕切りを設け、該間仕切りにより区画された空間上に、上記便座カバーと略同一断面の開閉自由なカバーを上記便座カバーと並置して収納空間を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る衛生設備室によれば、洗い場を確保する等の衛生設備室の各機能の使い勝手を低下させることなく省スペース化を図り、ひいては、省かれたスペースを住居内の他の用途に振り向けて居住スペースを拡大することができる。
【0025】
本発明は、浴室及びトイレの同時使用も可能な機能的な衛生設備室を得ることができる効果があり、また、新しいライフスタイルに適合した衛生設備室を得ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係る衛生設備室の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る衛生設備室の第1の実施形態の平面図である。この実施形態に示された衛生設備室1は、平面視略長方形の空間の一方に浴室スペース10が、他方にトイレスペース60が設けられ、この両者の中間にこれらを離隔する位置に配置された洗面化粧台30が配置されている。ここで、床は浴室スペース10のみ防水パンであっても、トイレスペース60も防水パンとしてもよく、或いはこの衛生設備室1の床全体を一の防水パンで構成してもよい。なお、ここでいう浴室スペース10とは、浴室としての閉じた空間を意味するものではなく、本衛生設備室1内において、浴室の機能を有する空間という意味である。
【0027】
本実施形態に係る衛生設備室1は、スペースを節約するために、洗面化粧台30横に通路を設けない構成になっている。そのため、衛生設備室1内で両者間を移動することはできないので、それぞれ専用の浴室側出入口11及びトイレ側出入口61が設けられている。この場合、両者を引き戸とすれば、戸袋を共有することができるので、無駄なスペースを省くことができる。
【0028】
浴室スペース10は、浴室側出入口11を入ったところに洗い場12が広がり、その奥に浴槽13が設置されている。他方、トイレスペース60は、浴トイレ側出入口61を入ったところに洗面スペース12が広がり、その奥に便器63が設置されている。
【0029】
浴槽13の便器63側端部のリム上には、間仕切り62が立設される。これは、開放感を与えるために透明ガラス製であってもよいし、視界を遮ることを目的として、金属製又は合成樹脂製のパーティションとしてもよい。或いはこれらの中間の効果を狙って型板ガラスやすり板ガラスとすることもできる。
【0030】
浴槽13の洗い場12に面する側面のトイレスペース60側の一角には、洗面化粧台30の一側面が衝合し、この部分の浴槽13のリム上には、ガラスパーティション15が立設される。ガラスパーティション15は、浴槽13内に入った入浴者に圧迫感、閉塞感を与えないように、透明ガラスとすることが望ましい。このガラスパーティション15のトイレスペース側端部は、間仕切り62の端部と直交して当接し、両者の間から水が漏れ出ないように止水されている。
【0031】
浴槽13の洗い場12に面する側面の他端には、やはりリム上に、衛生設備室1の壁面に当接して、袖壁16が立設される。この袖壁16も、ガラスパーティション15同様、透明ガラスで形成される。
【0032】
これらに対し、洗面化粧台30の浴室スペース10側、トイレスペース60側のいずれにも壁は設けられておらず、両方に解放されている。したがって、浴室スペース10、トイレスペース60のいずれからも洗面化粧台30を使用することができる。
【0033】
ガラスパーティション15と袖壁16との間の開口OP1から、入浴者は浴槽13へ出入りするのであるが、ここには、片開き戸17が、ガラスパーティション15の開口OP1側端部を吊元として取り付けられる。この片開き戸17は、ガラスパーティション15及び袖壁16と同材のガラスドアである。
【0034】
片開き戸17は、衛生設備室1の天井直下に位置する上辺から、浴槽13のリムの直上に位置する下辺までの高さを有する。これにより、片開き戸17を閉じた状態では、開口OP1は略完全に閉じられる。
【0035】
なお、これらガラスパーティション15及び袖壁16を、浴槽13のバスエプロン正面に当接させて床面から立設させ、この両者間に片開き戸17を配する構成としてもよい。この場合、片開き戸17の下辺を、床面から浴槽13のリムまでの任意の位置に持ってくることができ、ガラスパーティション15及び袖壁16をリム上に立設する場合と同等の効果を得ることができる。
【0036】
片開き戸17は、通常は図1の(イ)に示すように、開口OP1を閉じるように、浴槽13のバスエプロン14に当接した状態に置かれている。この状態では、洗い場12に立って浴室スペース10側から洗面化粧台30を利用することができる。
【0037】
また、浴槽13内でシャワーを浴びることもできる。この場合、浴槽13の洗い場側は、ガラスパーティション15、袖壁16及び片開き戸17により閉じられて、シャワーの水が洗い場12側へ飛散することが防止される。それでいて、3 in 1タイプの衛生設備室における浴槽のようにカーテンを用いていないので、シャワー使用者に圧迫感、閉塞感を与えない。すなわち、浴槽内で窮屈な思いをしながらシャワーを浴びるのではなく、欧米で人気のあるシャワールーム内でシャワーを浴びる快適さを得ることができる。
【0038】
そして、シャワー使用後も洗い場12は乾いているので、洗い場12は脱衣所としての役割も果たさせることができ、シャワー直後に洗い場12において着衣ができ、その状態でスキンケアや化粧行為を行うことも可能となる。また、洗い場12が濡れないことから、洗い場12の掃除の頻度を減らすこともできる。
【0039】
この状態から、ドアハンドル18を引いて片開き戸17を開けば、図1の(ロ)に示すように、洗面化粧台30の側面に当接した状態で全開となる。この状態では、洗面化粧台上部の開口OP2が片開き戸17により閉じられており、この開口OP2から水がトイレスペース60側へ水が飛散する心配がなく、洗い場12を文字通り洗い場として使用することができる。
【0040】
入浴中に、洗面化粧台30上に置かれた歯ブラシ、カミソリや洗顔料等を使用したくなった場合や、シャンプーボトルが空になっているのを見つけて替えのシャンプーを持ち込みたい場合であっても、片開き戸17を少し開けるだけで用が足りるので、裸を気にしながら室外に出ることも、濡れた体で廊下を濡らすこともなく、洗面化粧台30ヘアブローチすることができる。
【0041】
片開き戸17は、透明ガラス製なので、この場合も、洗面化粧台30上部に壁面がないので、広々とした開放感を得ることができる。さらに、湿気がトイレスペース60側へ漏れ出ることも最小限に抑えられるので、便器63に局部洗浄装置等の精密機器を取り付けても、それら(特に図1に示すリモコン71等)が湿気により故障する虞がない。
【0042】
なお、片開き戸17は、枠付の或いは枠なしのカーテンで形成してもよい。また、開口OP1,OP2それぞれに片引きのカーテンを設けてもよい。このような構成としても、透明ガラス戸のような開放感こそ得られないものの、開口OP1,OP2を覆って、水がこの開口OP1,OP2から他方へ飛散することを防止する点では、ガラスドアと略同等の効果を得ることができる。
【0043】
この浴室スペースに設けられたシャワー装置19は、シャワーヘッドに吐水、止水の切替を行える手元開閉機構を有するハンドシャワータイプのものであり、シャワーヘッド20を掛止するハンガーは、浴槽13側の浴槽側シャワーハンガー23と、洗い場側シャワーハンガー24とが設けられる。ここで、洗い場側シャワーハンガー24は、スライド式シャワーハンガー装置が採用されている。
【0044】
浴槽13内では、浴槽側シャワーハンガー23にシャワーヘッド20を掛止して、または手に持ってシャワーを浴びることができる。洗い場12内では、洗い場側シャワーハンガー24にシャワーヘッド20を掛止して、または手に持って使用する。シャワーヘッド20には手元開閉機構が設けられているので、洗い場12での使用のように頻繁にシャワーの開閉を行う場合でも、いちいち水栓まで手を伸ばすことなく、開閉することができる。また、スライド式シャワーハンガー装置との併用により、シャワーヘッド20をスライド式シャワーハンガー装置の最下端に掛止する状態におくと、水栓としても使用することができるので、本実施形態に係る衛生設備室1のように、別途洗い場用水栓を設けない仕様とすることもできる。
【0045】
なお、シャワー装置19に給水、給湯する建物側のシャワー配管は、浴槽13側の壁裏から取り出されて接続部22が形成され、ここにシャワーホース21が接続される。これは、接続部22が洗い場12側に設けられると、浴槽13内で使用する際、シャワーホース21を、開口OP1を通過させなければならず、これを挟むことになって片開き戸17を完全に閉じることができなくなるからである。
【0046】
浴室スペース10の洗面化粧台30と反対側の壁にはまた、姿見25が取り付けられている。本実施形態では、この姿見25は、衛生設備室1の天井から床面に至る略全高に亘る高さを有している。
【0047】
したがって、使用者は、図1(ハ)に示すように、姿見25に全身を映すことができるので、例えば外出前に身繕いを確認でき、入浴中であればボディチェックをすることもできる。また、周りのものが映りこみ、空間全体を広く感じさせる効果もある。
【0048】
さらに、図1(ニ)に示すように、トイレスペース60側からでも、洗面化粧台30越しに姿見25の正面に立つことができるので、後述する上部キャビネット36の扉37を開いて、或いは体を捻って、扉37正面に向く手間なく、半身鏡として使うことができる。
【0049】
洗面化粧台30は、カウンタトップ31に、浴室スペース10と、トイレスペース60との境界となる線を軸として、左右対称の形状の洗面器32を備え、この対称軸L上に水栓34及び排水口35も設けられている。これにより、浴室スペース10からでも、トイレスペース60からでも、どちらかの使い勝手を犠牲にすることなく、同等の使用感を得ることができる。
【0050】
洗面器32の下部は、図4に示すように、間仕切り48によって、浴室用キャビネット39とトイレ用キャビネット40とに区画され、浴室スペース10とトイレスペース60のそれぞれに収納スペースが与えられる。このように区画することにより、浴室スペース10及びトイレスペース60の双方で、それぞれに必要な物を分けて収納することができる。
【0051】
間仕切り48は、洗面化粧台30の中間にではなく、トイレスペース60側に偏った位置に設けられる。これは、浴室用収納では、バスタオル等の比較的大きい物も収納されること、また種類や量も多いことから奥行きを確保する必要があるのに対し、トイレ用収納では、トイレットペーパー等コンパクトな物が多いことによる。
【0052】
浴室用キャビネット39は、図5に示すように、出入口11側に比較的深い引出し41と、浴槽13側に比較的浅い引出し42が2段設けられる。さらに、浅い引出し42の下には、棚44が設けられている(図8参照)。
【0053】
浅い引出し42は、図5において破線で示すように、その底面が、片開き戸17の下辺と略同じ高さに合わせられ、入浴中には片開き戸17によって覆われるので、洗い場でシャワー行為が行われる場合であっても、引出し42の隙間から引出し42内部へ水が浸入することを防止する。このため、片開き戸17下辺より下には引出しを設ける代わりに棚44が設けられた。また、引出し42表面に飛散した水が付かないので、清掃の手間を省くことができる。この点、深い引出し41は、洗い場側シャワーハンガー24からある程度離れているので、水滴飛散の被害は少ない。
【0054】
したがって、上述したように、ガラスパーティション15及び袖壁16を、浴槽13のバスエプロン正面に当接させて床面から立設させ、この両者間に片開き戸17を配する構成とし、片開き戸17の下辺を、床面から近傍の低い位置に持ってくると、片開き戸17に覆われる部分も増え、引出しを増設することも可能である。
【0055】
深い引出し41内には、図6に示すように、ランドリーボックス43が備えられ、洗い場12を脱衣所として使用した際に、脱衣後の衣類、着替えを収納することができるようになっている。このように、洗い場12は、脱衣所としての機能も有しているので、別途脱衣室を設ける必要がなく、省スペースを図ることができる。
【0056】
一方、浅い引出し42には、タオルやバスタオル等が収納可能であり、その下の棚44は、片開き戸17で覆われることはないので、直接水を受ける場所であるが、水の飛散を受けても支障のない物、例えばシャンプーボトル等を収納する場所として使用できる。
【0057】
他方、トイレ用キャビネット40は、図7に示すように、片開き扉47を有する比較的狭い収納スペースと、両開き扉46を有する比較的広い収納スペースとを備える。狭い収納スペース内には棚47が2段設けられていて、トイレットペーパー等の収納に使用され、広い収納スペースは、清掃用ブラシ等、背の高い物を収納することができる。トイレスペース60では、通常水の飛散等はないので、浴室スペース10側のように片開き戸で覆う必要はなく、また、高さ方向も、巾木49の直上までフルに活用することができる。
【0058】
洗面化粧台30の出入口側の側面の壁上部には、図8に示すように、上部キャビネット36が取り付けられ、化粧品や洗面、歯磨き用具を収納することができるように棚50が複数設けられる。これにより、洗面化粧台30のカウンタトップ33上に物が散乱されたままにならないよう整理でき、カウンタトップ33を広く使用することができる。
【0059】
上部キャビネット36は、洗面器32からはねる水が当たらないように、カウンタトップ33より浮かして設置されるので、水はねも軽減され清掃の手間が省ける。なお、これにより、片開き戸17全開状態時に浴室スペース10側において、上部カウンタ36とカウンタトップ33との間に生じる隙間は、防水板38によって塞がれ(図5参照)、洗い場12でシャワー行為を行った場合でも、この隙間から水がトイレスペース60側へ浸入することを防止する。
【0060】
上部キャビネット36の扉37は、左右いずれの方向にも開くことができるようになっている。これにより、浴室スペース10からでも、トイレスペース60からでも、どちらかの使い勝手を犠牲にすることなく、同等の使用感を得ることができる。
【0061】
また、この扉37には、表裏両面の全面に鏡が取り付けられている。したがって、化粧時や髭剃り時に顔の細部を見たい場合、扉37を手前側に開けば、図8(ホ)に示すように、直立したままで見ることができる。これにより、扉37を向こう側に開いて、同図(ヘ)に示すように、前屈して鏡を覗き込む必要がなく、楽な姿勢で化粧や髭剃りを行うことができる。
【0062】
反対に、扉37を向こう側へ開いた場合には、鏡を見ながら上部キャビネット36内の物を出し入れできるというメリットがあるので、使用者は、使用目的に応じて、扉37を便利な方向に開くことができる。なお、図8では、浴室スペース10からの場合を示しているが、トイレスペース60からの場合も同様であることはいうまでもない。
【0063】
トイレスペース60の最奥部に設置された便器63には、図9に示すように、便座64を起こした便器63本体の天端と略同一高さに、便器63の周囲から便器63背面側の壁及び両側方の壁に至る区域に天板66が横設され、この天板66の前面下部から床面までに立設された側板67とにより囲繞され、便器本体は見えないように掩蔽されている。これにより、便器後方や壁面が交差する部分にゴミ等が溜まることがなくなり、このような込み入った形状で、手の届き難い部分の清掃の必要がなくなる。
【0064】
また、便座カバー65は、便座とともに上記天板をも掩蔽する大きさ、形状に形成され、便座カバー65を閉じた場合には、便器63全体が全く見えなくなる(図2参照)。これにより、便座カバー65を降ろしておけば、洗面や化粧をする際、便器63が目に入ることで感じる、トイレルーム内での化粧行為という嫌悪感を解消される。また、来客時にも、抵抗なくトイレスペースを化粧室として提供することができる。
【0065】
この便座カバー65は、人が着座可能な強度を有するように形成されている。このように、ベンチのように座ることが可能な形状、構造を有することから、ここに座って身繕いをしたり、ボディーケア等を行うこともできる。
【0066】
便器63の一方の側方には、図10に示すように、仕切り板68が、便器63背面の壁から前方の側板67に亘って、床から便座カバー65に至る高さに立設され、便器63側方の壁との間に収納庫72が設けられる。この収納庫72にも、便座カバー65と同形状、同構造の蓋が取り付けられる。この収納庫72は、図11に示すように、予備のトイレットペーパーを収納する広さを有する。そして、清掃用ブラシや汚物入れを収納してもよい。
【0067】
従来の独立型のトイレルーム内に設置される手洗い器は、スペースの関係上、指先洗いしかできない小型のものしか設置できず、鏡が設置されていないことも多い。しかし、本実施形態に係る衛生設備室1では、フル機能を有する洗面化粧台30とを備えるので、トイレ使用後に、トイレルームでの手首から掌全体を洗ったり、洗面化粧も行うことができ、通常の洗面化粧室として使用することができる。また、洗面化粧台30の外に、重複してトイレ用手洗い器を備える必要がなくなる。
【0068】
本実施形態に係る衛生設備室1は、以上のように構成されているので、浴室スペース10とトイレスペース60との同時使用が可能となり、3 in 1タイプと異なり、単身世帯のみならず、カップル世帯にも好適である。例えば、DINKSの場合、出勤前の慌ただしい時間に、一方で歯磨きで洗面化粧台30を使用していても、他方でひげ剃り又は化粧のために洗面化粧台30を使用することができる。また、来客時にも対応することができる。
【0069】
この衛生設備室1を採用したマンションの一室と従来の衛生設備室採用のものとを図12において比較する。最近では、同図に示すように、伝統的な2DK等ではなく、ワンルームを自分達のライフスタイルに合わせて壁面収納で間仕切りするオープンなタイプに人気がある。
【0070】
同図(b)に示すように、従来の衛生設備室を採用したものでは、略3300×3000程度のスペースが必要であるのに対し、同図(a)に示す本実施形態に係る衛生設備室1では、殆ど同機能を有しながら、略2300×1800程度のスペースしか占拠しないので、省スペース化が可能にあり、余ったスペースを、有効に利用することが可能となる。
【0071】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る衛生設備室の実施形態を示す平面図。
【図2】本実施形態に係る衛生設備室の片開き戸閉状態を示す内部透視図。
【図3】本実施形態に係る衛生設備室の片開き戸全開状態を示す内部透視図。
【図4】洗面器下部空間の平断面図。
【図5】浴室用キャビネットの正面図。
【図6】図5に示されたD−D矢視図。
【図7】トイレ用キャビネットの正面図。
【図8】図5に示されたE−E矢視図。
【図9】便器周りの縦断面図
【図10】便座カバーを取り外した状態を示す平面図。
【図11】図10に示されたG−G矢視図。
【図12】(a)は従来の衛生設備室が設置されたマンションの一室の例を、(b)は同マンションの一室に本実施形態に係る衛生設備室を設置した例を示す図。
【符号の説明】
【0073】
1 衛生設備室
10 浴室スペース
11 浴室側出入口
12 洗い場
13 浴槽
15 ガラスパーティション
16 袖壁
17 片開き戸
18 ドアハンドル
19 シャワー装置
20 シャワーヘッド
21 シャワーホース
22 接続部
23 浴槽側シャワーハンガー
24 洗い場側シャワーハンガー
25 姿見
30 洗面化粧台
31 洗面スペース
32 洗面器
33 カウンタトップ
34 水栓
35 排水口
36 上部キャビネット
37 扉
38 防水板
39 浴槽浴室用キャビネット
40 トイレ用キャビネット
41,42 引出し
43 ランドリーボックス
44,47,50 棚
45 片開き扉
46 両開き扉
48 間仕切り
49 巾木
60 トイレスペース
61 トイレ側出入口
62 間仕切り
63 便器
64 便座
65 便座カバー
66 天板
67 側板
68 仕切り板
69 蓋
70 トイレットペーパー。ホルダー
71 (局部洗浄装置用)リモコン
72 収納庫
OP1,OP2 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽及び洗い場を有する浴室スペースと、
便器を有するトイレスペースと、
上記浴室スペースと上記トイレスペースとを離隔する位置に配置され、上記浴室スペース及び上記トイレスペースの何れからも使用可能な洗面化粧台と、
を備えることを特徴とする衛生設備室。
【請求項2】
前記洗面化粧台は、前記浴室スペースと前記トイレスペースとの境界となる線を軸として左右対称の洗面器を備え、その対称軸上に水栓及び排水口を配置したことを特徴とする請求項1記載の衛生設備室。
【請求項3】
前記浴室スペース及びトイレスペースは、それぞれ専用の出入り口を備えることを特徴とする請求項1記載の衛生設備室。
【請求項4】
前記衛生設備室は、全開時において、前記洗面化粧台の前記浴室スペース側のカウンタトップ上の開口を閉塞し、閉時において、前記浴槽の前記洗い場に面する側のリム上の開口を閉塞する片開き戸を備えることを特徴とする請求項1記載の衛生設備室。
【請求項5】
前記洗面化粧台は、その上部の上記浴室スペース及び上記トイレスペースの何れからも使用可能な位置に、上部収納キャビネットを備え、該キャビネットの扉は、左右いずれの方向にも開閉可能に形成されたことを特徴とする請求項1記載の衛生設備室。
【請求項6】
前記洗面化粧台の洗面器下部を、前記浴室スペースからアクセス可能な浴室用キャビネットと、前記トイレスペースからアクセス可能なトイレ用キャビネットとに区画したことを特徴とする請求項1記載の衛生設備室。
【請求項7】
前記便器は、該便器の便座を起こした状態における天端と略同一高さにおいて上記便器の周囲から便器背面側の壁及び両側方の壁に至る区域に横設された天板と、該天板の前面下部から床面までに立設された側板とにより囲繞され、上記便座とともに上記天板をも掩蔽する便座カバーを備えることを特徴とする請求項1記載の衛生設備室。
【請求項8】
前記便器の側方の壁と上記便器の側面との間に、前記床から前記便座カバーに至る高さに立設された間仕切りを設け、該間仕切りにより区画された空間上に、上記便座カバーと略同一断面の開閉自由なカバーを上記便座カバーと並置して収納空間を形成したことを特徴とする請求項7記載の衛生設備室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−321431(P2007−321431A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152693(P2006−152693)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】