説明

衝撃緩和型多結晶シリコン

【課題】溶融ルツボに装入する際に落下し、または溶融時にルツボ内壁に衝突しても、ルツボを損傷しないように加工した多結晶シリコンを提供する。
【解決手段】多結晶シリコン10は、円形または角形を有する棒状、柱状、板状の多結晶シリコン塊について、その端部、稜部ないし角部の少なくとも一つ、好ましくはその大部分ないし全部を面取りすることによって外形の鋭角部分が除去される。面取り部分11は多結晶シリコン10の端部、稜部および角部などの鋭角部分であり、この面取り部分11は直線状でも湾曲状でもよい。多結晶シリコン外形の鋭角部分を面取りすることによって接触時の衝撃を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンについて、その端部、稜部ないし角部の少なくとも一つを面取りして外形の鋭角部分をできる限り除去した単結晶引き上げ用多結晶シリコンに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、単結晶シリコンは主にチョクラルスキー法(CZ法)によって製造されており、この方法は多結晶シリコンの融液に種晶を浸し、この種晶を中心として単結晶シリコンを成長させ、この種晶を徐々に引き上げて棒状の単結晶シリコンを製造する方法である。この単結晶引き上げはバッチ操業であるため、1バッチ当たりの生産効率を高めるために多結晶シリコンをルツボにできるだけ大量に装入(高充填化)することが求められている。
【0003】
多結晶シリコンの溶融では、通常、溶融効率を高めるために、多結晶シリコン棒を数十センチに切断した円柱状のカットロッドとその破砕物とを組み合わせて用い、円柱状のロッドをルツボの上方で支えて吊り下げ、ルツボ内部のロッドの間に多結晶シリコン破砕物を充填して溶融している。このため、充填の仕方に熟練を要し、また、溶融過程でロツドが落下しルツボに衝撃を与えることがある。このようなロッドの落下が生じるとルツボの損傷を招き、しかも発生したルツボのカケラがシリコン融液に混入して単結晶製造に悪影響を与える。
【0004】
また、ルツボの損傷が著しい場合にはルツボが割れ、シリコン融液が外部に流れ出して周囲の冷却水に触れて水蒸気爆発を引起すという安全上の問題を招く懸念がある。さらに、溶融過程でロツドが落下しない場合でも、ロツドは溶融過程を通じてシリコン融液上に浮遊するが、この融液は熱によって対流し、または溶融プロセスの制御上から意図的に対流を生じさせている。このため、融液に浮遊するロッドがルツボ内壁に衝突してルツボの損傷を招く場合がある。
【0005】
このようなロッドの衝突による問題を生じないように、数ミリ程度の粒状の多結晶シリコンを使用することも知られているが、現在流通している粒状多結晶シリコンは不純物レベルが高く、シリコン単結晶の品質に悪影響を与える。また、微粉が多いために単結晶化率が低いと云う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来の多結晶シリコンの溶融工程における上記問題を解決したものであり、溶融時にルツボ内壁に衝突してルツボを損傷する問題のないように加工した多結晶シリコンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の構成からなる多結晶シリコンに関する。
(1)多結晶シリコン外形の鋭角部分を面取りすることによって接触時の衝撃を緩和したことを特徴とする単結晶引き上げ用多結晶シリコン。
(2)円形または角形を有する棒状、柱状、板状の多結晶シリコンについて、その端部、稜部ないし角部を面取りした上記(1)の多結晶シリコン。
【発明の効果】
【0009】
上記多結晶シリコンは、その端部、稜部ないし角部の少なくとも一つ、好ましくはその大部分ないし全部を面取りすることによって、外形の鋭角部分をできる限り除去しているので、溶融ルツボへの装入時ないし溶融時に、この多結晶シリコン塊がルツボ内壁に衝突しても接触面が比較的広いので衝撃が緩和されてルツボ内壁の損傷を抑制することができる。
【0010】
本発明の係る多結晶シリコンは、その端面や稜部、角部が面取りされて鋭角な部分が除去されており、あるいは棒状の多結晶シリコンについては長手方向に沿って湾曲しているので、溶融ルツボの内壁に接触したときに接触面積が大きく、衝撃が緩和されるので、ルツボの損傷を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】鋭角部分を面取りした数種の多結晶シリコンの外観図
【図2】湾曲した形状を有する多結晶シリコンの外観図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。本発明に係る多結晶シリコンの第一の形態は、多結晶シリコン外形の鋭角部分を面取りしたことを特徴とするものである。具体的には、例えば円形または角形を有する棒状、柱状、板状の多結晶シリコンについて、その端部、稜部ないし角部を面取りした単結晶引き上げ用の多結晶シリコンである。
【0013】
すなわち、図1に示すように、本発明の多結晶シリコン10は、円形または角形を有する棒状、柱状、板状の多結晶シリコン塊について、その端部、稜部ないし角部の少なくとも一つ、好ましくはその大部分ないし全部を面取りすることによって外形の鋭角部分が除去されている。面取りする多結晶シリコンの形状は限定されない。円柱ないし角柱、板状ないしブロック状など何れでも良い。面取り部分11は多結晶シリコン10の端部、稜部および角部などの鋭角部分であり、この面取り部分11は直線状でも湾曲状でもよい。また、鋭角部分が除去されていれば面取り後の形状は限定されない。例えば、円柱状ロッドの端面を面取りしてアール(湾曲)に加工し、カプセル型のチャンクを形成する。
【0014】
上記多結晶シリコン10は鋭角部分が除去されているので、この多結晶シリコンを溶融ルツボに装入する際に落下し、または溶融時に浮遊してシリコン塊がルツボ内壁に衝突しても、接触面積が大きいので衝撃が緩和されてルツボ内壁の損傷を免れることができる。
【0015】
本発明に係る多結晶シリコンの第二の形態は、図2に示すように、棒状のシリコンロッドが溶融ルツボの内周面に沿った湾曲形状を有するものである。このような形状の多結晶シリコンは、例えば、三塩化シランと水素の混合ガスの熱分解によってシリコンを生成させる気相反応による場合、湾曲した種棒を用い、その表面に多結晶シリコンを析出させて製造することができる。なお、この湾曲した多結晶シリコン10においても、端面は図1の場合と同様に面取りすると良い。
【0016】
図2に示す湾曲した形状を有する多結晶シリコン10は湾曲に沿って接触するので、ルツボ内壁に衝突した場合でも接触面積が大きくなり衝撃が緩和される。従って、ルツボの損傷を避けることができる。また、溶融ルツボの内周に沿った湾曲形状を有するので、ルツボ内周面に沿って多結晶シリコンを密に並べることができ、多結晶シリコンのルツボに対する充填率を高めることができる。
【符号の説明】
【0017】
10−多結晶シリコン、11−面取り部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコン外形の鋭角部分を面取りすることによって接触時の衝撃を緩和したことを特徴とする単結晶引き上げ用多結晶シリコン。
【請求項2】
円形または角形を有する棒状、柱状、板状の多結晶シリコンについて、その端部、稜部ないし角部を面取りした請求項1の多結晶シリコン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−121865(P2011−121865A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33967(P2011−33967)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2001−303420(P2001−303420)の分割
【原出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】