説明

衝突被害軽減装置、及びその方法

【課題】交差点における停止線で停止している自車両に後続車両が追突するときに、交差車線、或いは横断歩道に飛び出してしまう可能性を可能な限り低くし、且つ、上述した追突の被害を可能な限り低くできる衝突被害軽減装置、及びその方法を提供する。
【解決手段】後続車両に追突されたときの被害を自車両の制動力を制御して軽減する衝突被害軽減装置であって、自車両が追突されたときに生じるエネルギーを推定する推定手段と、交差点において停車している自車両から予め定められた停止位置までの距離を測定する測定手段と、エネルギーと停止位置までの距離とに基づいて自車両の制動力を予め制御する制動力制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突被害軽減装置、及びその方法に関し、より特定的には、後方から衝突されたときの被害を軽減する衝突被害軽減装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には、歩行者、或いは他車両などの対象物と衝突する危険を予測して、警報を発する装置が搭載されている。このような装置の一例として、特許文献1に記載の潜在危険検知装置(以下、従来技術と称する)が挙げられる。
【0003】
従来技術では、種々のカメラ、及びセンサを用いて走行環境を認識し、認識した走行環境で発生する可能性のある一次危険の危険度(一次危険度)を求め、さらに、求めた一次危険度の一次危険を回避するための運転者の行動によって発生する可能性のある二次危険の危険度(二次危険度)を求める。そして、従来技術では、一次危険度と二次危険度とを統合して潜在危険度を求め、求めた潜在危険度に応じて、運転者に警報を発する。
【0004】
ここで、従来技術における一次危険とは、例えば、車線逸脱危険、先行車追突危険、及び後続車追突危険などを含む合計16種の危険である。また、従来技術における二次危険とは、上述したように一次危険を回避するための運転者による操作に伴って発生する可能性がある危険であって、例えば、加速危険、及び減速危険など合計5種の危険である。そして、従来技術では、このような一次危険、及び二次危険を統合して潜在危険度を求め、求めた潜在危険度に応じて運転者に警報を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−65295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、以下に述べるような課題を有する。すなわち、上記従来技術では、上述したような合計16種の一次危険と、合計5種の二次危険とを統合して潜在危険度を求めている。ここで、運転者が自動車(以下、自車両と称する)を移動させているときには、赤信号の交差点における停止線で自車両を停止させるときがある。このときに、例えば、自車両が、後続車両によって追突されると、追突のエネルギーが大きい場合には、自車両が前方に大きく押し出され、交差点における横断歩道、或いは交差車線に飛び出してしまう。このように、自車両が交差点における交差車線に飛び出すと、交差車線を走行する他車両、或いは当該交差点に横断歩道がある場合には横断歩道を歩行している歩行者などに衝突する危険が生じる可能性がある。
【0007】
一方、交差点における停止線で停止している自車両が、後続車両によって追突され、前方に大きく押し出されて、交差車線、或いは交差点に飛び出してしまうのを防ぐために、自車両の制動力を強める手法がある。しかしながら、後続車両から追突されたときに自車両の制動力を強めると、追突のエネルギーが、自車両を前方に押し出すために消費される割合よりも、自車両を変形させるために消費される割合が相対的に大きくなって、追突の被害が相対的に大きくなる。
【0008】
すなわち、交差点における停止線で停止している自車両に後続車両が追突するときには、交差車線、或いは横断歩道に飛び出してしまう可能性を可能な限り低くし、且つ、上述した追突の被害を可能な限り低くする必要がある。しかし、上記従来技術では、交差点における停止線で停止している自車両に後続車が追突するときに、交差車線、或いは横断歩道に飛び出してしまう可能性を可能な限り低くし、且つ、上述した追突の被害を可能な限り低くすることはできなかった。
【0009】
それ故に、本発明は、交差点における停止線で停止している自車両に後続車両が追突するときに、交差車線、或いは横断歩道に飛び出してしまう可能性を可能な限り低くし、且つ、上述した追突の被害を可能な限り低くできる衝突被害軽減装置、及びその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下に示す特徴を有する。
第1の発明は、後続車両に追突されたときの被害を自車両の制動力を制御して軽減する衝突被害軽減装置であって、自車両が追突されたときに生じるエネルギーを推定する推定手段と、交差点において停車している自車両から予め定められた停止位置までの距離を測定する測定手段と、エネルギーと停止位置までの距離とに基づいて自車両の制動力を予め制御する制動力制御手段とを備える、衝突被害軽減装置である。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、測定手段は、停止位置までの距離として、交差点において自車両の前方に存在する最も近い停止線までの距離を測定する。
【0012】
第3の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、測定手段は、停止位置までの距離として、交差点において自車両の前方に存在する最も近い横断歩道までの距離を測定する。
【0013】
第4の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、測定手段は、交差点において自車両の前方に存在する最も近い横断歩道に歩行者が存在しないときの停止位置までの距離として、当該交差点において当該自車両の停止している車線に交差する交差車線までの距離を測定する。
【0014】
第5の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、測定手段は、交差点において自車両の前方に存在する最も近い横断歩道に歩行者が存在しない、且つ交差点において自車両の停止している車線に交差する交差車線を走行する他車両が存在しないときの停止位置までの距離として、当該交差点において当該自車両の前方に存在する最も近い横断歩道よりも遠方の距離を測定する。
【0015】
第6の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、横断歩道を歩行している歩行者が携帯可能な通信機と通信可能な第1の通信手段をさらに備え、測定手段は、第1の通信手段によって通信機と通信できないとき、停止位置までの距離として、交差車線までの距離を測定する。
【0016】
第7の発明は、上記第5の発明に従属する発明であって、横断歩道を歩行している歩行者が携帯可能な通信機と通信可能な第1の通信手段と、予め定められた第2の通信範囲で他車両の位置座標を通信可能な第2の通信手段とをさらに備え、測定手段は、第1の通信手段を用いて通信機と通信できない、且つ第2の通信手段を用いて他車両と通信して取得した当該他車両の位置座標に基づいて自車両の停止している車線に交差する交差車線に当該他車両が存在しないと判断したとき、停止位置までの距離として、横断歩道よりも遠方の距離を測定する。
【0017】
第8の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、横断歩道に存在している歩行者を検出した検出結果を送信する路側機と通信可能な第3の通信手段をさらに備え、測定手段は、第3の通信手段から送信された検出結果によって歩行者が存在しないことが示されるとき、停止位置までの距離として、交差車線までの距離を測定する。
【0018】
第9の発明は、上記第5の発明に従属する発明であって、横断歩道に存在している歩行者を検出した第1の検出結果、及び交差点において自車両の停止している車線に交差する交差車線を走行する他車両を検出した第2の検出結果を送信する路側機と通信可能な第3の通信手段をさらに備え、測定手段は、第1の検出結果によって歩行者が存在しないことが示され、且つ第2の検出結果によって交差車線を走行する他車両が存在しないことが示されるとき、横断歩道よりも遠方の距離を測定する。
【0019】
第10の発明は、上記第1から第9のいずれか1つに従属する発明であって、推定手段は、後続車両と自車両との相対速度に基づきエネルギーを推定する。
【0020】
第11の発明は、上記第1から第9のいずれか1つに従属する発明であって、推定手段は、自車両に生じる加速度を検出する加速度検出手段と、後続車両に追突されたときに加速度検出手段によって検出される加速度に基づき、エネルギーを推定するエネルギー推定手段とを含む。
【0021】
第12の発明は、上記第1から第9のいずれか1つに従属する発明であって、推定手段は、自車両の後端のバンパーに取り付けられ、当該バンパーが変形するときの加速度を検出する後方加速度検出手段と、加速度に基づき、エネルギーを推定するエネルギー推定手段とを含む。
【0022】
第13の発明は、上記第12の発明に従属する発明であって、エネルギー推定手段は、加速度を積分した速度に基づき、エネルギーを推定する。
【0023】
第14の発明は、後続車両に追突されたときの被害を自車両の制動力を制御して軽減する衝突被害軽減方法であって、自車両が追突されたときに生じるエネルギーを推定する推定ステップと、交差点において停車している自車両から予め定められた停止位置までの距離を測定する測定ステップと、エネルギーと停止位置までの距離とに基づいて自車両の制動力を予め制御する制動力制御ステップとを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、交差点における停止線で停止している自車両に後続車両が追突するときに、交差車線、或いは横断歩道に飛び出してしまう可能性を可能な限り低くし、且つ、上述した追突の被害を可能な限り低くできる衝突被害軽減装置、及びその方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】衝突被害軽減システム
【図2】路側機と通信可能な位置を通過する自車両を示す図
【図3】互いに通信可能な位置に存在する自車両と後続車両とを示す図
【図4】自車両に追突すると予測される位置に存在する後続車両を示す図
【図5】本発明に係る自車装置における処理手段の処理の流れの一例を示す図
【図6】本発明に係る後続車装置における処理手段の処理の流れの一例を示す図
【図7】本発明において予め定められた停止位置の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る衝突被害軽減システム1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る衝突被害軽減システム1は、図1に示すように、自車装置10、及び後続車装置20からなる。尚、本実施形態の説明では、自車装置10が自車両2に搭載されているものとし、後続車装置20が後続車両3に搭載されているものとして説明をする。
【0027】
本実施形態に係る自車装置10は、前方対象物検出手段101と、位置座標取得手段102と、車速検出手段103と、路車間通信手段104と、車車間通信手段105と、処理手段106と、ブレーキ制御手段107とを備える。
【0028】
前方対象物検出手段101は、典型的には、ミリ波帯の電磁波を自車両2の前方に放射し、放射した電磁波が対象物で反射した反射波を受信し、放射した電磁波と受信した反射波とに基づいて当該対象物との相対距離、及び相対速度などを測定する所謂ミリ波レーダである。前方対象物検出手段101は、自車両2の前方に存在する対象物との相対距離、及び相対速度を逐次測定し、測定した相対距離、及び相対速度を示す対象物情報を生成する。
【0029】
位置座標取得手段102は、典型的には、所謂GPS(Global Positioning System)であって、自車両2の位置を緯度と経度とで示す位置座標を、図示しない衛星から受信した電波に基づいて逐次検出し、検出した位置座標を示す位置情報を生成する。位置座標取得手段102によって検出された位置座標は、周辺の地図と共に自車両2の現在地を表示する所謂カーナビゲーションシステム(図示せず)などでも用いられてよい。
【0030】
車速検出手段103は、典型的には、自車両2の車輪速、或いはトランスミッションのファイナルギアの回転数を検出して変換することにより、自車両2の走行速度を検出する。車速検出手段103は、自車両2の走行速度を逐次検出し、検出した走行速度を示す情報を速度情報として生成する。
【0031】
路車間通信手段104は、典型的には、走行路、或いは交差点などの周囲に設置され、光ビーコンを用いて情報を光通信する路側機と通信可能な通信回路である。路車間通信手段104と通信可能な路側機は、例えば、走行路の周囲に設置され、設置位置から当該走行路の先にある交差点の停止線までの距離が設置時に予め測定して設定されており、設定された距離を示す情報を路側機情報として光信号で逐次送信する。
【0032】
車車間通信手段105は、典型的には、後述するように後続車両3などの他車両と無線通信するための通信回路である。本実施形態に係る車車間通信手段105は、DSRC(Dedicated Short Range Communication)プロトコルにしたがって、予め定められた通信範囲内に存在する他車両と無線通信するものとする。本実施形態に係る車車間通信手段105は、後述する処理手段106が送信するために生成した情報を送信し、他車両から送信された情報を受信して処理手段106に中継する。
【0033】
処理手段106は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などで主に構成される処理回路である。本実施形態に係る処理手段106は、後述するように路側機、及び後続車装置20と通信し、後述するブレーキ制御手段107を制御する。本実施形態に係る処理手段106の処理の詳細な説明は、後述する。
【0034】
ブレーキ制御手段107は、CPU、ROM、及びRAMなどで主に構成されるブレーキECU(Electronic Control Unit)である。ブレーキ制御手段107は、処理手段106によって前述のブレーキ圧力情報が生成されたとき、生成されたブレーキ圧力情報を取得する。ブレーキ制御手段107は、ブレーキ圧力情報を取得すると、自車両2に搭載されたブレーキのブレーキ圧力が、取得したブレーキ圧力情報によって示されるブレーキ圧力となるように制御する。
【0035】
以上が、本実施形態に係る自車装置10の概略構成の説明である。次に、本実施形態に係る後続車装置20の概略構成について図1を参照しながら説明する。
【0036】
本実施形態に係る後続車装置20は、前方対象物検出手段201と、位置座標取得手段202と、車速検出手段203と、車車間通信手段204と、処理手段205とを備える。
【0037】
前方対象物検出手段201は、典型的には、上述で説明した前方対象物検出手段101と同様のミリ波レーダである。前方対象物検出手段201は、後続車両3の前方に存在する対象物との相対距離、及び相対速度を逐次測定し、測定した相対距離、及び相対速度を示す対象物情報を生成する。
【0038】
位置座標取得手段202は、典型的には、上述で説明した位置座標取得手段102と同様のGPSである。位置座標取得手段202は、後続車両3の位置を緯度と経度とで示す位置座標を、図示しない衛星から受信した電波に基づいて逐次検出し、検出した位置座標を示す位置情報を生成する。位置座標取得手段202によって検出された位置座標は、位置座標取得手段102によって検出された位置座標と同様に、後続車両3に搭載された前述のカーナビゲーションシステムなどでも用いられてよい。
【0039】
車速検出手段203は、典型的には、上述で説明した車速検出手段103と同様の手法で後続車両3の走行速度を逐次検出し、検出した走行速度を示す情報を速度情報として生成する。
【0040】
車車間通信手段204は、典型的には、自車両2などの他車両と無線通信するための通信回路である。本実施形態に係る車車間通信手段204は、車車間通信手段105と同様にDSRCプロトコルにしたがって、予め定められた通信範囲内に存在する他車両と無線通信するものとする。本実施形態に係る車車間通信手段204は、後述する処理手段205が、送信するために生成した情報を送信し、他車両から送信された情報を受信して処理手段205に中継する。
【0041】
処理手段205は、典型的には、処理手段106と同様にCPU、ROM、及びRAMなどで主に構成される処理回路である。本実施形態に係る処理手段205は、後述するように自車装置10と通信する。処理手段205の処理の詳細な説明は、後述する。
【0042】
以上が、本実施形態に係る後続車装置20の概略構成の説明である。本実施形態に係る衝突被害軽減システム1では、上述した概略構成の自車装置10と後続車装置20とが種々の情報を送受信し、送受信した情報に基づいて処理手段106、及び処理手段205が後述するように処理をする。以下、本実施形態に係る処理手段106、及び処理手段205の処理を詳細に説明する。
【0043】
まず始めに、本実施形態に係る処理手段106の処理を詳細に説明する。図2は、自車両2に搭載されている路車間通信手段104が、走行路の周囲に設置されている路側機との通信を開始できる位置を通過した時点の一例を示す図である。本実施形態では、路側機と路車間通信手段104とが、上述したように光通信をする。そして、路側機と路車間通信手段104とは、路側機の設置位置を基準とする予め定められた位置を自車両2が通過するときに光通信で互いに情報を送受信できるように、通信範囲が予め定められている。
【0044】
そこで、本実施形態では、路車間通信手段104が路側機から路側機情報を取得できる位置(以下、取得位置と称する)から、自車両2の前方に存在する交差点の停止線までの距離を、路側機情報で示される停止線距離Lとして予め設定するものとする。これにより、処理手段106は、自車両2が前述の取得位置を通過し、路車間通信手段104を介して路側機情報を取得することによって、停止線距離Lを認識することができる。
【0045】
処理手段106は、自車両2が取得位置を通過して路側機情報を取得すると、車速検出手段103によって生成される速度情報を逐次取得し、取得した速度情報によって示される走行速度を積分する。路側機情報を取得してから自車両2の走行速度を積分することにより、処理手段106は、前述の取得位置から走行した距離を測定することができる。そして、処理手段106は、取得位置から走行した距離を測定しながら、取得位置で取得した路側機情報で示される停止線距離Lから当該距離を減算することにより、取得位置から走行した自車両2から停止線までの距離を距離L1として逐次測定することができる。
【0046】
処理手段106は、停止線までの距離L1を測定しながら、自車両2が走行車線の先頭で停車したか否かを判断する。
【0047】
処理手段106は、自車両2が走行車線の先頭で停車したか否かを判断するとき、まず始めに、自車両2が停車したか否かを判断する。自車両2が停車したか否かを判断するとき、処理手段106は、車速検出手段103から逐次取得する速度情報によって示される自車両2の走行速度が略ゼロになったか否かを判断する。処理手段106は、自車両2の走行速度が略ゼロになったときに自車両2が停車したと判断する。一方、処理手段106は、自車両2の走行速度が略ゼロになっていないときに自車両2が停車していないと判断する。
【0048】
そして、処理手段106は、自車両2が停車したと判断すると、次に、自車両2が停車したのが走行車線の先頭であるか否かを判断する。自車両2が停車したのが走行車線の先頭であるか否かを判断するとき、処理手段106は、前方対象物検出手段101によって生成される対象物情報によって示される相対距離に基づいて、予め定められた相対距離の範囲(以下、距離範囲と称する)内に他車両が存在するか否かを判断する。処理手段106は、距離範囲内に他車両が存在すると判断したとき、自車両2が停車したのが走行車線の先頭ではないと判断する。一方、処理手段106は、距離範囲内に他車両が存在しないと判断したとき、自車両2が停車したのが走行車線の先頭であると判断する。
【0049】
処理手段106は、自車両2が停車したか否か、及び停車したのが走行車線の先頭であるか否かをそれぞれ判断することにより、自車両2が走行車線の先頭で停車したか否かを判断できる。
【0050】
処理手段106は、自車両2の停車位置が走行車線の先頭でない場合、すなわち、先行して停車している先行車両に後続して自車両2が停車している場合、後続車両から追突された勢いで当該先行車両に追突しないようにブレーキ圧力を制御する、或いは、後続車両から追突されたときのエネルギーと後続車両に追突された勢いで先行車両に追突するときのエネルギーとの和が最小になるようにブレーキ圧力を制御するなど、従来周知のブレーキ制御を、自車両2が走行を再開するまで行う。
【0051】
処理手段106は、自車両2が走行車線の先頭で停車していると判断すると、次に、自車両2の周囲に存在する他車両の中から、自車両2に最も近い後続車両3を特定する。
【0052】
具体的には、処理手段106は、後述するように通信範囲内に存在する後続車両3などの他車両から逐次送信される照合位置情報を車車間通信手段105を介して取得すると共に、位置座標取得手段102から位置情報を取得する。図3は、走行車線の先頭で停車している自車両2の車車間通信手段105と後続車両3の車車間通信手段204とが互いに通信範囲内に入り、通信を開始した時点の一例を示す図である。自車両2の車車間通信手段105と後続車両3の車車間通信手段204とが互いに通信範囲内に入ると、自車両2の処理手段106は、後続車両3の処理手段205が車車間通信手段204を介して逐次送信する照合位置情報を車車間通信手段105を介して取得する。また、処理手段106は、照合位置情報を取得すると共に位置情報を位置座標取得手段102から取得する。
【0053】
そして、処理手段106は、位置情報によって示される自車両2の位置座標と、照合位置情報によって示される照合位置座標とを照合して、略同一の位置座標を示すか否かを判断する。処理手段106は、位置情報によって示される自車両2の位置座標と、照合位置情報によって示される照合位置座標とが略同一の位置座標を示す場合、当該照合位置情報を送信した他車両を、自車両2に最も近い後続車両3として特定する。一方、処理手段106は、位置情報によって示される自車両2の位置座標と、照合位置情報によって示される照合位置座標とが略同一の位置座標を示さない場合、当該照合位置情報を送信した他車両を、自車両2に最も近い後続車両3として特定しない。
【0054】
処理手段106は、自車両2に最も近い後続車両3を特定できたとき、特定した後続車両3に対して、当該後続車両3を自車両2に最も近い後続車両として特定したことを示す後続車特定情報を、車車間通信手段105を介して、特定した後続車両3の後続車装置20に送信する。一方、処理手段106は、自車両2に最も近い後続車両3を特定できないときには、自車両2が走行を再開するまで、自車両2に最も近い後続車両3を特定する処理を繰り返す。
【0055】
尚、処理手段106が、位置情報によって示される自車両2の位置座標と、照合位置情報によって示される照合位置座標とが略同一の位置座標を示す場合、照合位置情報を送信した他車両を自車両2に最も近い後続車両3として特定できる理由については後述する。
【0056】
処理手段106は、後続車特定情報を送信した後、後続車両3が自車両2に追突するか否かを判断する。具体的には、処理手段106は、後続車両3の後続車装置20において後述するように自車両2と追突すると判断されたときに送信される追突情報を取得したか否かを判断する。処理手段106は、追突情報を取得したとき、後続車両3が追突すると判断し、追突情報を取得していないとき、後続車両3が追突しないと判断する。処理手段106は、後続車両3が追突しないと判断したとき、自車両2が走行を再開するまで、後続車両3が追突するか否かを判断する処理を繰り返す。
【0057】
処理手段106は、車車間通信手段105を介して追突情報を取得すると、後続車両3が追突すると判断して、取得した追突情報に含まれる情報と、停止線(自車両2の前方に存在する最も近い停止線)までの距離L1とに基づいて、ブレーキ制御手段107に通知するブレーキ圧力を算出する。ここで、ブレーキ圧力とは、例えば、自車両2がディスクブレーキを搭載しているのであれば、ブレーキパッドをブレーキディスクに押し当てるときの圧力のことである。ブレーキ圧力を算出するとき、処理手段106は、後述するように追突情報に含まれる情報に基づき、任意の周知の手法を用いて、追突エネルギーを予測し、予測した追突エネルギーと停止線までの距離L1とに基づいて、追突された勢いで前進する自車両2を停止線に到達するまでに停車させられるブレーキ圧力を算出する。処理手段106は、ブレーキ圧力を算出すると、算出したブレーキ圧力を示すブレーキ圧力情報を生成する。
【0058】
処理手段106によってブレーキ圧力情報が生成されたとき、生成されたブレーキ圧力情報がブレーキ制御手段107によって取得される。ブレーキ制御手段107は、自車両2に搭載されたブレーキのブレーキ圧力を、取得したブレーキ圧力情報によって示される圧力となるように制御する。
【0059】
尚、本実施形態に係る処理手段106は、上述の説明から明らかなように、従来周知のブレーキ制御をする処理、自車両2に最も近い後続車両3を特定する処理、及び後続車両3が追突するか否かを判断する処理を自車両2が走行を再開するまで繰り返す。処理手段106が、自車両2が走行を再開したか否かを判断するとき、例えば、車速検出手段103から逐次取得する速度情報によって示される自車両2の走行速度が略ゼロでなくなったか否かを判断する。自車両2の走行速度が略ゼロでなくなったとき、処理手段106は、自車両2が走行を再開したと判断できる。そして、自車両2が走行を再開した後は、処理手段106は、停止線を越えたか否かを判断する。具体的には、処理手段106は、上述したように測定している停止線までの距離L1が、ゼロ未満になったか否かを判断する。そして、処理手段106は、距離L1がゼロ未満になったとき、停止線を越えて交差点を通過したと判断し、再び交差点の近くを通過して路側機情報を取得するまで待機する。一方、処理手段106は、距離L1がゼロ未満にならないとき、停止線を越えていないと判断し、上述したように距離L1を測定する処理から順番に処理を進める。
【0060】
以上が、本実施形態に係る自車装置10の処理手段106の処理の詳細な説明である。次に、本実施形態に係る後続車装置20の処理手段205の処理を詳細に説明する。
【0061】
本実施形態に係る処理手段205は、位置座標取得手段202から取得した位置情報によって示される位置座標に基づいて、上述した照合位置座標を逐次算出し、算出する度に、照合位置座標を示す照合位置情報を送信する。具体的には、処理手段205は、位置座標取得手段202から位置情報を取得し、取得した位置情報によって示される後続車両3の位置座標を認識する。次に、処理手段205は、前方対象物検出手段201から取得した対象物情報によって示される先行車両との相対距離を認識する。そして、処理手段205は、後続車両3の位置座標と、先行車両との相対距離との和に基づいて、先行車両の位置座標を測定する。処理手段205は、測定した先行車両の位置座標を照合位置座標として示す照合位置情報を生成し、車車間通信手段204を介して通信範囲内に存在する他車両に送信する。
【0062】
ここで、処理手段205が測定して生成した照合位置情報によって照合位置座標として示される位置座標は、前方対象物検出手段201によって直接測定された位置座標に基づいて認識した位置座標であって、後続車両3の最も近くに存在する先行車両の位置座標である。そして、本実施形態に係る自車装置10の処理手段106は、上述したように、位置座標取得手段102から取得した位置情報によって示される自車両2の位置座標と、照合位置情報によって示される照合位置座標とを照合する。
【0063】
そして、照合位置情報によって示される位置座標と、自車両2の位置座標とが略同一である場合には、後続車両3の最も近くに存在する先行車両が自車両2であると考えられる。換言すれば、自車両2の最も近くで後続している他車両が後続車両3であると考えられる。したがって、位置座標取得手段102から取得した位置情報によって示される自車両2の位置座標と、照合位置情報によって示される照合位置座標とが略一致する場合に、自車両2の処理手段106から後続車両3の処理手段205に後続車特定情報を送信することにより、処理手段205は、照合位置情報で示される照合位置座標に存在する他車両が、後続車両3に最も近い自車両2であると判断できる。そして、自車両2の処理手段106が、後続車特定情報を送信するのは、走行車線の先頭で停車している場合であるので、後続車特定情報を取得した処理手段205は、当該後続車特定情報を送信した自車両2が、走行車線の先頭で停車していると判断できる。
【0064】
処理手段205は、車車間通信手段204を介して、照合位置情報を逐次送信しながら、後続車特定情報を受信したか否かを判断する。処理手段205は、後続車特定情報を受信したと判断すると、当該後続車特定情報を送信した自車両2に追突するか否かを判断する処理を開始する。
【0065】
具体的には、処理手段205は、後続車特定情報を取得したと判断すると、前方対象物検出手段201から取得した対象物情報で示される自車両2との相対距離、及び相対速度に基づき、衝突余裕時間を算出する。ここで、衝突余裕時間とは、先行車両などの対象物との相対距離を、当該対象物との相対速度で進んだときに当該対象物に衝突するまでの余裕を示す時間である。衝突余裕時間は、同一の対象物との相対距離を相対速度で除算することにより求めることができる。尚、衝突余裕時間とは、TTC(Time To Collision)と呼ばれることもある。
【0066】
処理手段205は、自車両2に対する衝突余裕時間を逐次算出し、算出した衝突余裕時間が予め定められたしきい値未満となったとき、自車両2に衝突するまでの余裕がなくなって追突すると判断する。追突すると判断すると、処理手段205は、追突情報を生成して、車車間通信手段204を介して自車両2に送信する。
【0067】
ここで、本実施形態における追突情報について説明する。本実施形態における追突情報には、当該追突情報を取得した処理手段106が、後続車両3によって追突されたときに生じる追突エネルギーを予測するための情報が含まれる。本実施形態における追突情報に含まれる情報の一例としては、後続車両3が追突するときの車速を推定した追突時推定車速、後続車両3の車重量、追突情報を送信するときの自車両2と後続車両3との余裕相対距離、及び後続車両3の追突エネルギー吸収量などが挙げられる。
【0068】
追突時推定車速とは、より詳細には、処理手段205が、車速検出手段203から取得した速度情報で示される走行速度、図示しない加速度センサなどで検出した加速度、及び上述した衝突余裕時間などに基づく任意の周知の手法で推定した、後続車両3が自車両2に追突するときの車速である。
【0069】
また、後続車両3の追突エネルギー吸収量とは、例えば、後続車両3が追突したときに生じる追突エネルギーの内、後続車両3を変形させるのに使われるエネルギーであって、自車両2には伝わらずに吸収されるエネルギーである。本実施形態に係る追突情報に含まれる追突エネルギー吸収量は、後続車装置20の図示しない記憶部に記憶されているものとする。
【0070】
尚、後続車両3などの他車両の中には、追突したときに大きく変形するエンジンルームなどにおけるエネルギーの吸収量を増加させるために、追突したときの変形量が効率よく増大するように予め設計された構造を有するものもある。そして、後続車装置20の図示しない記憶部には、例えば、実験をすることによって追突時推定車速と、追突時に大きく変形する箇所の硬さとに対応させて予め検証して定めた追突エネルギー吸収量を示すテーブルの形式で、追突エネルギー吸収量を記憶させておいてもよい。また、後続車装置20の図示しない記憶部に記憶させる追突エネルギー吸収量は、後続車両3の車種毎に予め定めておいてもよい。
【0071】
また、追突情報を送信するときの自車両2と後続車両3との余裕相対距離とは、処理手段205が追突情報を送信するときに前方対象物検出手段201から取得した対象物情報によって示される相対距離である。
【0072】
処理手段205は、上述した追突時推定車速、後続車両3の車重量、余裕相対距離、及び追突エネルギー吸収量を少なくとも含む追突情報を車車間通信手段204を介して自車両2へ送信する。
【0073】
以上が、本実施形態に係る処理手段205の処理の詳細な説明である。次に、本実施形態に係る自車装置10の処理手段106が、追突エネルギーを予測して、予測した追突エネルギーに基づいて、ブレーキ圧力を算出する処理について説明する。
【0074】
図4は、自車両2が停止線までの距離L1の位置で停車しており、自車両2の後方の余裕相対距離の位置を通過して後続車両3から追突情報が送信されるときの一例を示す図である。車車間通信手段105を介して追突情報を取得した処理手段106は、取得した追突情報に含まれる情報に基づき、後続車両3が追突するときの追突エネルギーを予測する。処理手段106が、追突するときのエネルギーを予測する手法は、追突時推定車速、後続車両3の車重量、余裕相対距離、及び追突エネルギー吸収量など、上述したように追突情報に含まれる情報の少なくともいずれか1つに基づいた任意の周知の手法を用いるものとする。
【0075】
処理手段106は、追突エネルギーを予測すると、予測した追突エネルギーで追突された勢いで前進した自車両2が、距離L1で停車できるブレーキ圧力を算出する。処理手段106が、追突エネルギーに基づいて、ブレーキ圧力を算出する手法は、任意の周知の手法を用いてよいが、一例としては、実験をすることによって、任意の追突エネルギーで後続車両を自車両に追突させたときの自車両の停止距離をブレーキ圧力を変えながら測定し、測定した結果に基づいて、追突エネルギーと停止距離とをブレーキ圧力に対応させて示すテーブルを作成して図示しない記憶部に予め記憶させておく手法が挙げられる。
【0076】
この場合、処理手段106は、図示しない記憶部に予め記憶させたテーブルを参照して、予測した追突エネルギーと測定していた距離L1とに対応付けられたブレーキ圧力を認識し、認識したブレーキ圧力をブレーキ制御手段107に通知する。これにより、本実施形態に係る処理手段106は、後続車両3に追突された勢いで図4に一例として示すように停止線の先にある横断歩道、或いは交差車線に飛び出すことなく、停止線までの位置で停車することができる。
【0077】
次に、本実施形態に係る自車装置10の処理手段106の上述した処理について、その流れを図5のフローチャートを参照しながら説明する。尚、本実施形態に係る処理手段106は、自車両2のアクセサリスイッチ、或いはイグニッションスイッチがオンにされたときに、図5のフローチャートに示す処理を開始し、オフにされたときに終了するものとする。
【0078】
ステップS101において、処理手段106は、路車間通信手段104を介して路側機情報を取得したか否かを判断する。処理手段106は、ステップS101において、路側機情報を取得したと判断すると、ステップS102へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS101において、路側機情報を取得していないと判断すると、路側機情報を取得するまで、ステップS101の処理を繰り返す。
【0079】
ステップS102において、処理手段106は、ステップS101で取得した路側機情報によって示される停止線距離Lと、自車両2の走行速度を積分して求めた走行距離とに基づいて、上述したように停止線までの距離L1を算出する。処理手段106は、ステップS102の処理を完了すると、ステップS103へ処理を進める。
【0080】
ステップS103において、処理手段106は、車速検出手段103から取得した速度情報によって示される走行速度に基づき、自車両2が停車したか否かを上述したように判断する。処理手段106は、自車両2が停車したと判断すると、ステップS104へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS103において、自車両2が停車していないと判断すると、ステップS116へ処理を進める。
【0081】
ステップS104において、処理手段106は、前方対象物検出手段101から取得した対象物情報で示される相対距離に基づき、上述したように先行車両が存在するか否かを判断する。処理手段106は、ステップS104において、先行車両が存在すると判断したとき、ステップS105へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS104において、先行車両が存在しないと判断したとき、ステップS112へ処理を進める。
【0082】
尚、ステップS103、及びステップS104の処理が、上述で説明したように、自車両2が走行車線の先頭で停車しているか否かを判断する処理に相当する。
【0083】
ステップS105において、処理手段106は、車車間通信手段105を介して照合位置情報を取得したか否かを判断する。処理手段106は、ステップS105において、照合位置情報を取得したと判断すると、ステップS106へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS105において、照合位置情報を取得していないと判断すると、ステップS114へ処理を進める。
【0084】
ステップS106において、処理手段106は、位置座標取得手段102から位置情報を取得する。処理手段106は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS107へ処理を進める。
【0085】
ステップS107において、処理手段106は、ステップS105で取得した照合位置情報によって示される照合位置座標と、ステップS106で取得した位置情報によって示される位置座標とを上述したように照合して、照合位置情報を送信した他車両が後続車両3として特定できるか否かを判断する。処理手段106は、ステップS107において、ステップS105で取得した照合位置情報を送信した他車両が後続車両3として特定できたとき、ステップS108へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS107において、ステップS105で取得した照合位置情報を送信した他車両が後続車両3として特定でいないとき、ステップS114へ処理を進める。
【0086】
尚、ステップS105〜ステップS107の処理が、上述したように、自車両2の周囲に存在する他車両の中から、自車両2に最も近い後続車両3を特定する処理に相当する。
【0087】
ステップS108において、処理手段106は、ステップS105で取得した照合位置情報を送信した他車両を自車両2に最も近い後続車両3として特定し、特定した後続車両3に車車間通信手段105を介して後続車特定情報を送信する。処理手段106は、ステップS108の処理を完了すると、ステップS109へ処理を進める。
【0088】
ステップS109において、処理手段106は、後続車両3が追突するか否かを、追突情報を取得したか否かの判断結果に基づいて上述したように判断する。処理手段106は、ステップS109において、追突情報を取得して、後続車両3が追突すると判断したとき、ステップS110へ処理を進める。処理手段106は、追突情報を取得できず、後続車両3が追突しないと判断したとき、ステップS115へ処理を進める。
【0089】
ステップS110において、処理手段106は、ステップS109において取得した追突情報に含まれる情報に基づいて従来周知の手法で追突エネルギーを予測し、予測した追突エネルギーと、ステップS102で算出した距離L1とに基づいて、上述したようにブレーキ圧力を算出する。処理手段106は、ステップS110の処理を完了すると、ステップS111へ処理を進める。
【0090】
ステップS111において、処理手段106は、ステップS111で算出したブレーキ圧力をブレーキ制御手段107に通知する。処理手段106は、ステップS111の処理を完了すると、図5のフローチャートに示す処理を終了する。
【0091】
ステップS112において、処理手段106は、従来周知のブレーキ制御のための処理をする。処理手段106は、ステップS112の処理を完了すると、ステップS113へ処理を進める。
【0092】
ステップS113において、処理手段106は、自車両2が走行を再開したか否かを判断する。処理手段106は、ステップS113において、自車両2が走行を再開したと判断すると、ステップS116へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS113において、自車両2が走行を再開していないと判断すると、ステップS112の処理を繰り返す。
【0093】
ステップS114において、処理手段106は、自車両2が走行を再開したか否かを判断する。処理手段106は、ステップS114において、自車両2が走行を再開したと判断すると、ステップS116へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS114において、自車両2が走行を再開していないと判断すると、ステップS105へ処理を戻す。
【0094】
ステップS115において、処理手段106は、自車両2が走行を再開したか否かを判断する。処理手段106は、ステップS115において、自車両2が走行を再開したと判断すると、ステップS116へ処理を進める。一方、処理手段106は、ステップS115において、自車両2が走行を再開していないと判断すると、ステップS109へ処理を戻す。
【0095】
ステップS116において、処理手段106は、ステップS102で算出した距離L1に基づいて上述したように自車両2が停止線を越えたか否かを判断する。処理手段106は、ステップS116において、自車両2が停止線を越えたと判断すると、ステップS101へ処理を戻す。一方、処理手段106は、ステップS116において、自車両2が停止線を越えていないと判断すると、ステップS102へ処理を戻す。
【0096】
以上が、本実施形態に係る処理手段106の処理の流れの説明である。次に、本実施形態に係る処理手段205の処理について、その流れを図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、本実施形態に係る処理手段205は、後続車両3のアクセサリスイッチ、或いはイグニッションスイッチがオンにされたときに、図6のフローチャートに示す処理を開始し、オフにされたときに終了するものとする。
【0097】
ステップS201において、処理手段205は、位置座標取得手段202から取得した位置情報によって示される位置座標を認識する。処理手段205は、ステップS201の処理を完了すると、ステップS202へ処理を進める。
【0098】
ステップS202において、処理手段205は、前方対象物検出手段201から取得した対象物情報によって示される先行車両との相対距離を認識する。処理手段205は、ステップS202の処理を完了すると、ステップS203へ処理を進める。
【0099】
ステップS203において、処理手段205は、ステップS201で認識した位置座標と、ステップS202で認識した相対距離とに基づき、上述した照合位置座標を算出する。処理手段205は、ステップS203の処理を完了すると、ステップS204へ処理を進める。
【0100】
ステップS204において、処理手段205は、ステップS203で算出した照合位置座標を示す照合位置情報を生成して、車車間通信手段204を介して、通信範囲内に存在する他車両に送信する。処理手段205は、ステップS204の処理を完了すると、ステップS205へ処理を進める。
【0101】
ステップS205において、処理手段205は、車車間通信手段204を介して、後続車特定情報を受信したか否かを判断する。処理手段205は、ステップS205において、後続車特定情報を受信したと判断したとき、ステップS206へ処理を進める。一方、処理手段205は、ステップS205において、後続車特定情報を受信していないと判断したとき、ステップS201へ処理を戻す。
【0102】
尚、ステップS201〜ステップS205の処理が、上述したように、処理手段205が、後続車特定情報を送信した車両が、走行車線の先頭で停車している自車両2であると判断するための処理に相当する。
【0103】
ステップS206において、処理手段205は、前方対象物検出手段201から取得した対象物情報によって示される自車両2との相対距離、及び相対速度に基づいて、上述したように、衝突余裕時間を算出し、しきい値と比較することによって、自車両2に追突するか否かを判断する。処理手段205は、ステップS206において、自車両2と追突すると判断したとき、ステップS207へ処理を進める。一方、処理手段205は、ステップS206において、自車両2に追突しないと判断したとき、ステップS208へ処理を進める。
【0104】
ステップS207において、処理手段205は、上述した追突時推定車速、後続車両3の車重量、余裕相対距離、及び追突エネルギー吸収量などの情報を含む追突情報を生成し、車車間通信手段204を介して、ステップS205で受信した後続車特定情報を送信した自車両2に送信する。処理手段205は、ステップS207の処理を完了すると、ステップS201へ処理を戻す。
【0105】
ステップS208において、処理手段205は、後続車両3が停車したか否かを、車速検出手段203から取得した速度情報によって示される走行速度が略ゼロとなったか否かを判断することによって判断する。処理手段205は、ステップS208において、後続車両3が停車していると判断したとき、ステップS201へ処理を戻す。一方、処理手段205は、ステップS208において、後続車両3が停車していないと判断したとき、ステップS206へ処理を戻して、追突するか否かの判断を継続する。
【0106】
以上が、本実施形態に係る処理手段205の処理の流れの説明である。本実施形態に係る衝突被害軽減システム1では、自車装置10と後続車装置20とが、処理手段106と処理手段205とで上述したように処理をすることにより、走行車線の先頭で停車している自車両2に後続車両3が追突したとしても、自車両2が横断歩道や交差車線に飛び出ることを防げる。また、本実施形態に係る衝突被害軽減システム1では、走行車線の先頭で停車している自車両2に後続車両3が追突したとしても、自車両2の停車位置から停止線までの距離を自車両2がブレーキを用いて制動しながら移動するので、追突のエネルギーを可能な限り消費して、被害を低くすることができる。
【0107】
尚、上述した第1の実施形態では、光ビーコンを用いて、予め定められた取得位置を通過したときに路車間通信手段104を介して処理手段106が路側機情報を取得する場合を一例として説明した。しかしながら、他の一実施形態では、路車間通信手段104の代わりに、例えば、予め定められた通信範囲内で無線信号を用いて通信する路側機と通信可能な路車間通信手段を用いてもよい。この場合、路側機には、走行路の周囲における設置位置から、当該走行路の先にある交差点の停止線の位置座標を緯度と経度とで示す情報を路側機情報として無線信号で通信範囲内に逐次送信する。そして、自車装置10の処理手段106は、路車間通信手段を介して取得した路側機情報によって示される停止線の位置座標と位置座標取得手段102から取得した位置情報によって示される位置座標との差に基づいて停止線までの停止線距離L、及び前述の距離L1を測定するようにしてもよい。
【0108】
また、上述した第1の実施形態では、予め定められた停止位置として停止線までの距離を路側機情報として送信する路側機と通信する場合を一例として説明した。しかしながら、他の一実施形態では、路車間通信手段104と通信可能な路側機として、図7に一例として示すように、交差点の周囲に設置され、当該交差点の横断歩道に歩行者が存在するか否かを検出して検出結果を示す情報、或いは交差車線の右側から走行してくる他車両が存在するか否かを検出して検出結果を示す情報を光ビーコンを用いて、停止線の手前で停車している自車両2の路車間通信手段104に送信する路側機と通信するようにしてもよい。この場合、自車両2の処理手段106は、例えば、走行車線の先頭で自車両2が停車しているときに、横断歩道(自車両2の前方に存在する最も近い横断歩道)に歩行者が存在することを示す情報を路車間通信手段104を介して取得したときには、図7に一例として示すように、後続車両3から追突されたときに、予め定められた停止位置として停止線までの距離L1で停車するようにブレーキ圧力を算出してもよいし、横断歩道に歩行者が存在しないことを示す情報を路車間通信手段104を介して取得したときには、図7に一例として示すように、後続車両3から追突されたときに、予め定められた停止位置として交差車線までの距離L2で停車するようにブレーキ圧力を算出してもよいし、横断歩道に歩行者が存在しないことを示す情報、及び交差車線を走行する他車両が存在しないことを示す情報のそれぞれを路車間通信手段104を介して取得したときには、図7に一例として示すように、後続車両3から追突されたときに、予め定められた停止位置として交差車線の幅方向の中心(或いは、交差点の中央)までの距離L3(或いは、前述の横断歩道よりも遠方の任意の距離)で停車するようにブレーキ圧力を算出してもよい。尚、交差点の周囲に設置した路側機が、横断歩道を歩行する歩行者が存在するか否か、及び自車両2に対して交差車線を走行する他車両が存在するか否かを検出する手法は、任意の公知の手法を用いるものとする。
【0109】
また、上述したように横断歩道に歩行者が存在するか否かを判断するときには、歩行者が携帯している通信機と無線通信することによって判断するようにしてもよい。この場合、歩行者が携帯している通信機は、横断歩道を歩行しているときに走行車線の先頭で停車している自車両2と通信できる程度の通信範囲となるように設計しておくとよい。そして、通信機から予め定められた信号を常に送信するようにして、自車装置10にさらに備えた当該信号を受信する受信手段を介して処理手段106が取得したときに、歩行者が存在すると判断し、当該信号を受信手段でできないとき(当該通信機と通信できないとき)するようにするとよい。
【0110】
また、上述したように交差車線を走行する他車両が存在するか否かを判断するときには、当該他車両に備えられた車車間通信手段と、自車両2の車車間通信手段105とが通信することによって判断するようにしてもよい。この場合、他車両の車車間通信手段は、当該他車両の位置を緯度と経度とで示す位置座標を常に予め定められた通信範囲内に送信するようにし、当該位置座標を車車間通信手段105を介して自車両2の処理手段106が取得したときに交差車線を走行する他車両が存在すると判断するようにしてもよい。
【0111】
また、第1の実施形態では、自車両2の処理手段106が追突エネルギーを予測するときに、後続車両3の処理手段205から送信される追突情報に含まれる情報を用いるものとした。しかしながら、他の一実施形態では、自車両2の処理手段106が、自車両2の後端に備えられたバンパーに取り付けられた加速度センサ(図示せず)で、後続車両3によって追突されることによりバンパーが変形するときの加速度、或いは当該加速度を積分した速度を自車両2の変形加速度、或いは変形速度として検出して、追突エネルギーの予測に用いてもよい。この場合、処理手段106は、追突情報を取得したときに、取得した追突情報に含まれる情報に基づいて上述したように追突エネルギーを予測した後、前述の加速度センサで検出した加速度に基づいて追突が生じたと判断してから、当該加速度、或いは当該加速度を積分した速度を用いた任意の周知の手法で、最初に予測した追突エネルギーを修正しながら、ブレーキ圧力を算出するとよい。これにより、処理手段106は、追突が生じた後における追突エネルギーを修正して精度の高いブレーキ圧力を、自車両2が停車するまで算出することができる。
【0112】
また、他の一実施形態では、自車両2の処理手段106が、自車両2に取り付けられた加速度センサ(図示せず)で、後続車両3によって追突された勢いで当該自車両2が前進するときの加速度を検出し、検出した加速度或いは当該加速度を積分した速度を、上述した追突エネルギーの修正に用いてもよい。
【0113】
また、第1の実施形態では、停止線など予め定められた停止位置までの距離を路側機情報によって示される停止線距離L1を用いて測定していた。しかしながら、他の一実施形態では、例えば、CCD(Charge Coupled Device)素子、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)素子などの固体撮像素子を用いたカメラ、或いは当該カメラを水平方向に予め定められた間隔で配置したステレオカメラで自車両2の前方を撮像した画像に基づいて停止線、横断歩道、或いは交差車線の幅方向の中心までの距離を測定するようにしてもよい。
【0114】
また、第1の実施形態では、追突エネルギーの予測を自車両2でするものとした。しかしながら、他の一実施形態では、追突エネルギーを後続車両3で予測し、予測した結果を自車両2に送信して用いるものとしてもよい。
【0115】
また、第1の実施形態では、自車両2が走行車線の先頭で停車しているか否かを判断するときに、まず、自車両2が停車したか否かを判断し、次に、自車両2が停車したのが走行車線の先頭であるか否かを判断するものとした。しかしながら、他の一実施形態では、さらに、自車両2が停車している位置が、停止線など予め定められた停止位置から予め定められた距離の範囲内であるか否かを判断してもよい。この場合、自車両2が停車している位置が、予め定められた停止位置から予め定められた距離の範囲内でもあるときに、自車両2が走行車線の先頭で停車していると判断できる。
【0116】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、衝突の被害を軽減でき、例えば、自動車などの移動体に搭載される衝突被害軽減装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0118】
1 衝突被害軽減システム
2 自車両
3 後続車両
10 自車装置
20 後続車装置
101,201 前方対象物検出手段
102,202 位置座標取得手段
103,203 車速検出手段
104 路車間通信手段
105,204 車車間通信手段
106,205 処理手段
107 ブレーキ制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後続車両に追突されたときの被害を自車両の制動力を制御して軽減する衝突被害軽減装置であって、
前記自車両が追突されたときに生じるエネルギーを推定する推定手段と、
交差点において停車している前記自車両から予め定められた停止位置までの距離を測定する測定手段と、
前記エネルギーと前記停止位置までの距離とに基づいて前記自車両の前記制動力を予め制御する制動力制御手段とを備える、衝突被害軽減装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記停止位置までの距離として、前記交差点において前記自車両の前方に存在する最も近い停止線までの距離を測定する、請求項1に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記停止位置までの距離として、前記交差点において前記自車両の前方に存在する最も近い横断歩道までの距離を測定する、請求項1に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項4】
前記測定手段は、前記交差点において前記自車両の前方に存在する最も近い横断歩道に歩行者が存在しないときの前記停止位置までの距離として、当該交差点において当該自車両の停止している車線に交差する交差車線までの距離を測定する、請求項1に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項5】
前記測定手段は、前記交差点において前記自車両の前方に存在する最も近い横断歩道に歩行者が存在しない、且つ前記交差点において前記自車両の停止している車線に交差する交差車線を走行する他車両が存在しないときの前記停止位置までの距離として、当該交差点において当該自車両の前方に存在する最も近い横断歩道よりも遠方の距離を測定する、請求項1に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項6】
前記横断歩道を歩行している前記歩行者が携帯可能な通信機と通信可能な第1の通信手段をさらに備え、
前記測定手段は、前記第1の通信手段によって前記通信機と通信できないとき、前記停止位置までの距離として、前記交差車線までの距離を測定する、請求項4に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項7】
前記横断歩道を歩行している前記歩行者が携帯可能な通信機と通信可能な第1の通信手段と、
予め定められた第2の通信範囲で他車両の位置座標を通信可能な第2の通信手段とをさらに備え、
前記測定手段は、前記第1の通信手段を用いて前記通信機と通信できない、且つ前記第2の通信手段を用いて前記他車両と通信して取得した当該他車両の位置座標に基づいて前記自車両の停止している車線に交差する交差車線に当該他車両が存在しないと判断したとき、前記停止位置までの距離として、前記横断歩道よりも遠方の距離を測定する、請求項5に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項8】
前記横断歩道に存在している前記歩行者を検出した検出結果を送信する路側機と通信可能な第3の通信手段をさらに備え、
前記測定手段は、前記第3の通信手段から送信された前記検出結果によって前記歩行者が存在しないことが示されるとき、前記停止位置までの距離として、前記交差車線までの距離を測定する、請求項4に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項9】
前記横断歩道に存在している前記歩行者を検出した第1の検出結果、及び前記交差点において前記自車両の停止している車線に交差する交差車線を走行する他車両を検出した第2の検出結果を送信する路側機と通信可能な第3の通信手段をさらに備え、
前記測定手段は、前記第1の検出結果によって前記歩行者が存在しないことが示され、且つ前記第2の検出結果によって前記交差車線を走行する他車両が存在しないことが示されるとき、前記横断歩道よりも遠方の距離を測定する、請求項5に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項10】
前記推定手段は、前記後続車両と前記自車両との相対速度に基づき前記エネルギーを推定する、請求項1乃至9のいずれか1つに記載の衝突被害軽減装置。
【請求項11】
前記推定手段は、
前記自車両に生じる加速度を検出する加速度検出手段と、
前記後続車両に追突されたときに前記加速度検出手段によって検出される前記加速度に基づき、前記エネルギーを推定するエネルギー推定手段とを含む、請求項1乃至9のいずれか1つに記載の衝突被害軽減装置。
【請求項12】
前記推定手段は、
前記自車両の後端のバンパーに取り付けられ、当該バンパーが変形するときの加速度を検出する後方加速度検出手段と、
前記加速度に基づき、前記エネルギーを推定するエネルギー推定手段とを含む、請求項1乃至9のいずれか1つに記載の衝突被害軽減装置。
【請求項13】
前記エネルギー推定手段は、前記加速度を積分した速度に基づき、前記エネルギーを推定する、請求項12に記載の衝突被害軽減装置。
【請求項14】
後続車両に追突されたときの被害を自車両の制動力を制御して軽減する衝突被害軽減方法であって、
前記自車両が追突されたときに生じるエネルギーを推定する推定ステップと、
交差点において停車している前記自車両から予め定められた停止位置までの距離を測定する測定ステップと、
前記エネルギーと前記停止位置までの距離とに基づいて前記自車両の前記制動力を予め制御する制動力制御ステップとを備える、衝突被害軽減方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−240852(P2011−240852A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115655(P2010−115655)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】