説明

表皮細胞増殖促進剤及び皮膚外用剤

【課題】皮膚の老化や肌荒れ等の改善に有効な表皮細胞増殖促進剤および皮膚外溶剤を提供する。
【解決手段】本発明の表皮細胞増殖促進剤は、グルコシルセラミドを含有することを特徴とする。前記のグルコシルセラミドはこんにゃく芋由来であることが好ましい。さらに、本発明の皮膚外用剤は前記の表皮細胞増殖促進剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシルセラミドを含有する表皮細胞増殖促進剤、及び該表皮細胞増殖促進剤を配合した皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表皮は、角化細胞が分裂し、その後分化するという代謝機能によって、常に新しい角質細胞を作り出している。それにより、表皮の厚さは一定に保たれ、保湿や外界からの刺激に対するバリアー機能等の重要な機能を担っている。しかし、加齢をはじめとする様々な要因によって、表皮細胞の代謝機能が低下すると、皮膚のターンオーバー速度が遅くなり、皮膚の老化や肌荒れ、くすみ、色素沈着等の肌トラブルを起こすことになる。また、表皮の代謝機能の低下により、創傷治癒が遅くなることが知られている。これらの肌トラブルを改善したり、創傷治癒を促進したりするために、表皮細胞の増殖を促進させる成分の探索がなされ、該成分を含有する皮膚外用剤が提案されている。
【0003】
表皮細胞の増殖を促進させる成分を含有する皮膚外用剤としては、例えば、以下のものが公知となっている。すなわち、カバノキ科植物のカバノキ属、ハンノキ属に属する植物の抽出物を含有する皮膚老化防止化粧料組成物(特許文献1)、アルギン酸オリゴ糖及びその塩を含有するヒト表皮角化細胞賦活剤(特許文献2)、アンチアロール、リオニレシノール、ロドデンドロールおよびプラテフィロノールならびにそれらの配糖体を含有する化粧料(特許文献3)、ハス胚芽を含有する表皮角化細胞増殖促進剤(特許文献4)、糖エステルを含有するケラチノサイト増殖促進剤(特許文献5)、セイロンテツボクの種子抽出物を含有する表皮細胞増殖促進剤(特許文献6)などが知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜6の外用剤は、皮膚外用における安全性に問題があったり、表皮細胞増殖促進効果が満足いくものではなかったりする場合があった。従って、安全性に優れ、表皮細胞の分裂・分化をより促進する細胞増殖促進剤が求められていた。
【0005】
一方、グルコシルセラミドが、皮膚における保湿性向上作用(非特許文献1、2、3)、アトピー性皮膚炎改善作用(非特許文献4、5)を有することが報告されている。
しかしながら、グルコシルセラミドが表皮細胞増殖促進効果を有することは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6‐263627号公報
【特許文献2】特開平8‐81378号公報
【特許文献3】特開平10‐236940号公報
【特許文献4】特開2002‐68993号公報
【特許文献5】特開2003‐52366号公報
【特許文献6】特開2005‐213184号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】食品と開発、Vol.35、No.9、56−59(2000)
【非特許文献2】食品と開発、Vol.36、No.8、9−11(2001)
【非特許文献3】バイオインダストリー、Vol.19、No.8、16−26(2002)
【非特許文献4】Pediatric Dermatology、Vol.23、No.4、386−389(2006)
【非特許文献5】Fragrance Journal、29−33(1999−10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、安全性が高く、優れた表皮細胞増殖促進効果を有する表皮細胞増殖促進剤および該表皮細胞増殖促進剤を含有する皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、グルコシルセラミドが高い表皮細胞増殖促進作用を有することを初めて見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)グルコシルセラミドを含有する表皮細胞増殖促進剤。
(2)グルコシルセラミドが、こんにゃく芋由来のグルコシルセラミドであることを特徴とする(1)の表皮細胞増殖促進剤。
(3)(1)または(2)の表皮細胞増殖促進剤を含有する皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表皮細胞増殖促進剤は、安全性が高く、優れた表皮細胞増殖効果を有する。そのため、表皮の新陳代謝機能を促進して、肌の老化防止や肌荒れの改善、美白効果、創傷治癒促進等を目的とする各種の皮膚外用剤に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の表皮細胞増殖促進剤は、グルコシルセラミドを含有する。グルコシルセラミドは、スフィンゴイドと呼ばれる長鎖アミノアルコールに、脂肪酸がアミド結合したセラミドに、さらにグルコースが結合したスフィンゴ糖脂質である。グルコシルセラミドは天然に広く存在している。
【0012】
グルコシルセラミドは優れた表皮細胞増殖促進効果を示すとともに、天然素材由来であることから、安全性に優れるものである。従って、グルコシルセラミドを有効成分とする本発明の表皮細胞増殖促進剤は、安全性に優れ、かつ、表皮の新陳代謝機能を促進して、皮膚の老化や肌荒れを改善するという利点がある。
【0013】
なお、本発明のグルコシルセラミドに代えて、グルコース以外の糖が結合したスフィンゴ糖脂質を用いた場合、本発明の表皮細胞増殖促進剤及び皮膚外溶剤と比較して、表皮細胞増殖促進効果が顕著に劣るものとなる。グルコシルセラミドと立体構造が異なるガラクトシルセラミドを用いた場合であっても、表皮細胞増殖促進効果が、本発明に比べ顕著に劣る理由は定かではないが、グルコースなどの立体構造の相違により、細胞への作用が異なるからであると推測される。
【0014】
本発明に用いられるグルコシルセラミドは、本発明の効果を損なうものでない限り、特に限定されない。例えば、天然素材由来(植物素材由来)のグルコシルセラミドや、化学合成されたグルコシルセラミド、酵素合成されたグルコシルセラミドなどを用いることができる。天然素材由来のグルコシルセラミドは、植物素材由来のグルコシルセラミド、動物由来のグルコシルセラミドが挙げられる。
【0015】
本発明に用いられるグルコシルセラミド構造中に存在するスフィンゴイドとしては、4−ヒドロキシスフィンガニン、4−ヒドロキシートランスー8−スフィンゲニン、4−ヒドロキシーシスー8−スフィンゲニン、スフィンガニン、トランスー8−スフィンゲニン、シスー8−スフィンゲニン、トランスー4−スフィンゲニン、トランスー4・トランスー8−スフィンガジエニン、トランスー4・シスー8−スフィンガジエニンが挙げられ、なかでも、表皮細胞増殖促進効果の観点から、トランスー4・シスー8−スフィンガジエニン、4−ヒドロキシーシスー8−スフィンゲニンが主成分となるこんにゃく芋由来のスフィンゴイドが特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられるグルコシルセラミド構造中に存在する脂肪酸としては、ヘキサデカン酸(炭素数16:不飽和度0、以下同じ)、オクタデカン酸(18:0)、イコサン酸(20:0)、ヘネイコサン酸(21:0)、ドコサン酸(22:0)、トリコサン酸(23:0)、テトラドコサン酸(24:0)、ペンタコサン酸(25:0)、ヘキサドコサン酸(26:0)、ヘプタコサン酸(27:0)、オクタドコサン酸(28:0)、シスー9−オクタデセン酸(18:1)などが挙げられる。なかでも、表皮細胞増殖促進効果の観点から、オクタデカン酸、ドコサン酸、イコサン酸が主成分となるコンニャク芋由来の脂肪酸が特に好ましい。
【0017】
天然素材由来のグルコシルセラミドは、例えば、該グルコシルセラミドが含まれる植物素材組織や、動物素材組織から抽出することができる。
【0018】
植物素材由来のグルコシルセラミドを得る場合において、使用する植物素材は特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アーモンド、アオサ、アオノリ、アカザ、アカシア、アカネ、アカブドウ、アカマツ(松ヤニ、琥珀、コーパルを含む。以下マツ類については同じ)、アガリクス、アキノノゲシ、アケビ、アサガオ、アザレア、アジサイ、アシタバ、アズキ、アスパラガス、アセロラ、アセンヤク、アニス、アボガド、アマチャ、アマチャヅル、アマリリス、アルテア、アルニカ、アロエ、アンジェリカ、アンズ、アンソッコウ、イグサ、イザヨイバラ、イチイ、イチジク、イチョウ、イランイラン、ウイキョウ、ウーロン茶、ウコン、ウスベニアオイ、ウツボグサ、ウド、ウメ、ウラジロガシ、温州ミカン、エイジツ、エシャロット、エゾウコギ、エニシダ、エノキタケ、エルダーフラワー、エンドウ、オーキッド、オオバコ、オオヒレアザミ、オオムギ、オケラ、オスマンサス、オトギリソウ、オドリコソウ、オニドコロ、オリーブ、オレガノ、オレンジ(オレンジピールを含む)、カーネーション、カカオ、カキ、カキドオシ、カッコン、カシワ、カタクリ、カボチャ、カミツレ、カムカム、カモミール、カラスウリ、カラマツ、カリン、ガルシニア、カルダモン、キイチゴ、キウイ、キキョウ、キャベツ(ケールを含む)、キャラウェイ、キュウリ、キンカン、ギンナン、グァバ、クコ、クズ、クチナシ、クミン、クランベリー、クルミ、グレープフルーツ、クローブ、クロマツ、クロマメ、クロレラ、ケツメイシ、ゲンノショウコ、コケモモ、コショウ、コスモス、ゴボウ、コムギ(小麦胚芽を含む)、ゴマ、コマツナ、コメ(米糠を含む)、コリアンダー、こんにゃく芋(こんにゃくトビ粉を含む)、コンブ、サーモンベリー、サイプレス、ザクロ、サツマ芋、サト芋、サトウキビ、サトウダイコン、サフラン、ザボン、サンザシ、サンショウ、シイタケ、シクラメン、シソ、シメジ、ジャガ芋、シャクヤク、ジャスミン、ジュズダマ、シュンギク、ショウガ、ショウブ、シラカシ、ジンチョウゲ、シンナモン、スイカ、スイトピー、スギナ、スターアニス、スターアップル、スダチ、ステビア、スモモ、セージ(サルビア)、ゼニアオイ、セロリ、センキュウ、センブリ、ソバ、ソラマメ、ダイコン、ダイズ(おからを含む)、ダイダイ、タイム、タケノコ、タマネギ、タラゴン、タロイモ、タンジン、タンポポ、チコリ、ツキミソウ、ツクシ、ツバキ、ツボクサ、ツメクサ、ツルクサ、ツルナ、ツワブキ、ディル、テンジクアオイ(ゼラニウム)、トウガ、トウガラシ、トウキ、トウチュウカソウ、トウモロコシ、ドクダミ、トコン、トチュウ、トネリコ、ナガイモ、ナズナ、ナツメグ、ナンテン、ニガウリ、ニガヨモギ、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ、ノコギリソウ、ノコギリヤシ、ノビル、バーベナ、パーム、パイナップル、ハイビスカス、ハコベ、バジル、パセリ、ハダカムギ、ハッカ、ハトムギ、バナナ、バナバ、バニラ、パプリカ、ハマメリス、ビート、ピーマン、ヒガンバナ、ヒシ、ヒジキ、ピスタチオ、ヒソップ(ヤナギハッカ)、ヒナギク、ヒナゲシ、ヒノキ、ヒバ、ヒマシ、ヒマワリ、ビワ、ファレノプシス、フェネグリーク、フキノトウ、ブラックベリー、プラム、ブルーベリー(ビルベリーを含む)、プルーン、ヘチマ、ベニバナ、ベラドンナ、ベルガモット、ホウセンカ、ホウレンソウ、ホオズキ、ボダイジュ、ボタン、ホップ、ホホバ、マイタケ、マオウ、マカ、マカデミアンナッツ、マタタビ、マリーゴールド、マンゴー、ミツバ、ミモザ、ミョウガ、ミルラ、ムラサキ、メース、メリッサ、メリロート、メロン、メン(綿実油粕を含む)、モヤシ、ヤグルマソウ、ヤマ芋、ヤマユリ、ヤマヨモギ、ユーカリ、ユキノシタ、ユズ、ユリ、ヨクイニン、ヨメナ(アスター)、ヨモギ、ライム、ライムギ、ライラック、ラズベリー、ラッカセイ、ラッキョウ、リンゴ(アップルファイバーを含む)、リンドウ、レイシ、レタス、レモン、レンゲソウ、レンコン、ローズヒップ、ローズマリー、ローリエ、ワケギ、ワサビ(セイヨウワサビを含む)などが挙げられる。
【0019】
動物素材由来のグルコシルセラミドを得る場合において、使用する動物素材は特に限定されるものではなく、例えば、牛脳由来などが挙げられる。
【0020】
これらのグルコシルセラミドの中でも、こんにゃく芋由来のグルコシルセラミドは、表皮細胞増殖促進効果が強いため好ましい。こんにゃく芋を抽出原料として使用する場合には、そのままでも良いし、乾燥、すりつぶし、粉砕、加熱などの操作によって加工されたこんにゃく芋を用いてもよい。また、こんにゃく精粉、こんにゃく荒粉、こんにゃくトビ粉や食用として市販されているこんにゃくを用いても良い。
【0021】
上記の天然素材由来のグルコシルセラミドを抽出する際には、水や有機溶媒を用いることができる。有機溶媒は、本発明の効果を損なうものでなければ、いかなるものを用いても良い。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類等が挙げられる。これらは、単独でもしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。天然素材からグルコシルセラミドを抽出する方法は、公知の方法を使用すれば良い、また、抽出は複数回行ってもよい。
【0022】
グルコシルセラミドを抽出して得られた抽出液は、濃縮操作により濃縮物とすることができる。濃縮操作としては、例えば、エバポレーターのような減圧濃縮装置を用いたり、加熱したりして、溶媒を除去することが挙げられる。その後、該濃縮された抽出物を、シリカゲルカラム等を用いて、シリカゲルクロマトグラフィーで分離・精製することなどにより、グルコシルセラミドを得ることができる。または、グルコシルセラミドを抽出して得られた抽出液を、アルカリ処理や溶媒分画などにより溶媒や不純物を除去して濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで分離・精製することなどにより、グルコシルセラミドを得ることができる。
【0023】
本発明の表皮細胞増殖促進剤中、グルコシルセラミドの含有量は、特に限定されないが、表皮細胞増殖促進効果との関係から、乾燥固形分として0.1〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることがいっそう好ましい。グルコシルセラミドの含有量が多いほど、単位乾燥固形分当たりの表皮細胞増殖促進効果が高くなり、好ましい。
【0024】
本発明の表皮細胞増殖促進剤は、グルコシドセラミド以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等の成分を、必要に応じて含有していてもよい。
【0025】
本発明の皮膚外用剤は、上記表皮細胞増殖促進剤を含有するものである。
【0026】
本発明の皮膚外用剤中のグルコシルセラミドの含有量は、乾燥固形分として0.00001〜10質量%であることが好ましく、0.0001〜1質量%であることがより好ましい。グルコシルセラミドの含有量が0.00001質量%未満であると、本発明の表皮細胞増殖促進効果を得るためには、適用量をかなり増やさなければならず、一方、1質量%を超えると、製造原価が高コストとなる場合がある。
【0027】
また、本発明の皮膚外用剤は、本発明の表皮細胞増殖促進剤以外の、各種の薬効剤を含有することができる。各種の薬効剤としては、例えば、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防止剤、保湿剤、血行促進剤等が挙げられる。それにより表皮細胞増殖促進効果をより高めたり、表皮細胞増殖促進効果以外の効果を併存させたりすることが可能である。
【0028】
また、本発明の皮膚外用剤には、本発明の表皮細胞増殖促進剤や各種の薬効剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、皮膚外用剤に通常用いられる成分を含有していても良い。該成分としては、例えば、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の皮膚外用剤は、人間や動物の皮膚に直接塗布されたり、接触したりして用いられてもよいし、台所・浴室・トイレ用洗剤、ガラスクリーナー、メガネ・コンタクトレンズ用洗浄剤、自動車用洗剤、衛生用品、ウェットペーパーなどに配合されて用いられてもよい。
【0030】
本発明の皮膚外用剤は化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれの分野においても用いることができる。例えば、乳液、クリーム、化粧水(ローション)、パック、美容液、洗浄剤、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤、オイル、リップ、口紅、ファンデーション、アイライナー、頬紅、マスカラ、アイシャドー、マニキュア・ペディキュア(及び除去剤)、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、パーマネント剤、染毛料、ひげ剃り剤、ゲル剤、エッセンス剤、洗浄剤、浴用剤、打粉、石けん(ハンドソープ、ボディソープ、洗顔料など)、歯磨き剤、洗口料等に好適に用いられる。
【0031】
本発明の表皮細胞増殖促進剤または皮膚外用剤を使用する場合に、表皮に対する塗布量は、少なすぎると本発明の効果が得られず、多すぎても添加量に見合った効果が得られず好ましくない。本発明の表皮細胞増殖促進剤、または皮膚外用剤の塗布量は、グルコシルセラミド換算で、表皮単位面積(1cm)当たり、好ましくは0.0001〜30000μg/(cm・day)であり、より好ましくは、0.0002〜300μg/cm・dayである。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例によって、本発明を具体的に説明する。
【0033】
(調製例1)
表皮細胞増殖促進剤の調製
コンニャクとび粉1kgを撹拌糟に仕込み、そこにエタノール2Lを加え、常温で2時間撹拌し、ろ過により抽出物と残渣を分離した。抽出溶液をエバポレーターにより濃縮し、茶褐色の蝋状濃縮物を約10g得た。次に、0.4N メタノール性KOH(水/メタノール=10/90)100mLを用いて、室温で2時間攪拌することにより、弱アルカリ分解してグリセロ脂質を分解後、クロロホルム/メタノール/水の混合溶媒(質量比:8/4/3)を加えて再抽出を行い、クロロホルム層を濃縮乾固してアルカリ安定脂質8.6gを得た。続いて、4倍量のアセトンで2回洗浄した後、20倍量のエタノール、及び0.2倍量の活性炭を加え脱色処理し、黄白色固体1.4gを得た。この黄白色固体1gをシリカゲルカラムに供給し、酢酸エチル/エタノールの混合溶液(質量比:90/10)を用いてグルコシルセラミドを精製し、白色粉末0.6gを得た。その後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)(島津製作所製、商品名「CLASS−VP」)を用いることにより、得られたコンニャクとび粉由来グルコシルセラミド粉末が純度98%以上であることを確認した。このようにして得られたコンニャクとび粉由来グルコシルセラミド5mgに、1mLのエタノールを加え撹拌、溶解して表皮細胞増殖促進剤を調製した。
【0034】
表皮細胞増殖促進作用の評価
(実施例1)
正常ヒト表皮角化細胞(クラボウ社製、商品名「NHEK」)を、24ウェルプレートに1×10 cells/wellずつ播種した。その後、37℃、5%炭酸ガス存在下、HuMedia‐KG2培地(クラボウ社製)で培養した。24時間後、調製例1で作成したコンニャクとび粉由来グルコシルセラミドを混合したHuMedia‐KB2培地(クラボウ社製、20μg/mLに調製)を500μLずつ添加して培養を継続した。72時間後、生細胞数をCCK−8(同人化学社製)を用いて定量した。
【0035】
(実施例2)
コンニャクとび粉由来グルコシルセラミドを大豆由来グルコシルセラミド(Avanti Polar Lipids社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、生細胞数を定量した。
(比較例1)
コンニャクとび粉由来グルコシルセラミドを、牛脳由来ガラクトシルセラミド(SIGMA社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、生細胞数を定量した。
【0036】
(比較例2〜4)
コンニャクとび粉由来グルコシルセラミドを、セラミド1(degussa社製、「セラミドEOP」)、セラミド3(Doosan社製、「セラミドNP」)、セラミド6(コスモファーム社製、「セラミドAP」)に各々変更した以外は、実施例と同様にして、生細胞数を定量した。なお、上記のセラミド1、セラミド3、セラミド6は、いずれも糖鎖の結合していない合成セラミドである。
(比較例5)
コンニャクとび粉由来グルコシルセラミドを、スフィンゴシン(BIOMOL社製、商品名「スフィンゴシン」)に変更した以外は、実施例1と同様にして、生細胞数を定量した。
【0037】
なお、表皮細胞増殖促進作用の評価においては、正常ヒト表皮角化細胞を播種した後、37℃、5%炭酸ガス存在下、HuMedia‐KG2培地(クラボウ社製)で培養し、96時間後、定量により求められた生細胞数(すなわち、正常ヒト表皮角化細胞のみを培地に播種し、実施例1と同様の培養工程に付した場合の生細胞数)を100%として評価の基準値とした。評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から明らかなように、グルコシルセラミドを含有する表皮細胞増殖促進剤は強い表皮細胞増殖促進効果を有していた。グルコシルセラミドのなかでも、こんにゃく芋由来のグルコシルセラミドを含有する表皮細胞増殖促進剤は、より表皮細胞増殖促進効果に優れていた。一方、ガラクトシルセラミド、糖鎖の結合していない合成セラミド、スフィンゴシンを用いた表皮細胞増殖促進剤は、表皮細胞増殖効果に劣っていた。
【0040】
(実施例3)
下記に示す配合成分を均一に混合して皮膚外用剤を調製した。
調製例1で得られたこんにゃくとび粉由来グルコシルセラミド:1.0%
エタノール:6.0%
リゾレシチン:6.0%
トラガカントゴム:2.0%
精製水:85.0%
(合計100.0%)
【0041】
20代から50代の男女10人に朝と夕の1日2回、上記のように調製されたこんにゃくとび粉由来グルコシルセラミド含有皮膚外用剤を塗布した。また、上記の皮膚外用剤において、こんにゃくとび粉由来グルコシルセラミドを精製水に変更したものをブランク皮膚外用剤として、20代から50代の男女10人に朝と夕の1日2回塗布した。1ヶ月間、かかとに塗布してもらい、1ヶ月後の肌の変化(肌荒れ、かさつき、柔軟性、潤いなど)を「改善」、「やや改善」、「変化なし」、「やや悪化」、「悪化」の5段階で評価した。その結果を表2に示す。なお、1回の塗布量は0.1gとし、1回の塗布面積は10cmとした。
【0042】
【表2】

【0043】
表2から明らかなように、こんにゃく芋由来グルコシルセラミドを配合した本発明品の皮膚外用剤には、顕著な肌改善効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコシルセラミドを含有する表皮細胞増殖促進剤。
【請求項2】
グルコシルセラミドが、こんにゃく芋由来のグルコシルセラミドであることを特徴とする請求項1記載の表皮細胞増殖促進剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2の表皮細胞増殖促進剤を含有する皮膚外用剤。

【公開番号】特開2011−195550(P2011−195550A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67105(P2010−67105)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】