説明

表示パネルとフレキシブル回路基板との接続方法および接続装置

【課題】 液晶パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部とを紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を用いて電気的に接続するに当たり、接続後のエージング工程を行うことなく、接続後の液晶パネルおよびフレキシブル回路基板を高温高湿雰囲気中に放置したときのフレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きの発生を防止する。
【解決手段】 フレキシブル回路基板30の端子部32および接続材34と重ねあせた液晶パネル26の端子部28を載置する端子部支持台14に加熱手段50を設ける。そして、この加熱手段により、接続材への紫外線照射時に接続材およびフレキシブル回路基板の端子部を加熱する。好ましくは、紫外線照射を開始してから所定時間が経過した後に、加熱手段により接続材およびフレキシブル回路基板を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部とを紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を用いて電気的に接続するための表示パネルと回路基板との接続方法および接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルの1つである液晶パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部とを紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を用いて電気的に接続する際に用いられる接続装置として、図3に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3の接続装置において、10は液晶パネル支持台、12は液晶パネル支持台10の側方に該液晶パネル支持台10と離間して配置されたフレキシブル回路基板支持台、14は液晶パネル支持台10とフレキシブル回路基板支持台12との間に配置された紫外線透過性材料からなる端子部支持台、18は端子部支持台14の下方に設置された紫外線照射手段、24は端子部支持台14の上方に設置された昇降可能な加圧バーを示す。上記紫外線照射手段18は、紫外線ランプ20と紫外線反射板22とからなる。
【0004】
図3の接続装置を用いて液晶パネル26の端子部28とフレキシブル回路基板30の端子部32とを接続する場合、液晶パネル26の端子部28の表面(電極端子の形成されている面)に、紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材34を塗布、印刷などによって積層する。また、液晶パネル26を液晶パネル支持台10上に載置し、液晶パネル26の端子部28を端子部支持台14上に配置するとともに、液晶パネル26の端子部28にフレキシブル回路基板支持台12上に載置したフレキシブル回路基板30の端子部32を重ね合わせる。なお、液晶パネル26において、27、27はそれぞれ透明基板、29、29はそれぞれ偏光板を示す。
【0005】
その後、図4に示すように、加圧バー24を下降させ、その先端押圧面25でフレキシブル回路基板30の表面(電極端子の形成されていない面)の液晶パネル26に重ね合わせた部分を押圧し、フレキシブル回路基板30の端子部32、接続材34および液晶パネル26の端子部28に圧力を加えて、これらを圧着させる。さらに、この状態で紫外線照射手段18によって接続材34に紫外線21を照射することにより、接続材34中の紫外線硬化樹脂を硬化させて両端子部28、32を電気的に接続するものである。なお、図中36は加圧バー24の先端押圧面25とフレキシブル回路基板30の表面との間に配置されるクッション材を示す。
【0006】
【特許文献1】特開2003−168858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述のようにして液晶パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部とを紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を用いて接続し、接続後の液晶パネルおよびフレキシブル回路基板を高温高湿雰囲気中に放置した場合(例えば80℃、90%RHの雰囲気中に放置する信頼性試験を行った場合)、図5に示すように、液晶パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部との接続部分において、フレキシブル回路基板30の電極端子40の両端でフレキシブル回路基板30のポリイミドなどからなるベースフィルム42の浮き(剥離)44が発生するという問題があった。
【0008】
上述した接続後の液晶パネルおよびフレキシブル回路基板を高温高湿雰囲気中に放置した場合におけるフレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きの発生原因の主なものとして、フレキシブル回路基板のベースフィルムのスプリングバックが考えられる。これは、図6に示すように、接続後の液晶パネル26およびフレキシブル回路基板30を高温高湿雰囲気中に放置することにより、接続材34中の紫外線硬化樹脂と液晶パネル26あるいはフレキシブル回路基板30との界面の接着力が弱くなる。そのときフレキシブル回路基板30の隣り合う電極端子40同士の間に沈み込んだフレキシブル回路基板30のベースフィルム42が持っているスプリングバックをしようとする応力が開放され、浮きが発生するものである。すなわち、液晶パネル26とフレキシブル回路基板30との接続時には、フレキシブル回路基板30の隣り合う電極端子40同士の間にフレキシブル回路基板30のベースフィルム42を押し込んだ状態で紫外線硬化樹脂を硬化させるので、フレキシブル回路基板30のベースフィルム42にスプリングバックをしようとする応力が残留し、この残留応力が上述した理由により開放される。なお、図6において43は液晶パネル26の電極端子を示す。
【0009】
したがって、フレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きが発生する理由は、紫外線硬化樹脂と液晶パネル26あるいは紫外線硬化樹脂と液晶パネル30との接着力がスプリングバックをしようとする力より小さいからである。
【0010】
そのため、紫外線硬化樹脂と液晶パネルあるいはフレキシブル回路基板との接着力を強めるために、従来、接続後の表示パネルおよびフレキシブル回路基板を95℃の温度で90分間保持するエージング工程を行っている。このエージング工程を行うことにより、エージング工程後に表示パネルおよびフレキシブル回路基板を高温高湿雰囲気中に放置しても、すでに紫外線硬化樹脂と液晶パネルあるいはフレキシブル回路基板との接着力が強められているため、フレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きは発生しない。
【0011】
しかしながら、前述した従来の液晶パネルとフレキシブル回路基板との接続工程では、前記エージング工程を行っているために、接続工程の負荷が増大し、その結果液晶表示装置の製造コストが高くなるものであった。
【0012】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、表示パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部とを紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を用いて電気的に接続するに当たり、接続後のエージング工程を行うことなく、接続後の表示パネルおよびフレキシブル回路基板を高温高湿雰囲気中に放置したときのフレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きの発生を防止することができる表示パネルとフレキシブル回路基板との接続方法および接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するため、表示パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部との間に紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を配置し、前記表示パネルの端子部を端子部支持台上に載置した状態で前記接続材に紫外線を照射して該接続材中の紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、前記表示パネルの端子部と前記フレキシブル回路基板の端子部とを前記接続材により接続するに当たり、前記端子部支持台に加熱手段を設けるとともに、前記接続材への紫外線照射時に前記加熱手段により前記接続材を加熱することを特徴とする表示パネルとフレキシブル回路基板との接続方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、端子部支持台と、紫外線照射手段とを具備し、表示パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部との間に紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を配置し、前記表示パネルの端子部を前記端子部支持台上に載置した状態で前記紫外線照射手段によって前記接続材に紫外線を照射して該接続材中の紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、前記表示パネルの端子部と前記フレキシブル回路基板の端子部とを前記接続材により接続する装置であって、前記端子部支持台に、前記接続材への紫外線照射時に前記接続材を加熱する加熱手段が設けられていることを特徴とする表示パネルとフレキシブル回路基板との接続装置を提供する。
【0015】
本発明においては、紫外線照射時に端子部支持台に設けた加熱手段で接続材を加熱することにより、紫外線硬化樹脂の反応効率を上げ、紫外線硬化樹脂と液晶パネルおよび/またはフレキシブル回路基板との界面の接着力を向上させ、接続後のフレキシブル回路基板のベースフィルムに残留するスプリングバックをしようとする応力を抑制することができる。したがって、本発明によれば、接続後の紫外線硬化樹脂の接着力が向上して、高温高湿雰囲気中に放置したときのフレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きの発生を防止することができる。
【0016】
また、本発明では、紫外線照射を開始してから所定時間が経過した後に、加熱手段により接続材を加熱することが適当である。端子部支持台を常時加熱すると、この端子部支持台上で液晶パネルの電極端子とフレキシブル回路基板の電極端子との位置合わせを行う場合、紫外線硬化樹脂に熱が加わり熱反応を起こし、紫外線硬化反応の自由度が抑制されるおそれが生じることがある。したがって、紫外線硬化反応の開始後にこの反応を促進させるために、紫外線照射を開始してから所定時間が経過した後に接続材を加熱することが好ましい。
【0017】
本発明において、加熱手段による接続材の加熱温度、あるいは接続材およびフレキシブル回路基板の端子部の加熱温度に特に限定はないが、通常は50〜100℃に加熱することが好適である。
【0018】
本発明において、加熱手段の種類は適宜選択することができるが、加熱手段が端子部支持台の表面に形成される透明面状ヒータであることが好ましい。通常、端子部支持台は透明であり、端子部支持台の下方に設置した紫外線照射手段から端子部支持台を通して接続材に紫外線を照射するので、加熱手段も透明であることが好ましく、この点でITO(Indium Tin Oxide)ヒータを好適に用いることができる。ITOヒータは、例えば、端子部支持台の上面(液晶パネルの端子部が載置される面)に蒸着加工によって形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エージング工程を行うことなく、接続後の液晶パネルおよびフレキシブル回路基板を高温高湿雰囲気中に放置したときのフレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。例えば、表示パネルとしての液晶パネルのほかに、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル等を例示することができる。図1および図2は本発明に係る液晶パネルとフレキシブル回路基板との接続装置の一実施形態を示すもので、図1は加圧バーを上昇させた状態を示す概略図、図2は加圧バーを下降させた状態を示す概略図である。なお、図1、図2において、図3、図4と同一構成の部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0021】
本例の接続装置は、端子部支持台14の上面に加熱手段としてITOヒータ50が蒸着加工によって形成されており、このITOヒータ50によって紫外線照射手段18による接続材34への紫外線照射時に接続材34およびフレキシブル回路基板30の端子部32を加熱するようになっている。
【0022】
なお、端子部支持台14の材質に限定はないが、紫外線透過性を有する材料、例えば石英ガラス等によって形成することが好ましい。また、端子部支持台14は、液晶パネル支持台10およびフレキシブル回路基板支持台12の一方または両方と一体に形成してもよい。さらに、フレキシブル回路基板30としては、可撓性のフィルム基板に配線パターンを形成したフレキシブルプリント配線基板(FPC)、可撓性の絶縁フィルムにプリント配線を施しその上にLSIを搭載したCOF(Chip On Film)、駆動用回路をテープ上に実装したTPC(Tape Carrier Package)などが挙げられる。
【0023】
本例の接続装置を用いて液晶パネル26の端子部28とフレキシブル回路基板30の端子部32とを接続する場合、液晶パネル26の端子部28の表面に、紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材34を塗布、印刷などによって積層する。また、液晶パネル26を液晶パネル支持台10上に載置し、液晶パネル26の端子部28を端子部支持台14上に配置するとともに、液晶パネル26の端子部28にフレキシブル回路基板支持台12上に載置したフレキシブル回路基板30の端子部32を重ね合わせる。なお、上記接続材34の積層は、液晶パネル26を液晶パネル支持台10上に載置する前に行ってもよく、載置した後に行ってもよい。また、接続材34により仮接続した液晶パネル26およびフレキシブル回路基板30を液晶パネル支持台10、フレキシブル回路基板支持台12および端子部支持台14の上に載置してもよい。
【0024】
その後、図2に示すように、加圧バー24を下降させ、その先端押圧面25でフレキシブル回路基板30の表面(電極端子の形成されていない面)の液晶パネル26に重ね合わせた部分を押圧し、フレキシブル回路基板30の端子部32、接続材34および液晶パネル26の端子部28に圧力を加えて、これらを圧着させる。さらに、この状態で紫外線照射手段18によって接続材34に紫外線21を照射する。
【0025】
次いで、紫外線照射手段18による紫外線照射を開始してから所定時間が経過した後に、ITOヒータ50をオンにして、該ITOヒータ50によって接続材34およびフレキシブル回路基板30の端子部32を加熱する。このように紫外線照射を開始してから所定時間が経過した後に紫外線照射と加熱を行い、フレキシブル回路基板30のベースフィルムを柔らかくして該ベースフィルムに加わる応力を減少させるとともに、接続材34中の紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進させた状態で、接続材34によって両端子部28、32を電気的に接続することにより、接続後の液晶パネル26およびフレキシブル回路基板30を高温高湿雰囲気中に放置したときのフレキシブル回路基板30のベースフィルムの浮きの発生を防止する。
【0026】
本例において、紫外線照射量、紫外線照射のタイミング、加熱温度、加熱のタイミングは適宜設定することができるが、例えば、加圧バー24を下降させてフレキシブル回路基板30、接続材34および液晶パネル26を圧着させた後、紫外線照射量2000mj/cmで紫外線照射を開始し、さらに紫外線照射を開始してから10秒後にITOヒータ50をオンにして接続材34およびフレキシブル回路基板30の端子部32を50℃で20秒間加熱し、紫外線照射開始30秒後に紫外線照射および加熱を同時に停止する例を挙げることができる。この場合、紫外線照射開始10秒後に加熱を開始したのは、紫外線照射開始10秒後には紫外線硬化樹脂の初期反応が進んで液晶パネルとフレキシブル回路基板との最低限の接着力が得られるので、この状態になったときに加熱を開始するものである。ただし、ITOヒータは常時加熱した状態としてもよい。
【0027】
上述のようにして接続した液晶パネルおよびフレキシブル回路基板を80℃、90%RHの高温高湿雰囲気中に放置したところ、フレキシブル回路基板のベースフィルムの浮きは発生しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る液晶パネルとフレキシブル回路基板との接続装置の一実施形態を示すもので、加圧バーを上昇させた状態を示す概略図である。
【図2】図1の接続装置の加圧バーを下降させた状態を示す概略図である。
【図3】従来の液晶パネルとフレキシブル回路基板との接続装置の一例を示すもので、加圧バーを上昇させた状態を示す概略図である。
【図4】図1の接続装置の加圧バーを下降させた状態を示す概略図である。
【図5】フレキシブル回路基板のベースフィルムに浮きが生じた状態を示す説明図である。
【図6】フレキシブル回路基板のベースフィルムに浮きが生じる原因を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
14 端子部支持台
18 紫外線照射手段
26 液晶パネル
28 端子部
30 フレキシブル回路基板
32 端子部
34 接続材
50 加熱手段(ITOヒータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部との間に紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を配置し、前記表示パネルの端子部を端子部支持台上に載置した状態で前記接続材に紫外線を照射して該接続材中の紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、前記表示パネルの端子部と前記フレキシブル回路基板の端子部とを前記接続材により接続するに当たり、前記端子部支持台に加熱手段を設けるとともに、前記接続材への紫外線照射時に前記加熱手段により前記接続材を加熱することを特徴とする表示パネルとフレキシブル回路基板との接続方法。
【請求項2】
前記紫外線照射を開始してから所定時間が経過した後に前記加熱手段により前記接続材を加熱する請求項1に記載の表示パネルとフレキシブル回路基板との接続方法。
【請求項3】
端子部支持台と、紫外線照射手段とを具備し、表示パネルの端子部とフレキシブル回路基板の端子部との間に紫外線硬化樹脂に導電性粒子を混合してなる接続材を配置し、前記表示パネルの端子部を前記端子部支持台上に載置した状態で前記紫外線照射手段によって前記接続材に紫外線を照射して該接続材中の紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、前記表示パネルの端子部と前記フレキシブル回路基板の端子部とを前記接続材により接続する装置であって、前記端子部支持台に、前記接続材への紫外線照射時に前記接続材を加熱する加熱手段が設けられていることを特徴とする表示パネルとフレキシブル回路基板との接続装置。
【請求項4】
前記紫外線照射を開始してから所定時間が経過した後に前記加熱手段により前記接続材を加熱する請求項3に記載の表示パネルとフレキシブル回路基板との接続装置。
【請求項5】
前記加熱手段が前記端子部支持台の表面に形成される透明面状ヒータである請求項3または4に記載の表示パネルとフレキシブル回路基板との接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−209002(P2006−209002A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23996(P2005−23996)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】