説明

表示制御方法

【課題】シフトインジケータの表示において、シフト操作に伴うチャタリング表示を防止する技術を提供する。
【解決手段】 メータECU20は、AT_ECU50からシフトインジケータ点灯要求信号80を取得する(S100)と、全インジケータ消灯確認処理(S200)として、シフトインジケータ点灯要求信号80に複数の点灯要求が含まれているか否かを確認する(S210)。シフトインジケータ点灯要求信号80に複数の点灯要求が含まれている場合(S210のY)、メータECU20は、[P]インジケータ41、[R]インジケータ42、[N]インジケータ43、[D]インジケータ44、[2]インジケータ45、及び[L]インジケータ46のすべてインジケータを消灯し(S211)、終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの表示制御方法に係り、特に、シフトインジケータを表示する表パネルの表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の表示メータは、ドライバに対して非常に多くの情報を提供する。そして、ドライバに対して表示メータをいかに見やすくするかは、車両の運転のしやすさに直結するといっても過言ではない。多くの車両では、表示メータにはシフトインジケータが表示されるようになっており、ドライバは、どのシフトレンジが選択されているかをシフトレバーを確認しなくとも一見して把握できるようになっている。これによって、ドライバは、坂道等では、シフトインジケータを表示メータで確認しながらエンジンブレーキのためにシフトダウンを行ったり、適切なシフト操作が実現できるようになっている。
【0003】
ところで、ドライバの運転を支援する技術として、例えば、表示メータに変速すべき方向(シフトダウンやシフトアップ)等を表示させることによって、ドライバの希望する運転が安定して最適な状態となるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、ステアリング等に設けられたシフトスイッチを操作することで、素早いシフトダウンやシフトアップが可能な車両もある。このような車両では、一般には、スイッチの1回オン操作による電気信号を検知して、変速レンジを一つ上又は下に切り替えるようになっている。そして、不確実なスイッチ操作等による変速防止するために、検知の時間を長めに設定するといった技術もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−311332号公報
【特許文献2】特開平10−14183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバのシフト操作に関して、シフトインジケータの表示をいかに見やすくするかという課題がある。シフトインジケータの点灯要求信号は、CAN(Controlled Area Network)規格等の通信データを通じて、自動変速機のECU(Engine Control Unit)から表示メータのECUへ、図1に示すような8ビットの所定の形式に従って与えられる。具体的には、シフトインジケータ点灯要求信号80は、各ビット81〜88ごとに各シフトインジケータの点灯要求を保持する。より具体的には、第1〜第8のビット81〜88には、点灯要求を示す「1」または消灯要求を示す「0」が記述される。ここで、第1及び第2のビット81、82は未使用の状態(予約;図示では「×」表示)である。例えば、第3のビット83が、「1」の場合、[P]インジケータ41(図3参照)が点灯する。そして、複数のビットに「1」が重複して記述された場合、つまり、複数ビットによる点灯要求があると、複数のインジケータが点灯してしまう。その結果、ドライバが素早いシフト操作を行った場合、表示メータのECUが自動変速機のECUから取得する通信データには、本来表示要求箇所は一つであるにもかかわらず、タイミング上複数のデータが存在してしまうおそれがある。そして、その状態で処理がなされると、シフトインジケータの表示は一瞬ではあるが複数のインジケータが点灯表示されてしまうチャタリング表示となる。これは、ドライバに違和感を与え、その表示にドライバの注意を逸らしかねない。シフトインジケータ点灯要求信号80のフォーマットを変更することも想定できるが、規格に定められているため、規格が変更されない状況にあっては、別の技術の導入が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、シフトインジケータの表示において、シフト操作に伴うチャタリング表示を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にある態様は、表示制御方法に関する。この表示制御方法は、車両メータにおいて、複数のインジケータからなるシフトインジケータの表示制御方法であって、取得した前記シフトインジケータの表示要求信号に複数の前記インジケータの点灯要求が含まれているときに、全てのインジケータの表示を消灯させる。
本発明の別の態様も、表示制御方法に関する。この表示制御方法は、車両メータを制御するECUにおいて、複数のインジケータからなるシフトインジケータの表示制御方法であって、自動変速機を制御するECUから、当該自動変速機におけるシフトポジションを表すシフトインジケータの表示要求信号を取得する表示要求信号取得工程と、前記表示要求信号に含まれる点灯要求指示を判別する点灯要求確認工程と、前記点灯要求指示に従いインジケータを点灯させるインジケータ点灯工程と、前記点灯要求指示に複数のインジケータを点灯させる要求があるときに、指定のインジケータを表示させず、全てのインジケータの表示を消灯させる全インジケータ消灯工程と、を備える。
また、前記表示要求信号は、複数の各インジケータそれぞれに対して点灯又は消灯の指示を含んでもよい。
また、前記表示要求信号は、CAN規格にもとづく信号形式であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シフトインジケータの表示において、シフト操作に伴うチャタリング表示を防止する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「実施形態」という)の概要を説明する。
【0009】
図2は、本実施形態に係る表示メータシステム10の概略構成を示す機能ブロック図である。表示メータシステム10は、表示部30とメータECU20とを備えており、CAN規格の車載ネットワーク90に接続されている。
【0010】
図3は、表示部30の外観を示した図である。図示のように、表示部30は、シフトインジケータ31、速度メータ32、エンジン回転速度メータ33、警告灯34などを備えており、メータECU20(図2参照)により表示制御される。
【0011】
メータECU20は、ハードウェアとしてはMPU(Micro Processing Unit))やメモリ、入出力インタフェイス、通信インタフェス等によって構成され、それらハードウェアにロードされた所定のプログラムによって、表示部30の表示を制御する。
【0012】
車載ネットワーク90には、自動変速機52を制御するAT_ECU50や、エンジン62を制御するエンジンECU61、ブレーキシステム64を制御するブレーキECU63などが接続され、メータECU20、AT_ECU50、エンジンECU61、ブレーキECU63は相互に通信可能に構成されている。なお、図示の車載ネットワーク90に接続される構成は例示であり、例えば、空調システムは、ライトシステムなど様々なシステムが接続されて、必要に応じて互いに協同して処理を実行している。また、以下の本実施形態で特徴的な、表示メータシステム10のシフトインジケータ31の表示処理に関して説明し、それ以外の構成や機能等の説明については省略する。
【0013】
メータECU20は、自動変速機52のシフトレンジのポジション状態、より具体的にはシフトインジケータ点灯要求信号80をAT_ECU50から車載ネットワーク90を介して取得する。メータECU20は、取得したシフトインジケータ点灯要求信号80に応じた、シフトインジケータ31の所望のインジケータ(41〜46)を点灯させる。
【0014】
ここでシフトインジケータ31について簡単に説明する。図3に示す通り、シフトインジケータ31は、上から順に、駐車状態を示す[P]インジケータ41、後進を示す[R]インジケータ42、ニュートラル状態を示す[N]インジケータ43、ドライブ状態、つまり、1〜5速のすべての速度レンジに制御される状態を示す[D]インジケータ44と、1速及び2速の速度レンジに制御される状態を示す[2]インジケータ45と、1速固定の状態を示す[L]インジケータ46とを備えている。
【0015】
そして、図1で示したシフトインジケータ点灯要求信号80において、第3のビット83が「1」のとき、メータECU20は、[P]インジケータ41を点灯させる制御を行う。同様に、メータECU20は、第4〜第8のビット84〜88が「1」のとき、それぞれに対応して[R]インジケータ42、[N]インジケータ43、[D]インジケータ44を点灯させ、[2]インジケータ45、[L]インジケータ46を点灯させる。
【0016】
まず、シフトインジケータ31の表示処理の従来の基本的な流れを図4のフローチャートを参照して説明する。その後、本実施形態で特徴的な処理について図5のフローチャートを参照して説明する。
【0017】
メータECU20は、所定のタイミングで、AT_ECU50からシフトインジケータ点灯要求信号80を取得する(S100)。そして、メータECU20は、シフトインジケータ点灯要求信号80に応じてシフトインジケータ31の表示処理を行う(S300)。
【0018】
S300のステップのシフトインジケータ31の表示処理において、メータECU20は、まず、第3のビット83を参照して、[P]インジケータ41の点灯要求である「1」であるか否かを確認する(S310)。第3のビット83が点灯要求を示す「1」である場合(S310のY)、メータECU20は[P]インジケータ41を点灯させる(S311)。第3のビット83が消灯要求を示す「0」である場合(S310のN)、メータECU20は[P]インジケータ41を消灯させる(S312)。
【0019】
S311またはS312の処理が終了すると、[R]インジケータ42の表示制御に移る。メータECU20は、第4のビット84を参照して、[R]インジケータ42の点灯要求である「1」であるか否かを確認する(S320)。第4のビット84が点灯要求を示す「1」である場合(S320のY)、メータECU20は[R]インジケータ42を点灯させる(S321)。第4のビット84が消灯要求を示す「0」である場合(S320のN)、メータECU20は[R]インジケータ42を消灯させる(S322)。
【0020】
S321またはS322の処理が終了すると、[N]インジケータ43の表示制御に移る。メータECU20は、第5のビット85を参照して、[N]インジケータ43の点灯要求である「1」であるか否かを確認する(S330)。第5のビット85が点灯要求を示す「1」である場合(S330のY)、メータECU20は[N]インジケータ43を点灯させる(S331)。第5のビット85が消灯要求を示す「0」である場合(S330のN)、メータECU20は[N]インジケータ43を消灯させる(S332)。
【0021】
S331またはS332の処理が終了すると、[D]インジケータ44の表示制御に移る。メータECU20は、第6のビット86を参照して、[D]インジケータ44の点灯要求である「1」であるか否かを確認する(S340)。第6のビット86が点灯要求を示す「1」である場合(S340のY)、メータECU20は[D]インジケータ44を点灯させる(S341)。第6のビット86が消灯要求を示す「0」である場合(S340のN)、メータECU20は[D]インジケータ44を消灯させる(S342)。
【0022】
S341またはS342の処理が終了すると、[2]インジケータ45の表示制御に移る。メータECU20は、第7のビット87を参照して、[2]インジケータ45の点灯要求である「1」であるか否かを確認する(S350)。第7のビット87が点灯要求を示す「1」である場合(S350のY)、メータECU20は[2]インジケータ45を点灯させる(S351)。第7のビット87が消灯要求を示す「0」である場合(S350のN)、メータECU20は[2]インジケータ45を消灯させる(S352)。
【0023】
S351またはS352の処理が終了すると、[L]インジケータ46の表示制御に移る。メータECU20は、第8のビット88を参照して、[L]インジケータ46の点灯要求である「1」であるか否かを確認する(S360)。第6のビット86が点灯要求を示す「1」である場合(S360のY)、メータECU20は[L]インジケータ46を点灯させる(S361)。第8のビット88が消灯要求を示す「0」である場合(S360のN)、メータECU20は[L]インジケータ46を消灯させる(S362)。以上の処理によりこのフローによるシフトインジケータ31の表示処理が終了する。
【0024】
ところで、上述したように、ノイズ発生や、シフトポジション切り替え操作のタイミングによっては、シフトインジケータ点灯要求信号80において、複数のビットに「1」が記述されることがある。例えば、第7のビット87と第8のビット88の両方に「1」が記述された状態のシフトインジケータ点灯要求信号80をメータECU20が取得すると、メータECU20は、[2]インジケータ45と[L]インジケータ46を点灯表示させることになる。複数点灯状態は一瞬で解消されるが、ドライバに違和感を与えることがある。そこで、図5のフローチャートに示すような処理を施し、複数点灯状態を防止した。
【0025】
より具体的には、S300のシフトインジケータ31の表示処理を行う前に、全インジケータ消灯確認処理(S200)を追加した。なお、S100及びS300の処理は、図4に示した処理と同様なので説明を省略する。
【0026】
メータECU20は、AT_ECU50からシフトインジケータ点灯要求信号80を取得する(S100)と、全インジケータ消灯確認処理(S200)として、シフトインジケータ点灯要求信号80に複数の点灯要求が含まれているか否かを確認する(S210)。つまり、第3のビット83〜第8のビット88の記述に「1」が複数含まれているか否かを判別する。
【0027】
シフトインジケータ点灯要求信号80に複数の点灯要求が含まれていない場合(S210のN)、つまり、一つのインジケータの点灯要求である場合、S300の表示処理に移り、上述したフローと同じ処理を行う。
【0028】
シフトインジケータ点灯要求信号80に複数の点灯要求が含まれている場合(S210のY)、メータECU20は、[P]インジケータ41、[R]インジケータ42、[N]インジケータ43、[D]インジケータ44、[2]インジケータ45、及び[L]インジケータ46のすべてインジケータを消灯し(S211)、終了する。このような処理をすることによって、シフトインジケータ31の複数のインジケータの表示する点灯要求を受け取った場合、メータECU20は、シフトインジケータ31を全消灯することができ、ドライバにチャタリング表示による違和感をあたえることを防止できる。また、ドライバに対して誤った情報を与えることを防止できる。また、シフトインジケータ31の全消灯が長時間に及ぶ場合、ドライバは何らかの異常が発生していることを把握することができる。
【0029】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】CAN規格におけるシフトインジケータ点灯要求信号のフォーマットを説明する図である。
【図2】実施形態に係る、表示メータシステムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】実施形態に係る、表示メータシステムの表示部の外観を示した図である。
【図4】実施形態に係る、シフトインジケータの基本的な表示処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る、シフトインジケータの表示処理に全インジケータ消灯確認処理を追加したフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10 表示メータシステム
20 メータECU
30 表示部
31 シフトインジケータ
50 AT_ECU
80 シフトインジケータ点灯要求信号
90 車載ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両メータにおいて、複数のインジケータからなるシフトインジケータの表示制御方法であって、
取得した前記シフトインジケータの表示要求信号に複数の前記インジケータの点灯要求が含まれているときに、全てのインジケータの表示を消灯させることを特徴とする表示制御方法。
【請求項2】
車両メータを制御するECUにおいて、複数のインジケータからなるシフトインジケータの表示制御方法であって、
自動変速機を制御するECUから、当該自動変速機におけるシフトポジションを表すシフトインジケータの表示要求信号を取得する表示要求信号取得工程と、
前記表示要求信号に含まれる点灯要求指示を判別する点灯要求確認工程と、
前記点灯要求指示に従いインジケータを点灯させるインジケータ点灯工程と、
前記点灯要求指示に複数のインジケータを点灯させる要求があるときに、指定のインジケータを表示させず、全てのインジケータの表示を消灯させる全インジケータ消灯工程と、
を備えることを特徴とする表示制御方法。
【請求項3】
前記表示要求信号は、複数の各インジケータそれぞれに対して点灯又は消灯の指示を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の表示制御方法。
【請求項4】
前記表示要求信号は、CAN規格にもとづく信号形式であることを特徴とする請求項2または3に記載の表示制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−36761(P2010−36761A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203096(P2008−203096)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】