説明

表示器および表示装置

【課題】回折格子から出射される0次回折光に起因するゴースト像が存在しない鮮明な画像を表示する。
【解決手段】回折格子パネル13から出射された回折光を透過可能な光学材料によって回折光が入射可能に設けられたプリズム40を有する光反射パネル14を備えると共に、回折光としての−1次回折光L3cおよび+1次回折光L3bのいずれかをプリズム40を透過させてプリズム40から出射させることにより、表示器2と対向し、かつ表示器2の左右方向で相違する各視点位置から互いに相違する画像を視認可能に複数の画像を表示可能に構成され、光反射パネル14は、0次回折光L3aをプリズム40において反射することにより、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)の透過率よりも0次回折光L3aの透過率の方が小さくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を予め規定された方向に回折する光回折部を備えて、視点位置毎に相違する画像を視認可能に複数の画像を表示する表示器、およびその表示器を備えて構成された表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の表示器を備えて構成された表示装置として、特許第3283582号公報に立体テレビ(立体像表示装置)が開示されている。この立体テレビは、回折格子アレイと、回折格子アレイの後面に設けられた液晶表示素子と、液晶表示素子の後面に設けられたカラーフィルター層とを備えて構成されている。具体的には、この立体テレビでは、カラーフィルター層によって白色の入射光のなかから所定の波長の光が選択すると共に、選択した光を液晶表示素子によって透過/遮断し、液晶表示素子を透過した光を回折格子アレイによって所望の方向に回折する構成が採用されている。この場合、上記の回折格子アレイは、格子間隔(ピッチ)を変化させつつ、曲線状の格子を平行に形成して並べた回折格子からなるセルを平面状の基板に複数個配列すると共に、これらのセルを表示すべき視差画像の数に応じて横方向に分割して形成されている。これにより、回折格子アレイにおけるセルの分割数に応じた数の各視点位置から互いに相違する視差画像が観察され、立体像として視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3283582号公報(第3−6頁、第1−12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の立体テレビには、以下の問題点がある。すなわち、従来の立体テレビにおける回折格子アレイのような回折格子においては、図47に示すように、回折現象によって生じる+1次回折光や−1次回折光だけでなく、入射光の進行方向と同じ方向に進行する0次回折光が生じる。したがって、本来は、視差画像を視認させるために回折格子から任意の視点位置に向かって1つの光を出射すべきところ、+1次回折光、−1次回折光および0次回折光の3つの光が回折格子から出射される結果、いわゆるゴースト像が表示されて、鮮明な画像を表示させることが困難となる。
【0005】
この場合、出願人は、光源と回折格子との位置関係(回折格子に対する光の入射角)や、回折格子の光学的設計などを変更することによって、−1次回折光については、その光量を十分に小さくする、或いは、回折格子から出射させないように構成することができるのを見い出している。しかしながら、0次回折光については、回折格子に対する光の入射角や、回折格子の光学的設計を変更したとしても、その光量を十分に低減させる、或いは、回折格子から出射させないように構成するのが困難となっている。このため、従来の立体テレビでは、−1次回折光の光量を低減させる、或いは、−1次回折光を回折格子から出射させない構成を採用したとしても、0次回折光の存在に起因して、ゴースト像が表示されて、鮮明な画像を表示させることが困難となっている。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、回折格子から出射される0次回折光に起因するゴースト像が存在しない鮮明な画像を表示し得る表示器および表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明に係る表示器は、光源からの光を回折する光回折部を備えた表示器であって、前記光回折部から出射された回折光を透過可能な光学材料によって当該回折光が入射可能に設けられた反射素子を有する光反射部を備えると共に、当該回折光としての−1次回折光および+1次回折光のいずれかの1次回折光を当該反射素子を透過させて当該反射素子から出射させることにより、当該表示器と対向し、かつ当該表示器の左右方向で相違する各視点位置から互いに相違する画像を視認可能に複数の画像を表示可能に構成され、前記光反射部は、前記回折光としての0次回折光を前記反射素子において反射することにより、当該反射素子における前記いずれかの1次回折光の透過率よりも、当該反射素子における当該0次回折光の透過率の方が小さくなるように構成されている。
【0008】
なお、上記の「光源からの光を回折する」とは、光源(発光体)から出射された光を光回折部に対して直接入射させる構成において光源からの光を光回折部において回折するだけでなく、光源(発光体)と光回折部との間に他の光学部品(プリズムやミラーのような光路変更部、光変調素子および偏光パネルなど)を配設して、光源(発光体)から出射された光を、これらの光学部品を通過(透過)、或いは、これらの光学部品において反射させた後に光回折部に入射させる構成においては、光学部品を通過(透過)した光、または、光学部品において反射された光を光回折部において回折する場合がこれに相当する。また、上記の「透過率」は、「反射素子における[表示器の前面側の界面(光回折部側とは反対側の一面)]から出射する光の強度(出射光量)を[表示器の背面側の界面(光回折部側の一面)]から反射素子に入射した光の強度(入射光量)で除した値」を意味する。
【0009】
また、本発明に係る表示器は、前記光反射部は、前記反射素子における当該表示器の前面側の界面において前記0次回折光が全反射するように構成されている。
【0010】
また、本発明に係る表示器は、波長が相違する複数種類の色光によって1つの表示画素を表示可能に構成され、前記光反射部は、1つの前記表示画素を表示するための前記各色光に対応して前記反射素子が設けられると共に、当該1つの表示画素を表示するための当該各色光に対応する当該反射素子の光学材料および形状の少なくとも一方が互いに相違するように形成されている。
【0011】
また、本発明に係る表示器は、波長が相違する複数種類の色光によって1つの表示画素を表示可能に構成され、前記光反射部は、1つの前記表示画素を表示するための前記各色光に対応して前記反射素子が設けられると共に、当該1つの表示画素を表示するための当該各色光に対応する当該反射素子が、同一の光学材料で、かつ互いに等しい形状となるように形成されている。
【0012】
また、本発明に係る表示装置は、上記のいずれかに記載の表示器と、前記光源と、当該光源の点灯を制御して前記表示器に前記画像を表示させる制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表示器では光源からの光を回折する光回折部から出射された回折光を透過可能な光学材料によって回折光が入射可能に設けられた反射素子を有する光反射部を備えると共に、回折光としての−1次回折光および+1次回折光のいずれかの1次回折光を反射素子を透過させて反射素子から出射させることにより、表示器と対向し、かつ表示器の左右方向で相違する各視点位置から互いに相違する画像を視認可能に複数の画像を表示可能に構成されかつ、反射素子において0次回折光を反射することにより、いずれかの1次回折光の透過率よりも、反射素子における回折光としての0次回折光の透過率の方が小さくなるように光反射部が構成されている。
【0014】
また、本発明に係る表示器では、反射素子における表示器の前面側の界面において0次回折光が全反射するように光反射部が構成されている。
【0015】
また、本発明に係る表示装置は、上記の表示器と、光源と、光源の点灯を制御して表示器に画像を表示させる制御部とを備えて構成されている。
【0016】
したがって、本発明に係る表示器および表示装置によれば、光反射部が0次回折光を十分に反射して表示器(表示装置)の前面側への0次回折光の出射を抑制するため、光回折部から出射された0次回折光の存在に起因して、いわゆるゴースト像が表示される事態を抑制して、鮮明な画像を表示させることができる。
【0017】
また、本発明に係る表示器によれば、1つの表示画素を表示するための各色光に対応して反射素子を設けると共に、1つの表示画素を表示するための各色光に対応する反射素子の光学材料および形状の少なくとも一方が互いに相違するように形成して光反射部を構成したことにより、0次回折光の存在に起因するゴースト像が表示される事態を抑制することができるだけでなく、光反射部から出射される各色の1次回折光の出射角度を同一角度に揃えることができるため、例えば光反射部を透過した光を表示器の上下方向に拡散するための拡散板を備えていない構成においても、カラー画像に上下方向の滲みが生じる事態を回避することができる。
【0018】
また、本発明に係る表示器によれば、1つの表示画素を表示するための各色光に対応して反射素子を設けると共に、1つの表示画素を表示するための各色光に対応する反射素子を、同一の光学材料で、かつ互いに等しい形状となるように形成して光反射部を構成したことにより、光反射部の設計および製造を容易に行うことができる結果、表示器の製造コストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】表示装置1(表示器2)の構成を示す構成図である。
【図2】表示装置1(1C)の表示器2(2C)および光源3(3C)と、画像の表示に際して出射される光L5との関係について説明するための平面図である。
【図3】表示器2(2C)における光路変更パネル12(12c)、回折格子パネル13(13c)、光反射パネル14(14c)および拡散板15や光源3(3C)の配置の関係について説明するための断面図である。
【図4】光源3の正面図である。
【図5】光路変更パネル12の正面図である。
【図6】回折格子パネル13の正面図である。
【図7】回折格子パネル13を斜め上方から見た斜視図である。
【図8】他の実施の形態に係る回折格子パネル13aの断面図である。
【図9】さらに他の実施の形態に係る回折格子パネル13bの断面図である。
【図10】光反射パネル14の正面図である。
【図11】光反射パネル14を側方から見た断面図である。
【図12】他の実施の形態に係る光反射パネル14aの断面図である。
【図13】さらに他の実施の形態に係る光反射パネル14bの断面図である。
【図14】拡散板15を側方から見た断面図である。
【図15】拡散板15におけるパネル面F5の法線L15と、回折格子パネル13における回折格子面F3に対する光L2の入射方向との関係について説明するための説明図である。
【図16】拡散板15におけるパネル面F5の法線L15と回折格子パネル13における回折格子面F3に対する光L2の入射方向との関係、および法線L15と回折格子面F3からの光L3の出射方向との関係について説明するための説明図であって、回折格子面F3、パネル面F5、法線L15、光L2,L3を図15における矢印Mの向きで見た図である。
【図17】拡散板15におけるパネル面F5の法線L15と回折格子パネル13における回折格子面F3に対する光L2の入射方向との関係、および法線L15と回折格子面F3からの光L3の出射方向との関係について説明するための他の説明図であって、回折格子面F3、パネル面F5、法線L15、光L2,L3を図15における矢印Nの向きで見た図である。
【図18】拡散板15におけるパネル面F5の法線L15と、回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13との関係について説明するための説明図であって、回折格子面F3、パネル面F5および法線L13,L15を図15における矢印Mの向きで見た図である。
【図19】拡散板15におけるパネル面F5の法線L15と、回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13との関係について説明するための他の説明図であって、回折格子面F3、パネル面F5および法線L13,L15を図15における矢印Nの向きで見た図である。
【図20】回折格子パネル13における各回折格子30の格子ラインについて説明するための説明図である。
【図21】回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13と、回折格子面F3に対する光L2の入射方向との関係について説明するための説明図である。
【図22】回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13と回折格子面F3に対する光L2の入射方向との関係、および法線L13と回折格子面F3からの光L3の出射方向との関係について説明するための説明図であって、回折格子面F3、パネル面F5、法線L13、光L2,L3を図21における矢印Mの向きで見た図である。
【図23】回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13と回折格子面F3に対する光L2の入射方向との関係、および法線L13と回折格子面F3からの光L3の出射方向との関係について説明するための他の説明図であって、回折格子面F3、パネル面F5、法線L13、光L2,L3を図21における矢印Nの向きで見た図である。
【図24】回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13と各凸部31の延在方向(実線La)との関係、および各凸部31の形成ピッチについて説明するための説明図である。
【図25】回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13と各凸部31の延在方向(実線La)との関係について説明するための他の説明図であって、回折格子面F3および各凸部31の延在方向を示す実線Laを図21に示す矢印Nの向きで見た図である。
【図26】回折格子パネル13における回折格子面F3の法線L13と回折格子面F3からの光L3の出射方向との関係について説明するための説明図である。
【図27】拡散板15におけるパネル面F5の法線L15と回折格子面F3からの光L3の出射方向との関係について説明するための説明図である。
【図28】回折格子パネル13からの+1次回折光L3b(−1次回折光L3c)と、光反射パネル14からの+1次回折光L3b(−1次回折光L3c)との関係について説明するための説明図であって、回折格子パネル13および光反射パネル14を図15,21,26,27に示す矢印Nの向きと同じ向きで見た図である。
【図29】回折格子パネル13からの0次回折光L3aと、光反射パネル14からの0次回折光L3aとの関係について説明するための説明図であって、回折格子パネル13および光反射パネル14を図15,21,26,27に示す矢印Nの向きと同じ向きで見た図である。
【図30】他の実施の形態に係る表示装置1C(表示器2Cおよび光源3C)の構成を示す構成図である。
【図31】光源3Cの正面図である。
【図32】光路変更パネル12cの正面図である。
【図33】回折格子パネル13cの正面図である。
【図34】光反射パネル14cの正面図である。
【図35】表示器2Cについて説明するための説明図である。
【図36】他の表示器2Cについて説明するための説明図である。
【図37】さらに他の表示器2Cについて説明するための説明図である。
【図38】図35に示す表示器2Cの画素E5における+1次回折光L3b(−1次回折光L3c)の透過率、および0次回折光L3aの透過率について説明するための説明図である。
【図39】図36に示す表示器2Cの画素E5における+1次回折光L3b(−1次回折光L3c)の透過率、および0次回折光L3aの透過率について説明するための説明図である。
【図40】図37に示す表示器2Cの画素E5における+1次回折光L3b(−1次回折光L3c)の透過率、および0次回折光L3aの透過率について説明するための説明図である。
【図41】他の実施形態に係る回折格子パネル13dの正面図である。
【図42】回折格子パネル13dにおける各回折格子30のうちの1つを拡大した正面図である。
【図43】さらに他の実施形態に係る回折格子パネル13e,13hの断面図である。
【図44】さらに他の実施形態に係る回折格子パネル13f,13iの断面図である。
【図45】さらに他の実施形態に係る回折格子パネル13g,13jの断面図である。
【図46】さらに他の実施形態に係る回折格子パネル13kの断面図である。
【図47】回折格子に対する入射光と、回折格子による+1次回折光、−1次回折光および0次回折光との関係について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る表示器および表示装置の実施の形態について説明する。
【0021】
図1〜3に示す表示装置1は、視差による立体視画像を表示可能に構成された3D表示装置(「表示器の左右方向で相違する各視点位置から互いに相違する画像を視認可能に複数の画像を表示可能に構成され」との構成の一例)であって、表示器2、光源3および制御部4を備えて構成されている。なお、実際の表示装置1では、一例として、表示装置1の前面側における左右81方向の各視点位置に対応して規定された81箇所の視差領域毎に、互いに相違する81種類の「横×縦=1920×1080画素」のRGBカラー画像を視認させることができるように構成されているが、「表示器」および「表示装置」の構成に関する理解を容易とするために、以下、左右81方向の各視点位置毎の各視差領域から、互いに相違する81種類の「横×縦=1920×1080画素」の単色画像において、互いに対応する81個の画素(表示画素)を視認させるための構成(81種類の単色画像からなる単色画像群における1つの表示画素群を表示するための構成)について説明する。
【0022】
この場合、光源3は、一例として、表示する立体視画像の各表示画素に対応して、平板状の基板の表面に複数の光出射部(LEDなど)が配列されて、全体として平板状に形成されている。また、光源3において、上記単色画像群のうちの1つの表示画素群(互いに対応する81個の表示画素の集合体)を表示させるための部位には、図4に示すように、「横×縦=9×9=81箇所」の光出射部10A1〜10I9(以下、区別しないときには「光出射部10」ともいう)が設けられている。すなわち、単色画像を表示させる構成のこの表示装置1における光源3では、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つにつき1つの光出射部10が設けられている。この光源3は、制御部4からの制御信号Sに従い、図3に示すように、一例として、そのパネル面F1(上記の基板の基板面と平行な面)に対して垂直で互いに平行な光L1を各光出射部10毎にそれぞれ出射する。
【0023】
一方、図1〜3に示すように、表示器2は、その背面側(図1,3における左側、図2における上側)から前面側(画像を視認する者が存在する側:図1,3における右側、図2における下側)に向かって、光路変更パネル12、回折格子パネル13、光反射パネル14および拡散板15がこの順で配置されて構成されている。なお、図3に示すように、この表示装置1では、一例として、上記の光源3におけるパネル面F1が、光路変更パネル12のパネル面F2、回折格子パネル13の各回折格子面F3、および拡散板15のパネル面F5に対して平行になるようにこれらが配置されている。
【0024】
光路変更パネル12は、光源3からの光L1の進行方向を変更する「光路変更部」であって、表示する立体視画像の各表示画素に対応してプリズム(光路変更素子)が設けられて、図2に示すように、全体として平板状に形成されると共に、光源3および回折格子パネル13の間に配設されている。この場合、図5に示すように、光路変更パネル12には、「横×縦=9×9=81箇所」のプリズム20A1〜20I9(以下、区別しないときには「プリズム20」ともいう)が並んで設けられている。すなわち、単色画像を表示させる構成の表示装置1における表示器2では、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つにつき1つのプリズム20が設けられて光路変更パネル12が構成されている。なお、本明細書において、「1つの光路変更素子」は、入射した光の光路を変更可能に構成された光学的要素(入射した光を屈折させる光学的要素)のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。
【0025】
また、本例の光路変更パネル12では、一例として、横方向で並ぶ9つのプリズム20の間に物理的な境界がなく、この9つのプリズム20が1つのプリズムのように一体的に連続して形成されている。以下、複数のプリズム20が一体的に連続して形成されたプリズムを「プリズム200」ともいう。すなわち、この光路変更パネル12では、横方向に長い9つのプリズム200−1〜200−9が縦方向で並んでいるように形成されている。この場合、「光路変更素子」をプリズムで構成を採用する場合において、一体的に連続して形成する「光路変更素子」の数は、「横方向に並ぶ9つ」に限定されず、1つの「光路変更素子」につき1つのプリズム20を独立して形成することもできるし、縦方向で並ぶ複数の「光路変更素子」を1つのプリズム200で構成することもできるし、横方向で並ぶ複数の「光路変更素子」、および縦方向で並ぶ複数の「光路変更素子」を1つのプリズム200で構成することもできる。
【0026】
また、図3に示すように、この表示器2では、光路変更パネル12における光源3との対向面(パネル面F2)が光源3のパネル面F1と平行に形成される(配置される)と共に、光路変更パネル12における回折格子パネル13との対向面に、下側ほど回折格子パネル13側に向かって徐々に突出する向きの斜面が形成されて各プリズム20(200)が構成されている(各プリズム20(200)における光源3との対向面(パネル面F2)に対して光L1が垂直に入射するように構成されている(配置されている))。なお、本例では、光路変更パネル12の前面(画像を視認する者が存在する側)に斜面を形成して「プリズム」として機能させる構成を採用しているが、光路変更パネル12の背面側(光源3との対向面側)に斜面を形成して「プリズム」として機能させる構成を採用することもできる(図示せず)。
【0027】
この場合、この光路変更パネル12では、上記の81個のプリズム20のすべて(すなわち、縦方向で並ぶ9つのプリズム200)が、同一の光学材料で、かつ互いに等しい形状となるように形成されている。具体的には、この光路変更パネル12では、各プリズム20(200)が同一種類の「光透過性を有する樹脂材料(一例として、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PET樹脂など)」で、そのプリズムの頂角の角度(図3に示す角度θp)がそれぞれ40°となるように形成されている。この光路変更パネル12は、光源3の各光出射部10から出射された光L1の進行方向を各プリズム20によって表示器2の縦方向(上下方向)に変更して、後述する回折格子パネル13の各回折格子面F3に対して光L2を斜めに入射させるように構成されている。この場合、「光路変更素子」をプリズム20(200)で構成したことにより、樹脂材料やガラス等によって「光路変更部」を容易に製造することができるため、表示器2の製造コストを十分に低減することが可能となっている。
【0028】
回折格子パネル13は、「光回折部」の一例であって、図3に示すように、光源3から出射されて光路変更パネル12によって光路を変更された光L2を回折して、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)を出射する。この場合、この回折格子パネル13においても、光L2の回折に際して0次回折光L3aが出射される。なお、以下の説明において、上記の0次回折光L3a、+1次回折光L3bおよび−1次回折光L3cを区別しないときには、光L3ともいう。この回折格子パネル13では、図6に示すように、上記単色画像群のうちの1つの表示画素群を表示させるための部位に、表示すべき立体視画像の表示画素に対応して、「横×縦=9×9=81個」の回折格子30A1〜30I9(以下、区別しないときには「回折格子30」ともいう)が形成されている(各表示画素毎に1つの回折格子が形成された構成の例)。
【0029】
なお、本明細書において、「1つの回折格子」は、入射した光を回折可能に構成された光学的要素のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。この場合、単色画像を表示させる構成の表示器2におけるこの回折格子パネル13では、上記の光源3における1つの光出射部10に対応して1つの回折格子30が規定されて、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つにつき1つの回折格子30が規定されている。なお、図6では、各回折格子30毎の格子の格子ラインを実際の格子の形成ピッチよりも広いピッチで図示している。この回折格子パネル13は、図7に示すように、各回折格子30毎に、光路変更パネル12からの光L2を予め規定された81方向にそれぞれ回折して出射するように構成されている。なお、図7では、光L2を回折して出射する方向をそれぞれ矢印で図示している。
【0030】
この場合、この回折格子パネル13は、図3に示すように、一例として、光路変更パネル12と対向する面(すなわち、回折格子パネル13の背面)に規定された各回折格子30の形成領域毎に平面視直線状の互いに平行な複数の凸部31、および平面視直線状の互いに平行な複数の凹部32が所定の形成ピッチで形成された凹凸パターン(格子パターン)が形成され、この凹凸パターンが位相型の回折格子30として機能して、光路変更パネル12からの光L2を予め規定された方向に回折するように構成されている。なお、本例では、回折格子パネル13の背面に形成した凹凸パターンを回折格子30として機能させる構成を採用しているが、回折格子パネル13の前面側(画像を視認する者が存在する側)に凹凸パターンを形成して回折格子として機能させる構成を採用することもできる(図示せず)。
【0031】
なお、本明細書では、回折格子パネル13における回折格子30を構成する各凸部31の突端面における幅方向(図3における上下方向)の各中心線を含む面(図3における各中心31oを含む面)を回折格子面F3とする。また、図8に示す回折格子パネル13aや、図9に示す回折格子パネル13bのように、凸部31の断面形状が上記の回折格子パネル13とは相違する場合においても、回折格子30を構成する各凸部31の突端面における幅方向の各中心線を含む面(同図における各中心31oを含む面)を回折格子面F3とする。さらに、以下の説明において、上記の中心線、または上記の中心線と平行な線分(図20等において実線Lbで示す線)を格子ラインともいう。
【0032】
この場合、図3に示すように、回折格子パネル13との対向面に、下側ほど回折格子パネル13側に向かって徐々に突出する向きの斜面が形成されて各プリズム20が構成された光路変更パネル12を有するこの表示器2では、光源3からの光L1が下向きに屈折させられて光L2として回折格子パネル13(各回折格子30の回折格子面F3)に入射させられる。したがって、この表示器2では、光路変更パネル12から出射された光L2の回折格子パネル13に対する入射位置が、光路変更パネル12に対する光L1の入射位置や、光路変更パネル12からの光L2の出射位置よりも下側に位置ずれする。このため、この表示器2では、光源3の各光出射部10や、光路変更パネル12の各プリズム20に対して回折格子パネル13の各回折格子30を下方に位置ずれさせるように配置する構成が採用されている。
【0033】
光反射パネル14は、「光反射部」の一例であって、回折格子パネル13から出射された+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)を透過させて拡散板15の側に出射すると共に、0次回折光L3aを反射して光反射パネル14の上下方向の端面、または、回折格子パネル13の側の面から出射することで0次回折光L3aの拡散板15の側への透過を抑制する。この光反射パネル14は、表示する立体視画像の各表示画素に対応してプリズム(「反射素子」の一例)が設けられて、図2に示すように、全体として平板状に形成されると共に、回折格子パネル13と拡散板15との間に配設されている。
【0034】
この場合、図10に示すように、光反射パネル14には、「横×縦=9×9=81箇所」のプリズム40A1〜40I9(以下、区別しないときには「プリズム40」ともいう)が並んで設けられている。すなわち、単色画像を表示させる構成の表示装置1における表示器2では、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つにつき1つのプリズム40が設けられて光反射パネル14が構成されている。なお、本明細書において、「1つの反射素子」は、入射した0次回折光L3aを反射可能に構成された光学的要素のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。
【0035】
また、この光反射パネル14では、一例として、横方向で並ぶ9つのプリズム40の間に物理的な境界がなく、この9つのプリズム40が1つのプリズムのように一体的に連続して形成されている。以下、複数のプリズム40が一体的に連続して形成されたプリズムを「プリズム400」ともいう。すなわち、この光反射パネル14では、横方向に長い9つのプリズム400−1〜400−9が縦方向で並んでいるように形成されている。この場合、「反射素子」をプリズムで構成を採用する場合において、一体的に連続して形成する「反射素子」の数は、「横方向に並ぶ9つ」に限定されず、1つの「反射素子」につき1つのプリズム40を独立して形成することもできるし、縦方向で並ぶ複数の「反射素子」を1つのプリズム400で構成することもできるし、横方向で並ぶ複数の「反射素子」、および縦方向で並ぶ複数の「反射素子」を1つのプリズム400で構成することもできる。
【0036】
また、図11に示すように、この光反射パネル14では、一例として、光反射パネル14における回折格子パネル13との対向面(界面F4a:「表示器の背面側の界面」の一例:同図における左側の面)に、上側ほど回折格子パネル13側に向かって徐々に突出する向きの斜面が形成されると共に、光反射パネル14における拡散板15との対向面(界面F4b:「表示器の前面側の界面」の一例:同図における右側の面)に、下側ほど拡散板15側に向かって徐々に突出する向きの斜面が形成されて各プリズム40(400)が構成されている。なお、図12に示す光反射パネル14aのように、回折格子パネル13との対向面(界面F4a)を回折格子パネル13の回折格子面F3と平行に形成すると共に、拡散板15との対向面(界面F4b)に、下側ほど拡散板15側に向かって徐々に突出する向きの斜面を形成してプリズム40(400)として機能させる構成を採用することもできる。また、図13に示す光反射パネル14bのように、回折格子パネル13との対向面(界面F4a)に、下側ほど回折格子パネル13側に向かって徐々に突出する向きの斜面を形成すると共に、拡散板15との対向面(界面F4b)に、下側ほど拡散板15側に向かって徐々に突出する向きの斜面を形成してプリズム40(400)として機能させる構成を採用することもできる。
【0037】
この光反射パネル14,14a,14bでは、上記の81個のプリズム40のすべて(すなわち、縦方向で並ぶ9つのプリズム400)が同一種類の光学材料(「光透過性を有する樹脂材料:一例として、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PET樹脂など)」で、かつ互いに等しい形状となるように形成されている。この場合、「反射素子」をプリズム40(400)で構成したことにより、樹脂材料やガラス等によって「光反射部」を容易に製造することができるため、表示器2の製造コストを十分に低減することが可能となっている。なお、光反射パネル14,14a,14bの各プリズム40(400)に対する光L3の入射角度や光反射パネル14からの光L3の出射(反射)角度と、上記の界面F4a,F4bの角度θa,θbや、光反射パネル14,14a,14bを構成する光学材料の屈折率との関係については、後に詳細に説明する。
【0038】
拡散板15は、「光透過パネル」の一例であり、光反射パネル14を透過した光L3を表示器2の上下方向に拡散させる「光拡散部」であって、一例として、光透過性を有する樹脂材料で平板状に形成されたレンチキュラレンズで構成されている。この拡散板15は、図14に示すように、一例として、横方向に長い複数の凸レンズが、その前面側(画像を視認する者が存在する側)に形成されている。また、この表示器2では、一例として、回折格子パネル13における回折格子30の1つ当りに複数の凸レンズが位置するように上記の凸レンズが形成されて拡散板15が構成されている。これにより、この表示器2では、光反射パネル14を透過した光L3が、拡散板15を透過して各凸レンズによって縦方向(上下方向)に拡散されて光L5として出射される。
【0039】
この場合、本明細書では、拡散板15において回折格子パネル13と対向する面(すなわち、拡散板15の背面)をパネル面F5とする。なお、「拡散板」については、凸レンズに代えて、凹レンズを形成して構成することもできる(図示せず)。また、その背面側(光反射パネル14と対向する面の側)に複数の凸レンズ、または、複数の凹レンズを形成して構成することもできる(図示せず)。この場合、背面側に凸レンズまたは凹レンズを形成する構成を採用した場合においては、その拡散板における前面をパネル面F5とする。
【0040】
この表示器2では、後述するように、光路変更パネル12のパネル面F2の法線、回折格子パネル13の各回折格子面F3の法線、および拡散板15のパネル面F5の法線と平行な向きに光源3の各光出射部10から光L1が出射されるように構成されている。また、この表示器2では、光源3から出射された光L1が、光路変更パネル12の各プリズム20によって縦方向(本例では下向き)に屈折されて光路変更パネル12から光L2として出射されて、図3に示すように、回折格子30の回折格子面F3に斜めに入射するように構成されている。さらに、本例では、+1次回折光L3bおよび−1次回折光L3cのいずれか一方が回折格子パネル13から出射しないように光路変更パネル12および回折格子パネル13が構成されている(以下、回折格子パネル13から+1次回折光L3b(「いずれかの1次回折光」の一例)が出射され、−1次回折光L3cが出射されないものとして説明する)。また、本例では、回折格子パネル13から出射されて界面F4aから光反射パネル14の各プリズム40に入射した0次回折光L3aが各プリズム40における界面F4bにおいて全反射され、これにより、0次回折光L3aが拡散板15の側に出射されない構成が採用されている。
【0041】
一方、制御部4は、表示器2に表示させるべき立体視画像の画像データに応じて光源3に制御信号Sを出力することにより、光源3における各光出射部10を、立体視画像の各表示画素の明るさに応じて点灯させる。なお、実際の表示装置1には、外部装置から出力された画像データや画像信号を処理する画像処理部等を備え、制御部4は、画像処理部によって処理されたデータや信号に基づいて表示器2に立体視画像を表示させるが、「表示器」および「表示装置」についての理解を容易とするために、表示器2、光源3および制御部4以外の構成要素に関する説明および図示を省略する。
【0042】
この表示装置1(表示器2)による立体視画像の表示に際しては、制御部4が光源3に制御信号Sを出力することにより、表示すべき立体視画像の各表示画素の明度に応じた明るさで各光出射部10を点灯させる。この際には、図3に示すように、光源3の各光出射部10から回折格子パネル13における各回折格子30の回折格子面F3の法線と平行な向きに出射された各光L1が、光路変更パネル12の各プリズム20を透過する際に屈折させられる。この結果、屈折させられた光L2が回折格子パネル13の回折格子面F3に対して斜めに入射する。また、回折格子パネル13(回折格子面F3)に入射した光L2は、各回折格子30によってそれぞれ回折されて、光L3(回折光)としてそれぞれ出射される。この際に、この表示装置1では、回折格子パネル13における各回折格子30が、各光L3を出射すべき方向に応じて、格子ラインの傾きや、凸部31の形成ピッチ等が規定されて形成されている。これにより、図7に示すように、各回折格子30からの光L3は、所定の間隔で左右81方向に放射状に拡がるように回折格子パネル13からそれぞれ出射される。
【0043】
この際に、この表示器2では、前述したように、光源3からの光L1が光路変更パネル12における各プリズム20によって屈折させられて、この光L2が回折格子パネル13の各回折格子30における回折格子面F3に対して斜めに入射するように、光路変更パネル12の光学的特性(材質や形状(プリズムの角度))や、光路変更パネル12と回折格子パネル13との相互間の位置関係が規定されて構成されている。したがって、この表示器2では、光路変更パネル12からの光L2が回折格子パネル13の回折格子30において回折されたときに、+1次回折光L3bの強度が十分に強くなると共に、図3に示すように、回折格子パネル13から光反射パネル14の側に−1次回折光L3cが出射されずに、+1次回折光L3bおよび0次回折光L3aだけが光反射パネル14の側に出射される。このため、この表示器2では、光源3からの光L1の利用効率が十分に向上すると共に、その光量が十分に多い+1次回折光L3bを、立体視画像を視認させるための光として使用することで、その+1次回折光L3bに対応する表示画素が十分に明るく視認されることとなる。
【0044】
また、回折格子パネル13から出射された+1次回折光L3bおよび0次回折光L3aのうち、+1次回折光L3bについては、光反射パネル14の各プリズム40(400)に対して界面F4aから入射し、各プリズム40(400)を透過して界面F4bから出射されて、拡散板15に入射する。これに対して、0次回折光L3aについては、光反射パネル14の界面F4aから各プリズム40(400)に入射して、界面F4bにおいて全反射する。また、界面F4bにおいて全反射された0次回折光L3aは、界面F4aに向かって進行し、一例として、界面F4aにおいても全反射される。このように、界面F4aから各プリズム40(400)に入射した0次回折光L3aは、界面F4b、および界面F4aにおいて順次全反射されて光反射パネル14内を進行させられて、最終的には、光反射パネル14内の上下方向の端部(或いは、左右方向の端部)から光反射パネル14の外部に出射される。
【0045】
なお、上記の例では、0次回折光L3aが、界面F4a,F4bにおける複数回の全反射を経て光反射パネル14内の上下方向(或いは、左右方向)の端部から出射される例を説明したが、各プリズム40(400)の光学的設計(界面F4a,F4bの角度θa,θbや、これらを構成する光学材料の屈折率)によっては、界面F4bにおける最初の全反射の後、または、界面F4aにおける最初の全反射の後に直ちに上下方向(或いは、左右方向)の端部から出射されたり、界面F4bに入射したときに、その一部が界面F4bから拡散板15の側に出射されたり、界面F4aに入射したときに、その一部が界面F4aから回折格子パネル13の側に出射されたりする。しかしながら、0次回折光L3aの少なくとも一部を各プリズム40(400)において反射することによって各プリズム40(400)における+1次回折光L3bの透過率よりも各プリズム40(400)における0次回折光L3aの透過率の方が小さくなるように構成された光反射パネル14を備えているこの表示器2では、回折格子パネル13から出射される0次回折光L3aに起因するゴースト像が存在しない、或いは、ゴースト像が視認され難い鮮明な画像が視認されることとなる。
【0046】
一方、光反射パネル14から出射された+1次回折光L3bは、図3,14に示すように、拡散板15を構成するレンチキュラレンズによって縦方向に拡散されて、両図および図2に示すように、表示器2(表示装置1)の前方に向かって光L5として出射される。これにより、左右81方向の各視差領域毎に縦方向(上下方向)における視域が拡がり、表示装置1の前方における左右81方向の各位置毎に、縦方向の所定の高さ範囲内において、各視点位置に対応する画像(各光L5を表示画素とする画像)が視認される。
【0047】
したがって、画像を視認する者の左目および右目が互いに相違する視差領域(視点位置)に位置している状態では、左目によって視認される視差画像と、右目によって視認される視差画像とが視差領域の位置に応じて相違しているため、表示されている画像が立体視画像として認識される(両眼視差によって立体視画像として認識される)。また、画像を視認する者が表示装置1(表示器2)に表示されている画像を視認しながら、図2に示す矢印A1,A2の向き(左右方向)で各視差領域(各視点位置)に順次移動することにより、表示装置1(表示器2)に表示されている画像が、運動視差によって立体視画像として認識される。
【0048】
次に、上記の表示器2における回折格子パネル13の回折格子面F3および拡散板15のパネル面F5と、光路変更パネル12からの光L2および回折格子パネル13によって回折された光L3との関係、および光反射パネル14の各プリズム40(400)に対する光L3の入射角と、各プリズム40(400)の界面F4a,F4bの角度θa,θbやプリズム40(400)の屈折率と、プリズム40(400)からの0次回折光L3aおよび+1次回折光L3bの出射角との関係について、図面を参照しつつ説明する。
【0049】
なお、光反射パネル14の各プリズム40(400)による光L3の透過や反射についての理解を容易とするために、まず、上記の表示器2における光反射パネル14が存在しない構成の表示器(以下、上記の表示器2と区別するために、光反射パネル14が存在しない表示器を「表示器2A」ともいう)を想定して説明し、その後に、光反射パネル14(プリズム40(400))の存在によって光L3(+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)や0次回折光L3a)がどのように光路変更されるかについて説明する。したがって、図15,21,26,27等においては、光反射パネル14(界面F4a,F4b)の図示を省略する。また、拡散板15を備えて構成された表示器2,2Aを例に挙げて説明するが、「拡散板(光拡散部)」以外の「光透過パネル」を備えて構成された表示器においては、その表示器における「光透過パネル」や「光透過パネル面」が、以下の説明における「拡散板15」や「パネル面F5」に相当する。
【0050】
この表示器2Aでは、拡散板15におけるパネル面F5の法線L15と、回折格子パネル13における各回折格子30の回折格子面F3に入射する光L2の入射方向とのなす角度におけるX成分(拡散板15における左右方向に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、光L2の入射方向がパネル面F5に対して斜め右向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L2の入射方向がパネル面F5に対して斜め左向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「αX(図15,16参照)」とし、
拡散板15におけるパネル面F5の法線L15(光透過パネルにおける光透過パネル面の法線)と、回折格子パネル13における各回折格子30の回折格子面F3に入射する光L2の入射方向とのなす角度におけるY成分(拡散板15における縦方向(上下方向)に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、光L2の入射方向がパネル面F5に対して斜め下向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L2の入射方向がパネル面F5に対して斜め上向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「αY(図15,17参照)」とし、
パネル面F5の法線L15に対する回折格子面F3の法線L13の傾き角におけるX成分(拡散板15における左右方向に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、回折格子面F3の法線L13がパネル面F5に対して斜め左向きに交差する状態の角度をプラスとし、回折格子面F3の法線L13がパネル面F5に対して斜め右向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「γX(図18参照)」とし、
パネル面F5の法線L15に対する回折格子面F3の法線L13の傾き角におけるY成分(拡散板15における縦方向(上下方向)に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、回折格子面F3の法線L13がパネル面F5に対して斜め上向きに交差する状態の角度をプラスとし、回折格子面F3の法線L13がパネル面F5に対して斜め下向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「γY(図19参照)」とし、
回折格子30における各格子の回折格子面F3内におけるペリスト回転角(光L2が入射する側の面から見たときに、各格子の格子ライン(図20において実線Lbで示すライン)が水平の状態(図20において実線Lcで示すラインと平行な状態)を0度とし、各格子の格子ラインが左下がりとなる回転角をプラスとし、各格子の格子ラインが右下がりとなる回転角をマイナスとする角度)を「ε(図20参照)」としたときに、
回折格子面F3の法線L13と、回折格子面F3に入射する光L2の入射方向とのなす角度におけるx成分(回折格子30における各格子の格子ラインの延在方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F3においては、左右方向)に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、回折格子面F3に対して光L2が斜め右向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F3に対して光L2が斜め左向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をマイナスとする角度)である「αx(図21,22参照)」、および、回折格子面F3の法線L13と、回折格子面F3に入射する光L2の入射方向とのなす角度におけるy成分(回折格子30における各格子の格子ラインに対して回折格子面F3内において直交する方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F3においては、下方向)に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、回折格子面F3に対して光L2が斜め下向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F3に対して光L2が斜め上向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に入射する状態の角度をマイナスとする角度)である「αy(図21,23参照)」は、次の2つの式で表される。
【0051】
αx=tan−1(tan(αX+γX)・cosε)+tan−1(tan(αY+γY)・sin(−ε))
αy=tan−1(tan(αX+γX)・sinε)+tan−1(tan(αY+γY)・cosε)
【0052】
また、回折光の次数を「n」とし、光L1の波長を「λ」とし、回折格子30の格子間隔(回折格子30における格子の形成ピッチ:この例では、凸部31の形成ピッチ)を「d(図24参照)」とし、
回折格子面F3の法線L13に対する各凸部31の延在方向(図24において実線Laで示す方向)の傾き角におけるy成分(回折格子30における各格子の格子ラインに対して回折格子面F3内において直交する方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F3においては、上下方向)に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、回折格子面F3に対して凸部31の延在方向が斜め上向きで交差する状態の角度をプラスとし、回折格子面F3に対して凸部31の延在方向が斜め下向きで交差する状態の角度をマイナスとする角度)を「δy(図24,25参照)」としたときに、
回折格子面F3の法線L13と、回折格子面F3から出射する光L3の出射方向とのなす角度におけるx成分(回折格子30における各格子の格子ラインの延在方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F3においては、左右方向)に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、回折格子面F3から斜め左向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L3が出射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F3から斜め右向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L3が出射する状態の角度をマイナスとする角度)である「βx(図26,22参照)」、および、回折格子面F3の法線L13と、回折格子面F3から出射する光L3の出射方向とのなす角度におけるy成分(回折格子30における各格子の格子ラインに対して回折格子面F3内において直交する方向(ペリスト回転角が0度の回折格子30が形成された回折格子面F3においては、上下方向)に対応する成分であって、光L2が入射する側の面から見たときに、回折格子面F3から斜め上向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L3が出射する状態の角度をプラスとし、回折格子面F3から斜め下向き(ペリスト回転角が0度の回折格子30の場合の方向)に光L3が出射する状態の角度をマイナスとする角度)である「βy(図26,23参照)」は、次の2つの式で表される。
【0053】
βx=−αx
βy=sin−1{(nλ−d・sinαy)/d}
【0054】
なお、上記の2つの式から明らかなように、回折格子面F3の法線L13と回折格子面F3から出射する光L3の出射方向とのなす角度におけるx成分である「βx」や、回折格子面F3の法線L13と回折格子面F3から出射する光L3の出射方向とのなす角度におけるy成分である「βy」は、回折格子面F3の法線L13に対する各凸部31の延在方向の傾き角におけるy成分である「δy」に依存しない。
【0055】
また、パネル面F5の法線L15と、回折格子面F3から出射する光L3の出射方向とのなす角度におけるX成分(拡散板15における左右方向に対応する成分であって、光L3が拡散板15に向かって入射する側の面から見たときに、光L3の出射方向が拡散板15に対して斜め左向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L3の出射方向が拡散板15に対して斜め右向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)である「βX(図27,16参照)」、および、パネル面F5の法線L15と、回折格子面F3から出射する光L3の出射方向とのなす角度におけるY成分(拡散板15における縦方向(上下方向)に対応する成分であって、光L3が拡散板15に入射する側の面から見たときに、光L3の出射方向が拡散板15に対して斜め上向きに交差する状態の角度をプラスとし、光L3の出射方向が拡散板15に対して斜め下向きに交差する状態の角度をマイナスとする角度)である「βY(図27,17参照)」は、次の2つの式で表される。
【0056】
βX=tan−1(tanβx・cosε)+tan−1(tanβy・sinε)+γX
βY=tan−1(tanβx・sin(−ε))+tan−1(tanβy・cosε)+γY
【0057】
したがって、表示器2A(2)の設計に際しては、上記の「βX」および「βY」が所望の角度となるように、上記の6つの式に基づき、光路変更パネル12によって屈折させた光L2(回折格子パネル13に入射させる光L2)の「λ」に応じて、「αX」、「αY」、「ε」、「d」、「γX」、「γY」を適宜調整すればよい。この場合、「αy」の絶対値が0°よりも大きくなるほど、−1次回折光L3c(または、+1次回折光L3b)が減少し、後述する条件を満たすと出射しなくなる。また、−1次回折光L3c(または、+1次回折光L3b)の減少に伴って+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)が増加する。
【0058】
なお、図15〜17,21〜23,26,27では、上記の各説明事項における「X成分」、「Y成分」、「x成分」および「y成分」等について理解を容易とするために、回折格子面F3に対する光L2の入射方向と、回折格子面F3からの光L3の出射方向やパネル面F5に対する光L3の入射方向との関係を、表示器2A内における実際の光の進路とは相違する状態で図示している。また、図15〜17,21〜23,26,27では、一例として「ペリスト回転角ε≠0°」で、かつ「パネル面F5の法線L15に対する回折格子面F3の法線L13の傾き角が0°(γX=0°、γY=0°)」の例を図示している。
【0059】
一方、前述したように、表示器2は、回折格子パネル13と拡散板15との間に光反射パネル14が配設されている。したがって、上記の表示器2Aにおいて回折格子パネル13から出射された光L3は、拡散板15に入射するのに先立って、光反射パネル14に入射させられることとなる。具体的には、回折格子パネル13から出射された+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)は、回折格子パネル13と光反射パネル14との間の層(一例として、空気の層)を通過して光反射パネル14の界面F4aに入射し、光反射パネル14を透過した後に、界面F4bから光反射パネル14と拡散板15との間の層(一例として、空気の層)に出射されて拡散板15に入射することとなる。一方、前述したように、回折格子パネル13に光路変更パネル12からの光L2が入射したときには、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)だけでなく、0次回折光L3aが回折格子パネル13から出射される。
【0060】
この場合、上記の界面F4a,F4bのように屈折率が相違する物質(気体、液体、固体)が接する面においては、その面(界面)において光の屈折が生じる。具体的には、界面に対する光の入射角を「θi」とし、界面からの光の出射角を「θo」とし、界面の入射側の物質の屈折率を「ni」とし、界面の出射側の物質の屈折率を「no」としたときには、「ni・sinθi=no・sinθo」との式が成り立つ。
【0061】
このため、図28,29に示すように、回折格子面F3から出射する光L3の出射方向と、パネル面F5の法線L15とのなす角度におけるY成分を「βY(表示器2Aとして説明した「βY」と同一方向)」とし、
光反射パネル14におけるプリズム40(400)の界面F4aの法線L14aと、拡散板15のパネル面F5の法線L15とのなす角度におけるY成分を「θa」とし、
光反射パネル14におけるプリズム40(400)の界面F4bの法線L14bと、パネル面F5の法線L15とのなす角度におけるY成分を「θb」とし、
界面F4aの法線L14aと、界面F4aに入射する光L3の入射方向とのなす角度におけるY成分を「θ1」とし、
界面F4aからプリズム40(400)に入射して界面F4bに向かう光の進行方向と、界面F4aの法線L14aとのなす角度におけるY成分を「θ2」とし、
界面F4aからプリズム40(400)に入射して界面F4bに向かう光の進行方向と、界面F4bの法線L14bとのなす角度におけるY成分を「θ3」とし、
界面F4bの法線L14bと、界面F4bから出射する光L3の出射方向とのなす角度におけるY成分を「θ4」とし、
回折格子パネル13と光反射パネル14との間の層の屈折率を「n1」とし、
プリズム40(400)を構成する光学材料の屈折率を「n2」とし、
光反射パネル14と拡散板15との間の層の屈折率を「n3」としたときに、
パネル面F5の法線L15と、光L3の出射方向とのなす角度におけるY成分は「θ4」+「θb」であるため、このY成分「βY」は、次の式で表される。
【0062】
βY=sin−1((sin((sin−1((sin(βY‐θa))n1/n2))−θb+θa))n2/n3)+θb
【0063】
したがって、表示器2の設計に際しては、光反射パネル14から出射させるべき光L3(+1次回折光L3b、または、−1次回折光L3c)が拡散板15に対して入射する所望の角度の「βY」となるように、前述した「αX」、「αY」、「ε」、「d」、「γX」、「γY」に加えて、上記の式に基づき、「θa」、「θb」、「n1」、「n2」、「n3」を適宜調整すればよい。
【0064】
また、0次回折光L3aの存在によるゴースト像が表示されないようにするには、0次回折光L3aを光反射パネル14から出射させず、光反射パネル14の各プリズム40(400)における界面F4bにおいて全反射させればよい。この場合、界面F4bや、界面F4aのような界面において光の全反射が発生する条件は、「ni>no」の条件下において、「θi>sin−1(no/ni)」との条件式が成り立つときである。また、光反射パネル14において「ni>no」との条件を満たすのは、界面F4bである。したがって、この界面F4bにおいて界面F4aからプリズム40(400)に入射した光を全反射するには、「θi=θ3」、「no=n3」、「ni=n2」として、次の条件式を満たすように光反射パネル14(プリズム40(400))を設計・製造すればよいこととなる。
【0065】
sin−1((sin(αY+θa))n1/n2)+θb−θa>sin−1(n3/n2)
【0066】
続いて、表示装置1によってカラー画像を表示するための構成について、図面を参照して説明する。
【0067】
なお、上記の単色画像を表示するための表示装置1の構成と区別するために、カラー画像を表示可能な表示装置1については、表示装置1Cという。また、表示装置1Cにける表示器2および光源3については、表示装置1における表示器2および光源3と区別するために、表示器2Cおよび光源3Cという。さらに、表示器2Cにおける光路変更パネル12、回折格子パネル13および光反射パネル14については、単色画像表示用の表示器2における光路変更パネル12、回折格子パネル13および光反射パネル14と区別するために、光路変更パネル12c、回折格子パネル13cおよび光反射パネル14cという。また、その他の構成要素において単色画像表示用の表示装置1と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0068】
この種の表示装置によってカラー画像を表示させる場合には、カラー画像を構成する各表示画素毎に、複数の色光(一例として、R=Red =赤色、G=Green =緑色、B=Blue=青色の3色の色光:以下、単に「R,G,B」ともいう)を合成することによって各表示画素の色を任意の色として視認させる。この場合、1つの表示画素を表示するためのR,G,Bの各色光を同一のプリズムに対して同一の方向で入射させたときには、光屈折現象の波長依存性に起因して、波長λが相違する各色光毎にプリズムからの出射角度や界面における反射角度が相違する状態となる。また、1つの表示画素を表示するためのR,G,Bの各色光を同一の回折格子における回折格子面に対して同一の方向で入射させたときには、回折現象の波長依存性に起因して、波長λが相違する各色光の回折角度が相違する状態(すなわち、回折格子面からの回折光の出射角度が相違する状態)となる。
【0069】
このため、1つの表示画素として視認されるべきR,G,B各色の+1次回折光(または、−1次回折光)が互いに相違する向きに出射される結果、そのような表示画像で構成される画像を見たときに、色滲みが生じた状態に視認されるおそれがある。また、表示装置から遠く離れた位置においては、1つの表示画素として視認されるべきR,G,B各色の+1次回折光(または、−1次回折光)のうちのいずれか一色分だけしか視認できない状態となり、このような状態においては、カラー画像を表示させているにも拘わらず、赤色の単色画像、緑色の単色画像、または青色の単色画像として視認される事態を招くおそれもある。
【0070】
この場合、「光回折部からの各色光」を「光拡散部」によって縦方向に拡散させる構成の「表示器(表示装置)」では、「光回折部」から出射される各色光の出射角度や、「光反射部」から出射される各色光の出射角度が縦方向(上下方向)においてある程度相違したとしても、表示画像の視認に与える影響は殆どないが、「光回折部」から出射される各色光の出射角度が横方向(左右方向)で相違する場合には、上記したような問題が生じるおそれがある。このため、カラー画像の表示に際しては、各表示画素を構成する各色光が左右方向において実質的に同一方向に向けて出射されるように表示器を構成する必要がある。また、「光拡散部」を備えていない「表示器(表示装置)」においてカラー画像を表示する際には、各表示画素を構成する各色光が左右方向および上下方向の両方向において実質的に同一方向に向けて出射されるように構成する必要がある。
【0071】
したがって、図30に示す表示装置1C(表示器2C)では、一例として、光路変更パネル12cを構成する各プリズム20の形状または材質を、屈折させるべき(進行方向を変更すべき)色光の波長に応じて互いに相違させると共に、光反射パネル14cを構成する各プリズム40の形状または材質を、屈折させるべき(反射すべき)色光の波長に応じて互いに相違させ、かつ、各回折格子30を構成する各凸部31の形成ピッチを、回折すべき色光の波長に応じて互いに相違させることにより、上記の色滲みに関する問題点を克服している。なお、実際の表示装置1Cにおける表示器2Cでは、一例として、表示装置1Cの前面側における左右81方向の各視点位置毎の各視差領域から、各方向に応じて互いに相違する81種類の「横×縦=1920×1080画素」のRGBカラー画像を視認させることができるよう構成されているが、表示装置1Cや表示器2Cの構成についての理解を容易とするために、左右81方向の各視点位置毎の各視差領域用のRGBカラー画像のうちの1つの表示画素を視認させるための構成について説明する。
【0072】
この場合、光源3Cは、一例として、図31に示すように、光L1R(赤色の色光)を出射する光出射部10(光出射部10A1R〜10I9R:赤色のサブピクセル:以下、これらを区別しないときには「光出射部10R」ともいう)、光L1G(緑色の色光)を出射する光出射部10(光出射部10A1G〜10I9G:緑色のサブピクセル:以下、これらを区別しないときには「光出射部10G」ともいう)、および光L1B(青色の色光)を出射する光出射部10(光出射部10A1B〜10I9B:青色のサブピクセル:以下、これらを区別しないときには「光出射部10B」ともいう)がこの順で縦方向(上下方向)に並んで設けられ、1つの光出射部10R、1つの光出射部10Gおよび1つの光出射部10Bによって、カラー画像を構成する1つの表示画素(以下、「カラー表示画素」ともいう)を視認させるための各色光を出射するように構成されている。すなわち、この光源3Cでは、1つのカラー画像を構成する各表示画素のうちの1つを構成する各色の副画素(サブピクセル)毎に1つの光出射部10(光出射部10R,10G,10Bのいずれか)が設けられている。
【0073】
なお、同図、および後に参照する図32〜34では、赤色(R)に関連する要素については「R」の符号を付し、緑色(G)に関連する要素については「G」の符号を付し、青色(B)に関連する要素については「B」の符号を付して図示している。また、以下の説明において、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)を区別して説明する必要があるときには、符号の末尾に「R」「G」「B」を付して説明する。なお、この光源3Cでは、1つの表示画素を視認させるための各色光を出射する光出射部10R,10G,10Bが縦方向(上下方向)に隣接するように配置されているが、光路変更パネル12cにおける各光L1R,L1G,L1B用のプリズム20の位置や、回折格子パネル13cにおける各光L1R,L1G,L1B用の各回折格子30の位置を、各光出射部10R,10G,10Bの位置に合わせて配置することで、1つの表示画素を視認させるための各色光を出射する光出射部10R,10G,10Bを任意の位置に配置することもできる(図示せず)。
【0074】
光路変更パネル12cは、図32に示すように、一例として、光源3Cにおける各光出射部10Rから出射された光L1Rの進行方向を変更して(光L1Rを屈折させて)光L2Rとして出射するプリズム20(プリズム20A1R〜20I9R:以下、これらを区別しないときには「プリズム20R」ともいう)、各光出射部10Gから出射された光L1Gの進行方向を変更して(光L1Gを屈折させて)光L2Gとして出射するプリズム20(プリズム20A1G〜20I9G:以下、これらを区別しないときには「プリズム20G」ともいう)、および各光出射部10Bから出射された光L1Bの進行方向を変更して(光L1Bを屈折させて)光L2Bとして出射するプリズム20(プリズム20A1B〜20I9B:以下、これらを区別しないときには「プリズム20B」ともいう)がこの順で縦方向(上下方向)に並んで設けられ、1つのプリズム20R、1つのプリズム20Gおよび1つのプリズム20Bによって、1つのカラー表示画素を視認させるための各色光の進行方向をそれぞれ変更するように構成されている(1つの表示画素を表示するための各色光毎に1つの光路変更素子としてのプリズムが形成された構成の例)。すなわち、この光路変更パネル12cでは、一例として、1つのカラー画像を構成する各表示画素をそれぞれ構成する各色の副画素(9×9×3=243の副画素)の1つにつき1つのプリズム20が設けられている。
【0075】
この場合、この光路変更パネル12cでは、横方向に並ぶ9個のプリズム20Rの間に物理的な境界がなく、この9個のプリズム20Rが1つのプリズムのように一体的に連続して形成されると共に、横方向に並ぶ9個のプリズム20Gの間に物理的な境界がなく、この9個のプリズム20Gが1つのプリズムのように一体的に連続して形成され、かつ、横方向に並ぶ9個のプリズム20Bの間に物理的な境界がなく、この9個のプリズム20Bが1つのプリズムのように一体的に連続して形成されている。つまり、この光路変更パネル12cでは、横方向に長い9つのプリズム200−1R〜200−9R、横方向に長い9つのプリズム200−1G〜200−9G、および横方向に長い9つのプリズム200−1B〜200−9Bが縦方向(上下方向)で並んでいるように形成されている。
【0076】
また、この光路変更パネル12cでは、上記の光屈折現象の波長依存性に関する問題点を克服するために、同一の光学材料(一例として、光L1Rに対する屈折率が1.514で、光L1Gに対する屈折率が1.519で、光L1Bに対する屈折率が1.523の光学材料)を用いて各プリズム20R,20G,20Bが形成されると共に、プリズム20Rの形状(プリズムの角度)、プリズム20Gの形状(プリズムの角度)、およびプリズム20Bの形状(プリズムの角度)が互いに相違する状態に形成されている。具体的には、この光路変更パネル12cは、光L1Rの進行方向を変更するプリズム20Rのプリズムの頂角の角度θp(図3参照)が34.8°で、光L1Gの進行方向を変更するプリズム20Gのプリズムの頂角の角度θpが34.6°で、光L1Bの進行方向を変更するプリズム20Bのプリズムの頂角の角度θpが34.4°となるように各プリズム20R,20G,20Bが光透過性を有する樹脂材料で形成されている。
【0077】
これにより、この光路変更パネル12cでは、プリズム20Rからの光L2Rの出射角度、プリズム20Gからの光L2Gの出射角度、およびプリズム20Bからの光L2Bの出射角度が、いずれも25.0°となり、光L2R,L2G,L2Bの光路変更パネル12cからの出射角度が互いに等しくなっている。この場合、光L2R,L2G,L2Bの出射角度は、前述した「αY」に等しくなるため、光L2R,L2G,L2Bの「αY」が互いに等しくなっている(すなわち、回折格子パネル13cにおける各回折格子30への光L2R,L2G,L2Bの入射角度が互いに等しくなっている)。なお、上記の光路変更パネル12cにおける各プリズム20の構成に代えて、光L1Rの進行方向を変更するプリズム20Rを構成する光学材料、光L1Gの進行方向を変更するプリズム20Gを構成する光学材料、および光L1Bの進行方向を変更するプリズム20Bを構成する光学材料をそれぞれ相違させる(各色光の波長に対する屈折率が互いに等しくなるように、光学材料を互いに相違させる)ことにより、光L2R,L2G,L2Bの「αY」を互いに等しくする(回折格子パネル13cにおける各回折格子30への光L2R,L2G,L2Bの入射角度が互いに等しくする)構成を採用することもできる(図示せず)。
【0078】
回折格子パネル13cは、図33に示すように、光L2Rを回折するための回折格子30(回折格子30A1R〜30I9R:以下、これらを区別しないときには「回折格子30R」ともいう)、光L2Gを回折するための回折格子30(回折格子30A1G〜30I9G:以下、これらを区別しないときには「回折格子30G」ともいう)、および光L2Bを回折するための回折格子30(回折格子30A1B〜30I9B:以下、これらを区別しないときには「回折格子30B」ともいう)がこの順で縦方向(上下方向)に並んで設けられ、1つの回折格子30R、1つの回折格子30Gおよび1つの回折格子30Bによって、1つのカラー表示画素を視認させるための各色光をそれぞれ回折するように構成されている(1つの表示画素を表示するための各色光毎に1つの回折格子が形成された構成の例)。
【0079】
なお、前述したように、本明細書において、「1つの回折格子」とは、入射した光を回折可能に構成された光学的要素のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。したがって、この回折格子パネル13cでは、上記の光源3Cにおける1つの光出射部10(光出射部10R,10G,10Bのいずれか)に対応して1つの回折格子30(回折格子30R,30G,30Bのいずれか)が規定されて、1つのカラー画像を構成する各表示画素のうちの1つを構成する各色の副画素毎に1つの回折格子30(回折格子30R,30G,30Bのいずれか)が規定されている。
【0080】
また、本例の表示器2Cでは、1つのカラー表示画素を視認させるための各色光を拡散板15から左右方向において同じ向きに出射するために、拡散板15のパネル面F5に対する回折格子面F3の傾きを互いに等しくした状態(この例では、各回折格子面F3をパネル面F5に対して平行にした状態)において、1つのカラー表示画素を表示するための各色光(光L2)をそれぞれ回折する回折格子30R,30G,30Bについて、波長λが短い光L2を回折する回折格子30における格子の形成ピッチd(凸部31の形成ピッチd)よりも、波長λが長い光L2を回折する回折格子30における格子の形成ピッチd(凸部31の形成ピッチd)の方が大きくなるように回折格子パネル13cが形成されている。
【0081】
具体的には、格子の形成ピッチd(凸部31の形成ピッチd)については、光L2Bよりも波長λが長い光L2Gを回折する回折格子30Gの方が回折格子30Bよりも大きくなり、かつ、光L2Gよりも波長λが長い光L2Rを回折する回折格子30Rの方が回折格子30Gよりも大きくなるように回折格子30R,30G,30Bを形成する。より具体的には、この回折格子パネル13cでは、「波長λ=633nm」の光L2Rを回折する回折格子30Rにおける格子が「形成ピッチd=633nm」で、「波長λ=532nm」の光L2Gを回折する回折格子30Gにおける格子が「形成ピッチd=532nm」で、「波長λ=472nm」の光L2Bを回折する回折格子30Bにおける格子が「形成ピッチd=472nm」となっている(「各回折格子における格子の形成ピッチが、回折すべき光の波長λと等しい構成」の例)。このような構成を採用することにより、回折格子パネル13cを容易に設計することができる。
【0082】
光反射パネル14cは、図34に示すように、一例として、プリズム40A1R〜40I9R(以下、これらを区別しないときには「プリズム40R」ともいう)、プリズム40A1G〜40I9G(以下、これらを区別しないときには「プリズム40G」ともいう)、およびプリズム40A1B〜40I9B(以下、これらを区別しないときには「プリズム40B」ともいう)がこの順で縦方向(上下方向)に並んで設けられ、1つのプリズム40R、1つのプリズム40Gおよび1つのプリズム40Bによって、1つのカラー表示画素を視認させるための各色光の進行方向をそれぞれ変更するように構成されている(1つの表示画素を表示するための各色光毎に1つの反射素子としてのプリズムが形成された構成の例)。すなわち、この光反射パネル14cでは、一例として、1つのカラー画像を構成する各表示画素をそれぞれ構成する各色の副画素(9×9×3=243の副画素)の1つにつき1つのプリズム40が設けられている。
【0083】
この場合、プリズム40R,40G,40Bは、回折格子パネル13cの回折格子30Rから出射されて界面F4aから入射した各色の+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)を拡散板15の側に向かって透過させて界面F4bから出射すると共に、回折格子30R,30G,30Bから出射されて界面F4aから入射した各色の0次回折光L3aを界面F4bにおいて反射する(一例として、界面F4bに対する最初の入射時に全反射する)ことで、前述した単色画像用の光反射パネル14(プリズム40)と同様にして、各色の0次回折光L3aの拡散板15の側への透過を抑制するように構成されている。なお、以下の説明においては、赤色の+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)や赤色の0次回折光L3aを総称して「光L3R」ともいい、緑色の+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)や緑色の0次回折光L3aを総称して「光L3G」ともいい、青色の+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)や青色の0次回折光L3aを総称して「光L3B」ともいう。
【0084】
また、この光反射パネル14cでは、横方向に並ぶ9個のプリズム40Rの間に物理的な境界がなく、この9個のプリズム40Rが1つのプリズムのように一体的に連続して形成されると共に、横方向に並ぶ9個のプリズム40Gの間に物理的な境界がなく、この9個のプリズム40Gが1つのプリズムのように一体的に連続して形成され、かつ、横方向に並ぶ9個のプリズム40Bの間に物理的な境界がなく、この9個のプリズム40Bが1つのプリズムのように一体的に連続して形成されている。つまり、この光反射パネル14cでは、横方向に長い9つのプリズム400−1R〜400−9R、横方向に長い9つのプリズム400−1G〜400−9G、および横方向に長い9つのプリズム400−1B〜400−9Bが縦方向(上下方向)で並んでいるように形成されている。なお、光反射パネル14cによる0次回折光L3aの反射や、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)の透過に関する理解を容易とするために、一例として、プリズム40R,40G,40Bのθaが0°(前述した光反射パネル14aにおけるプリズム40のように、界面F4aがパネル面F5等と平行な構成)の例について説明する(各プリズム40R,40G,40Bの屈折率や角度θa,θbについては、後に具体的に説明する)。
【0085】
この表示装置1C(表示器2C)では、光源3Cから出射されて光路変更パネル12cによって屈折させられた光L2を各回折格子30によって回折して左右81方向に振り分けると共に、各回折格子30によって左右方向に振り分けられた光L3のうち、光反射パネル14cの各プリズム40(400)における界面F4bにおいて0次回折光L3aを反射すると共に、光反射パネル14cを透過させた+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)を界面F4bから出射して、拡散板15によって縦方向(上下方向)に拡散させることで、左右81方向の各視差領域毎に縦方向(上下方向)における視域を拡げる構成(左右方向においては、互いに相違する視差画像が視認され、縦方向においては、同一の視差画像が視認されるように表示させる構成)が採用されている。具体的な例を図35〜37に示す。なお、図35〜37では、81個のカラー表示画素A1〜I9のうちのカラー表示画素A1,C3,E5,G7,I9の5つのみに関する各種パラメータを図示している。また、図35〜37に示す各例では、光反射パネル14cを構成する各プリズム40R,40G,40Bの形状(角度θb)が相違するだけで、他の構成要素については、同様の構成が採用されている。また、図35〜37における「βx」、「βy」、「βX」、「βY」および「βY」は、「+1次回折光L3bの出射角度」を示している。
【0086】
具体的には、図35に示す表示装置1C(表示器2C)の光反射パネル14cでは、同一の光学材料(一例として、プリズム20R,20G,20Bを構成する光学材料と同一の材料で、光L3Rに対する屈折率が1.514で、光L3Gに対する屈折率が1.519で、光L3Bに対する屈折率が1.523の光学材料)を用いて各プリズム40R,40G,40Bが形成されると共に、プリズム40R,40G,40Bの各形状(プリズムの角度)が互いに相違する状態に形成されている。具体的には、この光反射パネル14cは、プリズム40Rの上記の角度θa,θbがそれぞれ0.0°および28.0°で、プリズム40Gの上記の角度θa,θbがそれぞれ0.0°および27.8°で、プリズム40Bの上記の角度θa,θbがそれぞれ0.0°および27.6°となるように各プリズム40R,40G,40Bが光透過性を有する樹脂材料で形成されている。以下、画素E5に対応する光について説明する。
【0087】
この場合、回折格子パネル13cから出射される0次回折光L3aは、回折格子パネル13における各回折格子30を透過して、各回折格子30の回折格子面F3に対する光L2R,L2G,L2Bの入射角と等しい角度で回折格子パネル13から出射される。したがって、界面F4a,F4bの角度θa,θbがそれぞれ上記のように形成されたプリズム40R,40G,40Bを有する光反射パネル14cでは、この光反射パネル14に入射した0次回折光L3aが、赤色の0次回折光L3aについては、プリズム40Rの界面F4aにおいて屈折して界面F4aの法線L14aとのなす角度(θ2)が16.2°となり、緑色の0次回折光L3aについては、プリズム40Gの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が16.2°となり、青色の0次回折光L3aについては、プリズム40Bの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が16.1°となる。これにより、赤色の0次回折光L3aについては、プリズム40Rの界面F4bに対する入射角(θ3)が44.2°となり、緑色の0次回折光L3aについては、プリズム40Gの界面F4bに対する入射角(θ3)が44.0°となり、青色の0次回折光L3aについては、プリズム40Bの界面F4bに対する入射角(θ3)が43.7°となる。
【0088】
ここで、前述した全反射の条件式によれば、赤色の0次回折光L3aについては、プリズム40Rの界面F4bに対して41.4°以上の入射角で入射したときにこの0次回折光L3aが全反射し、緑色の0次回折光L3aについては、プリズム40Gの界面F4bに対して41.2°以上の入射角で入射したときにこの0次回折光L3aが全反射し、青色の0次回折光L3aについては、プリズム40Bの界面F4bに対して41.1°以上の入射角で入射したときにこの0次回折光L3aが全反射することとなる。したがって、プリズム40R,40G,40Bの各界面F4bに対する各0次回折光L3aの入射角が上記の角度となっているこの光反射パネル14cでは、回折格子パネル13から出射された各色の0次回折光L3aが各プリズム40(400)における界面F4bにおいて全反射されて界面F4aに入射し、さらに、界面F4aにおいて全反射されて、最終的には、光反射パネル14cの下方向の端面から出射される。
【0089】
なお、「反射素子」の上記の界面F4a,F4bの角度θa,θbが「θa≦θb」との条件を満たす「光反射部」においては、界面F4bにおける1回目の反射時に0次回折光L3aが全反射したときに、界面F4bにおける2回目以降の反射時においても0次回折光L3aが全反射するか、或いは、界面F4bにおける2回目以降の0次回折光L3aの反射は生じない(界面F4aにおいて反射された0次回折光L3aが、界面F4bまで到達せずに、「光反射部」の上下方向の端部(或いは、左右方向の端部)から「光反射部」の外部に出射される)。
【0090】
これにより、図38に示すように、この光反射パネル14cでは、赤色、緑色および青色の各0次回折光L3aの透過率がそれぞれ0%となり、各色の0次回折光L3aの拡散板15側への出射が抑制される。なお、同図および後に参照する図39,40では、81個のカラー表示画素A1〜I9のうちのカラー表示画素E5の1つについての透過率を図示している。この場合、図35に示す例とは異なり、例えば、界面F4bにおいて反射された光L3aが、界面F4aに対して入射したときに界面F4aにおいて全反射されない構成においても、光L3aは、界面F4aから回折格子パネル13cの側に向かって出射されるため、結果として、回折格子パネル13cからの0次回折光L3aの拡散板15側への透過が十分に抑制される。
【0091】
一方、回折格子パネル13cから出射される+1次回折光L3bは、上記したように形成された回折格子パネル13からの出射角度(βY)が、それぞれ35.3°となる。したがって、界面F4a,F4bの角度θa,θbがそれぞれ上記のように形成されたプリズム40R,40G,40Bを有する光反射パネル14cでは、この光反射パネル14に入射した+1次回折光L3bが、赤色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Rの界面F4aにおいて屈折して界面F4aの法線L14aとのなす角度(θ2)が22.4°となり、緑色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Gの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が22.3°となり、青色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Bの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が22.3°となる。
【0092】
これにより、赤色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Rの界面F4bに対する入射角(θ3)が−5.6°となり、緑色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Gの界面F4bに対する入射角が(θ3)が−5.5°となり、青色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Bの界面F4bに対する入射角(θ3)が−5.3°となる。したがって、この光反射パネル14cでは、各色の+1次回折光L3bが(光反射パネル14cを透過して)、出射角(βY)=19.5°の出射角で光反射パネル14cから出射される。この場合、図38に示すように、この光反射パネル14cでは、赤色、緑色および青色の各+1次回折光L3bの透過率がそれぞれ91%を超えている。このように、図35に示す表示装置1C(表示器2C)の光反射パネル14cでは、0次回折光L3aの少なくとも一部を各プリズム40(400)において反射することによって各プリズム40(400)における+1次回折光L3bの透過率よりも各プリズム40(400)における0次回折光L3aの透過率の方が小さくなるように構成されているため、回折格子パネル13cから出射される各色の0次回折光L3aに起因するゴースト像が存在しない、或いは、ゴースト像が視認され難い鮮明な画像が視認されることとなる。
【0093】
一方、図36,37に示す表示装置1C(表示器2C)の光反射パネル14cでは、同一の光学材料(一例として、プリズム20R,20G,20Bを構成する上記の光学材料と同一の材料)を用いて各プリズム40R,40G,40Bが形成されると共に、プリズム40R,40G,40Bの各形状(プリズムの角度)が等しくなるように形成されている。具体的には、図36に示す例の光反射パネル14cの各プリズム40R,40G,40Bは、上記の角度θa,θbがそれぞれ0.0°および30.0°となるように光透過性を有する樹脂材料で形成され、図37に示す例の光反射パネル14cの各プリズム40R,40G,40Bは、上記の角度θa,θbがそれぞれ0.0°および24.9°となるように光透過性を有する樹脂材料で形成されている。以下、画素E5に対応する光について説明する。
【0094】
この場合、図36に示す例の光反射パネル14cでは、赤色の0次回折光L3aについては、プリズム40Rの界面F4aにおいて屈折して界面F4aの法線L14aとのなす角度(θ2)が16.2°となり、緑色の0次回折光L3aについては、プリズム40Gの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が16.2°となり、青色の0次回折光L3aについては、プリズム40Bの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が16.1°となる。これにより、赤色の0次回折光L3aについては、プリズム40Rの界面F4bに対する入射角(θ3)が46.2°となり、緑色の0次回折光L3aについては、プリズム40Gの界面F4bに対する入射角(θ3)が46.2°となり、青色の0次回折光L3aについては、プリズム40Bの界面F4bに対する入射角(θ3)が46.1°となる。
【0095】
プリズム40R,40G,40Bの各界面F4bに対する各0次回折光L3aの入射角が上記の角度となっているこの光反射パネル14cでは、回折格子パネル13から出射された各色の0次回折光L3aが各プリズム40(400)における界面F4bにおいて全反射されて界面F4aに入射し、さらに、界面F4aにおいて全反射されて、最終的には、光反射パネル14cの下方向の端面から出射される。これにより、図39に示すように、この光反射パネル14cでは、赤色、緑色および青色の各0次回折光L3aの透過率がそれぞれ0%となり、各0次回折光L3aの拡散板15側への出射が抑制される。
【0096】
一方、回折格子パネル13cから出射される+1次回折光L3bは、上記したように形成された回折格子パネル13からの出射角度(βY)が、それぞれ35.3°となる。したがって、界面F4a,F4bの角度θa,θbがそれぞれ上記のように形成されたプリズム40R,40G,40Bを有する光反射パネル14cでは、この光反射パネル14に入射した+1次回折光L3bが、赤色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Rの界面F4aにおいて屈折して界面F4aの法線L14aとのなす角度(θ2)が22.4°となり、緑色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Gの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が22.3°となり、青色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Bの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が22.3°となる。
【0097】
これにより、赤色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Rの界面F4bに対する入射角(θ3)が−7.6°となり、緑色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Gの界面F4bに対する入射角(θ3)が−7.7°となり、青色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Bの界面F4bに対する入射角(θ3)が−7.7°となる。したがって、この光反射パネル14cでは、各色の+1次回折光L3bが光反射パネル14cを透過して、βYがそれぞれ18.5°、18.3°および18.2°の出射角で光反射パネル14cから出射される。この場合、図39に示すように、この光反射パネル14cでは、赤色、緑色および青色の各+1次回折光L3bの透過率がそれぞれ91%を超えている。
【0098】
このように、図36に示す表示装置1C(表示器2C)の光反射パネル14cでは、上記の図35に示す光反射パネル14cの例と同様にして、0次回折光L3aの少なくとも一部を各プリズム40(400)において反射することによって各プリズム40(400)における+1次回折光L3bの透過率よりも各プリズム40(400)における0次回折光L3aの透過率の方が小さくなるように構成されているため、回折格子パネル13cから出射される各色の0次回折光L3aに起因するゴースト像が存在しない、或いは、ゴースト像が視認され難い鮮明な画像が視認されることとなる。この場合、図36に示す例の光反射パネル14cでは、各色の+1次回折光L3bの光反射パネル14cからの出射角度(βY)が僅かに相違するが、光反射パネル14cを透過した+1次回折光L3bが拡散板15によって表示器2Cの上下方向に拡散させられるこの表示装置1Cにおいては、各色毎の+1次回折光L3bの出射角度(βY)のこの程度の相違は問題とはならない。
【0099】
また、図37に示す例の光反射パネル14cでは、赤色の0次回折光L3aについては、プリズム40Rの界面F4aにおいて屈折して界面F4aの法線L14aとのなす角度(θ2)が16.2°となり、緑色の0次回折光L3aについては、プリズム40Gの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が16.2°となり、青色の0次回折光L3aについては、プリズム40Bの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が16.1°となる。これにより、赤色の0次回折光L3aについては、プリズム40Rの界面F4bに対する入射角(θ3)が41.1°となり、緑色の0次回折光L3aについては、プリズム40Gの界面F4bに対する入射角(θ3)が41.1°となり、青色の0次回折光L3aについては、プリズム40Bの界面F4bに対する入射角(θ3)が41.0°となる。
【0100】
プリズム40R,40G,40Bの各界面F4bに対する各0次回折光L3aの入射角が上記の角度となっているこの光反射パネル14cでは、回折格子パネル13から出射された各色の0次回折光L3aの一部が各プリズム40(400)における界面F4bから拡散板15側に出射される。しかしながら、図40に示すように、赤色、緑色および青色の各0次回折光L3aの透過率がそれぞれ40%を下回っており、各色の0次回折光L3aの拡散板15側への出射が十分に抑制されている。
【0101】
一方、回折格子パネル13cから出射される+1次回折光L3bは、上記したように形成された回折格子パネル13からの出射角度(βY)が、それぞれ35.3°となる。したがって、界面F4a,F4bの角度θa,θbがそれぞれ上記のように形成されたプリズム40R,40G,40Bを有する光反射パネル14cでは、この光反射パネル14に入射した+1次回折光L3bが、赤色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Rの界面F4aにおいて屈折して界面F4aの法線L14aとのなす角度(θ2)が22.4°となり、緑色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Gの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が22.3°となり、青色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Bの界面F4aにおいて屈折して法線L14aとのなす角度(θ2)が22.3°となる。
【0102】
これにより、赤色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Rの界面F4bに対する入射角(θ3)が−2.5°となり、緑色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Gの界面F4bに対する入射角(θ3)が−2.6°となり、青色の+1次回折光L3bについては、プリズム40Bの界面F4bに対する入射角(θ3)が−2.6°となる。したがって、この光反射パネル14cでは、各色の+1次回折光L3bが光反射パネル14cを透過して、βYがそれぞれ21.1°、21.0°および20.9°の出射角で光反射パネル14cから出射される。この場合、図40に示すように、この光反射パネル14cでは、赤色、緑色および青色の各+1次回折光L3bの透過率がそれぞれ91%を超えている。
【0103】
このように、図37に示す表示装置1C(表示器2C)の光反射パネル14cでは、0次回折光L3aの少なくとも一部を各プリズム40(400)において反射することによって各プリズム40(400)における+1次回折光L3bの透過率よりも各プリズム40(400)における0次回折光L3aの透過率の方が小さくなるように構成されているため、回折格子パネル13cから出射される各色の0次回折光L3aに起因するゴースト像が視認され難い鮮明な画像が視認されることとなる。
【0104】
また、これらの表示装置1C(表示器2C)では、図35〜37に示すように、1つのカラー表示画素を視認させるために回折格子パネル13c(各回折格子面F3)から出射される光L3(光L3R,L3G,L3B:図30参照)の出射角度における表示器2Cの左右方向の角度成分(前述したβX)が互いに等しくなっている。したがって、この表示装置1C(表示器2C)では、これらの光L3R,L3G,L3Bのうちの+1次回折光L3bが拡散板15によって縦方向に拡散されつつ、光L5R,L5G,L5Bとして表示装置1C(表示器2C)の前方に向かって左右方向において同じ向きに出射されることとなる。なお、両図に示すように、上記の表示装置1C(表示器2C)における回折格子パネル13cでは、「|(−λ−d・sin(αy))/d|≧1」との条件が満たされている。このような条件を満たす回折格子パネル13cでは、−1次回折光L3cが回折格子パネル13cから出射しないため、−1次回折光L3cの回折格子パネル13cからの出射(拡散板15への入射)に起因して、立体視画像(カラー画像)像がぼやける事態が生じるのが回避されている。
【0105】
このように、表示器2(2C)では、光源3(3C)からの光(この例では、光路変更パネル12(12c)によって光路を変更された光L2)を回折する回折格子パネル13(13c)から出射された回折光(光L3:0次回折光L3a、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c))を透過可能な光学材料によって光L3が入射可能に設けられたプリズム40(400)を有する光反射パネル14(14c)を備えると共に、光L3としての+1次回折光L3bおよび−1次回折光L3cのいずれかをプリズム40(400)を透過させてプリズム40(400)から出射させることにより、表示器2(2C)と対向し、かつ表示器2(2C)の左右方向で相違する各視点位置から互いに相違する画像を視認可能に複数の画像を表示可能に構成され、かつ、プリズム40(400)において0次回折光L3aを反射することにより、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)の透過率よりも、プリズム40(400)における0次回折光L3aの透過率の方が小さくなるように光反射パネル14(14c)が構成されている。また、表示器2(2C)では、プリズム40(400)の界面F4bにおいて0次回折光L3aが全反射するように光反射パネル14(14c)が構成されている。また、表示装置1(1C)は、表示器2(2C)と、光源3(3C)と、光源3(3C)の点灯を制御して表示器2(2C)に画像を表示させる制御部4とを備えて構成されている。
【0106】
したがって、表示器2(2C)、および表示器2(2C)を備えた表示装置1(1C)によれば、光反射パネル14が0次回折光L3aを十分に反射して拡散板15側への0次回折光L3aの出射を抑制するため、回折格子パネル13(13c)から出射された0次回折光L3aの存在に起因して、いわゆるゴースト像が表示される事態を抑制して、鮮明な画像を表示させることができる。
【0107】
さらに、この表示器2C(図35に示す例)によれば、1つの表示画素を表示するための各色光に対応してプリズム40(400)を設けると共に、1つの表示画素を表示するための各色光に対応するプリズム40(400)の光学材料および形状の少なくとも一方(この例では、界面F4bの角度θb:形状)が互いに相違するように形成して光反射パネル14cを構成したことにより、0次回折光L3aの存在に起因するゴースト像が表示される事態を抑制することができるだけでなく、光反射パネル14cから出射される各色の+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)の出射角度を同一角度に揃えることができるため、例えば拡散板15を備えていない構成においても、カラー画像に上下方向の滲みが生じる事態を回避することができる。
【0108】
さらに、この表示器2C(図36,37に示す例)によれば、1つの表示画素を表示するための各色光に対応してプリズム40(400)を設けると共に、1つの表示画素を表示するための各色光に対応するプリズム40(400)を、同一の光学材料で、かつ互いに等しい形状となるように形成して光反射パネル14cを構成したことにより、光反射パネル14cの設計および製造を容易に行うことができる結果、表示器2Cの製造コストを十分に低減することができる。
【0109】
なお、「表示器」および「表示装置」の構成は、上記の表示器2(2C)および表示装置1(1C)の構成に限定されない。例えば、光源3(3C)からの光L1の進行方向を変更するためのプリズム20(200)を有する光路変更パネル12(12c)を備えた表示器2(2C)を例に挙げて説明したが、この光路変更パネル12(12c)に代えて、「光路変更素子」としての「電気光学効果(EO効果)によって光の進行方向を変更する素子:以下、「EO効果素子」ともいう」を備えて構成された光路変更パネル(図示せず)を「光路変更部」として備えた構成を採用することもできる。この場合、「EO効果素子」としては、一例として、KTN結晶体(タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1−xNb)の結晶体)と、このKTN結晶体の上面に配設された電極(陽極)と、KTN結晶体の下面に配設された電極(陰極)とで構成することができる。このKTN結晶体は、ペロブスカイト型の結晶構造を持つ酸化物であって、端面間に電圧を印加することにより、その屈折率が変化する「電気光学効果(EO効果)」を有していることが知られている。したがって、光源3(3C)からの光L1を屈折させるべき角度に応じて両電極間に電圧を印加することで、プリズム20(200)によって光L1を屈折させるのと同様にして、所望の角度で「EO効果素子」から光L2を出射して回折格子パネル13(13c)の回折格子30に対して斜めに入射させることができる。
【0110】
さらに、光源3(3C)からの光L1を「光路変更部」によって屈折させて回折格子パネル13(13c)の回折格子30における回折格子面F3に対して斜めに入射させることで、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)に対する−1次回折光L3c(または、+1次回折光L3b)の光量を低減させる構成について説明したが、「光路変更部」は、「表示器」に必須の構成要素ではない。例えば、光源3(3C)からの光L1を「光回折部」の「回折格子」に対して直接入射させる構成を採用することができる。この場合、上記の表示器2(2C)では、回折格子30の回折格子面F3が拡散板15のパネル面F5や光源3(3C)のパネル面F1などと平行になるように回折格子パネル13(13c)が構成されているが、回折格子30の回折格子面F3を、拡散板15のパネル面F5や光源3(3C)のパネル面F1などに対して傾けることで、光源3(3C)からの光L1を回折格子面F3に対して斜めに入射させることができる(図示せず)。このような構成を採用した場合においても、+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)に対する−1次回折光L3c(または、+1次回折光L3b)の光量を低減させることができる結果、表示器2(2C)と同様にして、光源3(3C)からの光L1の利用効率を十分に高めることができる。
【0111】
また、例えば、平面視直線状の互いに平行な複数の凸部31、および平面視直線状の互いに平行な複数の凹部32が所定の形成ピッチで形成された凹凸パターン(格子パターン)を回折格子30として機能させる構成の回折格子パネル13(13c)を備えた例について説明したが、「回折格子」は、これに限らず、一例として、図41,42に示す回折格子パネル13dにおける回折格子30aのように、互いに交差することのない平面視曲線状の複数の凸部、および互いに交差することのない平面視曲線状の複数の凹部で構成された凹凸パターン(格子パターン)を形成して「回折格子」として機能させる構成を採用することができる。なお、両図では、一例として、凸部の幅方向の中心を実線(曲線)で図示している。
【0112】
この場合、前述したように、本明細書において、「1つの回折格子」とは、入射した光を回折可能に構成された光学的要素のうちの「1つの光出射部」に対応して規定された部位を意味する。したがって、平面視曲線状の凸部や平面視曲線状の凹部が格子パターンとして形成された回折格子パネルでは、光源における1つの光出射部(前述した光源3における1つの光出射部10、または、前述した光源3Cにおける光出射部10R,10G,10Bのうちの1つに対応する要素:つまり、単色画像を表示するための光源においては、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つに対応する光を出射する光学的要素であり、カラー画像を表示するための光源においては、1つのカラー画像を構成する各表示画素のうちの1つにおける各色光に対応する各副画素のうちの1つに対応する光を出射する光学的要素)に対応して1つの回折格子30a(両図において荒い破線で区切った方形状の領域)が規定されている。
【0113】
なお、平面視曲線状の凸部や平面視曲線状の凹部を格子パターンとして形成した回折格子30aでは、図42に示すように、一例として、格子としての凸部が回折格子30aの一端部(例えば、同図における左端部)と交差する交点P1と、凸部が回折格子30aの他端部(この例では、同図における右端部)と交差する交点P2とを結んだ実線Lcを格子ラインとする。このような構成の回折格子パネル13dにおいても、回折格子30a毎に、各凸部の形成ピッチdや、ペリスト回転角(格子ラインの回転角)などを規定することで、前述した回折格子パネル13(13c)と同様にして、光路変更パネル12(12c)からの光L2(L2R,L2G,L2B)を回折して任意の向きに出射することができる。
【0114】
また、例えば、各回折格子30の形成領域毎に複数の凸部31および複数の凹部32が所定の形成ピッチで形成された凹凸パターンが形成され、この凹凸パターンが回折格子30として機能して、光路変更パネル12(12c)からの光L2(L2R,L2G,L2B)を予め規定された方向に回折するように構成された回折格子パネル13(13c)を有する表示器2(2C)および表示装置1(1C)を例に挙げて説明したが、回折格子パネル13(13c)に代えて、図43〜45に示す回折格子パネル13e〜13gのいずれかによって光路変更パネル12(12c)からの光L2(L2R,L2G,L2B)を予め規定された方向に回折するように構成することもできる。
【0115】
この場合、回折格子パネル13e〜13gは、前述した回折格子パネル13(13c)における凸部31および凹部32からなる格子パターン(凹凸パターン)に代えて、複数の凸部31aおよび複数の凹部(スリット)32aからなる格子パターンが形成されて、この格子パターンが回折格子30bとして機能して、光路変更パネル12(12c)からの光L2(L2R,L2G,L2B)を予め規定された方向に回折するように構成されている。なお、この回折格子パネル13e〜13gにおいて、前述した回折格子パネル13(13c)の各要素と同様の要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0116】
この場合、図43,44に示すように、回折格子パネル13e,13fの回折格子30bでは、凸部31aの延在方向(同図における実線Laの方向)が、その回折格子面F3に対して垂直に交差する向き(回折格子面F3の法線と平行な向き:δy=0°)となっている。したがって、この回折格子パネル13e,13gの回折格子30bは、δy=0°の回折格子パネル13(13c)の回折格子30と同様に機能する。一方、図45に示すように、回折格子パネル13gの回折格子30bでは、凸部31aの延在方向(同図における実線Laの方向)が、その回折格子面F3に対して斜めに交差する向き(回折格子面F3の法線と非平行な向き:δy≠0°)となっている。したがって、この回折格子パネル13gの回折格子30bは、δy≠0°の回折格子パネル(例えば、図24に示す回折格子パネル13)の回折格子と同様に機能する。
【0117】
また、図43〜45に示す回折格子パネル13h〜13jのいずれかによって光路変更パネル12(12c)からの光L2(L2R,L2G,L2B)を予め規定された方向に回折するように構成することもできる。この場合、回折格子パネル13h〜13jは、前述した回折格子パネル13(13c)における凸部31および凹部32からなる格子パターン(凹凸パターン)に代えて、高屈折率材料で形成された複数の高屈折率部35、および低屈折率材料で形成された複数の低屈折率部36からなる格子パターンが形成されて、この格子パターンが回折格子30cとして機能して、光路変更パネル12(12c)からの光L2(L2R,L2G,L2B)を予め規定された方向に回折するように構成されている。この場合、本明細書では、回折格子パネル13h〜13jの回折格子30cにおける各高屈折率部35を、前述した回折格子30の凸部31や回折格子30bの凸部31aと同様の構成要素とする。すなわち、これら回折格子パネル13h〜13jの回折格子30cにおける「凸部の延在方向」は、高屈折率部35の延在方向(各図における実線Laの方向)を意味する。このような構成を採用した場合においても、前述した回折格子パネル13(13c),13a,13b,13e〜13f等と同様の「光回折部」として機能する。
【0118】
また、回折格子パネル13,13a〜13jに代えて、図46に示す回折格子パネル13kのようなブレーズ型回折格子を有する「光回折部」を採用することもできる。この場合、ブレーズ型回折格子では、光源3(3C)からの光L1を光路変更パネル12(12c)の各プリズム20(200)によって屈折させることで回折格子30の回折格子面F3に対して光L2を斜めに入射させる構成や、光源3(3C)のパネル面F1に対して回折格子30の回折格子面F3を傾けることで光源3(3C)からの光L1を回折格子面F3に対して斜めに入射させる構成などと同様にして、回折格子から出射される+1次回折光L3b(または、−1次回折光L3c)に対する−1次回折光L3c(または、+1次回折光L3b)の光量を十分に低減させることができる。また、光源3(3C)からの光L1を屈折させるための「光路変更部」が不要となるだけでなく、回折格子30の回折格子面F3を光源3(3C)のパネル面F1に対して傾ける必要もない。したがって、このブレーズ型回折格子を採用することにより、光源3(3C)からの光L1の利用効率を十分に高めた表示器を安価に製造することができる。
【0119】
さらに、格子のペリスト回転角が相違する複数の「回折格子」を有する回折格子パネル13,13a〜13kを備えた構成を例に挙げて説明したが、1つの「回折格子」、または、格子間隔が相違する複数の「回折格子」を有するパネル(図示せず)を例えば回折格子面に沿って回転させる(動的にぺリスト回転させる)と共に、このパネルの回転に同期させて、各視点位置において視認させるべき画像を切り替えて表示させる構成を採用することもできる。このような構成を採用した場合においても、「光反射部」を配設することで、上記のパネルから出射される0次回折光の「光反射部」からの出射を抑制することができるため、0次回折光の存在に起因して、いわゆるゴースト像が表示される事態を抑制して、鮮明な画像を表示させることができる。
【0120】
また、「視差による立体視画像」を表示する利用形態を例に挙げて説明したが、「表示器」および「表示装置」によって表示する「画像」はこれに限定されない。例えば、複数種類の2次元画像(一例として、ニュース番組の画像、教育番組の画像、およびアニメーション番組の画像)を「互いに相違する画像」として「表示器」に表示させる利用形態を採用することができる。このような利用形態においては、一例として、「表示器」に向かって左側から「ニュース番組の画像」を視認させ、「表示器」に向かって正面から「教育番組の画像」を視認させ、「表示器」に向かって右側から「アニメーション番組の画像」を視認させることで、1台の「表示装置」によって、3人の視聴者に対してそれぞれ相違する画像を視認させることができる。
【0121】
さらに、RGBカラー画像を表示可能に構成した表示器2C(表示装置1C)を例に挙げて説明したが、RGBカラー画像以外の、各種のカラー画像を表示可能に「表示器」および「表示装置」を構成することもできる。このような構成を採用する場合においては、カラー画像を構成する各色光毎の表示画素毎に、上記のdやεなどを適宜調整すればよい。また、光出射部としてのLEDを備えた光源3(3C)を例に挙げて説明したが、「光源」は、これに限定されず、有機ELや、CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)などの各種光出射装置を備えて構成することができる。この場合、単色画像を表示するための表示装置に上記の各種光出射装置を使用する場合には、光出射装置において、1つの単色画像を構成する各表示画素のうちの1つに対応する光を出射するための光学的要素が「光出射部」に相当し、カラー画像を表示するための表示装置に上記の各種光出射装置を使用する場合には、光出射装置において、1つのカラー画像を構成する各表示画素のうちの1つにおける各色の副画素のうちの1つに対応する光を出射するための光学的要素が「光出射部」に相当する。
【0122】
また、拡散板15を備えて構成した表示器2(2C)を例に挙げて説明したが、「光拡散部(拡散板15)」に加えて、「光拡散部」等の傷付きや塵埃の付着を防止するための「保護板」や、ノングレア処理が施された「化粧板」などを配設して「表示器」を構成することもできる。
【符号の説明】
【0123】
1,1C 表示装置
2,2C 表示器
3,3C 光源
4 制御部
12,12c 光路変更パネル
13,13a〜13k 回折格子パネル
14,14a〜14c 光反射パネル
15 拡散板
20,20R,20G,20B,200 プリズム
30,30R,30G,30B,30a〜30c 回折格子
40,40R,40G,40B,400 プリズム
F1,F2,F5 パネル面
F3 回折格子面
F4a,F4b 界面
L1〜L5,L1R〜L5R,L1G〜L5G,L1B〜L5B 光
L3a 0次回折光
L3b +1次回折光
L3c −1次回折光
L13,L14a,L14b,L15 法線
θa,θb,θp 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を回折する光回折部を備えた表示器であって、
前記光回折部から出射された回折光を透過可能な光学材料によって当該回折光が入射可能に設けられた反射素子を有する光反射部を備えると共に、当該回折光としての−1次回折光および+1次回折光のいずれかの1次回折光を当該反射素子を透過させて当該反射素子から出射させることにより、当該表示器と対向し、かつ当該表示器の左右方向で相違する各視点位置から互いに相違する画像を視認可能に複数の画像を表示可能に構成され、
前記光反射部は、前記回折光としての0次回折光を前記反射素子において反射することにより、当該反射素子における前記いずれかの1次回折光の透過率よりも、当該反射素子における当該0次回折光の透過率の方が小さくなるように構成されている表示器。
【請求項2】
前記光反射部は、前記反射素子における当該表示器の前面側の界面において前記0次回折光が全反射するように構成されている請求項1記載の表示器。
【請求項3】
波長が相違する複数種類の色光によって1つの表示画素を表示可能に構成され、
前記光反射部は、1つの前記表示画素を表示するための前記各色光に対応して前記反射素子が設けられると共に、当該1つの表示画素を表示するための当該各色光に対応する当該反射素子の光学材料および形状の少なくとも一方が互いに相違するように形成されている請求項1または2記載の表示器。
【請求項4】
波長が相違する複数種類の色光によって1つの表示画素を表示可能に構成され、
前記光反射部は、1つの前記表示画素を表示するための前記各色光に対応して前記反射素子が設けられると共に、当該1つの表示画素を表示するための当該各色光に対応する当該反射素子が、同一の光学材料で、かつ互いに等しい形状となるように形成されている請求項1または2記載の表示器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の表示器と、前記光源と、当該光源の点灯を制御して前記表示器に前記画像を表示させる制御部とを備えている表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2012−189947(P2012−189947A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55353(P2011−55353)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】