説明

表示装置およびその制御方法

【課題】メモリ効果型表示ユニットを備えた表示装置に関し、主にマイクロ波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体用途のアンテナと、メモリ効果型表示ユニットとを備え、この表示ユニットによる表示を妨げることなく、前記のアンテナによる通信特性に優れた表示装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置10は、メモリ効果型表示ユニット20と、メモリ効果型表示ユニット20を挟んで配置された一対の表面電極21および背面電極22と、を備え、表面電極21は透明電極膜からなり、かつ、表面電極21は同一面上に互いに所定の間隔を置いて配されたアンテナ部21Aと電極部21Bとから構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ効果型表示ユニットを備えた表示装置に関し、さらに詳しくは、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電波、主にマイクロ波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体用途のアンテナを備えた表示装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICチップに記録(記憶)されている情報を表示するとともに、この情報を、アンテナを介して無線で送信する無線用ICタグを搭載したICタグ実装液晶表示器が提案されている。
このICタグ実装液晶表示器としては、アンテナが、液晶表示器のガラス基板に形成された画像電極の領域外に設けられたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−53234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のICタグ実装液晶表示器では、表示面の全面に、スズドープ酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)の薄膜からなる透明電極が設けられているため、この透明電極上にアンテナを設けることができなかった。そこで、特許文献1のICタグ実装液晶表示器では、ガラス基板上の表示面に重ならない位置にアンテナを設けていた。そのため、ガラス基板にはアンテナを設けるための余分な領域が必要となり、表示器の小型化を図ることが難しいばかりでなく、アンテナを表示器の最表面に配置することが難しいため、十分な通信特性が得られ難いという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、メモリ効果型表示ユニットを備えた表示装置に関し、主にマイクロ波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体用途のアンテナと、メモリ効果型表示ユニットとを備え、この表示ユニットによる表示を妨げることなく、前記のアンテナによる通信特性に優れた表示装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の表示装置は、メモリ効果型表示ユニットと、該メモリ効果型表示ユニットを挟んで配置された一対の表面電極および背面電極と、を備えた表示装置であって、前記表面電極は透明電極膜からなり、かつ、前記表面電極は同一面上に互いに所定の間隔を置いて配されたアンテナ部と電極部とから構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の表示装置は、前記アンテナ部と電気的に接続され、前記アンテナ部を通じて通信するとともに、前記メモリ効果型表示ユニットによる表示を制御する回路部と、前記表面電極および前記背面電極に電圧を印加するとともに、前記回路部に駆動電流を供給する電源と、を備えたことが好ましい。
【0007】
本発明の表示装置の制御方法は、前記電源から前記表面電極および前記背面電極に電圧を印加する時、前記アンテナ部を通じての前記回路部の通信を不可とし、一方、前記アンテナ部を通じて前記回路部が通信する時、前記電源による前記表面電極および前記背面電極への電圧の印加を不可とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表示装置は、メモリ効果型表示ユニットと、該メモリ効果型表示ユニットを挟んで配置された一対の表面電極および背面電極と、を備えた表示装置であって、前記表面電極は透明電極膜からなり、かつ、前記表面電極は同一面上に互いに所定の間隔を置いて配されたアンテナ部と電極部とから構成されているので、表面電極のアンテナ部が表示装置の最表面に配されているから、十分な通信特性が得られるとともに、このアンテナ部がメモリ効果型表示ユニットを妨げることがない。また、アンテナ部を設けるために、メモリ効果型表示ユニットを構成する基板などに余分な領域を必要としないので、表示装置の小型化に寄与する。さらに、メモリ効果型表示ユニットのメモリ効果により、アンテナ部を使用した通信時にも、表示状態を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の表示装置およびその制御方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、本発明の表示装置の一実施形態を示す概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
この実施形態の表示装置10は、メモリ効果型表示ユニット20と、一対の表面電極21および背面電極22と、回路部30と、電源40とから概略構成されている。
この表示装置10では、表面電極21と背面電極22が対向するように配置され、これらの間にメモリ効果型表示ユニット20を挟んでいる。
また、表面電極21は、透明電極膜からなるとともに、同一面上(メモリ効果型表示ユニット20の表示面20a上)に互いに所定の間隔を置いて配されたアンテナ部21Aと電極部21Bとから構成されている。
【0011】
回路部30は、導線23(23A)を介してアンテナ部21と電気的に接続され、このアンテナ部21を通じて通信するとともに、メモリ効果型表示ユニット20による表示を制御する機能を備えている。すなわち、回路部30は、アンテナ部21で受信した、極超短波帯(UHF)やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)のマイクロ波信号から直流電力を得るための整流器31と、その直流電力と電源40より発生する電力とを重畳可能とする電力加算回路32と、マイクロ波信号の送受信を行う信号制御回路33と、暗号回路や変・復調回路などを有する演算回路34と、記憶回路35とから概略構成されている。そして、回路部30の各部(回路)は、導線36を介して互いに接続されている。
【0012】
また、表面電極21のアンテナ部21Aは、導線23(23B)を介して電源40に接続され、表面電極21の電極部21Bは、導線24を介して電源40に接続されている。
一方、背面電極22(22A、22B、・・・、22N)はそれぞれ、導線25(25A、25B、・・・、25N)を介して電源40に接続されている。
さらに、電源40は、導線26を介して回路部30の演算回路34に接続され、かつ、導線27を介して回路部30の電力加算回路32と接続されている。
このように、表示装置10は、表示装置としての機能と、RFID用途の情報記録メディアである非接触型データ受送信体としての機能を備えている。
【0013】
表面電極21のアンテナ部21Aは、図2に示すように、帯状の部分(以下、「帯状部」と言う。)21aと、この帯状部21aの中央部を基端とし、表面電極21の外縁に渡って延在する給電部21bと、帯状部21aを介して互いに対向し、かつ、帯状部21aの両端に連続する一対の放射素子21c,21dとからなるダイポールアンテナである。また、アンテナ部21Aは、メモリ効果型表示ユニット20の表面電極としても機能するので、電極部21Bとの間に設けられた間隙21e、すなわち、透明導電膜が形成されていない部分を除いて、全面に透明導電膜が形成されている。また、このようにアンテナ部21Aをその外形のみでなく、全面を透明導電膜で形成して、面状のアンテナとすることにより、受信可能な電波の帯域を広くすることができる。
アンテナ部21Aの長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子21c,21dの長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0014】
アンテナ部21Aと電極部21Bとの間隔は、特に限定されず、メモリ効果型表示ユニット20による表示パターンに応じて適宜調整されるが、メモリ効果型表示ユニット20による表示を妨げない程度(この間隔による表示の欠損部分が生じない程度)の大きさにする必要があり、例えば、1mm程度とする。
【0015】
表面電極21としては、スズドープ酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO:Fluoride−doped Tin Oxide)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony−doped Tin Oxide)などの導電性金属酸化物の膜からなり、可視光透過性を有する電極、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリイミドなどの透明かつ光透過性に優れる基材の一方の面に、金属繊維が微細な網目状に配されて、この金属繊維が金属膜をなしている透明導電フィルムなどが用いられる。
【0016】
背面電極22としては、特に限定されないが、表面電極21とともにメモリ効果型表示ユニット20を挟んだ状態で、これら2つの電極間に電位差を生じさせることができるものが用いられる。
【0017】
また、背面電極22の形状は特に限定されず、メモリ効果型表示ユニット20による表示パターンに応じて適宜設定される。
ところで、この背面電極22の形状に応じて、表面電極21のアンテナ部21Aの形状を設定し、背面電極22とアンテナ部21Aが重ならないようにすれば、メモリ効果型表示ユニット20による表示を妨げることがない。
【0018】
メモリ効果型表示ユニット20としては、電圧を印加することによって表示状態とすることができるとともに、一旦電圧を印加して表示状態にしてした後、電圧の印加を停止しても、一定時間表示状態を維持できる(表示メモリ性を有する)表示装置が用いられ、例えば、溶媒中に懸濁している電気を帯びた色素粒子の電気泳動現象を利用した電気泳動ディスプレイ、作動に要する電圧が比較的低く、電子の移動を遮断して酸化還元状態を維持するだけで表示状態を静止できるエレクトロクロミック素子、一度画面に文字や絵を描けば電力を与えなくても表示を維持可能な記憶型液晶であるコレステリック液晶ディスプレイなどが挙げられる。
【0019】
回路部30の記憶回路35は、演算回34を介し、電源40に対して、そこに記憶されている情報に基づいて、メモリ効果型表示ユニット20によって文字や模様などを表示するために必要な、メモリ効果型表示ユニット20の表示部に対応する背面電極22(22A、22B、・・・、22N)を選択するために必要な情報(背面電極22の位置情報)を伝達できるようになっている。
【0020】
電源40は、記憶回路35から伝達された情報に基づいて、表面電極21(アンテナ部21A、電極部21B)および背面電極22(22A、22B、・・・、22N)に対して、個別に電圧を印加することができるようになっている。
電源40としては、一次電池、二次電池、太陽電池などが用いられる。
【0021】
次に、この表示装置10の機能および制御方法について説明する。
メモリ効果型表示ユニット20により、任意の文字や模様を表示させるためには、回路部30の記憶回路35に記憶されている情報に基づいて、電源40から表面電極21、および、背面電極22の所定位置(背面電極22A、22B、・・・、22Nから選択される所定の電極)に電圧を印加する。この時、例えば、表面電極21に印加する電圧を0V、背面電極22に印加する電圧を1Vとする。なお、メモリ効果型表示ユニット20による表示パターンを反転させるには、上記とは逆に電圧を印加する。
【0022】
この時、表面電極21のアンテナ部21Aを通じての回路部30の通信、すなわち、非接触型データ受送信体としての通信を行わないか、あるいは、通信を行っている場合には中止する。なぜならば、回路部30による外部との通信(情報読取/書込装置との通信)を継続した状態で、表面電極21および背面電極22に電圧を印加すると、その通信を妨げてしまうからである。
【0023】
一方、表面電極21のアンテナ部21Aを通じて回路部30が通信する時、すなわち、表示装置10が非接触型データ受送信体として通信する時、電源40から表面電極21および背面電極22に対する電圧の印加を行わないか、あるいは、電圧の印加を行っている場合には中止する。なぜならば、電源40から表面電極21および背面電極22に対する電圧の印加を継続した状態で、回路部30による外部との通信(情報読取/書込装置との通信)を行うことができないからである。
【0024】
なお、回路部30による外部との通信を行うために、電源40から表面電極21および背面電極22に対する電圧の印加を中止しても、メモリ効果型表示ユニット20のメモリ効果により、その表示状態が維持される。したがって、この表示装置10は、メモリ効果型表示ユニット20による表示パターンを維持したまま、回路部30の通信を行うことができる。
【0025】
また、この表示装置10を非接触型データ受送信体として機能させた際に、回路部30に新たな表示情報を伝送し、この表示情報を記憶回路35に記憶させておけば、メモリ効果型表示ユニット20による表示は限定されることなく、任意の表示を行うことができる。なお、メモリ効果型表示ユニット20による表示は、回路部30の通信を行う毎に、すなわち、記憶回路35に新たな表示情報が記憶される毎に切り替えてもよいし、あるいは、回路部30の演算回34により表示間隔や表示時間を制御して切り替えてもよい。
【0026】
このように、この実施形態の表示装置10は、メモリ効果型表示ユニット20と、このメモリ効果型表示ユニット20を挟んで配置された一対の表面電極21および背面電極22と、を備え、表面電極21は透明電極膜からなり、かつ、表面電極21は同一面上に互いに所定の間隔を置いて配されたアンテナ部21Aと電極部21Bとから構成されているので、アンテナ部21Aが表示装置10の最表面に配されているから、十分な通信特性が得られるとともに、このアンテナ部21Aがメモリ効果型表示ユニット20を妨げることがない。また、アンテナ部21Aを設けるために、メモリ効果型表示ユニット20を構成する基板などに余分な領域を必要としないので、表示装置の小型化に寄与する。さらに、メモリ効果型表示ユニット20のメモリ効果により、回路部30による通信時にも、表示状態を維持できる。
【0027】
なお、この実施形態では、この実施形態では、アンテナ部21Aがダイポールアンテナである表示装置10を例示したが、本発明の表示装置はこれに限定されない。本発明の表示装置にあっては、アンテナがモノポールアンテナ、クロスダイポールアンテナなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態を示す概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明の表示装置の一実施形態を構成する表面電極を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0029】
10・・・表示装置、20・・・メモリ効果型表示ユニッ、21・・・表面電極、21A・・・アンテナ部、21B・・・電極部、22・・・背面電極、23,24,25,26,27,36・・・導線、30・・・回路部、31・・・整流器、32・・・電力加算回路、33・・・信号制御回路、34・・・演算回路、35・・・記憶回路、40・・・電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ効果型表示ユニットと、該メモリ効果型表示ユニットを挟んで配置された一対の表面電極および背面電極と、を備えた表示装置であって、
前記表面電極は透明電極膜からなり、かつ、前記表面電極は同一面上に互いに所定の間隔を置いて配されたアンテナ部と電極部とから構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記アンテナ部と電気的に接続され、前記アンテナ部を通じて通信するとともに、前記メモリ効果型表示ユニットによる表示を制御する回路部と、前記表面電極および前記背面電極に電圧を印加するとともに、前記回路部に駆動電流を供給する電源と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置の制御方法であって、
前記電源から前記表面電極および前記背面電極に電圧を印加する時、前記アンテナ部を通じての前記回路部の通信を不可とし、一方、前記アンテナ部を通じて前記回路部が通信する時、前記電源による前記表面電極および前記背面電極への電圧の印加を不可とすることを特徴とする表示装置の制御方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−271824(P2009−271824A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123244(P2008−123244)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】