説明

表示装置およびフィルタ制御方法

【課題】例えば表示画面が縦および横のいずれの方向で使用されるかに応じて視野角制御フィルタを適切に自動調節する表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置は、矩形の表示面11を有しており、正面から長手方向にずれた位置からは見やすく、長手方向と直交する方向にずれた位置からは見にくくなるような特性を有する縦方向フィルタ111と、正面から長手方向にずれた位置からは見にくく、長手方向と直交する方向にずれた位置からは見やすくなるような特性を有る縦方向フィルタ112とが併設されている。そして、表示面11が縦長および横長のいずれの向きで使用されても隣からの覗き見ができないように、縦方向フィルタ111および横方向フィルタ112を排他選択的に機能させるための切替スイッチ14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばパーソナルコンピュータなどの表示装置に適用して好適な視野角制御フィルタの自動調節技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デスクトップタイプやノートブックタイプ等、様々なタイプのコンピュータが広く普及している。そして、この種のコンピュータの表示装置として、液晶パネルが多く使われており、画像を利用者から見やすくするための工夫が種々なされている(例えば特許文献1等参照)。この特許文献1には、液晶ディスプレイの傾きを検出し、その傾きに応じて、液晶ディスプレイの視野角を自動的に調整する技術が記載されている。
【0003】
また、最近では、PDA(personal digital assistant)などと称される、例えば電車内などでも気軽に扱えるコンピュータも普及している。前述のノートブックタイプのコンピュータもバッテリ駆動可能であり、外出先などで扱うことが可能である。
【0004】
このように屋外でも利用されるコンピュータの液晶パネルでは、利用者から見やすくするだけでなく、利用者以外の第三者からは見づらくすることも考慮する必要がある。そのため、例えば表示画面の正面から縦方向にずれた場合の見やすさはそのままで、横方向にずれた場合には極力見えないようにする特性を有する視野角制御フィルタを設置することが良く行われる。これにより、傾きに応じて視野角を調整しつつ、隣から覗き見られることを防止することが実現される。
【特許文献1】特開平5−181115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、矩形の表示画面を縦および横のいずれの方向、つまり長手方向を垂直および水平のいずれに向けても使用できる表示装置が普及し始めている。従って、傾きに応じた視野角の調整や、隣から覗き見られないようにするためには、表示画面が縦および横のいずれの方向で使用されているかを考慮しなければならない。しかしながら、特許文献1の液晶表示装置をはじめ、これまでのフィルタ制御では、液晶ディスプレイの向きが切り替わることについは何等考慮されていない。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、例えば表示画面が縦および横のいずれの方向で使用されるかに応じて視野角制御フィルタを適切に自動調節する表示装置および表示装置のフィルタ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、この発明の表示装置は、表示画面と、前記表示画面の第1の方向に対して有効な第1の視野角制御フィルタと、前記第1の方向と直交する前記表示画面の第2の方向に対して有効な第2の視野角制御フィルタと、前記第1の視野角制御フィルタおよび前記第2の視野角制御フィルタを排他選択的に機能させるための切換手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、この発明の表示装置のフィルタ制御方法は、表示画面の第1の方向に対して有効な第1の視野角制御フィルタと、前記第1の方向と直交する前記表示画面の第2の方向に対して有効な第2の視野角制御フィルタとを重畳させて併設し、前記第1の方向および前記第2の方向のいずれを水平方向とした状態で前記表示画面が使用されるかに応じて、前記第1の視野角制御フィルタおよび前記第2の視野角制御フィルタを排他選択的に機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、例えば表示画面が縦および横のいずれの方向で使用されるかに応じて視野角制御フィルタを適切に自動調節する表示装置および表示装置のフィルタ制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1および図2は、本発明の表示装置の適用例を示す図であり、図1には、本体装置と一体にその筐体面に設置されるPDAへの適用例、図2には、本体装置とは独立にその周辺に設置されるデスクトップコンピュータへの適用例がそれぞれ示されている。
【0012】
図1および図2に示すように、本実施形態の表示装置1は、矩形の表示面11を有しており、この表示面11を縦長(図1(A),図2(A))および横長(図1(B),図2(B))のいずれに向けても使用できるようになっている。なお、ここでは、縦横を分かり易くするために、表示面11の形状を矩形としたが、これに限らず、例えば正方形や円形等いずれの形状であっても構わない。
【0013】
図1に示すPDAの場合には、表示面11をどちらの向きで使用するのかを設定するための操作キー12が同じく筐体面に設置されており、この操作キー12を操作することで表示面11上の表示画像を回転させる。一方、図2に示すデスクトップコンピュータの場合には、表示装置1を支持する支持機構の旋回軸部にセンサが設けられ、この旋回軸による表示装置1の旋回状況がセンサにより検出されて表示面11上の表示画像が自動的に回転する。
【0014】
また、この表示装置1の表示面11には、隣から覗き見られることを防止するため、縦方向フィルタ111および横方向フィルタ112の2つの視野角制御フィルタが設けられている。図3は、この縦方向フィルタ111および横方向フィルタ112の視野角制御フィルタとしての特性をそれぞれ説明するための概念図である。
【0015】
図3に示すように、縦方向フィルタ111および横方向フィルタ112のいずれも、表示面11とほぼ同形の矩形に構成されており、縦方向フィルタ111は、正面から長手方向にずれた位置からは見やすく、長手方向と直交する方向にずれた位置からは見にくくなるような特性を有している(図3(A))。逆に、横方向フィルタ112は、正面から長手方向にずれた位置からは見にくく、長手方向と直交する方向にずれた位置からは見やすくなるような特性を有している(図3(B))。従って、図1(A)および図2(A)に示したように表示面11を縦長に向けて表示装置1が使用される場合には、縦方向フィルタ111を機能させ、一方、図1(B)および図2(B)に示したように表示面11を横長に向けて表示装置1が使用される場合には、横方向フィルタ111を機能させるように制御すれば、いずれの場合も隣からの覗き見を適切に防止できるわけである。
【0016】
図4は、この表示装置1のフィルタ制御に係わる部分の概略構成を示す図である。図4に示すように、この表示装置1では、まず、縦方向フィルタ111と横方向フィルタ112との2つの視野角制御フィルタが表示面11に重畳させて設置され、また、これら2つの視野角制御フィルタと、これら2つの視野角制御フィルタを駆動するフィルタ駆動回路13との間に介在させて切替スイッチ14が設置される。
【0017】
切替スイッチ14は、縦方向フィルタ111および横方向フィルタ112を排他選択的に機能させる、より具体的には、(1)縦方向フィルタ111をオンにして横方向フィルタ112をオフにする、(2)縦方向フィルタ111をオフにして横方向フィルタ112をオンにする、の(1)および(2)間の切り替えを行うものであり、フィルタ制御ユーティリティプログラム15によってその動作が制御される。
【0018】
フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、表示面11を縦向きで使用するための設定が操作キー12によって行われると(または横向きから縦向きへと表示装置1が旋回したことがセンサによって検知されると)、縦方向フィルタ111を機能させるための動作を切替スイッチ14に行わせ、一方、表示面11を横向きで使用するための設定が操作キー12によって行われると(または縦向きから横向きへと表示装置1が旋回した旨がセンサによって検知されると)、横方向フィルタ112を機能させるための動作を切替スイッチ14に行わせる。
【0019】
つまり、この表示装置1では、表示面11が縦長および横長のいずれの向きで使用される場合であっても、隣からの覗き見を防止すべくフィルタ制御が適切に行われる。
【0020】
図5は、この表示装置1のフィルタ制御の動作原理を示すフローチャートである。
【0021】
フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、表示面11の方向が切り替わったことを認識すると(ステップA1のYES)、それが縦向きから横向き、または横向きから縦向きのいずれの向きへの切り替わりであるかを判定する(ステップA2)。そして、縦向きから横向きへの切り替わりであれば(ステップA2のYES)、フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、縦方向フィルタ111をオフにして横方向フィルタ112をオンにする旨の指示を切替スイッチに与える(ステップA3)。逆に、横向きから縦向きへの切り替わりであれば(ステップA2のNO)、フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、横方向フィルタ112をオフにして縦方向フィルタ111をオンにする旨の指示を切替スイッチ14に与える(ステップA4)。
【0022】
ところで、以上では、表示面11が縦長および横長のいずれの向きで使用されても、隣からの覗き見を防止すべくフィルタ制御を行うことについて説明したが、次に、この表示装置1においては、(その向きに関わらず)表示面11の傾きに応じても、利用者以外の第三者からの覗き見を極力防止すべくさらにフィルタ制御を行っていることについての説明を行う。
【0023】
ここでは、図6に示すように、表示面11がほぼ垂直、ほぼ水平、その中間、の3段階のフィルタ制御を行うことを想定し、表示面11がほぼ垂直の場合にはフィルタの濃度を薄くし(図6(A))、表示面11が水平に近づいていくに従って、フィルタの濃度を濃くしていくように(図6(B),(C))、縦方向フィルタ111または横方向フィルタ112の濃度を自動的に調整する。
【0024】
この表示装置1では、前述したように、表示面11が縦長の向きで使用される場合には縦方向フィルタ111が機能し、横長の向きで使用される場合には横方向フィルタ112が機能するように、つまり、いずれの向きでも、正面から垂直方向にずれた位置からは見やすいように制御が行われている。そこで、この垂直方向からの覗き見が発生しやすい状態になる程、フィルタの濃度を濃くすることにより、プライバシ保護を強化する。
【0025】
そのために、この表示装置1は、図7に示すように、角度センサ(加速度センサ)16をさらに備える。角度センサ16が出力する検出信号は、フィルタ制御ユーティリティプログラム15に供給されており、フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、この検出信号により、表示面11の傾きが図6(A)〜(C)のいずれの状態にあるのかを監視し、その状態に対応する濃度に縦方向フィルタ111または横方向フィルタ112の濃度を調整するようフィルタ駆動回路13に指示する。
【0026】
図8は、この表示装置1の第2のフィルタ制御(濃度調整)の動作原理を示すフローチャートである。
【0027】
フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、表示面11の傾きを取得すると(ステップB1)、まず、ほぼ垂直であるか否かを判定可能な第1の閾値を上回っているかどうかを調べる(ステップB2)。もし、この第1の閾値を上回っていたら(ステップB2のYES)、フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、縦方向フィルタ111または横方向フィルタ112の濃度を(薄)に調整する旨の指示をフィルタ駆動回路13に与える(ステップB3)。
【0028】
また、この第1の閾値を上回っていなければ(ステップB2のNO)、フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、続いて、ほぼ水平であるか否かを判定可能な第2の閾値を上回っているかどうかを調べる(ステップB4)。そして、フィルタ制御ユーティリティプログラム15は、この第2の閾値を上回っていたら(ステップB4のYES)、縦方向フィルタ111または横方向フィルタ112の濃度を(中)に調整する旨の指示をフィルタ駆動回路13に与え(ステップB5)、一方、上回っていなければ(ステップB2のNO)、縦方向フィルタ111または横方向フィルタ112の濃度を(濃)に調整する旨の指示をフィルタ駆動回路13に与える(ステップB6)。
【0029】
以上により、この表示装置1では、表示面11が縦長および横長のいずれの向きで使用される場合であっても、隣からの覗き見を防止すべく行うフィルタ制御に加えて、表示面11の傾きに応じて、利用者以外の第三者からの覗き見を極力防止すべくさらにフィルタ制御が適切に行われることになる。
【0030】
なお、ここでは、角度センサ16として加速度センサを例示したが、図2に示した支持機構により支持される表示装置1では、表示装置1を任意の傾きで保持するためのヒンジ部にその保持状況を検知するためのセンサを設けるようにしてもよい。また、3段階で制御する例を示したが、2段階や4段階以上であっても、または角度センサ16を介して取得される傾きに対してリニアに濃度を変化させるように制御してもよい。
【0031】
このように、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の表示装置をPDAに適用した場合の例を示す図
【図2】同表示装置をデスクトップコンピュータに適用した場合の例を示す図
【図3】同表示装置が具備する縦方向フィルタおよび横方向フィルタの視野角制御フィルタとしての特性をそれぞれ説明するための概念図
【図4】同表示装置のフィルタ制御に係わる部分の概略構成を示す図
【図5】同表示装置のフィルタ制御の動作原理を示すフローチャート
【図6】同表示装置が具備する縦方向フィルタおよび横方向フィルタの濃度調整の基本原理を説明するための図
【図7】同表示装置の第2のフィルタ制御(濃度調整)に係わる部分の概略構成を示す図
【図8】同表示装置の第2のフィルタ制御(濃度調整)の動作原理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0033】
1…表示装置、11…表示画面、12…操作キー、13…フィルタ駆動回路、14…切替スイッチ、15…フィルタ制御ユーティリティプログラム、16…角度センサ、111…縦方向フィルタ、112…横方向フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面と、
前記表示画面の第1の方向に対して有効な第1の視野角制御フィルタと、
前記第1の方向と直交する前記表示画面の第2の方向に対して有効な第2の視野角制御フィルタと、
前記第1の視野角制御フィルタおよび前記第2の視野角制御フィルタを排他選択的に機能させるための切換手段と、
を具備することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1の方向および前記第2の方向のいずれを水平方向とした状態で前記表示画面を使用するかを設定するための操作手段と、
前記第1の方向を水平方向とする設定が行われた場合、前記第1の視野角制御フィルタを機能させ、前記第2の方向を水平方向とする設定が行われた場合、前記第2の視野角制御フィルタを機能させるように前記切換手段を駆動制御する制御手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の方向および前記第2の方向のいずれを水平方向とした状態で前記表示画面が使用されているかを検出するための方向センサと、
前記第1の方向を水平方向としていると検出された場合、前記第1の視野角制御フィルタを機能させ、前記第2の方向を水平方向としていると検出された場合、前記第2の視野角制御フィルタを機能させるように前記切換手段を駆動制御する制御手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示画面を起立させた状態で旋回可能とする旋回軸を有する支持機構を有し、
前記方向センサは、前記旋回軸による前記表示画面の旋回状況から前記第1の方向および前記第2の方向のいずれを水平方向とした状態で使用されているかを検出することを特徴とする請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示画面の傾きを検出する角度センサをさらに具備し、
前記制御手段は、前記角度センサの検出結果に基づき、前記第1の視野角制御フィルタまたは前記第2の視野角制御フィルタの濃度を制御することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記角度センサにより検出される傾きがが大きくなるに従って薄く、小さくなるに従って濃くなるように前記第1の視野角制御フィルタまたは前記第2の視野角制御フィルタの濃度を制御することを特徴とする請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
表示画面の第1の方向に対して有効な第1の視野角制御フィルタと、前記第1の方向と直交する前記表示画面の第2の方向に対して有効な第2の視野角制御フィルタとを重畳させて併設し、
前記第1の方向および前記第2の方向のいずれを水平方向とした状態で前記表示画面が使用されるかに応じて、前記第1の視野角制御フィルタおよび前記第2の視野角制御フィルタを排他選択的に機能させることを特徴とする表示装置のフィルタ制御方法。
【請求項8】
前記第1の方向を水平方向として使用される場合、前記第1の視野角制御フィルタを機能させ、前記第2の方向を水平方向として使用される場合、前記第2の視野角制御フィルタを機能させることを特徴とする表示装置のフィルタ制御方法。
【請求項9】
前記表示画面の傾きに応じて、前記第1の視野角制御フィルタまたは前記第2の視野角制御フィルタの濃度をさらに制御することを特徴とする請求項7または8記載の表示装置のフィルタ制御方法。
【請求項10】
前記傾きが大きくなるに従って薄く、小さくなるに従って濃くなるように前記第1の視野角制御フィルタまたは前記第2の視野角制御フィルタの濃度を制御することを特徴とする請求項9記載の表示装置のフィルタ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−206219(P2007−206219A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22945(P2006−22945)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】