説明

表示装置

【課題】遠くからでも容易に把握可能な態様で各種内容を表示する。
【解決手段】透明な表示板の表面に透明な光散乱領域を形成しておき、表示板の端面から表示板の内部に光を入射することで、光散乱領域を光らせる。入射した光は光散乱領域を光らせながら表示板の内部を進行するので、下流側では光の強さが不足し得る。そこで、光散乱領域の各箇所での光の散乱割合を、その箇所での目標輝度だけでなく、光を入射した側の端面からその箇所までの光散乱割合の分布も考慮して設定する。こうすれば光の強さの不足を、光散乱割合で補えるので、全ての光散乱領域を適切な明るさで光らせることが可能となる。表示板は透明なので向こうを見通すことができ、遠くからでも表示内容を容易に把握可能な態様で表示することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明板に文字や図形などを表示する表示装置に関し、詳しくは、表示装置の向こう側を見通すことが可能でありながら、表示内容が容易に視認可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技ホールでは、遊技客を呼び込むために、種々の演出が行われることが通常である。例えば、月毎に何日かのサービスデーを設け、サービスデーには遊技客が遊技球を獲得し易くするなどの特別なサービスを行うとともに、のぼりを立てたり、ポスターを貼ることによって、遊技客にサービスデーを報知するための演出が広く行われている。また、遊技客が獲得した遊技球をいわゆる球箱に入れて、他の遊技客から見易い位置に積み上げることで、遊技球を獲得し易い遊技ホールであることをアピールすることを狙った「球積み」と呼ばれる演出も広く行われている。
【0003】
もっとも「球積み」は、遊技ホールの通路に球箱を積み上げる関係上、遊技客の通行に支障が出たり、また、遊技客が遊技機を移動することも困難となったりする。そこで、こうした点に鑑みて、遊技機に設置されたシートの背面側や遊技機の上方に表示パネルを設けて、球箱を積み上げる代わりに、獲得した球数などを表示パネルに表示する技術も提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−156026号公報
【特許文献2】特開2004−81578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されている技術では、遊技ホール内で遊技機を選んでいる遊技客に対して効果的な演出を行うことが難しいという問題があった。すなわち、遊技ホールに入った遊技客は遊技機の近くまで行かなければ、その遊技機での遊技球の獲得状況を確認することはできない。そのため、たとえ大量の遊技球を獲得している遊技機が多数存在していたとしても、それらの遊技機を容易には見つけ出すことができないので、結果として、遊技球の獲得が容易な遊技ホールであることを遊技客に効果的に印象付けることは困難である。このため、遊技ホール内で遊技機を選んでいる遊技客が容易に把握できるような態様で、各遊技機での遊技球の獲得状況を演出することが可能となるような技術の開発が要請されている。
【0006】
また、遊技ホール内で遊技機を探している遊技客からでも容易に把握できるような演出が可能となれば、上述した球積みの演出に限らず、サービスデーの報知など、遊技客に対する種々の演出に活用することも可能となる。更には、このような演出が可能となれば、単に遊技ホール内での演出や報知に限らず、より広い範囲の対象に向けて種々の内容を表示することも可能となる。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、遊技ホール内で遊技機を選んでいる遊技者など、遠くからでも容易に把握可能な態様で表示する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の表示装置は次の構成を採用した。すなわち、
遊技ホールにおいて遊技機とともに用いられる表示装置において、
隣接して設置された前記遊技機の間に設けられるベース部と、
前記ベース部から立設されて、前記隣接する遊技機の間に設けられる透明な表示板と、
前記表示板の端面から該表示板の内部に向けて光を入射する光入射部と
を備え、
前記表示板の表面には、該表示板の内部から該表面に到達した光を散乱させる光散乱領域が、透明インクによって形成されていることを特徴とする。
【0009】
かかる態様の本発明の表示装置においては、隣接して設置された遊技機の間に透明な表示板が立設されている。そして、表示板の表面には、透明インクによって光散乱領域が形成されており、表示板の端面から表示板の内部に光を入射することで、光散乱領域を光らせることが可能となっている。
【0010】
光散乱領域は透明インクによって形成されているから、光を入射して光散乱領域を光らせない限り、一見した程度では、表示板は単なる透明な板のようにしか見えず、表示板の向こう側を容易に見通すことができる。このような状態で表示板の端面から光を入射してやれば、光散乱領域だけを光らせることができ、その結果、何もなかったところから、光散乱領域が光って浮き上がってきたかのような印象深い態様で表示することができる。そして、表示板自身は透明であるから、遊技ホール内で遊技機を選んでいる遊技者からも表示内容を容易に把握することができる。このため、遊技ホールで遊技機を選んでいる遊技客に対して、各種の表示内容を容易に認識させることが可能となる。
【0011】
尚、本明細書中で言う「透明インク」とは、インクの表面で光を反射させるために塗布されるインク(例えばペンキや、修正液、各種の印刷用インクなど。以下、反射型インクと呼ぶ)とは異なり、光がインク層を透過することを前提として塗布されるインクを言う。例えば、市販のいわゆるクリアインクを用いて、市販のいわゆる反射型インクを半分程度に希釈したインクは、光がインク層を十分に透過することができないので、本明細書中で言う「透明インク」には該当しない。これに対して、市販のクリアインクを用いて、市販の反射型インクを4分の1以下に希釈したインクであれば、光がインク層を十分に透過し得るので、本明細書中の「透明インク」に該当する。尚、ここでクリアインクと反射型インクとの比率は、それぞれのインク中の揮発成分を除いた体積比率によって定義される。例えば、「クリアインクを用いて反射型インクを半分に希釈する」とは、希釈したインクを乾燥(あるいは固化)させた時に、クリアインクに由来する成分と、反射型インクに由来する成分とが、同体積ずつ含まれていることを言う。
【0012】
また、透明インクでインク層を形成した場合、ほとんどの光はインク層を透過することができるが、反射型インクでインク層を形成した場合は、多くの光がインク層で遮られてしまう。従って、アクリル板などの上に一定面積以上の連続したインク層を形成して、その背面側から光を照らしたときに、インク層が形成された部分を透過する光が7割以下に減衰するインク(インク層を透過しようとする光のうち、3割以上の光を遮ってしまうインク)は、本明細書に言う「透明インク」には該当しない。これに対して、7割より多くの光がインク層を透過するインクであれば、本明細書に言う「透明インク」に該当する。
【0013】
尚、透明インクで画像を印刷した場合でも、光の加減によっては白っぽく見えてしまうことがある。これは、インク層を形成することで表示板の表面に微細な凹凸ができてしまい、その凹凸で光が乱反射される結果、インク層自体は透明であるにも拘わらず、画像が白っぽく見えてしまう場合があるためである。しかし、この場合でも、凹凸による乱反射を抑えてやれば、画像は透明となる。従って、たとえ画像が白っぽく見えた場合でも、上から透明なアクリルラッカーを塗布することで画像が透明になるのであれば、その画像は本明細書に言う「透明インク」を用いて形成されていると言うことができる。何故なら、このような場合は、インク層は透明である(ほとんどの光を透過させる)にも拘わらず、表面の凹凸で光が乱反射していたために、画像が白っぽく見えていたと判断できるからである。逆に言えば、アクリルラッカーを塗布しても、ほとんど透き通らないようであれば、本明細書で言う「透明インク」で形成された画像には該当しない。
【0014】
また、このような本発明の表示装置においては、表示板の表面に光散乱領域を形成する際に、光散乱領域の各箇所での光散乱割合を、その箇所での目標輝度だけでなく、光を入射した側の端面からその箇所までの光散乱割合の分布も考慮して設定しておいてもよい。
【0015】
表示板の端面から光を入射して光散乱領域を光らせる場合、入射された光は光散乱領域を光らせながら表示板の内部を進行することになるので、下流側になると光の強さが不足して、十分な明るさで光らせることが困難になる場合がある。しかし、光散乱領域の各箇所での光散乱割合を、その箇所での目標輝度だけでなく、光を入射した側の端面からその箇所までの光散乱割合の分布も考慮して設定しておけば、光強さの不足分を、光散乱割合によって補うことができるので、全ての光散乱領域を適切な明るさで光らせることができる。その結果、遊技ホール内の遊技客に対して、より明確な表示を行って、各種の表示内容を容易に認識させることが可能となる。
【0016】
また、かかる本発明の表示装置においては、表示板に光が入射される側の端面から、光散乱領域の各箇所までの距離も考慮して、各箇所での光散乱割合を設定してもよい。
【0017】
表示板の端面から入射された光は、表示板の内部を進行するだけでも減衰によって光の強さが減少し、また、光源からの距離が長くなるほど、拡散によって光の強さが減少する場合もある。これらの影響は、表示板の端面からの距離に依存するから、光散乱領域の各箇所での光散乱割合を設定する際に、端面からの距離も考慮して設定することで、各箇所での光散乱割合をより適切に設定することが可能となる。
【0018】
また、上述した本発明の表示装置においては、表示板の表面を複数の均等な画素に区分して、各画素内に、透明なインクによるインク層を形成することによって光散乱領域を形成しても良い。そして、各画素内に形成されるインク層の面積を変更することによって、光散乱領域の各箇所での光散乱割合を変更することとしても良い。
【0019】
このような方法によれば、印刷技術を用いて光散乱領域を形成することができるので、光散乱領域を、適切に且つ簡単に形成することが可能となる。
【0020】
画素内に形成するインク層の面積は、次のようにして決定しても良い。先ず、光が入射する方向から見て最も上流側にある画素について、その画素に形成するインク層の面積に比例した指標値を決定する。この指標値は、その画素を光らせようとする目標の輝度(目標輝度)に応じて決定すればよい。次いで、それより下流の画素については、その画素の目標輝度と、その画素よりも上流側にある画素について既に得られている指標値とに基づいて、指標値を決定する。こうして、各画素についての指標値を決定する。その後、各画素について得られた指標値の中で最も大きな指標値(最大指標値)が所定の面積となるように各画素の指標値を読み替えることによって、各画素に形成するインク層の面積を決定することとしてもよい。
【0021】
こうすれば、光散乱領域の画素が、表示板内での光の進行方向に沿って上流側にあるか、下流側にあるかに拘わらず、その画素を目標輝度に応じた適切な明るさで光らせることが可能となる。また、最大指標値を読み替える面積の設定値を変更すれば、光散乱領域を光らせる際のコントラストを、適切なコントラストに変更することができる。従って、入射する光の強さを徒に増加させずとも、光散乱領域を、十分なコントラストで表示させることが可能となる。
【0022】
また、かかる本発明の表示装置において、次のようにしてカラー画像を表示可能としても良い。先ず、赤色光を入射するR光入射部が端部に設けられたR成分表示板と、緑色光を入射するG光入射部が端部に設けられたG成分表示板と、青色光を入射するB光入射部が端部に設けられたB成分表示板とを、三枚合わせに重ねて表示板を構成する(尚、R成分表示板、G成分表示板、B成分表示板をまとめて、RGBの各成分表示板と称することがある)。また、RGBの各成分表示板の表面には、それぞれに光散乱領域を形成しておく。ここで、それぞれの光散乱領域は、各箇所での光散乱割合を次のようにして決定する。先ず、RGBの各成分表示板について、各画素の指標値を決定する。各画素での指標値は、上述した方法によって決定することができる。次いで、RGBの各成分表示板について得られた全ての指標値の中から最大指標値を抽出した後、RGBの各成分表示板の各画素について得られた指標値を読み替えて、各画素に形成するインク層の面積を決定する。指標値をインク層の面積に読み替える際には、最大指標値が所定の面積となるような比率で読み替える。こうして決定した面積に従って、各画素にインク層を形成することによって、RGBの各成分についての光散乱領域を形成することとしてもよい。
【0023】
カラー画像を適切な色で表示するためには、R色の光と、G色の光と、B色の光とを適切な比率で混合させる必要がある。従って、RGBの各成分についての表示板を重ね合わせて、適切にカラー画像を表示するためには、次のようなことが重要となる。先ず、RGBの各成分についての表示板では、光の進行方向に沿って上流側から下流側までの全ての光散乱領域で、適切な明るさで光らせることが重要である。また、RGBの各成分の光散乱領域を光らせた時に、各成分間の明るさの比率も、表示しようとする色に応じた適切な比率となっていることが重要である。上述した本発明の表示装置では、RGBの各成分表示板の光散乱領域は、画素毎に求めた指標値をインク層の面積に読み替えることによって形成されているので、全ての光散乱領域を適切な明るさで光らせることが可能である。また、画素毎に求めた指標値をインク層の面積に読み替える際には、RGBの各成分表示板について別個に読み替えるのではなく、RGBの各成分表示板について得られた全ての指標値の中から最大指標値を抽出し、その最大指標値が所定の面積となるように、RGBの各成分表示板の指標値を読み替えている。このため、RGBの各成分間の明るさが適切な比率となるように、RGBの各成分表示板の光散乱領域を光らせることができる。その結果、カラー画像を適切に表示させることが可能となる。
【0024】
あるいは、各画素で得られた最大指標値を用いる代わりに、各画素で得られた指標値の平均値が所定の基準面積となるように各画素の指標値を読み替えることによって、各画素に形成するインク層の面積を決定することとしてもよい。尚、指標値の平均値を読み替える基準面積は、上述した最大指標値を読み替える所定の面積よりも小さな面積に設定しておく。
【0025】
実際に各画素での指標値を算出すると、極一部の画素でだけ、大きな指標値が得られる場合がある。このような場合に、その僅かな画素で得られた最大指標値が所定の面積となるように、他の画素の指標値を読み替えると、全体的に小さな面積に読み替えられてしまい、十分な明るさを確保できない場合が起こり得る。このような場合には、各画素で得られた指標値の平均値が、所定の基準面積となるように読み替えてやれば、たとえ極一部の画素が大きな指標値を有する場合でも、他の画素の指標値を適切な面積に読み替えることが可能となる。
【0026】
もちろん、カラー画像を表示する場合には、RGBの各成分について得られた指標値の平均値が、所定の基準面積となるように読み替えてやればよい。こうすれば、RGBの各成分間の明るさを適切な比率に保ったまま、RGBの各成分表示板の画像を光らせて、適切にカラー画像を表示することが可能となる。
【0027】
また、上述した本発明の表示装置においては、表示板の表面の、少なくとも光散乱領域以外の部分には、透明な樹脂材料を用いて形成された透明膜を設けることとして、この透明膜の屈折率を、表示板の屈折率およびインク層の屈折率よりも小さな屈折率としてもよい。
【0028】
こうすれば、光散乱領域以外の部分にも、透明な樹脂材料による透明膜が形成されるので、表示板の表面に、透明インクによる光散乱領域が形成されていることを、より気付かれ難くすることが可能となる。このとき、透明膜の屈折率を、表示板の屈折率およびインク層の屈折率よりも小さな屈折率としておけば、表示板の内部に光を入射したときに、光散乱領域のみを光らせることが可能となる。尚、透明膜は、光散乱領域以外の部分にだけ形成しても良いし、光散乱領域が形成されている部分にも、光散乱領域の上から透明膜を形成しても良い。
【0029】
また、上述した本発明の表示装置においては、複数の透明な板状部材を、光入射部に対して並列に設けることによって、表示板を構成してもよい。
【0030】
複数の透明な板状部材を光入射部に対して並列に設けておけば、ある板状部材に入射した光は、その板状部材の内部だけを進行する。これは、たとえ見かけ上は、板状部材の端面が接するように設けられていたとしても、実際には、端面の間に極薄い空気層が介在するため、板状部材の内部を進行してきた光が端面で反射されてしまうためである。従って、複数の透明な板状部材を光入射部に対して並列に設けることによって、表示板を構成しておけば、各板状部材の表面に形成された光散乱領域だけを光らせることが可能となる。
【0031】
また、上述した本発明の表示装置においては、表示板の表面を保護する透明な板状部材を、表示板の表面を覆うように設けても良い。
【0032】
表示板の表面に傷が付くと、光散乱領域ではない部分が光ったり、あるいは逆に、光散乱領域のインク層が剥がれてしまい、適切な明るさで光らせることができなくなってしまったりする。従って、透明な板状部材によって、表示板の表面を保護しておけば、こうした事態を未然に回避することが可能となるので好適である。
【0033】
また、上述した本発明の表示装置においては、表示板を内部に収納可能な収納部と、表示部を支えながら摺動可能な摺動部材とベース部に設けておき、そして、表示板を摺動させることによって、ベース部から立設した状態と、収納部に収納された状態とに切り換え可能に構成してもよい。
【0034】
表示装置の表示板は板状部材であるため、この表示板が、遊技機の各種メンテナンス等、何らかの作業の邪魔になることが起こり得る。従って、必要に応じて表示板を摺動させて、収納部に収納しておけば、他の作業(例えば、遊技機の各種メンテナンス)に支障を来すことを回避することができる。また、メンテナンスの終了後は、表示板を摺動させて収納部から引き出してやれば、遊技客に対して、各種の表示を行うことが可能となる。
【0035】
また、上述した本発明の表示装置においては、透明な平板によって形成された可動パネルを、表示板に対して摺動可能に設けることとしてもよい。
【0036】
表示板は、遊技機の間に立設されるので、隣の遊技者が喫煙するタバコの煙が入ってくることを防ぐ機能(分煙機能)も有している。従って、透明な平板によって形成された可動パネルを、表示板に対して摺動可能に設けておけば、分煙機能が不十分と感じられた場合でも、必要に応じて可動パネルを引き出すことで、十分な分煙機能を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
B.図形の表示原理:
C.インク層の形成方法:
D.カラー表示方法:
E.変形例:
E−1.第1の変形例:
E−2.第2の変形例:
E−3.第3の変形例:
E−4.第4の変形例:
E−5.第5の変形例:
【0038】
A.装置構成 :
図1は、本実施例の表示装置100が遊技機12とともに遊技ホールに設置されている様子を示した説明図である。周知のように遊技ホールには、複数台の遊技機がひとかたまりに並べられて、「島」を構成する状態で設置されている。図1には、島10を構成する複数の遊技機12の中から、3台分の遊技機12のみが抜き出されて表示されている。本実施例の表示装置100は、連続して設置された遊技機12と遊技機12との間に設けられて、遊技機12とともに用いられるようになっている。
【0039】
図1に示されるように、本実施例の表示装置100の構成を大まかに見ると、遊技機12の間に設けられるベース部102と、ベース部102から立設された透明板104などから構成されている。このため、遊技機12と遊技機12との間が透明板104によって仕切られた形となるが、透明板104は、アクリル樹脂やガラスなどの透明材料で形成されているため、島10の端からでも視界が遮られることなく、向こう側の遊技機12まで見通すことが可能である。そして、必要に応じて、後述するように透明板104に文字や図形を浮き上がらせるように表示させることによって、遊技ホール内で遊技機を選んでいる遊技客に対しても、効果的な演出を行うことが可能となっている。
【0040】
図2は、遊技機12と遊技機12との間に表示装置100が設けられている様子を示す説明図である。図示されるように、遊技機12の隣には、遊技球(あるいは遊技メダルなど)の貸出機14が設けられ、貸出機14の隣に表示装置100が設けられている。そして、遊技機12、貸出機14、表示装置100を1セットとして、このセットが繰り返されるようにして、1つの島10が構成されている。尚、遊技機12、貸出機14、表示装置100の順序については、図2に示した順序に限られるものではなく、例えば、貸出機14、遊技機12、表示装置100の順序で並べることも可能である。
【0041】
図3は、本実施例の表示装置100の構成を示す組み立て図である。図1を用いて前述したように、表示装置100は、大きくは、ベース部102と透明板104とから構成されている。このうちベース部102は、金属製の枠体によって構成されており、内部に透明板104を収納可能となっている。透明板104の上端および下端には、金属製のガイドレール108が嵌め込まれており、このガイドレール108が、ベース部102の内部に設けられた金属製の誘導レール110に嵌め込まれ、そして誘導レール110は、約半分程度までベース部102の内部からせり出すことができるように構成されている。このため、透明板104は、ベース部102の内部に収納された状態から、誘導レール110とともにベース部102の外部に引き出され、誘導レール110が半分程度まで引き出された後は、ガイドレール108の部分で誘導レール110に対して摺動して、透明板104のほぼ全面をベース部102の外部に引き出すことが可能となっている。尚、誘導レール110には図示しないロック機構が設けられており、誘導レール110をベース部102に対して半分以上、引き出そうとしても、誘導レール110がロックされて、それ以上には引き出せないようになっている。また、ガイドレール108にも図示しないロック機構が設けられている。このため、透明板104のほぼ全面が引き出された時点でロックされて、それ以上は透明板104を引き出すことができないように構成されている。
【0042】
また、透明板104の端部には、ベース部102側に、LEDユニット106が設けられており、透明板104の端面から、透明板104の内部に向かって光を入射することが可能となっている。更に、透明板104の表面には、透明なインクで所望の文字あるいは図形などが印刷されている。この文字あるいは図形などは、透明なインクを用いて印刷されている。このため、印刷された文字や図形などは、一見した程度ではなかなか気付かれ難いが、LEDユニット106を用いて透明板104の内部に光を入射すると、透明板104の上に浮き上がって見えるようになっている。図3では、透明板104の表面に透明なインクを用いて図形が印刷されている様子を、細い破線によって表している。
【0043】
図4は、本実施例の表示装置100に組み込まれている透明板104およびLEDユニット106の大まかな構造を示した説明図である。図示されるように、透明板104の端部にはLEDユニット106が設けられており、LEDユニット106の内部には、複数の発光ダイオード(LED)106Lが、透明板104の端面に向けて一列に搭載されている。このため、これらの発光ダイオード106Lを発光させることにより、透明板104の端面から透明板104の内部に光を入射することが可能となっている。
【0044】
また、透明板104の表面には、透明なインクによって箱の図形が印刷されている。透明なインクで印刷されているので、通常の状態では、図形が印刷されていることは、一見した程度では分かり難い。しかし、発光ダイオード106Lを点灯して透明板104の内部に光を入射すると、表面に形成されたインク層105の部分が光って、印刷された図形が浮かび上がるように表示されるようになっている。以下では、透明インクで印刷された図形が浮かび上がるように表示されるメカニズムについて説明する。
【0045】
B.図形の表示原理 :
図5は、透明板104の表面に形成された透明なインク層105が、浮かび上がるように表示される原理を示した説明図である。図5(a)に示されるように、透明板104の端部に発光ダイオード106Lを設けて、透明板104の端面から内部に光を入射すると、入射した大部分の光は、透明板104の内部を進行して、透明板104の表面と浅い角度で交差する。このように、透明板104の表面に対して浅い角度で交差した光は、透明板104の表面に達しても外部には透過することなく、全ての光が表面で反射して、再び透明板104の内部を進行し、今度は反対側の表面で反射する。こうして反射を繰り返しながら透明板104の内部を伝播していく。このような現象は、光の屈折の一態様として現れる現象であり、「完全反射」と呼ばれることがある。
【0046】
図5(b)は、光が屈折する様子を概念的に示した説明図である。光の屈折は、屈折率の異なる2つの媒質の境界面を光が通過しようとするときに生じる現象であり、「スネルの法則」としてまとめられている。ここで屈折率とは、媒質中での光の通り易さに関連する一種の物性値である。スネルの法則によれば、ある屈折率の媒質中を進行している光が、異なる屈折率を有する媒質との境界面に達すると、一部の光は境界面で反射し、残りの光は境界面を通過して異なる屈折率の媒質中を進行する。このとき、境界面で反射する光は、境界面に光が入射する角度(入射角θi )と境界面から光が反射する角度(反射角θr )とが等しくなる方向に反射する。ここで、入射角θi は、通常、境界面から法線を立てて、法線と境界面に入射する光(入射光)の進行方向との間の角度によって表され、反射角θr は、境界面の法線と境界面で反射した光(反射光)の進行方向とのなす角度によって表されている。
【0047】
また、異なる屈折率の媒質中を進行する光(透過光)の進行方向は、上流側の媒質の屈折率をn1 、下流側の媒質の屈折率をn2 とし、下流側の媒質中を進行する透過光の角度(透過角度θt )とすると、
n1 ・sinθi =n2 ・sinθt
を満足するような透過角度θt の方向に、下流側の媒質中を進行する。ここで、透過角度θt は、屈折率の異なる媒質間の境界面の法線と、透過光の進行方向との間の角度によって表されている。図5(b)には、このようなスネルの法則に従って、入射光の一部が反射するとともに、残りの光が透過光として、異なる媒質中を進行する様子が概念的に示されている。例えば、アクリル樹脂の板の中を進行している光が樹脂の表面に達すると、スネルの法則によって、表面部分で進行方向が曲げられた後に、空気中を進行することになる。ここで、アクリル樹脂の屈折率は約1.5、空気の屈折率は約1.0であり、屈折率の高い媒質から低い媒質中に侵入する場合に相当するから、空気中に入った透過光は、境界面(すなわち、アクリル樹脂の表面)に近付く方向に進行方向が曲げられて、空気中を進行することになる。また逆に、空気中を進行する光がアクリル樹脂内に侵入する場合のように、屈折率の低い媒質から高い媒質中に侵入する場合は、境界面から離れる方向に、光の進行方向が曲げられることになる。
【0048】
上述したスネルの法則から、屈折率の高い媒質中を進行していた光が、屈折率の低い媒質との境界に達した場合に、全ての光が反射するような特別な条件が存在していることが分かる。すなわち、上述したように、屈折率の高い媒質から低い媒質中に光が進行する場合、下流側の媒質中を進行する光は、入射してきた方向に対して、若干、境界面の側に進行方向が曲げられる。従って、境界面に入射する光の角度を次第に寝かせて(入射角θi を大きくして)いくと、境界面の向こう側に透過した光の向きは、スネルの法則によって境界面に近付く方向に曲げられるので、ある入射角θi に達した時点で透過光の進行方向が境界面と平行になってしまう。このような状態は、下流側の媒質中に光が侵入できない状態である。更に、この入射角θi よりも寝かせて(大きな角度入射角θi で)境界面に光が入射すると、全ての光が境界面で反射してしまうことを意味している。図5(c)には、このような状態が概念的に示されている。また、このような状態(透過光の進行方向が境界面と平行になる状態)となる入射角θi は、臨界角θc と呼ばれている。
【0049】
これに対して、屈折率の低い媒質中から屈折率の高い媒質中に光が進行しようとする場合には、境界面を透過した光は、スネルの法則によって境界面から遠ざかる方向に曲げられる。このため、透過光の進行方向が境界面と平行になる状態は起こり得ず、臨界角θc は存在しない。
【0050】
以上に説明したように、屈折率の高い媒質中から低い媒質中に光が出ようとする場合には、臨界角θc を考えることができ、境界面に対して臨界角θc よりも大きな角度で(すなわち、境界面に対して寝かせて)光が入射すると、全ての光が境界面で反射してしまい、屈折率の低い媒質中に出ていくことができなくなる。本明細書中では、このような条件を、「完全反射の条件」と呼ぶことにする。ちなみに、アクリル樹脂(屈折率は約1.5)内から空気(屈折率は約1.0)中に光が出ようとする場合には、臨界角θc は約42度となる。
【0051】
本実施例の表示装置100では、上述した完全反射の条件を利用することにより、発光ダイオード106Lからの光を、透明板104の表面に印刷されたインク層105まで効率よく導いて、インク層105を光らせるようになっている。すなわち、透明板104は、アクリル樹脂あるいはガラスなどの透明材料によって形成されているが、これらの材料は何れも、空気よりは屈折率が大きな媒質である。また、薄い透明板104の端面から光を入射すると、入射された光の大部分は、透明板104の表面に対して浅い角度で(大きな入射角で)進行することとなる。結局、端面から入射した光の中で、透明板104の表面に対して臨界角θc よりも大きな入射角で入射した光については完全反射の条件が成り立ち、その結果、端面から入射した光の多くは透明板104の表面で反射を繰り返しながら、透明板104の内部を進行していくことになる。
【0052】
図5(a)には、透明板104の端面から入射した光が、透明板104の表面で反射を繰り返しながら、透明板104の内部を進行していく様子を、太い破線あるいは太い一点鎖線の矢印によって表されている。尚、端面の近傍では、臨界角θc よりも小さな角度で(すなわち、表面に対して垂直に近い方向から)、透明板104の表面に入射する光も存在する。図5(a)中に細い二点差線で示した矢印は、臨界角θc よりも小さな角度で、透明板104の表面に入射する光を例示したものである。このような光については、完全反射の条件が成り立っていないので、光の一部は透明板104の表面を透過して空気中に進行し、残りの光は透明板104の内部に反射する。反射した光は透明板104の内部を通過して反対側の表面に達して、またこの表面で一部の光は空気中に進行し、残りの光は反射して再び透明板104の内部を通過する。完全反射の条件を満たさない光は、こうしたことを繰り返しながら急激に減衰するため、端面から少し進行するまでにほとんど消滅してしまう。そして、それより先の領域では、完全反射の条件を満たした光のみが、透明板104の内部を進行することになる。
【0053】
こうして透明板104の内部を進行した光は、やがて透明板104の表面にインク層105が形成された領域に到達する。インク層の材質は、透明板104の材質とは違うので、屈折率も異なっているが、透明板104と空気との違いに比べれば、透明板104とインク層105とでは、屈折率が大きく異なることはない(実際には、透明板104の屈折率よりも若干大きく、例えば透明板104がアクリル材料で形成されている場合であれば、アクリルの屈折率である約1.5に対して、1.6程度の屈折率であることが望ましい)。このため、透明板104とインク層105との境界面に達した光は、ほとんど進行方向を曲げられることなく、そのまま境界面を通過して、インク層105の表面に到達する。
【0054】
ここで、インク層105の表面には、微視的に見れば凹凸が存在しており、表面の角度も場所によって種々に変化している。このため、インク層105の表面では完全反射の条件が崩れる箇所が発生していることになり、一部の光がインク層105の表面から透過して、外部に洩れるようになる。また、残りの光はインク層105の表面で反射して、透明板104側に戻っていくが、しかし、この光についても完全反射の条件が成立するとは限らない。このため、透明板104の端面近傍で起こった現象と同様な理由により、表面での反射を繰り返す度に少しずつ外部に光が透過し、それとともに透明板104の内部を伝播する光は減衰していく。このように、完全反射の条件によって透明板104の表面で反射を繰り返しながら、透明板104の内部を進行してきた光は、インク層105に到達すると、インク層105の表面の一部で完全反射の条件が崩れて、少しずつ外部に光が漏れ出すようになり、その結果、インク層105の部分が明るく光っているように見えることになる。これに対して、インク層105よりも上流側の領域、すなわち、完全反射の条件を満たしながら透明板104の内部を進行している領域では、透明板104の表面から光が漏れ出すことはないので、光って見えることはない。
【0055】
尚、このようなメカニズムは、透明板104の表面のインク層105を、いわゆるインクジェットプリンタを用いて印刷した場合に、より顕著に表れる。周知のように、インクジェットプリンタでは、細かなインク滴を吐出することによって画像を印刷する。従って、インクジェットプリンタを用いて、透明板104の表面に印刷されたインク層105は、細かな(小さな面積の)インク層105が集まって形成されている。しかも、インク層105の面積が小さいと、インクの表面張力の働きで、インク層105の表面(空気との境界面)は曲面状に形成される。このため、インクジェットプリンタを用いて透明板104を印刷した場合、インク層105に到達した光の中で完全反射の条件を満たさずに、外部に透過する光の比率が大きくなるので、透明板104を十分な明るさで光らせることが可能となる。
【0056】
また、透明板104の端面からの光の入射を停止すると、インク層105は光らなくなる。そして、インク層105が光らなくなると、透明な透明板104の上に、透明なインクの層が形成されているだけなので、一見した程度では、インク層105が形成されていることには気が付き難くなっている。このような状態で、透明板104の端面から光を入射すると、透明な透明板104の上に、インク層105が形成された部分だけが明るく光って、あたかも浮き上がっているかのように見えるのである。
【0057】
尚、図5(a)では、透明板104の端面の近傍で、完全反射の条件を満たさない光が減衰した後、完全反射の条件を満たす光のみが反射を繰り返しながら、透明板104の内部を伝播する領域を、「光伝播領域」と表示している。また、光伝播領域から伝播してきた光の完全反射の条件が崩れて、一部の光が少しずつ外部に漏れ出す領域(すなわち、インク層105が形成されている領域)を、「光散乱領域」と表示している。
【0058】
C.インク層の形成方法 :
以上に説明したように、透明板104の表面にインク層105を形成しておけば、その部分を光らせることができる。また、ある領域を、隣の領域よりも明るく光らせたいのであれば、その領域内に形成するインク層105の面積を大きくしておけばよい。例えば、透明板104の表面を格子状の小さなマス目に分割しておき、ある領域内の各マス目には、マス目の1/4の面積に相当するインク層105を形成し、別の領域内の各マス目には、マス目の1/2の面積のインク層105を形成したとする。すると、マス目の1/2の面積のインク層105が形成された領域は、マス目の1/4の面積のインク層105が形成された領域に比べて、約2倍の明るさに光らせることが可能となる。そして、このような原理を用いれば、明るさが滑らかに変化するような自然画像を、透明板104の上に浮かび上がらせることも可能となる。
【0059】
もっとも、実際に試してみると、各マス目の面積を、光らせたい明るさに応じて単純に設定したのでは足らず、画像を適切に光らせるためには更なる工夫が必要となることが判明した。以下では、画像を適切に光らせるために行われた工夫について説明するが、その準備として、光らせたい明るさに応じて、単純にインク層105の面積を設定する方法について簡単に説明しておく。
【0060】
図6は、表示しようとする画像の画像データを概念的に表した説明図である。一般に、画像データは、画像を、画素と呼ばれる小さなマス目に分割し、各マス目について、明るさを示す輝度データが設定された形式で表現されている。また、いわゆる白黒画像の画像データであれば、各画素(すなわち、マス目)に1つずつ輝度データが設定されているが、カラー画像の画像データでは、それぞれの画素について、R成分、G成分、B成分の各色成分の輝度データが設定されている。以下では、説明を単純にするために、白黒画像の画像データを用いて説明するが、カラー画像の画像データに対しても、ほぼ同様な説明が成立する。また、輝度データは、いわゆる8ビットのデータであり、0〜255の階調値を取り得る256階調のデータとして表現されているものとする。最も単純な方法としては、画像の各画素に設定されている輝度データに応じて、画素毎にインク層105の面積を設定していけばよい。
【0061】
図7は、画素毎の輝度データに応じた面積で、画素内にインク層105を形成する様子を示した説明図である。本実施例では、1つの画素を縦横2つずつの4つの小領域に分割して、輝度データに応じた数の小領域にインク層105を形成することとしている。もちろん、このような方法に限らず、例えば縦横4つずつ、合計で16個の小領域に画素を分割して、輝度データに応じた数の小領域にインク層105を形成しても良いし、更には、より多くの小領域に分割しても良い。また、1つの画素の大きさは、画像データの縦方向および横方向の画素数(すなわち、解像度)と、画像を印刷する大きさとによって決定されるが、画像データの解像度が高すぎるため、あるいは印刷する大きさが小さすぎるために、1つの画素の大きさが小さくなってしまう場合には、複数の画素をまとめて大きな画素を形成した後、その大きな画素を複数の小領域に分割して、同様の処理を行えばよい。
【0062】
1つの画素を4つの小領域に分割する場合について考えると、1つの画素では、「画素内にインク層105を全く形成しない状態」、「1つの小領域にだけインク層105を形成する状態」、「2つの小領域にインク層105を形成する状態」、「3つの小領域にインク層105を形成する状態」、「全ての小領域にインク層105を形成する状態」の、5つの状態を表現することができる。当然、画素内の全ての小領域にインク層105を形成した状態が最も明るい状態となり、画素内には全くインク層105を形成しない状態が、最も暗い状態となる。また、画素内の半分の小領域にインク層105を形成すれば、中間の明るさを得ることができる。
【0063】
このことから、輝度データの階調値が0〜255の範囲を取り得るとすると、図7(a)に示すように、輝度データの階調値が0〜63の画素については、画素内にインク層105を形成せず、輝度データの階調値が64〜127の画素については、1つの小領域にだけインク層105を形成すればよい。図中では、インク層105が形成された小領域には、斜線が付されて表示されている。また、輝度データの階調値が128〜191の画素については、2つの小領域にインク層105を形成し、輝度データの階調値が192〜254の画素については、3つの小領域にインク層105を形成すればよい。そして、輝度データの階調値が255の画素については、画素内の全ての小領域にインク層105を形成すればよい。こうすれば、輝度データの階調値が大きくなるに従って、画素を明るく光らせるようにすることが可能となる。
【0064】
もっとも、図7(a)に示した方法では、輝度データは階調値0〜階調値255の256段階に変化するのに対して、画素の明るさは、全く光らない状態を含めて5段階にしか変化させることができない。そこで、これを補うために、本実施例では次のような方法も組み合わせて使用している。
【0065】
例えば、図7(b)に示したように、ある画素での輝度データが階調値16であり、その画素の右の画素、下の画素、右下の画素についても、輝度データの階調値が16であったものとする。何れの画素の輝度データも階調値16であるから、図7(a)の方法に従えば、どの画素についてもインク層105は形成されない筈であり、これら4つの画素は全く光らない状態となる。しかし、実際には、輝度データの階調値は「16」であるから、いわば階調値16分だけ積み残した状態となっている。各画素で階調値16の積み残しが発生しているのであるから、4つの画素をまとめれば階調値64(=16×4)の積み残しが発生していると考えることができる。そして、階調値64の輝度データであれば、1つの小領域にインク層105を形成することで表現することが可能である。
【0066】
こうしたことを利用すれば、輝度データの階調値に応じて、より適切にインク層105を形成することが可能となる。すなわち、図7(a)に示すようにして、輝度データの階調値が「64」増える毎に、インク層105を形成する小領域を1つずつ増やすこととすると、輝度データの階調値が64の倍数にならない限り、各画素にはインク層105の面積に反映させきれない積み残しの階調値が少しずつ発生する。そこで、これら積み残した階調値をまとめて、階調値64に達したら、小領域1つ分だけ追加してインク層105を形成するのである。図7(b)には、輝度データの階調値が「16」の4つの画素について、それぞれ階調値に応じてインク層105を形成する小領域の数を決定した後、各画素で積み残した階調値をまとめて、小領域1つ分だけ、追加でインク層105を形成することとしている様子が、概念的に示されている。
【0067】
図7(c)には、輝度データの階調値が「80」の4つの画素について、同様にして、インク層105を形成する小領域の数を画素毎に決定している様子が示されている。すなわち、階調値80の画素に対しては、図7(a)に示したように、1つの小領域にインク層105が形成される。しかし、小領域の1つ分は輝度データの階調値64に相当するから、これでは画素あたり階調値16(=80−64)の積み残しが生じる。そして、4つの画素での積み残しの階調値を合わせれば、小領域1つ分の階調値に達する。そこで、小領域1つ分だけ、追加のインク層105を形成することで、4つの画素で生じた積み残しの階調値を解消する。
【0068】
以上に説明した例では、4つの画素に対して1つの小領域にインク層105を形成しているから、1つの画素に換算すれば、1/4の小領域にインク層105を形成したことに対応する。従って、図7(a)に示した方法では、画素あたりのインク層105の面積を5段階にしか変化させることができないのに対して、図7(b)および図7(c)に示した方法を用いれば、13(=4×3+1)段階に変化させることが可能となる。更に、4つの画素をまとめるのではなく、縦横3つずつの9つの画素、あるいは縦横4つずつの16個の画素と、まとめる画素数を増やしていけば、より多段階に変化させることも可能である。
【0069】
尚、図7(b)および図7(c)では、4つの画素で発生した積み残しの階調値をまとめても、階調値が64に達しなかった場合は、積み残した階調値は一旦、キャンセルしてしまい、小領域の数には反映させないものとしている。しかし、積み残した階調値の合計が階調値64に達しなかった場合には、更に隣の画素に繰り越して、合計値が階調値64に達するまで、どんどん積み増していくようにしても良い。こうすれば、原理的には、1画素あたりのインク層105の面積を、輝度データと同じく256段階に変化させることも可能となる。
【0070】
以上のようにすれば、画素毎に輝度データが設定された画像データを、画素内に形成するインク層105の面積に置き換えることが可能となる。そして、画素に形成されているインク層105の面積は、透明板104の内部からの光が到達したときの、その画素の明るさに比例するから、このようにして画像データをインク層105の面積に置き換えてやれば、画像データによって表現される画像を、透明板104の上に浮かび上がらせることが可能となる筈である。
【0071】
図8には、画像データの画素一列分の輝度データを、画素内に形成するインク層105の面積に変換した様子が示されている。図8では、図6に示した画像の中から、破線で囲って示した画素1列分の画像データを抜き出して表示している。図中で斜線を付して示した部分がインク層105を形成する領域である。そして、図5を用いて前述したように、完全反射の条件を満たしながら透明板104の内部を伝播してきた光は、インク層105の部分に達すると外部に洩れ出す結果、図8で斜線を付したインク層105の部分が明るく光ることになる。
【0072】
ところが、透明板104の上に、図8に斜線で示したようなインク層105を形成して(インクを用いて印刷して)、透明板104の端面から光を入射させて画像を光らせてみたところ、光の進行方向に沿って下流側になるほど、暗い画像になってしまうことが分かった。このようなことが生じる理由としては、上流側のインク層105で光が漏れ出すことで、下流側のインク層105に供給される光が足りなくなり、その結果、下流側になるほど暗い画像になってしまうものと考えられる。従って、図7に示した方法で、画像データの各画素に設定されている輝度データを、単純にインク層105の面積に変換したのでは、画像を適切に光らせることができず、更なる工夫が必要となる。そこで、本実施例の表示装置100では、上流側のインク層105で光が漏れ出すことも考慮して、各画素に形成するインク層105の面積を適切に設定するために、次のような方法を開発した。
【0073】
図9は、本実施例の表示装置100において、画像データをインク層105の面積に変換する際の、基本的な考え方を示した説明図である。図9(a)には、ある画素(光の進行方向に沿って上流側からn番目の画素)に着目して、その画素位置に上流側から伝播してくる光の光量I(n)と、その画素内に形成されるインク層105の面積S(n)と、画素内のインク層105を光らせるために使用される光量R(n)と、その画素位置から下流側に伝播していく光の光量I(n+1)との関係が示されている。尚、インク層105が形成されている透明板104には厚みがあるから、「ある画素位置」と言ったときには、透明板104の厚みに相当する深さも考慮しておく必要がある。従って、上流側から画素位置に伝播してくる光の量としては、透明板104の表面の着目している画素に入射する光の量だけではなく、透明板104の厚さ方向も考慮して、画素がある位置の下方の領域に入射する全ての光の量を含めて表している。
【0074】
また、図9(b)には、着目している画素に入射する光の光量I(n)と、その画素に形成されるインク層105の面積S(n)と、インク層105を光らせるために使われる光量R(n)と、隣の画素に伝播していく光量I(n+1)との間に成り立つ関係が示されている。図9(b)の一番上の式に示されるように、インク層105を光らせるために使われる光量R(n)は、上流側から伝播してくる光量I(n)に比例すると考えられる。また、画素内に形成されるインク層105の面積S(n)は、上流側から伝播してくる光量I(n)と、インク層105を光らせるための光量R(n)との比例係数を決めていると考えられる。このことと対応して、図9(b)の一番上の式では、光量I(n)と光量R(n)との比例係数を、面積S(n)の関数として、f(S(n))と表している。
【0075】
ここで、インク層105の面積S(n)が2倍になれば、明るさも2倍(すなわち、光らせるために使われた光量も2倍)になるから、光量I(n)と光量R(n)との比例係数f(S(n))は、もっとも単純には、インク層105の面積S(n)に比例していると考えることができる。すなわち、図9(c)に示したように、f(S(n))=k・S(n)とすることができる。あるいは、人間の視覚の特性は、面積S(n)が大きくなると認識する明るさが次第に飽和する傾向にあることを考慮して、図9(d)に示した関数形を用いることも可能である。
【0076】
着目している画素では、上流側から伝播してきた光量I(n)の中から、インク層105を光らせるために光量R(n)だけ使用された後、残りの光量T(n)が、次の画素に伝播する。図9(b)の上から2番目の式には、このような関係が示されている。しかし、透明板104の内部を伝播する際にも光は減衰する。そこで、この光の減衰を考慮すると、隣の画素に伝播する光量I(n+1)は、残りの光量T(n)に、exp(−μL)を乗算した値となる。ここで、μは、光の減衰係数であり、透明板104の材質によって決まる物性値である。また、Lは、画素1つ分の大きさであり、前述したように、画像データの解像度と、画像を印刷しようとする大きさによって決まる値である。従って、図8に示すような画素一列分の画像データが与えられたときに、一番上流側の画素から、図9に示した関係を用いて、透明板104内を伝播する光量I(n)を順番に計算しながら、インク層105の面積S(n)を決定していけば、各画素の輝度データに応じた明るさが得られるように、画素毎のインク層105の面積を決定することが可能となる。
【0077】
図10は、透明板104の内部での光の減衰や、透明板104の表面でインク層105を光らせることによる光の損失や考慮しながら、画素毎にインク層105の面積を決定する様子を示した説明図である。図示した例では、着目している画素に入射した光量I(n)と、その画素を光らせるために光量R(n)との係数を表すf(S)として、人間の視覚の特性を考慮した図9(d)の関数形を使用し、関数中に現れる定数Kの値は、4.5を使用した。また、画素の大きさに対応する値Lは、実際の画素の大きさではなく、1画素あたりで考えることにして、Lの値は1を使用した。これは、実際の画素の大きさは、表示する画像の大きさなどによって種々に代わり得ることを考慮したためである。更に、光の減衰係数μとしては、0.004を使用した。
【0078】
尚、厳密には、f(S)中の定数Kは、インク層105の表面状態などの種々の要因によって決定される値であるが、ここではこれらの要因について解析することはせずに、経験上から得られた値を用いている。また、光の減衰係数μについても、本来であれば透明板104の材質によって決まる物性値であるが、ここでは、経験上から得られた値を使用している。これは次のような理由によるものである。図4に示したように、実際の表示装置100では、点光源である発光ダイオード106Lから光が供給されている関係上、透明板104を伝播する光は、光源から離れるほど広がって、光の強さが弱くなっている。もちろん、LEDユニット106には複数の発光ダイオード106Lが設けられているから、単独の発光ダイオード106Lが設けられている場合のように、距離に反比例して光が弱くなるわけではない。しかし、それでも完全な平行光では無い以上、厳密に言えば、光源から離れるに従って光の強さが弱くなると考えられる。そこで、計算が複雑になることを避けるために、このような光の拡散によって光が弱くなる現象も一種の光の減衰と扱うことにして、光の拡散による影響と本来の光の減衰による影響とをまとめて、1つの減衰係数μとして考慮することとした。また、画素の大きさに対応する値Lを、実際の長さではなく、1画素あたりで考えることとしているので、厳密な値を決定することには、あまり意味がない。これらの理由から、図10に示した計算では、透明板104の物性によって決まる減衰係数μではなく、経験上から得られた値を使用している。
【0079】
先ず初めに、図10(a)について説明する。図10(a)には、上段、中段、下段と三段に分けて数表が示されているが、上段の数表は、計算する際の入力値を示している。また、中段の数表は、上段の入力に基づいて行われる計算の途中経過を示しており、下段の数表は最終的に得られた計算結果を示している。図10(a)の上段には、画素位置と、その画素についての画像データ(すなわち、その画素の目標輝度)が示されている。尚、図10(a)に示した例では、画像の端から2つの画素を除いて、1画素毎に画像データの階調値が大きく変化している。しかし、実際に用いた画素の大きさは一辺の長さが約0.1mm程度であるから、隣り合う画素間でこのように大きく階調値が変化することはなく、実際の画像データでは、もっとゆっくりと階調値が変化している。もっとも、実際の画像データを例に用いたのでは、全体的な動きを示すことが困難なので、図10では、仮想的に作成したデータを用いている。
【0080】
図10(a)に示されるように、左端にある1番の画素位置の画素については、光らせる目標輝度は、階調値0となっている。すなわち、この画素については光らせなくて良いのであるから、画素内に形成するインク層105の面積S(1)は0でよい。また、この画素では、画素を光らせるために使われる反射光量R(1)は階調値0だから、入射光量I(1)がそのまま透過することとなる。入射光量I(1)は、発光ダイオード106Lによって比較的自由に設定することができるので、ここでは十分な光量の光を入射することとして、入射光量I(1)を階調値1000とすれば、この画素の透過光量T(1)は階調値1000となる。
【0081】
もっとも、透過光量T(1)が、そのまま次の画素への入射光量I(2)となるわけではない。図9(b)を用いて前述したように、透過光量T(1)に1画素分だけの光の減衰が働いて、その結果が、次の画素の入射光量I(2)となる。図10(a)には、画素位置1での透過光量T(1)は階調値1000であるが、この光が隣の画素に入射するまでの間に減衰し、その結果、隣の画素(画素位置2)の入射光I(2)は、階調値996に減少している様子が示されている。
【0082】
画素位置2の画素についても目標輝度は階調値2であるから、画素位置1の画素の場合と同様に、画素内に形成するインク層105の面積S(2)は0となり、また、入射光量I(2)がそのまま透過光量T(2)となって、透過光量T(2)の階調値996となる。そして、この透過光量T(2)の光が、次の画素に入射する間に1画素分だけ光が減衰し、その結果、次の画素への入射光量I(3)は階調値992に減少する。
【0083】
画素位置3の画素については、目標輝度は階調値65に設定されている。また、上述した計算から、この画素への入射光量I(3)は階調値992である。従って、この画素については、階調値992の入射光量I(3)で、階調値65に相当する明るさで画素を光らせなければならない(換言すれば、その画素の反射光量R(3)が階調値65)。ここで、図9(b)に示したように、画素を光らせるために使われる光量(反射光量R)と、その画素への入射光量Iとの間には、R(3)=f(S)・I(3)の関係が成り立つ。そして、R(3)=65であり、I(3)=992であるから、f(S)=65/992となるので、f(S)の関数形が分かれば、面積S(3)を決定することが可能となる。図10に示した例では、f(S)の関数形として図9(d)に示す関数形を用い、関数の中に現れる定数Kの値は、経験的に4.5とすればよいことが分かっているから、S(3)を求めることができる。
【0084】
図10(a)中の画素位置3の箇所に示された面積S(3)の値は、このようにして決定された値である。換言すれば、画素位置3の面積S(3)をこのような値に設定しておけば、階調値992の入射光量I(3)に対しても、階調値65の光量で画素を光らせることが可能となる。その結果、画素位置3での透過光量T(3)は、入射光量I(3)から反射光量R(3)を減算した階調値927となる。尚、面積S(3)の値が意味するところについては、後述する。
【0085】
画素位置4の画素については、目標輝度は階調値75に設定されている。また、この画素への入射光量I(4)は、上述した画素位置3での透過光量T(3)に減衰が作用して、階調値923となっている。従って、この画素についても、入射光量I(4)と、反射光量R(4)が分かるので、画素位置3の場合と同様にして、その画素での面積S(4)を決定することができる。以降は、全く同様にして、画素位置5の画素については、入射光量I(5)は階調値845で、反射光量R(5)は階調値130となるので、面積S(5)は818.2となる。更に、画素位置6の画素については、入射光量I(6)は階調値712で、反射光量R(6)は階調値95となるので、面積S(6)は692.8となる。このように、全ての画素について、順番に面積Sを算出していく。
【0086】
以上のようにして、各画素について得られた面積Sの値は、実際には、個々の画素の値に意味があるのではなく、画素間での相対的な大きさに意味がある値となっている。例えば、画素位置3の画素については、目標輝度の階調値65に対して面積S(3)=315.5という値が得られているが、発光ダイオード106Lの設定によって、入射光量は幾らでも変更し得るからである。従って、図10(a)の中段の数表に得られた面積Sの値は、画素間での比率にのみ意味のある値となっている。
【0087】
そこで、一例として、得られた面積Sの値を、次のように解釈する。そもそも、図10に示した計算を行ったのは、画像の輝度データをインク層105の面積に置き換える際に、図7に示したような単純な方法で置き換えたのでは、光の進行方向に沿って下流側に行くに従って、暗い画像になってしまう現象を解決するためであった。そこで、取り敢えず、上流側にある画素位置3の画素に着目して、この画素については、図7に示した方法で、単純に目標輝度をインク層105の面積に置き換えても問題ないと考える。すなわち、図10(a)で得られた面積S(3)=315.5を、階調値65と読み替えるのである。その上で、画素位置3の面積S(3)と、画素位置4について得られた面積S(4)との相対的な比率が保たれるように、面積S(4)=397.8を変換する。その結果、面積S(4)=397.8は、階調値82に変換される。以下の画素についても同様にして、画素位置5についての面積S(5)は、階調値168に変換され、画素位置6についての面積S(6)は、階調値143に変換される。
【0088】
図10(a)の下段の数表には、このようにして面積Sを読み替えて得られた階調値(修正面積)が示されている。図中に破線で囲って示した画素位置3と、画素位置5とを比較すれば明らかなように、画素位置5の目標輝度は画素位置3のちょうど2倍となっているが、画素内に形成するインク層105の面積は、2倍以上の面積となっている。これは、画素位置5よりも上流側で、画素を光らせるために使われたため、あるいは減衰によって、入射光量Iが減少した影響を考慮して面積が修正されたことによる。そして、このようにして得られた階調値(修正面積)に対して、図7に示した方法を適用してインク層105の面積を決定していけば、光の進行方向の下流側になっても暗い画像になることの無い、良好な画像を浮き上がらせて表示させることが可能となるのである。
【0089】
尚、ここでは、1列の画素のみについて説明したが、実際の画像では、画素が二次元的に配列されており、これら全ての画素について同様な操作を行って、修正面積を決定することは言うまでもない。すなわち、各画素について、目標輝度に対応する面積Sを算出し、そして、算出した面積Sの値を、ある比率で読み替えることによって修正面積に変換する。また、各画素について得られた面積Sを読み替えるときの比率は、画像を構成する全画素について同じ比率で読み替えてやればよい。
【0090】
上述した手順で面積Sを修正面積の階調値に読み替える方法、すなわち、上流側の画素で得られた面積Sの値を、その画素での目標輝度と読み替える方法では、図10(a)の下段の数表から明らかなように、下流側に行くほど、読み替えられた修正面積が大きくなる。従って、目標輝度はそれほど大きな階調値ではない画素(例えば、目標輝度が階調値150程度の画素)であっても、修正面積が階調値255に貼り付いてしまう可能性がある。そこで、中段の数表で得られた最も大きな値の面積Sが、階調値255となるような比率で、面積Sを修正面積に読み替えることが望ましい。
【0091】
図10(b)には、このようにして、算出された面積Sの中で最も大きな値が階調値255となるように、面積Sを修正面積に読み替えた結果が示されている。尚、図10(b)の上段の数表には、参考として、各画素についての目標輝度(反射光量R)と、その目標輝度に対して算出された面積Sとがまとめて表示されている。また、面積Sを読み替えて得られた修正面積は、下段の数表に示されている。図10(b)の上段の数表に示されているように、目標輝度に対して算出された面積Sが最も大きな値となるのは、画素位置5について得られた値818.2である。そこで、この値818.2が階調値255となるように、上段の数表の面積Sを読み替えると、下段の数表に示した修正面積を得ることができる。
【0092】
尚、図10では、1列の画素のみが示されているが、実際の画像は画素が二次元的に配列されている。従って、実際の画像では、二次元的に配列された全ての画素について得られた面積Sの中から、最も大きな値を選択して、この値が階調値255となるように、面積Sを読み替えてやればよい。このようにして得られた修正面積に対して、図7に示した方法を適用してインク層105の面積を決定していけば、光の進行方向の下流側になると暗い画像になってしまうことを回避して、良好な画像を表示させることが可能となる。
【0093】
また、面積Sの最も大きな画素がちょうどベタ塗り状態(画素内の4つの小領域に全てインク層105を形成した状態)となるように、修正面積を設定することができる。このため、画素内に形成するインク層105の面積を用いて表現可能な階調範囲を最大限に活用して、効率よく画像を表示させることが可能となり、透明板104の上にコントラストの良好な画像を浮かび上がらせることが可能となる。
【0094】
尚、上述した説明では、面積Sの最も大きな画素が、ちょうどベタ塗り状態となるように、修正面積を設定するものとした。しかし、例えば、ある1つの画素だけが大きな面積Sを有していた場合などには、この画素の影響で、他の画素の修正面積が小さくなってしまう可能性がある。このような場合には、最も大きな面積Sではなく、各画素で得られた面積Sの平均値(あるいは中間値、メジアン値など)が、適切な修正面積となるように読み替えることとしてもよい。こうすれば、たとえ、ごく僅かの画素が大きな面積Sを有する場合でも、大部分の画素については適切な修正面積に読み替えることが可能となる。
【0095】
また、目標輝度から算出した面積Sは、個々の画素についての絶対的な大きさではなく、画素間の相対的な大きさに意味のある値であり、この相対的な大きさに意味のある面積Sに基づいて、絶対的な大きさに意味のある修正面積を決定している。また、前述したように、面積Sを算出するために用いた減衰係数μや、定数Kなどの各パラメータは、物性や形状などによって一意的に決定される数値ではなく、半ば経験的に求められた値を使用している。更に、画素の大きさLについても、図9に示した論理からは長さの次元を持つ値でなければならないが、前述したように面積Sの算出に際しては、「1画素あたり」という長さの次元を持たない値を用いて算出している。こうしたことが可能となるのは、面積Sが、個々の画素についての絶対的な大きさではなく、画素間の相対的な大きさに意味のある値であることによるものである。
【0096】
このように、面積Sが相対的な大きさにしか意味を持たず、そして面積Sを、絶対的な大きさに意味のある修正面積に変換していることに着目すると、面積Sを算出するための各種パラメータ(例えば、減衰係数μや、定数K、画素の大きさL)などを適切な値に調整しておくことで、面積Sを経由させずとも直接に、修正面積を算出することが可能であるように思われる。しかし、画素内に形成するインク層105の面積を変えることにより、効率よく画像を表示させるためには、相対的な大きさに意味のある面積Sを経由して、修正面積を決定することは極めて重要なことである。更には、画素内のインク層105の面積を変えるのではなく、例えばインク層105の表面により大きな凹凸を形成したり、あるいはインク層105の中に散乱粒子を混入させるなどの方法で、各画素を光らせる強さを変えることによって、画像を表示させる場合にも、効率よく画像を表示させるためには、面積Sを経由して修正面積を決定することが重要である。以下では、この点について、若干補足して説明しておく。
【0097】
確かに、面積Sとして示された値の代わりに、修正面積に示された値を直接、算出することは可能である。例えば、最も単純には、面積Sの算出式に新たな比例係数Aを持ち込んで、従来の面積Sの値に比例係数Aを乗算した値を、新たな面積Sとしてやればよい。図10(b)に示した例では、従来の面積Sの値818.2が、階調値255になればよいのであるから、比例係数Aの値を255/818.2としておけば、修正面積の階調値を、面積Sの値として直接算出することが可能である。
【0098】
しかし、こうしたことが可能となるのは、同じ画像データに対してだけであり、ある画像データに対して設定した比例係数Aを、別の画像データに対して適用することはできない。例えば、図10(b)に示した例で、画素位置3の目標輝度が階調値70に変わっただけで、それに伴って画素位置5への入射光量I(5)が減ってしまうので、面積S(5)の値も818.2より増やさなくてはならない。それに伴って、比例係数Aの値も変わってしまう。あるいは、画素位置1から画素位置5までの目標輝度は同じであっても、その下流側の画素位置7に、例えば目標輝度の階調値130の画素が追加された場合を考えると、その画素についての面積S(7)の値が最大となるので、比例係数Aの値は全く異なったものとなってしまう。更には、画素位置1の上流側に画素位置1と同じ目標輝度の画素が追加されただけでも、上流側での光の減衰量が変わってしまうので、厳密には、比例係数Aの値は同じにはならない。
【0099】
このように、たとえ新たな比例係数Aを導入するとしても、比例係数Aの値は画像データ毎に違うので、その値を求めるために、結局は、相対的な大きさにしか意味を持たない面積Sを、一旦は算出しなければならない。逆に言えば、本実施例の表示装置100のように、画素内に形成するインク層105の面積を変えることによって、効率よく画像を表示させるためには、相対的な大きさに意味のある面積Sを経由して、修正面積を決定することは極めて重要なことである。更には、画素内のインク層105の面積を変える場合に限らず、例えばインク層105の表面により大きな凹凸を形成したり、インク層105の中に散乱粒子を混入させるなどにより、各画素を光らせる強さを変えて画像を表示する方法においては一般的に、相対的な大きさに意味を有する面積Sを経由して修正面積(画素を光らせる強さ)を決定することが、効率よく画像を表示させるために重要なのである。
【0100】
また、以上の説明では、透明板104に表示される画像は、画素の明暗だけを用いて表現された白黒画像であるものとして説明した。しかし、上述したように、目標輝度から面積Sを算出し、得られた面積Sに基づいて修正面積を決定する方法を採用することで、カラー画像を表示することも容易に実現することが可能となる。以下では、本実施例の表示装置100でカラー画像を表示する方法について説明する。
【0101】
D.カラー表示方法 :
図11は、カラー画像を表示可能な本実施例の表示装置100に搭載される透明板104の構成を示す分解組立図である。周知のように、カラー画像を表示するためのカラー画像データは、RGBの各成分の輝度データによって構成されており、このことに対応して、本実施例の表示装置100でカラー画像を表示するためには、R成分用の透明板104rと、G成分用の透明板104gと、B成分用の透明板104bとを重ね合わせて使用する。また、R成分用の透明板104rの端部には、赤色の光を照射するLEDユニット106rが装着されており、G成分用の透明板104gの端部には緑色の光を照射するLEDユニット106gが、B成分用の透明板104bの端部には青色の光を照射するLEDユニット106bが装着されている。また、各LEDユニット106の内部には、それぞれの色の光を照射する発光ダイオード106Lが搭載されている。そして、これら各成分の透明板104r、104g、104bが重ね合わされた状態で、上端および下端にガイドレール108が嵌め込まれることによって一体化され、その状態で、ベース部102の中に収納されている。
【0102】
図12は、RGB各成分用の透明板104r、104g、104bが一体に重ね合わされている様子を概念的に示した断面図である。図示されているように、各成分用の透明板104r、104g、104bの表面には、それぞれの成分用のインク層が形成されている。すなわち、R成分用の透明板104rの表面には、R成分の画像(以下では、R画像と呼ぶ)用のインク層105rが形成されており、G成分用の透明板104gの表面には、G成分の画像(以下では、G画像と呼ぶ)用のインク層105gが、そして、B成分用の透明板104bの表面には、B成分の画像(以下では、B画像と呼ぶ)用のインク層105bが形成されている。
【0103】
尚、R画像用のインク層105rといっても赤色インクを用いて形成した層ではなく、透明インクによって形成されたインクの層である。同様に、G画像用のインク層105g、B画像用のインク層105bといっても、緑色インクや青色インクによるインクの層ではなく、透明インクによって形成されたインクの層である。そして、これら各成分用のインク層を、後述する方法によって適切に形成することで、R成分用の透明板104r、G成分用の透明板104g、B成分用の透明板104bを全体として見たときに、適切にカラー画像を表示することが可能となっている。
【0104】
また、図12では、図示の都合から、各成分用の透明板104r、104g、104bの間に、僅かな隙間が設けられているように表示している。しかし実際には、各成分用の透明板104r、104g、104bが互いに接する状態で重ね合わせておいても良い。これは、次の理由によるものである。すなわち、外見的には平らな透明板であっても、表面は厳密に平面になっているわけではないので、たとえ2枚の透明板を重ね合わせても、透明板の間には極薄い空気の層が形成されている。従って、透明板内を伝播してきた光が表面に達しても、前述した「完全反射の条件」が保たれている限り、この薄い空気層に阻まれて、隣の透明板に光が侵入することはない。換言すれば、重ね合わせた透明板の表面同士が完全に密着するように特別なことをしない限り、普通に透明板を重ね合わせた程度では、一方の透明板から隣の透明板に光が侵入することはない。
【0105】
特に、図12に示したように、各成分用の透明板104r、104g、104bの表面には、インク層105r、105g、105bが形成されているので、各成分用の透明板104r、104g、104bの間には、自ずから、各インク層105r、105g、105bに相当する厚さの空気層が形成されている。また、各インク層105r、105g、105bと、隣の透明板との間に関しては、各インク層の表面も透明板の表面も完全には平面ではないので、上述した理由によって、極薄い空気層が形成されている。このため、例えば、R成分用の透明板104rの内部を伝播してきた赤色の光が、G成分用の透明板104gの中に侵入して、本来は緑色に光らせるべき図形を赤く光らせたり、あるいは
G成分用の透明板104gの内部を伝播してきた緑色の光が、R成分用の透明板104rの中に侵入して、本来は赤色に光らせるべき図形を緑色に光らせるといった問題は生じない。このような理由から、各成分用の透明板104r、104g、104bを互いに接する状態で重ね合わせておいても、適切にカラー画像を表示することが可能となるのである。
【0106】
図13は、適切にカラー画像を表示するために、R成分用のインク層105r、G成分用のインク層105g、B成分用のインク層105bの面積を決定する様子を示した説明図である。このような方法で、RGB各成分のインク層105r、105g、105bの面積を決定することによって初めて、適切なカラー画像を表示することが可能となる。
【0107】
カラー画像を表示するに際しては、先ず初めに、表示しようとするカラー画像の画像データを取得する。カラー画像データは、通常、R成分の輝度データと、G成分の輝度データと、B成分の輝度データとによって表現されている。そこで、取得したカラー画像データを、これらRGBの各成分についての輝度データに分離する。
【0108】
次いで、R成分の輝度データに基づいて、R成分についての面積Srを算出する。ここで、面積Srは、図10を用いて前述したように、画素間での相対的な大きさに意味のある値である。面積Srは、図10(a)に示した数表で、「目標輝度」の部分を、R成分の輝度データに置き換えるだけで、あとは全く同様にして算出することができる。また、他の成分についても同様に、G成分の輝度データからはG成分についての面積Sgを算出し、B成分の輝度データからはB成分についての面積Sbを算出する。この結果、カラー画像を構成する全ての画素について、R成分の面積Sr、G成分の面積Sg、B成分の面積Sbが得られることになる。そこで、これら全画素を含めた全ての面積Sr,Sg,Sbの中で、最も値の大きな面積Smaxを抽出する。そして、抽出した最大の面積Smaxが、ある階調値(代表的には、階調値255)となるような比率で、R成分の面積Sr、G成分の面積Sg、B成分の面積Sbを変換することにより、R成分の修正面積、G成分の修正面積、B成分の修正面積を算出する。
【0109】
最大の面積Smaxを抽出して、R成分の面積Sr、G成分の面積Sg、B成分の面積Sbを、それぞれの成分毎の修正面積に変換する操作は、図10(b)を用いて前述した操作とほぼ同様である。すなわち、図10(b)では、画像を構成する各画素について目標輝度が与えられたときに、各画素の目標輝度に基づいて面積Sを算出し、それら全ての面積Sの中で最も大きな値が階調値255となるように、面積Sを読み替えて修正面積に変換した。これに対して、カラー画像を表示する場合には、各画素について、R成分、G成分、B成分の輝度データが与えられているので、成分毎に面積Sr,Sg,Sbを算出する。すなわち、1つの画素について、3種類の面積Sr,Sg,Sbが算出されることになる。そして、画像を構成する全画素について3種類ずつ得られた全ての面積Sr,Sg,Sbの中で、最も大きな値である面積Smaxを抽出し、その面積Smaxが階調値255(あるいは所定の階調値)となるように、面積Sr,Sg,Sbを、それぞれの成分毎の修正面積に変換する。
【0110】
次いで、このようにして画素毎に得られた各成分の修正面積に基づいて、各画素内に形成するインク層105r、105g、105bの面積を決定する。修正面積に基づいて画素内のインク層105r、105g、105bの面積を決定する際には、図7を用いて前述した方法を適用すればよい。そして最後に、R成分用の透明板104rの上にはR成分用のインク層105rを形成し、G成分用の透明板104gの上にはG成分用のインク層105gを形成し、B成分用の透明板104bの上にはB成分用のインク層105bを形成する。
【0111】
前述したように、各成分の透明板104r、104g、104bは透明な材料で形成されており、各成分のインク層105r、105g、105bも透明なインクで形成されている。このため、発光ダイオード106Lを点灯させなければ、向こうが透けて見える状態となっている。ところが、各成分の透明板104r、104g、104bに装着されているLEDユニット106r、106g、106bを点灯させると、R成分の透明板104rに形成されたインク層105rは赤く光り、G成分の透明板104gに形成されたインク層105gは緑色に光り、B成分の透明板104bに形成されたインク層105bは青く光るので、全体としては、いわゆるフルカラーのカラー画像が浮かび上がるように表示されることになる。
【0112】
また、各成分のインク層105r、105g、105bの面積は、上流側の画素を光らせたことによる光の損失や、途中の透明板104r,104g、104bの内部を伝播する際の光の減衰を考慮して決定されているので、下流側になっても画像が暗くなることが無く、適切な明るさで画像を表示することが可能となる。
【0113】
加えて、適切な色を表示するためには、R色の光と、G色の光と、B色の光とを適切な比率で混合させる必要があるから、カラー画像を適切な色で表示するためには、個々の画素で、RGB各色の光の強さが適切な比率となっている必要がある。このことは、カラー画像を適切に表示するためには、次の2つのことが重要であることを意味している。先ず第1は、光の進行方向に沿って、上流側から下流側に行くに従って画像が暗くなってしまうのでは、RGBの各成分の比率が崩れてしまうので、適切な色でカラー画像を表示することは事実上、不可能なことである。次いで第2は、たとえ、各成分内では下流側になっても暗くならないように画像を表示できたとしても、成分間で明るさのバランスが崩れていると、適切な色でカラー画像を表示することはできないことである。すなわち、カラー画像を適切に表示するためには、単にRGBの3色の画像を重ねて表示しただけでは足らず、上述した2つの条件を満足させる必要がある。そして、このような観点からすると、上述した方法によってカラー画像を表示することは、極めて合理的で優れた方法となっている。以下では、この点について説明する。
【0114】
先ず、図13を用いて前述したように、R成分、G成分、B成分の何れについても、輝度データに基づいて面積Sr,Sg,Sbを算出している。この面積Sr,Sg,Sbは、画素間での相対的な大きさに意味のある値であり、図9および図10に示したように、上流側の画素を光らせたことによる光の損失や、上流側から伝播してくる際の光の減衰などの影響を考慮して、輝度データに応じた明るさで各画素を光らせるためには、各画素をどの程度の比率で光らせれば良いかを表した値となっている。そして、このようにして得られた面積Sr,Sg,Sbを、画素毎に形成するインク層105r、105g、105bの修正面積に変換した後、図7を用いて前述した方法によって、R成分用のインク画像、G成分用のインク画像、B成分用のインク画像を印刷している。このため、上述した第1の条件、すなわち、RGBの何れの成分の画像についても、光の進行方向に沿って、上流側から下流側に行くに従って画像が暗くなってしまうことがないという条件を満足させることが可能である。
【0115】
また、各成分の輝度データから面積SSr,Sg,Sbを算出する操作も、面積Sr,Sg,Sbを各成分の修正面積に変換する操作も、得られた修正面積に従ってインクによる画像を形成する操作も、基本的には成分毎に行われるのであるが、各成分の面積Sr,Sg,Sbを修正面積に読み替える比率を決定する時だけは、RGBの各成分を一体的に扱って、読み替える比率を決定している。すなわち、図13に示したように、画像を構成する全画素について3成分ずつ得られた全面積Sr,Sg,Sbの中で、最も大きな値である面積Smaxを抽出し、その面積Smaxが階調値255(あるいは所定の階調値)となるように、面積Sr,Sg,Sbを、それぞれの成分毎の修正面積に変換している。このため、上述した第2の条件、すなわち、R画像、G画像、B画像の明るさのバランスが、カラー画像データに示されるRGB各成分のバランスに保たれているという条件を満足させることができる。
【0116】
結局、本実施例の表示装置100では、図13に示すような方法でカラー画像を表示させることにより、上述した第1の条件および第2の条件を同時に満足させて、適切な色彩のカラー画像を表示させることが可能となるのである。
【0117】
E.変形例 :
上述した本実施例の表示装置100には、種々の変形例が存在している。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。
【0118】
E−1.第1の変形例 :
上述した本実施例の表示装置100では、透明な材質で形成された透明板104の表面に、透明なインクを用いて画像を印刷している。このため、一見しただけでは、透明板104に画像が印刷されていることにはなかなか気が付き難く、発光ダイオード106Lを点灯させると初めて、印刷された画像が浮かび上がるようになっている。とは言え、画像が印刷されている部分と、印刷されていない部分とでは、微妙に見え方が違うので、良く見れば、透明板104の表面に画像が印刷されていることが分かってしまう可能性がある。仮に、画像が印刷されていることが分かってしまうと、発光ダイオード106Lを点灯させても、印刷されていた画像が光っているだけに過ぎないことが明らかとなり、透明な板から画像を浮き上がらせるという演出上の効果が減少してしまう。こうした虞を回避するため、次のようにして、透明板104の表面に画像が印刷されていることが、より分かり難い状態にしてもよい。
【0119】
図14は、透明板104の表面に画像が印刷されていることをカモフラージュする第1の変形例についての説明図である。図14(a)には、第1の変形例で用いられる透明板104を正面側から見た様子が示されており、図14(b)には、側面側から見た断面の様子が、そして図14(c)には、断面の一部を拡大した様子が示されている。図示されているように、第1の変形例の透明板104は、前述した本実施例の透明板104に画像を印刷した上から、更に、透明なインクを用いて全体に薄い透明膜を形成したような構成となっている。図14(a)中では、印刷画像に対応するインク層105の部分を破線で表しており、その上から透明なインクを用いて覆うように形成された薄い透明膜105cに、斜線を付して表している。また、図14(b)および図14(c)には、インク層105を覆うようにして、透明膜105cが形成されている様子が示されている。
【0120】
ここで、透明膜105cを形成するためのインクを、インク層105を形成するために用いたインクとは異なるインクを用いることにより、透明膜105cの部分の屈折率が、インク層105の部分の屈折率よりも小さくなるようにしておく。例えば、透明板104をアクリル樹脂で形成した場合には、透明板104の屈折率は約1.5であり、インク層105の屈折率は約1.5前後、そして、空気の屈折率は約1.0であるから、透明膜105cの屈折率ができるだけ1.0に近くなるようなインクを用いればよい。透明膜105cの屈折率は、インク中に含まれる基材の材質によって変わるから、適切な基材を選択しておくことで、透明膜105cの屈折率を1.0に近づけることができる。そして、光らせようとする画像を印刷したインク層105の上に、このようなインクによって薄い透明膜105cを形成しておけば、発光ダイオード106Lを点灯させていない間は、画像が印刷されていることに気付かれる虞を回避しつつ、発光ダイオード106Lを点灯させることで、印刷された画像のみを光らせることが可能となる。以下では、この理由について説明する。
【0121】
先ず初めに、発光ダイオード106Lを点灯させていない間は、透明板104の表面に画像が印刷されていることに気付かれないのは、次のような理由によるものである。図4に示したように、透明膜105cが形成されていない本実施例の透明板104では、画像が印刷されていない部分は、透明板104の表面がそのまま現れているのに対して、画像が印刷されている部分は、透明板104の表面の上にインク層105が形成されている。このため、透明板104の表面がそのまま現れている部分と、その上にインク層105が形成されている部分との間で見え方が微妙に異なるため、良く見れば、画像が印刷されていることに気付かれてしまう。
【0122】
これに対して、第1の変形例の透明板104では、図14に示されているように、画像が印刷されていない部分にも透明膜105cが形成されており、透明板104の表面がそのまま現れることがない。このため、画像が印刷されている部分と、印刷されていない部分との見え方が異ならないので、インク層105による画像が印刷されていることに、より一層、気付かれ難くすることが可能となる。
【0123】
尚、図14では、インク層105によって印刷された画像の上から、覆うようにして透明膜105cを形成するものとしているが、インク層105の部分を除いて、他の部分にだけ透明膜105cを形成するようにしてもよい。こうすると、画像が印刷されている部分にはインク層105が形成されており、画像が印刷されていない部分には異なる材質による透明膜105cが形成されていることになる。しかし、インク層105または透明膜105cの何れも、同じような透明インクを用いて同じように印刷することによって形成されているので、見え方が異なることはない。従って、このようにしても、インク層105による画像が印刷されていることを、より一層、気付かれ難くすることが可能である。
【0124】
もっとも、このように画像が印刷されていない部分にも透明膜105cを形成することで、発光ダイオード106Lを点灯させていない状態では、画像が印刷されていることに気付かれないとしても、発光ダイオード106Lを点灯させたときに透明膜105cの部分も光ってしまい、その結果、インク層105による画像が浮かび上がらなくなってしまったのでは意味がない。しかし、第1の変形例では、発光ダイオード106Lを点灯させたときに、透明膜105cの部分は光らせず、インク層105の部分のみを光らせることが可能となっている。これは、透明膜105cの屈折率を、インク層105および透明板104の屈折率よりも、できるだけ小さな値としているためである。以下、この理由について説明する。
【0125】
図5を用いて前述したように、インク層105が形成された部分が明るく見えるのは、「完全反射の条件」が成立しているために、透明板104の表面から外部に洩れ出すことなく光伝播領域を伝播してきた光が、インク層105の部分に到達すると、インク層105の表面の一部の箇所では「完全反射の条件」が崩れて、インク層105の表面から、少しずつ光が外部に洩れ出すようになるためであった。
【0126】
一方、第1の変形例においては、インク層105が形成されていない部分には、透明膜105cが形成されている。このことは、透明板104の内部を進行する光にとって見れば、透明板104の表面に接している媒質が、空気から透明膜105cに変わっただけである。そして、透明膜105cの屈折率は、空気の屈折率ほどには小さくなかったとしても、透明板104の屈折率(≒インク層105の屈折率)に比べれば小さいので、透明板104と透明膜105cとの間でも「完全反射の条件」は成立し得る。もちろん、透明膜105cの屈折率が空気の屈折率よりも大きくなると、完全反射の条件を成立させるためには、より浅い角度で表面に光を入射させなければならなくなる。しかし、例えば、アクリル樹脂製の透明板104と空気とを組合せた場合の臨界角θc が約42度であることから明らかなように、透明膜105cの屈折率が空気の屈折率よりも多少大きくなっても、十分に実用的な範囲で完全反射の条件が成立する。従って、第1の変形例においても、透明板104内に入射された光は、透明板104と透明膜105cとの間で完全反射を繰り返しながら、光伝播領域内を伝播して行くことになる。
【0127】
こうして光伝播領域を伝播してきた光が、光散乱領域(インク層105が形成されている領域)に達すると、伝播してきた光は透明板104内からインク層105に侵入して、インク層105の表面に達する。このとき、インク層105の表面には、空気が接していても良いし、透明膜105cが接していても良い。図14に示すように、インク層105の上から覆うように透明膜105cを形成した場合には、インク層105の表面には透明膜105cが接していることになる。これに対して、インク層105が形成されていない部分にだけ透明膜105cを形成した場合には、インク層105の表面には空気が接していることになる。前述したようにインク層105の表面には凹凸があるため、インク層105の表面に接している媒質が空気または透明膜105cの何れであっても、インク層105の表面の少なくとも一部の箇所では完全反射の条件が崩れて、少しずつ光が外に漏れ出し、その結果、明るく光って見えることになる。
【0128】
以上に説明した理由から、第1の変形例では、発光ダイオード106Lを点灯させていない状態では、インク層105が透明膜105cに紛れてしまうので、インク層105による画像が印刷されていることに気付かれる虞を回避しつつ、発光ダイオード106Lを点灯させると、インク層105の部分のみを光らせて、画像を浮かび上がらせることが可能となっているのである。
【0129】
E−2.第2の変形例 :
上述した実施例では、透明板104は、1枚の板で構成されているものとして説明した。カラー画像を表示する場合には、R画像用の透明板104rと、G画像用の透明板104gと、B画像用の透明板104bとを組み合わせて用いたが、それでも各成分について見れば、1枚の板で構成されていた。しかし、光の入射方向に沿って1枚の板を分割することにより、透明板104を複数段に構成することとしても良い。以下では、このような第2の変形例について説明する。
【0130】
図15は、透明板104を複数段に構成した第2の変形例についての説明図である。図示されているように、第2の変形例では、小さな透明板104を並べてLEDユニット106に装着されており、それぞれの小さな透明板104には、側面側から光が入射されている。また、LEDユニット106が装着されている側とは逆側の端面には、コの字断面の金具107が装着されて、それぞれの小さな透明板104の端面同士がずれないように固定されている。その結果、小さな透明板104を複数段に積み重ねて、1枚の大きな透明板104を構成した状態となっている。尚、図15では、小さな透明板104を上下方向に並べて、横方向から光を入射した構成が例示されているが、これには限らず、例えば、小さな透明板104を左右方向に並べて、上側あるいは下側から光を入射することも可能である。
【0131】
このように、光の入射方向に対して交差する方向に、小さな透明板104を並べて一枚の大きな透明板104を構成しておくと、ある透明板104に入射された光は、その透明板104の中だけを伝播するようになる。何故なら、たとえ隣接する透明板104の端面が互いに接するように設けたとしても、端面の間には極薄い空気層ができてしまうので、透明板104の内部を進行する光は端面の部分で反射してしまうからである。
【0132】
このため、第2の変形例においては、1つの画像だけをハッキリと光らせることが可能となる。例えば、図15中で斜線を付して示した発光ダイオード106Lのみを点灯させると、光は上から2段目の透明板104の中だけを伝播する。このため、一番上の画像や上から3つめの画像は全く光らせることなく、上から2つめの画像だけを光らせることが可能となる。
【0133】
また、小さな透明板104毎に、発光ダイオード106Lの色を異ならせておけば、それぞれの透明板104に印刷された画像を、隣の画像の色が混ざってしまうことなく、純粋な色で光らせることも可能となる。
【0134】
E−3.第3の変形例 :
上述した各種の実施例では、透明板104を直接目視するようになっていたが、透明な保護カバーを介して目視するようにしても良い。図16は、透明板104の両面側に保護カバー112が設けられた第3の変形例についての説明図である。このように、保護カバー112を設けておけば、透明板104の表面に傷が付いて、光らせるべきではない箇所が光ったり、あるいは透明板104の表面に印刷されたインク層105が剥がれてしまい、光らせるつもりの箇所が光らなくなる事態を回避することが可能となる。
【0135】
E−4.第4の変形例 :
また、上述した各種の実施例では、透明板104がベース部102の中から引き出されるものとして説明したが、引き出された状態の透明板104から、透明な分煙パネルが引き出されるようにしても良い。
【0136】
図17は、透明な分煙パネル114が透明板104に対して引き出し可能に設けられた第4の変形例についての説明図である。図示した例では、透明板104の上下に設けられたガイドレール108の側面側に、分煙パネル114が摺動可能に取り付けられており、透明板104を引き出した状態から、必要に応じて、更に分煙パネル114を引き出すことが可能となっている。
【0137】
透明板104は、画像を浮き上がらせるように表示させる演出上の機能の他に、遊技機12と遊技機12との間に立設されることから、隣の遊技者が喫煙するタバコの煙が入ってくることを防ぐ機能(分煙機能)も有している。しかし、この分煙機能が不十分と感じられた場合には、必要に応じて分煙パネル114を引き出すことで、十分な分煙機能を確保することが可能となる。もちろん、分煙パネル114は透明な材質で形成されているので、分煙パネル114を引き出していない状態でも、透明板104に表示された画像は容易に視認することが可能である。
【0138】
E−5.第5の変形例 :
上述した各種の実施例では、インク層105の表面に形成された凹凸によって、表面の一部で「完全反射の条件」が満足されなくなることで、インク層105の表面から少しずつ光が漏れ出すことによって、インク層105を光らせるものとして説明した。こうした効果の他に、インク層105の中に微少な光散乱粒子105pを分散させることによって、インク層105を光らせることも可能である。
【0139】
図18は、第5の変形例において、光散乱粒子105pを用いてインク層105を光らせる原理を示した説明図である。図18のインク層105の中の小さな丸印は、微少な光散乱粒子105pを表している。透明板104の表面にインク層105を形成する際に、予めインクの中に光散乱粒子105pを混入させておけば、図示したように、光散乱粒子105pが分散した状態のインク層105を形成することができる。
【0140】
このような光散乱粒子105pが分散したインク層105に光が侵入すると、光は光散乱粒子105pに衝突して散乱するので、インク層105を光らせることができる。もちろん、このような光散乱粒子105pを多量に混入させると、インク層105の透明度が低下するので、透明板104の表面にインク層105が形成されていることに気付かれ易くなるが、実際には、インク層105の透明度があまり低下しない程度に、僅かな量の光散乱粒子105pを混入させただけでも、十分な明るさでインク層105を光らせることが可能なことが分かっている。また、このようにインク層105に光散乱粒子105pを分散させて(インク中に光散乱粒子105pを混入させて)インク層105を光らせる方法では、インク層105の面積だけでなく、光散乱粒子105pの濃度を調整することによっても、インク層105を光らせる際の明るさを調整することが可能となる。
【0141】
尚、光散乱粒子105pを分散させることによってインク層105を光らせる場合、光散乱粒子105pの濃度を高くすれば、より明るくハッキリとインク層105を光らせることができる。このようにインク層105が明るくハッキリと光って表示されること自体は、印象深い表示を行うために有効なことである。しかしその一方で、光散乱粒子105pの濃度が高くなると、インク層105が次第に白濁した状態に近付いていく。インク層105の白濁が進むと、端面から光を入射していない時でも、透明板104の表面にインク層105が形成されていることに気付かれ易くなるので、この点からは、光散乱微粒子105pの濃度をあまりに高くすることは、印象深い表示を阻害する方向に作用する。従って、透明インクに含まれる光散乱微粒子105pの濃度は、インク層105を明るくハッキリと光らせる観点と、インク層105が形成されていることに気付かれ難くするために白濁を抑制する観点とを考慮して、最も印象的な表示が可能な濃度に設定されている。また、光散乱粒子105pは光を散乱させるために使用されている。従って、できるだけ効率よく光を散乱させる観点からは、白色の微粉末(例えば、酸化アルミニウムや、酸化チタンなどの金属酸化物の粉末)を用いることが望ましい。
【0142】
以上、本発明について各種の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0143】
例えば、上述した各種の実施例では、透明板104に対してベース部102側の側面にLEDユニット106が装着されており、光はベース部102側から水平方向に入射されるものとして説明した。しかし、透明板104の上端あるいは下端側にLEDユニット106を設けておき、透明板104の上側あるいは下側から光を入射するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本実施例の表示装置100が遊技機12とともに遊技ホールに設置されている様子を示した説明図である。
【図2】遊技機12と遊技機12との間に表示装置100が設けられている様子を示す説明図である。
【図3】本実施例の表示装置100の構成を示す組み立て図である。
【図4】本実施例の表示装置100に組み込まれている透明板104およびLEDユニット106の大まかな構造を示した説明図である。
【図5】透明板104の表面に形成された透明なインク層105が浮かび上がるように表示される原理を示した説明図である。
【図6】表示しようとする画像の画像データを概念的に表した説明図である。
【図7】画素毎の輝度データに応じた面積で画素内にインク層105を形成する様子を示した説明図である。
【図8】画像データの輝度データに応じて単純にインク層105を形成する様子を示す説明図である。
【図9】本実施例の表示装置100において画像データをインク層105の面積に変換する際の基本的な考え方を示した説明図である。
【図10】上流側での光の減衰や損失や考慮しながら画素毎にインク層105の面積を決定する様子を示した説明図である。
【図11】カラー画像を表示可能な本実施例の表示装置100に搭載される透明板104の構成を示す分解組立図である。
【図12】RGB各成分用の透明板が一体に重ね合わされている様子を概念的に示した断面図である。
【図13】適切にカラー画像を表示するためにRGB各成分についてのインク層の面積を決定する様子を示した説明図である。
【図14】透明板104の表面に画像が印刷されていることをカモフラージュする第1の変形例についての説明図である。
【図15】透明板104を複数段に構成した第2の変形例についての説明図である。
【図16】透明板104の両面側に保護カバー112が設けられた第3の変形例についての説明図である。
【図17】透明な分煙パネル114が透明板104に対して引き出し可能に設けられた第4の変形例についての説明図である。
【図18】微細な光散乱粒子を用いてインク層を光らせる第5の変形例についての説明図である。
【符号の説明】
【0145】
10…島、 12…遊技機、 14…貸出機、 100…表示装置、
102…ベース部、 104…透明板、 105…インク層、
105c…透明膜、 106…LEDユニット、 106L…発光ダイオード、
107…金具、 108…ガイドレール、 110…誘導レール、
112…保護カバー、 114…分煙パネル、
θi…入射角、 θr…反射角、 θt…透過角度、 θc…臨界角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技ホールにおいて遊技機とともに用いられる表示装置において、
隣接して設置された前記遊技機の間に設けられるベース部と、
前記ベース部から立設されて、前記隣接する遊技機の間に設けられる透明な表示板と、
前記表示板の端面から該表示板の内部に向けて光を入射する光入射部と
を備え、
前記表示板の表面には、該表示板の内部から該表面に到達した光を散乱させる光散乱領域が、透明インクによって形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記光散乱領域は、該光散乱領域の各箇所で、前記表示板の内部から当該箇所に到達した光を散乱させる割合である光散乱割合が、当該箇所を光らせようとする目標輝度と、該表示板の前記端面から当該箇所までの該光散乱割合の分布とに基づいて設定されていることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置において、
前記光散乱領域の各箇所での光散乱割合は、前記表示板の前記端面から当該箇所までの距離も考慮して設定されていることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の表示装置において、
前記光散乱領域は、前記表示板の表面を均等に区分して得られる複数の画素に、前記透明インクによるインク層を形成することによって設けられており、
前記光散乱領域の各画素での前記光散乱割合は、該画素内に形成される前記インク層の面積を変更することによって制御されていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置において、
前記画素内に形成される前記インク層の面積を決定するに際しては、
光が入射する方向から見て最も上流側にある前記画素については、当該画素に形成する前記インク層の面積に比例した指標値を、当該画素の前記目標輝度に応じて決定し、
前記最も上流側にある画素よりも下流の画素については、当該画素の前記目標輝度と、当該画素よりも上流側の画素について得られた前記指標値とに基づいて当該画素の指標値を決定することにより、各画素についての前記指標値を決定し、
各画素について得られた前記指標値の中で最も大きな最大指標値が所定の面積となるように各画素の指標値を読み替えることによって、各画素に形成する前記インク層の面積を決定することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置において、
前記表示板は、赤色光を入射するR光入射部が端部に設けられたR成分表示板と、緑色光を入射するG光入射部が端部に設けられたG成分表示板と、青色光を入射するB光入射部が端部に設けられたB成分表示板とが、三枚合わせに重ねられているとともに、RGBの各成分表示板の表面には、それぞれに前記光散乱領域が形成された表示板であり、
前記RGBの各成分表示板に形成されたぞれぞれの前記光散乱領域は、
前記RGBの成分表示板毎に前記各画素についての前記指標値を決定し、
前記RGBの成分表示板について得られた全ての前記指標値の中から前記最大指標値を抽出し、
前記最大指標値が所定の面積となるように、前記RGBの成分表示板の前記画素毎に得られた前記指標値を読み替えることによって、各画素に形成する前記インク層の面積を決定し、
前記決定された面積の前記インク層が、前記各画素に形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項4に記載の表示装置において、
前記画素内に形成される前記インク層の面積を決定するに際しては、
光が入射する方向から見て最も上流側にある前記画素については、当該画素に形成する前記インク層の面積に比例した指標値を、当該画素の前記目標輝度に応じて決定し、
前記最も上流側にある画素よりも下流の画素については、当該画素の前記目標輝度と、当該画素よりも上流側の画素について得られた前記指標値とに基づいて当該画素の指標値を決定することにより、各画素についての前記指標値を決定し、
各画素について得られた前記指標値の平均値が所定の基準面積となるように各画素の指標値を読み替えることによって、各画素に形成する前記インク層の面積を決定することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置において、
前記表示板は、赤色光を入射するR光入射部が端部に設けられたR成分表示板と、緑色光を入射するG光入射部が端部に設けられたG成分表示板と、青色光を入射するB光入射部が端部に設けられたB成分表示板とが、三枚合わせに重ねられているとともに、RGBの各成分表示板の表面には、それぞれに前記光散乱領域が形成された表示板であり、
前記RGBの各成分表示板に形成されたぞれぞれの前記光散乱領域は、
前記RGBの成分表示板毎に前記各画素についての前記指標値を決定し、
前記RGBの成分表示板について得られた全ての前記指標値の平均値を算出し、
前記平均値が所定の基準面積となるように、前記RGBの成分表示板の前記画素毎に得られた前記指標値を読み替えることによって、各画素に形成する前記インク層の面積を決定し、
決定された面積の前記インク層が前記各画素に形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項4ないし請求項8の何れか一項に記載の表示装置において、
前記表示板は、少なくとも前記光散乱領域以外の表面には、透明な樹脂材料を用いて形成され、該表示板および前記インク層よりも小さな屈折率を有する透明膜が設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の何れか一項に記載の表示装置において、
前記表示板は、複数の透明な板状部材が、前記光入射部に対して並列に設けられた状態で構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れか一項に記載の表示装置において、
前記表示板の表面を覆うように設けられ、該表面を保護する透明な板状部材を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11の何れか一項に記載の表示装置において、
前記ベース部には、前記表示板を内部に収納可能な収納部と、該表示部を支えながら摺動可能な摺動部材とが設けられており、
前記表示板は、前記摺動部材によって支えられながら摺動することによって、前記ベース部から立設した状態と、前記収納部に収納された状態とに切り換え可能に構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12の何れか一項に記載の表示装置において、
前記表示板には、透明な平板によって形成された可動パネルが、該表示板に対して摺動可能に設けられていることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−172368(P2009−172368A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324824(P2008−324824)
【出願日】平成20年12月21日(2008.12.21)
【出願人】(000106690)サン電子株式会社 (161)
【Fターム(参考)】