説明

表示装置

【課題】 低温環境でも少ない消費電力で応答性の良好な情報の書き換えが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】 CPU111は、温度センサ14が検出する温度をADC115を介して取得し、取得した温度に応じた発熱時間を温度発熱時間対応テーブルから取得する。棚札サーバ20から受信した書き換え情報の中から、書き換えを行うコモンライン164に表示する書き換え情報を取得する。そして、COMMONドライバ17によって、書き換えを行うコモンライン164に直流電圧または交流電圧を発熱時間だけ印加した後、コモンライン164への通電を停止する。次に、COMMONドライバ17によって、書き換えを行うコモンライン164に交流電圧を印加するとともに、SEGMENTドライバ18によって、各セグメントライン165に書き換え情報に応じた交流電圧を印加し、書き換えを行うコモンライン164の表示情報の書き換えを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を用いて表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗などに設置される電子棚札などの表示装置は、棚札サーバから商品に関する商品情報を受信して表示する。電子棚札として用いられる表示装置には、表示している商品情報を電圧が印加されない状態で保持することができるメモリ性液晶、たとえばコレステリック液晶が用いられる。
【0003】
コレステリック液晶は、相転移による2つの異なる分子配向を利用して表示を行うデバイスである。コレステリック液晶の液晶分子は、らせん構造を有しており、このらせん構造によって特定の波長の光を反射する。らせん構造のらせん軸が表示面方向に向いているプレーナ状態は、特定の波長の光を反射する状態であり、電圧を印加してらせん軸を表示面に対して横たえる方向に向むかせたフォーカルコニック状態は、光がセルを透過する状態である。コレステリック液晶は、温度によって粘性が変化し、冷蔵庫内など零下になると、粘性が高くなる。特に、冷凍庫内など極低温環境では、粘性が急激に高くなり、応答特性すなわち情報の書き換え速度が著しく低下する。
【0004】
特許文献1に記載される液晶表示装置は、セグメント電極が形成されたセグメント電極基板と、セグメント電極に相対向し液晶に電界を印加するコモン電極が形成されたコモン電極基板とによって液晶が挟持される。コモン電極には、コモン電極に直流を通電するための端子が設けられ、この端子から直流を通電することによってコモン電極を発熱させるものである。コモン電極を発熱させることによって、コモン電極に接する液晶が温められ、低温環境でも液晶の応答特性を速くすることができる。
【0005】
特許文献2に記載される液晶シャッタは、液晶が封入される2枚のガラス基板のうちの1枚の基板に共通電極が設けられ、他の1枚の基板に信号電極が設けられる。信号電極は、共通電極に交差対向する。共通電極の両端に電位差が発生する電圧を印加することによって、共通電極を発熱させるものである。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−145920号公報
【特許文献2】実開平2−45524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される液晶表示装置および特許文献2に記載される液晶シャッタは、特別のヒータを設けることなく液晶を加熱すものであるが、常時加熱しており、消費電力が大きいため、電池駆動を行う電子棚札などのメモリ性を有する表示装置に適用することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、低温環境でも少ない消費電力で応答性の良好な情報の書き換えが可能な表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも、第1の方向に配線される複数の第1の配線部が形成された基材、および第1の方向とは異なる第2の方向に配線される複数の第2の配線部が形成された基材を含む複数の基材と、前記複数の基材によって挟持され、電圧が印加されない状態で表示情報を保持する液晶とを有する表示部と、
前記複数の第1の配線部と前記複数の第2の配線部とが交差する表示位置のうち、表示情報を表示する表示位置を特定する表示位置特定部と、
前記複数の第2の配線部を開放状態とし、かつ前記複数の第1の配線部のうち表示位置特定部によって特定された表示位置を含む第1の配線部に対して電圧を印加することによって発熱させる配線発熱部と、
配線発熱部によって発熱させた後、表示位置特定部によって特定された表示位置に表示情報を表示する表示制御部とを備えることを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示部によって、少なくとも、第1の方向に配線される複数の第1の配線部が形成された基材、および第1の方向とは異なる第2の方向に配線される複数の第2の配線部が形成された基材を含む複数の基材と、前記複数の基材によって挟持され、電圧が印加されない状態で表示情報を保持する液晶とが備えられる。表示位置特定部によって、前記複数の第1の配線部と前記複数の第2の配線部とが交差する表示位置のうち、表示情報を表示する表示位置が特定され、配線発熱部によって、前記複数の第2の配線部が開放状態とされ、かつ前記複数の第1の配線部のうち表示位置特定部によって特定された表示位置を含む第1の配線部に対して電圧が印加されることによって発熱され、表示制御部によって、配線発熱部によって発熱させた後、表示位置特定部によって特定された表示位置に表示情報が表示される。
【0011】
したがって、低温環境でも、表示情報を表示する部分の液晶を、少ない消費電力で局所的に暖めることができ、液晶の応答性の良好な情報の書き換えを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態である電子棚札10を含む店舗システム1の構成を示すブロック図である。店舗システム1は、店舗内の商品を管理するシステムであり、電子棚札システム2と、POS(Point Of Sales)システム3と、それらを接続するLAN(
Local Area Network)4とを含んで構成される。LAN4は、情報を送受信するための通信回線であり、たとえばイーサネット(登録商標)によって構成される。
【0013】
電子棚札システム2は、電子棚札10、棚札サーバ20、トランシーバ21、ベースステーション22およびプリンタ23を含んで構成される。電子棚札10は、棚札サーバ20から指示される商品情報を表示する表示装置である。表示情報である商品情報は、商品名および価格など商品に係る情報であり、電子棚札10に表示するための情報である。棚札サーバ20は、各電子棚札10に表示させる商品情報を管理するサーバであり、たとえばコンピュータによって構成される。ベースステーション22およびプリンタ23は、LAN4を介して棚札サーバ20に接続される。
【0014】
トランシーバ21は、管轄する領域内に配置される複数の電子棚札10に対して、ベースステーション22から指示される商品情報を送信する。ベースステーション22は、棚札サーバ20から指示される商品情報を、その商品情報を送信すべき電子棚札10を管轄するトランシーバ21に送る。トランシーバ21とベースステーション22とは、無線LANもしくはイーサネット(登録商標)、または専用のインタフェースによって接続される。プリンタ23は、棚札サーバ20あるいは店舗サーバ30から指示される情報を印刷する印刷装置である。
【0015】
POSシステム3は、店舗サーバ30、POS端末(図1では「POS」という)31、ハンディターミナル32および無線LANアクセスポイント33を含んで構成される。店舗サーバ30は、各POS端末31からの情報に基づいて、店舗内の商品の販売数、売上および在庫などを管理し、そして、POS端末31に商品情報、たとえば商品名、商品コードおよび価格情報などの情報を配信するサーバであり、たとえばコンピュータによって構成される。POS端末31および無線LANアクセスポイント33は、LAN4を介して店舗サーバ30に接続される。
【0016】
POS端末31は、店舗サーバ30からの商品情報、たとえば価格情報を受けて売り上げ処理に用い、商品の販売数および売上額などの情報を店舗サーバ30に送信する。ハンディターミナル32は、店員が陳列されている商品の数などを無線で無線LANアクセスポイント33を介して店舗サーバ30に送信するための携帯端末装置である。ハンディターミナル32は、情報を表示する表示器を有し、店舗サーバ30および無線LANアクセスポイント33を介して、棚札サーバ20から送られてくる情報を表示器に表示する。無線LANアクセスポイント33は、ハンディターミナル32から受信した情報を店舗サーバ30に送り、店舗サーバ30から受け取った情報をハンディターミナル32に送信する。
【0017】
図2は、電子棚札10の構成を示すブロック図である。電子棚札10は、コントロール集積回路(Integrated Circuit;以下「IC」という)11、バッテリ12、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;以下「LCD」という)電源回路13、温度センサ14、アンテナ15、コレステリック液晶(以下「コレステリックLCD」という)16、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18を含んで構成される。
【0018】
コントロールIC11は、中央処理装置(Central Processing Unit;以下「CPU」という)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、RTC(Real Time Clock)114、アナログデジタル変換器(Analog Digital
Converter;以下「ADC」という)115、RF(Radio Frequency)116およびI/O(Input/Output)117を含んで構成され、たとえばこれらの構成要素からなる1チップのマイクロコンピュータによって構成される。
【0019】
表示位置特定部であるCPU111は、ROM112またはRAM113に記憶される制御プログラムを実行することによって、ADC115、RF116およびI/O117を制御する。ROM112は、たとえば読み出し専用の不揮発性の半導体メモリによって構成され、CPU111によって実行される制御プログラムを記憶する。RAM113は、書き込みおよび読み出し可能な半導体メモリによって構成され、CPU111によって実行される制御プログラム、ならびにCPU111が書き込みおよび読み出しを行う制御情報、たとえば商品情報を記憶する。
【0020】
RTC114は、時間を計時するタイマであり、CPU111は、RTC114を参照することによって、時間を知ることができる。ADC115は、温度センサ14によって検出された温度を表すアナログ信号をデジタル信号に変換して、CPU111に送るアナログデジタル変換器である。ADC115は、バッテリ12から供給される電力を、CPU111、ROM112、RAM113、RTC114、RF116およびI/O117に供給する。
【0021】
RF116は、アンテナ15によって、棚札サーバ20と、トランシーバ21を介して情報を送受信する通信装置であり、CPU111から受け取る情報を棚札サーバ20へ送信し、棚札サーバ20から受け取る情報をCPU11に送る。I/O117は、LCD電源回路13、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18と接続され、CPU111からの指示に従って、LCD電源回路13、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18を制御する入出力制御装置である。
【0022】
バッテリ12は、たとえば出力電圧が3V(ボルト)のリチューム電池などの直流電池によって構成され、ADC115およびLCD電源回路13に電力を供給する。LCD電源回路13は、バッテリ12から供給される電圧を、コレステリックLCD16を駆動するために必要な電圧、たとえば40Vに昇圧、あるいは周波数が数MHzの交流の電圧に変換する電圧変換回路である。LCD電源回路13は、I/O117を介してCPU111から指示されるオン/オフ信号に基づいて、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18に出力する電圧をオン/オフする。温度検出部である温度センサ14は、コレステリックLCD16の温度、あるいは電子棚札10内の温度を検出する温度センサであり、検出した温度を表すアナログ信号をADC115に送る。アンテナ15は、RF116と接続され、トランシーバ21を介した棚札サーバ20との情報の送受信のために、電波を発信および受信する。
【0023】
表示部であるコレステリックLCD16は、メモリ性を有するディスプレイ、たとえばコレステリック液晶を用いるディスプレイである。メモリ性を有するディスプレイは、電圧が印加される駆動状態で表示した表示情報を、電圧が印加されない非駆動状態で保持可能なディスプレイであり、たとえば、ディスプレイに印加される電圧がオフになっても、表示している表示情報を保持することができる。コレステリック液晶は、温度が低下すると、粘度が高くなり、表示情報の書き換えに時間がかかる。たとえば、摂氏20度程度の常温では約1秒で書き換え可能なものが、摂氏マイナス20度になると表示情報の書き換えに20分以上の時間を要する。
【0024】
コレステリック液晶は、少なくとも縦横のマトリクス状の電極が形成される2枚のガラス基板を含む複数の基材によって挟持される。2枚のガラス基板のうち1枚のガラス基板には、横方向の電極であるコモンラインが複数形成され、他の1枚のガラス基板には、縦方向の電極であるセグメントラインが複数形成されている。コモンラインおよびセグメントラインは、たとえば酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:略称ITO)などの透明導電膜によって形成される電極である。コモンラインとセグメントラインとが交差する位置は、1つの画素に対応する表示位置である。横方向は、第1の方向であり、縦方向は、第2の方向である。
【0025】
COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18は、I/O117を介してのCPU111からの指示に従って、コレステリックLCD16に電圧を印加して駆動するドライバである。COMMONドライバ17は、コレステリックLCD16のコモンラインを駆動し、SEGMENTドライバ18は、コレステリックLCD16のセグメントラインを駆動する。
【0026】
図3は、コレステリックLCD16に表示された商品情報の一例を示す図である。図3には、電子棚札10の外観が示されており、アンテナ15およびコレステリックLCD16が示されている。図3に示したコレステリックLCD16の表示画面には、商品情報、具体的には、商品名「天然素材無漂白コーヒー」、価格「1,680円」、および商品に関するその他の情報が表示されている。
【0027】
CPU111は、棚札サーバ20からRF116によって受信した商品情報をRAM113に記憶する。そして、RAM113に記憶した商品情報をコレステリックLCD16に表示する場合、I/O117を介してLCD電源回路13にオン信号を送り、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18を駆動して、商品情報をコレステリックLCD16に表示した後、I/O117を介してLCD電源回路13にオフ信号を送り、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18による駆動を停止する。コレステリックLCD16は、メモリ性を有しているので、表示した商品情報を表示し続ける。
【0028】
図4は、直流電源を用いてコモンライン164を発熱させる回路構成の一例を模式的に示す図であり、図5は、直流電源を用いる場合のLCDドライバ19の構成を模式的に示す図である。LCDドライバ19は、LCD電源回路13、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18を含んで構成され、CPU11からI/O117を介して指示される表示情報を、コレステリックLCD16に表示する。図4に示したコレステリックLCD16には、英文字「A」が表示情報として表示されている。
【0029】
各コモンライン164は、一端がLCDドライバ19に含まれるCOMMONドライバ17に接続され、他端がダイオード162のアノードに接続される。各ダイオード162のカソードは、スイッチ161を介してLCDドライバ19に接続される。セグメントライン165は、LCDドライバ19に含まれるSEGMENTドライバ18に接続される。スイッチ161は、I/O117を介してCPU11から指示される発熱制御信号によって開閉する。
【0030】
CPU111は、I/O117を介してシフトクロックおよびデータラインなどの信号、交流化信号ならびに発熱制御信号をLCDドライバ19に送る。バッテリ12などの直流電源からLCDドライバ19のLCD電源回路13に直流電圧が供給される。LCD電源回路13は、交流化信号が指示されると、直流電源からの直流電圧を交流電圧に変換し、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18に供給する。直流電源は、COMMONドライバ17に直流電圧を供給する電圧源であり、変換された交流電圧は、COMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18に交流電圧を供給する電圧源である。
【0031】
COMMONドライバ17に直流電圧を供給するか、交流電圧を供給するかは、発熱制御信号によって制御され、発熱制御信号が指示されると、直流電圧がCOMMONドライバ17に供給され、コモンライン164を発熱させる。表示情報をコレステリックLCD16に書き込むときは、交流電圧がCOMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18に供給される。
【0032】
コレステリックLCD16への表示情報の書き込みは、1つ1つのコモンライン164ごとに順次行なわれる。LCDドライバ19は、表示情報を書き込むコモンライン164について、各セグメントライン165と交差する表示位置に表示する表示情報が「1」か「0」か、すなわち表示する色が「白」か「黒」かに応じて、コモンライン164との電位差が「40V」か「0V」かになるように各セグメントライン165に交流電圧を印加する。「1」を書き込むセグメントライン165に印加する交流電圧の位相は、コモンライン164に印加する交流電圧の位相と反転した位相、つまり180度ずれた位相であり、最大の電位差が40Vである。「0」を書き込むセグメントライン165に印加する交流電圧の位相は、コモンライン164に印加する交流電圧の位相と同じ位相であり、電位差は常に0Vである。このとき、スイッチ161は開放されている。
【0033】
コモンライン164を発熱させる場合は、スイッチ161が閉じられるとともに、LCDドライバ19は、COMMONドライバ17によって、発熱させるコモンライン164に直流電圧を印加する。このとき、SEGMENTドライバ18は、セグメントライン165に電圧を印加していない。
【0034】
図6は、交流電源を用いてコモンライン164を発熱させる回路構成の一例を模式的に示す図であり、図7は、交流電源を用いる場合のLCDドライバ19の構成を模式的に示す図である。図4および図5に示した構成と同じ構成については、重複をさけるために説明は省略する。図6に示した回路構成は、図4に示した回路構成のうちダイオード162をコンデンサ153に置き換えた構成であり、図7に示したLCD電源回路13は、交流電圧のみをCOMMONドライバ17に供給し、直流電圧をCOMMONドライバ17に供給することはない。
【0035】
表示情報をコレステリックLCD16に書き込むときは、LCDドライバ19は、交流電圧をCOMMONドライバ17およびSEGMENTドライバ18に供給する。コモンライン164を発熱させるときに、COMMONドライバ17に交流電圧を供給するか否かは、発熱制御信号によって制御され、発熱制御信号が指示されると、交流電圧がCOMMONドライバ17に供給される。
【0036】
LCDドライバ19は、表示制御部である。LCD電源回路13およびCOMMONドライバ17は、配線発熱部である。コモンライン164は、第1の配線部であり、セグメントライン165は、第2の配線部である。
【0037】
図8は、直流電源を用いる場合のコモンライン164の発熱と表示情報の書き換えとを説明するための図である。図8(a)は、コモンラインCL1への表示情報の書き込みが終了した後、コモンラインCL2を発熱させているときの状態を示す図である。直流電圧源166は、LCD電源回路13からCOMMONドライバ17に直流電圧を供給する電圧源である。スイッチ161が閉じており、直流電圧源166の電圧がコモンライン164のうちコモンラインCL2にのみ印加され、コモンラインCL2は発熱している。このとき、セグメントライン165は開放されている。
【0038】
図8(b)は、スイッチ161か開放され、コモンラインCL2の発熱を終了し、表示情報を書き換える直前の状態を示す図である。図8(c)は、コモンラインCL2とセグメントライン165とが交差する表示位置の表示情報を書き換えている状態を示す図である。コモンラインCL2には、交流電圧源167からの交流電圧が印加される。交流電圧源167は、LCD電源回路13からCOMMONドライバ17に交流電圧を供給する電圧源である。各セグメントライン165には、SEGMENTドライバ18によって、各セグメントラインの表示位置に表示する表示情報が「白」か「黒」に応じて、コモンラインCL2に印加される交流電圧の位相と同じ位相か反転した位相の交流電圧が印加される。
【0039】
図9は、交流電源を用いる場合のコモンライン164の発熱と表示情報の書き換えとを説明するための図である。図9(a)は、コモンラインCL1への表示情報の書き込みが終了した後、コモンラインCL2を発熱させているときの状態を示す図である。交流電圧源168は、LCD電源回路13からCOMMONドライバ17に交流電圧を供給する電圧源である。スイッチ161が閉じており、交流電圧源168の電圧がコモンライン164のうちコモンラインCL2にのみ印加され、コモンラインCL2は発熱している。このとき、セグメントライン165は開放されている。
【0040】
図9(b)は、スイッチ161か開放され、コモンラインCL2の発熱を終了した後、コモンラインCL2とセグメントライン165とが交差する表示位置の表示情報を書き換えている状態を示す図である。コモンラインCL2には、交流電圧源168からの交流電圧が印加される。各セグメントライン165には、SEGMENTドライバ18によって、各セグメントラインの表示位置に表示する表示情報が「白」か「黒」に応じて、コモンラインCL2に印加される交流電圧の位相と同じ位相か反転した位相の交流電圧が印加される。
【0041】
図10は、CPU111が実行する表示処理を示すフローチャートである。電子棚札10の電源が投入され、電子棚札10が動作可能になると、ステップA1に移る。
【0042】
ステップA1では、棚札サーバ20から信号を受信する。具体的には、棚札サーバ20からトランシーバ21を介して送信されてくる信号を、アンテナ15およびRF116によって受信する。受信する信号には、画面書き換え要求信号などの信号があり、画面書き換え要求信号の場合は、画面書き換え要求信号に書き換え情報が含まれる。ステップA2では、画面書き換え要求信号を受信したか否かを判定する。受信した信号が画面書き換え要求信号であると、ステップA3に進み、受信した信号が画面書き換え要求信号でないと、ステップA1に戻る。
【0043】
ステップA3では、書き換え情報を記憶する。具体的には、受信した画面書き換え要求信号に含まれる書き換え情報をRAM113に記憶する。ステップA4では、書き換えラインを決定する。具体的には、コモンライン164の中から書き換えを行うコモンライン164を決定する。たとえばコレステリックLCD16の画面全体を書き換える場合は、画面の最上段のコモンライン164に決定し、画面の一部の領域を書き換える場合は、その画面の一部の領域のうちの最上段のコモンライン164に決定する。
【0044】
ステップA5では、CPU111は、I/O117を介してLCDドライバ19に書き換えを指示する。ステップA6では、温度を取得し、変数Tに代入する。具体的には、温度センサ14が検出する温度を、ADC115を介して取得し、取得した温度を変数Tに代入する。ステップA7では、変数Tに基づいて発熱時間を取得する。たとえば予めROM112またはRAM113に温度と発熱時間とを関連付けた温度発熱時間対応テーブルを記憶しておき、変数Tが示す温度に対応する発熱時間をROM112またはRAM113に記憶される温度発熱時間対応テーブルから取得する。あるいは、温度と発熱時間との関係を示す計算式があるならば、その計算式を用いて温度から発熱時間を計算してもよい。
【0045】
ステップA8では、書き換え開始ラインを変数Nにセットする。具体的には、ステップA4で決定したコモンライン164の番号を変数Nに代入する。番号は、たとえばコレステリックLCD16の画面の最上段を「1」としたとき上昇順の整数で表わされる。ステップA9では、Nラインの表示情報を取得する。具体的には、ステップA3でRAM113に記憶した書き換え情報の中から変数Nが示す番号のコモンライン164に表示する書き換え情報を取得する。
【0046】
ステップA10では、Nラインのコモンライン164を通電する。具体的には、COMMONドライバ17によって、変数Nが示す番号のコモンライン164に、直流電圧または交流電圧を印加する。ステップA11では、発熱時間が経過したか否かを判定する。通電を開始してからステップA7で取得した発熱時間が経過していると、ステップA12に進み、通電を開始してからステップA7で取得した発熱時間が経過していないと、ステップA10に戻る。
【0047】
ステップA12では、コモンライン164の通電を停止する。具体的には、COMMONドライバ17によるコモンライン164への通電を停止する。ステップA13では、Nラインを書き換える。具体的には、COMMONドライバ17によって変数Nが示す番号のコモンライン164に交流電圧を印加するとともに、SEGMENTドライバ18によって各セグメントライン165に書き換え情報に応じた交流電圧を印加し、変数Nが示す番号のコモンライン164の書き換えを行う。
【0048】
ステップA14では、変数Nに「1」を加算する。ステップA15では、Nラインの表示情報を取得する。具体的には、ステップA3でRAM113に記憶した書き換え情報の中から、ステップA14で「1」を加算した変数Nが示す番号のコモンライン164に表示する書き換え情報を取得する。ステップA16では、Nラインに書き換え情報があるか否かを判定する。ステップA3でRAM113に記憶した書き換え情報の中に、変数Nが示す番号のコモンライン164に表示する書き換え情報があると、Nラインに書き換え情報があると判定し、ステップA10に戻る。ステップA3でRAM113に記憶した書き換え情報の中に、変数Nが示す番号のコモンライン164に表示する書き換え情報がないと、Nラインに書き換え情報がないと判定し、表示処理を終了する。
【0049】
上述した実施の形態では、表示情報を書き換えるとき、書き換えを行う1つのコモンライン164ごとに、コモンライン164を発熱させた後、そのコモンライン164に表示する表示情報を書き換えたが、書き換えを行うコモンライン164を含む隣接する複数のコモンライン164を同時に発熱させてもよい。具体的には、LCDドライバ19は、表示情報を書き換えるコモンライン164のうち、隣接する少なくとも2つのコモンライン164単位で同時に発熱時間だけ発熱させた後、発熱させた複数のコモンライン164の表示情報の書き換えを連続して順次行う。
【0050】
あるいは、LCDドライバ19は、発熱時間を複数に等分割し、分割した数に等しい数の隣接するコモンライン164を、分割した時間だけ1つずつずらして、順次同時に発熱させる。そして、発熱させた時間が発熱時間に達したコモンライン164から順次、表示情報の書き換えを行う。
【0051】
複数のコモンライン164を同時に発熱させるので、すべてのコモンライン164の書き換えを行う時間は、各コモンライン164を順次それぞれの発熱時間だけ発熱させる場合よりも、半分以下に短縮することができる。
【0052】
電子棚札10は、冷蔵庫の保存される商品の近く、あるいは店舗に陳列される冷蔵品の近くに設置されることがあるが、表示情報を書き換えるとき、コレステリックLCD全体を暖めるのではなく、局所的にコレステリックLCDの一部分のみを暖めるので、電子棚札10の熱によって周辺に置かれる商品が暖められることを低減することができる。
【0053】
このように、コレステリックLCD16によって、少なくとも、横方向に配線される複数のコモンライン164が形成されたガラス基板、および縦方向に配線される複数のセグメントライン165が形成されたガラス基板を含む複数の基材と、前記複数の基材によって挟持され、電圧が印加されない状態で表示情報を保持するコレステリック液晶とが備えられる。CPU111によって、前記複数のコモンライン164と前記複数のセグメントライン165とが交差する表示位置のうち、表示情報を表示する表示位置が特定される。そして、LCD電源回路13およびCOMMONドライバ17によって、前記複数のセグメントライン165が開放状態とされ、かつ前記複数のコモンライン164のうちCPU111によって特定された表示位置を含むコモンライン164に対して電圧が印加されることによって発熱され、LCDドライバ19によって、LCD電源回路13およびCOMMONドライバ17によって発熱させた後、CPU111によって特定された表示位置に表示情報が表示される。
【0054】
したがって、低温環境でも、表示情報を表示する部分のコレステリック液晶を、少ない消費電力で局所的に暖めることができ、コレステリック液晶の応答性の良好な情報の書き換えを可能とすることができる。
【0055】
さらに、温度センサ14によって、温度が検出され、LCD電源回路13およびCOMMONドライバ17によって、温度センサ14によって検出された温度に応じて、コモンライン164を発熱させる発熱時間が決定され、決定された発熱時間だけ、CPU111によって特定された表示位置を含むコモンライン164に対して電圧が印加されることによって発熱される。したがって、温度が極端に低くない場合は、発熱させる時間を短くすることができ、表示切り換えの時間を短縮することができる。
【0056】
さらに、CPU111によって、表示情報をコモンライン164単位に順次表示する表示位置が特定され、LCD電源回路13およびCOMMONドライバ17によって、CPU111によって特定された順次表示する表示位置のうち、次に表示する表示位置を含むコモンライン164と、次に表示する表示位置に引き続いて表示する表示位置のうち最も直近の少なくとも1つの表示位置を含むコモンライン164とに対して電圧が印加されることによって発熱される。したがって、次に表示するコモンライン164の他に直近に引き続いて表示するコモンライン164も同時に発熱するので、表示情報の書き換え時間を短縮することができる。
【0057】
さらに、LCD電源回路13およびCOMMONドライバ17によって、直流の電圧が印加されるので、バッテリから供給される直流を用いてコモンライン164を発熱させることができる。
【0058】
さらに、LCD電源回路13およびCOMMONドライバ17によって、交流の電圧が印加されるので、表示を行うために用いる交流電源を共有化することができ、電源の切り換え回路を簡素化することができる
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の一形態である電子棚札10を含む店舗システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】電子棚札10の構成を示すブロック図である。
【図3】コレステリックLCD16に表示された商品情報の一例を示す図である。
【図4】直流電源を用いてコモンライン164を発熱させる回路構成の一例を模式的に示す図である。
【図5】直流電源を用いる場合のLCDドライバ19の構成を模式的に示す図である。
【図6】交流電源を用いてコモンライン164を発熱させる回路構成の一例を模式的に示す図である。
【図7】交流電源を用いる場合のLCDドライバ19の構成を模式的に示す図である。
【図8】直流電源を用いる場合のコモンライン164の発熱と表示情報の書き換えとを説明するための図である。
【図9】交流電源を用いる場合のコモンライン164の発熱と表示情報の書き換えとを説明するための図である。
【図10】CPU111が実行する表示処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 店舗システム
2 電子棚札システム
3 POSシステム
4 LAN
10 電子棚札
11 コントロールIC
12 バッテリ
13 LCD電源回路
14 温度センサ
15 アンテナ
16 コレステリック液晶
17 COMMONドライバ
18 SEGMENTドライバ
19 LCDドライバ
20 棚札サーバ
21 ベースステーション
22 プリンタ
23 トランシーバ
30 店舗サーバ
31 POS端末
32 ハンディターミナル
33 無線LANアクセスポイント
111 CPU
112 ROM
113 RAM
114 RTC
115 ADC
116 RF
117 I/O
161 スイッチ
162 ダイオード
163 コンデンサ
164 コモンライン
165 セグメントライン
166 直流電圧源
167,168 交流電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1の方向に配線される複数の第1の配線部が形成された基材、および第1の方向とは異なる第2の方向に配線される複数の第2の配線部が形成された基材を含む複数の基材と、前記複数の基材によって挟持され、電圧が印加されない状態で表示情報を保持する液晶とを有する表示部と、
前記複数の第1の配線部と前記複数の第2の配線部とが交差する表示位置のうち、表示情報を表示する表示位置を特定する表示位置特定部と、
前記複数の第2の配線部を開放状態とし、かつ前記複数の第1の配線部のうち表示位置特定部によって特定された表示位置を含む第1の配線部に対して電圧を印加することによって発熱させる配線発熱部と、
配線発熱部によって発熱させた後、表示位置特定部によって特定された表示位置に表示情報を表示する表示制御部とを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
温度を検出する温度検出部をさらに備え、
前記配線発熱部は、温度検出部によって検出された温度に応じて、第1の配線部を発熱させる発熱時間を決定し、決定した発熱時間だけ、前記表示位置特定部によって特定された表示位置を含む第1の配線部に対して電圧を印加することによって発熱させることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示位置特定部は、表示情報を第1の配線部単位に順次表示する表示位置を特定し、
前記配線発熱部は、前記表示位置特定部によって特定された順次表示する表示位置のうち、次に表示する表示位置を含む第1の配線部と、次に表示する表示位置に引き続いて表示する表示位置のうち最も直近の少なくとも1つの表示位置を含む第1の配線部とに対して電圧を印加することによって発熱させることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記配線発熱部は、直流の電圧を印加することによって発熱させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記配線発熱部は、交流の電圧を印加することによって発熱させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−60665(P2010−60665A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224039(P2008−224039)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】