説明

表示装置

【課題】 スクリーンが損傷したときにも車両運転者の眼に悪影響を及ぼす虞を低減できる表示装置を提供する。
【解決手段】 レーザー光源11,12,13は、レーザー光R,G,Bを発する。走査手段21は、レーザー光R,G,Bをスクリーン22に走査する。検出部27は、レーザー光R,G,Bの光強度を検出する。出力制御手段36は、検出部27で検出された光強度に応じてレーザー光源11,12,13の出力を制御する。出力制御手段36は、検出部27で検出された光強度が所定値以下になったとき、レーザー光源11,12,13の出力を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光源を備えた車両用ヘッドアップディスプレイ装置等の表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のウインドシールド或いはコンバイナと称される半透過板に表示像を投影し、虚像を表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。車両用ヘッドアップディスプレイ装置1は車両のダッシュボード内に配設されており、この車両用ヘッドアップディスプレイ装置1が投射する表示像Lはウインドシールド2により車両運転者3に反射され、車両運転者3は虚像Vを風景と重畳させて視認することができる(図5参照)。
【0003】
このような車両用ヘッドアップディスプレイ装置1において、半導体レーザーを光源としたものが提案されており、例えば特許文献2に開示されている。斯かる車両用ヘッドアップディスプレイ装置1は、半導体レーザー,走査系,スクリーンを備えており、半導体レーザーから発せられたレーザー光を走査系でスクリーン上に走査して表示像を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−193400号公報
【特許文献2】特開平7−270711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザー走査型の車両用ヘッドアップディスプレイ装置1は、クラス3B程度の大きな強度のレーザー光を用いる必要があり、例えば、スクリーンが破損した場合、車両運転者3の眼にレーザー光が入射し、車両運転者3の眼に悪影響を及ぼす虞があった。
本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、スクリーンが損傷したときにも車両運転者の眼に悪影響を及ぼす虞を低減できる表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レーザー光を発するレーザー光源と、前記レーザー光をスクリーンに走査する走査手段と、前記レーザー光の光強度を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記光強度に応じて前記レーザー光源の出力を制御する出力制御手段と、を備え、前記出力制御手段は、前記検出部で検出された前記光強度が所定値以下になったとき、前記レーザー光源の出力を低減させるものである。
【0007】
また、本発明は、前記検出部は、前記スクリーンの非表示エリアで、且つ、前記走査手段が前記レーザー光を走査可能な領域に配設されるものである。
【0008】
また、本発明は、第一のレーザー光を発する第一のレーザー光源と、第二のレーザー光を発する第二のレーザー光源と、前記第一のレーザー光と前記第二のレーザー光とを合波する合波手段と、前記第一のレーザー光及び前記第二のレーザー光をスクリーンに走査する走査手段と、前記スクリーンに走査された前記第二のレーザー光の反射光強度を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記反射光強度に応じて前記第一のレーザー光源及び前記第二のレーザー光源の出力を制御する出力制御手段と、を備え、前記出力制御手段は、前記検出部で検出した反射光強度が所定値以下になったとき、前記第一のレーザー光源及び前記第二のレーザー光源の出力を低減させるものである。
【0009】
また、本発明は、前記検出部は、前記走査手段と前記スクリーンの間に配設されているものである。
【0010】
また、本発明は、前記第一のレーザー光源及び前記第二のレーザー光源は、同一のパッケージに組み込まれているものである。
【発明の効果】
【0011】
検出部で検出された反射光強度が所定値以下になったとき、レーザー光源の出力を低減させることにより、スクリーンが損傷したときにも車両運転者の眼に悪影響を及ぼす虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示す側面図。
【図2】同上実施形態を示すビーム発生手段の拡大図。
【図3】同上実施形態を示すブロック図。
【図4】同上実施形態を示すスクリーンの拡大図。
【図5】従来例を示す概観図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面に基づいて、本発明を車両用ヘッドアップディスプレイ装置に適用した一実施形態について説明する。
【0014】
11は赤色レーザーダイオード(第一のレーザー光源)であり、この赤色レーザーダイオード11は赤色のレーザー光(第一のレーザー光)Rを発するものである。12は緑色レーザーダイオード(第一のレーザー光源)であり、この緑色レーザーダイオード12は緑色のレーザー光(第一のレーザー光)Gを発するものである。13は青色レーザーダイオード(第一のレーザー光源)であり、この青色レーザーダイオード13は青色のレーザー光(第一のレーザー光)Bを発するものである。14は赤外線レーザーダイオード(第二のレーザー光源)であり、この赤外線レーザーダイオード14は赤外線のレーザー光(第二のレーザー光)IRを発するものである。
【0015】
15a,15b,15c,15dは集光光学系であり、この集光光学系15a,15b,15c,15dは、レーザーダイオード11,12,13,14から出射されたレーザー光R,G,B,IRを夫々収束光にする。16a,16b,16cはダイクロイックミラー(合波手段)であり、このダイクロイックミラー16a,16b,16cは、レーザーダイオード11,12,13から出射されたレーザー光R,G,Bを反射させると共に、レーザーダイオード14から出射されたレーザー光IRを透過させ、レーザー光R,G,B,IRを1本のビームに合波する。ビーム発生手段20は、レーザーダイオード11,12,13,14,集光光学系15a,15b,15c,15d,ダイクロイックミラー16a,16b,16cからなるものである。
【0016】
21はMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーであり、このMEMSミラー21は、ビーム発生手段20から出射されたレーザー光R,G,B,IRを走査して、後述するスクリーンに表示像Lを生成させる。22はスクリーンであり、このスクリーン22は、MEMSミラー21で走査されたレーザー光R,G,B,IRを背面で受光して表示像Lを生成する。スクリーン22は拡散板からなるものであるが、例えば、ホログラフィックディフューザ,マイクロレンズアレイまたは偏光板からなるものであっても良い。
【0017】
23は平面ミラーであり、この平面ミラー23はスクリーン22に表示された表示像Lを後述する凹面ミラーに折り返すものである。24は凹面ミラーであり、この凹面ミラー24は平面ミラー23で反射された表示像Lをウインドシールドに投影する。26はハウジングであり、このハウジング26には、ビーム発生手段20,MEMSミラー21,スクリーン22,平面ミラー23,凹面ミラー24等が収容される。ハウジング26には、表示像Lが出射する窓部25が設けられている。この窓部25はアクリル等の透光性樹脂からなるものであり、湾曲形状になっている。
【0018】
27はカラーセンサ(検出部)であり、このカラーセンサ27はレーザー光R,G,Bの光強度を検出する。検出手段31は、カラーセンサ27及びマイコン30からなるものであり、カラーセンサ27から出力されたレーザー光R,G,Bの光強度のアナログデータをマイコン30のA/D変換機能にてデジタルデータに変換し、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)32に光検出データを出力する。
【0019】
カラーセンサ27は、スクリーン22の表示エリア22a外に配設されている。カラーセンサ27の配設位置は、スクリーン22の非表示エリアで、且つ、MEMSミラー21がレーザー光R,G,B,IRを走査可能な領域であれば良いが、MEMSミラー21が水平方向のみにレーザー光R,G,B,IRを走査した場合のラインAH、垂直方向のみにレーザー光R,G,B,IRを走査した場合のラインAVは除くものとする。
【0020】
ASIC32は、カラーセンサ27から得られた光検出データに基づいて、レーザー光R,G,Bの光強度が表示色に応じた出力になるような制御データを、出力制御部35に出力することで、レーザー光R,G,Bを制御する。また、ASIC32は、光検出データが所定値以下になったとき、レーザーダイオード11,12,13,14の出力を停止させる。出力制御手段36は、ASIC32及び出力制御部35からなるものである。
【0021】
28はフォトダイオード(検出部)であり、このフォトダイオード28はMEMSミラー21で走査されたレーザー光IRがスクリーン22で反射された際の赤外線強度を検出する。検出手段34は、フォトダイオード28及びマイコン33からなるものであり、フォトダイオード28から出力されたレーザー光IRの光強度のアナログデータをマイコン33のA/D変換機能にてデジタルデータに変換し、ASIC32に光検出データを出力する。
【0022】
フォトダイオード28は、スクリーン22の表示エリア22a外で、且つ、MEMSミラー21とスクリーン22の間に配設され、MEMSミラー21で走査されたレーザー光IRがスクリーン22で反射された際の赤外線強度を検出する。フォトダイオード28のサンプリング周波数は、レーザーダイオード11,12,13,14の変調周波数と一致している。
【0023】
ASIC32は、出力制御部35を介して、レーザーダイオード11,12,13,14を駆動すると共に、ミラードライバー37を介して、MEMSミラー21を駆動する。ASIC32は、所定の位置に配置されたカラーセンサ27の位置データをあらかじめ持っており、所定のタイミングにて、レーザーダイオード11,12,13,14を駆動し、カラーセンサ27にレーザー光R,G,Bを入光させる。ASIC32は、光検出データが所定値以下になったとき、レーザーダイオード11,12,13,14の出力を停止させる。
【0024】
MEMSミラー21によって走査されるレーザー光IRは集光光学系15dによって、表示像Lの1画素分のビーム径(約100μm)に収束されており、且つ、フォトダイオード28のサンプリング周波数をレーザーダイオード11,12,13,14の変調周波数に合わせることにより、スクリーン22の表示エリア22aの破損状況を100μmピッチで判断することができる。
【0025】
本実施形態によれば、表示エリア22a外に設置された検出部27でレーザー光R,G,Bの強度を検出することによってMEMSミラー21が所定の振れ角で動作していることを感知し、光強度が所定値以下になった場合は、MEMSミラー21に異常が生じたと判断して、レーザーダイオード11,12,13,14の出力を停止することにより、車両運転者が眼への損傷を受けることがなく、安全に走行することが可能になる。
【0026】
また、レーザー光IRをスクリーン22に走査して反射光を検出することで、スクリーン22の損傷を検知して、レーザーダイオード11,12,13,14の出力を停止することにより、車両運転者が眼への損傷を受けることがなく、安全に走行することが可能になる。
【0027】
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、レーザーダイオード12は、波長変換レーザーであっても良い。また、本実施形態は、カラーセンサ27またはフォトダイオード28で検出された光強度が所定値以下のときに、レーザーダイオード11,12,13,14の出力を停止(即ち、出力を0に低減)させるものであったが、例えば、レーザーダイオード11,12,13,14の出力を半減させても良い。
【0028】
また、本実施形態の第二のレーザー光源は、赤外線レーザーダイオード14であったが、紫外線レーザーダイオードであっても良い。また、スクリーン22にて反射されたレーザー光IRがフォトダイオード28に入射し易いように、反射鏡やレンズをフォトダイオード28に組み合わせてもよい。また、レーザーダイオード14は、単独パッケージとしてビーム発生手段20に組み込まれていても良いし、他のレーザーダイオード11,12,13と同一のパッケージに存在していても良い。
【符号の説明】
【0029】
11 赤色レーザーダイオード(第一のレーザー光源)
12 緑色レーザーダイオード(第一のレーザー光源)
13 青色レーザーダイオード(第一のレーザー光源)
14 赤外線レーザーダイオード(第二のレーザー光源)
21 MEMSミラー(走査手段)
22 スクリーン
27 カラーセンサ(検出部)
28 フォトダイオード(検出部)
36 出力制御手段
L 表示像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発するレーザー光源と、前記レーザー光をスクリーンに走査する走査手段と、前記レーザー光の光強度を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記光強度に応じて前記レーザー光源の出力を制御する出力制御手段と、を備え、前記出力制御手段は、前記検出部で検出された前記光強度が所定値以下になったとき、前記レーザー光源の出力を低減させることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記スクリーンの非表示エリアで、且つ、前記走査手段が前記レーザー光を走査可能な領域に配設されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
第一のレーザー光を発する第一のレーザー光源と、第二のレーザー光を発する第二のレーザー光源と、前記第一のレーザー光と前記第二のレーザー光とを合波する合波手段と、前記第一のレーザー光及び前記第二のレーザー光をスクリーンに走査する走査手段と、前記スクリーンに走査された前記第二のレーザー光の反射光強度を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記反射光強度に応じて前記第一のレーザー光源及び前記第二のレーザー光源の出力を制御する出力制御手段と、を備え、前記出力制御手段は、前記検出部で検出した反射光強度が所定値以下になったとき、前記第一のレーザー光源及び前記第二のレーザー光源の出力を低減させることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記走査手段と前記スクリーンの間に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第一のレーザー光源及び前記第二のレーザー光源は、同一のパッケージに組み込まれていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−186357(P2011−186357A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54055(P2010−54055)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】