説明

表示装置

【課題】本発明は、機械式のシャッタが配置されたパネルを満たすオイルに気泡が発生することを防止することを目的とする。
【解決手段】表示装置は、間隔を有して対向配置された一対の光透過性基板10,12と、一対の光透過性基板10,12を貼り合わせるシール材38と、封止空間に充填されたオイル42と、光透過性基板10に形成され且つ封止空間に配置されたシャッタ14とを有し、シール材38の熱膨張係数αはオイル42の熱膨張係数βよりも大きい、又は0.8β≦α≦1.2βの関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に画素に微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSディスプレイ(Micro Electro Mechanical System Display)は、液晶ディスプレイに取って代わると期待されているディスプレイである(特許文献1参照)。このディスプレイは、偏光を利用した液晶シャッタ方式とは異なり、機械シャッタ方式によって光の透過窓を開閉することにより明暗を表示する。機械式のシャッタ(以下、単にシャッタとも呼ぶ)は、アモルファスシリコンの膜からなり、1画素を構成する1シャッタの縦横サイズは数100μmオーダで厚みが数μmオーダである。1シャッタの開閉により、1画素分のオンオフ動作が可能となる。シャッタは、静電引力によって動作するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャッタが動作するパネル内はオイルで満たしてあり、オイルによってパネル内の誘電率を上げることでシャッタを駆動するために必要な電圧を低下させている。この構造によれば、環境温度が低下した時のオイルの収縮により、パネルの内部(オイルで満たされている領域)に気泡が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、機械式のシャッタが配置されたパネル内を満たすオイルに気泡が発生することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表示装置は、間隔を有して対向配置された一対の絶縁基板と、前記一対の絶縁基板を貼り合わせるシール材と、前記一対の絶縁基板のうちの一方の基板に形成されたシャッタと、前記一対の絶縁基板と前記シール材とで区画された封止空間と、前記封止空間に充填されたオイルとを有する表示装置で有って、前記シャッタは前記封止空間に配置され、前記シール材の熱膨張係数は、前記オイルの熱膨張係数よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る表示装置は、前記シール材の熱膨張係数と前記オイルの熱膨張係数とは等しくしてもよい。
【0008】
更に、また、本発明に係る表示装置は、前記シール材の熱膨張係数をα、前記オイルの熱膨張係数をβとしたとき、0.8β≦α≦1.2βの関係を有するようにしてもよい。
【0009】
本発明によれば、シール材の熱膨張係数αとオイルの熱膨張係数βの差が小さくなっている。そのため、環境温度が低下したときに、オイルの収縮に対応してシール材が収縮し、シール材の収縮に対応して封止空間が収縮するので、封止空間とオイルの体積差が小さくなり、オイルに気泡が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の概略を示す断面図である。
【図2】シャッタ及びその駆動部を示す図である。
【図3】遮光膜及びその開口部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の概略を示す断面図である。
【0012】
表示装置は、一対の光透過性基板(絶縁基板)10,12(例えばガラス基板)を有する。一対の光透過性基板10,12は、間隔をあけて対向するように配置されている。
【0013】
一方の光透過性基板10(図1では下側)には、図2に示すシャッタ14が設けられている。シャッタ14は、開口部16を有するプレートである。開口部16で光が通過し、開口部16以外の部分で光を遮断する。開口部16は一方向に長い形状になっている。なお、光は、図1に示すように、光透過性基板10に重ねられたバックライト18から供給される。なお、図1ではバックライト18は、シャッタ14が設けられている方の光透過性基板10に対向して配置されているが、他方の光透過性基板12に対向して配置されてもよい。
【0014】
シャッタ14は、第1バネ20に支持されて光透過性基板10から浮くように、すなわち光透過性基板10の主面から所定の間隙を有して配置されるようになっている。複数(図2では4つ)の第1バネ20によってシャッタ14が支持されている。第1バネ20は、第1アンカー部22で光透過性基板10に固定されている。
【0015】
第1バネ20は、弾性変形可能な材料からなり、シャッタ14の板面(プレートの主面)に平行な方向に変形できるように配置されている。詳しくは、第1バネ20は、シャッタ14から離れる方向(開口部16の長手方向に交差(例えば直交)する方向)に延びる第1部24と、開口部16の長さ方向に沿った方向であって開口部16の長さ方向の中央から外方向に向かって延びる第2部26と、さらにシャッタ14から離れる方向(開口部16の長手方向に交差(例えば直交)する方向)に延びる第3部28と、を有する。そして、シャッタ14は、図2に矢印で示すように、開口部16の長手方向に交差(例えば直交)する方向に移動できるようになっている。
【0016】
光透過性基板10には、第2アンカー部30に支持された第2バネ32が設けられている。第2バネ32は、第1バネ20の第2部26よりもシャッタ14から離れた側で、この第2部26に対向するようになっている。第2アンカー部30に電圧を印加し、第1バネ20の第2部26との電位差による静電引力によって、第2部26が第2バネ32に引き寄せられるようになっている。第2部26が引き寄せられると、第2部26と一体的な第1部24を介して、シャッタ14も引き寄せられる。つまり、第1バネ20及び第2バネ32は、シャッタ14を機械的に駆動するための駆動部40を構成するためのものである。
【0017】
他方の光透過性基板12には遮光膜34が形成されている。遮光膜34の図1では省略された部分には、図3に示すように、開口部36が形成されている。シャッタ14の上述した開口部16と遮光膜34の開口部36が連通すれば光が通過し、シャッタ14の移動によって遮光膜34の開口部36が遮蔽されると光が遮断される。言い換えると、遮光膜34の開口部36への光の通過及び遮断を制御するように、シャッタ14は機械的に駆動される。対応するシャッタ14の開口部16と他方の光透過性基板12の開口部36とによって1画素が構成され、多数の画素によって画像が表示されるようになっている。そのため、光透過性基板10には複数(多数)のシャッタ14が設けられている。
【0018】
一対の光透過性基板10,12は、図1に示すシール材38によって所定の間隔を有して対向して貼り合わされ、固定されている。シール材38は一対の光透過性基板10,12に密着している。また、シール材38によって、一対の光透過性基板10,12の間に封止空間が区画されている。よって、シール材38は、例えば矩形状の一対の光透過性基板10,12の端部近傍に、表示装置の表示領域を囲うように配置される。また、表示領域を囲うように配置されたシール材38の一部には、後述するオイルを封入するための図示しない封入孔が形成される。
【0019】
封止空間にはオイル42が満たされている。すなわち、オイル42が封止空間に充填されている。オイル42は、例えばシリコーンオイルが好適である。シャッタ14及び駆動部40は、オイル42内に配置されている。オイル42によってシャッタ14及び駆動部40の可動による振動を抑えることができる。つまり、パネル内にオイル42を満たすことで、シャッタ14及び駆動部40の振動音を抑えることができる。
【0020】
また、パネル内にオイル42を満たすことで、誘電率が上がり、静電引力によってシャッタ動かす駆動電圧を低下させることができる。詳しくは、電圧Vが印加されている平行平板の容量Cの内部エネルギーUは、
U=1/2(CV
で表され、この式に、
V=Ed(E:平板間の電界,d:距離)
C=εS/d(S:平板の面積,ε:平板間の誘電率)
を代入して求められる平行平板間に働く力Fは、
F=U/d=1/2(εSE
となり、誘電率と平板間にかかる力は比例の関係となる。すなわち、
V=(F・d2/2εS)1/2
となり、平行平板間に働く力Fが同じである場合、誘電率が上がると印加電圧は小さくて済む。従って、第1バネ20と第2バネ32との間の誘電率(すなわちオイル42で満たされている領域の誘電率)が上がると、シャッタ14を動かすことができる所定の力Fを得るために必要な駆動電圧は小さくなる。
【0021】
上述の通り、従来のパネル内部(封止空間、オイル42で満たされている領域)をオイルで満たした表示装置においては、パネルの内部に気泡が発生するという課題が有る。気泡発生の原因は、例えば環境温度が低下したことによってオイル42が収縮した時、オイル42の体積は減少するが、封止空間がシール材38で囲われているので、封止空間の体積は、オイル42の体積減少量と比べて、さほど減少しないからだと考えられる。つまり、封止空間の体積減少に対してオイル42の体積減少量(収縮量)が大きいため、パネルの内部に気泡が発生する。
【0022】
なお、公知の液晶表示装置においても、シール材によって、一対の絶縁基板の間に封止空間が区画され、更に封止空間に液晶が充填されている。しかし、液晶表示装置においては、液晶層のギャップ(すなわち、封止空間の厚さ)は、光学特性を決定する重要な要素である。よって、液晶層のギャップは極力変動しないように液晶表示装置は製造される。例えば、液晶表示装置では、環境温度の変化で熱膨張や熱収縮する量が極めて小さいスペーサを形成して、液晶層のギャップを制御している。
【0023】
つまり、本実施形態のようにシール材の熱膨張、熱収縮で、意図的に封止空間の体積を封止空間内の充填物(本実施形態ではオイル42、液晶表示装置では液晶)の体積変化に対応して変化させることは、液晶表示装置では、光学特性が変化するので行われない。
【0024】
第1の実施形態では、シール材38の熱膨張係数αがオイル42の熱膨張係数βよりも大きくなっている。そのため、例えば環境温度が低下したときに、オイル42の体積が減少すると共に、オイル42よりも熱膨張係数が大きいシール材38の収縮により、封止空間の体積もオイル42の体積減少量と同等に減少するので、パネルの内部に気泡が発生することを防止することができる。なお、パネル形状の安定性を考慮すると、シール材38の熱膨張係数αはオイル42の熱膨張係数βの1.2倍以下の範囲であることが望ましい。
【0025】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、シール材38の熱膨張係数αとオイル42の熱膨張係数βとが等しくなっている。この場合も、第1の実施形態と同様に、例えば環境温度が低下したときに、オイル42の体積が減少すると共に、オイル42よりも熱膨張係数が大きいシール材38の収縮により、封止空間の体積もオイル42の体積減少量と同等に減少するので、パネルの内部に気泡が発生することを防止することができる。
【0026】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、シール材38の熱膨張係数αとオイル42の熱膨張係数βとは、
0.8β≦α≦1.2β
の関係を有する。本発明の発明者は、シール材38の熱膨張係数αとオイル42の熱膨張係数βの差を、上述の関係を満たす範囲で小さくすれば、表示装置の特性に支障が生じないレベルで、気泡の発生を十分に防止できることを見出した。例えば、シリコーンオイルの熱膨張係数は、1340ppm/K程度であり、オイル42としてシリコーンオイルを使用する場合、シール材38として熱膨張係数が1072ppm/K以上1608ppm/K以下の材料を使用する。
【0027】
第3の実施形態では、上述の通り、シール材38の熱膨張係数αとオイル42の熱膨張係数βの差が小さくなっている。そのため、環境温度が低下したときに、オイル42の収縮に対応してシール材38が収縮し、シール材38の収縮に対応して封止空間が収縮するので、封止空間とオイル42の体積差が小さくなり、パネルの内部に気泡が発生することを防止することができる。
【0028】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 光透過性基板、12 光透過性基板、14 シャッタ、16 開口部、18 バックライト、20 第1バネ、22 第1アンカー部、24 第1部、26 第2部、28 第3部、30 第2アンカー部、32 第2バネ、34 遮光膜、36 開口部、38 シール材、40 駆動部、42 オイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を有して対向配置された一対の絶縁基板と、
前記一対の絶縁基板を貼り合わせるシール材と、
前記一対の絶縁基板のうちの一方の基板に形成されたシャッタと、
前記一対の絶縁基板と前記シール材とで区画された封止空間と、
前記封止空間に充填されたオイルとを有する表示装置で有って、
前記シャッタは前記封止空間に配置され、
前記シール材の熱膨張係数は、前記オイルの熱膨張係数よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記シール材の熱膨張係数は、前記オイルの熱膨張係数の1.2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
間隔を有して対向配置された一対の絶縁基板と、
前記一対の絶縁基板を貼り合わせるシール材と、
前記一対の絶縁基板のうちの一方の基板に形成されたシャッタと、
前記一対の絶縁基板と前記シール材とで区画された封止空間と、
前記封止空間に充填されたオイルとを有する表示装置で有って、
前記シャッタは前記封止空間に配置され、
前記シール材の熱膨張係数と前記オイルの熱膨張係数とは等しいことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
間隔を有して対向配置された一対の絶縁基板と、
前記一対の絶縁基板を貼り合わせるシール材と、
前記一対の絶縁基板のうちの一方の基板に形成されたシャッタと、
前記一対の絶縁基板と前記シール材とで区画された封止空間と、
前記封止空間に充填されたオイルとを有する表示装置で有って、
前記シャッタは前記封止空間に配置され、
前記シール材の熱膨張係数をα、前記オイルの熱膨張係数をβとしたとき、
0.8β≦α≦1.2β
の関係を有することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記オイルはシリコーンオイルであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記シャッタは、可動であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記一方の基板には、第1のバネと第2のバネと第1のアンカー部と第2のアンカー部とが形成され、
前記第1のアンカー部には前記第1のバネが接続され、前記第2のアンカー部には前記第2のバネが接続され、
前記シャッタは、前記第1のバネと接続されると共に、前記第1のバネを介して前記第1のアンカー部と接続され、
前記シャッタは、前記第1のバネと前記第2のバネとの電位差による静電引力によって駆動されることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記シャッタの主面は、前記第1のバネと前記第1のアンカー部とによって支えられ、前記一方の基板の主面と離間して配置されていることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記一対の絶縁基板のうち、前記一方の基板とは異なる他方の基板には、遮光膜が形成され、
前記遮光膜には複数の第1の開口部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記一対の絶縁基板に対向してバックライトが配置され、
前記一対の絶縁基板は、前記封止空間の少なくとも一部と対向する表示領域を有し、
前記シャッタの主面には、第2の開口部が形成され、
前記バックライトから前記一対の絶縁基板に入射した光は、前記第1の開口部と前記第2の開口部とを通過して、前記表示領域から出射されることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−252161(P2012−252161A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124623(P2011−124623)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】