説明

表示装置

【課題】エージング時間を短縮しつつ、スループットを向上できる表示装置の提供
【解決手段】表示装置1は、有機EL素子40と、有機EL素子40に電力を供給する電源部10と、有機EL素子40と電源部10との間の電力供給路に設けられ、輝度信号を受け電流を有機EL素子40に流す画素回路30と、画素回路30に輝度信号を出力すると共に、有機EL素子40をエージングするエージングモード、および有機EL素子40を用いた映像表示モードのいずれかで選択的に動作する制御部20とを備える。電源部10が出力する電源電圧は、エージングモードおよび映像表示モードにおいて同一であり、制御部20は、エージングモードでの有機EL素子40の発光輝度が、映像表示モードでの最大発光輝度よりも大きくなるように、エージングモードでの輝度信号に示される発光素子の発光輝度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)素子等の発光素子を用いた表示装置であって、発光素子を発光させてその輝度変化を安定化させる処理であるエージングの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、順方向に電圧を印加すると発光する発光素子を用いた表示装置が開発されている。そして、発光素子として有機EL素子を用いた、有機EL表示装置が広く活用されている。発光開始直後の時点から累積発光時間の増加に伴い、発光素子の最大輝度は低減する。さらに、当該最大輝度は、発光素子の発光開始直後の時点から、暫くの累積発光期間では激しく低減し、その後の累積発光期間では緩やかに低減するという傾向がある。そのため、発光素子の寿命をその最大輝度が出荷直後の最大輝度から半減した時点と定めた場合、何も対策を採らなければ、表示装置の出荷後短期間で、発光素子の最大輝度が半減してしまい、発光素子の寿命となるおそれがある。
【0003】
これに対し、一般的な表示装置では、その出荷前にエージングが行われている。エージングとは、発光素子を一定時間発光させて、その最大輝度を意図的に低減させ、輝度変化を安定化させる処理である。出荷前の表示装置にエージングを行うと、発光素子の最大輝度が激しく低減する期間が出荷直後の時点で終了しているので、出荷後の全期間で発光素子の最大輝度は緩やかに低減する。これにより、表示装置の出荷後短期間で、発光素子の最大輝度が半減することを抑制できる。
【0004】
ところで、表示装置の製造効率を向上させるために、エージングにかかる時間を短縮したいという要請がある。これに対し、発光素子をエージングするエージングモード、および発光素子を用いて映像を表示する映像表示モードを切り替え、各モードで異なる態様で発光素子を発光させることにより、エージング時間の短縮を図る技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、外部のエージング装置から発光素子に電圧を印加して、1フレームの全期間で発光素子を発光させる技術が開示されている。特許文献1に開示された有機EL表示装置は、図5に示す通りである。有機EL表示装置901は、リセットトランジスタ932と駆動トランジスタ934と点灯トランジスタ935と第1トランジスタ936とキャパシタ938と電源線939と発光素子940とを有する画素部930を、複数備えている。
【0005】
エージングモードにおいて、第1トランジスタ936は、第2トランジスタ952を有する外部端子部950を介して、外部のエージング装置に接続される。また、エージングモードにおいて、第1トランジスタ936は、外部のエージング装置の操作により、電源線939と発光素子940とを接続する機能を有する。
ところで、映像表示モードにおいて、1フレームは書き込み期間とその後の発光期間とを有し、1フレーム内で書き込み期間および発光期間が切り替わる。書き込み期間では、全画素においてデータ電圧がキャパシタ938に保持される。発光期間では、全画素において点灯トランジスタ935をオン状態にする電圧が印加されて、発光素子940に電流が流れ発光素子940が発光して映像が表示される。一方、エージングモードでは1フレームの全期間を発光期間とする。エージングモードでは、電源線939と発光素子940とが第1トランジスタ936を介して接続され、発光素子940に電流が流れ発光素子940が発光してエージングが行われる。このように、エージングモードでは、映像表示モードでの書き込み期間のように、データ電圧をキャパシタ938に保持する必要が無いため、エージングモードでの発光期間は、映像表示モードでの発光期間よりも長くなる。そのため、この構成によるエージングモードでは、エージングモードで映像表示モードと同じ駆動を行う場合よりも、エージング時間を短縮できる。
【0006】
また、特許文献2には、映像表示モードにおいて有機EL表示パネル内から発光素子に連続電圧を印加し、同文献における図11に示すようにエージングモードにおいて外部のエージング装置から発光素子にパルス電圧を印加する技術が開示されている。同文献には、発光素子にパルス電圧を印加する方が、連続電圧を印加するよりも、発光素子の最大輝度が激しく低減する傾向があるので、エージング時間を短縮できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−135685号公報
【特許文献2】特開2006−195030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の表示装置のように、外部のエージング装置を用いて出荷前の表示装置にエージングを行う場合、製造工程において、エージング装置がすべて使用中であるとエージング装置が空くまで待ち時間が生じる。また、エージングは、発光素子を一定時間発光させる処理であり時間がかかる。そのため、外部のエージング装置を用いてエージングを行う場合、単位時間当たり何台の表示装置を製造できるかというスループットが低下し、製造効率が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、エージング時間を短縮しつつ、スループットを向上できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る表示装置は、発光素子と、前記発光素子に電力を供給する電源部と、前記発光素子と前記電源部との間の電力供給路に設けられ、輝度信号を受けてそれに応じた電流を前記発光素子に流す画素回路と、前記画素回路に前記輝度信号を出力すると共に、前記発光素子をエージングするエージングモード、および前記発光素子を用いて映像を表示する映像表示モードのいずれかで選択的に動作する制御部とを備え、前記電源部が出力する電源電圧は、前記エージングモードおよび前記映像表示モードにおいて同一であり、前記制御部は、前記エージングモードでの前記発光素子の発光輝度が、前記映像表示モードでの最大発光輝度よりも大きくなるように、前記エージングモードでの前記輝度信号に示される前記発光素子の発光輝度を設定することを特徴とする。
【0011】
また、前記表示装置は、前記制御部から前記画素回路への前記輝度信号を伝送する信号伝送路に設けられ、デジタル信号をアナログ信号へと変換する変換器をさらに備え、前記制御部は、前記エージングモードで扱うデジタル信号のビット数が、前記映像表示モードで扱うデジタル信号のビット数よりも大きくなるよう、前記変換器に対し各モードで扱うデジタル信号のビット数を切り替えさせてもよい。
【0012】
また、前記表示装置は、操作者の操作に基づく操作信号により、前記エージングモードおよび前記映像表示モードのいずれかを判定し、この判定に基づき、前記変換器に対し各モードで扱うデジタル信号のビット数を切り替えさせてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有機EL表示装置においては、エージングモードおよび映像表示モードにおいて、制御部が発光素子の発光輝度を制御しており、外部のエージング装置は用いていない。さらに、電源部が出力する電源電圧は、エージングモードおよび映像表示モードにおいて同一であるので、エージングモードにおいて外部のエージング装置から電源電圧を与える必要が無い。そのため、本発明の有機EL表示装置の製造工程において、外部のエージング装置が空くのを待つ時間が発生しない。したがって、本発明の有機EL表示装置では、エージング時間を短縮しつつ、スループットを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す模式ブロック図
【図2】図1に示した有機EL表示装置の一画素分の回路図
【図3】図1に示した有機EL表示装置の動作を説明する図
【図4】図1に示した有機EL表示装置における、エージングモードおよび映像表示モードの動作のフローチャートを示す図
【図5】従来例に係る有機EL表示装置の一画素分の回路図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係る表示装置は、発光素子と、前記発光素子に電力を供給する電源部と、前記発光素子と前記電源部との間の電力供給路に設けられ、輝度信号を受けてそれに応じた電流を前記発光素子に流す画素回路と、前記画素回路に前記輝度信号を出力すると共に、前記発光素子をエージングするエージングモード、および前記発光素子を用いて映像を表示する映像表示モードのいずれかで選択的に動作する制御部とを備え、前記電源部が出力する電源電圧は、前記エージングモードおよび前記映像表示モードにおいて同一であり、前記制御部は、前記エージングモードでの前記発光素子の発光輝度が、前記映像表示モードでの最大発光輝度よりも大きくなるように、前記エージングモードでの前記輝度信号に示される前記発光素子の発光輝度を設定することを特徴とする。
【0016】
この構成を採れば、エージングモードにおける発光素子の発光輝度を大きくでき、発光素子の最大輝度が激しく低減できるため、エージング時間をさらに短縮することができる。また、本発明の有機EL表示装置において、制御部は、エージングモードでの発光素子の発光輝度が、映像表示モードでの最大発光輝度よりも大きくなるよう制御する。これにより、エージングモードにおける発光素子の発光輝度が映像表示モードの範囲内である場合よりも、発光素子の最大輝度が激しく低減し、エージング時間を低減できる。また、エージングモードおよび映像表示モードにおいて、制御部が発光素子の発光輝度を制御しており、外部のエージング装置は用いていない。さらに、電源部が出力する電源電圧は、エージングモードおよび映像表示モードにおいて同一であるので、エージングモードにおいて外部のエージング装置から電源電圧を与える必要が無い。そのため、本発明の有機EL表示装置の製造工程において、外部のエージング装置が空くのを待つ時間が発生しない。したがって、本発明の有機EL表示装置では、エージング時間を短縮しつつ、スループットを向上できる。
【0017】
また、前記表示装置は、前記制御部から前記画素回路への前記輝度信号を伝送する信号伝送路に設けられ、デジタル信号をアナログ信号へと変換する変換器をさらに備え、前記制御部は、前記エージングモードで扱うデジタル信号のビット数が、前記映像表示モードで扱うデジタル信号のビット数よりも大きくなるよう、前記変換器に対し各モードで扱うデジタル信号のビット数を切り替えさせてもよい。
【0018】
また、前記表示装置は、操作者の操作に基づく操作信号により、前記エージングモードおよび前記映像表示モードのいずれかを判定し、この判定に基づき、前記変換器に対し各モードで扱うデジタル信号のビット数を切り替えさせてもよい。
1.有機EL表示装置1の全体構成
本発明の実施の形態に係る、発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置1の構成について図1を用い説明する。
【0019】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル5と、回路に電力を供給する電源部10と、回路を制御する制御部20と、駆動回路部22とから構成されている。有機EL表示パネル5は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、画素が、例えば、マトリクス状に配列されている。各画素は、画素回路と発光素子とから構成されている。駆動回路部22は、4つの駆動回路22a,22b,22c,22dから構成されている。
【0020】
なお、本実施の形態に係る有機EL表示装置1において、有機EL表示パネル5に対する駆動回路部22の配置は、これに限らない。
図2は、図1に示した有機EL表示装置1の一画素分の回路図である。図2に示すように、有機EL表示装置1は、電源部10と、制御部20と、駆動回路部22と、画素回路30と、有機EL素子40とを備える。図1および図2に示す駆動回路部22は、選択信号生成回路24とデータ信号生成回路26とDAC28(Digital to Analog Converter)とからなる。画素回路30は、選択線31と、データ線32と、電源線33と、スイッチングトランジスタ34と、駆動トランジスタ35と、保持容量36とからなる。スイッチングトランジスタ34および駆動トランジスタ35は、例えば薄膜トランジスタ素子である。
【0021】
電源部10は、電源線33を介して有機EL素子40に接続され、有機EL素子40に駆動のための電力を供給する。具体的には、電源部10は、有機EL素子40をエージングするエージングモードおよび有機EL素子40を用いて映像を表示する映像表示モードにおいて、同一の電源電圧VDDを電源線33に出力する。
制御部20は、エージングモードおよび映像表示モードのいずれかで選択的に動作する。具体的には、制御部20は、操作者の操作に基づく操作信号の入力により両モードのどちらで動作するのかを判定する。各モードの判定に基づき、制御部20は、選択信号生成回路24に、各モードに応じた選択信号を出力し、データ信号生成回路26に、各モードに応じたデジタル輝度信号を出力し、且つ、DAC28に、各モードに応じた切り替え信号を出力する。より詳しく述べると、選択信号生成回路24はシフトレジスタであり、制御部20は1フレームごとにスタートパルスを選択信号生成回路24に一回出力する。これにより、シフトレジスタに順次スタートパルスがシフトし、有機EL素子40を発光させる行を選択することとなる。また、データ信号生成回路26に出力するデジタル輝度信号に関し、制御部20は、有機EL素子40の発光階調を制御するためのデジタル輝度信号を、データ信号生成回路26に出力する。デジタル輝度信号としては、例えば、輝度Y、色差CbおよびCrで表すコンポーネント信号を用いればよい。出力されるデジタルコンポーネント信号のビット数は、エージングモードにおいて10bitであり、映像表示モードにおいて8bitである。また、制御部20は、10bitあるいは8bitのいずれのデジタルコンポーネント信号を扱うかを示す切り替え信号を、DAC28に出力する。
【0022】
選択信号生成回路24は、制御部20が出力した選択信号に基づき、発光させる有機EL素子40の行に、選択線31を介して、スイッチングトランジスタ34をオン状態にする電圧を、スイッチングトランジスタ34のゲート電極に印加する。一方、選択信号生成回路24は、発光させない有機EL素子40の行に、選択線31を介して、スイッチングトランジスタ34をオフ状態にする電圧をスイッチングトランジスタ34のゲート電極に印加する。
【0023】
データ信号生成回路26は、輝度Y、色差CbおよびCrで表すデジタル輝度信号を、R、G、Bで表すデジタル輝度信号へ変換する。さらに、データ信号生成回路26は、R、G、Bデジタル輝度信号とデジタル電圧信号との交換マップを用いて、R、G、Bデジタル輝度信号をR、G、Bデジタル電圧信号へと変換しDAC28に出力する。
DAC28は、有機EL表示装置1にある画素列の個数分あり、制御部20から画素回路30へとデジタル輝度信号を伝送する信号伝送路に設けられている。また、DAC28は、データ信号生成回路26から出力されたデジタル電圧信号をアナログデータ電圧に変換し、当該アナログデータ電圧を、データ線32を介して、スイッチングトランジスタ34のソース電極に印加する。
【0024】
さらに、DAC28において、制御部20からの切り替え信号により、エージングモードで扱うデジタル電圧信号のビット数が映像表示モードで扱うデジタル電圧信号のビット数よりも大きくなるよう、各モードで扱うデジタル電圧信号のビット数が切り替わる。このビット数の切り替えは、映像表示モードにおいて、DAC28に設定された扱うデジタル電圧信号のビット数と映像表示モードに必要なビット数との差分だけ上位ビットをマスクし、エージングモードにおいて、当該マスクを行わないことで実現する。例えば、DAC28を、扱うデジタル電圧信号のビット数を10bitとして設計する。このとき、エージングモードでは扱うデジタル電圧信号のビット数を10bitとし、映像表示モードでは上位2bitをマスクして、扱うデジタル信号のビット数を8bitとする。具体的には、DAC28は、データ信号生成回路26と接続されたレジスタ部、レジスタ部の各レジスタからパラレル入力を受け付け、且つデジタル電圧信号をアナログ電圧信号に変換する変換部、およびデジタル電圧信号の上位2ビットをマスクするマスク部を備える。変換部として、例えば、ラダー抵抗型、抵抗ストリング型、パルス幅変調型、およびデルタシグマ型等のDACを用いることができる。
【0025】
以下、DAC28の一例として、レジスタ部がシフトレジスタであり、レジスタ部にデジタル電圧信号がシリアルで入力される場合を説明する。レジスタ部の上位2bitと変換器との間には、マスク部として、AND回路を各ビットに対応して備えればよい。この場合、各AND回路の片方の入力端子には、レジスタに格納されたデジタル電圧信号が入力され、もう一方の入力端子には、制御部20から出力された切り替え信号が入力される。ここで、切り替え信号のビット数は1bitであり、エージングモードでは1に設定され、映像表示モードでは0に設定される。
【0026】
エージングモードでは、データ信号生成回路26から出力された10bitのデジタル電圧信号が、レジスタ部に格納される。次に、10bitのデジタル電圧信号が、レジスタ部から変換部に出力される。レジスタ部の上位2bitから出力されAND回路を通過した後のビット値は、レジスタ部の上位2bitから出力されAND回路を通過する前のビット値と等しい。これは、AND回路に入力されている切り替え信号のビット値が1であり、AND回路に入力されるビット値が0であっても1であっても、AND回路を通過する前と通過した後とでは、ビット値が変化しないためである。したがって、レジスタ部の10bitがそのまま変換部に出力される。その後、変換部で10bitのデジタル電圧信号がアナログ電圧に変換され、当該アナログデータ電圧がデータ線へ出力される。
【0027】
映像表示モードでは、データ信号生成回路26から出力された8bitのデジタル電圧信号がレジスタ部に格納される。次に、上位2bitが0である10bitのデジタル電圧信号が、レジスタ部から変換部に出力される。これは、レジスタ部の上位2bitからAND回路に入力されている切り替え信号のビット値が0であり、AND回路に入力されるビット値が0であっても1であっても、AND回路を通過した後では、ビット値が0となるためである。したがって、映像表示モードにおいて、変換器に入力される10bitのデジタル電圧信号の上位2bitは常に0となる。その後、変換部でデジタル電圧信号がアナログデータ電圧に変換され、当該アナログデータ電圧がデータ線へ出力される。
【0028】
一方、選択信号生成回路24が、スイッチングトランジスタ34のゲート電極に、スイッチングトランジスタ34がオン状態になる電圧を印加すると、駆動トランジスタ35のゲート電極にアナログデータ電圧が印加される。これにより、アナログデータ電圧に応じた大きさのドレイン電流が駆動トランジスタ35に流れ、これが有機EL素子40に流れ込み、有機EL素子40が発光する。
【0029】
2.有機EL表示装置の動作
図3は、図1に示した有機EL表示装置1の動作を説明する図である。横軸は駆動トランジスタ35のゲート電極に印加されるアナログデータ電圧Vdataの大きさを示し、縦軸はアナログデータ電圧Vdataが印加された時の有機EL素子40の発光輝度Lを示す。Vmaxは映像表示モードでの最大輝度での発光に必要な最大の電圧であり、VEはエージングに必要な電圧である。
【0030】
図3に示すように、有機EL素子40に印加される電圧Vdataが大きいほど、有機EL素子40の発光輝度Lが上昇する傾向がある。本発明の有機EL表示装置1では、エージングに必要な電圧VEを、映像表示に必要な電圧と同様に、制御部20から印加している。VEをVmaxよりも大きく設定することで、エージング時の有機EL素子40の発光輝度LEが、Lmaxよりも大きくなり、エージング時間を短縮できる。
【0031】
このように、エージングモードにおいて、有機EL素子40にエージング用の高電圧VEを印加する。これにより、エージングモードにおいて、映像表示モードにおける最大輝度よりも高輝度で、発光素子を発光させ、エージング時間を短縮させている。そのため、有機EL表示装置1では、電源部10や画素回路30の回路の設計に、映像表示モードで駆動する時以上の余裕を持たせている。例えば、電源部10は、映像の表示に必要な最大の電源電圧よりも大きい電源電圧に耐えられるよう設定されている。また、スイッチングトランジスタ34および駆動トランジスタ35はエージング用の高電圧VEに対する耐圧特性で設計する必要がある。なお、VEはVmaxの1.5倍〜2倍であり、LEはLmaxの2倍〜3倍であり、エージング時間は2時間〜3時間となる。
【0032】
図4は、図1に示した有機EL表示装置1における、エージングモードおよび映像表示モードの動作のフローチャートを示す図である。
まず、制御部20は、エージングを行うか否かを判定する(ステップS01)。具体的には、操作者がエージングを行うと判断した場合、有機EL表示装置1の外部から、操作者により操作信号が制御部20に入力される。このように、制御部20は、エージングを行うべきという操作信号が入力された場合はエージングを行い、エージングを行うべきという操作信号が入力されていない場合にはエージングを行なわない。
【0033】
エージングを行うのであれば(ステップS01においてYes)、制御部20は、DAC28の扱う信号のビット数を、8bitから10bitへと切り替える(ステップS02)。具体的には、DAC28に備えられたAND回路に、切り替え信号1を出力する。
次に、エージングモードの10bitの映像信号を用いて表示を行う(ステップS03)具体的には、制御部20は、選択信号生成回路24を介して一行目に対応する選択線31に選択電圧を出力する。また、制御部20は、DAC28からエージングでのアナログデータ電圧VEが出力されるような10bitのデジタルコンポーネント信号をデータ信号生成回路26に出力する。次に、データ信号生成回路26は、この10bitのデジタルコンポーネント信号を、10bitのR、G、Bデジタル輝度信号へと変換し、さらに10bitのデジタル電圧信号へと変換する。DAC28は10bitのデジタル電圧信号を取得し、アナログデータ電圧VEへと変換する。アナログデータ電圧VEは、データ線32およびスイッチングトランジスタ34を介して、駆動トランジスタ35のゲート電極に印加される。すると、アナログデータ電圧VEに応じた電流が、駆動トランジスタ35から有機EL素子40に流れ、有機EL素子40が発光する。この一行ごとの発光動作を有機EL表示パネル5の二行目から最終行まで繰り返すことで、1フレームの表示が完了する。
【0034】
1フレームの表示が完了すると、制御部20は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS04)。所定時間が経過していないと判定すると(ステップS04においてNo)、ステップS03の処理に戻る。所定時間が経過したと判定すると(ステップS04においてYes)、ステップS05の処理に進む。これにより、所定時間、有機EL素子40を高輝度で発光させてエージングを行うことができる。なお、エージング完了の判定基準となる所定時間は、発光輝度の累積発光時間と最大輝度との関係から、目標とするエージング直後の発光素子の最大輝度を用いて予め設定される。
【0035】
エージングが完了すると、制御部20は、DAC28の扱う信号のビット数を、10bitから8bitへと切り替える(ステップS05)。具体的には、DAC28に備えられたAND回路に、切り替え信号0を出力する。
エージングを行わないのであれば(ステップS01においてNo)、通常の輝度信号を用いて、映像の表示を行う(ステップS06)。具体的には、制御部20は、DAC28から映像表示モードでのアナログデータ電圧Vmaxが出力されるような8bitのデジタルコンポーネント信号をデータ信号生成回路26に出力する。データ信号生成回路26は、8bitのデジタルコンポーネント信号を8bitのR、G、Bデジタル輝度信号にそれぞれ変換し、8bitのR、G、Bデジタル輝度信号へと変換し、さらに8bitのデジタル電圧信号へと変換する。DAC28は8bitのデジタル電圧信号を取得し、アナログデータ電圧Vmaxへと変換する。その後、DAC28が、データ線32を通じてスイッチングトランジスタ34へとアナログデータ電圧Vmaxを出力すると、アナログデータ電圧Vmaxは、データ線32およびスイッチングトランジスタ34を介して、駆動トランジスタ35のゲート電極に印加される。すると、アナログデータ電圧Vmaxに応じた電流が、有機EL素子40に電流が流れ、有機EL素子40が発光する。これを二行目から最終行まで繰り返すことで、1フレームの表示が完了する。
【0036】
3.効果
この構成では、エージングモードにおいて、通常の映像表示モードでの最大輝度よりも大きい発光輝度で、発光素子を発光させるので、通常の映像表示モードでの発光輝度で発光させる場合よりも、エージング時間を短縮できる。また、エージングモードであっても、外部のエージング装置を用いずにエージングを行うことができるので、スループットが低下することを抑制できる。したがって、この構成では、エージング時間を短縮しつつ、スループットを向上できる。
【0037】
ところで、外部のエージング装置を用い、且つ、出荷前の複数の有機EL表示装置に同時にエージングを行うには、エージング装置を当該台数分稼働する必要がある。しかしながら、工場で複数のエージング装置を稼働させると、工場設備が複雑化する。また、外部のエージング装置を用いると、外部から発光素子に電圧を印加するための接続端子より静電気が内部に侵入し、回路を破壊してしまうおそれもある。本発明の構成では、外部のエージング装置を用いずにエージングを行うことができるので、工場設備の複雑化および回路の短絡も抑制できる。
【0038】
さらに、この構成では、エージングを行うか否かを判定してから、制御部20が、エージングモードおよび映像表示モードに対応して、DAC28で扱うデジタル電圧信号のビット数の切り替えを行う。そのため、映像表示モードにおいて、上位2bitに冷蔵庫などの他の家電製品からのノイズデータが格納されても、上位2bitがマスクされ0となる。これにより、映像表示モードにおいて、有機EL素子40が、エージングモードにおける発光輝度と同等に、激しく発光することを抑制できる。
【0039】
[変形例]
以上の通り、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限られない。以下に、上記実施の形態の変形例について説明する。
1.出荷後のエージング
上記実施の形態では、有機EL表示装置の出荷前のエージングについて述べた。しかしながら、これに限らず、出荷後のエージングについても本発明を採用できる。出荷後のエージングにおいても、エージングモードおよび映像表示モードのいずれかで選択的に動作すると、エージングにかかる手間を低減できる。具体的には、出荷後の有機EL表示装置にトラブルが発生した場合でも、エージングに外部のエージング装置を用いないので、工場に差し戻すことなくオンサイトでエージングを行うことができる。なお、出荷後にエージングを行う場合は、例えば、有機EL表示装置において、各発光素子の最大輝度にばらつきが生じた場合である。
【0040】
2.エージング完了の判定
上記実施の形態では、図4のステップS04に示すように、エージング開始から所定時間が経過したことにより、エージング完了を判定している。しかしながら、これに限らず、センサで発光素子の発光輝度を直接検出して、この輝度検出値が所定の輝度を上回っているか否かによって、エージング完了を判定してもよい。
【0041】
3.DACの切り替え
上記実施の形態では、DACが扱うデジタル信号のビット数の切り替えを、制御部がDACに切り替え信号を送ることで制御している。しかしながら、これに限らず、データ信号生成回路から出力されるデータに、ビット数の切り替え信号を付加すれば、制御部がDACに切り替え信号を送らなくても、ビット数の切り替えを制御できる。
【0042】
また、上記実施の形態では、DACの扱うデジタル信号のビット数を8bitと10bitとで切り替えたがこれに限らない。エージングモードにおけるアナログデータ電圧VEを映像表示モードにおける最大輝度に対応する電圧Vmaxと比べて何倍にするかにより、デジタル信号のビット数を設定すればよい。例えば、VEがVmaxの2倍以下であれば、8bitと9bitとで切り替えればよい。VEがVmaxの2倍より大きく4倍以下であれば、8bitと10bitとで切り替えればよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ディスプレイや照明などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 有機EL表示装置
5 有機EL表示パネル
10 電源部
20 制御部
22 駆動回路部
24 選択信号生成回路
26 データ信号生成回路
28 DAC
30 画素回路
40 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子に電力を供給する電源部と、
前記発光素子と前記電源部との間の電力供給路に設けられ、輝度信号を受けてそれに応じた電流を前記発光素子に流す画素回路と、
前記画素回路に前記輝度信号を出力すると共に、前記発光素子をエージングするエージングモード、および前記発光素子を用いて映像を表示する映像表示モードのいずれかで選択的に動作する制御部とを備え、
前記電源部が出力する電源電圧は、前記エージングモードおよび前記映像表示モードにおいて同一であり、
前記制御部は、前記エージングモードでの前記発光素子の発光輝度が、前記映像表示モードでの最大発光輝度よりも大きくなるように、前記エージングモードでの前記輝度信号に示される前記発光素子の発光輝度を設定する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御部から前記画素回路への前記輝度信号を伝送する信号伝送路に設けられ、デジタル信号をアナログ信号へと変換する変換器をさらに備え、
前記制御部は、前記エージングモードで扱うデジタル信号のビット数が、前記映像表示モードで扱うデジタル信号のビット数よりも大きくなるよう、前記変換器に対し各モードで扱うデジタル信号のビット数を切り替えさせる
請求項1に記載された表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、操作者の操作に基づく操作信号により、前記エージングモードおよび前記映像表示モードのいずれかを判定し、この判定に基づき、前記変換器に対し各モードで扱うデジタル信号のビット数を切り替えさせる
請求項2に記載された表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−97016(P2013−97016A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236778(P2011−236778)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】