説明

表面保護フィルム

【課題】被着体への適度な粘着性を有するとともに、被着体表面への貼着後の経時や加熱によって被着体への粘着力が昂進せず容易に剥離でき、表面粗さの大きい被着体に対しても適度な粘着性を発揮する表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】スチレン系熱可塑性エラストマー、環状オレフィン共重合体及びオレフィン系エラストマーを含む重合体の混合物から形成される粘着剤層を用いて形成することが表面保護フィルムとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂板、金属板、化粧合板、偏光板などの被着体表面に仮着されて、板表面の塵の付着や傷つきを防止するために用いられる表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂板、金属板、化粧合板、偏光板などの加工時や運搬時に、板表面に汚れが付着したり、傷がついたりするのを防止するために、上記板表面に表面保護フィルムを仮着することが行なわれている。
【0003】
このような表面保護フィルムとしては、熱可塑性樹脂からなる基材層の一面に粘着剤層を積層一体化したものが用いられる。そして使用の際には該粘着剤層により板表面に仮着され、不要になった際は剥離除去されるため、被着体表面に貼着するための適度な粘着性を有しているとともに、剥離する際には容易に剥離することが要求される。
【0004】
このような要求を満たすものとして、特開2009−262423号公報にはオレフィン系エラストマーおよび/またはスチレン系エラストマーの組成からなる粘着剤を用いた表面保護フィルムが開示されている。
【0005】
しかしながら、被着体表面へ貼着後に時間が経過したり熱が加えられたりすると、被着体に対する粘着力が著しく昂進するといった問題点が残っている。また、表面粗さの大きい被着体に対しては適度な粘着性を発揮せず被着体表面に貼着しないといった問題点も残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−262423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、被着体への適度な粘着性を有するとともに、被着体表面への貼着後に時間が経過したり熱が加えられても被着体への粘着力が昂進せず容易に剥離でき、表面粗さの大きい被着体に対しても適度な粘着性を発揮する表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するために、スチレン系熱可塑性エラストマー、環状オレフィン共重合体及びオレフィン系エラストマーを含む重合体の混合物から形成される粘着剤層を用いて形成することが表面保護フィルムとして有用であるという知見を得た。
本発明は斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0009】
本発明の表面保護フィルムは、熱可塑性樹脂からなる基材層と粘着層の少なくとも2層を有する表面保護フィルムであって、該粘着層がスチレン系熱可塑性エラストマーを70〜95重量%、環状オレフィン共重合体を5〜30重量%の割合で含むことを特徴とし、さらに前記粘着層の樹脂組成物100重量部に対してオレフィン系エラストマーが0〜45重量部含有されていることを特徴とする。
【0010】
基材層がポリプロピレン、ポリエチレンまたはこれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする。
【0011】
前記表面保護フィルムの基材層に対する粘着層の反対側に表面層が形成されており、その表面層がエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアルキルエステル共重合体、もしくは酢酸ビニル含有割合が6〜20重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む樹脂から形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明で用いる粘着層は、スチレン系熱可塑性エラストマー及び環状オレフィン共重合体を含む樹脂組成物により形成される。
【0013】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル炭化水素をハードセグメントとして有し、共役ジエンをソフトセグメントとして有するものである。芳香族ビニル炭化水素としてはスチレン、о−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどが挙げられ、共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン・ブタジエン共重合体(SB樹脂)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS樹脂)、およびこれらの水素添加物などが挙げられる。この中で、スチレン/イソブチレンブロック共重合体は、スチレンとイソブチレンとのブロック共重合体で、スチレン含量が3〜40重量%、好ましくは5〜35重量%である。ブロック共重合体の形態としては、具体的にはポリスチレンユニットとポチイソブチレンユニットが結合したスチレン/イソブチレンジブロック共重合体、2つのポリスチレンユニットとポリイソブチレンユニットが交互に結合したスチレン/イソブチレントリブロック共重合体を挙げることができる。
【0015】
スチレン/イソブチレンブロック共重合体の230℃で測定したMFR230は0.01〜70g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分、より好ましくは0.1〜40g/10分の範囲である。
また、スチレン/イソブチレンブロック共重合体の硬度としては、ショア硬度Aとして20〜50、好ましくは25〜45、より好ましくは25〜40の範囲である。
【0016】
本発明で粘着層として用いる環状オレフィン共重合体は、具体的には環状オレフィン(例えばノルボルネン)の開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、エチレンまたはプロピレンなどのα−オレフィンと環状オレフィン(例えばノルボルネン及びその誘導体やテトラシクロドデセン及びその誘導体など)とのランダム共重合樹脂、該環状オレフィンの開環重合体とα−オレフィンとの共重合体を水素添加した樹脂、これら樹脂に不飽和カルボン酸及びその誘導体の少量をグラフトして変性した樹脂が挙げられる。
【0017】
前記環状オレフィン共重合体がα−オレフィンとの共重合ポリマーにあっては、該α−オレフィンの共重合比によってTgと共にフィルム成形性が変わる。ここではTgでもって好ましいものを選択するのが良く、それは約60〜120℃、好ましくは65〜110℃である。この温度範囲を外れると、スチレン系熱可塑性エラストマーと混合させて押出成形を行う際に、押出最適温度を合わせることが困難となり、フィルム成形不良が生じるといった問題が発生する。これらの環状オレフィン共重合体の具体例として、Polyplastics株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「アペル」、日本ゼオン社製の「ZEONOR」などを例示することができる。
【0018】
粘着層を形成するスチレン系熱可塑性エラストマー及び環状オレフィン共重合体の含有割合は、スチレン系熱可塑性エラストマー/環状オレフィン共重合体=70〜95重量%/5〜30重量%であることが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合は、70重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーが70重量%以下では表面保護フィルムに必要な粘着強度が得られず、95重量%以上では粘着層が粘着昂進を生じるといった問題が発生する。
また、環状オレフィン共重合体の割合は、5重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。環状オレフィン共重合体の含有割合が5重量%以下であれば粘着層は粘着昂進を生じ、30重量%以上であれば表面保護フィルムに必要な粘着強度が得られない。
【0019】
本発明の粘着層にはさらにオレフィン系エラストマーを含むことができる。オレフィン系エラストマーとしては、オレフィン系共重合体、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムとの混合物、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムの部分架橋体との混合物、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムの完全架橋体との混合物等を挙げることができる。
【0020】
好ましいオレフィン系エラストマーとしてはオレフィン系共重合体が挙げられ、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンから構成される。含有割合としては、エチレン/α−オレフィン=5〜80重量%/20〜95重量%、好ましくはエチレン/α−オレフィン=5〜60重量%/40〜95重量%、より好ましくはエチレン/α−オレフィン=5〜40重量%:60〜95重量%である。炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられるが、好ましくはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンである。前記α−オレフィンは、単独または2種以上を用いてもよい。このα−オレフィンを含んだオレフィン系エラストマーの具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体などが挙げられ、好ましくはエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体である。この共重合体の具体例として、三井化学株式会社製の「ノティオ」、住友化学株式会社製の「ノーブレン」などを例示することができる。
【0021】
粘着層を形成するオレフィン系エラストマーは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーと環状オレフィン共重合体の相溶性向上のために用いられている。オレフィン系エラストマーの含有割合は、前記スチレン系熱可塑性エラストマー及び環状オレフィン共重合体の樹脂組成物100重量部に対して0〜45重量部であることが好ましい。この範囲であれば表面保護フィルムに必要な粘着強度が得られるが、この範囲から外れると表面保護フィルムに必要な粘着強度が得られない。
【0022】
粘着層には、前記の重合体の他に、粘着層の粘着性、及び被着体への汚染性を損わない程度で、必要に応じて公知の軟化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、充填剤等の添加剤を加えることもできる。
【0023】
基材層は、表面保護フィルムに剛性(腰)を付与するために設けられる層である。
基材層を形成する樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が挙げられ、これにフィルムの剛性をコントロールするためにポリエチレン系樹脂を混ぜても良い。
ポリプロピレン系樹脂としては、フィルムの剛性を増加させ、良好なハンドリング性を付与することができるという観点から、プロピレン単独重合体(ホモPP)が好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックインデックス(以下、II値と称す。)が、95%以上が好ましく、98%以上がさらに好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂においては、より高い剛性が得ることができるという観点から、核剤(結晶化核剤)を添加することが好ましい。核剤としては、前記粘着層で挙げられたものを用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に準じて測定でき、温度が230℃、荷重が21.18Nの測定条件で、0.5〜20g/10分であることが好ましく、1.0〜15g/10分であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRが前記範囲にあることで、押出成形に適しているため好ましい。
【0024】
ポリエチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレンやエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
これらの中で、メタロセン系触媒を用いて重合した密度0.88〜0.92g/cmの分岐状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。または、密度が0.850〜0.920g/cm、好ましくは0.855〜0.910g/cmであり、MFR190が0.1〜30g/10分のエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体を用いるのが好ましい。
前記分岐状低密度ポリエチレンとしては、例えば日本ポリエチレン(株)の(カーネル)、日本ポリエチレン(株)の(ハーモレックス)として入手することが可能である。
また、前記エチレンとα−オレフィンとの共重合体は、例えば三井化学(株)の(タフマー)として入手することが可能である。
更に、樹脂の改質を目的として、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等も添加することができる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の混合物を用いる場合の混合割合としては、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂=100〜51重量%/0〜49重量%であることが好ましい。
【0026】
さらに表面層は表面保護フィルムを製品ロールから巻き出すときの剥離力(巻き戻し力)を小さくするために設けることもでき、その表面層はエチレン系樹脂から形成される。
エチレン系樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアルキルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、好ましくはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアルキルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。
【0027】
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアルキルエステル共重合体である場合、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、表面保護フィルムを製品ロールから巻き出す際に起こりうるジッピング現象が生じないという観点から、1重量%以上であり、4重量%以上が好ましい。また、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの繰り返し単位の割合は、樹脂の融点が低下せず、フィルムの製膜時にロールに巻き付かないため、製膜不良が発生しない点で優れるという観点から、14重量%以下であり、12重量%以下が好ましく、11重量%以下がより好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタクリル酸を表す。
具体的にエチレン−アクリル酸共重合体またはそのアルキルエステル共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸プロピル共重合体、エチレン−アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−アクリル酸−n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸シクロヘキシル共重合体を挙げることができる。この中で特に好ましいものとして、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体を挙げることができる。これら共重合体のMFRは、0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、溶融張力は2.0〜25g、好ましくは3〜20gである。
エチレン−メタクリル酸共重合体またはそのアルキルエステル共重合体としては、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸プロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸−n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体を挙げることができる。この中で特に好ましいものとして、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体を挙げることができる。これら共重合体のMFRは、0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、溶融張力は2.0〜25g、好ましくは3〜20gである。
【0028】
樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体である場合、酢酸ビニル含有割合は、ロールからの剥離時にジッピングが発生しないという点から、5重量%以上が好ましい。また、酢酸ビニル含有割合は、樹脂の融点が低下せず、フィルムの製膜時にロールに巻き付かないため、製膜不良が発生しない点で優れるという観点から、20重量%以下が好ましい。
ここで、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有割合とは、樹脂のNMRを測定し、NMRのチャートから算出できるエチレンを特定できるピークと、酢酸ビニルを特定できるピークとの比率から算出される各繰り返し単位のモル比率から、その分子量を乗じることにより求められる。
表面層を形成する樹脂のメルトフローレート(MFR)は、190℃、21.18N荷重の条件で、0.5〜30g/10分であることが好ましい。この範囲のMFRに設定することによって、表面層を成形する際に適している点で好ましい。
前記樹脂以外にも、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、軟化剤等を本願発明の効果を損なわない程度に配合し、表面層を形成することが可能である。
【0029】
本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着層の少なくとも2層で積層された構造を有するものである。表面保護フィルムは、前記基材層を形成させるため樹脂組成物、粘着層を形成させるための樹脂組成物をそれぞれドライブレンドし、各組成物をこの順で押出機に供給し、バレル温度160〜250℃程度でフィルム状に押出し、20〜40℃程度の冷却ロ−ルに通しながら冷却して引き取ることにより基材層と粘着層の2層構成が得られる。また、前記表面層を形成させるための樹脂組成物、基材層を形成させるための樹脂組成物、及び粘着層を形成させるための樹脂組成物をそれぞれドライブレンドし、各組成物をこの順で押出機に供給し、バレル温度160〜250℃程度でフィルム状に押出し、20〜40℃程度の冷却ロ−ルに通しながら冷却して引き取ることにより表面層と基材層、及び粘着層の3層構成が得られる。
また、各層用樹脂を一旦ペレットとして取得した後、上記の様に押出成形してもよい。
本発明の表面保護フィルムは、全体の厚さが20〜80μmであることが好ましい。
表面保護フィルムの各層の厚さの比率としては、粘着層の厚さを1とすると、粘着層及び基材層の2層構成の場合は、粘着層:基材層の厚さ=1:1〜19が好ましく、表面層、基材層及び粘着層の3層構成の場合は、粘着層の厚さ:基材層の厚さ:表面層の厚さ=1:0.125〜38:0.05〜20が好ましい。
表面保護フィルムの各層の厚さは、粘着層及び基材層の2層構成の場合は、粘着層の厚さ/基材層の厚さ=4〜40μm/40〜76μmであることが好ましく、表面層、基材層及び粘着層の3層構成の場合は、表面層の厚さ/基材層の厚さ/粘着層の厚さ=2〜40μm/5〜76μm/2〜40μmであることが好ましい。
各層の厚さがこの範囲であれば、良好な粘着性と剥離性を有しつつ、優れた製膜性を示す。
【発明の効果】
【0030】
本発明の表面保護フィルムは、被着体への適度な粘着性を有するとともに、被着体表面への貼着後の経時や加熱によって被着体への粘着力が昂進せず容易に剥離でき、表面粗さの大きい被着体に対しても適度な粘着性を発揮するという効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
実施例及び比較例において製造した表面層、基材層及び粘着層の各層において使用した樹脂を以下の表1〜3に示す。融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して測定し、また、MFRは、JIS K7121に準拠して測定した。なお、MFRはエチレン系共重合体は190℃・21.18N荷重、ポリプロピレン系樹脂は230℃・21.18N荷重、環状オレフィン共重合体は260℃・21.18N荷重の条件下にて測定した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
実施例1
表面層はエチレン−メタクリル酸共重合体を100重量%、基材層はポリプロピレン1を100重量%、粘着層はスチレン系熱可塑性エラストマー1:環状オレフィン共重合体1=95重量%:5重量%の割合となるように、ドライブレンドにより、表面層用樹脂、基材層用樹脂及び粘着層用樹脂をそれぞれ調製した。調製した表面層用樹脂、基材層用樹脂及び粘着層用樹脂の各樹脂を、同順に、バレル温度160〜260℃に調整した各押出機に供給した。そして、260℃に加熱したTダイスから押出し、設定温度20℃の引き取りロールにて冷却固化して、無延伸の状態で巻き取り、表面保護フィルムを得た。このとき得られた表面保護フィルムの厚みは、表面層5μm、基材層35μm、粘着層10μmで総厚み50μmであった。
【0036】
実施例2〜9、比較例1〜2
表4に示す構成にて実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。
【0037】
実施例10
表4に示す構成にて、表面層を設けていないこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。
【0038】
実施例11
表面層はエチレン−メタクリル酸共重合体を100重量%、基材層はポリプロピレン1を100重量%、粘着層はスチレン系熱可塑性エラストマー1:環状オレフィン共重合体1=91重量%:9重量%の割合となるように調製した混合物100重量部に対し、オレフィン系エラストマーを45重量部混合させ、ドライブレンドにより、表面層用樹脂、基材層用樹脂及び粘着層用樹脂をそれぞれ調製した。調製した表面層用樹脂、基材層用樹脂及び粘着層用樹脂の各樹脂を、同順に、バレル温度160〜260℃に調整した各押出機に供給した。そして、260℃に加熱したTダイスから押出し、設定温度20℃の引き取りロールにて冷却固化して、無延伸の状態で巻き取り、表面保護フィルムを得た。このとき得られた表面保護フィルムの厚みは、表面層5μm、基材層35μm、粘着層10μmで総厚み50μmであった。
【0039】
実施例12〜16、比較例3
表5に示す構成にて実施例11と同様にして表面保護フィルムを得た。
【0040】
得られた表面保護フィルムについて、以下の測定方法により粘着強度、粘着昂進を評価した。評価結果を表4、5に示す。
【0041】
・粘着強度
[測定用サンプルの作製]
サンプルロールから幅50mm、長さ150mmにサンプルを切り出し、23℃の雰囲気下で被着体と粘着層が重なるように貼り合わせた。その後、圧着ローラーにて圧力:3.0MPa、速度:5.0m/minの条件で圧着して測定用サンプルを得た。
そして、同様にして計20枚の測定用サンプルを作製した。
ここで、被着体としては素材がPET系のシートでRaが0.2μm、厚みが188μmのものを用いた。
【0042】
[粘着強度測定]
前記の方法で得られた測定用サンプルを下記の条件(1)(2)にて各10枚ずつ貼り合わせた後、剥離試験機(新東科学社製のPeeling TESTER HEIDON−17)を用いて、剥離速度:1.0m/minの設定条件で、粘着強度を測定した。
(1)23℃の雰囲気下で1h静置
(2)70℃の雰囲気下で72h静置
このとき、測定チャートにおける極大点10点の平均値を粘着強度とした。同様の測定を10回行ない、この被着体−粘着層間の10回平均の粘着強度をFとしたとき、
○:0.2N/25mm<F
×:0≦F≦0.2N/25mm
とした。
【0043】
[粘着昂進評価]
前記粘着強度測定によって得られたデータを用い、23℃で1h後の粘着強度と、70℃で72h後の粘着強度の差をAとしたとき、
○:0≦A≦0.1N/25mm
×:0.1N/25mm<A
とした。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材層と粘着層の少なくとも2層を有する表面保護フィルムであって、該粘着層がスチレン系熱可塑性エラストマー及び環状オレフィン共重合体を含む混合物から形成され、前記スチレン系熱可塑性エラストマーと環状オレフィン共重合体が70〜95重量%:5〜30重量%の割合で含有されている表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着層はさらにオレフィン系エラストマーを含み、その含有割合が前記スチレン系熱可塑性エラストマー及び環状オレフィン共重合体の樹脂組成物100重量部に対して0〜45重量部含有されていることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記基材層が、ポリオレフィン系樹脂から形成される請求項1〜2いずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはこれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記表面保護フィルムの基材層に対する粘着層の反対側に表面層が形成されており、その表面層がポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレン系樹脂が、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合が1〜14重量%であるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアルキルエステル共重合体、もしくは酢酸ビニル含有割合が5〜20重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む樹脂から形成されることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2012−107162(P2012−107162A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258929(P2010−258929)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】