説明

表面修飾されたケイ酸塩蛍光物質

本発明は、ケイ酸塩蛍光物質の群から選択される少なくとも1種の発光性化合物を含む発光性粒子をベースとする表面修飾された蛍光物質粒子であって、<20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種のコーティングおよび>20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種の第2のコーティングが発光性粒子に適用された、前記表面修飾された蛍光物質粒子、および製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、<20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種のコーティングおよび>20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種の第2のコーティングが発光性粒子に適用される、ケイ酸塩蛍光体の発光性粒子をベースとする表面修飾された蛍光体粒子、ならびに、製造方法および白色LEDにおける変換蛍光体としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDチップの作動中に生成される熱は、LED全体の加熱をもたらす。しかしながら、熱はある程度まで消散することができるが、蛍光体の加温は必然的に生じる。一般的に、蛍光体は、より低い温度と比較して、より高い作動温度において、効率が悪い。この性質は、「温度消光」として当業者に知られ、蛍光体における格子振動が温度の上昇に伴って促され、増大した程度まで無放射過程が生じる結果となり、すなわち、蛍光体の蛍光性が減衰または消光されるという事実から生じる。温度消光の程度は、蛍光体の化学組成に依存する:LuAG:Ceなどの蛍光体は、温度消光を事実上示さず、一方オルトケイ酸塩は、150℃の運転温度における蛍光性が、室温において約50%の蛍光性に減少するように、温度消光を有する。特にパワーLEDにおける、オルトケイ酸塩の使用のために、温度消光を減らすことができる場合には有利である。
【0003】
JP-4304290 Aは、温度消光を減らし、化学的安定性を向上させるために、ダイヤモンドのコーティングを施した、蛍光体を開示する。
【0004】
WO 91/10715は、シリカコーティングおよびアルミナコーティングを施した、ケイ酸亜鉛またはハロリン酸カルシウムなどの蛍光体を記載する。
【0005】
WO 99/27033は、ダイヤモンド様炭素コーティングを施した、硫化銅、硫化亜鉛または硫化カドミウムなどの蛍光体粒子を記載する。これらの蛍光体粒子は、透明な無機または有機コーティングをさらに有してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04―304290号公報
【特許文献2】国際公開第91/10715号
【特許文献3】国際公開第99/27033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、温度消光の上記問題が減少するように、ケイ酸塩蛍光体をコーティングすることにあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、温度消光の影響を、タマネギの皮モデル(図2参照)にしたがって、ケイ酸塩蛍光体をコーティングすることにより減少することができることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、バインダーに組み込まれ、LECチップ上に置かれたオルトケイ酸塩蛍光体粒子(1)を示す。
【図2】図2は、<20W/mKの熱伝導率を有する透明材料を含む層コーティング(3)および>20W/mKの熱伝導率を有する透明材料を含むコーティング(4)でコーティングされたオルトケイ酸塩蛍光体粒子(1)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、したがって、ケイ酸塩蛍光体の群から選択される少なくとも1種の発光性化合物を含む発光性粒子をベースとする表面修飾された蛍光体粒子に関し、ここで、<20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種のコーティングおよび>20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種の第2のコーティングが発光性粒子に適用される。
【0011】
ケイ酸塩蛍光体に、まず、光学的に透明であり、低い熱伝導率を有する材料の第1のコーティングを施す。そして、第2のコーティングを、同様に光学的に透明であり、高い熱伝導率を有する材料から形成する。
【0012】
LEDチップから発散される熱が蛍光体に与えられる場合、第2のコーティングは蛍光体の周りに熱をそらすことができる。蛍光体と第2のコーティングとの間に配置された、第1のコーティングは、蛍光体に入り得る熱を防ぐ。結果として、蛍光体はより熱くならず、より明るく発光する。
【0013】
<20W/mKの熱伝導率を有する第1のコーティングの厚みは、3〜500nmであり;第2のコーティングの厚みは、3〜600nmである。
【0014】
さらに好ましい態様は、2種のコーティングが蛍光体の周りを多配列で形成されることにある:蛍光体−第1のコーティング−第2のコーティング−第1のコーティング、第2のコーティング−第1のコーティング、第2のコーティング−第1のコーティングなどである。
【0015】
発光性粒子は、好ましくは、
BaSrZnEuSiO (I) および/または
BaSrCaEuSiO (II)
式中、u+v+w+x=2
の群から選択される少なくとも1種の発光性化合物を含む。
【0016】
第1のコーティングは、好ましくは、Si、Zr、Tiの酸化物および/またはこれらの混合物の、ナノ粒子および/または層を含む。特に多数の有効な反応性ヒドロキシル基を有し、有機コーティングのさらなる付着を平易にするため、シリコン酸化物コーティングが特に好ましい。
【0017】
第1のコーティングは好ましくは、アモルファス構造を有し、当業者に既知であるように(「ポリスチレンフォーム効果」)、さらに熱伝導率を減少させる、多孔質であってもよい。
用語「多孔質」は、材料の表面上の平均孔穴(average pore opening)を意味する。本発明にしたがって、コーティングした蛍光体表面は、好ましくはメソ多孔性またはマクロ多孔性であり、ここで、「メソ多孔性」は2〜50nmの孔穴を表し、「マクロ多孔性」は>50nmの孔サイズを表す。
このコーティングの熱伝導率は、好ましくは0.1〜10W/mKである。
【0018】
第1および第2のコーティングは、好ましくは実質的に透明であり、すなわち、これらは、いずれの場合にも、変換蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルの両方に関して、90%〜100%の透明性を確保しなければならない。一方、励起および発光波長に相当しない全ての波長に関し、本発明のコーティングの透明性もまた、90%未満〜100%であってもよい。
【0019】
そして、コーティングした蛍光体粒子には>20W/mKの熱伝導率を有し、好ましくはダイヤモンド構造を有する炭素または酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび/または酸化ベリリウムを含む、さらなるコーティングが施される。このコーティングもまた、湿式化学法によって、または蒸着プロセス(CVDまたはPVDプロセスによって)を利用して行う。この第2のコーティングもまた多孔質であってもよいが、好ましくは、連続的な層からなり、またはナノ粒子からなってもよい。後者は、3〜100nmの直径を有する。このコーティングの熱伝導率は、好ましくは25〜2500W/mKである。
ダイヤモンド構造を有する炭素層は、2200W/mKまでの、特に高い熱伝導率を有するという利点がある。
【0020】
本発明の蛍光体粒子の粒径は、0.5μm〜40μm、特に2μm〜20μmである。
本発明のコーティングは、必ずしも均質ではないが、代わりに、粒子の表面において、島の形状であるか、または液滴形状であってもよい。
このようにコーティングまたは表面修飾された蛍光体粒子は、本発明に従って、表面特性をバインダーのそれと適合させるために、機能化させることもできる。これがバインダーにおける蛍光体のより均質化した混合を促進し、応用特性を改善することが、当業者に知られている。
【0021】
本発明は、さらに、以下の工程により特徴付けられる、表面修飾された蛍光体粒子の製造方法に関する:
a. 少なくとも2種の出発材料および少なくとも1種のドーパントの混合および温度T>150℃での熱処理による蛍光体粒子の製造、
b. 湿式化学または蒸着プロセスにおける、<20W/mKの熱伝導率を有するコーティングでの蛍光体粒子のコーティング、
c. >20W/mKの熱伝導率を有する、少なくとも1種のさらなるコーティングの適用。
【0022】
蛍光体粒子のコーティングは、特に好ましくは、金属、遷移金属または半金属の、酸化物または水酸化物の水分散液における沈殿による湿式化学法によって行われる。このために、発光性粒子またはコーティングしていない蛍光体を、リアクタ内の水にけん濁させ、攪拌しながら、少なくとも1種の金属塩および少なくとも1つの沈殿剤の同時計量添加によって、金属酸化物または水酸化物でコーティングする。
【0023】
金属塩の代わりとして、その後加水分解によって金属酸化物または水酸化物を形成する、有機金属化合物、例えば金属アルコキシドに計量添加する事も可能である。発光性粒子をコーティングする他の可能な方法は、例えば、エタノールまたはメタノールなどの有機溶媒におけるゾル−ゲルプロセスによるコーティングである。このプロセスは、特に、水感受性材料および酸またはアルカリ感受性物質に対して好適である。
【0024】
本発明に従い、さらなる方法は、混床式リアクタを利用したコーティング、比較的小さいあらかじめ形成された粒子の、コーティングされる材料の表面への吸着、およびガス相からの、例えば物理気相蒸着(=PVD)または化学気相蒸着(=CVD)によるコーティングである。
【0025】
本発明によれば、発光性粒子またはケイ酸塩蛍光体粒子の製造用の出発材料は、上述のとおり、基礎材料(例えば、バリウム、ストロンチウムまたはシリコンの塩溶液)およびユウロピウム、セリウム、マンガンおよび/または亜鉛、好ましくはユウロピウムなどの少なくとも1種のドーパントからなる。好適な出発材料は、無機および/または有機液体に、溶解および/またはけん濁する、金属、半金属、遷移金属および/または希土類の硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、カルボン酸塩、アルコラート、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、有機金属化合物、水酸化物および/または酸化物などの、無機および/または有機物質である。必須の理論混合比における該当要素を含む、混合した硝酸塩溶液および酸化物溶液の使用が好ましい。
【0026】
例えば、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、高分散二酸化ケイ素、塩化アンモニウムおよび硝酸ユウロピウム六水和物溶液の混合物からなる発光性粒子の湿式化学製造のために、以下の既知の方法が好ましい:
・ NHHCO溶液を使用した共沈(例えば、Jander, Blasius Lehrbuch der analyt. u. praep. anorg. Chem. 2002参照)
・ クエン酸およびエチレングリコールの溶液を使用したPecchiniプロセス(例えば、Annual Review of Materials Research Vol. 36: 2006, 281-331参照)
・ 尿素を使用した燃焼法
・ 水性または有機塩溶液(出発材料)の噴霧乾燥
・ 水性または有機塩溶液(出発材料)の噴霧熱分解
【0027】
本発明の特に好ましい、上述の共沈の場合、NHHCO溶液を、例えば、対応する蛍光体出発材料の塩化物または硝酸塩溶液に添加し、蛍光体前駆体の形成をもたらす。
Pecchiniプロセスにおいて、クエン酸およびエチレングリコールからなる沈殿試薬を、例えば、上述の、対応する蛍光体出発材料の硝酸塩溶液に室温において添加し、続いて混合物を加熱する。粘度の上昇が蛍光体前駆体の形成をもたらす。
既知の燃焼プロセスにおいて、例えば、上述の、対応する蛍光体出発材料の硝酸塩溶液を水に溶解し、そして溶液を環流し、尿素を添加し、蛍光体前駆体のゆっくりとした形成をもたらす。
【0028】
噴霧熱分解はエアゾルプロセスの1つであり、溶液、けん濁液または分散体を、様々な方法で加熱された反応スペース(リアクタ)中へ噴霧すること、および固体粒子の形成および蒸着によって特徴付けられる。<200℃の高温ガス温度での噴霧乾燥と対比して、噴霧熱分解は、高温プロセスとして、溶媒の蒸発に加えて、使用される出発材料(例えば塩類)の熱分解、物質(例えば酸化物または混合酸化物)の再生成を伴う。
上述の5つのプロセスの変法は、WO 2007/144060(Merck)に詳細に記載されており、これを、参照によりこの全範囲において本出願の文脈中に包含する。
【0029】
本発明の表面修飾された蛍光体粒子は、以下の様々な湿式化学法によって製造することができる:
1) 構成成分を均一に沈殿させ、次に溶媒を分離し、続いて単一または多段階の熱後処理を施し、ここで段階の1つを還元雰囲気中で行うことができる、
2) 例えば噴霧プロセスを利用して、混合物を微細に分割し、溶媒を除去し、続いて単一または多段階の熱後処理を施し、ここで段階の1つを還元雰囲気中で行うことができる、あるいは、
3) 例えば噴霧プロセスを利用して、混合物を微細に分割し、熱分解を伴って溶媒を除去し、続いて単一または多段階の熱後処理を施し、ここで段階の1つを還元雰囲気中で行うことができる、
4) 続いて、方法1〜3を利用して調製した蛍光体を、湿式化学法によりコーティングする。
【0030】
蛍光体の湿式化学調製は、好ましくは、沈殿および/またはゾル−ゲルプロセスによって行う。
上述の熱後処理において、焼成を少なくとも部分的に還元条件下で(例えば一酸化炭素、フォーミングガス、純粋な水素、水素と不活性ガスとの混合物、または少なくとも真空もしくは酸素欠乏雰囲気を使用して)行うことが好ましい。
【0031】
一般的に、本発明のコーティングしていない蛍光体を固体拡散方法によって調製することも可能であるが、これは上述のような欠点を引き起こす。
上述のプロセスを利用して、蛍光体粒子のあらゆる所望の外形、例えば球状粒子、薄片および構造化された材料およびセラミックスなどを製造することができる。
【0032】
加えて、本発明の蛍光体は、約250nm〜560nm、好ましくは380nm〜約500nmに及ぶ、広範囲で励起することもできる。これらの蛍光体は、したがってUVまたは青色発光一次光源、例えばLEDまたは従来の放電ランプ(例えばHgをベースとする)による励起に好適である。
【0033】
本発明はさらに、その発光極大が、250nm〜530nm、好ましくは380nm〜約500nmの範囲に及ぶ、少なくとも1つの一次光源を有する照明ユニットに関し、ここで、一次放射は、本発明の表面修飾された蛍光体によって、部分的または完全により長い波長の放射に変換される。この照明ユニットは好ましくは、白色光または特定の色点(カラーオンデマンド原理)を有する光を発する。
【0034】
本発明の照明ユニットの好ましい態様において、第2のコーティング材料の粒子が、蛍光体を囲むバインダー(シリコーンまたはエポキシ樹脂)へ、1〜20重量%の濃度で導入される場合、二重コーティングによって、熱転換の効果をさらに増大することができる。これらの粒子は、熱伝導経路としての機能を果たし、熱を、蛍光体の第2のコーティングからLEDの表面へ伝導する(図2参照)。粒子のサイズは30nm〜1.5μmである。
【0035】
本発明の照明ユニットの好ましい態様において、光源は、発光性の窒化インジウムアルミニウムガリウム、特に式InGaAlN、式中0≦i、0≦j、0≦k、およびi+j+k=1、で表されるものである。
このタイプの光源の可能な形態は、当業者に知られている。これらはさまざまな構造を有する発光LEDチップであり得る。
【0036】
本発明の照明ユニットのさらに好ましい態様において、光源は、ZnO、TCO(透明伝導性酸化物)、ZnSeもしくはSiCをベースとする発光性の配置、または有機発光層(OLED)をベースとする配置である。
本発明の照明ユニットのさらに好ましい態様において、光源は、エレクトロルミネッセンスおよび/またはフォトルミネッセンスを示す源である。光源はさらに、プラズマまたは放電源であってもよい。
【0037】
本発明の蛍光体は、樹脂(例えばエポキシまたはシリコーン樹脂)に分散するか、一次光源に直接配置するか、または用途に依存して、これから遠隔に配置することもできる(後者の配置は、「遠隔蛍光体技術」も含む)。遠隔蛍光体技術の利点は、当業者に知られており、例えば、以下の刊行物に公開されている:Japanese Journ. of Appl. Phys. Vol. 44, No. 21 (2005), L649-L651。
【0038】
さらなる態様において、コーティングした蛍光体および一次光源の間の照明ユニットの光学的結合を、光伝導性配置を使用して達成することが好ましい。
これは、一次光源が中心的位置に設置され、光伝導デバイス、例えば、光伝導ファイバーなどを使用して、蛍光体に光学的に結合されることを可能とする。このように、照明の希望に適合し、光スクリーンを形成するように配置されてもよい1種または異なる種類の蛍光体および一次光源に結合される光伝導体のみからなるランプを達成することができる。このように、強い一次光源を電気設備に有益な位置に配置すること、および光伝導体に結合した蛍光体を含むランプを、さらなる電気的配線を伴わずに、代わりに光伝導体を敷設することにより、所望の位置に設置することが可能である。
【0039】
本発明はさらに、発光ダイオードからの青色または近UV発光の部分的または完全な変換のための本発明の蛍光体の使用に関する。
【0040】
本発明はさらに、エレクトロルミネッセンス材料、エレクトロルミネッセンスフィルム(発光フィルムまたは光フィルムとして知られる)などにおいて用いることに関し、ここで、例えば、硫化亜鉛またはMn2+、CuまたはAgがドープされた硫化亜鉛がエミッタとして使用され、黄緑色領域において発光する。エレクトロルミネッセンスフィルムの適用分野は、例えば、広告、液晶ディスプレイスクリーン(LCディスプレイ)および薄膜トランジスタ(TFT)ディスプレイのディスプレイ背面照明、自照式(self-illuminating)車両ナンバープレート、床面の図形(破砕耐性かつ滑り止め積層体と組み合わせて)、例えば自動車、列車、船舶および航空機、または家庭用電化製品、庭設備、測定機器、またはスポーツおよびレジャー設備におけるディスプレイおよび/または制御素子においてである。
【0041】
以下の例は、本発明を例示することを意図する。しかし、これらは、決して限定的であると考慮するべきではない。組成物において使用することができるすべての化合物または成分は、既知であり、商業的に入手できるか、または既知の方法により合成することができる。例中に示す温度は、常に℃で示す。さらに、明細書において、および例においても、組成物中の成分の添加量は、常に合計して100%になることは、言うまでもない。与えられるパーセンテージデータは、常に所定の関連において考慮すべきである。しかし、これらは通常は常に、示される部分量または合計量の重量に関する。
【実施例】
【0042】

実施例1:SiOによる蛍光体粉末(Sr,Ba)SiO:Euのコーティング(活性ヒドロキシ基の生成)
50gの蛍光体を750mlのエタノールに25℃で分散させる。10mlのテトラメトキシシランを5分間にわたって攪拌しながら導入する。そして、70mlの濃縮アンモニア溶液を、30分間にわたって分散液に計量添加し、混合物をさらに30分間激しく攪拌する。さらなる段階において、35mlのテトラエトキシシランを60分間にわたって混合物に計量添加し、混合物をさらに3時間攪拌する。濾過により固体を分離し、濾過ケーキをエタノールで洗浄し、200℃で24時間乾燥する。
【0043】
>20W/mKの熱伝導率を有する第2層による例1からの蛍光体のコーティング
実施例2:酸化亜鉛によるコーティング
例1からの固体50gを1lの水に分散させる。アンモニア溶液を使用して混合物をpH8に調節し、温度を70℃に調節し、500mlの水に溶解した30gの硝酸亜鉛を攪拌しながら導入する。そして、混合物をさらに2時間攪拌し、濾過により固体を分離する。濾過ケーキを水で2回洗浄した後、固体を200℃で乾燥する。
そして、このようにコーティングした蛍光体は、LEDのために用いることができる。
【0044】
実施例3:酸化ベリリウムによるコーティング
例1からの固体50gを1lの水に分散させる。アンモニア溶液を使用して混合物をpH8に調節し、温度を80℃に調節し、500mlの水に溶解した20gの硝酸ベリリウムを攪拌しながら導入する。そして、混合物をさらに2時間攪拌し、濾過により固体を分離する。濾過ケーキを水で2回洗浄した後、固体を200℃で乾燥する。
そして、このようにコーティングした蛍光体は、LEDのために用いることができる。
【0045】
実施例4:CVDプロセスで行う、ダイヤモンドによるコーティング
プラズマCVDダイヤモンドによる物品のコーティングは、当業者になじみがあり、とりわけ:Okuda et al., Science and Technology of Advanced Materials 8 (2007) 624-634に記載されている。プロセスを以下に記載する:
1からの粉末5gを、オーブン内の空気雰囲気中において、300℃で6時間加熱する。冷却した後、コランダムボート内の粉末を、石英管からなる低圧PE(プラズマ助長)CVDリアクタに移す。ダイヤモンド層を、CH/Hプラズマ(13.56MHz)から、ガス流速4.5sccm(CH)および75sccm(H)で、蒸着させる。蒸着時間は3時間である。
そして、コーティングした蛍光体は、LED中に設置することができる。
【0046】
実施例5:SiO−ZnO−SiO−ZnOによる多重コーティング
例2aからの材料に、SiOおよびZnOのさらなる2重層を施す。このために、例2からの材料50gを750mlのエタノールに25℃で分散させる。15mlのテトラメトキシシランを5分間にわたって攪拌しながら導入する。そして80mlの濃縮アンモニア溶液を30分間にわたって分散液に計量添加し、混合物をさらに30分間激しく攪拌する。さらなる段階において、53mlのテトラエトキシシランを60分間にわたって計量添加し、混合物をさらに3時間攪拌する。濾過により固体を分離し、濾過ケーキをエタノールで洗浄し、200℃で24時間乾燥する。50gのこの材料を1lの水に分散させる。アンモニア溶液を使用して混合物をpH8に調節し、温度を70℃に調節し、500mlの水に溶解した45gの硝酸亜鉛を攪拌しながら導入する。そして、混合物をさらに2時間攪拌し、濾過により固体を分離する。濾過ケーキを水で2回洗浄した後、固体を200℃で乾燥する。
そして、このようにコーティングした蛍光体は、LEDに用いることができる。
【0047】
実施例6:SiO−BeO−SiO−BeOによる多重コーティング
例2bからの材料にSiOおよびBeOのさらなる2重層を施す。このために、例2からの材料50gを750mlのエタノールに25℃で分散させる。15mlのテトラメトキシシランを5分間にわたって攪拌しながら導入する。80mlの濃縮アンモニア溶液を30分間にわたって分散液に計量添加し、混合物をさらに30分間激しく攪拌する。さらなる段階において、53mlのテトラエトキシシランを60分間に渡って混合物に計量添加し、混合物をさらに3時間攪拌する。濾過により固体を分離し、濾過ケーキをエタノールで洗浄し、200℃で24時間乾燥する。この材料50gを1lの水に分散させる。アンモニア溶液を使用して混合物をpH8に調節し、温度を80℃に調節し、500mlの水に溶解した30gの硝酸ベリリウムを攪拌しながら導入する。混合物をそして、さらに2時間攪拌し、濾過により固体を分離する。濾過ケーキを水で2回洗浄した後、固体を200℃で乾燥する。
そして、このようにコーティングした蛍光体は、LEDに用いることができる。
【0048】
実施例7:特にシリコーンバインダーAのための、シランによる表面機能化
例2aもしくは2bまたは例4aもしくは4bからの材料50gを、750mlの水に激しく攪拌しながらけん濁させる。5重量%のHSOを使用してけん濁液のpHをpH=6.5に調整し、けん濁液を75℃まで加熱する。続けて、Silquest A-1110[ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン]およびSilquest A-1524[ガンマ−ウレアプロピルトリメトキシシラン]が1:2である混合物3gを、穏やかに攪拌しながら、75分間にわたってけん濁液に計量添加する。添加が完了したところで、表面へのシラン類の結合を完了させるために、混合物を続けてさらに15分間攪拌する。5重量%のHSOにより、pHを6.5に修正する。
けん濁液を続けて濾過し、塩がなくなるまで、固体を脱イオン水で洗浄する。乾燥を140℃で20時間行う。このようにコーティングした蛍光体粉末は、LED中に直接設置することができる。
【0049】
実施例8:特にシリコーンバインダーBのための、ビニルシランによる表面機能化
例2aもしくは2bまたは例4aもしくは4bからの材料50gを、750mlの水に激しく攪拌しながらけん濁させる。5重量%のHSOを使用してけん濁液のpHをpH=6.8に調節し、けん濁液を75℃まで加熱する。続けて、Silquest A-174[ガンマ−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン]およびSilquest A-151[ビニルトリエトキシシラン]が1:2である混合物3.0gを、穏やかに攪拌しながら、90分間にわたって計量添加する。添加が完了したところで、表面へのシラン類の結合を完了させるために、混合物を続けてさらに15分間攪拌する。5重量%のHSOにより、pHを6.5に修正する。けん濁液を続けて濾過し、塩がなくなるまで、固体を脱イオン水で洗浄する。乾燥を140℃で20時間行う。このようにコーティングした蛍光体粉末は、LED中に直接設置することができる。
【0050】
図の説明
本発明を、実施例を参照しながら、以下にさらに詳細に説明する:
図1:バインダー(例えばシリコーンまたはエポキシ樹脂)(白色背景として示す)に組み込まれ、LEDチップ(図示せず)上に置かれたオルトケイ酸塩蛍光体粒子(1)を示す。LEDの作動および樹脂およびケイ酸塩蛍光体粒子(1)による、関連する熱(2)の発生の間、蛍光体は徐々に輝度を失う。
図2:熱保護スクリーンとしての役割を果たす、<20W/mKの熱伝導率を有する透明材料を含むコーティング(3)でコーティングされたオルトケイ酸塩蛍光体粒子(1)を示す。>20W/mKの熱伝導率を有する透明材料を含む、少なくとも1種の第2のコーティング(4)が、第1のコーティングを覆う。この第2のコーティングは、蛍光体の熱を伝達する。高熱伝導率の第2のコーティングの粒子(5)のうち、遊離し、そしてバインダー(樹脂)に分散されるものある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩蛍光体の群から選択される少なくとも1種の発光性化合物を含む発光性粒子をベースとする表面修飾された蛍光体粒子であって、<20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種のコーティング、および>20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種の第2のコーティングが、前記発光性粒子に適用されていることを特徴とする、前記表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項2】
発光性粒子が、
BaSrZnEuSiO (I)
および/または
BaSrCaEuSiO (II)
式中、u+v+w+x=2である、
の群から選択される少なくとも1種の発光性化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項3】
<20W/mKの熱伝導率を有するコーティングが、Si、Zr、Tiの酸化物および/またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項4】
第2のコーティングが炭素層、Al、ZnO、MgOもしくはBeO、および/またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項5】
第1のコーティングが、0.1〜10W/mKの熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項6】
第2のコーティングが、25〜2500W/mKの熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項7】
蛍光体粒子の粒径が、0.5〜40μmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項8】
<20W/mKの熱伝導率を有するコーティングおよび>20W/mKの熱伝導率を有するコーティングが、実質的に透明であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項9】
<20W/mKの熱伝導率を有するコーティングが、アモルファスおよび/または多孔質であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の表面修飾された蛍光体粒子。
【請求項10】
請求項1に記載の表面修飾された蛍光体粒子の製造方法であって、
以下の段階:
a)少なくとも2種の出発材料および少なくとも1種のドーパントを混合することおよび温度T>150℃における熱処理による蛍光体粒子の製造、
b)湿式化学または蒸着プロセスにおける、<20W/mKの熱伝導率を有するコーティングによる蛍光体粒子のコーティング、
c)>20W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種のさらなるコーティングの適用、
により特徴付けられる、前記方法。
【請求項11】
コーティングが、実質的に透明であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
使用する第1のコーティングが、Si、Zr、Tiの酸化物もしくはこれらの組み合わせのナノ粒子および/または層を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ゾル−ゲルプロセスおよび/または沈殿プロセスを利用して、湿式化学法により、有機および/または無機金属、半金属、遷移金属および/または希土類の塩から蛍光体を調製することを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の金属、遷移金属または半金属の酸化物によるコーティングを、非揮発性塩および/または有機金属化合物の水溶液または非水溶液の添加によって行うことを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第2のコーティングが、炭素層、Al、ZnO、MgOもしくはBeO、および/またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
発光極大が250nm〜530nm、好ましくは380nm〜500nmの範囲である、少なくとも1つの一次光源を有し、ここで、この放射が部分的または完全に、請求項1〜9のいずれか一項に記載の表面修飾された蛍光体粒子によってより長い波長の放射に変換される、照明ユニット。
【請求項17】
表面修飾された蛍光体粒子の第2のコーティングの材料からなる、1〜20重量%の粒子が、周囲のバインダー樹脂に分散されることを特徴とする、請求項16に記載の照明ユニット。
【請求項18】
光源が、発光性窒化インジウムアルミニウムガリウム、特に式InGaAlNで表され、式中0≦i、0≦j、0≦k、およびi+j+k=1であることを特徴とする、請求項16に記載の照明ユニット。
【請求項19】
蛍光体が、一次光源に直接および/またはこれから遠隔に配置されることを特徴とする、請求項16に記載の照明ユニット。
【請求項20】
蛍光体および一次光源の間の光学的結合が、光伝導の配置を利用して達成されることを特徴とする、請求項16に記載の照明ユニット。
【請求項21】
光源が、有機発光層をベースとする材料であることを特徴とする、請求項16に記載の照明ユニット。
【請求項22】
光源が、エレクトロルミネッセンスおよび/またはフォトルミネッセンスを示す源であることを特徴とする、請求項16に記載の照明ユニット。
【請求項23】
請求項1に記載の少なくとも1種の表面修飾された蛍光体粒子の、カラーオンデマンド概念に従って、一次放射を特定の色点へ変換するための変換蛍光体としての使用。
【請求項24】
請求項1に記載の少なくとも1種の表面修飾された蛍光体粒子の、青色または近UV発光の可視白色放射に変換するための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511059(P2012−511059A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538859(P2011−538859)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008002
【国際公開番号】WO2010/075908
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】