説明

表面処理装置及び表面処理方法

【課題】薄板化された基板を局所的に平坦化することができ、かつ装置の小型簡略化が可能な表面処理装置を提供する。
【解決手段】エッチング用の処理液を噴出させる噴出口33aと、噴出口33aから噴出した処理液を吸引する吸入口34aと、を備えたノズル3を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面の凹凸を局所的に平坦化する表面処理装置及び表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶基板(石英基板)を平坦化する表面処理方法として、研削、研磨(ポリッシング)、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)等が知られている。また、プラズマによるウェーハの研磨技術も確立されている。このような表面処理方法として、従来の製造限界の厚さよりも薄く、かつ凸レンズ形状に水晶振動子を加工するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−38607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の表面処理方法は、基板に厚みがあり機械的強度が十分な範囲においては機械研磨やCMPにより基板を平坦化することができるが、加工できる厚さに限界があるという課題がある。また、水晶素子の微細化により基板の薄板化が進んだことで、基板の平坦化がより困難になっている。
【0005】
また、ウェットエッチングを用いることで基板を薄板化することが可能であるが、基板の加工面における局所的なエッチング速度の差異からエッチングにむらが発生し、基板に局所的な凹凸が形成されるという課題がある。薄板化された基板では、エッチングにより発生した凹凸を従来の方法で局所的に平坦化することは極めて困難である。
【0006】
また、プラズマによるエッチングやイオンミリングによる基板の加工には、真空チャンバーや加工に使用するガスの処理設備が必要であるという課題がある。そのため、装置が大型化し、コストが増大してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、従来の方法では平坦化が困難なほど薄板化された基板を局所的に平坦化することができ、かつ装置の小型簡略化が可能な表面処理装置および表面処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の表面処理装置は、エッチング用の処理液を噴出させる噴出口と、前記噴出口から噴出させた前記処理液を吸引する吸入口と、を備えたノズルを有することを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、従来の表面処理方法では平坦化が困難なほど薄板化された基板であっても、基板の表面の凹凸を平坦化することが可能になる。まず、ノズルを基板上に配置し、噴出口及び吸入口が基板の表面の凹凸のうち凸部に近接するようにする。そして、噴出口から処理液を噴出すると共に吸入口から処理液を吸引する。これにより、噴出口と吸入口との間に処理液を流通させ、処理液によって基板の表面の凸部を選択的かつ局所的にエッチングすることができる。したがって、ノズルを基板に接触させることなく凸部を除去することができ、薄板化された基板を局所的に平坦化することが可能になる。
さらに処理液の温度を上昇させておくことで、短時間にエッチングすることができる。
また、真空チャンバー等の大掛かりな設備が不要になり、装置の小型簡略化を実現することができる。
【0010】
また、本発明の表面処理装置は、前記ノズルは、前記噴出口及び前記吸入口を一括して囲むように配置されシールガスを噴出させるガス噴出口を更に備えることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、処理液をシールガスによって遮断し、処理液がエッチングしたい領域の外側に流出することを防止できる。これにより、基板上のエッチングされる領域をより限定することが可能になる。
【0012】
また、本発明の表面処理装置は、前記ノズルは、前記噴出口に洗浄用の洗浄液を供給する洗浄液供給流路を更に備えることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、処理液の供給を停止した後、噴出口から洗浄液を噴出させ、基板の表面を洗浄することが可能になる。これにより、処理液の供給を停止した後に、基板の表面に残存した処理液によって基板が余分にエッチングされることを防止できる。
【0014】
また、本発明の表面処理装置は、前記ノズルの先端部には、中央部に前記噴出口が配置され、前記噴出口を囲むように前記吸入口が配置されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、中央部の噴出口から噴出された処理液は基板の表面に沿って放射状に広がるように流れ、吸入口によって吸引される。したがって、噴出口と基板の凸部の頂点とを合わせることで、凸部の頂点に近い側のエッチングを凸部の周辺部のエッチングよりも進行させることができる。したがって、基板の凸部を効率よく平坦化することができる。
【0016】
また、本発明の表面処理装置は、前記ノズルは、前記ガス噴出口に前記シールガスを供給するガス供給流路を更に備え、前記ガス供給流路の前記ガス噴出口の近傍は、前記ノズルの中心側を向くように傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、シールガスをノズルの中心側に吹付けて、シールガスの圧力によって処理液をノズルの中心側に集中させることができる。これにより、処理液によってエッチングされる領域をより限定することができる。
さらに洗浄液の供給を停止した後も引き続きシールガスを吹付けることで、処理面やノズル先端部を乾燥させることができる。これにより、基板を乾いた状態に保つことができ、またノズル先端から洗浄液が基板に垂れてシミになるなどの問題の発生も防止できる。
さらに基板の乾燥時にシールガスの温度を上昇させることで、基板を短時間に乾燥することもできる。
【0018】
また、本発明の表面処理方法は、基板の表面の凹凸を平坦化する表面処理方法であって、前記基板をエッチングするための処理液を噴出させる噴出口と前記処理液を吸引する吸入口とを備えたノズルを、前記基板の表面の凸部上に移動させるノズル配置工程と、前記噴出口から前記処理液を噴出させて前記凸部をエッチングすると共に、前記処理液を前記吸入口によって吸引するエッチング工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
このように処理することで、従来の表面処理方法では平坦化が困難なほど薄板化された基板であっても、基板の表面の凹凸を平坦化することが可能になる。すなわち、ノズル配置工程においてノズルを基板上に配置し、噴出口及び吸入口が基板の表面の凹凸のうち凸部に近接するようにする。そして、エッチング工程において噴出口から処理液を噴出すると共に吸入口から処理液を吸引する。これにより、噴出口と吸入口との間に処理液を流通させ、処理液によって基板の表面の凸部を選択的かつ局所的にエッチングすることができる。したがって、ノズルを基板に接触させることなく凸部を除去することができ、薄板化された基板を局所的に平坦化することが可能になる。
さらに処理液の温度を上昇させておくことで、短時間にエッチングすることができる。
また、真空チャンバー等の大掛かりな設備が不要になり、装置の小型簡略化を実現することができる。
【0020】
また、本発明の表面処理方法は、前記エッチング工程において、前記ノズルの前記噴出口及び前記吸入口を一括して囲むように配置されたガス噴出口からシールガスを噴出することを特徴とする。
【0021】
このように処理することで、処理液をシールガスによって遮断し、処理液がエッチングしたい領域の外側に流出することを防止できる。これにより、基板上のエッチングされる領域をより限定することが可能になる。
【0022】
また、本発明の表面処理方法は、前記エッチング工程の終了後、前記ノズルの洗浄液供給流路によって前記噴出口に洗浄液を供給する洗浄工程を更に有することを特徴とする。
【0023】
このように処理することで、エッチング工程の後、噴出口から洗浄液を噴出させ、基板の表面を洗浄することが可能になる。これにより、処理液の供給を停止した後に、基板の表面に残存した処理液によって基板が余分にエッチングされることを防止できる。
【0024】
また、本発明の表面処理方法は、前記洗浄工程の終了後、前記ノズルの前記ガス噴出口から供給されるシールガスによって前記ノズルの先端部及び前記基板の表面を乾燥させる乾燥工程を更に有することを特徴とする。
【0025】
このように処理することで、洗浄工程の後、洗浄液の供給を停止した後も引き続きシールガスを吹付けることで、処理面やノズル先端部を乾燥させることができる。これにより、基板を乾いた状態に保つことができ、またノズル先端から洗浄液が基板に垂れてシミになるなど問題の発生も防止できる。
さらに基板の乾燥時にシールガスの温度を上昇させることで、基板を短時間に乾燥することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態における表面処理装置の全体構成図である。
【図2】(a)は図1に示す表面処理装置のノズルの先端部の拡大断面図であり、(b)はノズルの先端部の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における表面処理方法の工程図である。
【図4】同、工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、部材毎に縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態の表面処理装置の全体構成を概略的に示す図である。図2(a)は図1に示す表面処理装置のノズルの先端部の拡大断面図であり、図2(b)はノズルの先端部の平面図である。
【0028】
図1に示す表面処理装置100は、載置台1上に配置された基板W等の対象物の表面の凹凸を局所的に平坦化する表面処理を行うための装置である。表面処理を行う基板Wは例えば水晶(石英)基板等である。表面処理装置100は、主に載置台1、支持フレーム2、ノズル3、処理液供給部4、洗浄液供給部5、シールガス供給部6及び廃液回収部7により構成されている。
【0029】
載置台1は基板Wを所定の位置に位置決めして保持するようになっている。また、支持フレーム2は、ノズル3を支持するためのものである。ノズル3の基部にはフランジ状のベース部3bが一体的に設けられ、ベース部3bは例えばボルト8等の締結部材によって支持フレーム2に固定されている。これにより、ノズル3が支持フレーム2に固定されている。載置台1と支持フレーム2とは、不図示の移動機構及び制御演算部によって相対的に移動可能に設けられ、ノズル3の先端部3aと基板Wとの3次元的な位置合わせが可能になっている。
【0030】
ノズル3には、処理液供給部4、洗浄液供給部5、シールガス供給部6及び廃液回収部7が、それぞれ処理液供給管4a、洗浄液供給管5a、シールガス供給管6a及び廃液回収管7aを介して接続されている。各配管にはそれぞれ制御弁4b〜7bが設けられ、これらは不図示の制御演算部によってそれぞれ開閉制御及び流量制御が可能になっている。
また処理液供給部4、洗浄液供給部5、シールガス供給部6には、それぞれヒーター、クーラー等の不図示の温度制御部が設けられ、それぞれ液温制御及びガス温度制御が可能になっている。
【0031】
処理液供給部4は、例えばフッ化水素酸溶液等、基板Wをエッチングするための処理液をノズル3に供給するようになっている。洗浄液供給部5は、例えば純水等、基板Wを洗浄するための洗浄液をノズル3に供給するようになっている。シールガス供給部6は、例えば空気や窒素等の不活性ガスをシールガスとしてノズル3に供給するようになっている。廃液回収部7は、エッチングに用いられた処理液や洗浄に用いられた洗浄液、あるいは基板Wの乾燥に用いられたシールガス等をノズル3から吸引して回収し、気液分離、廃液処理等の処理するように構成されている。
【0032】
図2(a)に示すように、ノズル3の内部には、ノズル3の中心線CLに沿って処理液供給流路31及び洗浄液供給流路32が設けられている。
処理液供給流路31、洗浄液供給流路32は、それぞれ図1に示す処理液供給管4a、洗浄液供給管5aに接続されている。また、処理液供給流路31及び洗浄液供給流路32は、ノズル3の中心線CL上に設けられた共通流路33に接続されている。
【0033】
図2(b)に示すように、ノズル3の先端部3aの中央には、略円形の噴出口33aが設けられている。共通流路33は、処理液供給流路31又は洗浄液供給流路32から供給された処理液又は洗浄液を、噴出口33aに供給するようになっている。噴出口33aは、共通流路33から供給された処理液又は洗浄液をノズル3の先端部3aから噴出させるようになっている。
【0034】
図2(a)に示すように、処理液供給流路31、洗浄液供給流路32の周囲には、これらに沿って廃液回収流路34が設けられている。廃液回収流路34は略円環円筒状に設けられ、図1に示す廃液回収管7aに接続されている。
【0035】
図2(b)に示すように、ノズル3の先端部3aには、噴出口33aから噴出させた処理液を吸引するための吸入口34aが設けられている。吸入口34aは噴出口33aの周囲に噴出口33aを囲むように略円環状に形成されている。廃液回収流路34は、吸入口34aから吸引された処理液を流通させ、廃液回収管7aに排出するようになっている。
【0036】
図2(a)に示すように、廃液回収流路34の周囲には、ガス供給流路35が設けられている。ガス供給流路35は、図1に示すベース部3b側が略円筒状に形成され、先端部3a側が先端面3cに近づくほど径が小さくなる略台形円錐状に形成されている。ガス供給流路35は、図1に示すシールガス供給管6aに接続されている。
【0037】
図2(b)に示すように、ノズル3の先端面3cには、シールガスを噴出させるガス噴出口35aが設けられている。ガス噴出口35aは、噴出口33a及び吸入口34aを一括して囲むように、これらの周囲に略円環状に形成されている。図2(a)に示すように、このガス噴出口35aの近傍において、ガス供給流路35はノズル3の中心側を向くように中心線CLに対して傾斜して設けられている。
ここで、図2(a)に示すように、ガス噴出口35aが開口されたノズル3の先端面3cには凹部3dが形成され、噴出口33a及び吸入口34aは凹部3dの底面3eに開口されている。
【0038】
次に、表面処理装置100を用いて基板Wの表面の凹凸を平坦化する表面処理方法について説明しつつ、本実施形態の表面処理装置100の作用について説明する。
【0039】
(ノズル配置工程)
図1に示す基板Wの表面の凹凸を平坦化するに当って、まず、載置台1上に基板Wを配置し、基板Wの表面の凹凸の形状及び位置を測定する。凹凸の測定は、例えばレーザ光による基板Wの表面のスキャニング等、光学的な方法によって行うことができる。
次いで、表面処理装置100の制御演算部に測定結果を入力し、基板Wの表面の凹凸のうち、平坦化が必要な凸部の各々の位置、凹部の底部から凸部の頂点までの高さ等を算出する。
【0040】
そして、制御演算部によって、基板Wの表面の各々の凸部をエッチングするためのエッチング時間を算出すると共に、各々の凸部の位置から、ノズル3を動かすルートを算出する。その後、制御演算部によってノズル3と載置台1とを相対的に移動させる。そして、図3(a)に示すように、ノズル3の先端面3cの噴出口33aが基板Wの凸部Wp1の頂点Pの上に位置するようにノズル3を移動させ、先端面3cを凸部Wp1に近接させる。そして、先端面3cと基板Wとの間に所定の間隔を保った状態で、ノズル3を基板Wの表面の凸部Wp1上に配置する。
【0041】
(エッチング工程)
次に、噴出口33aから処理液を噴出させると共に、処理液を吸入口34aによって吸引する。同時に、ガス噴出口35aからシールガスを噴出させる。
具体的には、図1に示す処理液供給管4aに設けられた制御弁4bを開き、処理液供給部4から処理液供給管4aを介してノズルの処理液供給流路31に処理液を供給する(図3(a)、矢印a1参照)。このとき、処理液供給部4に設けられた温度制御部によって、処理液の温度を基板Wのエッチングに最適な温度まで上昇させておく。また、図1に示す廃液回収管7aに設けられた制御弁7bを開き、廃液回収部7によって廃液回収管7aを介してノズル3の廃液回収流路34内を陰圧にする。さらに、図1に示すガス供給管6aに設けられた制御弁6bを開き、シールガス供給部6からガス供給管6aを介してノズル3のガス供給流路35にシールガスを供給する(図3(a)、矢印b1参照)。
【0042】
このとき、図1に示す洗浄液供給管5aの制御弁5bは閉じた状態となっている。そのため、共通流路33には処理液供給流路31から処理液のみが供給される(図3(a)、矢印a2参照)。共通流路33に供給された処理液は、先端面3cの凹部3dの底面3eに設けられた噴出口33aから噴出される。また、ガス供給流路35に供給されたシールガスは、ノズル3の先端面3cに設けられたガス噴出口35aから噴出される。
【0043】
噴出口33aから噴出した処理液は、先端面3cの凹部3dにおいて基板Wの表面に沿って放射状に広がりながら基板Wの凸部Wp1の表面に沿って流れ、吸入口34aによって吸引される(図3(a)、矢印a3参照)。吸入口34aから吸引された処理液は、ノズル3の廃液回収流路34を介して排出され(図3(a)、矢印a4参照)、図1に示す廃液回収管7aを介して廃液回収部7によって回収される。
【0044】
ガス噴出口35aから噴出したシールガスは、噴出口33aから吸入口34aへ向けて流れる処理液に吹き付けられる。そして、処理液を先端面3cの凹部3d内の領域に押し込めるように作用した後、ノズル3の先端面3cと基板Wとの隙間からノズル3の外側に排出される(図3(a)、矢印b2参照)。
【0045】
基板Wの表面の凸部Wp1は、凸部Wp1の表面を流れる処理液によってエッチングされる。すなわち、基板Wの表面の噴出口33aと吸入口34aとの間に処理液を流通させ、処理液によって基板Wの表面の凸部Wp1を選択的かつ局所的にエッチングする。制御演算部は、ノズル配置工程において算出したエッチング時間が経過するまで、凸部Wp1のエッチングを継続する。
これにより、図3(b)に示すように、凸部Wp1が除去されて基板Wの表面が局所的に平坦化される。
【0046】
(洗浄工程)
エッチング工程の終了後、洗浄液供給流路32によって噴出口33aに洗浄液を供給して基板Wの表面を洗浄する。
具体的には、図1に示す制御弁4bを閉じて処理液の供給を停止することでエッチング工程を終了させると共に、制御弁5bを開いて洗浄液供給部5により洗浄液の供給を開始する。これにより、洗浄液供給管5aを介してノズル3の洗浄液供給流路32に洗浄液が供給される(図3(c)、矢印c1参照)。ここで、図1に示す制御弁6bは開いたままにし、シールガス供給部6からガス供給管6aを介してノズル3のガス供給流路35にシールガスの供給を継続する(図3(c)、矢印b1参照)。
【0047】
このとき、図1に示す処理液供給管4aの制御弁4bは閉じた状態となっている。そのため、共通流路33には洗浄液供給流路32から洗浄液のみが供給される(図3(c)、矢印c2参照)。共通流路33に供給された洗浄液は、先端面3cの凹部3dの底面3eに設けられた噴出口33aから噴出される。また、ガス供給流路35に供給されたシールガスは、ノズル3の先端面3cに設けられたガス噴出口35aから噴出される。
【0048】
噴出口33aから噴出した洗浄液は、先端面3cの凹部3dにおいて基板Wの表面に沿って放射状に広がりながら平坦化された基板Wの表面を流れ、吸入口34aによって吸引される(図3(c)、矢印c3参照)。吸入口34aから吸引された洗浄液は、ノズル3の廃液回収流路34を介して排出され(図3(c)、矢印c4参照)、図1に示す廃液回収管7aを介して廃液回収部7によって回収される。
【0049】
ガス噴出口35aから噴出したシールガスは、噴出口33aと吸入口34aとの間を流れる洗浄液に吹き付けられ、洗浄液をノズル3の先端面3cの凹部3d内の領域に押し込めるように作用する。そして、ノズル3の先端面3cと基板Wとの隙間からノズル3の外側に排出される(図3(c)、矢印b2参照)。
平坦化された基板Wの表面は、洗浄液によって洗浄され表面に残存した処理液や反応生成等が除去される。表面処理装置100は、制御演算部によって算出された所定時間洗浄を継続した後、洗浄工程を終了する。
【0050】
(乾燥工程)
洗浄工程の終了後、ガス供給流路35によってガス噴出口35aにシールガスを供給して基板Wの表面を乾燥する。
具体的には、図1に示す制御弁5bを閉じて洗浄液の供給を停止することで洗浄工程を終了させる。ここで、図1に示す制御弁6bは開いたままにし、シールガス供給部6からガス供給管6aを介してノズル3のガス供給流路35にシールガスの供給を継続する(図4、矢印c1参照)。
【0051】
このとき、図1に示す処理液供給管4aの制御弁4b及び洗浄液供給管5aの制御弁5bは閉じた状態となっている。そのため、共通流路33には何も供給されるものはなく、ガス供給流路35に供給されたシールガスのみ、ノズル3の先端面3cに設けられたガス噴出口35aから噴出される(図4、矢印c2参照)。ここでは、シールガス供給部6に設けられた温度制御部によってシールガスの温度を上昇させておく。
【0052】
ガス噴出口35aから噴出したシールガスは、ノズル3の先端面3cおよび基板Wの表面に吹き付けられ、吸入口34aによって吸引され(図4、矢印c3参照)、ノズル3の廃液回収流路34を介して排出される(図4、矢印c4参照)と同時に、ノズル3の先端面3cと基板Wとの隙間からノズル3の外側にも排出される(図4、矢印c5参照)。
平坦化された基板Wの表面およびノズル3の先端面3cは、シールガスによって乾燥される。表面処理装置100は、制御演算部によって算出された所定時間乾燥を継続した後、乾燥工程を終了する。
【0053】
表面処理装置100は、乾燥工程の終了後、ノズル配置工程において決定したルートに沿ってノズル3を次の凸部Wp2上に移動させる。このとき、シールガスの供給を停止してもよいが、供給したままであってもよい。次の凸部Wp2の上にノズル3を配置したら、再びエッチング工程から乾燥工程までを繰り返して基板Wの平坦化処理を行う。
【0054】
本実施形態の表面処理装置100及び表面処理方法によれば、ノズル3を基板Wに接触させることなく基板の凸部Wp1,Wp2,…,Wpnを局所的に除去することができる。したがって、従来の方法では平坦化が困難なほど薄板化された基板Wであっても、基板Wの表面の凹凸を局所的に平坦化することが可能になる。また、真空チャンバー等の大掛かりな設備が不要になり、装置の小型簡略化を実現することができる。
また、エッチング工程において処理液の温度を基板Wのエッチングに最適な温度まで上昇させておくことで、基板Wのエッチング時間を短縮することができる。
【0055】
また、噴出口33aと吸入口34aを一括して囲むように設けられたガス噴出口35aからシールガスを噴出させている。これにより、処理液をシールガスによって遮断し、処理液がエッチングしたい領域の外側、すなわち基板Wの凸部Wp1,Wp2,…,Wpnの外側の領域に流出することを防止できる。したがって、基板W上のエッチングされる領域をより確実に限定することが可能になる。
また、洗浄液がノズル3の先端面3cの外側に流出することを防止できる。したがって、洗浄液を吸入口34aによって確実に回収し、再利用することが可能になる。
また、シールガスは洗浄工程終了後にそのまま噴出を継続させている。これによりノズル3の先端面3c及び基板Wの濡れた領域を確実に乾燥することができる。したがって、基板Wを乾いた状態に保つことができ、またノズル3先端から洗浄液が基板Wの表面に垂れてシミになるなどの問題が発生することも防止できる。また、乾燥工程においてシールガスの温度を上昇させておくことで、基板Wの乾燥時間を短縮することができる。
【0056】
また、ノズル3の先端部3aには、中央部に噴出口33aが配置され、噴出口33aを囲むように吸入口34aが配置されている。そのため、中央部の噴出口33aから噴出された処理液は基板Wの表面に沿って放射状に広がるように流れ、吸入口34aによって吸引される。したがって、噴出口33aと基板Wの凸部Wp1の頂点Pとを合わせることで、凸部Wp1の頂点Pに近い側のエッチングを凸部Wp1の周辺部のエッチングよりも進行させることができる。したがって、凸部Wp1を効率よく平坦化することができる。
【0057】
また、ノズル3の噴出口33aに洗浄用の洗浄液を供給する洗浄液供給流路32を備えている。したがって、処理液の供給を停止した後、噴出口33aから洗浄液を噴出させ、基板Wの表面を洗浄することが可能になる。これにより、処理液の供給を停止した後に、基板Wの表面に残存した処理液によって基板Wが余分にエッチングされることを防止できる。
【0058】
また、ノズル3のガス噴出口35aの近傍のガス供給流路35が略台形円錐状に設けられ、ノズル3の中心側を向くように、ノズル3の中心線に対して傾斜して設けられている。そのため、ノズル3の中心側にシールガスを吹付けて、処理液をシールガスの圧力によってノズル3の中心側に集中させ、処理液によってエッチングされる領域をより限定することができる。
また、乾燥工程においてシールガスによってノズル3の先端面3c及び基板Wの表面を乾燥させることができる。
【0059】
また、ノズル3の先端面3cに凹部3dが設けられ、凹部3dの底面3eに噴出口33aと吸入口34aが開口されている。したがって、ノズル3の凹部3dに処理液を満たし、基板Wの凸部Wp1をノズル3の凹部3dの内側に入れることで、より効果的に基板Wの凸部Wp1のみをエッチングすることが可能になる。また、凹部3dの外側に処理液や洗浄液が流出しにくくなる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、薄板化された基板Wを局所的に平坦化することができ、かつ装置の小型簡略化が可能な表面処理装置100および表面処理方法を提供することができる。
【0061】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えばノズルの先端部の噴出口と吸入口の配置は、吸入口が中心部に配置され、吸入口を囲うように噴出口が配置されていてもよい。このように配置することで、吸入口の周辺の噴出口から噴出した処理液がノズルの中央部の吸入口に流れ込む。したがって、処理液が噴出口の外側に流出し難くなり、エッチングされる範囲をより厳密に制御することが可能になる。
【0062】
また、ノズルの先端部に処理液を噴出する噴出口とは別に、洗浄液を噴出するための噴出口を設けてもよい。このように構成することで、エッチング工程が終了した後に直ちに基板の洗浄を行うことが可能となり、エッチングが余分に進行することを防止できる。
この場合、洗浄液用の噴出口及び処理液用の噴出口及び吸入口を一括して囲むようにガス噴出口を形成することが好ましい。また、洗浄液用の噴出口と吸入口との位置関係は、処理液用の噴出口との位置関係と同様であることが好ましい。これにより、処理液によってエッチングされた領域を洗浄液によって効率よく洗浄することが可能になる。
【0063】
また、吸入口、噴出口、ガス噴出口は、上述の実施形態で説明した円環状ではなく、複数に分割されていてもよい。また、洗浄液用の噴出口を設ける場合には、中央部に吸入口を設け、吸入口を囲むように洗浄液用の噴出口と処理液用の噴出口を交互に設けてもよい。また、吸入口を中央部に設け、吸入口を囲むように処理液用の噴出口を設け、さらにその処理液用の噴出口を囲むように洗浄液用の噴出口を設けてもよい。これにより、エッチングされる領域よりも広い領域を洗浄液によって洗浄することが可能になる。
【0064】
また、シールガス、処理液、洗浄液を供給する流路や、これらを吸引するための流路は流路抵抗を抑制する観点から、できるだけ屈曲部が少ない滑らかな形状であることが好ましい。
また、ノズル先端部の形状は円形に限られない。例えば矩形であってもよい。同様に噴出口、吸入口、ガス噴出口の形状も円形に限られず、例えば矩形であってもよい。
また、凸部のエッチングは、凸部の形状を例えば光学的あるいは超音波等により測定しながら行ってもよい。
また、洗浄液供給部に設けられた温度制御部によって洗浄液の温度を洗浄液が変質あるいは気化しない程度の温度まで上昇させてもよい。これにより、乾燥工程における乾燥時間を短縮させることができる。
また、ノズルの材質は処理液や洗浄液、シールガスの成分・温度に侵されなければフッ素樹脂のようなプラスチック材料や金属・セラミック等のいずれであっても良く、その複合材料であっても良い。
【符号の説明】
【0065】
3 ノズル、3a 先端部、32 洗浄液供給流路、33a 噴出口、34a 吸入口、35 ガス供給流路、35a ガス噴出口、100 表面処理装置、W 基板、Wp 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング用の処理液を噴出させる噴出口と、
前記噴出口から噴出させた前記処理液を吸引する吸入口と、
を備えたノズルを有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記噴出口及び前記吸入口を一括して囲むように配置されシールガスを噴出させるガス噴出口
を更に備えることを特徴とする請求項1の表面処理装置。
【請求項3】
前記ノズルは、前記噴出口に洗浄用の洗浄液を供給する洗浄液供給流路
を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記ノズルの先端部には、中央部に前記噴出口が配置され、前記噴出口を囲むように前記吸入口が配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記ノズルは、前記ガス噴出口に前記シールガスを供給するガス供給流路
を更に備え、
前記ガス供給流路の前記ガス噴出口の近傍は、前記ノズルの中心側を向くように傾斜して設けられている
ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の表面処理装置。
【請求項6】
基板の表面の凹凸を平坦化する表面処理方法であって、
前記基板をエッチングするための処理液を噴出させる噴出口と前記処理液を吸引する吸入口とを備えたノズルを、前記基板の表面の凸部上に移動させるノズル配置工程と、
前記噴出口から前記処理液を噴出させて前記凸部をエッチングすると共に、前記処理液を前記吸入口によって吸引するエッチング工程と、を有する
ことを特徴とする表面処理方法。
【請求項7】
前記エッチング工程において、前記ノズルの前記噴出口及び前記吸入口を一括して囲むように配置されたガス噴出口からシールガスを噴出すること
を特徴とする請求項6記載の表面処理方法。
【請求項8】
前記エッチング工程の終了後、前記ノズルの洗浄液供給流路によって前記噴出口に洗浄液を供給する洗浄工程を更に有する
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の表面処理方法。
【請求項9】
前記洗浄工程の終了後、前記ノズルの前記ガス噴出口から供給されるシールガスによって前記ノズルの先端部及び前記基板の表面を乾燥させる乾燥工程を更に有する
ことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−177424(P2010−177424A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18108(P2009−18108)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】