説明

表面処理装置

【課題】表面処理槽内を真空状態に保ちながら、この表面処理槽内に収納した作業機構を上下動させるとともに、作業機構の回転、揺動等を可能とする表面処理装置を得る。
【解決手段】内部を真空状態とし得る耐圧槽1と、この耐圧槽1内に挿入して上端側を耐圧槽1から外方に突出し、この突出部17に上下動機構18を接続して上下動可能とする筒形の耐圧ケーシング7と、上記突出部17に配置した回転駆動機構16と、この回転駆動機構16に接続して回転可能であって、耐圧ケーシング7に貫通して配置した駆動軸13と、この駆動軸13の下部に接続した回転伝達機構24を介して駆動軸13の駆動力を伝達し、表面処理作業を行う作業機構34と、前記耐圧槽1と耐圧ケーシング7との外気連通部に配置し、耐圧槽1内の気密性を保持する耐圧真空シール材36と、前記耐圧ケーシング7と駆動軸13又は/及び回転伝達機構24との外気連通部に配置し、耐圧槽1内の気密性を保持する駆動真空シール材40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を内部に収納して防錆、洗浄、バレル、メッキ、その他の表面処理を行う表面処理用籠を、真空状態の耐圧槽内で上下動及び回転可能とする動力伝達機構を備えた表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示す如く、洗浄槽内で被洗浄物を回転及び上下動させながら洗浄を行う洗浄装置が知られている。この洗浄装置は、洗浄槽内に駆動軸の下端側を挿入し、前記洗浄槽から突出した駆動軸の上端側に、この駆動軸を上下動可能とする上下動機構を接続している。また、この駆動軸の上端には、駆動軸を回転移動可能とする回転駆動機構を設けるとともに、下端には、上記駆動軸の駆動力を伝達する回転伝達機構を介して回動盤を設けている。
【0003】
そして、この回動盤に被洗浄物を固定した状態で上記回転駆動機構を作動させて駆動軸を回転駆動させることにより被洗浄物を回転可能とするとともに、上記上下動機構を作動させて駆動軸を上下動させることにより被洗浄物の昇降を可能としている。そして、このように被洗浄物の回転及び/又は昇降を行うことにより、被洗浄物の洗浄作業を行うものである。また、特許文献1に示す洗浄装置は、洗浄槽内を常圧とした状態で使用することを前提としている。
【0004】
一方では、洗浄槽内を真空状態に保った状態で洗浄作業を行うと、優れた効果を得られることが知られている。例えば、洗浄槽内を真空状態として超音波洗浄を行えば、常圧状態での超音波洗浄と比較して超音波の減衰が少なくなるし、凹凸部に付着している空気を排出して洗浄効果を高めることが知られている。また、メッキ等、洗浄作業以外の表面処理作業においても、真空状態で行うことにより、被処理物が接触したり重なり合ったりしている場合であっても、細部に表面処理用の薬剤が浸透して均一な表面処理を行うことができる。
【0005】
【特許文献1】特公昭63−24754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の洗浄装置は、洗浄槽内を常圧とした状態で使用するものであるため、洗浄槽内は耐圧密閉されておらず常圧状態となっている。そのため、この洗浄装置を用いて真空雰囲気中での洗浄を行うことは不可能なものである。
【0007】
そこで本発明は、上述の如き課題を解決しようとするものであって、表面処理槽内を真空状態に保ちながら、この表面処理槽内に収納した作業機構を上下動可能とするとともに、作業機構部分で回転、揺動等の表面処理目的に従った作業を行うことを可能とする表面処理装置を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の如き課題を解決するため、内部を真空状態とし得る耐圧槽と、この耐圧槽内に下端側を挿入するとともに上端側を耐圧槽から外方に突出し、この突出部に上下動機構を接続して上下動可能とする筒形の耐圧ケーシングとを備えている。このようにケーシングを耐圧性とすることにより、ケーシングを真空状態の耐圧槽内に配置した場合であっても、ケーシングが破損するおそれが生じにくく、装置を安定した状態で使用することができる。尚、前記耐圧ケーシングは、下記に示す回転伝達機構を収納する耐圧収納部を下部に形成したものであっても良い。また、前記上下動機構は、油圧シリンダー又は空圧シリンダーであっても良いし、スクリューねじやチェーンブロック等であっても良い。
【0009】
また、本発明は上記耐圧ケーシングの突出部に配置した回転駆動機構と、この回転駆動機構に接続して回転可能であるとともに、耐圧ケーシングに貫通して配置した駆動軸と、この駆動軸の下部に接続した回転伝達機構を介して駆動軸の駆動力を伝達し、表面処理作業を行う作業機構とを備えている。尚、この作業機構は、回転伝達ローラー又は移送チェーンを設けた従動軸を回転駆動機構に連結することにより、回転伝達ローラー又は移送チェーンに駆動軸の駆動力を伝達し、この回転伝達ローラー又は移送チェーンに載置した表面処理用籠を回転又は揺動可能としたものであっても良い。また、回転盤を設けた従動軸を回転駆動機構に連結することにより、回転盤に駆動軸の駆動力を伝達し、この回転盤に載置した表面処理用籠を回転可能としたものであっても良い。また、駆動軸の駆動力を伝達して他の任意の作業機構を構成することも可能である。
【0010】
また、本発明は、前記耐圧槽と耐圧ケーシングとの外気連通部に配置し、耐圧ケーシングの上下移動によって耐圧槽内の気密性を保持する耐圧真空シール材と、前記耐圧ケーシングと駆動軸又は/及び回転伝達機構との外気連通部に配置し、駆動軸又は/及び回転伝達機構の回転によって耐圧槽内の気密性を保持する駆動真空シール材とを備えている。このように、上下移動に対応する耐圧真空シール材、及び回転に対応する駆動真空シール材をそれぞれ配置することにより、耐圧槽と耐圧ケーシングとの外気連通部、及び、耐圧ケーシングと駆動軸又は/及び回転伝達機構との外気連通部との密閉性を保持することができるため、耐圧槽内を真空状態に保ちながら、前記耐圧ケーシングの上下動及び駆動軸の回転をそれぞれ行うことが可能となる。
【0011】
また、上記耐圧真空シール材は、耐圧ケーシングの上下動のみに対応して気密性を保つものであって、駆動軸又は/及び回転伝達機構の回転への対応を行うことがないものである。また、上記駆動真空シール材は、駆動軸又は/及び回転伝達機構の回転のみに対応して気密性を保つものであって耐圧ケーシングの上下動への対応を行うことがないものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述の如く構成したものであるから、前記耐圧槽と耐圧ケーシングとの外気連通部に耐圧真空シール材を配置することにより、耐圧槽と耐圧ケーシングとの外気連通部を密閉した状態で耐圧ケーシング及び駆動軸を上下動させることが可能となる。また、前記耐圧ケーシングと駆動軸又は/及び回転伝達機構との外気連通部に駆動真空シール材を配置することにより、耐圧ケーシングと駆動軸又は/及び回転伝達機構との外気連通部を密閉した状態で、駆動軸又は/及び回転伝達機構を回転させることが可能となる。
【0013】
またこの密閉は、耐圧真空シール材を耐圧ケーシングの上下動のみに対応して気密性を保つものであって駆動軸又は/及び回転伝達機構により構成される回転部分への対応を行うことがない。また、駆動真空シール材は、駆動軸又は/及び回転伝達機構の回転のみに対応して気密性を保つものであって、耐圧ケーシングの上下動への対応を行うことがない。そのため、各シール部材に無理な負荷を加えることがなく、長期間の安定した真空シール効果を得ることができる。その結果、耐圧槽内の真空状態を保持しながら耐圧ケーシングの上下動と、駆動軸又は/及び回転伝達機構の回転を同時又は個別に行う作業が可能となる。
【0014】
このように、本発明は耐圧槽内の真空状態を保持しながら回転表面処理作業と上下動表面処理作業とを同時又は個別に行うことができるため、真空状態での表面処理方法の応用拡大を図ることが可能となり、例えば洗浄作業では物理的な力を増加させて洗浄効果を更に高めることができる等、表面処理効果を更に高めることができる。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図1〜図3において詳細に説明すると、図1に示す如く(1)は耐圧槽であって、この耐圧槽(1)の天板(2)に、表面処理用籠(3)が通過可能な開口部(4)を設けるとともに、この開口部(4)に蓋体(5)を配置している。そして、この蓋体(5)の底面に軟弾性のシール材(6)を設け、又は天板(2)の上部にシール材(6)を設け、このシール材(6)により、耐圧槽(1)内を減圧した際には、開口部(4)と蓋体(5)との間を密閉可能としている。
【0016】
また、上記耐圧槽(1)の天板(2)には筒形に形成した耐圧ケーシング(7)を挿通可能とする挿通口(8)を設け、この挿通口(8)に耐圧ケーシング(7)を挿通し、この耐圧ケーシング(7)の下端を耐圧槽(1)内に摺動可能に配置している。この耐圧ケーシング(7)は、筒形の周壁(10)の上端及び下端に上壁(11)及び底壁(12)を配置して形成するとともに、上端側を耐圧槽(1)から外方に突出して配置している。
【0017】
また、上記耐圧ケーシング(7)には、駆動軸(13)を回動自在且つ上下方向に摺動不能に貫通配置している。即ち、上記耐圧ケーシング(7)の上壁(11)及び底壁(12)には駆動軸(13)を挿通可能とする挿通孔(14)をそれぞれ形成するとともに、図2に示す如く、この挿通孔(14)に軸受け(15)を介して駆動軸(13)を挿通している。また、この駆動軸(13)の上端及び下端を耐圧ケーシング(7)の上壁(11)及び底壁(12)からそれぞれ外方に貫通配置している。
【0018】
また、上記の如く配置した駆動軸(13)の上端には、この駆動軸(13)を回転させるための電動機から成る回転駆動機構(16)を設けている。また、上記耐圧ケーシング(7)において、耐圧槽(1)から外方に突出した突出部(17)には、この耐圧ケーシング(7)を上下動させるための上下動機構(18)を接続している。この上下動機構(18)は油圧シリンダー(20)であって、この油圧シリンダー(20)のシリンダーロッド(21)を、連結部材(22)を介して耐圧ケーシング(7)の突出部(17)に接続固定している。
【0019】
そして、上記上下動機構(18)を作動させてシリンダーロッド(21)を上下動させることにより、耐圧ケーシング(7)を上下動可能とするとともに、この耐圧ケーシング(7)の上下動に伴い、上記駆動軸(13)を上下動可能としている。尚、本実施例では上記の如く、上下動機構(18)として油圧シリンダー(20)を使用しているが、他の異なる実施例においては、空圧シリンダーやスクリューねじやチェーンブロック等を使用することも可能である。また、上記耐圧ケーシング(7)の底壁(12)には、支持板(23)を水平方向に突設している。
【0020】
また、上記駆動軸(13)の下端には、回転伝達機構(24)を接続している。この回転伝達機構(24)について以下に詳細に説明すると、まず、駆動軸(13)の下端にベベルギアで構成した駆動回転伝達ギア(25)を設け、この駆動回転伝達ギア(25)を、第1従動軸(26)のベベルギアで構成した従動回転伝達ギア(27)に係合している。この第1従動軸(26)は、上記支持板(23)の底面に突設した一対の第1支持腕(28)に水平方向に回転可能に配置したものであって、この第1従動軸(26)の駆動軸(13)側の一端に、上記従動回転伝達ギア(27)を設けたものである。そして、この第1従動軸(26)の他端には、第1スプロケット(29)を設けている。
【0021】
そして、この第1駆動軸(13)の第1スプロケット(29)の上方には、支持板(23)を介して第2従動軸(30)の一端に設けた第2スプロケット(31)を配置している。この第2従動軸(30)は、支持板(23)の上面に立設した一対の第2支持腕(32)に水平方向に回動可能に配置したものであって、この第2従動軸(30)の第2スプロケット(31)と上記第1従動軸(26)の第1スプロケット(29)とを、回転伝達チェーン(33)により連結している。
【0022】
また、上記の如く形成した回転伝達機構(24)には、この回転伝達機構(24)を介して駆動軸(13)の駆動力を伝達し、表面処理作業を行う作業機構(34)を接続している。この作業機構(34)は、上記第2従動軸(30)の外周に回転伝達ローラー(35)を間隔を介して一対固定し、この一対の回転伝達ローラー(35)に表面処理用籠(3)を載置したものである。そして、この回転伝達ローラー(35)を回転させることにより、表面処理用籠(3)が回転し、この表面処理用籠(3)の内部に配置した被処理物の表面処理作業を行うものである。一例において、この表面処理用籠(3)は、被洗浄物を収納する洗浄籠であって、被洗浄物の洗浄装置として使用される。
【0023】
また、図2に示す如く、上記耐圧槽(1)の上面で耐圧ケーシング(7)の外周位置には、内部に環状の耐圧真空シール材(36)を配置した環状の耐圧部ハウジング(37)を挿通口(8)に沿って密着固定する。そして、この耐圧部ハウジング(37)内に設けた耐圧真空シール材(36)の内周面及び外周面を、耐圧ケーシング(7)の外周面及び耐圧部ハウジング(37)の内周面にそれぞれ密着して配置することにより、上記耐圧槽(1)と耐圧ケーシング(7)との外気連通部が密閉され、この外気連通部においては耐圧槽(1)内の気密性を保持可能なものとしている。そして、上記耐圧真空シール材(36)は、耐圧ケーシング(7)の上下動のみに対応して気密性を保ち、以下に説明する回転部分への対応を行う必要がないことから、負荷が少なく長期間の安定した気密保持を可能とする。
【0024】
また、上記耐圧ケーシング(7)の内部において、図1に示す如く、上記耐圧ケーシング(7)の天面及び底面にそれぞれ環状の駆動部ハウジング(38)を挿通孔(14)に沿って密着固定するとともに、この駆動部ハウジング(38)を、駆動軸(13)の外周に配置している。そして、図1及び図2に示す如く、この駆動部ハウジング(38)内には環状の駆動真空シール材(40)を配置し、各駆動真空シール材(40)の内周面及び外周面を、駆動軸(13)の外周面及び駆動部ハウジング(38)の内周面にそれぞれ密着して配置することにより、上記耐圧ケーシング(7)と駆動軸(13)との外気連通部が密閉され、この外気連通部において耐圧槽(1)内の気密性を保持可能なものとしている。また、上記駆動真空シール材(40)は、駆動軸(13)が耐圧ケーシング(7)に対して相対的に上下動しないから、駆動軸(13)の回転のみに対応して気密性を保つことができ、上下動に対応する必要がなく負荷が少ないため、長期間の安定した気密保持を可能とする。
【0025】
尚、本実施例では上記の如く、耐圧ケーシング(7)の天面及び底面にそれぞれ駆動真空シール材(40)を配置し、安定した高度の気密性を保持可能としているが、他の異なる実施例では、耐圧ケーシング(7)の天面又は底面のどちらか一方にのみ駆動真空シール材(40)を配置することも可能であり、これにより廉価なシール効果を得ることができる。
【0026】
上記の如く構成したものにおいて、表面処理用籠(3)を被洗浄物の洗浄籠として用いた場合の真空雰囲気中での洗浄作業について以下に説明する。まず、耐圧槽(1)の蓋体(5)を取り外すとともに、上下動機構(18)を作動させて油圧シリンダー(20)のシリンダーロッド(21)とともに耐圧ケーシング(7)を上昇させて、図3に示す如く、上記開口部(4)に上記第2従動軸(30)を配置する。そして、この第2従動軸(30)の回転伝達ローラー(35)に、内部に被洗浄物を収納した洗浄籠である表面処理用籠(3)を載置する。
【0027】
そして、上下動機構(18)を作動させてシリンダーロッド(21)とともに耐圧ケーシング(7)を下降させ、表面処理用籠(3)を耐圧槽(1)内に配置する。そして、この耐圧槽(1)内に洗浄液を導入する。このような状態で、図1に示す如く耐圧槽(1)の開口部(4)に蓋体(5)を被覆して開口部(4)を密閉し、減圧機構(図示せず)を作動させて耐圧槽(1)内を減圧する。
【0028】
この時、上記の如く上記耐圧真空シール材(36)により耐圧槽(1)と耐圧ケーシング(7)との外気連通部を密閉するとともに、上記駆動真空シール材(40)により耐圧ケーシング(7)と駆動軸(13)との外気連通部を密閉しているため、耐圧槽(1)内を真空状態とすることができる。このように洗浄槽内を真空状態に保つことにより洗浄液が脱気され、例えば、耐圧槽の底部(53)に超音波振動子(54)を配置して超音波洗浄を行った場合には、常圧状態での超音波洗浄と比較して超音波の減衰が少なくなるし、被洗浄物の小さな凹凸部に付着している空気を排出して洗浄液との接触を良好とし、洗浄効果を高めることができる。
【0029】
このような状態において、回転駆動機構(16)を作動させて駆動軸(13)を回転させることにより、駆動回転伝達ギア(25)及び従動回転伝達ギア(27)を介して第1従動軸(26)が回転する。そして、この第1従動軸(26)の回転により、第1従動軸(26)の第1スプロケット(29)が回転し、この第1スプロケット(29)の回転により回転伝達チェーン(33)を介して第2従動軸(30)の第2スプロケット(31)が回転する。これにより、第2従動軸(30)が第1従動軸(26)と同一方向に回転するとともに、この第2従動軸(30)に設けた一対の回転伝達ローラー(35)が回転する。
【0030】
そして、この回転伝達ローラー(35)の回転により洗浄籠である表面処理用籠(3)が回転し、表面処理用籠(3)内の被洗浄物の洗浄作業が行われる。このように、駆動軸(13)を回転させた際にも、駆動真空シール材(40)により耐圧ケーシング(7)と駆動軸(13)との外気連通部を密閉しているため、耐圧槽(1)内を真空状態に保つことができる。また、上記駆動真空シール材(40)は、駆動軸(13)が耐圧ケーシング(7)に対して相対的に上下動しないから、駆動軸(13)の回転のみに対応して気密性を保つことができ、耐圧ケーシング(7)の上下動に対応する必要がなく負荷が少ないため、長期間の安定した気密保持を可能としている。
【0031】
また、上下動機構(18)を作動させてシリンダーロッド(21)を昇降させることにより、耐圧ケーシング(7)とともに支持板(23)が上下動する。そして、この支持板(23)の上下動に伴って、この支持板(23)の上方に配置した表面処理用籠(3)が上下動し、表面処理用籠(3)の上下動による被処理物の表面処理作業が行われる。このように耐圧ケーシング(7)を上下動した際にも、耐圧真空シール材(36)により耐圧槽(1)と耐圧ケーシング(7)との外気連通部を密閉しているため、耐圧槽(1)内を真空状態に保つことができる。尚、上記耐圧真空シール材(36)は、耐圧ケーシング(7)の上下動のみに対応して気密性を保ち、駆動軸(13)の回転への対応を行う必要がないことから、負荷が少なく長期間の安定した気密保持を可能としている。
【0032】
また、上記の如く真空状態とした耐圧槽(1)内において、駆動軸(13)の回転を行う際には駆動真空シール材(40)により、また、耐圧ケーシング(7)の上下動を行う際には耐圧真空シール材(36)により、それぞれ耐圧槽(1)内の真空状態を保つことから、上記回転表面処理作業及び上下動表面処理作業をそれぞれ個別に行うことももちろん可能であるし、更に、耐圧ケーシング(7)を上下動させて駆動軸(13)を上下動させると同時に、この駆動軸(13)を回転させることにより、回転表面処理作業及び上下動表面処理作業を同時に行うことも可能である。このように回転表面処理作業と上下動表面処理作業とを同時に行うことにより、例えば洗浄作業では物理的な力を増加させて洗浄効果を更に高めることができる等、表面処理効果を更に高めることが可能となる。
【実施例2】
【0033】
また、上記実施例1では耐圧ケーシング(7)の上壁(11)及び底壁(12)にそれぞれ駆動真空シール材(40)を設けているが、本実施例2では、耐圧ケーシング(7)の下端に回転伝達機構(24)を収納する耐圧収納部(41)を形成し、この耐圧収納部(41)に駆動真空シール材(40)を配置している。本実施例2を図4において詳細に説明すると、耐圧ケーシング(7)の下端には、駆動軸(13)の駆動回転伝達ギア(25)、第1従動軸(26)の従動回転伝達ギア(27)、第1従動軸(26)、第1従動軸(26)の第1スプロケット(29)、及び第2従動軸(30)の第2スプロケット(31)を内部に収納した耐圧収納部(41)を設けている。
【0034】
そして、上記第2スプロケット(31)を設けた第2従動軸(30)を、耐圧収納部(41)の挿通穴(42)から外方に水平方向に突出配置している。また、この第2従動軸(30)の下方には、耐圧収納部(41)から突設した支持板(23)を配置し、この支持板(23)に、前記実施例1と同様に形成した作業機構(34)を配置している。
【0035】
また、図4に示す如く、耐圧収納部(41)の内方において、上記挿通穴(42)の外周には、内部に駆動真空シール材(40)を配置した駆動部ハウジング(38)を密着固定するとともに、この駆動部ハウジング(38)を第2従動軸(30)の外周に配置している。そして、この駆動部ハウジング(38)内に設けた駆動真空シール材(40)を、駆動部ハウジング(38)の内周面と第2従動軸(30)の外周面との間に密着して配置することにより、上記耐圧ケーシング(7)と回転伝達機構(24)との外気連通部を密閉し、この外気連通部において耐圧槽(1)内の気密性を保持可能なものとしている。
【0036】
尚、上記駆動真空シール材(40)は、回転伝達機構 (24)の回転のみに対応して気密性を保つことができ、耐圧ケーシング(7)の上下動に対応する必要がなく負荷が少ないため、長期間の安定した気密保持を可能としている。従って、本実施例2の場合も上記実施例1と同様に、耐圧ケーシング(7)が上下動する際には耐圧真空シール材(36)により、また、駆動軸(13)が回転する際には駆動真空シール材(40)により、それぞれ耐圧槽(1)内の真空状態が保たれることから、真空状態中での回転表面処理作業及び上下動表面処理作業を個別又は同時に行うことが可能となる。
【実施例3】
【0037】
また、上記実施例1では、表面処理用籠(3)を水平方向に配置し、この表面処理用籠(3)を回転伝達機構(24)により水平軸周りに回転可能としていたが、本実施例3では表面処理用籠(3)を鉛直方向に配置し、この表面処理用籠(3)を回転伝達機構(24)により鉛直軸周りに回転可能なものとしている。本実施例3を図5において説明すると、支持板(23)の下方に水平方向に設けた第1従動軸(26)の両端には、ベベルギアで構成した一対の従動回転伝達ギア(43)(44)をそれぞれ設けている。
【0038】
そして、一方の従動回転伝達ギア(43)を第1従動軸(26)の駆動回転伝達ギア(25)に係合するとともに、他方の従動回転伝達ギア(44)を、第2従動軸(30)の下端に設けた第2従動回転伝達ギア(45)に係合している。そして、上記第2従動軸(30)は、支持板(23)に鉛直方向に回動可能に挿通配置し、この第2従動軸(30)と支持板(23)との間には軸受け(46)を介装している。また、この第2従動軸(30)の上端には円盤状の回転盤(47)を水平方向に配置し、この回転盤(47)の上面に、表面処理用籠(3)を鉛直方向に固定配置している。
【0039】
上記の如く構成したものにおいて、回転駆動機構(16)を作動させて駆動軸(13)を回転させることにより、第1従動軸(26)を介して第2従動軸(30)が回転し、この第2従動軸(30)の回転により回転盤(47)とともに表面処理用籠(3)が鉛直軸周りに回転するものとなる。
【0040】
そして、上記の如く駆動軸(13)を回転させた際には、駆動真空シール材(40)により耐圧ケーシング(7)と駆動軸(13)との外気連通部を密閉しているため、耐圧槽(1)内を真空状態に保つことができる。そのため、駆動軸(13)を回転させることにより、真空状態において表面処理用籠(3)を鉛直軸周りに回転させることが可能となる。尚、上記駆動真空シール材(40)は、駆動軸(13)が耐圧ケーシング(7)に対して相対的に上下動しないため、駆動軸(13)の回転のみに対応して気密性を保つことができ、耐圧ケーシング(7)の上下動に対応する必要がなく負荷が少ないため、長期間の安定した気密保持を可能としている。
【実施例4】
【0041】
また、上記実施例1及び実施例2では、第2従動軸(30)に回転伝達ローラー(35)を設け、この回転伝達ローラー(35)に表面処理用籠(3)を載置して、上記回転伝達ローラー(35)を回転させることにより表面処理用籠(3)を回転可能としているが、本実施例4では、第2従動軸(30)に移送チェーン(48)を設け、この移送チェーン(48)に表面処理用籠(3)を載置し、この表面処理用籠(3)を水平方向に揺動可能なものとしている。
【0042】
本実施例4を図6及び図7において詳細に説明すると、第2従動軸(30)には一対の移送スプロケット(50)をそれぞれ設けている。また、図7に示す如く、支持板(23)の上方には上記第2従動軸(30)と平行に補助軸(51)を配置し、この補助軸(51)にも第2従動軸(30)と同様に一対の移送スプロケット(52)を設けている。そして、第2従動軸(30)の移送スプロケット(50)と補助軸(51)の移送スプロケット(52)とを、一対の移送チェーン(48)によりそれぞれ連結している。
【0043】
そして、図6に示す如く、上記一対の移送チェーン(48)に表面処理用籠(3)を載置し、回転駆動機構(16)を作動させて駆動軸(13)を正逆方向に小刻みに回転させる。これにより、第1従動軸(26)及び第2従動軸(30)を介して移送チェーン(48)が正逆方向に小刻みに回転し、これにより表面処理用籠(3)が水平方向に揺動するものとなる。そして、このように表面処理用籠(3)を揺動させることにより、表面処理用籠(3)内の被処理物の表面処理作業を行うことができる。
【0044】
このように、駆動軸(13)を回転させた際にも、駆動真空シール材(40)により耐圧ケーシング(7)と駆動軸(13)との外気連通部を密閉しているため、この外気連通部において耐圧槽(1)内を真空状態に保つことができる。そのため、上記駆動軸(13)を回転させることにより、真空状態において表面処理用籠(3)を揺動させることが可能となる。尚、上記駆動真空シール材(40)は、駆動軸(13)が耐圧ケーシング(7)に対して相対的に上下動しないから、駆動軸(13)の回転のみに対応して気密性を保つことができ、耐圧ケーシング(7)の上下動に対応する必要がなく負荷が少ないため、長期間の安定した気密保持を可能としている。
【0045】
そして、本実施例4でも上記実施例1及び2と同様に、耐圧ケーシング(7)が上下動する際には耐圧真空シール材(36)により、また、駆動軸(13)が回転する際には駆動真空シール材(40)により、それぞれ耐圧槽(1)内の真空状態が保たれることから、真空状態中での揺動表面処理作業及び上下動表面処理作業を個別又は同時に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1を示す表面処理装置の断面図。
【図2】図1の部分拡大断面図。
【図3】図1において、シリンダーロッドを上昇させた状態を示す断面図。
【図4】本発明の実施例2を示す表面処理装置の断面図。
【図5】本発明の実施例3を示す表面処理装置の断面図。
【図6】本発明の実施例4を示す表面処理装置の断面図。
【図7】図6のA−A線断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 耐圧槽
3 表面処理用籠
7 耐圧ケーシング
13 駆動軸
16 回転駆動機構
17 突出部
18 上下動機構
20 油圧シリンダー
24 回転伝達機構
34 作業機構
35 回転伝達ローラー
36 耐圧真空シール材
40 駆動真空シール材
41 耐圧収納部
47 回転盤
48 移送チェーン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空状態とし得る耐圧槽と、この耐圧槽内に下端側を挿入するとともに上端側を耐圧槽から外方に突出し、この突出部に上下動機構を接続して上下動可能とする筒形の耐圧ケーシングと、この耐圧ケーシングの突出部に配置した回転駆動機構と、この回転駆動機構に接続して回転可能であるとともに、耐圧ケーシングに貫通して配置した駆動軸と、この駆動軸の下部に接続した回転伝達機構を介して駆動軸の駆動力を伝達し、表面処理作業を行う作業機構と、前記耐圧槽と耐圧ケーシングとの外気連通部に配置し、耐圧槽内の気密性を保持する耐圧真空シール材と、前記耐圧ケーシングと駆動軸又は/及び回転伝達機構との外気連通部に配置し、耐圧槽内の気密性を保持する駆動真空シール材とを備えたことを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
耐圧ケーシングは、下部に回転伝達機構を収納する耐圧収納部を形成したことを特徴とする請求項1の表面処理装置。
【請求項3】
作業機構は、回転伝達ローラー又は移送チェーンを設けた従動軸を回転駆動機構に連結することにより、回転伝達ローラー又は移送チェーンに駆動軸の駆動力を伝達し、この回転伝達ローラー又は移送チェーンに載置した表面処理用籠を回転又は揺動可能としたことを特徴とする請求項1の表面処理装置。
【請求項4】
作業機構は、回転盤を設けた従動軸を回転駆動機構に連結することにより、回転盤に駆動軸の駆動力を伝達し、この回転盤に載置した表面処理用籠を回転可能としたことを特徴とする請求項1の表面処理装置。
【請求項5】
耐圧真空シール材は、耐圧ケーシングの上下動のみに対応して気密性を保つものであって、駆動軸又は/及び回転伝達機構の回転への対応を行うことがないことを特徴とする請求項1の表面処理装置。
【請求項6】
駆動真空シール材は、駆動軸又は/及び回転伝達機構の回転のみに対応して気密性を保つものであって耐圧ケーシングの上下動への対応を行うことがないことを特徴とする請求項1の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−6261(P2009−6261A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170045(P2007−170045)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【特許番号】特許第4086889号(P4086889)
【特許公報発行日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(390019884)ジャパン・フィールド株式会社 (28)
【Fターム(参考)】